コイよ、こい!

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/04/22 07:30
完成日
2015/04/26 17:14

みんなの思い出

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オープニング

●平穏よ、来い
 リッツ・ワルターは若い研究者だ。
 機導の研究を志し、機械も理解し、魔法も理解したい、と好奇心旺盛、研究者としては素晴らしい人物と評されていた。
 ひょろっとした長身で双眸も涼やかで思慮深い、黙って本を見る姿には街の娘たちも騒ぐという。まあ、一言で言うとイケメンである。
 そんな彼が放浪の結果、グラズヘイム王国のとある地域に流れ着く。
 パトロンに研究をお願いされたのは、美容の器具を作るという役に立つか否か全く見えないものであった。それでも手が空けば自分に時間は使える。
 そんなこんなで近くの小さい町から徒歩一時間、大きい街にはさらに馬で二時間という小高い丘の中腹に暮らす。
 平和だった。これまでにない平和が、平穏が彼の心を満たす。
 その平和が崩れる時が来た。
「う、なんか生まれてる」
 ねちょーん、ぬちょーん……。
「そんでもって、外に行ってるよ!」
 パニックになったリッツは自力で倒して、原因である魔法公害を隠すことも検討した。
 川に落ちて流れていっている。
 追いかけようとするが、何か巨大な影が研究室にあるのに気付いた。
「……あ、うん? あ、ははは……」
 ハンターに退治を頼まないとならないと諦めた。
「ここに来るまで、あれには会っていない。王国には少ないようだし。そう、悲しいけれど僕の平穏のためには……。支部にいるかもしれないけど、大丈夫、きっと」
 彼はブツブツ言いながら小走りに急いだ。

●釣れるか鯉
「コイコイ~ラララ~。子どもの日にはコイ食べて~、コーイを揚げて遊びましょ」
「きゅ、きゅ~きゅきゅきゅ~」
「クッ、クッ、ククッ」
「タンゴ、タンゴ。コイと一緒にタンゴ!」
「きゅ」
「シャア」
 調子外れた自作の歌を愛らしい声で歌いながら歩く少女とその頭の上で同じく歌うパルム、肩の上で鳴くフェレット。少女の手にはバケツと手作りぽい釣り竿が握られている。
「おや、ルゥルちゃん、ご機嫌だね」
 小舟の上の老人に声を掛けられ、少女ルゥルは丁寧に頭をさげて挨拶をした。
「おはようございます、マドックさん。今日はいい釣り日和です」
「釣り? 珍しいの」
「コイを釣りたいんです。マドックさん、この川にコイはいますか?」
「うーん、見たことないの。もう一つの川でもいたのは相当前だし」
 川に詳しい老人マドックの話に、ルゥルはしおれる。
「でも、やってみるです」
「うむ。これからわしは川上に向うから、もし、見つけたらルゥルちゃんに知らせよう」
「ありがとうございます」
 マドックは竿を操り、川上にゆっくりと上がっていく。
 ルゥルは釣竿を取り出し、家から持ってきたささみをつける。ささみで釣れるかは分からないが、ミミズ探すより手っ取り早いから持ってきたのだ。
「えい」
 糸を川に垂らすと、手身近な石に座る。
「コイ、コイ~、まな板の上の~コイ~ですぅ」
「きゅ~うきゅきゅ~」
「それにしても、子どもの日と言うのがタンゴのセックと言うのでしょうか」
 ルゥルはリアルブルー知識をどこからか仕入れたらしく、首を傾げている。
 五分くらい経ってルゥルが飽きてきたころ、マドックが大急ぎで川を下ってきた。
「どうしたんですか」
「変なモンが流れてきた。司祭さんを呼んできてくれ、ルゥルちゃん」
 ルゥルは釣竿を戻しつつ川上を見た。
 どんぶらこっこ、巨大なクラゲのようなものが来る。それらは流されつつも、浅いところに乗り上げると流れず陸地に上がってくる。
「す、スライムですぅ!! 魔法生物? 初めて見ました」
 じっとスライムを見つめるルゥル。下流に流て行くスライム、陸に上がってくるスライム。
 魔法生物作る人がいるのか公害が発生したのか、とにかく上流で何か起こったというをルゥルは理解した。
「動きは早くないと思うですが、早く退治しないと嫌ですね。マドックさん、人が来ないように見張りつつ逃げてください」
「うむ。ルゥルちゃん、司祭さんを!」
「ハイです」
 ルゥルは釣竿とバケツを掴むと、耳を隠すヘアバンドを直して走り始めた。

●衝撃と恋か?
 川沿いを小走りに来たリッツは、川辺から来るルゥルを目撃する。
「な、なんでこんなところにエルフの子が!」
 リッツは心臓がバクバクして倒れる。倒れたというより、禁断症状が実際の存在を前に発症したという感じだろうか?
「……お、お兄さん、どうしたですか?」
 倒れたリックに気付いたルゥルが親切から駆け寄る。
「あ、あああ……エルフ……」
 うっとりとしているリッツの目も、閉まりなく開く口も気持ちが悪いため、ルゥルのペットたちは「変態だ、危険だ」と察知している。本人のルゥルは足を止めると、真っ青になって首を振る。
「エルフさん、どこですか」
 と、すっとぼけた。
「いや、君……」
「ワタシ、えるふデハアリマセン」
 リッツの発言を遮り、怪しい言動でルゥルは応える。
「そんなに白くきめ細かい肌、ちょっと吊り上って魅惑的な目! 薄いのにつややかな唇。ほっそりとしてすっと伸びた四肢。天から降り注ぐ光を集めたように輝く髪! 耳を隠した所でそんなことは分かる、君はエルフだ!」
「おうちにいるから白いんです。子どもだからきめがきれいで、つややかなんです。釣り目の人間もいます。細いのはお肉が苦手だからです、もっとお肉食べます! えと、髪は別にただの金髪です。ヘアバンド大きい方が、髪の毛が良く止まります!」
 息荒く述べるリックにルゥルは反論を並べつつ、じりじりと後退している。
「理屈はどうでもいい! あああ、美しい」
 リックは立ち上がると両腕を広げ、ルゥルに突進してきた。
「みぎゃあああああああああああああああああああああああ」
「きゅうううううううううううううううううううううううう」
「シャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 ルゥルとパルムの悲鳴、フェレットの威嚇が響く。
 マドックは竿を握り締め、走る。
 ルゥル達を助けたのは……。

リプレイ本文

●みぎゃー
 迫りくるリッツに、ルゥルとペットたちは悲鳴や威嚇の声を上げる。
「やめろ、女の子が怯えているじゃないか!」
 時音 ざくろ(ka1250)が凛と通る声で牽制して割って入る。
「そうだ、変質者め。こっちでも犯罪になるだろう!」
 怒りと威嚇も込めて銃を抜き放つ城戸 慶一郎(ka3633)が続いた。
「保養に来たら見覚えある子と、トラブルが」
 ジオラ・L・スパーダ(ka2635)が悲壮感を漂わせ、じっとりとルゥルの横にやってくる。何かあったら守るぞという気合と共に。
「悲鳴がするから来てみれば」
 ジェニファー・ラングストン(ka4564)はリッツの腕をつかんでねじりあげ、取り押さえた。
 川原から道に上がったマドックは、ルゥルが助けてもらえたことに安堵した。鞭打った老体に酸素を送り込むべく深呼吸をする。

 仕事も終わって一息つくエヴァ・A・カルブンクルス(ka0029)は川原を眺め、スケッチブックを取り出す。のどかな風景であるにもかかわらず突然、連れているゴールデン・レトリバーが威嚇を始めたため注意した。
(……ん? スライム! そうね、一度描いてみたかったのよね)
 エヴァはスライムを描こうかと考えるが、数匹いるそれらが分裂した場合を考えやめた。
「スライムって近づきたくないのよね……」
 菊開 すみれ(ka4196)は銃を引き抜き思案する。一人で倒すには骨が折れそうだし、数もそれなりにいて厄介な事この上ない。
 すみれとエヴァは目があった。エヴァがスケッチブックからワンドに持ち替えた瞬間でもある。
「あなた、魔術師ね!」
 うなずくエヴァと、互いにハンターと認め、状況を確認する。

 さて、川沿いの道での騒動はひと段落ついた、変質者リッツを取り押さえたことで。
 びくびく怯えるルゥルは見知った顔に喜びつつ、現状説明とあいさつを口にするがパニックが続いているのが良くわかった。
「大変なんです、ルゥルはエルフじゃありません! こんにちはです、初めましてです。えと、マークさん呼んでこないと、お姉さんがスライムと死んじゃうです」
「落ち着け、ルゥル」
 ジオラがルゥルの腕をポンポンと叩くと、ルゥルは深呼吸と共に落ち着いた様子を見せだした。
 なお、「マークさん」とは町の司祭の名前と敬称である。
「ルゥル、久しぶり。元気で良かった……」
 慶一郎はリッツから離れ、銃を仕舞ってルゥルに近寄る。
「お久しぶりです、お兄さん」
 落ち着いたらしい声音に一同は安堵する。
「ス、スライムの件の原因は僕です! ああ、すみません。お願いです、ハンターの皆さん、依頼です、受けてください」
 リッツが取り押さえられながらも声を上げる。
「この人も実は魔法公害の影響?」
 ざくろがふと思いつきで言ってみた。
「いえ、その、エルフ、すごく大好きで」
 冷静に本人から返答がある。
 怒りを通り越してあきれが一瞬漂った。大好きというレベルの行動ではないはないだろう、と。
「なら、戦いで怪我負って、満身創痍のあたしは?」
「ああ、憂いがあって美しい」
 ジオラの問いかけにリッツは即答した。
 ジェニファーはもがくリッツを上から抑えつつも、「触りたくない」という意識が湧き上がってきた。

 当てないといけないと力み過ぎたエヴァはスライムにファイアアローを避けられる。
(なんてことなの!)
 驚愕の表情となった。
「……スライムって避けるの?」
 エヴァとすみれは顔を見合わせて人手がいることを痛感した。
 そういえば、なんかトラブルがあったのか、川沿いの道の方から声はしていた。そちらに行き、ハンターがいて協力できるならそうしたい。
「ねぇー、ハンターならスライム退治に手伝ほしいの!」
 すみれの言葉に、ざくろ、ジオラ、慶一郎の視線が冷たくジェニファーの下にいるリッツに向かう。
「スライム退治なら、依頼料もきちんともらえるぞ」
 ジェニファーが淡々と説明をした。
 説明を聞き終わってエヴァとすみれは、冷たさと憐憫のこもった視線をリッツに送った。
 ルゥルとマドックには司祭を呼びに行ってもらうことにした。

●べちょ
「蹴っ飛ばしてもよいが……」
 ジェニファーが言って拳を固めたが、これはリッツに対しての全員の意見の代弁である。
 リッツには情報を吐き出してもらい、公害の後始末もやってもらわないとならない。研究者として雇われるだけあって、話をするとしっかりとした人物に思えた。
 リッツの研究所が川上にあり、スライムたちはそこから流れてきたというのがはっきりした。マドックも「川上から来た」と証言している。
 川原のスライムを退治し、研究所にいる種類が違うらしい大きいスライム退治という段取り。
 エヴァは身振り手振りとワンドを見せ『魔法には使用上限がある』ということを告げる。油断さえしなければ、倒せるだろうが念のため。
「機導剣に魔法、連携して進めれば問題ないよ。……ジオラ、無理しなくていいから」
 ざくろがよろめくジオラに手を差し伸べる。
「ジオラさん……」
 慶一郎も知っている相手であるため、負傷理由も知っており何か余計に切ない。
「乗りかかった船」
 ジオラが決意を表しつつ、リッツに牽制で銃を向ける。「エルフ~」と言って近づいてくるが、一メートル以内には入ってこないと気付く。
(ルゥルだと危ないかもしれないなぁ)
 ジオラは武器を持っているため、リッツは少しだけ警戒をしているのかもしれない。
「残念なイケメン……」
 すみれはリッツを観察して結論を出す。エルフに対しうっとりする表情さえ除けば、好みは別としてイケメンぽい。
「さて、やろう」
 ジェニファーは手裏剣を抜き、投げる準備をした。実際、近接するか否かは仲間との動きによって決まる。
 早速戦闘開始、となった。
 スライム一体に機導剣を使ってざくろが攻撃し、エヴァのファイアアローが続き、これは倒れた。
 幸先の良いスタート。
 二体目に対し慶一郎が魔導拳銃で攻撃をする。意外と手ごたえはあるようで、続いてこれを使うこととする。
 スライムにすみれが通常の拳銃で射撃した。
「うっ、あまり利かないねやっぱり」
「その一撃だって重要だよ」
 ジェニファーのナックルの一撃だって手ごたえがあると同時に、柔らかにはじかれる感触がある。
 ジェニファーが攻撃対象と距離を取るために跳んだとき、スライムが酸を含む液体を飛ばしてきた。それはジェニファーに向かうが、逸れた。
 別のスライムが酸を飛ばしてきて、すみれは運悪く服に当てられる。じわっと服に小さな穴が開く。
「これなんか溶けてるよ! せっかくのお気に入りの服なのに……ひどいっ!」
 すみれの顔に怒りが表情が見る見るうちに浮かぶ。
 近くにいるエヴァが落ち着くようにと、すみれの両肩をポンポンと叩く。怒りも重要だが、簡単な行動もとれなくなる。
「わ、分かってる。私を怒らせたら……」
 すみれの目は据わっているようだが、表情は落ち着いた様子だ。
 流れ着くのに疲労していたのか、スライムたちは攻撃受けるまで何もせず少しずつ数を減らされていく。
「あ、あたしだって」
 ジオラは離れた所から射撃するが、命中とは程遠い。
「ジオラさん、無理しないで」
 慶一郎の言葉に、うなずく面々。
 リッツ番だけでもありがたいのだ。リッツがいてもハンターの行動の疎外にはならないと思うけれど、逃げられても困るので。
 さてこの後も、ハンターたちは順調に攻撃を当て、運よくスライムが分裂することもなく倒せた。
「やる気のないスライムで助かった?」
 慶一郎は形を失ったスライムを安堵の面持ちで見つめる。スライムはデフォルメされていないと気持ち悪いとしみじみ思った。
 周囲にスライムがいないかを確認していると、川に向かって体格の良い司祭とルゥルが走ってきた。
「事情は聴きました。ハンターは引退しましたが、力は別です、少しでも役に立てれば……」
 ジオラは少しだけ魔法で癒されて、ほっとした。マーク司祭がヒールを使えるのは心強い。
「スライムにやられたとか?」
「いや、別件で」
 事情聴いたわりには違う情報が伝わっている。ルゥルの頭の中は混乱の極みのままだったようだ。実は、しゃべることができたらペットたちの方が把握していたのではないかとも思うが、二匹ともルゥルと大して変わらない雰囲気を醸していた。
 リッツのことも含め、マーク司祭に事情をハンターが説明し直す。

●ぬーん
 研究室の間取りやスライムの状況をリッツから聞き、ハンターは向かう。結局、リッツも放置するわけにはいかないため、当事者であるし連れてくる。
「この奥が研究室です」
 扉を薄く開けて覗いてみると、プルプルと動く微妙な物体がそこにあった。先ほどのスライムが可愛らしいと思えるほど、脅威を与える物体だ。
「これが分裂するようだったら最悪だね」
 ざくろは中に入るために位置を丁寧に確認する。
「椅子とか取り込んでいる? 気を付けないと巻き込まれるぞ」
 おなじく前に立つ予定のジェニファーが注視する。
「ざくろとジェニファーが扉入ってすぐで左右に分かれ攻撃……」
「俺たち射撃できる奴が外から撃つ」
 慶一郎が続けた。
「それでいいんじゃないかな、ひとまず」
 ざくろはうなずく。
 扉開け放てば、射撃組はどうにかできるだろう。目標物が大きいことも重要だ。
『一斉に撃った後に近接入れば?』
 身振りでエヴァが提案した、少しでも被害が出ないように。
 ざくろとジェニファーは心強いとうなずいた。
 エヴァからファイアアローが放たれ、慶一郎、すみれ、ジオラが続きそれぞれ攻撃は命中した。
 しかし、ざくろの機導剣とジェニファーの攻撃が外れる。移動しながらだったから集中が足りなかったのか、たまたまドデカスライムが避けたのか。
 侵入者めがけて手を伸ばすようにドデカスライムが伸びてきたが、当たらないまま戻って行った。
「スライムはライム風味と聞くがほんとかのう」
 結構近くにそれが来たため、衝撃を紛らわすように洒落をいうジェニファー。
 この直後、ざくろが機導剣を使う。
「粘液の塊を滅するため、輝け光の剣!」
 気合の入った一撃は、ドデカスライムに大きく傷を負わせる。
『よし』
「一気に」
「やっちゃおー」
「なんとかなるっ」
 エヴァ、慶一郎、すみれ、ジオラが魔法や銃撃で追い込む。
「よっ」
 ジェニファーは殴って少しでも距離を取るため後ろに下がる。
 ドデカスライムはうねる。体の一部が拳のようになり、ざくろに向かうが、当たらなかった。
 連携のとれた行動でハンターたちの攻撃は、ドデカスライムを粉々にするのに十分だった。
 ドデカスライムはパチンとはじけて小さな塊となる。とろけて液状へと姿を変えていった。
「……ちょっとかぶったか」
 ジェニファーが嫌そうな顔になった。

「あ、ありがとうございました。う、うううう、一時はどうなるかと心配で」
 ほっと息を付いているリッツを、あきれや怒りの表情をそれぞれに浮かべたハンターが囲む。そこに小言やら質問やらが飛ぶ。
「ごみはきちんと処理してる?」
 機導師であるざくろは一応教わったことを思い出しながらサクッと言う。
『観賞用にスライム作ってくれる?』
 エヴァは要求を紙に書いて見せる。
「未成年者略取に甚大な環境汚染、リアルブルーなら重罪だぞ」
「こっちの法律分かってないけど、こっちでも問題ありじゃないの?」
 慶一郎の憤りに、すみれもうなずきながら続ける。
「これで終わって幸いと思え」
 ジェニファー、ナックルが付いている手を握り締めている。
「この悲壮感あふれるあたしですら愛情の対象とは……エルフ好きってどんだけ?」
 ジオラとしてはあきれる。エルフだとはいえども種族を気にせず生きていると、ここまで無条件に好かれるのは不思議でしかない。
 質問やら小言にもリッツはひたすら頭をさげ、丁寧に答える。いい人ではあるんだろうなは思えた、問題は多いけれど。

●わーい
 戻ってきたハンターを見てルゥルが両手を振っているが、しばらく疑いの目でハンターたちの後ろの方を見ていたのは、リッツを警戒してだろう。
「もう安心だよ、ルゥル」
 慶一郎は言いながら、いや、リッツいる限り安全じゃないんじゃとも思う。マーク司祭を見つつ、まあ保護者もいるし。
「ところで、なんで釣りをしていの?」
 ざくろに問われルゥルは胸を張る。
「子どもの日というのがリアルブルーにあるんですよ! 私は知ってます! タンゴのセックとも言って、コイを上らせて、兜を飾るんです。それとショーブというアイリスに似たお花を飾ってお風呂に入れるんです。草の入ったオモチと言うのを食べたりするんです」
「へぇなるほど。ルゥルはすごいな、知識欲も探究心もあふれて」
 ジオラは信じ、褒めた。
『何、それ!』
 エヴァは手を叩き、教えて欲しいとルゥルを見る。
「こっちにはそんな行事が……え? リアルブルー」
 一瞬信じかかったざくろはあわてて首を横に振る。
「端午の節句? ルゥル、あっているところもあるけど間違ってる」
 慶一郎がジオラに信じるなと止める。
「草の入ったおもちではなくて、柏餅よね」
 すみれが柏餅の説明をするとルゥルは、驚いた様子を見せた。餅の説明もついでにすると、そわそわ始める。
「食べてみたいです」
「でも、原材料がありません」
 マーク司祭の一言で、ルゥルが萎れる。米がとれたとしても、もち米はまた限られる。
「コイはこいのぼりの事で……生き物のコイじゃないよ」
 慶一郎は申し訳なさそうに言うと、目からうろこが落ちているルゥルは釣竿とバケツを寂しく見つめる。
「釣りはどうする? するなら手伝うが?」
 ジェニファーは尋ねるが、たぶん首が横に振られると思っている。釣りすることは楽しくていいじゃないかと思うが主旨がずれてきている様子。
 ルゥルはジェニファーとバケツに目が行き来する。釣り自体はやってみたいようだ。
「こいのぼりは紙があれば作れるから……紙にコイの絵を描いて、筒状にして……」
 説明する慶一郎にルゥルは目をキラキラさせ、そわそわする。
 エヴァが絵筆などを見せる。これは弟によい土産話ができそうだとワクワクし始める。
「みなさんの予定に問題なければ教会でお茶でもどうですか?」
 マーク司祭がにこやかに提案する。
 ルゥルは期待のまなざしで見つめる。ハンターたちが来てくれれば、リアルブルー知識も増えるし楽しい話も聞けるに違いない。
「お茶? 皆も行くよね? 出会ったのも何かの縁だしね!」
 ハンターオフィスを通さず町中で会ったのは、変わった縁があるかもしれない。
 全員、否応もなく教会に向かう。
「これからもよろしくね!」
 すみれが言うと「よろしくですぅ」とルゥルが両手を上げて応える。
 他の者も「よろしく」とハイタッチのようにその手を叩き合った。

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参加者一覧

  • 雄弁なる真紅の瞳
    エヴァ・A・カルブンクルス(ka0029
    人間(紅)|18才|女性|魔術師
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • ビューティー・ヴィラン
    ジオラ・L・スパーダ(ka2635
    エルフ|24才|女性|霊闘士
  • 充実異世界ライフ
    城戸 慶一郎(ka3633
    人間(蒼)|25才|男性|猟撃士
  • 紅茶の作り方を覚えた者
    菊開 すみれ(ka4196
    人間(蒼)|18才|女性|猟撃士
  • 新聞号外・犯人逮捕貢献者
    ジェニファー・ラングストン(ka4564
    人間(蒼)|17才|女性|疾影士

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依頼相談掲示板
アイコン スライム退治なんです!
菊開 すみれ(ka4196
人間(リアルブルー)|18才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2015/04/21 23:19:25
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/04/20 17:26:54