ゲスト
(ka0000)
【不動】少年、死体を操るすべを考える
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/04/26 19:00
- 完成日
- 2015/05/01 06:42
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●歌う少年
野営地から少し離れたところを見回る兵士たち。歪虚や雑魔が多い現状を考えると不安が募る場所であった。
荒野であり、ところどころに見える木や灌木は何か潜んでいないかと緊張を強いる。
空は紺碧となり、月の明かりが待ち遠しい時間だ。
変わったこともなかったと、兵士たちは野営地に戻ろうとした。
ふいに歌が聞こえた。
どこかの部族がやってくる道すがら歌っているのか?
高く伸びやかであるが、寒々とした冷たい声。これに感情が加われば大層聞き惚れただろう。
変わったことともいえるので、念のために確認に兵士たちは向かった。もし、難儀している人がいるなら、助けないとならない。
近づくにつれて歌の内容が分かってくる。グラズヘイム王国でも聞く歌であり、子らの合唱の曲だ。
一本の木があり、その太い枝に少年が一人座っているのが見えた。
マントを羽織っているが、風によってなびくと背中に大剣を負っているが見える。鎧を身に着けておらず、貴族の子弟が好みそうな衣服をまとっている。
兵士たちは後二十メートルというところまでやってきた。
少年は歌うのをぱたりとやめ、兵士たちを見つめる。
紫色の双眸は睨み付けるような感じであるが、顔立ちが柔らかく一見穏やかそうな少年なため、兵士たちはさほど怖くは感じなかった。
しかし、違和感は募る。
少年が独りでいるようなところではない。
ましてや貴族の子弟がこのようなところにいるだろうか?
姿かたちは人間そのものだが、生気を感じない。大きな人形がそこにあるようにも見えた。
「坊や、どうしてこんなところにいるんだい」
兵士の問いかけに少年は動かない。
「迷子になったのかな?」
ハンターである可能性だってある。そうなれば、目の前にいる少年位なら普通に闊歩しているかもしれない。子ども扱いも悪いかもしれないが、まだ子供扱いでもおかしくはない年齢でもある。
少年は枝から飛び降りた。頬を膨らませていたのが一瞬見える。
不機嫌になったのは遠目で良くわかった。兵士たちは謝罪すべきかと無言のまま相談する。
「……興ざめだ」
困惑している兵士たちは行動が遅かった。
少年は間合いを一気に詰めるとともに、大剣を引き抜くと兵士を殺した。
「な、何をするんだ」
「うるさい」
武器を構える前に殺された者、武器を構えたはいいが対応しきれずに殺された者……。
立っている者が自分だけの状態になって少年はつぶやいた。
「エクエス遅いなぁ……もう少し離れたところで待っていた方がいいのかな……レチタティーヴォ様のところに帰りたいなぁ……」
少年は不安そうに周囲を見回す。
「……あ、クロフェドみたいなことできないかなぁ……」
自分のポケットに何かないか漁り、使えそうなものを見つける。
「できるかも……」
にこりと微笑むと集中を始めた。
●聞こえた悲鳴
遠出から帰る途中のハンターたちは、後一息で野営地だとどこかほっと息を付いていた。まだ油断はできないが、気が緩むのを止めるのは難しい。
悲鳴とも怒号とも取れる声が聞こえた。大きな戦闘の音は届かないが、何か不測の事態が起こっているのは間違いなかった。
顔を見合わせるとともに、現場に急行する。
声がした先で見たのは、不自然な動きをする兵士たちと、胸の前で祈るように手を組む14歳くらいの少年の姿だった。
状況の把握のため、ハンターたちは武器を抜きつつも動きを止める。声を掛けるにしても慎重にならざるを得ない。
雑魔となった死体に襲われている少年なのか?
少年が原因で死体が動いているのか?
少年はハンターに嫌悪をにじませた顔を向ける。
「もうハンターが来たのか。どうしようか?」
組んだ手も動かさず、視線も不自然な動きの死体から外すことはない。
ハンターが問いかけをしようとしたとき、別の人物が現れる。
「プエル様、捜しましたよ。ところで、何をなさっているんですか?」
少年・プエルの側までやってきて青年は様子をうかがう。青年の視線はハンターから逸らさず、動きがあれば腰に提げている剣を抜くだろう位置に手が動いている。
「遊んでいらっしゃるのはいいですが、突然いなくなられると驚きますから一言断ってくださいよ。レチタティーヴォ様いらっしゃいますのに寄り道されるとは……」
レチタティーヴォの名前を聞いてプエルは、嬉しそうなそして困ったような表情を浮かべる。
この二人が、災厄の十三魔の一人であるレチタティーヴォの名につながる位置にいるらしいと明らかになり、ハンターたちは臨戦態勢を整える。
「エクエス、こいつらどうしよう。それと、2つ、いないんだ」
「兵士の死体の話ですか? 捜すか、奴らを殺すか、どっちかにしませんか?」
プエルを守るようにエクエスは前に出た、盛大な溜息と共に。
「ところで、これはどれほど役に立つんですか?」
エクエスは鈍い動きの兵士を指してプエルに問うが、返事はなかった。
野営地から少し離れたところを見回る兵士たち。歪虚や雑魔が多い現状を考えると不安が募る場所であった。
荒野であり、ところどころに見える木や灌木は何か潜んでいないかと緊張を強いる。
空は紺碧となり、月の明かりが待ち遠しい時間だ。
変わったこともなかったと、兵士たちは野営地に戻ろうとした。
ふいに歌が聞こえた。
どこかの部族がやってくる道すがら歌っているのか?
高く伸びやかであるが、寒々とした冷たい声。これに感情が加われば大層聞き惚れただろう。
変わったことともいえるので、念のために確認に兵士たちは向かった。もし、難儀している人がいるなら、助けないとならない。
近づくにつれて歌の内容が分かってくる。グラズヘイム王国でも聞く歌であり、子らの合唱の曲だ。
一本の木があり、その太い枝に少年が一人座っているのが見えた。
マントを羽織っているが、風によってなびくと背中に大剣を負っているが見える。鎧を身に着けておらず、貴族の子弟が好みそうな衣服をまとっている。
兵士たちは後二十メートルというところまでやってきた。
少年は歌うのをぱたりとやめ、兵士たちを見つめる。
紫色の双眸は睨み付けるような感じであるが、顔立ちが柔らかく一見穏やかそうな少年なため、兵士たちはさほど怖くは感じなかった。
しかし、違和感は募る。
少年が独りでいるようなところではない。
ましてや貴族の子弟がこのようなところにいるだろうか?
姿かたちは人間そのものだが、生気を感じない。大きな人形がそこにあるようにも見えた。
「坊や、どうしてこんなところにいるんだい」
兵士の問いかけに少年は動かない。
「迷子になったのかな?」
ハンターである可能性だってある。そうなれば、目の前にいる少年位なら普通に闊歩しているかもしれない。子ども扱いも悪いかもしれないが、まだ子供扱いでもおかしくはない年齢でもある。
少年は枝から飛び降りた。頬を膨らませていたのが一瞬見える。
不機嫌になったのは遠目で良くわかった。兵士たちは謝罪すべきかと無言のまま相談する。
「……興ざめだ」
困惑している兵士たちは行動が遅かった。
少年は間合いを一気に詰めるとともに、大剣を引き抜くと兵士を殺した。
「な、何をするんだ」
「うるさい」
武器を構える前に殺された者、武器を構えたはいいが対応しきれずに殺された者……。
立っている者が自分だけの状態になって少年はつぶやいた。
「エクエス遅いなぁ……もう少し離れたところで待っていた方がいいのかな……レチタティーヴォ様のところに帰りたいなぁ……」
少年は不安そうに周囲を見回す。
「……あ、クロフェドみたいなことできないかなぁ……」
自分のポケットに何かないか漁り、使えそうなものを見つける。
「できるかも……」
にこりと微笑むと集中を始めた。
●聞こえた悲鳴
遠出から帰る途中のハンターたちは、後一息で野営地だとどこかほっと息を付いていた。まだ油断はできないが、気が緩むのを止めるのは難しい。
悲鳴とも怒号とも取れる声が聞こえた。大きな戦闘の音は届かないが、何か不測の事態が起こっているのは間違いなかった。
顔を見合わせるとともに、現場に急行する。
声がした先で見たのは、不自然な動きをする兵士たちと、胸の前で祈るように手を組む14歳くらいの少年の姿だった。
状況の把握のため、ハンターたちは武器を抜きつつも動きを止める。声を掛けるにしても慎重にならざるを得ない。
雑魔となった死体に襲われている少年なのか?
少年が原因で死体が動いているのか?
少年はハンターに嫌悪をにじませた顔を向ける。
「もうハンターが来たのか。どうしようか?」
組んだ手も動かさず、視線も不自然な動きの死体から外すことはない。
ハンターが問いかけをしようとしたとき、別の人物が現れる。
「プエル様、捜しましたよ。ところで、何をなさっているんですか?」
少年・プエルの側までやってきて青年は様子をうかがう。青年の視線はハンターから逸らさず、動きがあれば腰に提げている剣を抜くだろう位置に手が動いている。
「遊んでいらっしゃるのはいいですが、突然いなくなられると驚きますから一言断ってくださいよ。レチタティーヴォ様いらっしゃいますのに寄り道されるとは……」
レチタティーヴォの名前を聞いてプエルは、嬉しそうなそして困ったような表情を浮かべる。
この二人が、災厄の十三魔の一人であるレチタティーヴォの名につながる位置にいるらしいと明らかになり、ハンターたちは臨戦態勢を整える。
「エクエス、こいつらどうしよう。それと、2つ、いないんだ」
「兵士の死体の話ですか? 捜すか、奴らを殺すか、どっちかにしませんか?」
プエルを守るようにエクエスは前に出た、盛大な溜息と共に。
「ところで、これはどれほど役に立つんですか?」
エクエスは鈍い動きの兵士を指してプエルに問うが、返事はなかった。
リプレイ本文
●死体と少年と
歪虚の会話というより、エクエスの方がハンターに聞かせるようにしゃべっていたようだった。ハンターはその間に体勢を整え、警戒しつつ間合いを詰める。
エルバッハ・リオン(ka2434)は眉を寄せてマジカルステッキを握りしめる。
「動く死体となった兵士たちと怪しげな少年ですか。怪しい状況ですね」
呟きながら警戒を強め、魔法で攻撃できるところまで仲間と一緒に進む。
「あの少年……プエルという子が操っているってことかしら?」
ベリト・アルミラ(ka4331)は分析をする。死体を操る敵の話は耳にしているが、実際見るのは違う。
「あの歪虚の手によって亡者に変えられたみたいだな。俺たちにできるのは、あの歪虚を撃破し、亡者に安らかな眠りを与えてやるくらいか。全力で当たるとしよう」
榊 兵庫(ka0010)は槍を構え、仕掛けるタイミングを計る。操られている死体がどう動くのかは不安要素だ。
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)はまさかの遭遇に喜びと怒りがわく。辺境の騒動の中、先日、助けようとした命を奪ったプエルが目の前にいる。
試作電撃刀を無言のうちに鞘から引き抜く。
この動作を見たエクエスは両の剣を鞘から引き抜く。仕方がないという様子が癪に障る。
「あいつ……」
プエルが絞り出すようにつぶやく。
「おや、お知り合いがおりましたか?」
返答はない。プエルが無理に集中しようとしていると確信し、エクエスは薄く笑う。
「てめぇ! なんの真似だ! 何もんだ!」
リュー・グランフェスト(ka2419)は一気に駆けつけたいが、距離が中途半端すぎる。死者の数が少ないということは、生存者がいる可能性もあり、こちらに気を引かせるのも重要だ。
「何でこんなところに十三魔の眷属がいるかわからねぇが、とりあえず、とっととお引き取り願おうか!」
柊 真司(ka0705)は挑発しつつ、アサルトライフルを向ける。死体が間にあるため状況は良くないが、仲間との連携で先手を打てるはずだ。
「くっ、眷属級の歪虚二体と遭遇した! 合流……いや、援軍を呼んできてくれ。それまでは持たせてみせる!」
鳴神 真吾(ka2626)がトランシーバーで連絡を取るふりをする。本当に取れればありがたかったが、さすがに無理があった。レチタティーヴォの配下とは遭遇したこともあり、その時を思い出すと怒りに震える。
「プエル様、いくらあなたでもこれ以上ハンターを呼びこみたくはないでしょう? あのお方のところに参りましょう?」
真吾の声を聞いたエクエスは楽しそうにしゃべり、プエルを一瞥する。
エリス・ブーリャ(ka3419)は死体の兵士たちを眺め、あっと思った。野営地で昨日、仕事するとは偉いね、と思い話しかけたのだ。怒りが沸騰する。
「ねーねー、クラーレ・クラーラってヒト知ってる? あんたと同じ嫉妬の女から聞いた名前なんだけどさ。ところで嫉妬は内臓も陶器でできてんの? どうなってんのか試させろよ、なぁ」
この脅しの一言は行動開始の合図となった。
「おやおや、プエル様、怖いエルフがおりますよ? どうしますか?」
エクエスは軽く流しているが、ハンターたちは行動を加速させていた。
●騎士のささやき
エルバッハのファイアボールが死体たちを吹き飛ばす。
ベリトのファイアアローが死体を貫いた。
攻撃のために死体との距離を詰めていた兵庫とエリスは足を止めて一瞬考える。
最初の二人の魔法が当たってない一体以外、すでに地面に転がっているのだ。
このまま歪虚に向かうか、死体が動かないことを確認するか。
「本当に何もないのか?」
後衛と共に用心のために兵庫は武器を構える。
「爆発する……とかもない? 弱すぎ!」
まだ死体は一体残っているし、プエルの握る手には何かあるかもしれないと睨み、エリスは機導砲を撃てる位置を取った。
遮蔽物となっていた死体を避けるように回り込んで来たリュー、レイオス、真司、真吾。魔法で死体がほぼ壊滅なのを横目で見て、罠か否か判断付かない。挟まれないように、左右から攻撃を仕掛ける。
「オレの名はレイオス・アクアウォーカー! 蒼の世界から来た赤髪の戦士! お前達の名は知っているが今度は自分の口で名乗りやがれ!」
レイオスは攻撃に移るための距離を保ち、怒鳴る。
「余、余は……ああ! もう!」
集中を切ってプエルは口を一文字に結び、手を開く。かろうじて立っていた死体が自然と倒れた。
「余の名はプエル。レチタティーヴォ様に従い、さえずる者……これで満足か?」
「私はプエル様をお守りする騎士でございますゆえ、別段名乗るところはございません」
エクエスは前に来ているレイオスに目を細め笑いかける。彼が発する殺気から、プエルが言った「あいつ」ではないかと推測する。
「死体を玩ぶのは同じでも単純な技量も悪辣さもラトス・ケーオには及ばん。文字通り児戯だな」
あっさり倒れた死体を見て、アサルトライフルを向け真吾が挑発する。相手が怒りにまかせた攻撃になれば隙が生じ狙いやすくなる。
プエルは真吾を睨み付け、大剣の柄に手を掛けた。
「プエル様、怒っても仕方がありませんよ。そもそも、どうやっていたんです? 適材適所でございますし」
「クロフェドに……余のやり方でやったんだ!」
明らかに失敗したとしか言いようがなく、プエルは羞恥か怒りか頬を紅潮させる。
「まずは先手を打たせてもらう!」
真司のアサルトライフルの銃声が響きプエルをかすった。
「うおおおおおおおおおお!」
リューは鋭い声と共に刀を突きたてる。彼の素早い動きにより、プエルの腕に当たる。
「あ、ううう」
辛そうな声が歪虚の少年から洩れるが、怒りに満ちた光が紫の瞳に宿る。
「『暇ではない』なんて言ってた割りに遊んでんじゃねぇか。それともレチタなんとかに見捨てられたか?」
からかうように、挑発するようにレイオスは言い、刀を振るう。刃はエクエスの胴をかする。
「なっ……余、余は……」
蒼白な顔になっているプエルに真吾の銃弾、エリスの機導砲が迫るが、怯えてうずくまるようなしぐさをしたため回避する。
「プエル様、下賤な輩の言葉などに惑わされてはなりません。幼気な少年であるあなたは、可愛ら……凛々しくふるまえばよいのです。あなたの働きはきちんとあの方は観ておりますよ。それに、人間なんて殺した方がいいのは以前からあなたも言ってますよね?」
「うん……そうだ……余の大切なものを奪ったのは人間……」
殺気を吹きあがらせプエルは大剣を引き抜いた。腕が不自由になっているため、いささかぎこちない動作ではある。
エクエスはプエルから離れ、レイオスの右側に回り込むように剣を振るった。レイオスによって剣は避けられる。
エルバッハは魔法の範囲もあるため、近づきつつ戦場をうかがっていた。エクエスがプエルと距離を取ったのが気になった。何かあると不安をおぼえウィンドガストをリューにかける。
リューは鋭い突きを繰り出した。金に輝く光と共に、プエルの胴に突き刺さる。
涙目でプエルが見上げてくる。攻撃の手を緩めそうな表情であるが、歪虚であるため容赦はしない。
プエルからエクエスを引き離した状態でレイオスが武器を振るう。
「いいのかよ、坊や、放っておいて」
「あなたこそ、良いんですか? プエル様、倒したいのでは?」
エクエスは攻撃を受けた割には涼しい顔で挑発する。
レイオスは奥歯をかみしめ、自制を働かせる。連携を取ってこそ勝てるのだから。
プエルを守るように見せて全く気にしていないエクエスに、真司は奇妙な物を感じる。そのため、注意をしつつ確実に攻撃の手を加える。
「それよりさ、さっきから聞いていると、エルちゃんならこんな奴の上司は死んでもヤだけどね」
エリスはプエルに機導砲を叩きこみながら言う。
「おや、嫌われたようですね」
プエルが応えない代わりにじっとりと声が返ってくる。
兵庫は疲弊が見えるプエルに攻撃をして畳み掛けるが、避けられた。
真吾がエクエスを牽制するためにも撃つが、避けられる。
「少しでも役に立つわ」
後方からベリトは魔法を放った。命中し、プエルはむっとしているようだ。
「さっきまでのお返しだ」
プエルは負傷している腕をかばいつつも、器用に舞うように大剣を一閃させる。
兵庫は一歩下がって回避できたが、踏込過ぎていたのかリューはよけきれずに切り刻まれるような感覚をおぼえた。
「ふふっ」
プエルは微笑みながら、元の構えに戻る。満足していないのは明らかで、兵庫を鋭く睨み付けている。
エクエスは二振りの剣を突き刺すように薙ぎ払うようにそれぞれ振るった。無数の刃の通り道となった範囲にいた、レイオスと真吾は回避を余儀なくされる。レイオスは回避が間に合わずザクリと斬られた。やや後方にいた真吾は辛くもよけた。
こう着状態になってくる。
数もあるのでハンター側には有利に働いているが、満身創痍に近づいていく。歪虚側はプエルが負傷しているものの攻撃力・体力は余裕がありそうで脅威である。
魔法を唱える者、銃を構える者。乱戦状態になれば狙いにくくなってくる。
「エクエス、余は人間捜しに行くよ?」
こう着状態にはなるのはプエルも気づいており、この状況に飽きてきている。負傷しているがまだ動く気があり、さばききる自信があるのだろう。
「こういっては何ですが……プエル様、退くことも肝要ですよ?」
人間は殺すべきとたきつけていた口で撤退を言う。
プエルは揺れる瞳でハンターを見る。
「分かった、退く」
あっさりと決断した。
しかし、対峙しているため、動くに動けない。
目の前にいるリューや兵庫が黙って通すわけもない。
プエルの表情は見る見るうちに不機嫌になる。
「そうですよねぇ、退かせてもらえませんよね」
エクエスは笑うが、レイオスが睨み付け、銃口も向く中、さすがに構えを解かない。
「私、実は、プエル様が見逃してしまったらしい兵士を見てしまったんですよ」
「なぜ、教えない!」
ハンターたちに動揺と焦りが生じる。嘘かもしれないため、体勢は崩さない。
「教えてもいいですが、あなたは動けなかったでしょう?」
「あっ」
「それに、これ以上時間つぶすと本格的に遅れますよ? プエル様は困るでしょう?」
「……うん。クロフェドもラトスももういるんだよね……」
エクエスが肯定したため、プエルは大剣を構えたまま後退する。エクエスがその側にやはり背中を見せずに後退する。
「どうです? 皆様、私はプエル様を連れて立ち去ります。もちろん、そこにいる生きている兵士には手を出しません。悪い取引ではないでしょう?」
「信用しろというのか」
レイオスの絞り出した声にエクエスは微笑みながらうなずく。
「ええ、そうですね」
歪虚を信用することはまずありえないし、これまでの口ぶりからエクエスは信用できない代表ではないか。
まだ子供じみている分プエルの方が言葉は真っ直ぐだ。途中で気が変わる危険があっても。
「行くぞ、エクエス」
つまらなそうに大剣を鞘にしまうプエル。
完全に無防備だ、狙いたい、一撃でもくらわしてやりたいとレイオスは思う。
エクエスが剣を仕舞ったら攻撃を仕掛けるか? ハンターの中にかすめる考え。
エクエスは剣をしまった直後に殺気を感じたのか、狙ったようにしゃべった。
「そうそう、プエル様が皆様を巻き込む魔法を使える能力がない、と決めつけていませんか?」
これまで使っていないから嘘だといえる。
使う理由がなかったから本当ともいえる。
硬直したハンターをしり目に、エクエスは嫌がるプエルをなだめて前に抱きかかえ、悠然と歩きだす。
その腕の陰から、プエルはじっとハンターを見つめ牽制をしていた。一瞬、灌木のあたりでプエルの足が動いたが、エクエスが抱きかかえているため何もなかった。
狙われないか疑い、殺してしまいたいと呪うように、プエルは目をハンターから離さなかった。
●生存者たち
「どこまでが本当か全くわからない」
兵庫は二体とも見えなくなったところで、全身の力が抜けた。エクエスの口調は惑うには十分だった。
「畜生!」
レイオスはプエルに対し、自分の手で一撃を食らわせられなかった。しかし、レチタティーヴォに捨てられることを極度に恐れている様子を見せていたのは、隙になる情報であると考える。
「生存者……そこ大木の裏?」
ベリトは近づく。先程、エクエスが言っていたこと、立ち去る際にプエルが反応していたことを考えたら誰かいるはずだ。
「おい、誰かいるか? もう歪虚どもはいなくなった」
真司が声を掛けると恐る恐る兵士が出てきた。
「よく、無事だったよな」
真吾は安堵させるように明るい表情を見せる。
「飛び込んできたとき、意を決して反対側に逃げたんです」
出てきたはいいが安堵で腰が砕けたようで、二人は座り込んだ。
「本当に良かった……注意力があまりなく助かったというか」
リューはプエルから一撃食らった傷に触れ、少しまずいなと思った。
「あいつ、元人間じゃないの?」
エリスは首をかしげた。違和感はあるのだが、具体的にここというものは見えない。衣類等に手がかりもなかったし、王国にゆかりがあるから着ている服だったのかもしれない。
人間が歪虚に転じることがあるため、ありえない事ではない。漠然とした情報から推測はできても確信はできない。
「本当にあの子、魔法を使えるのでしょうか」
つぶやいたエルバッハだが、エクエスのはったりだと思う方が強かった。立ち去る時、兵士を見つけた時点で使ってしまえばいいのだから。
ハンターと生き残った二人の兵士は、死体を回収してホープに戻ることとなる。
その前に、死体の一つだけはプエルが途中で放棄したため、操った痕跡を見いだせるかもしれないと確認してみることした。
「死体は、雑魔化していないんじゃないの? 鎧とかは妙に劣化しているけど」
攻撃もしているベリトは眉をひそめる。斬られた後しか見つかっていない。
「鎧と何かを使って操っていたんでしょうか?」
エルバッハはプエルの状況を思い起こし首をかしげた。
「あいつ、以前も死体操れそうなことも言っていたが、結局引きずって行った」
レイオスが辛い記憶を引っ張り出した。
「死体を操るということに関して、奴はたいした脅威ではなかったということだな。ただ、脅かすには十分かもしれないが」
兵庫は渋面を作る。
「それに十三魔と合流しているみたいなこと言っていた」
真司は唇を噛む、まだ何か起こるという不安。
「何にせよ、屈さない、歪虚は叩き潰す」
真吾の言葉に仲間たちはうなずいた。
歪虚の会話というより、エクエスの方がハンターに聞かせるようにしゃべっていたようだった。ハンターはその間に体勢を整え、警戒しつつ間合いを詰める。
エルバッハ・リオン(ka2434)は眉を寄せてマジカルステッキを握りしめる。
「動く死体となった兵士たちと怪しげな少年ですか。怪しい状況ですね」
呟きながら警戒を強め、魔法で攻撃できるところまで仲間と一緒に進む。
「あの少年……プエルという子が操っているってことかしら?」
ベリト・アルミラ(ka4331)は分析をする。死体を操る敵の話は耳にしているが、実際見るのは違う。
「あの歪虚の手によって亡者に変えられたみたいだな。俺たちにできるのは、あの歪虚を撃破し、亡者に安らかな眠りを与えてやるくらいか。全力で当たるとしよう」
榊 兵庫(ka0010)は槍を構え、仕掛けるタイミングを計る。操られている死体がどう動くのかは不安要素だ。
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)はまさかの遭遇に喜びと怒りがわく。辺境の騒動の中、先日、助けようとした命を奪ったプエルが目の前にいる。
試作電撃刀を無言のうちに鞘から引き抜く。
この動作を見たエクエスは両の剣を鞘から引き抜く。仕方がないという様子が癪に障る。
「あいつ……」
プエルが絞り出すようにつぶやく。
「おや、お知り合いがおりましたか?」
返答はない。プエルが無理に集中しようとしていると確信し、エクエスは薄く笑う。
「てめぇ! なんの真似だ! 何もんだ!」
リュー・グランフェスト(ka2419)は一気に駆けつけたいが、距離が中途半端すぎる。死者の数が少ないということは、生存者がいる可能性もあり、こちらに気を引かせるのも重要だ。
「何でこんなところに十三魔の眷属がいるかわからねぇが、とりあえず、とっととお引き取り願おうか!」
柊 真司(ka0705)は挑発しつつ、アサルトライフルを向ける。死体が間にあるため状況は良くないが、仲間との連携で先手を打てるはずだ。
「くっ、眷属級の歪虚二体と遭遇した! 合流……いや、援軍を呼んできてくれ。それまでは持たせてみせる!」
鳴神 真吾(ka2626)がトランシーバーで連絡を取るふりをする。本当に取れればありがたかったが、さすがに無理があった。レチタティーヴォの配下とは遭遇したこともあり、その時を思い出すと怒りに震える。
「プエル様、いくらあなたでもこれ以上ハンターを呼びこみたくはないでしょう? あのお方のところに参りましょう?」
真吾の声を聞いたエクエスは楽しそうにしゃべり、プエルを一瞥する。
エリス・ブーリャ(ka3419)は死体の兵士たちを眺め、あっと思った。野営地で昨日、仕事するとは偉いね、と思い話しかけたのだ。怒りが沸騰する。
「ねーねー、クラーレ・クラーラってヒト知ってる? あんたと同じ嫉妬の女から聞いた名前なんだけどさ。ところで嫉妬は内臓も陶器でできてんの? どうなってんのか試させろよ、なぁ」
この脅しの一言は行動開始の合図となった。
「おやおや、プエル様、怖いエルフがおりますよ? どうしますか?」
エクエスは軽く流しているが、ハンターたちは行動を加速させていた。
●騎士のささやき
エルバッハのファイアボールが死体たちを吹き飛ばす。
ベリトのファイアアローが死体を貫いた。
攻撃のために死体との距離を詰めていた兵庫とエリスは足を止めて一瞬考える。
最初の二人の魔法が当たってない一体以外、すでに地面に転がっているのだ。
このまま歪虚に向かうか、死体が動かないことを確認するか。
「本当に何もないのか?」
後衛と共に用心のために兵庫は武器を構える。
「爆発する……とかもない? 弱すぎ!」
まだ死体は一体残っているし、プエルの握る手には何かあるかもしれないと睨み、エリスは機導砲を撃てる位置を取った。
遮蔽物となっていた死体を避けるように回り込んで来たリュー、レイオス、真司、真吾。魔法で死体がほぼ壊滅なのを横目で見て、罠か否か判断付かない。挟まれないように、左右から攻撃を仕掛ける。
「オレの名はレイオス・アクアウォーカー! 蒼の世界から来た赤髪の戦士! お前達の名は知っているが今度は自分の口で名乗りやがれ!」
レイオスは攻撃に移るための距離を保ち、怒鳴る。
「余、余は……ああ! もう!」
集中を切ってプエルは口を一文字に結び、手を開く。かろうじて立っていた死体が自然と倒れた。
「余の名はプエル。レチタティーヴォ様に従い、さえずる者……これで満足か?」
「私はプエル様をお守りする騎士でございますゆえ、別段名乗るところはございません」
エクエスは前に来ているレイオスに目を細め笑いかける。彼が発する殺気から、プエルが言った「あいつ」ではないかと推測する。
「死体を玩ぶのは同じでも単純な技量も悪辣さもラトス・ケーオには及ばん。文字通り児戯だな」
あっさり倒れた死体を見て、アサルトライフルを向け真吾が挑発する。相手が怒りにまかせた攻撃になれば隙が生じ狙いやすくなる。
プエルは真吾を睨み付け、大剣の柄に手を掛けた。
「プエル様、怒っても仕方がありませんよ。そもそも、どうやっていたんです? 適材適所でございますし」
「クロフェドに……余のやり方でやったんだ!」
明らかに失敗したとしか言いようがなく、プエルは羞恥か怒りか頬を紅潮させる。
「まずは先手を打たせてもらう!」
真司のアサルトライフルの銃声が響きプエルをかすった。
「うおおおおおおおおおお!」
リューは鋭い声と共に刀を突きたてる。彼の素早い動きにより、プエルの腕に当たる。
「あ、ううう」
辛そうな声が歪虚の少年から洩れるが、怒りに満ちた光が紫の瞳に宿る。
「『暇ではない』なんて言ってた割りに遊んでんじゃねぇか。それともレチタなんとかに見捨てられたか?」
からかうように、挑発するようにレイオスは言い、刀を振るう。刃はエクエスの胴をかする。
「なっ……余、余は……」
蒼白な顔になっているプエルに真吾の銃弾、エリスの機導砲が迫るが、怯えてうずくまるようなしぐさをしたため回避する。
「プエル様、下賤な輩の言葉などに惑わされてはなりません。幼気な少年であるあなたは、可愛ら……凛々しくふるまえばよいのです。あなたの働きはきちんとあの方は観ておりますよ。それに、人間なんて殺した方がいいのは以前からあなたも言ってますよね?」
「うん……そうだ……余の大切なものを奪ったのは人間……」
殺気を吹きあがらせプエルは大剣を引き抜いた。腕が不自由になっているため、いささかぎこちない動作ではある。
エクエスはプエルから離れ、レイオスの右側に回り込むように剣を振るった。レイオスによって剣は避けられる。
エルバッハは魔法の範囲もあるため、近づきつつ戦場をうかがっていた。エクエスがプエルと距離を取ったのが気になった。何かあると不安をおぼえウィンドガストをリューにかける。
リューは鋭い突きを繰り出した。金に輝く光と共に、プエルの胴に突き刺さる。
涙目でプエルが見上げてくる。攻撃の手を緩めそうな表情であるが、歪虚であるため容赦はしない。
プエルからエクエスを引き離した状態でレイオスが武器を振るう。
「いいのかよ、坊や、放っておいて」
「あなたこそ、良いんですか? プエル様、倒したいのでは?」
エクエスは攻撃を受けた割には涼しい顔で挑発する。
レイオスは奥歯をかみしめ、自制を働かせる。連携を取ってこそ勝てるのだから。
プエルを守るように見せて全く気にしていないエクエスに、真司は奇妙な物を感じる。そのため、注意をしつつ確実に攻撃の手を加える。
「それよりさ、さっきから聞いていると、エルちゃんならこんな奴の上司は死んでもヤだけどね」
エリスはプエルに機導砲を叩きこみながら言う。
「おや、嫌われたようですね」
プエルが応えない代わりにじっとりと声が返ってくる。
兵庫は疲弊が見えるプエルに攻撃をして畳み掛けるが、避けられた。
真吾がエクエスを牽制するためにも撃つが、避けられる。
「少しでも役に立つわ」
後方からベリトは魔法を放った。命中し、プエルはむっとしているようだ。
「さっきまでのお返しだ」
プエルは負傷している腕をかばいつつも、器用に舞うように大剣を一閃させる。
兵庫は一歩下がって回避できたが、踏込過ぎていたのかリューはよけきれずに切り刻まれるような感覚をおぼえた。
「ふふっ」
プエルは微笑みながら、元の構えに戻る。満足していないのは明らかで、兵庫を鋭く睨み付けている。
エクエスは二振りの剣を突き刺すように薙ぎ払うようにそれぞれ振るった。無数の刃の通り道となった範囲にいた、レイオスと真吾は回避を余儀なくされる。レイオスは回避が間に合わずザクリと斬られた。やや後方にいた真吾は辛くもよけた。
こう着状態になってくる。
数もあるのでハンター側には有利に働いているが、満身創痍に近づいていく。歪虚側はプエルが負傷しているものの攻撃力・体力は余裕がありそうで脅威である。
魔法を唱える者、銃を構える者。乱戦状態になれば狙いにくくなってくる。
「エクエス、余は人間捜しに行くよ?」
こう着状態にはなるのはプエルも気づいており、この状況に飽きてきている。負傷しているがまだ動く気があり、さばききる自信があるのだろう。
「こういっては何ですが……プエル様、退くことも肝要ですよ?」
人間は殺すべきとたきつけていた口で撤退を言う。
プエルは揺れる瞳でハンターを見る。
「分かった、退く」
あっさりと決断した。
しかし、対峙しているため、動くに動けない。
目の前にいるリューや兵庫が黙って通すわけもない。
プエルの表情は見る見るうちに不機嫌になる。
「そうですよねぇ、退かせてもらえませんよね」
エクエスは笑うが、レイオスが睨み付け、銃口も向く中、さすがに構えを解かない。
「私、実は、プエル様が見逃してしまったらしい兵士を見てしまったんですよ」
「なぜ、教えない!」
ハンターたちに動揺と焦りが生じる。嘘かもしれないため、体勢は崩さない。
「教えてもいいですが、あなたは動けなかったでしょう?」
「あっ」
「それに、これ以上時間つぶすと本格的に遅れますよ? プエル様は困るでしょう?」
「……うん。クロフェドもラトスももういるんだよね……」
エクエスが肯定したため、プエルは大剣を構えたまま後退する。エクエスがその側にやはり背中を見せずに後退する。
「どうです? 皆様、私はプエル様を連れて立ち去ります。もちろん、そこにいる生きている兵士には手を出しません。悪い取引ではないでしょう?」
「信用しろというのか」
レイオスの絞り出した声にエクエスは微笑みながらうなずく。
「ええ、そうですね」
歪虚を信用することはまずありえないし、これまでの口ぶりからエクエスは信用できない代表ではないか。
まだ子供じみている分プエルの方が言葉は真っ直ぐだ。途中で気が変わる危険があっても。
「行くぞ、エクエス」
つまらなそうに大剣を鞘にしまうプエル。
完全に無防備だ、狙いたい、一撃でもくらわしてやりたいとレイオスは思う。
エクエスが剣を仕舞ったら攻撃を仕掛けるか? ハンターの中にかすめる考え。
エクエスは剣をしまった直後に殺気を感じたのか、狙ったようにしゃべった。
「そうそう、プエル様が皆様を巻き込む魔法を使える能力がない、と決めつけていませんか?」
これまで使っていないから嘘だといえる。
使う理由がなかったから本当ともいえる。
硬直したハンターをしり目に、エクエスは嫌がるプエルをなだめて前に抱きかかえ、悠然と歩きだす。
その腕の陰から、プエルはじっとハンターを見つめ牽制をしていた。一瞬、灌木のあたりでプエルの足が動いたが、エクエスが抱きかかえているため何もなかった。
狙われないか疑い、殺してしまいたいと呪うように、プエルは目をハンターから離さなかった。
●生存者たち
「どこまでが本当か全くわからない」
兵庫は二体とも見えなくなったところで、全身の力が抜けた。エクエスの口調は惑うには十分だった。
「畜生!」
レイオスはプエルに対し、自分の手で一撃を食らわせられなかった。しかし、レチタティーヴォに捨てられることを極度に恐れている様子を見せていたのは、隙になる情報であると考える。
「生存者……そこ大木の裏?」
ベリトは近づく。先程、エクエスが言っていたこと、立ち去る際にプエルが反応していたことを考えたら誰かいるはずだ。
「おい、誰かいるか? もう歪虚どもはいなくなった」
真司が声を掛けると恐る恐る兵士が出てきた。
「よく、無事だったよな」
真吾は安堵させるように明るい表情を見せる。
「飛び込んできたとき、意を決して反対側に逃げたんです」
出てきたはいいが安堵で腰が砕けたようで、二人は座り込んだ。
「本当に良かった……注意力があまりなく助かったというか」
リューはプエルから一撃食らった傷に触れ、少しまずいなと思った。
「あいつ、元人間じゃないの?」
エリスは首をかしげた。違和感はあるのだが、具体的にここというものは見えない。衣類等に手がかりもなかったし、王国にゆかりがあるから着ている服だったのかもしれない。
人間が歪虚に転じることがあるため、ありえない事ではない。漠然とした情報から推測はできても確信はできない。
「本当にあの子、魔法を使えるのでしょうか」
つぶやいたエルバッハだが、エクエスのはったりだと思う方が強かった。立ち去る時、兵士を見つけた時点で使ってしまえばいいのだから。
ハンターと生き残った二人の兵士は、死体を回収してホープに戻ることとなる。
その前に、死体の一つだけはプエルが途中で放棄したため、操った痕跡を見いだせるかもしれないと確認してみることした。
「死体は、雑魔化していないんじゃないの? 鎧とかは妙に劣化しているけど」
攻撃もしているベリトは眉をひそめる。斬られた後しか見つかっていない。
「鎧と何かを使って操っていたんでしょうか?」
エルバッハはプエルの状況を思い起こし首をかしげた。
「あいつ、以前も死体操れそうなことも言っていたが、結局引きずって行った」
レイオスが辛い記憶を引っ張り出した。
「死体を操るということに関して、奴はたいした脅威ではなかったということだな。ただ、脅かすには十分かもしれないが」
兵庫は渋面を作る。
「それに十三魔と合流しているみたいなこと言っていた」
真司は唇を噛む、まだ何か起こるという不安。
「何にせよ、屈さない、歪虚は叩き潰す」
真吾の言葉に仲間たちはうなずいた。
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作戦掲示板 エリス・ブーリャ(ka3419) エルフ|17才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/04/26 03:32:29 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/04/22 17:02:33 |