【偽夜】鼻キック、ぶわっと!

マスター:村井朋靖

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2015/04/13 19:00
完成日
2015/04/22 10:57

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●あまりにもふざけたゲーム
 広大な大地を治める農耕推進地域ジェオルジに、あの悪名高き歪虚「クラーレ・クラーラ」が姿を現した。
 眩しい日差しをカラフルな日傘で遮りながら、ひとり素朴な地面を悠然と歩く。ここはジェオルジ一族が統治する土地で、この地の中枢と呼ぶべき場所だ。
「こんなところから糧を得ようなんて、人間もなかなかだね」
 その口調こそ飄々としているが、彼は嫉妬の歪虚。その心の奥底で何を感じているかは、誰にも窺い知れない。
 クラーレは右手に視線を向けると、そこは耕された畑が静かに種まきの時を待っている。昨年の秋に発表された新作、おにぎり草「まめし」でも育てるのだろうか。
「ま、ボクはゲームを楽しめたらそれでいいさ」
 彼が四本ある腕のひとつを振り上げると、水気を帯びた土の中から鼻のデカい人型モグラが無数に現れた!
「モゲェー!」
「モゲェー!」
「ハナモゲェー! ラァー! バハハァー!」
 勢いよく飛び出したモグラたちを引き連れ、クラーレは歩き続ける。
 そこに駆けつけたのは、一族で唯一のハンターであるルイーザ・ジェオルジ。今日はピンクの皮鎧に純白の弓を装備。少し温かくなってきたからか、やや肌の露出が多いコーディネートでまとまっている。
 それに付き従うかのように現れたのは、ポルトワールを根城とする女傑・ヴァネッサ(kz0030)。ここへは悪巧みをしに来ていたのだが、有事ということで手伝いにやってきた。無論、ルイーザに貸しを作りたい下心もあるが。
「ジェオルジの土地に踏み入るとはマヌケだね。いくら雑魚が来ようとも関係ないさ」
 勝気なルイーザが大言を吐けば、ヴァネッサもそれに続く。
「後ろからはハンターさんも来るんだよ。ほらほら、嫉妬の歪虚らしく吠え面でもかきな」
「何を言ってるのかな? ボクはゲームが始められるから嬉しいんだよ。さ、ボクの用意したモグラたちと戦ってよ!」
 クラーレが手を広げると、モグラたちはふたりのハンターへと殺到する。その姿は主に従う雑魔ではなく、まるで本能の赴くままに動く動物のようだ。
「悪いけど、この弓は飾りじゃないんだよ」
 ルイーザはショートボウで狙いをつけ、まずは先頭の出鼻を挫く。それを見届けた後、ヴァネッサが走り出して敵の攻撃を往なしながら、思い切って敵陣へと切り込む。
「私を捕えられるかな?」
 いつもは狭い路地などを舞台に戦うことの多い疾影士のヴァネッサは、敵を敵として見るのではなく、ある種の障害物としても捉えていた。
 愛用のナイフで直近の敵の脚を切った後、胴体を壁に見立てて宙返り。周囲の視線が上に集まれば、今度は足払いを仕掛け、変幻自在の戦法でモグラを翻弄。ヴァネッサは足元に転がってきた敵に対し、鼻を思いっきり踏んでクラーレを挑発しようとした。
 その時である。鼻を踏まれたモグラがドバッと鼻血を吹き出し、周囲に絶叫を響かせたのだ。
「ピギェエェェーーーッ?!」
 あまりの苦しみように、さすがのヴァネッサも「ん?」と首を傾げる。しかも痛がるモグラはもがき苦しみ、そのまま黒煙となって消えてしまった。
「そういえば、ゲームの内容を聞いてなかったか……」
 クラーレが表に出る時は、愉快なゲームをセッティングできた時に他ならない。
「敵の話を聞くのは癪だけど、意味がわからないまま戦うのは嫌だからね。クラーレ、説明しなよ」
 ルイーザは不本意ながらも武器を収め、敵の演説に耳を傾けるポーズを取った。
「キミたちは賢明だ。それに免じて、ルールを説明してあげるよ。このモグラは鼻が最大の弱点なんだ。だから殴られても蹴られても、鼻を刺激されれば鼻血を吹いて大ダメージを受けて消えてしまうのさ」
 ヴァネッサは額に手をやりながら「そんなもの出してくるもんじゃないよ」と呆れると、クラーレも「そうだね」と同調した。
「実はさ、使い物にならない雑魔で処分されかかったところをもらってきたんだ。ほら、ボクなら面白おかしく使えるでしょ?」
「それでうちの領地に持ってきたって? まったく、とんだイタズラ坊やだ。今すぐそこまで行って、お尻ペンペンしてやる!」
 ルイーザがそう息巻くが、クラーレの周囲からまた複数のモグラが地中から現れた。
「もらってきたはいいんだけど、数が多くってさぁ~。がんばって処理してくれると助かるな。あ、せっかくだからさ、人類の知恵って奴を見せてよ」
 見えているだけでも、モグラはすでに20匹を越える。しかし所詮は雑魔、普通に戦っても倒せるのだが、それでは能率が悪すぎる。ここは手早く倒してしまいたいところだ。
「別に倒すのに飽きたら、それでもいいよ。ボクは放置して帰るから」
 歪虚の特権を振りかざすクラーレを見て、ルイーザが地団駄踏んで悔しがる。
「キーッ! この辺に放っといたら、穴だらけになるじゃない! 畑も道も台無しよ!」
 同じく、ヴァネッサも思案する。
「ジェオルジに損害が出れば、私の商売に支障が出そうね……ここはモグラを倒すのが先決だね」
 ふたりの目的が敵の討伐で一致すると、ひとまずハンターの到着を待つべく遅滞戦術を展開しつつ、的確に鼻を狙って敵の数を減らしていく。だが、一定数以下になると、勝手に増援が出てくるので意味がない。

 ハンターはいかにして、この膠着した状況を打破することができるのか。

リプレイ本文


 この依頼に張り切る面々は多かれど、バーリグ=XII(ka4299)ほど浮かれたオッサンもいないだろう。
「美女のご依頼ならモグラでも何でも倒しちゃうよー! その代わり、早く倒したら一緒に散歩でもしませんか、美しいお嬢さんたち?」
「ああ、散歩か。その辺ぐるっと回って終わりだな。別にいいぞ」
 いい笑顔でヴァネッサ(kz0030)が答えると、バーリグはガッカリ。うまく言葉尻をとらえられてしまった格好だ。
 クラーレ・クラーラは定番のオチまで見届けると、モグラたちに「もういいよ」と戦闘開始を合図する。
「おっと、おいちゃんが傷心なとこに戦闘って、まるで遠慮がないね!」
 腰から魔導拳銃を抜き、銃口を鼻に向ける。飛び出した弾丸は急所と捉え、モグラは周囲に赤い霧をぶちまけた。
「まだ、お散歩は諦めてないんだ。だから、俺の愛の餌食になってくれる~?」
 ニヤニヤと笑うおいちゃんの脇を、牧 渉(ka0033)と神代 誠一(ka2086)がすり抜けていく。ふたりは疾影士、モグラの前に立ちはだかる。
「在庫処分ついで、ですか。それはまたご熱心なことで」
 渉がそう呟くと、クラーレも「歪虚の鑑だと思うんだ、自分でもね」と胸を張る。
 しかし、襲った場所が悪かった。誠一は「まめし畑を狙った」という点に怒りを覚え、満面の笑みで静かに殺気を放ちながら、眼鏡を引き上げる。
「一 匹 残 ら ず 、 駆 逐 し ま す」
 誠一はスラッシュエッジを駆使し、八角棍で鼻をクリーンヒットしていく。その度に響く「ブファー!」という鼻血の音。最初こそ爽快だが、何度も聞いてると飽きてくる。渉はダーツを使って、誠一の傍から離れようとする敵の鼻を狙う。とはいえ、数が多すぎるのに加え、弱くて臆病なので、すぐに逃げそうになるのが厄介だ。そこで渉はある秘策を用意した。
「んー、……射撃に自信のある方、ちょっと頼まれたりしてくれます?」
「おー、おいちゃんに任せろ!」
 バーリグがそう言うと、渉は「これを敵の頭上に投げますので、撃ってください」と説明し、ポイッと小さな包みを投げつける。
「俺のカッコいいとこ、見せてやろうじゃないの。ぶわっとね!」
 バーリグの弾丸はそれを見事に破壊すると、黒い粉が周囲に撒き散らされた。
「ふふ、粉わさびでもあれば良かったんですけどね」
 その言葉と同時に、モグラの大群がゲホゲホと咳き込み始め、ついにはぶわっと鼻血を吹き、勝手にこの世から消え去った。地面に残った血の水溜りが、彼らの墓標。悲しき液体の墓標である。
「渉さん! ……よっと。そいつ頼みます!」
 突然、誠一がホームランしたモグラの対処を依頼されたが、敵は勝手に鼻から落ちるので、渉はただ血飛沫を食らわないように避けるだけだった。しかし、渉は相手の狙いが何か読める。
「ちょっと神代さん? 俺にそういうの期待しないでくださいってば」
 誠一は「バレてました?」と笑うと、渉も「まったく」と返した。
「まぁ、モグラでありながら貴重なフライトが経験できて良かったんじゃないですかね」
 渉はそう言いながら、誠一から送られるモグラの対応に終始した。


 混沌系アイドルのエリス・ブーリャ(ka3419)は、敵の首魁クラーレ・クラーラを見て「自由気ままに好き勝手やるキャラはエルちゃんだけでじゅーぶん!」と気合を入れた。そして、特設キッチンで中華鍋を豪快に振る。
「さーて、準備万端。さっそく行きますか!」
 エルはピコハンを手に持って、モグラの頭ならぬ鼻を叩くゲームに興じる。周囲にはステージを彩る赤い鼻血がキラキラと舞い上がった。アイドルには相応しい背景だが、ちょっと匂いが気になるところ。
 そのまま前進を続け、エルはクラーレにビシッと指差し、あることを確認する。
「あのさ、敵はこの敷地内にいるの?」
 そう言いながら、モグラの首根っこを掴みながら、最後に鼻をドツいてジ・エンドさせる。
「ああ、いるよ。だから手早く処分してくれると助かるんだけど」
「どーせ、援軍が土の中にいて『地の上だけとは言ってないよ』とか言っちゃうんでしょー」
「うん、まだ全部は出てないよ。乱戦になると面白くないでしょ? だから調整はしてあげてるのさ」
 出た、上から目線の発言。エルは「あー、はいはい」とジト目で呟く。
「モグラを隠すには土の中ってねー、よく言ったもんだな」
「ほら、キミの後ろから敵が迫ってるよ。戦わなくていいの?」
「それよりてめぇ、今のネタちゃんと笑えよ」
 似た者同士の会話で盛り上がっているが、それでもモグラは襲ってくる。振り向き様にピコハンアタックを当て、真正面に飛ぶ鼻血を軽く回避。一度キッチンへと戻らんとする。
「もはや、鼻血避けゲーになってる気がする」
 それを聞いた月影 夕姫(ka0102)が「あんまり間違ってませんね」と言うと、機杖を使って鼻の位置をズラしながら丁寧に撃破していく。
「さっきの粉攻撃が聞くなら、こんなのはどうかしら」
 機杖で胴を突き、敵を怯ませたところで、手に持った炭酸飲料を振った後に鼻へ噴射。すると泡の効果でこれまた敵の鼻がムズムズしてしまい、勝手に鼻血を吹いて消滅した。
「こういうの、鼻に入ったらキツいのよね……」
「それを鼻に直接入れてるんだから、キツいに決まってるよね……」
 エルがそんな感想を述べつつ、中華鍋を持ってモグラの出てくる穴に到着。そこから顔を出したモグラに「よぉ」と声をかけ、アツアツのあんかけを流し込む。
「モンゲギュエェェェェーーー!!」
 増援となることもできず、穴の中をスプラッタに染め上げるモグラたち。縦穴の奥からは、まるで「こっちはダメだ、あっちにしよう」と言わんばかりの鳴き声が聞こえてきた。しかし混沌系アイドルの求める展開は、ここからが真骨頂。
「そぉい! 塩漬けニシンの缶詰だ、皆で仲良く食べに来いっ!」
 あまりの高さから投げられた缶詰は、側壁のゴツゴツで穴が開き……その後は地中で無残な音が何度も何度も何度も響き渡った。
「うぇっ……なんだ、これ……臭いなぁ~」
 クラーレの近くの穴からも匂いが漏れたのか、えらく困った顔を浮かべる。エルは無事死亡するモグラたちを見るだけでは飽き足らず、缶詰の中身をモグラの鼻に捻じ込むという荒業を披露。ルイーザ・ジェオルジは「あの子の戦い方は、もはや一周回ってエレガントね」と言う他なかった。
 それに比べれば、夕姫の戦法は良心的だ。機杖で敵を一箇所に集め、そこに振ったビールの浴びせかけて血煙を上げる。とはいえ、自分の服への被弾も免れず、少し嫌な表情を見せた。
「血のシミって、なかなか落ちないのよね……大丈夫かしら」
 そんなことを気にしている横を、今度は元気いっぱいの猫娘、ネフィリア・レインフォード(ka0444)が地を駆けるものを駆使して走っていく。ナックル「ヴァリアブル・デバイド」によって猫の手、覚醒によって猫の耳と尻尾も生えている。
「特徴も見た目もいろいろと変な相手なのだ。でもとりあえず倒してしまえばいいのだよねー♪」
 やることはいつもと同じなので、動物的な動作でどんどん鼻を蹴り上げていく。その角度は鼻血の見栄え的にとてもいいが、ちょっとでも下にいると血飛沫を浴びてしまうことになる。
「あのおねーさんのお尻ペンペンの為に、ガンガン倒していくのだ! でも、おっとっと……気をつけないといけないのだー」
 なるべく動きながら戦いたいが、敵の多さに自由な行動が阻害。しかも……
「ボクがおねーさん? フフフ……そうか、お姉さんなのか。そう思ってるんだね」
「うー? おにーさん? おねーさん? ひょっとして、おにねーさん??」
 ネフィリアはクラーレの話術にハマってしまい、一時的に集中が途切れてしまった。そこをモグラに狙われるのだが、別に彼らが状況をどうにかできるわけではない。その散り際に初めて、覚醒者に被害を与えるのだ。結果的にネフィリアは考え事のせいで血を浴びてしまい、ついにウエーな格好になってしまう。
「うー、真っ赤になっちゃったのだー」
「フフフ……ボクと遊ぶのに無傷はあり得ないよ」
 クラーレの言葉にカチンと来たネフィリアは「もう怒ったのだー!」と気合を入れ、エルや夕姫とも連携して敵を倒し始めた。


「……もげぇー」
 その間、モグラの鼻を踏みながらリズミカルに戦うユラン・S・ユーレアイト(ka0675)は、鳴き真似に興じていた。


 クラーレの傍に寄るのは難しいが、敵の出る穴への到達は比較的容易になった。
「それにしても、数が多いねっ!」
 アリア(ka2394)は血飛沫を食らわないように、基本に忠実な戦法で戦っている。身軽なステップで敵を往なすが、あまりにも敵が多い。その癖、逆に弱すぎて歯応えがないという、なんとも困った歪虚だ。
「ほんとに弱いんだけどなー」
 自然を愛する憤怒の戦士・誠一が今も元気にホームランしている様を見れば、それは一目瞭然。こうなれば、敵を一気に駆逐する秘策が必要……彼女はそう考えたが、不意に顔を赤くする。
「思いついたはいいんだけど、これ、あたしがやってどうなのかな……」
 とはいえ、他に手段が思いつかないので、ひとまずやってみることに。敵を溜めることに脅威がないので、ある程度集めた上でアリアは声高に呼ばわる。
「やいっ、このもぐらの出来損ないども!」
 モグラは誰もが『ワイのことか?』と言わんばかりの表情で、アリアを上目遣いの媚びた瞳で睨んだ。
「いいものを見せてあげるよ……ちらっ☆」
 彼女はとっさに、ほんの少しだけスカートをまくってみせると……それを見たモグラは今までにない血を鼻から吹き出し、そのまま満足げな表情をしたまま無に還った。一網打尽の策、成就!
「これ、さすがに恥ずかしい……別の意味で」
 アリアは気を取り直し、今度はいつものリズムで敵に接近。わざとモグラに挟まれるように立ち、正面の敵の鼻をバク転で蹴り上げる。
 そうすると正面の敵に鼻血かかかり、それがムズムズして向かいも勝手に鼻血を吹くという、どっちも倒せる一挙両得の技となるのだ。
「それにしても、気持ち悪い雑魔だなぁ……」
 いろんなことが重なって身震いするアリアを、1匹のパルムが「よしよし」と肩を擦る。彼女の隣には、チョココ(ka2449)が立っていた。
「二足歩行するモグラ……浪漫ですわー! 絵本で見たモグラは、ヘンテコな帽子みたいなものを被っててー」
 とはいえ、今回は歪虚。そういう凝った服装はしていないので、やや残念な風体になっているか。
「モグラさん、親切な村人さんが用意してくださったのですわよ、ご覧なさいですわっ!」
 そうして出てきたのは、勇敢なる村人の協力で実現したセクシーモグラの着ぐるみである。二足歩行ということで、美的感覚は人間に近いであろうと推測し、チョココが監修した特製スーツだ。なお、こちらのモグラはワンピースをご着用。わりとくびれもある。ちなみに、アリアの感想は「どこに魅力があるのか、まったくわからない」であったが。
 しかし、これを見た青少年のモグラ一同は鼻を押さえ出し、ついには隙間から赤い血が流れ落ち、最終的にはいつものアレで爆発四散した。それを見たアリアが「ああ、こういうのでよかったの……」と少し呆然とする。じゃあ、自分のは大サービス過ぎたんじゃないのかとか、恥ずかしい思いと撃破数が合わないんじゃないのとか、いろんなことを考えてしまった。
「鼻血を吹かないモグラは許さないですの」
 頭のパルパルもお手製のハンマーを上下左右に振って、なんともやる気満々。ここからチョココの攻撃が始まる。その後ろからはセクシーモグラが体を張って、いちいちポーズを取りながら同行した。穴を見つければモグラを背中から「ワン・ツー・ドーン!」で叩き落し、正面から突いた場合も鼻から落ちるようにワンドでバランス調整。彼らの出現する穴は、総じて墓穴となった。
「おのれモグラ怪人! モゲラキーック!」
「モゲェ!」
「モゲラアターーック! ですのー!」
「モゲゲェー!!」
 小さな体にみなぎる正義のパワー。モグラ怪人の行く先は地獄と決まっているのだ。


 ここまでマイペースにモグラと遊んでいたユランは、クラーレに見せつけるように踏んで「残念だね、君はけしかける側だから、こんなに楽しいモグラ踏み踏みはできないんだ」と相手の嫉妬心を煽っていた。
 現にクラーレも遊びたくなっていたが、それではルール違反になってしまうので、このジレンマにじっと耐えるしかない。その表情がぐぬぬとなっているのは誰の目にも明らかだった。
 そんな時、ユランは近くの畑にあった堆肥を長柄杓にたんまり載せ、穴の中にシュートしていく。見たところ、モグラの穴は深い。いや、深く掘らざるを得ないのだ。野菜や花を育てる土は堆肥などで匂いがついている。本能的に浅く掘ることを避けたのだ。
「これをだばーっとね……」
 畑には肥料となるが、モグラにはただの百害。この後の村のためにもなる妙案で、地中のモグラを大いに慌てさせた。なんとか我慢して目の前から出てきた敵には、もれなく七支刀でホームランの刑に処される。
「ファー……」
 当然、モグラは鼻から落ちて無事死亡という寸法だ。

 これまでの経緯で、モグラの出口はある程度狭められていた。というよりも、クラーレの傍から離れつつある。この作戦を仕切ったのは、コルネ(ka0207)。クラーレに到達したいと希望する仲間が多いことを知り、この策を提案した。
「右側の出口をヴァネッサ様、左側の出口をルイーザ様にお任せしましたわ。出てきたところを後ろから私たちが倒します」
 その際、ルイーザから「後ろはいいけど、正面はあたしらだけだよ。どうすればいいのさ」と訪ねると、コルネは「少し服を捲くってください」と冷静に答えた。
「ヴァネッサもあたしも、そういうキャラじゃないけど……」
「そこは創意工夫をお願いします。村の一大事、そのままにはしておけないですよね?」
 あまりにもひどい殺し文句にジト目を浮かべたが、結局はやるしかない状況に追い込まれた。かくして男前レディーのルイーザとヴァネッサがお色気を発揮し、遠ざけたモグラ退治を実行した。その後のふたりは、いつもの数倍のパワーで攻撃していたらしいので、どれだけのシチュエーションであったかはお察しいただきたい。
 後方からは約束どおり、左側をコルネや渉、ユランらが対応。右側はチョココやバーリグ、夕姫らが駆逐し、ついに中央にはクラーレとモグラ数匹だけの状況となった。


「いやぁ、楽しかったかい? それじゃ、ボクはこれで……」
 クラーレがゲームを提供し終えたとばかりに去ろうとすると、チョココが取り巻きにモゲラキック、夕姫が鼻を機杖でホームランし、笑顔で足止めする。
「そのまま帰すわけないでしょ?」
 血飛沫を浴びた夕姫の微笑みは、ちょっと怖い。
「ゲームっていうなら、もうちょっとルールや条件を考えて提示しましょうよ。単調一本筋はクソゲーって言われるだけよ?」
 コルネもユランも「そうそう」と言わんばかりに頷く。
「今回のはどう考えても、『大量に余った雑魔の扱いに困ったから、とりあえずばら撒けばいいか』ってしか思えないわよ。天下のクラーレ・クラーラがそれでいいの?」
「え、えっと、その……あの……」
 そう言い淀む首魁の元へ、米神に激怒マークを浮かべたネフィリアがやってきた。
「ちゃんとゲームにするのなら、今からお尻ペンペンされればいいのだ! 反省するのだー!」
 振りかぶるネフィリアの一撃がお尻にヒット。するとクラーレは、思わず「ヒャン!」という声を上げる。
「んん~? おにーちゃんの声とは思えないのだ。やっぱりおねーちゃんなのだ! えいえいっ!」
 その後の連打は苛烈そのもの。覚醒者のお尻ペンペンは普通でも痛い。
「す、済まない! 今度はちゃんと考えるから!」
 そうは言うものの、希望者は多数。二番手はユラン。フルパワー覚醒で翡翠色の精霊竜を模した姿となり、モグラ退治よりも攻撃的にペンペンを繰り返す。
「もしお仕置きから逃げたら、さっきの堆肥穴に頭から叩き落す」
 この脅迫も効き、コルネの釘バットペンペンにも耐え、エルの角材アタックにも耐え……られず、最終的にはワンワン泣いていたが、罰ゲームが終わった際に「覚えてろよー!」と捨て台詞を吐いたので、たぶん大丈夫だろう。今度はいいゲームを考案してほしいものだ。

 すべてを見守り、誠一はホッと息を付くと、「これで解散かな」といいながら酒を飲みに行こうとした。すると友達のアリアが「あー、いいのかなぁ、お酒禁止されてるのに~」と茶化して見せる。
「で、でも仕事の後ですから……ちょっとくらいは」
「じゃ、奢ってくれるなら、黙っててあげる♪」
 そのやり取りを聞いていたルイーザは「いいとこ知ってるんだ、案内してあげるよ」と言うと、ヴァネッサが「ルイーザの奢りだってさ、ありがたいねぇ。皆も一緒に行くかい?」とうまく話を操作する。
「ぬ、抜け目のない……」
「これで誠一も私も、皆もハッピーさ。ルイーザ、それでいいじゃないか」
 いい顔して微笑むヴァネッサはチョココの頭の上にいるパルパルに触れながら、皆で酒場への道のりを歩き出した。

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MVP一覧

  • Emeral-D
    ユラン・S・ユーレアイトka0675
  • 愛おしき『母』
    アリアka2394

重体一覧

参加者一覧

  • 探し物屋
    牧 渉(ka0033
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • エアロダンサー
    月影 夕姫(ka0102
    人間(蒼)|20才|女性|機導師
  • キャラバンの美人秘書
    コルネ(ka0207
    エルフ|23才|女性|霊闘士
  • 爆炎を超えし者
    ネフィリア・レインフォード(ka0444
    エルフ|14才|女性|霊闘士
  • Emeral-D
    ユラン・S・ユーレアイト(ka0675
    エルフ|14才|女性|霊闘士
  • その力は未来ある誰かの為
    神代 誠一(ka2086
    人間(蒼)|32才|男性|疾影士
  • 愛おしき『母』
    アリア(ka2394
    人間(紅)|14才|女性|疾影士
  • 光森の太陽
    チョココ(ka2449
    エルフ|10才|女性|魔術師
  • 混沌系アイドル
    エリス・ブーリャ(ka3419
    エルフ|17才|女性|機導師
  • ノット・ハングドマン
    バーリグ=XII(ka4299
    エルフ|35才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
コルネ(ka0207
エルフ|23才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2015/04/13 09:58:43
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/04/13 09:56:48