ゲスト
(ka0000)
殻の中身はゆで卵?
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/04/16 12:00
- 完成日
- 2015/04/21 12:03
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●イースターエッグ
商人の父に付いて回って色々な町に出かけたことがあるマリー。
リアルブルーの文化についても聞く機会があり、何度か「へぇ」と思ったこともあったが、それで終わりだった。
最近興味をそそられたのはイースターという祭りついてだった。復活祭というとか、日付が移動するとかそういった細かいところも説明されたがどうでもよく、殻を色づけしたゆで卵を隠して探すという遊びが気になった。
卵に絵を描くことなんてしたことないため、単純に楽しそうとマリーは思った。
隠して探してもらうとなると、人員が必要だ。しかし、ガサツな子たちは誘いたくない。
悩まず浮かぶのはたった一人。
近所の遊び相手の中の一人であるがマイクは知的だし、しっかりしているし、見た目は地味だけれど誠実を絵にかいたような子だ。ちょっとのんびりしているところや、鈍すぎるところ等々欠点もあるけれど、マリーの目から見てマイクはとてもすてきだ。
かといって、マイク独り誘うのは難しい。
彼の家は両親が一生懸命働き、長男のマイクが弟妹四人の面倒をみているから。
「ま、あの家の子たちはしかたがないわ。大切な家族なんだもの。それにマイクが面倒見ているから、いい子たちだし。マイクとその妹と弟以外が来なければいいのよ」
ゆで卵を何個隠すか悩んだ結果、マイクと弟妹分として五個にした。
おやつにちょうどいいだろうしとマリーは我ながらの配慮にうなずく。
台所で卵を茹で、そして絵を描く。
卵の殻に模様を描く作業は思っていた以上に楽しかった。父親に褒められてなお一層力が入る。
五個のうち一つは非常に出来がよく、できればマイクに見つけてもらいたいなと本番となる翌日を楽しみにしていた。
運よくこの日、町はずれの空地に集まったのは自分とマイクの弟妹だけだった。
マリーはイースターの説明をして、卵隠したから見付けてというと、突然湧いた宝さがしに小さい子たちは歓声を上げた。
一つ二つと見つかっていき、三十分もすれば、最後の一つを見つけるだけとなる。キャーキャー言いながら探していた子たちだったが、一人一個ずつ卵を手にしてから、動きが鈍くなった。
マイクの弟妹に最後の一個はどうでもいいという雰囲気が漂う。
マイクが一生懸命探すが、どうしても見つからない。
夕方になっても見つからない。
「なんで、なんでないのよ!」
マリーは癇癪を起した。
「どこに隠したか覚えていないの?」
マイクが優しく念のため尋ねるが、マリーは首を横に振った。
「だって、覚えていたところにないのよ?」
「猫や鳥が持って行ったのかもしれないよ」
ここで遊んでいる間、野良猫も鳥も見なかった。しかし、目を少し離したすきに持って行かれた可能性だってあろう。
マイクの推論にマリーはうなずく。
「そうね……。残念だけど遊びはここまでね」
「うん、残念だったよ。マリーがどんな模様を書いたか楽しみだったのに」
マリーはぱっと顔を赤くして笑顔になった。
「そ、そうよ、本当に残念よ! あんなに素敵な模様が書けたのに」
「うん。ゆで卵だから、腹ペコ猫が食べて満足したかもしれないね」
「そうね……」
再び萎れるマリー。
「マリーおねーちゃん、またね~」
マイクは見つけられなかったけれど、四人の小さい子たちは見つけて笑顔で卵を握っている。
「きれいでもったいないからとってるなんてしないで、ちゃんと中身食べてよね!」
「うん」
マイクも楽しそうだったので、マリーは見つからなかった卵のことは忘れ、家に帰った。
●忘れられたイースターエッグ
子どもが遊ぶ空地の隅に何かあることにマリーは気付いた。
ピンクに彩色され、茶色のひし形や黄色い花の模様が描かれている卵型の物体。
棒で突いてみたが特に反応はなかった。
動かそうにも動かない。
「……この模様どこかで見覚えがあるわ」
ああ、数日前置いたイースターエッグ。
「でもこんなに大きくなかったっ!」
元々鶏の卵であったのが、現在ダチョウの卵の大きさである。
「マイク、どうしよう!」
弟妹を連れて空地にやってきたマイクは突然の言葉に首をかしげた。手招きされて近づくと、妙な物体を目にする。
「これは何?」
「あの日あたしが隠したイースターエッグよ! あなたが見つけてくれればこんなことにならなかったのに!」
「え? 僕のせい?」
場所を忘れたのは君だよね、という言葉をぐっと飲み込む大人なマイク。
「マリーおねえちゃんが、わすれたんだよ」
まあ弟妹は黙っておらず正しい言葉を突き付けた。マリーは顔を真っ赤にして怒っているが、さすがに怒鳴るというような態度には出られない。
「お父さんに相談してくる」
マリーは家に駆けこんだ。
マイクはとりあえず、その得体のしれない物体を観察し、弟妹を近づけないようにした。
気のせいかじわじわと大きくなっている?
「お兄ちゃん、これ大きくなった?」
「……」
マイクは冷や汗があふれるのを感じた。
どう考えてもろくでもない物だ。
この後、大人たちが来て、動かそうとしたり、土を掘ってみたり、ハンマーで割ってみようとした。
どれも不発。
「明日になったら変わっているかも」
「変わっていないね」
大人たちも子供たちも誰かが言ったこの一言にうなずいた。
「いや、大きくなったから変わったよな」
誰かが言いかえている。大きさは変わったが、状況は変わらない、どちらも正しいつぶやき。
大きさは、マイクやマリーの身長を越えている。
「ハンターに頼む?」
商人のつぶやきに、大人たちはこくりとうなずいた。
そして、謎の卵退治をハンターに依頼することにした。
商人の父に付いて回って色々な町に出かけたことがあるマリー。
リアルブルーの文化についても聞く機会があり、何度か「へぇ」と思ったこともあったが、それで終わりだった。
最近興味をそそられたのはイースターという祭りついてだった。復活祭というとか、日付が移動するとかそういった細かいところも説明されたがどうでもよく、殻を色づけしたゆで卵を隠して探すという遊びが気になった。
卵に絵を描くことなんてしたことないため、単純に楽しそうとマリーは思った。
隠して探してもらうとなると、人員が必要だ。しかし、ガサツな子たちは誘いたくない。
悩まず浮かぶのはたった一人。
近所の遊び相手の中の一人であるがマイクは知的だし、しっかりしているし、見た目は地味だけれど誠実を絵にかいたような子だ。ちょっとのんびりしているところや、鈍すぎるところ等々欠点もあるけれど、マリーの目から見てマイクはとてもすてきだ。
かといって、マイク独り誘うのは難しい。
彼の家は両親が一生懸命働き、長男のマイクが弟妹四人の面倒をみているから。
「ま、あの家の子たちはしかたがないわ。大切な家族なんだもの。それにマイクが面倒見ているから、いい子たちだし。マイクとその妹と弟以外が来なければいいのよ」
ゆで卵を何個隠すか悩んだ結果、マイクと弟妹分として五個にした。
おやつにちょうどいいだろうしとマリーは我ながらの配慮にうなずく。
台所で卵を茹で、そして絵を描く。
卵の殻に模様を描く作業は思っていた以上に楽しかった。父親に褒められてなお一層力が入る。
五個のうち一つは非常に出来がよく、できればマイクに見つけてもらいたいなと本番となる翌日を楽しみにしていた。
運よくこの日、町はずれの空地に集まったのは自分とマイクの弟妹だけだった。
マリーはイースターの説明をして、卵隠したから見付けてというと、突然湧いた宝さがしに小さい子たちは歓声を上げた。
一つ二つと見つかっていき、三十分もすれば、最後の一つを見つけるだけとなる。キャーキャー言いながら探していた子たちだったが、一人一個ずつ卵を手にしてから、動きが鈍くなった。
マイクの弟妹に最後の一個はどうでもいいという雰囲気が漂う。
マイクが一生懸命探すが、どうしても見つからない。
夕方になっても見つからない。
「なんで、なんでないのよ!」
マリーは癇癪を起した。
「どこに隠したか覚えていないの?」
マイクが優しく念のため尋ねるが、マリーは首を横に振った。
「だって、覚えていたところにないのよ?」
「猫や鳥が持って行ったのかもしれないよ」
ここで遊んでいる間、野良猫も鳥も見なかった。しかし、目を少し離したすきに持って行かれた可能性だってあろう。
マイクの推論にマリーはうなずく。
「そうね……。残念だけど遊びはここまでね」
「うん、残念だったよ。マリーがどんな模様を書いたか楽しみだったのに」
マリーはぱっと顔を赤くして笑顔になった。
「そ、そうよ、本当に残念よ! あんなに素敵な模様が書けたのに」
「うん。ゆで卵だから、腹ペコ猫が食べて満足したかもしれないね」
「そうね……」
再び萎れるマリー。
「マリーおねーちゃん、またね~」
マイクは見つけられなかったけれど、四人の小さい子たちは見つけて笑顔で卵を握っている。
「きれいでもったいないからとってるなんてしないで、ちゃんと中身食べてよね!」
「うん」
マイクも楽しそうだったので、マリーは見つからなかった卵のことは忘れ、家に帰った。
●忘れられたイースターエッグ
子どもが遊ぶ空地の隅に何かあることにマリーは気付いた。
ピンクに彩色され、茶色のひし形や黄色い花の模様が描かれている卵型の物体。
棒で突いてみたが特に反応はなかった。
動かそうにも動かない。
「……この模様どこかで見覚えがあるわ」
ああ、数日前置いたイースターエッグ。
「でもこんなに大きくなかったっ!」
元々鶏の卵であったのが、現在ダチョウの卵の大きさである。
「マイク、どうしよう!」
弟妹を連れて空地にやってきたマイクは突然の言葉に首をかしげた。手招きされて近づくと、妙な物体を目にする。
「これは何?」
「あの日あたしが隠したイースターエッグよ! あなたが見つけてくれればこんなことにならなかったのに!」
「え? 僕のせい?」
場所を忘れたのは君だよね、という言葉をぐっと飲み込む大人なマイク。
「マリーおねえちゃんが、わすれたんだよ」
まあ弟妹は黙っておらず正しい言葉を突き付けた。マリーは顔を真っ赤にして怒っているが、さすがに怒鳴るというような態度には出られない。
「お父さんに相談してくる」
マリーは家に駆けこんだ。
マイクはとりあえず、その得体のしれない物体を観察し、弟妹を近づけないようにした。
気のせいかじわじわと大きくなっている?
「お兄ちゃん、これ大きくなった?」
「……」
マイクは冷や汗があふれるのを感じた。
どう考えてもろくでもない物だ。
この後、大人たちが来て、動かそうとしたり、土を掘ってみたり、ハンマーで割ってみようとした。
どれも不発。
「明日になったら変わっているかも」
「変わっていないね」
大人たちも子供たちも誰かが言ったこの一言にうなずいた。
「いや、大きくなったから変わったよな」
誰かが言いかえている。大きさは変わったが、状況は変わらない、どちらも正しいつぶやき。
大きさは、マイクやマリーの身長を越えている。
「ハンターに頼む?」
商人のつぶやきに、大人たちはこくりとうなずいた。
そして、謎の卵退治をハンターに依頼することにした。
リプレイ本文
●巨大卵を観察
村人が不安そうに空地の入口から見守る中、派遣されたハンターたちは対象の観察を始める。
空地の真ん中でもなく、奥というほどでもない所に明るい模様の入った巨大卵は堂々と立っている。鶏の卵サイズでまま草むらにあった場合、目印がないと探せない状況が生じる、中途半端な位置だった。
「イースターのお祭りはあんまり中国ではやらないアルが……まあ、風習が雑魔の行動パターンにそれほど影響あるとは思えないし、普通にどついて対処するアルか……」
李 香月(ka3948)は巨大卵と対面し、用心深く観察し、殻に触れてみる。叩いてみると、ヒビが入ってきているとはいえかなり硬いし、下半分はみっちりと詰まっているような音が返ってくる。
「俺はリュー。リュー・グランフェスト(ka2419)だ。よろしくな。それにしても、人騒がせな卵もあったもんだ……」
リューはさわやかに挨拶した後、どうするのがいいのか考える。中身が鳥の形をしていた場合、飛ばれる前にとどめを刺すのが最善だろう。
レティシア・キノーレル(ka4440)は堂々と構える卵に目を見開いた。
「おっきい卵だなあ。僕と同じくらいあるんじゃない?」
レティシアは卵の横に並んでみる。高さが同じ位でも幅が異なるため、細身のレティシアは非常に小さく見える。
シグ・ハンプティ(ka3900)は微笑みながらつぶやく。
「はて、さて、はて、毀れた卵の殻を意味する私が卵を毀すこととなるとは、いやはや、皮肉を通り越して喜劇と呼ぶべきことでしょう」
自嘲する口調ではあるが、観察するまなざしは冷静で的確に状況を読み取っているようであった。
岩井崎 旭(ka0234)は色々な思いで卵を見つめる。
(雑魔化するにしたって、もっとマシなのがあるだろ!)
ミミズクの精霊と契約しているためか、覚醒状態になると鳥人間になる。そのため、鳥に属する可能性のある雑魔を倒すのは気が引ける。いや、雑魔を倒すことに躊躇はないが、見た目で何かもやもやする気持ちが生じる。
卵を突いてみたり触ったりしつつ、ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)はきりっとした顔となった。
「これは、まあ巨大な卵だな。中から何が出てくるか気になる所だが、雑魔であることは間違いないだろう。何とかしなければな」
民衆のため、不安材料であるこの卵は取り除かねばと力強くうなずく。
ハンターたちが観察している間にも、殻の内側から「コツコツ」という音もする。中の何かが大きくなっており、孵化する直前なのかもしれない。
「……! 音がする。やっぱり鳥が出てくるのかな?」
レティシアは何が出てくるのか楽しみでいた。もちろん中身が雑魔だと分かっているため、このまま倒せれば一番いいとも理解しているが好奇心は別だ。
「確かに気になるかもしれない」
旭は複雑な思いのまま卵を見る。
「さて、さて、さて、卵が雑魔なんでしょうか、中身も雑魔なんでしょうか?」
シグは首をかしげる。
「どちらが雑魔でもいいアル。倒すアル」
香月のシンプルな言葉に、その通りだ、とそれぞれ小さくうなずく。
「殻から完全に出てくる前にたたくのが一番な気がするぞ」
「そうだな、飛ばさないようにするのが第一だ」
ディアドラとリューは空地の外を見る。村人が通りすがりを装い散っていき、子どもが塀の陰に隠れるのが見えた。気になるのは仕方がないし、状況を知る権利はあるのだ。
一方で、雑魔が空地の外に出ていくと被害が広がるのは明らかだ。
ハンターたちは意見を出しつつ、卵の火あぶりが実行されることとなった。
●負荷で孵化
薪、木材、ロープや油、網を用意。
もちろん、もしものために、消火用に水もしっかり用意。
できれば燃えない網が欲しかったが、残念ながら難しかった。一応、包めるくらいの普通の網が用意する。投網や投げ縄といった要領で、卵の中身が動いたときに使うことはできる。
卵の周りに薪を積み、木材も卵の固定のために配置した。
燃え移らないように草は刈り取り、土を掘って山の形にして火が飛ぶのを避けようとしたり、準備を万全に整える。
シグは用心のために水をかぶった、ちょっとまだ寒いかもしれないが。
ロープを格子状に重ねて縛り、簡単な網状にしてから卵に掛けた。そのロープの下には大き目の石を縛って重りにし、卵からずれにくいようにする。そして、ロープに油をしこたましみこませる。
運が良ければ雑魔はこのまま焼け死んでくれる。
運が悪いとロープが燃え切る前に動き回る。そうなると火が飛び散るかもしれない。
火をかけると網をすぐにかけられないから、逃がさないのは大変かもしれない。
最悪も最善も考え、いざハンターたちは卵の周りに陣取る。もしも雑魔が逃げようとしても叩き潰すために。
「さて、では、では、火を掛けますよ」
シグが火のついた松明を、薪や油に付けるようにまんべんなく振りかざし、最後は卵のてっぺんに投げ乗せた。
ゴッ。
ものすごい勢いで火は卵を包んだ。
大人から「おおっ」と声が上がり、子供からは楽しそうに騒ぐ声が上がる。
暑い。
火の近くにいるハンターは非常に暑い。
盾を構えディアドラは剣をいつでも抜けるようにし、じっと炎を見つめる。
リューは網を近くの木にロープでつなぎ、殻を破って出てきたモノに素早く掛けられるよう構えた。
普段の武器が修理中なため、素手や予備の武器で少し不安もある香月は、卵に目を向けたまま、体の動かし方をチェックする。ちょうどいいウォーミングアップになるはず。
レティシアは少し離れたところで、矢をつがえて射る準備をした。
(火あぶり、ちょっと可哀そうかも)
優しいこともレティシアは考えるが、相手は雑魔だ、手加減無用であると自身で突っ込む。
松明を手放した後、シグも銃を抜き適度な射程を作り待つ。
ゴースロンのシーザーに騎乗して、旭は覚醒状態を維持し孵化を待つ。雑魔に突破されると空地の外に出してしまう場所に陣取っている。万全な準備と、逃がすことは絶対にしないという気迫は十分だ。
旭はミミズクのような相貌で卵を見つめるが、その目はどこか悲しげである。雑魔だから卵が焼かれるのは仕方がない、卵を火あぶりにするのは忍びない。
それからしばらく経って、火の勢いが収まり、くすぶり始める。
ハンターたちは汗ばみ、水浴びは気持ちいかもしれないと考えるような状況になっていた。
そして、炭化した卵が一つできた。
「おおい!」
覚醒状態で待っていた、やり場のないやる気に旭は声を上げた。
「はて、はて、さて……世の中なかなか思うようにいかないようですね」
シグは普段と変わらぬ表情、笑顔で卵を見つめる。
「あれ? でも、ヒビが増えてきてない?」
レティシアが言うように、黒い卵に白い線が増えてきている。
「なら、網をかけて少しでも被害を食い止める」
リューは網を掛ける前に水を掛けることにする。火は消えているようだから燃えはしないだろうが不安のある温度。
「ボクたちも消火したほうがいいな」
ディアドラ達も卵を見つつ、水を卵にぶっかける。相当熱かったようで、ジュという音も聞こえた。
程よく水に濡れた卵に、リューは網を放った。木とロープをつないだところと彼が掴んでいるところが対角線上になるように持つ。
「妾も持つアル」
前衛になる香月も網を抑えた。三か所で抑えられた網では、中にいる物はほぼ逃げられない。無論、卵の大きさに反して網より小さい生き物が出てくると言ったことや、中身の力が非常に大きくない限り。
「ふむ、全力で攻撃する準備だな」
ディアドラは盾を持たぬ方の手に剣を握った。
パリン。
「コッケェェェェエ!」
殻が破られ、くちばしが出てきた。
●跳んでやるぜ!
殻が割れて頭が出てきたのはヒヨコの頭である。
「焼き菓子にはなってないんだ……」
旭は焼かれたひよこというイメージから、リアルブルーで食べた菓子を思い出していた。残念なことに、殻が頑丈だったため、中身は焦げてすらいないように見える。
ヒヨコの上半身は網に遮られ、激しく悶えている。
「今のうちだ」
ディアドラは号令を出すが、網があるために叩き斬るような攻撃はできない。自ら網を破る行為はしたくなかった、弱ってもいない雑魔が逃げる危険性が高くなるから。
シグとレティシアがそれぞれ全力で銃弾、矢を放つ。
「コケー!!!」
ヒヨコの上半身は悲鳴であり怒りである声をあげ、下半身についている殻を取ろうと激しくついばむ。
網を切ってしまうが、このまま動けないうちに狙うか否か。
網を外した後、逃げられてしまう可能性、確実にとどめを刺していける可能性。
これらをハンターたちは素早く選択しないとならない。
「コッッケェェェェェ」
うまく動けないなりにヒヨコ雑魔は跳んで動こうとする。
動くと足元の殻が地面とぶつかり砕けていた。
「くっ、引きずられる」
「頑張るアル」
リューと香月は冷や汗をかきながら、網を引き押さえる。もう一端で押さえている木がみしみしいっている。
「茶色……な足元……足?」
旭は雑魔に突撃する準備をしつつ、観察しながら困惑した。
炎が中身に影響があった可能性をうかがわせる色を下半身はしている。卵の殻がとれたところは、ゆで卵のような形であったが、白ではなく焦げたらしく焦げ茶色。殻と接していたためになったのだろうと推測できそうだ。
網の下でびょこびょこと跳ねるヒヨコ雑魔。
「はて、あれ、はて、狙いにくいですね」
少しずつでもダメージを積み上げるシグが引き金を絞るのをやめた。
「うん、ちょっと難しい」
レティシアも矢をつがえたまま動かない。
下手をすれば仲間に当たる。
「いっそのこと、一度放してみるか?」
網を切りそうでうまく突けないディアドラが提案する。
「網を離した瞬間、一斉に攻撃……」
旭は待ってましたとばかりに、武器を構える。
「むしろ、絡め捕ったまま全力攻撃でいいんじゃないか」
リューが考えたのはどのタイミングで飛び跳ねるかの差である。網を離した所で、網がかかったまま動く状況になるのは否めない。
「なら、行くぞ」
旭はシーザーを駆り、気合と共にギガースアックスをヒヨコ雑魔に振り下ろした。
リューは網を引っ張りつつ低い音を響かせる振動刀で斬りつける。
「ボクだって、やー」
正面に回り込みつつ雑魔の頭を狙って、ディアドラが気合と共に跳びあがり剣を振り下ろす。
「行くアル! アチョー」
網を掴んだまま香月の拳がたたきこまれる。
射撃武器を持つ二人は乱戦状態で手を出せないが、ヒヨコ雑魔が逃げるだろう方向に銃口や弓を向ける。
「コケー」
破れた網から飛び出したヒヨコ雑魔は痛みのためか、高く跳んだ。
シグとレティシアの攻撃がヒヨコ雑魔に向かう。
雑魔は満身創痍に見えるが、しぶとく着地する。
「はああああ」
側に下りた雑魔に対し、旭は空地の奥に吹き飛ばすように武器を振るう。しかし、起き上がりこぼしが転ぶように雑魔がさけた。
「次っ」
リューが転がってきた雑魔に袈裟切りに刀を振るうが、反動で転がるように直前で雑魔が避ける。
「意外としぶといな」
ディアドラは雑魔の正面に回り込むと盾を構えつつ、剣を振るった。脚と思われるゆで卵部分に深々と剣が刺さった。
「コケ、コケー」
「はぁぁあ」
わめくヒヨコ雑魔に香月が気合と共に攻撃を叩きこんだ。
雑魔は輪郭を失い、塵から闇に還るように消えていった。消えるのは一瞬……儚い。
●チョコレートの魔法
雑魔が消えたとき、こっそり見ていた村人たちから歓声が上がった。
「良かった……」
半泣きになりながらマリーがつぶやく。自分が置いた卵が原因だったらと思うと不安で仕方がなかったに違いない。
「そうだね」
マイクがマリーを慰めるため、弟妹にするようにマリーの肩を抱いた。
「そ、そうよ! お父さんが頼んだハンターだもの! 心配なんて一つもないのよ!」
マイクからするりと抜けるようにマリーは離れた。顔は真っ赤である。
「何事もなくて良かったぜ」
リューはにこりと笑いかけたがマリーにそっぽうを向かれた。
「淀みがたまりやすかったんだろうなぁ。そこにちょうど居心地のいいものとして卵があった?」
そして今に至ると、旭は推測する。殻が雑魔か中身が雑魔かと小さい論争もあったが、卵が雑魔なんだからどっちも雑魔。
「卵が雑魔化したのも偶然。むしろ、殻があったから楽に倒せたんだしな」
リューの言葉にマリーはちらり視線を戻し、頬を膨らませている。
「な、なによ!」
慰めてくれていることぐらいマリーだって分かっている。
「きっかけと結果だ。別にマリーが悪いわけではないからそんな顔をするな」
ディアドラはにっこりと笑顔を見せる。
言葉は尊大そうだが優しい温かい響きを持っていたし、年が近いディアドラにずばっと言われ、マリーも素直にうなずいた。
「じゃ、お疲れ、お疲れ! チョコレートでも食べる? 卵、ダメになっちゃたから、代わりに」
レティシアが荷物からチョコレートを取り出し提案した。
「イースターのチョコレートはウサギの形をしていると聞いたことアルよ?」
「さすがに、そこまでは!」
「ふふ、冗談アル。チョコレートはおいしい。マリーも笑顔になるネ」
香月は口元をゆるめて笑った。
「そういう風習があるってことは、次はウサギ型チャレンジ? 可愛いかも」
レティシアも笑顔でチョコレートを手渡す。
マリーはもらったチョコレートを口に含む。広がった甘さにほっと気が緩み、微笑んだ。これまでの不安も吹き飛ぶ優しさがチョコレートにはあったし、ハンターたちの優しい心にも触れて安堵した。
「はて、はて、はて、チョコレートにあるのはどんな魔法でしょうか?」
シグの言葉にマリーは自分がどんな顔を見せたのか気付き、キッと睨み付ける。しかし、マイクが楽しそうなのを見て自然と笑みがこぼれた。
村人が不安そうに空地の入口から見守る中、派遣されたハンターたちは対象の観察を始める。
空地の真ん中でもなく、奥というほどでもない所に明るい模様の入った巨大卵は堂々と立っている。鶏の卵サイズでまま草むらにあった場合、目印がないと探せない状況が生じる、中途半端な位置だった。
「イースターのお祭りはあんまり中国ではやらないアルが……まあ、風習が雑魔の行動パターンにそれほど影響あるとは思えないし、普通にどついて対処するアルか……」
李 香月(ka3948)は巨大卵と対面し、用心深く観察し、殻に触れてみる。叩いてみると、ヒビが入ってきているとはいえかなり硬いし、下半分はみっちりと詰まっているような音が返ってくる。
「俺はリュー。リュー・グランフェスト(ka2419)だ。よろしくな。それにしても、人騒がせな卵もあったもんだ……」
リューはさわやかに挨拶した後、どうするのがいいのか考える。中身が鳥の形をしていた場合、飛ばれる前にとどめを刺すのが最善だろう。
レティシア・キノーレル(ka4440)は堂々と構える卵に目を見開いた。
「おっきい卵だなあ。僕と同じくらいあるんじゃない?」
レティシアは卵の横に並んでみる。高さが同じ位でも幅が異なるため、細身のレティシアは非常に小さく見える。
シグ・ハンプティ(ka3900)は微笑みながらつぶやく。
「はて、さて、はて、毀れた卵の殻を意味する私が卵を毀すこととなるとは、いやはや、皮肉を通り越して喜劇と呼ぶべきことでしょう」
自嘲する口調ではあるが、観察するまなざしは冷静で的確に状況を読み取っているようであった。
岩井崎 旭(ka0234)は色々な思いで卵を見つめる。
(雑魔化するにしたって、もっとマシなのがあるだろ!)
ミミズクの精霊と契約しているためか、覚醒状態になると鳥人間になる。そのため、鳥に属する可能性のある雑魔を倒すのは気が引ける。いや、雑魔を倒すことに躊躇はないが、見た目で何かもやもやする気持ちが生じる。
卵を突いてみたり触ったりしつつ、ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)はきりっとした顔となった。
「これは、まあ巨大な卵だな。中から何が出てくるか気になる所だが、雑魔であることは間違いないだろう。何とかしなければな」
民衆のため、不安材料であるこの卵は取り除かねばと力強くうなずく。
ハンターたちが観察している間にも、殻の内側から「コツコツ」という音もする。中の何かが大きくなっており、孵化する直前なのかもしれない。
「……! 音がする。やっぱり鳥が出てくるのかな?」
レティシアは何が出てくるのか楽しみでいた。もちろん中身が雑魔だと分かっているため、このまま倒せれば一番いいとも理解しているが好奇心は別だ。
「確かに気になるかもしれない」
旭は複雑な思いのまま卵を見る。
「さて、さて、さて、卵が雑魔なんでしょうか、中身も雑魔なんでしょうか?」
シグは首をかしげる。
「どちらが雑魔でもいいアル。倒すアル」
香月のシンプルな言葉に、その通りだ、とそれぞれ小さくうなずく。
「殻から完全に出てくる前にたたくのが一番な気がするぞ」
「そうだな、飛ばさないようにするのが第一だ」
ディアドラとリューは空地の外を見る。村人が通りすがりを装い散っていき、子どもが塀の陰に隠れるのが見えた。気になるのは仕方がないし、状況を知る権利はあるのだ。
一方で、雑魔が空地の外に出ていくと被害が広がるのは明らかだ。
ハンターたちは意見を出しつつ、卵の火あぶりが実行されることとなった。
●負荷で孵化
薪、木材、ロープや油、網を用意。
もちろん、もしものために、消火用に水もしっかり用意。
できれば燃えない網が欲しかったが、残念ながら難しかった。一応、包めるくらいの普通の網が用意する。投網や投げ縄といった要領で、卵の中身が動いたときに使うことはできる。
卵の周りに薪を積み、木材も卵の固定のために配置した。
燃え移らないように草は刈り取り、土を掘って山の形にして火が飛ぶのを避けようとしたり、準備を万全に整える。
シグは用心のために水をかぶった、ちょっとまだ寒いかもしれないが。
ロープを格子状に重ねて縛り、簡単な網状にしてから卵に掛けた。そのロープの下には大き目の石を縛って重りにし、卵からずれにくいようにする。そして、ロープに油をしこたましみこませる。
運が良ければ雑魔はこのまま焼け死んでくれる。
運が悪いとロープが燃え切る前に動き回る。そうなると火が飛び散るかもしれない。
火をかけると網をすぐにかけられないから、逃がさないのは大変かもしれない。
最悪も最善も考え、いざハンターたちは卵の周りに陣取る。もしも雑魔が逃げようとしても叩き潰すために。
「さて、では、では、火を掛けますよ」
シグが火のついた松明を、薪や油に付けるようにまんべんなく振りかざし、最後は卵のてっぺんに投げ乗せた。
ゴッ。
ものすごい勢いで火は卵を包んだ。
大人から「おおっ」と声が上がり、子供からは楽しそうに騒ぐ声が上がる。
暑い。
火の近くにいるハンターは非常に暑い。
盾を構えディアドラは剣をいつでも抜けるようにし、じっと炎を見つめる。
リューは網を近くの木にロープでつなぎ、殻を破って出てきたモノに素早く掛けられるよう構えた。
普段の武器が修理中なため、素手や予備の武器で少し不安もある香月は、卵に目を向けたまま、体の動かし方をチェックする。ちょうどいいウォーミングアップになるはず。
レティシアは少し離れたところで、矢をつがえて射る準備をした。
(火あぶり、ちょっと可哀そうかも)
優しいこともレティシアは考えるが、相手は雑魔だ、手加減無用であると自身で突っ込む。
松明を手放した後、シグも銃を抜き適度な射程を作り待つ。
ゴースロンのシーザーに騎乗して、旭は覚醒状態を維持し孵化を待つ。雑魔に突破されると空地の外に出してしまう場所に陣取っている。万全な準備と、逃がすことは絶対にしないという気迫は十分だ。
旭はミミズクのような相貌で卵を見つめるが、その目はどこか悲しげである。雑魔だから卵が焼かれるのは仕方がない、卵を火あぶりにするのは忍びない。
それからしばらく経って、火の勢いが収まり、くすぶり始める。
ハンターたちは汗ばみ、水浴びは気持ちいかもしれないと考えるような状況になっていた。
そして、炭化した卵が一つできた。
「おおい!」
覚醒状態で待っていた、やり場のないやる気に旭は声を上げた。
「はて、はて、さて……世の中なかなか思うようにいかないようですね」
シグは普段と変わらぬ表情、笑顔で卵を見つめる。
「あれ? でも、ヒビが増えてきてない?」
レティシアが言うように、黒い卵に白い線が増えてきている。
「なら、網をかけて少しでも被害を食い止める」
リューは網を掛ける前に水を掛けることにする。火は消えているようだから燃えはしないだろうが不安のある温度。
「ボクたちも消火したほうがいいな」
ディアドラ達も卵を見つつ、水を卵にぶっかける。相当熱かったようで、ジュという音も聞こえた。
程よく水に濡れた卵に、リューは網を放った。木とロープをつないだところと彼が掴んでいるところが対角線上になるように持つ。
「妾も持つアル」
前衛になる香月も網を抑えた。三か所で抑えられた網では、中にいる物はほぼ逃げられない。無論、卵の大きさに反して網より小さい生き物が出てくると言ったことや、中身の力が非常に大きくない限り。
「ふむ、全力で攻撃する準備だな」
ディアドラは盾を持たぬ方の手に剣を握った。
パリン。
「コッケェェェェエ!」
殻が破られ、くちばしが出てきた。
●跳んでやるぜ!
殻が割れて頭が出てきたのはヒヨコの頭である。
「焼き菓子にはなってないんだ……」
旭は焼かれたひよこというイメージから、リアルブルーで食べた菓子を思い出していた。残念なことに、殻が頑丈だったため、中身は焦げてすらいないように見える。
ヒヨコの上半身は網に遮られ、激しく悶えている。
「今のうちだ」
ディアドラは号令を出すが、網があるために叩き斬るような攻撃はできない。自ら網を破る行為はしたくなかった、弱ってもいない雑魔が逃げる危険性が高くなるから。
シグとレティシアがそれぞれ全力で銃弾、矢を放つ。
「コケー!!!」
ヒヨコの上半身は悲鳴であり怒りである声をあげ、下半身についている殻を取ろうと激しくついばむ。
網を切ってしまうが、このまま動けないうちに狙うか否か。
網を外した後、逃げられてしまう可能性、確実にとどめを刺していける可能性。
これらをハンターたちは素早く選択しないとならない。
「コッッケェェェェェ」
うまく動けないなりにヒヨコ雑魔は跳んで動こうとする。
動くと足元の殻が地面とぶつかり砕けていた。
「くっ、引きずられる」
「頑張るアル」
リューと香月は冷や汗をかきながら、網を引き押さえる。もう一端で押さえている木がみしみしいっている。
「茶色……な足元……足?」
旭は雑魔に突撃する準備をしつつ、観察しながら困惑した。
炎が中身に影響があった可能性をうかがわせる色を下半身はしている。卵の殻がとれたところは、ゆで卵のような形であったが、白ではなく焦げたらしく焦げ茶色。殻と接していたためになったのだろうと推測できそうだ。
網の下でびょこびょこと跳ねるヒヨコ雑魔。
「はて、あれ、はて、狙いにくいですね」
少しずつでもダメージを積み上げるシグが引き金を絞るのをやめた。
「うん、ちょっと難しい」
レティシアも矢をつがえたまま動かない。
下手をすれば仲間に当たる。
「いっそのこと、一度放してみるか?」
網を切りそうでうまく突けないディアドラが提案する。
「網を離した瞬間、一斉に攻撃……」
旭は待ってましたとばかりに、武器を構える。
「むしろ、絡め捕ったまま全力攻撃でいいんじゃないか」
リューが考えたのはどのタイミングで飛び跳ねるかの差である。網を離した所で、網がかかったまま動く状況になるのは否めない。
「なら、行くぞ」
旭はシーザーを駆り、気合と共にギガースアックスをヒヨコ雑魔に振り下ろした。
リューは網を引っ張りつつ低い音を響かせる振動刀で斬りつける。
「ボクだって、やー」
正面に回り込みつつ雑魔の頭を狙って、ディアドラが気合と共に跳びあがり剣を振り下ろす。
「行くアル! アチョー」
網を掴んだまま香月の拳がたたきこまれる。
射撃武器を持つ二人は乱戦状態で手を出せないが、ヒヨコ雑魔が逃げるだろう方向に銃口や弓を向ける。
「コケー」
破れた網から飛び出したヒヨコ雑魔は痛みのためか、高く跳んだ。
シグとレティシアの攻撃がヒヨコ雑魔に向かう。
雑魔は満身創痍に見えるが、しぶとく着地する。
「はああああ」
側に下りた雑魔に対し、旭は空地の奥に吹き飛ばすように武器を振るう。しかし、起き上がりこぼしが転ぶように雑魔がさけた。
「次っ」
リューが転がってきた雑魔に袈裟切りに刀を振るうが、反動で転がるように直前で雑魔が避ける。
「意外としぶといな」
ディアドラは雑魔の正面に回り込むと盾を構えつつ、剣を振るった。脚と思われるゆで卵部分に深々と剣が刺さった。
「コケ、コケー」
「はぁぁあ」
わめくヒヨコ雑魔に香月が気合と共に攻撃を叩きこんだ。
雑魔は輪郭を失い、塵から闇に還るように消えていった。消えるのは一瞬……儚い。
●チョコレートの魔法
雑魔が消えたとき、こっそり見ていた村人たちから歓声が上がった。
「良かった……」
半泣きになりながらマリーがつぶやく。自分が置いた卵が原因だったらと思うと不安で仕方がなかったに違いない。
「そうだね」
マイクがマリーを慰めるため、弟妹にするようにマリーの肩を抱いた。
「そ、そうよ! お父さんが頼んだハンターだもの! 心配なんて一つもないのよ!」
マイクからするりと抜けるようにマリーは離れた。顔は真っ赤である。
「何事もなくて良かったぜ」
リューはにこりと笑いかけたがマリーにそっぽうを向かれた。
「淀みがたまりやすかったんだろうなぁ。そこにちょうど居心地のいいものとして卵があった?」
そして今に至ると、旭は推測する。殻が雑魔か中身が雑魔かと小さい論争もあったが、卵が雑魔なんだからどっちも雑魔。
「卵が雑魔化したのも偶然。むしろ、殻があったから楽に倒せたんだしな」
リューの言葉にマリーはちらり視線を戻し、頬を膨らませている。
「な、なによ!」
慰めてくれていることぐらいマリーだって分かっている。
「きっかけと結果だ。別にマリーが悪いわけではないからそんな顔をするな」
ディアドラはにっこりと笑顔を見せる。
言葉は尊大そうだが優しい温かい響きを持っていたし、年が近いディアドラにずばっと言われ、マリーも素直にうなずいた。
「じゃ、お疲れ、お疲れ! チョコレートでも食べる? 卵、ダメになっちゃたから、代わりに」
レティシアが荷物からチョコレートを取り出し提案した。
「イースターのチョコレートはウサギの形をしていると聞いたことアルよ?」
「さすがに、そこまでは!」
「ふふ、冗談アル。チョコレートはおいしい。マリーも笑顔になるネ」
香月は口元をゆるめて笑った。
「そういう風習があるってことは、次はウサギ型チャレンジ? 可愛いかも」
レティシアも笑顔でチョコレートを手渡す。
マリーはもらったチョコレートを口に含む。広がった甘さにほっと気が緩み、微笑んだ。これまでの不安も吹き飛ぶ優しさがチョコレートにはあったし、ハンターたちの優しい心にも触れて安堵した。
「はて、はて、はて、チョコレートにあるのはどんな魔法でしょうか?」
シグの言葉にマリーは自分がどんな顔を見せたのか気付き、キッと睨み付ける。しかし、マイクが楽しそうなのを見て自然と笑みがこぼれた。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
---|
面白かった! | 4人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 シグ・ハンプティ(ka3900) 人間(クリムゾンウェスト)|22才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2015/04/16 00:11:32 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/04/14 23:23:30 |