ゲスト
(ka0000)
想い出という名の宝物
マスター:瑞木雫

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/04/16 22:00
- 完成日
- 2015/04/25 08:15
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
⚫︎絶世の美少女、あらわる
「ちょっと宜しいかしらぁ?」
美しく澄んでいて、甘く可愛らしいおっとりした声が呼び止める。
「ほぇ?」
間の抜けた返事をしてしまったハンターソサエティの新人職員は、声の主の方へと振り向いた。
するとどうしたことか。女でさえ思わず胸をときめかせてしまいそうな、愛らしい美貌を持つゴールデンブロンドの美少女が上目遣いでこちらをじっと見ているではないか。
(「かっ……かわいい……っ!」)
きゅんっ。
お人形さんみたい――――……なんて呑気にほわわんと見惚れてしまうのは仕方ない。
本当にそれ程可愛らしすぎるお嬢様だったのだ。
●大切な落し物
――――昨日のこと。
隣町での用が終え、馬車で帰路についていた時。お嬢様一行は街道の途中の泉で少し休憩していたのだという。
するとしばらくして。不穏な空気が漂ったことに、優秀な爺やは気付いた。
雑魔だ。
「お嬢様!早く!」
「きゃあ!」
爺やは緊急事態ゆえに少々強引にお嬢様を引き寄せ、馬車へと押し込んだ。おっとりしたお嬢様にはこの危機的状況についていけずおろおろと硬直していて、そうする間にも馬は猛スピードで走る。
不安になって背後を気にすると、雑魔が追ってきていた。しかし段々と遠くなって、やがて雑魔が諦め立ち尽くしたのを確認できるだろう。
察知したのが早かったのも幸いし、逃げ切ることができたようだ。
みんな無事で、怪我もない。ほっと一息ついた、その瞬間。
「あ!」
お嬢様はある事に気付く。
「ブローチが無い……! きっとさっき落としてしまったのですわ!」
「ブローチ……」
こくこく、とうなずくお嬢様。
「戻りましょう……っ」
「いけません」
「では、また後に……っ、取りに戻りましょうっ」
「…………」
爺やは暫く沈黙して、そして首を横に振った。
「全く同じものを明日手配します。それで御容赦ください」
「っ!」
きっと爺やは、お嬢様を危険な目に合わせたくないのだ。それは蝶よ花よと今迄大切にされてきた分、わかるのだが…………。
「だって……あれは、……」
(――――あなたが、)
…………何かを言いかけて、
「もういいわ!」
フンっ!と、大きくそっぽをむいた。
傷付けられて傷付けられて、とても悲しい……っていう顔だ。
「……」
そしてそれからはこれ以上言葉を交わさずに、沈黙がずっと続いたらしい。
⚫︎とってもおませなお嬢様
「―――というわけなのです。今回お願いしたいのは依頼主の護衛です。街道の道中にある泉の近場でブローチを回収し戻ってくるまでの同行をお願いいたします。その街道……なにかと物騒ですからね。しっかり守ってあげてください……!」
新人職員はハンター達に向けてキリっと概要を伝えた。
ただ只管に隣町へと続く広大な街道であり、一般人はあまり通行することがない場所だった。元々下級の雑魔が発生しやすいようで、今迄にも目撃情報が確認されていてその都度退治されてはきているものの、安全とは言い難い街道だ。
心配する爺やの気持ちを汲み取るように、新人職員も辞めたほうがいいのではと何度も諭したが、依頼を引き受けてくれないなら自分だけでも行くと言って聞かない上に、どうしても自分の目で確かめて回収しないと嫌だと言い張るので、やむを得なく承諾したのである。
「というわけで、紹介しますね。今回の依頼主であるレイリーちゃんですっ」
新人職員がそう言うと、その隣で華やいだ存在感を放っていた少女が艶やかな微笑みを浮かべた。
「御機嫌よう、レイリーですわ。さっき職員さんがおっしゃって頂いたように、あなた方に護衛をお頼みしたいのだけれど……」
大人びて心地のいい美声を奏でる美少女。思わずうっとり聞き惚れてしまいそうになるのも束の間。
「わたくし、待ちくたびれてしまいましたわ」
ふん、っと不機嫌を漂わせながら言い放つ。
「!?」
それにビクッと慌てる新人職員の言葉を、
「あ、えっと、レイリーちゃ……」
「準備が整いましたらすぐに出発よっ。日が暮れるまでにはわたくし、家に帰りたいですわ」
遮ってツンツンと続けた。
一連のやりとりを見て察しがつくだろう。このお嬢様、ちょっと我儘らしい。
――――これはもしかして、もしかすると。
貴方達ハンターは、厄介な依頼主に当たってしまったかもしれない。
「ちょっと宜しいかしらぁ?」
美しく澄んでいて、甘く可愛らしいおっとりした声が呼び止める。
「ほぇ?」
間の抜けた返事をしてしまったハンターソサエティの新人職員は、声の主の方へと振り向いた。
するとどうしたことか。女でさえ思わず胸をときめかせてしまいそうな、愛らしい美貌を持つゴールデンブロンドの美少女が上目遣いでこちらをじっと見ているではないか。
(「かっ……かわいい……っ!」)
きゅんっ。
お人形さんみたい――――……なんて呑気にほわわんと見惚れてしまうのは仕方ない。
本当にそれ程可愛らしすぎるお嬢様だったのだ。
●大切な落し物
――――昨日のこと。
隣町での用が終え、馬車で帰路についていた時。お嬢様一行は街道の途中の泉で少し休憩していたのだという。
するとしばらくして。不穏な空気が漂ったことに、優秀な爺やは気付いた。
雑魔だ。
「お嬢様!早く!」
「きゃあ!」
爺やは緊急事態ゆえに少々強引にお嬢様を引き寄せ、馬車へと押し込んだ。おっとりしたお嬢様にはこの危機的状況についていけずおろおろと硬直していて、そうする間にも馬は猛スピードで走る。
不安になって背後を気にすると、雑魔が追ってきていた。しかし段々と遠くなって、やがて雑魔が諦め立ち尽くしたのを確認できるだろう。
察知したのが早かったのも幸いし、逃げ切ることができたようだ。
みんな無事で、怪我もない。ほっと一息ついた、その瞬間。
「あ!」
お嬢様はある事に気付く。
「ブローチが無い……! きっとさっき落としてしまったのですわ!」
「ブローチ……」
こくこく、とうなずくお嬢様。
「戻りましょう……っ」
「いけません」
「では、また後に……っ、取りに戻りましょうっ」
「…………」
爺やは暫く沈黙して、そして首を横に振った。
「全く同じものを明日手配します。それで御容赦ください」
「っ!」
きっと爺やは、お嬢様を危険な目に合わせたくないのだ。それは蝶よ花よと今迄大切にされてきた分、わかるのだが…………。
「だって……あれは、……」
(――――あなたが、)
…………何かを言いかけて、
「もういいわ!」
フンっ!と、大きくそっぽをむいた。
傷付けられて傷付けられて、とても悲しい……っていう顔だ。
「……」
そしてそれからはこれ以上言葉を交わさずに、沈黙がずっと続いたらしい。
⚫︎とってもおませなお嬢様
「―――というわけなのです。今回お願いしたいのは依頼主の護衛です。街道の道中にある泉の近場でブローチを回収し戻ってくるまでの同行をお願いいたします。その街道……なにかと物騒ですからね。しっかり守ってあげてください……!」
新人職員はハンター達に向けてキリっと概要を伝えた。
ただ只管に隣町へと続く広大な街道であり、一般人はあまり通行することがない場所だった。元々下級の雑魔が発生しやすいようで、今迄にも目撃情報が確認されていてその都度退治されてはきているものの、安全とは言い難い街道だ。
心配する爺やの気持ちを汲み取るように、新人職員も辞めたほうがいいのではと何度も諭したが、依頼を引き受けてくれないなら自分だけでも行くと言って聞かない上に、どうしても自分の目で確かめて回収しないと嫌だと言い張るので、やむを得なく承諾したのである。
「というわけで、紹介しますね。今回の依頼主であるレイリーちゃんですっ」
新人職員がそう言うと、その隣で華やいだ存在感を放っていた少女が艶やかな微笑みを浮かべた。
「御機嫌よう、レイリーですわ。さっき職員さんがおっしゃって頂いたように、あなた方に護衛をお頼みしたいのだけれど……」
大人びて心地のいい美声を奏でる美少女。思わずうっとり聞き惚れてしまいそうになるのも束の間。
「わたくし、待ちくたびれてしまいましたわ」
ふん、っと不機嫌を漂わせながら言い放つ。
「!?」
それにビクッと慌てる新人職員の言葉を、
「あ、えっと、レイリーちゃ……」
「準備が整いましたらすぐに出発よっ。日が暮れるまでにはわたくし、家に帰りたいですわ」
遮ってツンツンと続けた。
一連のやりとりを見て察しがつくだろう。このお嬢様、ちょっと我儘らしい。
――――これはもしかして、もしかすると。
貴方達ハンターは、厄介な依頼主に当たってしまったかもしれない。
リプレイ本文
●大切にする想い
「大丈夫です……僕達が必ず、見つけてみせます……」
マキナ・バベッジ(ka4302)はレイリーが沈んでいることに気付いて、言葉を掛けた。
沈んでいるのは落としてしまったというブローチを心配してのことだろう。
だからマキナは嬉しかった。―――道具を大切に、掛け替えのないものだと思って貰えて。
そしてその気持ちは、クレール(ka0586)にも。
「絶対、無事に探しあてましょうっ!」
鍛冶師として、物を作る人間として……、物を大切にしてくれるレイリーの想いに必ず応えたい。
真っすぐで揺るぎない、心の誓いだった。
しかしレイリーは照れてしまって、二人につんとした態度を取ってしまうけれど。
「よ、よろしく、お願いします!」
黒曜 葵璃瑚(ka3506)はハキハキと挨拶をするが、緊張をしていた。
なにせ大きな戦ではなくて個人の依頼を受けるのは初めてなのである。……だが実は、それだけではない。
(依頼主様、妾と同じ位の年…! しかも可愛い!)
葵璃瑚の出身部族には近い年齢の女子がいなかったのだ。
(お友達になりたいなぁ……)
そして、そんなふうに見つめる葵璃瑚と、レイリーも密かに想いは同じで。
友達になれるかしら……と、淡い期待を抱くのだった。
――馬車が到着し、さぁ、出発だという頃。
レイリーの悲鳴を聞いてクローディオ・シャール(ka0030)が何事かと様子を見てみると、蜂が一匹、飛んでいるのを確認した。
(なんだ、蜂か……)
「大丈夫だ。じっとしていれば刺されることはない」
「で、でも……っ」
大きな瞳を潤ませながら上目遣いで見つめるレイリー。
彼女は絶世の美少女。見惚れる男は五万と居るだろう。……だがクローディオにとって彼女はまだまだ子供で、見惚れるなんてあり得ない事だった。
だがそれでも蜂に怯えているのは見て取れたので、彼女を守るように遮りそっと導いて、馬車に乗せてあげることにする。―――すると。
(きゅん……!)
どうやらレイリーがクローディオに、ときめいたようだ。
「ふふ、顔が赤いよ? 綺麗なお嬢様」
シェリアク=ベガ(ka4647)が天真爛漫な笑顔で声を掛けると、レイリーはきゃあっと軽い悲鳴をあげた。とっても恥ずかしかったようである。
「君……じゃなかった、あなたが依頼人? 私が来たらもう安心、どーんと任せておいてっ」
因みに初仕事だけどね、と付け足しながらえへん、と言った。
街道は広大で、果てしなく道が続いていた。人の気配はなく、ただ只管にまっすぐ。
目指すは街道の途中にあるという泉まで。ブローチを無事に見つけられるようにと祈るレイリーとハンター達を乗せて―――。
●道中は賑やかに
やはり、レイリーは我儘ばかりを零していた。口を開けば我儘、という具合に。
だがハンター達は彼女の我儘を嫌がらず要求を聞き入れるのだった。するとレイリー自身に「嫌ではありませんの?」と問いかけられる。
「まぁな……」
――相手は子供だし、出来る範囲のことは。と、心の中で呟くクローディオ。
「大人の女はお仕事はしっかりこなすのです!」
愛らしく胸を張るシェリアク。
「なんだかついつい我儘を聞いてあげたくなっちゃいます」
穏やかに微笑みを浮かべ、目を細めるラル・S・コーダ(ka4495)。
「それに、楽しい旅路にしたいですしね!」
クレールが笑顔で言った。
「皆さん……」
レイリーの我儘は欠点とも呼ぶべき点で、人から嫌がられてしまう理由なのだった。
それを受け入れられて、嬉しいようだ。
――だが甘えてばかりではいけないのが人生というもの。
時には逞しく、自立しなければならない時だってあるものだろう。
「きっと愛され過ぎて育ったのですわね。ご両親は甘やかしすぎではありませんの?」
喉が渇いたと喚いていたレイリーに、セシール・フェーヴル(ka4507)が言った。
すると「んまぁ!」と、図星をつかれながらも対抗するレイリー。
「まぁまぁ、お可愛らしいお嬢さん達」
二人のお嬢様を仲介したラルは、とても温かい眼差しだった。
さっきなんかも「フェーヴルお嬢様とお呼びになっても構いませんわよ」と言ったセシールに、「フェーヴルお姉様」とレイリーが親しげに返す、そんな二人が微笑ましいからである。
「いいですこと? こういう時はちゃんと、私のようにお水を……あら。わたくしも忘れてしまいましたわ。喉がかわきましたわね」
「ふふ」
そしてラルは益々和やかな気持ちになって、にこにこしていたのだった。
「もし宜しければ紅茶はいかがですか……?」
マキナは紅茶を入れた魔法瓶を手に、首を傾げた。
クリムゾンウェストでは珍しい魔法瓶を見るとレイリーは目を輝かせ、「これはなんですの?」や「どうお使いになるの?」等の質問攻めに合うマキナ。どうやらお嬢様は初めて見るものだったらしい。
続いてリアルブルーのマンジュウを用意すると、これにも好奇心いっぱいの様子で食いついた。
「リアルブルーの!」
ちゃっかり葵璃瑚も、宝石のような赤い瞳をきらりと煌めかせて。
「美味しそうですわねっ、頂きましょう」
出発前までは元気が無かったレイリーが葵璃瑚と共にきゃっきゃしているのを眺めると、マキナは目を細めつつ、皆で舌鼓を打つのだった―――。
●心を許す時間
ハンター達の話はレイリーの胸を心躍らせるものばかりだった。
ラルが教えてくれたのは故郷の古い言葉の歌。
耳慣れない言葉の詞は、詞が記す意味も……、更には自身が何処で憶えたのかも、ラルは分からないのだという。
けれど、歌えば楽しくて、惹きつけられる……不思議な歌。
葵璃瑚が話したのは、ハンターになったきっかけの話だった。
部族の巫女としての力を付ける為に、そして父のいた世界の事をもっと知りたい為―――。
女の子らしい生き方にも憧れると葵璃瑚は言うけれど、レイリーは葵璃瑚に憧れた。
葵璃瑚の目標も自立も、世間知らずなレイリーにとってあこがれの生き方だったのだ。
ねぇ、もっともっとお話を聞かせて。
もっともっと色んな世界を知りたいの――……と我儘お嬢様が楽しそうにおねだりし、時間は過ぎていって……。
「そういえばレイリーさん、件のブローチ……どのようなものでしょう?」
クレールが不意に質問した。
「あ、いえ、形とか、大きさとか……見つけるのに、必要かなって」
同じ疑問があったラルも続く。
「そうですね、私も知りたいです」
「あとは……どんな色かもな」
クローディオも言った。
それもそうね、とレイリーは落としたブローチの特徴を述べる。
赤い色をしたリボンのブローチで幅が5センチ位のものなのだそうだ。
「ねぇねぇ、お嬢様なら新しいのとか買ってもいいんじゃないのかな?」
シェリアクが首を傾げて尋ねると、レイリーは「い、嫌ですわ!」とぶんぶん首を横に振った。
「そっかぁ……。それほどとても大事なものなのかな。そういうの、素敵だよねっ♪」
シェリアクの言葉は純粋すぎるくらいに真っすぐで、レイリーは思わず顔を真っ赤にしてしまう。
「レイリーさん。これは勝手なお礼なんですが……物を大切にしてくださって、ありがとうございます」
そしてクレールが微笑んで、続けた。
「作った方、贈った方の想い……持ち主のレイリーさんが大切にしてくれること……。物を作る人間の一人として、本当に嬉しくて。だから……。ブローチに込められた想い……少しでも、伺えたらなって」
そう言うふうに言われてしまうと……。レイリーは少し、もじもじした。絶対口にしないつもりだったのに……完敗なのである。
親愛と、信頼を込めて。彼らになら話してもいい、と心を許して。誰から貰った物なのか、そしてどんな想いがあるのかを、語るのだった―――。
●狼との対峙
「雑魔が現れた際には、馬を宥めるようにお願いします……」
マキナが頼むと、御者は頷く。
そうして泉付近の探索が始まって、早10分。
レイリーやブローチの事も念頭に入れながら、マキナは周辺も警戒した。
―――その時。
「見つけましたわ!」
「あ、お嬢様待って!」
レイリーが喜ぶ声を上げ駆け寄ったのを、シェリアクが追いかけた瞬間……。
はっと何かの気配を感じ取った。
「駄目です……! 戻って……!」
マキナは叫んだ。
「皆さん! 出ました! レイリー様を!」
続いて葵璃瑚が警告する頃には何かが飛び込んでくるように襲い掛かってきていた。
―――ウゥゥ!
それが一匹……いや、四匹。その内の三匹がレイリーを目がけて猛スピードでやってくる。
「ひっ……!」
獰猛な狼の殺意に、今迄体感した事がない恐怖を抱く。
「お嬢様! 危ない!!」
シェリアクの声は届いている筈だが、どうやら固まって動けないらしい。
きっと彼女一人ならば、このまま抵抗する間もなく狼に噛みつかれ、志半ばで命を落とす絶望が待ち受けていた。
―――だが。
「手出しさせるかぁっ!」
絶望を打ち破るかの如き叫びが、戦場に響く。
レイリーの想いを此処で終わらせたりはしない。
そんなクレールの一条の光を、ピュアホワイトから放って―――黒狼を一匹、食い止める。
「皆さんには、近づけませんからッ!」
本当は怖い気持ちもあった。だが、誰かが傷つくのは絶対に見たくなかったから。奮い立たせながら立ち向かい、背丈以上ある大斧で噛みつこうとするもう一匹の黒狼の口を狙った葵璃瑚の見事なパワフルフルスイングをお見舞いする。
―――だが、ハンター達を潜り抜けて行った白狼には誰も追いつけない。そして……。
「きゃぁぁ!!!」
戦場にレイリーの悲鳴が響いた。
……身を挺してレイリーを庇い、白狼に噛みつかれたシェリアクから血が噴き出たのだ。
「下がるぞ」
クローディオが白狼に眩い光を放つ鞭で打ち、シェリアクとレイリーから引きはがす。
それを援護するかのようにマキナも、マルチステップで回避しつつ瞬脚で間合いを取り、足を狙った部位狙いを華麗に決めて。
「……っ」
大粒の涙を浮かべながら取り乱すレイリーを、クローディオはなんとか後退させる事が出来た。馬車の近くまで誘導できると、すかさず精霊に祈りを捧げ、柔らかな光で、シェリアクの傷口を癒すように包んでいく。
「わ……わたくしのせいで……っ」
シェリアクを心配するレイリーに、ぶんぶんと首を振って。
「守れて良かった。私は大丈夫だよ! ほらね?」
クローディオのヒールで癒えた事を証明するとにこっと笑ってみせるが、それでもレイリーは泣きじゃくっていた。そんなレイリーを、シェリアクはよしよしと優しく宥めてあげて。
御者と馬車を目掛けて突進してきた方の黒狼はというと、
「わたくしの馬車を狙おうなど許しませんわよ」
飛びかかってくるのを受けつつも強い打撃を与え、セシールが無事に守り切る。
そしてレイリーを襲おうとする狼が居れば、追い払うように攻撃した。
「わたくしが守って差し上げるのは仕事だからで、別に心配だからではありませんのよ」
「お姉様……」
それでもレイリーはセシールに温かさを感じてしまうだろう。
「あら、ようやく駆けつけたのですわね」
周辺を警戒していた仲間が駆けつけると、セシールはつい高飛車に言った。
そして彼らは、レイリーや馬車を中心とした円陣の陣形に。
「こっちだ」
狼からレイリーを阻むように敵を引き付けるクローディオがストライクブロウで的確に叩き込み、
「妾の力、見せてあげますっ……!」
葵璃瑚が全力で叩き割り、
「わたくしも援護しますわよ」
セシールがホーリーライトを放ち、
「私の攻撃をくっらえー♪ んー、なんか必殺技っぽい名前考えた方がいいのかなぁ」
シェリアクが明るく茶目っ気たっぷりに攻撃して、
「……させません」
マキナは御者の方へ向かった狼を阻止するようにチャクラムで牽制した。
そうして次々と黒狼は倒されて消滅し、残るは白狼のみという状況になる。
ハンター達により濃厚な殺意を剥き出す白狼。
その一方でレイリーは涙も震えも止まらない。
「怖がらなくて良いのですよ」
言ったのは、ラルだった。
「え……」
「ただ踊るだけですから」
微笑みかけたラルの表情は優しく、
「まぁ! 一緒に踊ってくださるのですね」
振り返ればスカートを摘み上げ礼を。
――その相手は、牙をむく白狼だった。
「……!」
驚きのあまり涙は引っ込んで、いつの間にか……見惚れていた。
教えてくれた詞。
臆さず大胆なステップ。
踏み込んで打撃を与えているようにも見えるだろうが、ラルは今、戦っているのではない。―――歌っているのだ。
戦場は、舞台。
蝶のように軽やかに舞い、心から純粋に楽しんで、全身から喜びと慈しみを表現する。
そして共に踊ったダンスパートナーは、最期を彼女の胸で眠るように消えていく……。
「ね、怖くなかったでしょう?」
舞台の終わりには、レイリーに一礼を。
そして息を飲むような魂の歌に、レイリーはただ瞳をきらきらと輝かせながら見開いて、凄い……と魅了されていたのだった。
●新たな想い出
無事にブローチを回収した帰りの馬車の中。
「……一時はどうなる事かと思ったが」
クローディオは仲間の傷をヒールで癒しながら、呟いて。
「なにはともわれ、よかったよかった♪」
シェリアクは一件落着、と上機嫌に言った。
「見つかって良かったですわね」
「!」
「……わ、わたくしだって人の大切な物をけなすほど人が悪いわけではありませんわ」
セシールは続けて「そもそもそんな大切な物を無くす方がどうかしてますわ」と言うけれど、レイリーはにこにこしていた。すっかり懐いたようである。
「レイリーさんは笑ったらすごく素敵。きっとその方が、お友達もいっぱい出来ます。ね? 葵璃瑚さん」
ラルに話を振られた葵璃瑚は、戦闘後の安堵の溜息を恥ずかしそうに笑って誤魔化しながら。
「妾とレイリー様はもう、お友達です」
「葵璃瑚さん……っ」
涙を浮かべながらレイリーは幸せそうに言うだろう。「貴方はわたくしの初めての、大切なお友達……」、と。
そしてマキナは、彼女に優しく助言をする。
「大切な言葉は、しまわずに伝えた方がいいと思います……。今日僕たちに、馬車の中で話してくれていた時のように……」
きっと今のレイリーなら、素直に言えるだろう。
爺やがくれたものだから、今迄ずっと大切にしてきた宝物だったということを――。
「きっと、直してみせます」
浅い傷が付いてしまったブローチを手に、クレールがまっすぐレイリーを見つめて言った。
技術を、想いを、継ぎ繋ぐ……それがクレールの鍛冶。
だからこそ、最高の姿となってレイリーの元に帰ってくるはずだ。
―――彼らと出会えた今日を重ねて継ぎ繋ぎ、もっともっといとおしくて大切な……想い出という名の宝物になって。
「大丈夫です……僕達が必ず、見つけてみせます……」
マキナ・バベッジ(ka4302)はレイリーが沈んでいることに気付いて、言葉を掛けた。
沈んでいるのは落としてしまったというブローチを心配してのことだろう。
だからマキナは嬉しかった。―――道具を大切に、掛け替えのないものだと思って貰えて。
そしてその気持ちは、クレール(ka0586)にも。
「絶対、無事に探しあてましょうっ!」
鍛冶師として、物を作る人間として……、物を大切にしてくれるレイリーの想いに必ず応えたい。
真っすぐで揺るぎない、心の誓いだった。
しかしレイリーは照れてしまって、二人につんとした態度を取ってしまうけれど。
「よ、よろしく、お願いします!」
黒曜 葵璃瑚(ka3506)はハキハキと挨拶をするが、緊張をしていた。
なにせ大きな戦ではなくて個人の依頼を受けるのは初めてなのである。……だが実は、それだけではない。
(依頼主様、妾と同じ位の年…! しかも可愛い!)
葵璃瑚の出身部族には近い年齢の女子がいなかったのだ。
(お友達になりたいなぁ……)
そして、そんなふうに見つめる葵璃瑚と、レイリーも密かに想いは同じで。
友達になれるかしら……と、淡い期待を抱くのだった。
――馬車が到着し、さぁ、出発だという頃。
レイリーの悲鳴を聞いてクローディオ・シャール(ka0030)が何事かと様子を見てみると、蜂が一匹、飛んでいるのを確認した。
(なんだ、蜂か……)
「大丈夫だ。じっとしていれば刺されることはない」
「で、でも……っ」
大きな瞳を潤ませながら上目遣いで見つめるレイリー。
彼女は絶世の美少女。見惚れる男は五万と居るだろう。……だがクローディオにとって彼女はまだまだ子供で、見惚れるなんてあり得ない事だった。
だがそれでも蜂に怯えているのは見て取れたので、彼女を守るように遮りそっと導いて、馬車に乗せてあげることにする。―――すると。
(きゅん……!)
どうやらレイリーがクローディオに、ときめいたようだ。
「ふふ、顔が赤いよ? 綺麗なお嬢様」
シェリアク=ベガ(ka4647)が天真爛漫な笑顔で声を掛けると、レイリーはきゃあっと軽い悲鳴をあげた。とっても恥ずかしかったようである。
「君……じゃなかった、あなたが依頼人? 私が来たらもう安心、どーんと任せておいてっ」
因みに初仕事だけどね、と付け足しながらえへん、と言った。
街道は広大で、果てしなく道が続いていた。人の気配はなく、ただ只管にまっすぐ。
目指すは街道の途中にあるという泉まで。ブローチを無事に見つけられるようにと祈るレイリーとハンター達を乗せて―――。
●道中は賑やかに
やはり、レイリーは我儘ばかりを零していた。口を開けば我儘、という具合に。
だがハンター達は彼女の我儘を嫌がらず要求を聞き入れるのだった。するとレイリー自身に「嫌ではありませんの?」と問いかけられる。
「まぁな……」
――相手は子供だし、出来る範囲のことは。と、心の中で呟くクローディオ。
「大人の女はお仕事はしっかりこなすのです!」
愛らしく胸を張るシェリアク。
「なんだかついつい我儘を聞いてあげたくなっちゃいます」
穏やかに微笑みを浮かべ、目を細めるラル・S・コーダ(ka4495)。
「それに、楽しい旅路にしたいですしね!」
クレールが笑顔で言った。
「皆さん……」
レイリーの我儘は欠点とも呼ぶべき点で、人から嫌がられてしまう理由なのだった。
それを受け入れられて、嬉しいようだ。
――だが甘えてばかりではいけないのが人生というもの。
時には逞しく、自立しなければならない時だってあるものだろう。
「きっと愛され過ぎて育ったのですわね。ご両親は甘やかしすぎではありませんの?」
喉が渇いたと喚いていたレイリーに、セシール・フェーヴル(ka4507)が言った。
すると「んまぁ!」と、図星をつかれながらも対抗するレイリー。
「まぁまぁ、お可愛らしいお嬢さん達」
二人のお嬢様を仲介したラルは、とても温かい眼差しだった。
さっきなんかも「フェーヴルお嬢様とお呼びになっても構いませんわよ」と言ったセシールに、「フェーヴルお姉様」とレイリーが親しげに返す、そんな二人が微笑ましいからである。
「いいですこと? こういう時はちゃんと、私のようにお水を……あら。わたくしも忘れてしまいましたわ。喉がかわきましたわね」
「ふふ」
そしてラルは益々和やかな気持ちになって、にこにこしていたのだった。
「もし宜しければ紅茶はいかがですか……?」
マキナは紅茶を入れた魔法瓶を手に、首を傾げた。
クリムゾンウェストでは珍しい魔法瓶を見るとレイリーは目を輝かせ、「これはなんですの?」や「どうお使いになるの?」等の質問攻めに合うマキナ。どうやらお嬢様は初めて見るものだったらしい。
続いてリアルブルーのマンジュウを用意すると、これにも好奇心いっぱいの様子で食いついた。
「リアルブルーの!」
ちゃっかり葵璃瑚も、宝石のような赤い瞳をきらりと煌めかせて。
「美味しそうですわねっ、頂きましょう」
出発前までは元気が無かったレイリーが葵璃瑚と共にきゃっきゃしているのを眺めると、マキナは目を細めつつ、皆で舌鼓を打つのだった―――。
●心を許す時間
ハンター達の話はレイリーの胸を心躍らせるものばかりだった。
ラルが教えてくれたのは故郷の古い言葉の歌。
耳慣れない言葉の詞は、詞が記す意味も……、更には自身が何処で憶えたのかも、ラルは分からないのだという。
けれど、歌えば楽しくて、惹きつけられる……不思議な歌。
葵璃瑚が話したのは、ハンターになったきっかけの話だった。
部族の巫女としての力を付ける為に、そして父のいた世界の事をもっと知りたい為―――。
女の子らしい生き方にも憧れると葵璃瑚は言うけれど、レイリーは葵璃瑚に憧れた。
葵璃瑚の目標も自立も、世間知らずなレイリーにとってあこがれの生き方だったのだ。
ねぇ、もっともっとお話を聞かせて。
もっともっと色んな世界を知りたいの――……と我儘お嬢様が楽しそうにおねだりし、時間は過ぎていって……。
「そういえばレイリーさん、件のブローチ……どのようなものでしょう?」
クレールが不意に質問した。
「あ、いえ、形とか、大きさとか……見つけるのに、必要かなって」
同じ疑問があったラルも続く。
「そうですね、私も知りたいです」
「あとは……どんな色かもな」
クローディオも言った。
それもそうね、とレイリーは落としたブローチの特徴を述べる。
赤い色をしたリボンのブローチで幅が5センチ位のものなのだそうだ。
「ねぇねぇ、お嬢様なら新しいのとか買ってもいいんじゃないのかな?」
シェリアクが首を傾げて尋ねると、レイリーは「い、嫌ですわ!」とぶんぶん首を横に振った。
「そっかぁ……。それほどとても大事なものなのかな。そういうの、素敵だよねっ♪」
シェリアクの言葉は純粋すぎるくらいに真っすぐで、レイリーは思わず顔を真っ赤にしてしまう。
「レイリーさん。これは勝手なお礼なんですが……物を大切にしてくださって、ありがとうございます」
そしてクレールが微笑んで、続けた。
「作った方、贈った方の想い……持ち主のレイリーさんが大切にしてくれること……。物を作る人間の一人として、本当に嬉しくて。だから……。ブローチに込められた想い……少しでも、伺えたらなって」
そう言うふうに言われてしまうと……。レイリーは少し、もじもじした。絶対口にしないつもりだったのに……完敗なのである。
親愛と、信頼を込めて。彼らになら話してもいい、と心を許して。誰から貰った物なのか、そしてどんな想いがあるのかを、語るのだった―――。
●狼との対峙
「雑魔が現れた際には、馬を宥めるようにお願いします……」
マキナが頼むと、御者は頷く。
そうして泉付近の探索が始まって、早10分。
レイリーやブローチの事も念頭に入れながら、マキナは周辺も警戒した。
―――その時。
「見つけましたわ!」
「あ、お嬢様待って!」
レイリーが喜ぶ声を上げ駆け寄ったのを、シェリアクが追いかけた瞬間……。
はっと何かの気配を感じ取った。
「駄目です……! 戻って……!」
マキナは叫んだ。
「皆さん! 出ました! レイリー様を!」
続いて葵璃瑚が警告する頃には何かが飛び込んでくるように襲い掛かってきていた。
―――ウゥゥ!
それが一匹……いや、四匹。その内の三匹がレイリーを目がけて猛スピードでやってくる。
「ひっ……!」
獰猛な狼の殺意に、今迄体感した事がない恐怖を抱く。
「お嬢様! 危ない!!」
シェリアクの声は届いている筈だが、どうやら固まって動けないらしい。
きっと彼女一人ならば、このまま抵抗する間もなく狼に噛みつかれ、志半ばで命を落とす絶望が待ち受けていた。
―――だが。
「手出しさせるかぁっ!」
絶望を打ち破るかの如き叫びが、戦場に響く。
レイリーの想いを此処で終わらせたりはしない。
そんなクレールの一条の光を、ピュアホワイトから放って―――黒狼を一匹、食い止める。
「皆さんには、近づけませんからッ!」
本当は怖い気持ちもあった。だが、誰かが傷つくのは絶対に見たくなかったから。奮い立たせながら立ち向かい、背丈以上ある大斧で噛みつこうとするもう一匹の黒狼の口を狙った葵璃瑚の見事なパワフルフルスイングをお見舞いする。
―――だが、ハンター達を潜り抜けて行った白狼には誰も追いつけない。そして……。
「きゃぁぁ!!!」
戦場にレイリーの悲鳴が響いた。
……身を挺してレイリーを庇い、白狼に噛みつかれたシェリアクから血が噴き出たのだ。
「下がるぞ」
クローディオが白狼に眩い光を放つ鞭で打ち、シェリアクとレイリーから引きはがす。
それを援護するかのようにマキナも、マルチステップで回避しつつ瞬脚で間合いを取り、足を狙った部位狙いを華麗に決めて。
「……っ」
大粒の涙を浮かべながら取り乱すレイリーを、クローディオはなんとか後退させる事が出来た。馬車の近くまで誘導できると、すかさず精霊に祈りを捧げ、柔らかな光で、シェリアクの傷口を癒すように包んでいく。
「わ……わたくしのせいで……っ」
シェリアクを心配するレイリーに、ぶんぶんと首を振って。
「守れて良かった。私は大丈夫だよ! ほらね?」
クローディオのヒールで癒えた事を証明するとにこっと笑ってみせるが、それでもレイリーは泣きじゃくっていた。そんなレイリーを、シェリアクはよしよしと優しく宥めてあげて。
御者と馬車を目掛けて突進してきた方の黒狼はというと、
「わたくしの馬車を狙おうなど許しませんわよ」
飛びかかってくるのを受けつつも強い打撃を与え、セシールが無事に守り切る。
そしてレイリーを襲おうとする狼が居れば、追い払うように攻撃した。
「わたくしが守って差し上げるのは仕事だからで、別に心配だからではありませんのよ」
「お姉様……」
それでもレイリーはセシールに温かさを感じてしまうだろう。
「あら、ようやく駆けつけたのですわね」
周辺を警戒していた仲間が駆けつけると、セシールはつい高飛車に言った。
そして彼らは、レイリーや馬車を中心とした円陣の陣形に。
「こっちだ」
狼からレイリーを阻むように敵を引き付けるクローディオがストライクブロウで的確に叩き込み、
「妾の力、見せてあげますっ……!」
葵璃瑚が全力で叩き割り、
「わたくしも援護しますわよ」
セシールがホーリーライトを放ち、
「私の攻撃をくっらえー♪ んー、なんか必殺技っぽい名前考えた方がいいのかなぁ」
シェリアクが明るく茶目っ気たっぷりに攻撃して、
「……させません」
マキナは御者の方へ向かった狼を阻止するようにチャクラムで牽制した。
そうして次々と黒狼は倒されて消滅し、残るは白狼のみという状況になる。
ハンター達により濃厚な殺意を剥き出す白狼。
その一方でレイリーは涙も震えも止まらない。
「怖がらなくて良いのですよ」
言ったのは、ラルだった。
「え……」
「ただ踊るだけですから」
微笑みかけたラルの表情は優しく、
「まぁ! 一緒に踊ってくださるのですね」
振り返ればスカートを摘み上げ礼を。
――その相手は、牙をむく白狼だった。
「……!」
驚きのあまり涙は引っ込んで、いつの間にか……見惚れていた。
教えてくれた詞。
臆さず大胆なステップ。
踏み込んで打撃を与えているようにも見えるだろうが、ラルは今、戦っているのではない。―――歌っているのだ。
戦場は、舞台。
蝶のように軽やかに舞い、心から純粋に楽しんで、全身から喜びと慈しみを表現する。
そして共に踊ったダンスパートナーは、最期を彼女の胸で眠るように消えていく……。
「ね、怖くなかったでしょう?」
舞台の終わりには、レイリーに一礼を。
そして息を飲むような魂の歌に、レイリーはただ瞳をきらきらと輝かせながら見開いて、凄い……と魅了されていたのだった。
●新たな想い出
無事にブローチを回収した帰りの馬車の中。
「……一時はどうなる事かと思ったが」
クローディオは仲間の傷をヒールで癒しながら、呟いて。
「なにはともわれ、よかったよかった♪」
シェリアクは一件落着、と上機嫌に言った。
「見つかって良かったですわね」
「!」
「……わ、わたくしだって人の大切な物をけなすほど人が悪いわけではありませんわ」
セシールは続けて「そもそもそんな大切な物を無くす方がどうかしてますわ」と言うけれど、レイリーはにこにこしていた。すっかり懐いたようである。
「レイリーさんは笑ったらすごく素敵。きっとその方が、お友達もいっぱい出来ます。ね? 葵璃瑚さん」
ラルに話を振られた葵璃瑚は、戦闘後の安堵の溜息を恥ずかしそうに笑って誤魔化しながら。
「妾とレイリー様はもう、お友達です」
「葵璃瑚さん……っ」
涙を浮かべながらレイリーは幸せそうに言うだろう。「貴方はわたくしの初めての、大切なお友達……」、と。
そしてマキナは、彼女に優しく助言をする。
「大切な言葉は、しまわずに伝えた方がいいと思います……。今日僕たちに、馬車の中で話してくれていた時のように……」
きっと今のレイリーなら、素直に言えるだろう。
爺やがくれたものだから、今迄ずっと大切にしてきた宝物だったということを――。
「きっと、直してみせます」
浅い傷が付いてしまったブローチを手に、クレールがまっすぐレイリーを見つめて言った。
技術を、想いを、継ぎ繋ぐ……それがクレールの鍛冶。
だからこそ、最高の姿となってレイリーの元に帰ってくるはずだ。
―――彼らと出会えた今日を重ねて継ぎ繋ぎ、もっともっといとおしくて大切な……想い出という名の宝物になって。
依頼結果
参加者一覧
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/04/14 20:46:37 |
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相談卓 マキナ・バベッジ(ka4302) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/04/17 17:10:43 |