ゲスト
(ka0000)
枯山に散る鎮魂歌
マスター:朝海りく

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/05/02 09:00
- 完成日
- 2015/05/09 23:46
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●鎮魂歌
ああ、一体どうして、こんな事になってしまったのか。
焼けるような痛み、否、これは神経を直接えぐられるような痛みだろうか。身体のどこがどう痛いのか分からないけれど、ただ、とにかく、痛い。
内側から鼓膜を叩きつけるような心音と、それに混じって聞こえてくる仲間たちの悲鳴、断末魔の叫び。ああ、ついさっきまで一緒に笑っていたのに、一緒に音を奏でていたのに、ああ、どうして。
彼女は身体を引きずるように地面を這った。思うように進まない。進めない。じりじりと動くことしか出来ない自分に苛立ちが募る。膨らむ焦燥。不思議と、恐怖は感じない。
前方で、必死に駆けていた仲間が一人、また倒れた。
勝ち誇ったかのように低く轟く咆哮が、山道の空気をびりびりと震わせる。
彼女は唇を噛んだ。途端に口の中に広がる血の味、匂い。
誰も彼も、仲間たちはみな、一様に地面に転がっている。自分たちの乗っていた馬車さえもひっくり返り、中の荷物が散乱していた。
ああ、あれは我らが子供たちに贈る大切なものだったのに。どうしてこんなことに。どうして。どうして。
彼女は幾度となく同じ問いを繰り返しながら、それでも、地面に這いつくばり、じりじり、じりじりと進み続ける。
やっとの思いで、彼の元に辿り着けた。うつ伏せに寝転がる彼の手を握る。まだ、温もりが残っていた。彼が生きていた証。しかしぴくりとも動かないその指は、どんなに、どんなに強く握ろうとも、それを返してくれることは、ない。
(――――こんなことなら……)
こんなことになるのなら、あのとき、素直に頷いていれば良かった。ばかみたい、なんて茶化さずに、ちゃんと、向き合っていれば良かったのだ。
ほんの小一時間前に彼が贈ってくれた、優しくもあたたかな旋律。想いのこもった美しい音色。
彼の想いは届いたけれど、自分のこころは行き場をなくしてしまった。伝えることは、もう出来ない。
彼女は、赤く濡れた土に爪を立てた。
大地の精霊よ、これが試練だというのならば、無力な私たちにはあんまりです。
大地の精霊よ、これが罰だというのならば、私たちは一体どんな罪を犯したというのでしょうか。
大地の精霊よ。
どうか、加護を。どうか、慈悲を。
せめて彼が、仲間たちが、安らかに眠れるように。その魂が、迷うことなく貴方の元へ召されるように。どうか、どうか。
どうか――――……。
彼女は鉛のような身体をゆっくりと起こした。足の感覚はなかったけれど、かろうじて座ることだけは出来た。
上空を旋回していた強大な殺戮者が、ばさりと翼を羽ばたかせる。
それを視界の端に捉えながら、彼女は、彼の手を両手で握り締めたまま口を開いた。ひゅうひゅうと喉が鳴る。声が掠れた。
それでも、音を繋いでゆく。想いを込めて、願いを込めて。
死にゆく者へ捧げる鎮魂歌は、間もなくして、散った。
●ハンターズソサエティ支部
「そう、ですか……」
受付嬢は、苦々しく息を吐き出した。
あまりにも凄惨な光景だったと、最後にそう付け足した男もまた、目を伏せたまま顔を上げずにいる。
草木もまばらな山道で見たあの光景は、今でも男の目に焼き付いて、離れない。
あちらこちらに転がる骸。引きずり倒されたような馬車が二台と、その周囲に散乱していた独特の形状を持つ楽器の数々。恐らく、民族音楽を中心とした小さな楽団か何かだったのだろう。
中でも、引きずったような血の跡の先で、若い男女が手を重ねたまま息絶えているその様を目にした時には、胸が詰まる思いだったという。
「……あの山に、ワイバーンが棲みついちまったって噂は聞いたことがある。抜けた先にゃだだっ広い荒野と部族集落がいくつかあるだけだから、通る奴もそういねぇとは思うけどよ」
男は、無精髭の生えた頬を掻いた。
その先を引き継ぐように、受付嬢が小さくも強く、頷く。
「わかりました、討伐依頼として至急手続きに移ります。……あなたも、しばらくは近付かないようにしてくださいね」
「ああ、そうするよ。……お山の大将が居なくなるまで、俺の里帰りも……延期だな」
揶揄するようにそう言って口元に笑みを張り付ける彼もまた、複雑な思いを抱えているようだった。しかしそれを吐き出すつもりはないのか、そのまま受付嬢に背を向けた。支部を出ようと一歩進んだところで、ふと振り返る。
「……頼んだぜ」
短い言葉だった。しかしその瞳の奥に垣間見える、憤りや、物哀しさや、様々に、ごちゃごちゃに混ざる感情を持て余すように男は目を細めた。
その瞳を真っ直ぐに見つめ返した彼女は、依頼を請け負うハンター達に代わり、もう一度、力強く頷いた。
ああ、一体どうして、こんな事になってしまったのか。
焼けるような痛み、否、これは神経を直接えぐられるような痛みだろうか。身体のどこがどう痛いのか分からないけれど、ただ、とにかく、痛い。
内側から鼓膜を叩きつけるような心音と、それに混じって聞こえてくる仲間たちの悲鳴、断末魔の叫び。ああ、ついさっきまで一緒に笑っていたのに、一緒に音を奏でていたのに、ああ、どうして。
彼女は身体を引きずるように地面を這った。思うように進まない。進めない。じりじりと動くことしか出来ない自分に苛立ちが募る。膨らむ焦燥。不思議と、恐怖は感じない。
前方で、必死に駆けていた仲間が一人、また倒れた。
勝ち誇ったかのように低く轟く咆哮が、山道の空気をびりびりと震わせる。
彼女は唇を噛んだ。途端に口の中に広がる血の味、匂い。
誰も彼も、仲間たちはみな、一様に地面に転がっている。自分たちの乗っていた馬車さえもひっくり返り、中の荷物が散乱していた。
ああ、あれは我らが子供たちに贈る大切なものだったのに。どうしてこんなことに。どうして。どうして。
彼女は幾度となく同じ問いを繰り返しながら、それでも、地面に這いつくばり、じりじり、じりじりと進み続ける。
やっとの思いで、彼の元に辿り着けた。うつ伏せに寝転がる彼の手を握る。まだ、温もりが残っていた。彼が生きていた証。しかしぴくりとも動かないその指は、どんなに、どんなに強く握ろうとも、それを返してくれることは、ない。
(――――こんなことなら……)
こんなことになるのなら、あのとき、素直に頷いていれば良かった。ばかみたい、なんて茶化さずに、ちゃんと、向き合っていれば良かったのだ。
ほんの小一時間前に彼が贈ってくれた、優しくもあたたかな旋律。想いのこもった美しい音色。
彼の想いは届いたけれど、自分のこころは行き場をなくしてしまった。伝えることは、もう出来ない。
彼女は、赤く濡れた土に爪を立てた。
大地の精霊よ、これが試練だというのならば、無力な私たちにはあんまりです。
大地の精霊よ、これが罰だというのならば、私たちは一体どんな罪を犯したというのでしょうか。
大地の精霊よ。
どうか、加護を。どうか、慈悲を。
せめて彼が、仲間たちが、安らかに眠れるように。その魂が、迷うことなく貴方の元へ召されるように。どうか、どうか。
どうか――――……。
彼女は鉛のような身体をゆっくりと起こした。足の感覚はなかったけれど、かろうじて座ることだけは出来た。
上空を旋回していた強大な殺戮者が、ばさりと翼を羽ばたかせる。
それを視界の端に捉えながら、彼女は、彼の手を両手で握り締めたまま口を開いた。ひゅうひゅうと喉が鳴る。声が掠れた。
それでも、音を繋いでゆく。想いを込めて、願いを込めて。
死にゆく者へ捧げる鎮魂歌は、間もなくして、散った。
●ハンターズソサエティ支部
「そう、ですか……」
受付嬢は、苦々しく息を吐き出した。
あまりにも凄惨な光景だったと、最後にそう付け足した男もまた、目を伏せたまま顔を上げずにいる。
草木もまばらな山道で見たあの光景は、今でも男の目に焼き付いて、離れない。
あちらこちらに転がる骸。引きずり倒されたような馬車が二台と、その周囲に散乱していた独特の形状を持つ楽器の数々。恐らく、民族音楽を中心とした小さな楽団か何かだったのだろう。
中でも、引きずったような血の跡の先で、若い男女が手を重ねたまま息絶えているその様を目にした時には、胸が詰まる思いだったという。
「……あの山に、ワイバーンが棲みついちまったって噂は聞いたことがある。抜けた先にゃだだっ広い荒野と部族集落がいくつかあるだけだから、通る奴もそういねぇとは思うけどよ」
男は、無精髭の生えた頬を掻いた。
その先を引き継ぐように、受付嬢が小さくも強く、頷く。
「わかりました、討伐依頼として至急手続きに移ります。……あなたも、しばらくは近付かないようにしてくださいね」
「ああ、そうするよ。……お山の大将が居なくなるまで、俺の里帰りも……延期だな」
揶揄するようにそう言って口元に笑みを張り付ける彼もまた、複雑な思いを抱えているようだった。しかしそれを吐き出すつもりはないのか、そのまま受付嬢に背を向けた。支部を出ようと一歩進んだところで、ふと振り返る。
「……頼んだぜ」
短い言葉だった。しかしその瞳の奥に垣間見える、憤りや、物哀しさや、様々に、ごちゃごちゃに混ざる感情を持て余すように男は目を細めた。
その瞳を真っ直ぐに見つめ返した彼女は、依頼を請け負うハンター達に代わり、もう一度、力強く頷いた。
リプレイ本文
●山道へ
討伐を担うハンター一行は、町で借りた馬車を山の中腹――楽団が被害に遭ったと思われる場所に停め、戦闘に備えて簡単な片付け作業を行っていた。
「うげげ。こりゃひどいっすね。しかし火事場泥棒のチャン……」
チャンス、と言おうとした神楽(ka2032)が、慌てて口をつぐんだ。共に作業にあたる仲間達の目があったのも勿論だが、それに加えて、同行させたパルムもいる。
ごほんと咳払いをひとつ、それからパルムを横目に見つつ言い直しておく。
「可哀想だから故郷に連れて帰ってやるっす! そしたら謝礼が貰えそうっすし」
「神楽さん、本音が出てるよ」
付け足された言葉と、どんどん遺体を馬車に放り込んでいく神楽の様子に、ルーエル・ゼクシディア(ka2473)が思わず苦笑をこぼした。しかし、すぐにその表情がくもる。
「本当は、すぐにでも供養してあげたいんだけどね……」
散乱する遺体を馬車の中へと運びながら、そう呟いた。地面を踏みしめてみると、山道の地盤が固いことが分かる。亡骸も決して少なくはない。埋葬するとしてもそれなりの時間が掛かるだろう。せめて障害にならないよう、ひとまず移動させておくに留めていた。
辺りに立ち込める、気分が悪くなるような死のにおい。キーリ(ka4642)は、いまだ転がったままの骸を見つめ、悲しそうに目を細めた。
「いつの世も、悲劇が、人を、物語を動かすのね。……この人たち、あとでちゃんと弔ってあげなきゃね」
キーリの言葉に、ルーエルが深く頷いた。
(無念だったろうな……なんの慰めにもならねぇかも知れないが、仇は必ず討つぜ)
仲間達の言葉を耳に、ラスティ(ka1400)もまた心の中で、静かに、強く、そう語りかけた。そしてその強い意志は、仇となる敵へと向けられる。
「ワイバーンね……幻獣の一種なのか、それとも歪虚なのか。……状況から見ても、音か、音楽に反応したってとこか」
オフィスで得た情報と現場の状況を照らし合わせ、飛竜であるワイバーンの行動を推測していく。
それに対して頷いたのは、ショウコ=ヒナタ(ka4653)だ。
「そうだね、音楽か騒音か……。それに、夜には死んでたらしいし、日中に襲撃されたって考えるのが妥当かな」
手を取り合う男女の遺体を確認し、彼らが被害に遭った楽団であると確信した。あとは戦闘を有利に運ぶための準備を整えるだけだ。ショウコが、立ち上がる。
「聖ジョージでもジークフリートでもないんだけどね、全く」
それは以前、リアルブルーで耳にしたことのある、竜討伐にまつわる名だ。溜息混じりに呟きながら、散乱している楽器を物色していく。木製のものばかりだったが、その中にひとつ、鉄琴らしきものを見つけた。使えそうだ。
そんな中、蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)もまた、煙管を片手に考えを巡らせていた。
「依頼主は夜間、現場に着く迄に何ぞ違和感は無かったのかの? それに、何故わざわざ夜間に山を登ったのか……? 敵の出現を把握して居ったのか、はたまた死者の声を聞いたか……それ以外の可能性か……」
依頼主の男は多くを語らなかったというが――思いを巡らせる蜜鈴への答えは、後日知れる事となる。
――――あの日、男は、故郷に住まう妻から娘が誕生したとの知らせを受け、早馬を駆ったという。しかしその道中で遭遇したのは、この惨状。失われた命を目の当たりにして、新たな生命の誕生を手放しで喜ぶことは、できなかったのだとか――――。
●音に乗せて
死者達を収めた馬車を神楽が離れた位置に移動させ、あらかた現場を片付け終えたハンター達は、ワイバーンを誘き出すための準備に入った。それぞれが持参していた楽器を手にする。
「演奏するなら簡単な曲が良いかもな。それをパルムに記憶させる」
ラスティが、同行しているパルムへと瞳を向けた。
「……来てくれるかな、ワイバーン。来てくれなきゃ困るんだけどね」
のんびりした声で言葉を重ねたキーリは、パフーとハーモニカを吹き鳴らした。
それに続くようにラスティがオカリナで音を奏で、ルーエルが横笛を吹く。
ショウコがハーモニカを鳴らし、その音を旋律に乗せていく。
そしてリズムを取るように、神楽がタンバリンをジャカジャカと鳴らした。
「いえーいっす! 俺上手い! これは世界が狙えるっすよ!」
そんな陽気な声を聞きながら、蜜鈴は風の流れを読み、風下に位置するよう移動した。
空に響く音色。被害に遭ったあの楽団も、こんなふうに演奏をしながら進んでいたのだろうか。
蜜鈴は、煙管から立ち上る紫煙の中、そっと瞼を伏せた。
「……辛く悲しき想いの音色……奏でたるは死者の魂、響き渡るは死者の想い……鎮魂曲の最終章は、我らが奏で、終えようて……」
ゆっくりと瞳を上げ、ワイバーンの出現に備えて空を見据えた。
●討つべき者
それからしばらく演奏を続け、そのまま山頂に向けての行軍を開始しようとした、その時だった。
轟く咆哮。ハンター達に、にわかに緊張が走る。
「……来たぜ」
鋭敏視覚――やや優れた視覚を持つラスティのその瞳が、山影から姿を現したワイバーンをいち早く捉える。
それに重なるようにして、敵が、再び大きく鳴いた。山道に佇むハンター達を見つけたのか、翼で風を受け、空を切り、突っ込んでくる。速い。
「ご先祖様たっけて~っす!」
声を上げた神楽の身体に宿ってゆく力。コンバートソウルにより自らの戦闘能力を高めていく。
即座に敵が風下に、仲間が風上になる位置へと移動した蜜鈴が、口を開いた。
「悲痛なる夢への誘い、死したる者の声を聞き、懺悔の夢へ堕ちよ」
呪歌と共に広がる眠りへと誘う青白いガス。スリープクラウドが、滑空するワイバーンの身体を包み込む。その翼から力が抜け、がくん、と巨体が下がった。
無防備なその腹部に、ルーエルが放ったまばゆい光弾が撃ち込まれる。その強い衝撃により目覚めた敵が、再び翼を羽ばたかせた。
「火力はみんなに任せるね、がんばってー。……私は、あなたの妨害!」
共に討伐に臨む仲間達に主力を託し、キーリは少しでも敵の飛行を妨害しようと動く。大きく開いた翼に光の矢が向かい、撃ち込まれた。
しかしワイバーンは痛みに怯むことなく、巨躯を前傾させた。再び空を切り、突っ込んでくる。
標的となったルーエルは、とっさに岩壁へと飛びのき、それをかわした。
続けざまにその後方に居たキーリへと襲い掛かる飛竜。鋭い爪が、彼女の肩に食い込んだ。
動きを止めた敵に向けられる、銃口。倒れた馬車の影に身を隠していたショウコが、ピストルにマテリアルを込め、翼膜を狙い、撃った。
ラスティも構えていたライフルの照準を敵へと合わせていた。引き鉄に掛けていた指に力を込め、撃つ。
続けざまに火花を散らせる二つの銃口、響き渡る二種の銃声。ショウコの強弾と、ラスティが放った弾丸がその翼に風穴を開ける。
ワイバーンは重なる攻撃を避けるように身体を浮かせた。彼らの頭上を通り過ぎ、旋回する。
「あの翼、見たとこ鳥や虫の翼膜……戦闘機の主翼って感じかな。翼さえ潰せば落ちそうだね」
「ああ、歪虚でもなさそうだしな」
ショウコとラスティが後方へと向かった敵に向き直り、それぞれ銃を構える。
大きく旋回したワイバーンは、仲間達の後方、山道の下方に佇む蜜鈴目掛け、再び襲い掛かってきた。開いた口から覗く、鋭くも鈍く光る牙。
「叩き落としてやるっす!」
神楽が、迫りくるワイバーンに狙いを定める。照準を合わせ、その翼に弾丸を撃ち込んだ。銃弾がその硬い皮膜を貫き、新たな風穴を作る。
攻撃を仕掛けてくる敵を阻むように放たれた、ルーエルのホーリーライト。光弾が輝線を描き、飛竜の顔を焼いた。
標的となった蜜鈴は、しかし逃げることなく弓を引いていた。弦がギリ、と音を立てる。放たれた矢が、その口内に突き刺さった。
追い討ちを掛けるように、キーリがマジックアローを放つ。
ワイバーンはそれを避けるように蜜鈴の前から離れた。空中を再び旋回し、今度はラスティへと向かう。
「どの道、既に被害者が出ちまってる以上、たとえ相手が竜だろうが駆逐するまでだ」
ラスティが、迫る飛竜を迎え撃つ。重たい銃声を伴い発砲された銃弾が、その胴部に食い込んでいく。
それでもワイバーンは攻撃の一手に出た。ラスティを襲う鋭い爪。かばうように上げた腕に痛みが走る。
同時に翼に撃ち込まれる、弾丸。背後から飛んできたそれは、ショウコが撃ったものだった。先程見つけた鉄琴を利用した跳弾、さらにマテリアルを込めた強弾が、ワイバーンの翼を射抜いた。
ハンター達の猛攻。敵の攻撃も強力なものだったが、負傷者が増えるたびに、ルーエルがすぐさまヒーリングスフィアで回復していく。
一方、回復の術を持たないワイバーンの翼は、すでにその機能を失っていた。いくら羽ばたいても、無数に開いた穴から空気が抜けていく。上昇出来ない。
地面から1mも離れていない低空で、もがくようにばさばさと翼を振るう敵に向かい、神楽が駆けた。
「逃がさねっす!」
ワイバーンに近接し、祖霊の力を宿した長剣を大きく振り抜く。クラッシュブロウだ。威力の上がったその一太刀が、翼を大きく切り裂いた。
悲鳴にも似た咆哮を上げたワイバーンが地に落ちた。それでも、死に物狂いで抵抗する。神楽に噛みつき、そのまま、崖下に放るように首を振った。
「ひーっ! ヤバイ! 死ぬ! 死ぬっす!」
「誓いの盾、堅牢なる檻、その身を以って災いより護れ」
響き渡る蜜鈴の呪歌。崖際に立てられた土壁が、放り出された神楽を受け止める。
皮膚に食い込んだ竜の牙に痛みこそあれど、窮地は免れた。地面に着地した神楽は、額に浮かぶ汗を拭う。
「蜜鈴さん、助かったっす!」
「油断は禁物じゃて……まだ……終わっては居らぬらしいからの」
微笑みを返した蜜鈴の瞳が、ワイバーンへと向けられた。
その言葉通り、飛行の術を失くした飛竜は、地を蹴った。その傾斜を利用し、ばさばさと翼を振るって、地響きのような足音を立てながら、彼らをなぎ倒そうと突っ込んでくる。
ラスティが、その胴部に向けて弾丸を注ぎ込み、岩壁側へと飛び退いた。
その横を駆け抜けたショウコが、地を滑って翼の下を抜け、その背に飛び乗る。
「雑魚に上を取られる気分はどうかな?」
ワイバーンを見下ろし、背中に銃弾を撃ち込んだ。不安定なその背中から、転がるように降り、地面へと着地する。
向かってくるワイバーンを、真正面からキーリが見据えた。
「弱肉強食とはよく言ったものね。あなたはこの場でゲームオーバー」
彼女が放った光り輝く一矢が、ワイバーンの顔を直撃した。その足が、がくんと折れる。
「縄張りを守るためとはいえ、彼らを『追い出す』ではなく『殺める』手段を取った時点で……こうなる運命だったんだ。悪いけど、キミと同じ手段を取らせてもらう」
ワイバーンに近接したルーエルがパイルバンカーを構える。マテリアルを込め、その持ち手を引いた。直後、高速で放たれた杭がその腹を穿つ。
前へと傾いだ巨体が、そのまま崩れ落ちた。
「あなたの物語はここでおしまい。残念だったね」
「……せめて己の選んだこの地で眠れ」
キーリとルーエルの静かな声が、戦いの終幕を告げる。
罪無き命を奪ったワイバーンは、舞い上がる土煙の中、息絶えた――――。
●死者の弔い
討伐を終えたハンター達の前に並ぶ、名も無き楽団の、遺体。
「僕はここで彼らを弔っていくよ。……僕には、このくらいしかしてあげられないけど」
ルーエルが遺体を見つめたまま、そう告げた。その手には、ワイバーンの爪が握られている。討伐の証拠として、オフィスへ持ち帰るものだ。
「私も手伝うよ。……って言っても、私はエルフ式のお祈りしか知らないんだけどね。んー、聖導師の君、人間式のお祈りを教えて?」
「もちろん。……ありがとう、嬉しいよ」
小首を傾げるキーリに、ルーエルが笑みを返す。
その隣に佇んでいた蜜鈴もまた、煙管を片手に微笑んだ。
「妾は鎮魂の舞をの? 妾の民は空へと還す舞であったが、此の者達は大地へ還りたいと望む様じゃの……願いは、叶えようて……」
蜜鈴がゆっくりと、静かに、舞う。死者への弔い――……その想いを込めて。
「……おやすみ……」
優しい声が、無念の死を遂げた楽団たちに掛けられた。
「現世では無理だったけど、後世では……ううん、来世では、幸せにね」
寄り添うように並ぶ男女の骸に、キーリがそっと語りかける。
「弔いが終わったら、全部まとめて故郷に届けてくるっすよ」
神楽が、自身が借りてきた馬車をトントンと叩いた。中には遺品と、土産らしき物が積まれている。遺体もあるため全部は積み切れなかったが、それでも供養にはなるだろう。
「……皆、近くで埋葬してあげたほうが良さそうかな。特に男女の二人組はね。……伝えてもらえるかな」
「りょーかいっす!」
ルーエルの言葉に、神楽が元気良く返した。
蜜鈴、キーリ、ルーエルの三人によって行われる死者の弔い。
ラスティはそれを見守っていた。仇は、討った。少しでも、その無念は晴れただろうか。
「可哀想だとは思うけど……これも運命だね」
静かに弔いの様子を眺めていたショウコが、ぽつりと、呟いた。
討伐を担うハンター一行は、町で借りた馬車を山の中腹――楽団が被害に遭ったと思われる場所に停め、戦闘に備えて簡単な片付け作業を行っていた。
「うげげ。こりゃひどいっすね。しかし火事場泥棒のチャン……」
チャンス、と言おうとした神楽(ka2032)が、慌てて口をつぐんだ。共に作業にあたる仲間達の目があったのも勿論だが、それに加えて、同行させたパルムもいる。
ごほんと咳払いをひとつ、それからパルムを横目に見つつ言い直しておく。
「可哀想だから故郷に連れて帰ってやるっす! そしたら謝礼が貰えそうっすし」
「神楽さん、本音が出てるよ」
付け足された言葉と、どんどん遺体を馬車に放り込んでいく神楽の様子に、ルーエル・ゼクシディア(ka2473)が思わず苦笑をこぼした。しかし、すぐにその表情がくもる。
「本当は、すぐにでも供養してあげたいんだけどね……」
散乱する遺体を馬車の中へと運びながら、そう呟いた。地面を踏みしめてみると、山道の地盤が固いことが分かる。亡骸も決して少なくはない。埋葬するとしてもそれなりの時間が掛かるだろう。せめて障害にならないよう、ひとまず移動させておくに留めていた。
辺りに立ち込める、気分が悪くなるような死のにおい。キーリ(ka4642)は、いまだ転がったままの骸を見つめ、悲しそうに目を細めた。
「いつの世も、悲劇が、人を、物語を動かすのね。……この人たち、あとでちゃんと弔ってあげなきゃね」
キーリの言葉に、ルーエルが深く頷いた。
(無念だったろうな……なんの慰めにもならねぇかも知れないが、仇は必ず討つぜ)
仲間達の言葉を耳に、ラスティ(ka1400)もまた心の中で、静かに、強く、そう語りかけた。そしてその強い意志は、仇となる敵へと向けられる。
「ワイバーンね……幻獣の一種なのか、それとも歪虚なのか。……状況から見ても、音か、音楽に反応したってとこか」
オフィスで得た情報と現場の状況を照らし合わせ、飛竜であるワイバーンの行動を推測していく。
それに対して頷いたのは、ショウコ=ヒナタ(ka4653)だ。
「そうだね、音楽か騒音か……。それに、夜には死んでたらしいし、日中に襲撃されたって考えるのが妥当かな」
手を取り合う男女の遺体を確認し、彼らが被害に遭った楽団であると確信した。あとは戦闘を有利に運ぶための準備を整えるだけだ。ショウコが、立ち上がる。
「聖ジョージでもジークフリートでもないんだけどね、全く」
それは以前、リアルブルーで耳にしたことのある、竜討伐にまつわる名だ。溜息混じりに呟きながら、散乱している楽器を物色していく。木製のものばかりだったが、その中にひとつ、鉄琴らしきものを見つけた。使えそうだ。
そんな中、蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)もまた、煙管を片手に考えを巡らせていた。
「依頼主は夜間、現場に着く迄に何ぞ違和感は無かったのかの? それに、何故わざわざ夜間に山を登ったのか……? 敵の出現を把握して居ったのか、はたまた死者の声を聞いたか……それ以外の可能性か……」
依頼主の男は多くを語らなかったというが――思いを巡らせる蜜鈴への答えは、後日知れる事となる。
――――あの日、男は、故郷に住まう妻から娘が誕生したとの知らせを受け、早馬を駆ったという。しかしその道中で遭遇したのは、この惨状。失われた命を目の当たりにして、新たな生命の誕生を手放しで喜ぶことは、できなかったのだとか――――。
●音に乗せて
死者達を収めた馬車を神楽が離れた位置に移動させ、あらかた現場を片付け終えたハンター達は、ワイバーンを誘き出すための準備に入った。それぞれが持参していた楽器を手にする。
「演奏するなら簡単な曲が良いかもな。それをパルムに記憶させる」
ラスティが、同行しているパルムへと瞳を向けた。
「……来てくれるかな、ワイバーン。来てくれなきゃ困るんだけどね」
のんびりした声で言葉を重ねたキーリは、パフーとハーモニカを吹き鳴らした。
それに続くようにラスティがオカリナで音を奏で、ルーエルが横笛を吹く。
ショウコがハーモニカを鳴らし、その音を旋律に乗せていく。
そしてリズムを取るように、神楽がタンバリンをジャカジャカと鳴らした。
「いえーいっす! 俺上手い! これは世界が狙えるっすよ!」
そんな陽気な声を聞きながら、蜜鈴は風の流れを読み、風下に位置するよう移動した。
空に響く音色。被害に遭ったあの楽団も、こんなふうに演奏をしながら進んでいたのだろうか。
蜜鈴は、煙管から立ち上る紫煙の中、そっと瞼を伏せた。
「……辛く悲しき想いの音色……奏でたるは死者の魂、響き渡るは死者の想い……鎮魂曲の最終章は、我らが奏で、終えようて……」
ゆっくりと瞳を上げ、ワイバーンの出現に備えて空を見据えた。
●討つべき者
それからしばらく演奏を続け、そのまま山頂に向けての行軍を開始しようとした、その時だった。
轟く咆哮。ハンター達に、にわかに緊張が走る。
「……来たぜ」
鋭敏視覚――やや優れた視覚を持つラスティのその瞳が、山影から姿を現したワイバーンをいち早く捉える。
それに重なるようにして、敵が、再び大きく鳴いた。山道に佇むハンター達を見つけたのか、翼で風を受け、空を切り、突っ込んでくる。速い。
「ご先祖様たっけて~っす!」
声を上げた神楽の身体に宿ってゆく力。コンバートソウルにより自らの戦闘能力を高めていく。
即座に敵が風下に、仲間が風上になる位置へと移動した蜜鈴が、口を開いた。
「悲痛なる夢への誘い、死したる者の声を聞き、懺悔の夢へ堕ちよ」
呪歌と共に広がる眠りへと誘う青白いガス。スリープクラウドが、滑空するワイバーンの身体を包み込む。その翼から力が抜け、がくん、と巨体が下がった。
無防備なその腹部に、ルーエルが放ったまばゆい光弾が撃ち込まれる。その強い衝撃により目覚めた敵が、再び翼を羽ばたかせた。
「火力はみんなに任せるね、がんばってー。……私は、あなたの妨害!」
共に討伐に臨む仲間達に主力を託し、キーリは少しでも敵の飛行を妨害しようと動く。大きく開いた翼に光の矢が向かい、撃ち込まれた。
しかしワイバーンは痛みに怯むことなく、巨躯を前傾させた。再び空を切り、突っ込んでくる。
標的となったルーエルは、とっさに岩壁へと飛びのき、それをかわした。
続けざまにその後方に居たキーリへと襲い掛かる飛竜。鋭い爪が、彼女の肩に食い込んだ。
動きを止めた敵に向けられる、銃口。倒れた馬車の影に身を隠していたショウコが、ピストルにマテリアルを込め、翼膜を狙い、撃った。
ラスティも構えていたライフルの照準を敵へと合わせていた。引き鉄に掛けていた指に力を込め、撃つ。
続けざまに火花を散らせる二つの銃口、響き渡る二種の銃声。ショウコの強弾と、ラスティが放った弾丸がその翼に風穴を開ける。
ワイバーンは重なる攻撃を避けるように身体を浮かせた。彼らの頭上を通り過ぎ、旋回する。
「あの翼、見たとこ鳥や虫の翼膜……戦闘機の主翼って感じかな。翼さえ潰せば落ちそうだね」
「ああ、歪虚でもなさそうだしな」
ショウコとラスティが後方へと向かった敵に向き直り、それぞれ銃を構える。
大きく旋回したワイバーンは、仲間達の後方、山道の下方に佇む蜜鈴目掛け、再び襲い掛かってきた。開いた口から覗く、鋭くも鈍く光る牙。
「叩き落としてやるっす!」
神楽が、迫りくるワイバーンに狙いを定める。照準を合わせ、その翼に弾丸を撃ち込んだ。銃弾がその硬い皮膜を貫き、新たな風穴を作る。
攻撃を仕掛けてくる敵を阻むように放たれた、ルーエルのホーリーライト。光弾が輝線を描き、飛竜の顔を焼いた。
標的となった蜜鈴は、しかし逃げることなく弓を引いていた。弦がギリ、と音を立てる。放たれた矢が、その口内に突き刺さった。
追い討ちを掛けるように、キーリがマジックアローを放つ。
ワイバーンはそれを避けるように蜜鈴の前から離れた。空中を再び旋回し、今度はラスティへと向かう。
「どの道、既に被害者が出ちまってる以上、たとえ相手が竜だろうが駆逐するまでだ」
ラスティが、迫る飛竜を迎え撃つ。重たい銃声を伴い発砲された銃弾が、その胴部に食い込んでいく。
それでもワイバーンは攻撃の一手に出た。ラスティを襲う鋭い爪。かばうように上げた腕に痛みが走る。
同時に翼に撃ち込まれる、弾丸。背後から飛んできたそれは、ショウコが撃ったものだった。先程見つけた鉄琴を利用した跳弾、さらにマテリアルを込めた強弾が、ワイバーンの翼を射抜いた。
ハンター達の猛攻。敵の攻撃も強力なものだったが、負傷者が増えるたびに、ルーエルがすぐさまヒーリングスフィアで回復していく。
一方、回復の術を持たないワイバーンの翼は、すでにその機能を失っていた。いくら羽ばたいても、無数に開いた穴から空気が抜けていく。上昇出来ない。
地面から1mも離れていない低空で、もがくようにばさばさと翼を振るう敵に向かい、神楽が駆けた。
「逃がさねっす!」
ワイバーンに近接し、祖霊の力を宿した長剣を大きく振り抜く。クラッシュブロウだ。威力の上がったその一太刀が、翼を大きく切り裂いた。
悲鳴にも似た咆哮を上げたワイバーンが地に落ちた。それでも、死に物狂いで抵抗する。神楽に噛みつき、そのまま、崖下に放るように首を振った。
「ひーっ! ヤバイ! 死ぬ! 死ぬっす!」
「誓いの盾、堅牢なる檻、その身を以って災いより護れ」
響き渡る蜜鈴の呪歌。崖際に立てられた土壁が、放り出された神楽を受け止める。
皮膚に食い込んだ竜の牙に痛みこそあれど、窮地は免れた。地面に着地した神楽は、額に浮かぶ汗を拭う。
「蜜鈴さん、助かったっす!」
「油断は禁物じゃて……まだ……終わっては居らぬらしいからの」
微笑みを返した蜜鈴の瞳が、ワイバーンへと向けられた。
その言葉通り、飛行の術を失くした飛竜は、地を蹴った。その傾斜を利用し、ばさばさと翼を振るって、地響きのような足音を立てながら、彼らをなぎ倒そうと突っ込んでくる。
ラスティが、その胴部に向けて弾丸を注ぎ込み、岩壁側へと飛び退いた。
その横を駆け抜けたショウコが、地を滑って翼の下を抜け、その背に飛び乗る。
「雑魚に上を取られる気分はどうかな?」
ワイバーンを見下ろし、背中に銃弾を撃ち込んだ。不安定なその背中から、転がるように降り、地面へと着地する。
向かってくるワイバーンを、真正面からキーリが見据えた。
「弱肉強食とはよく言ったものね。あなたはこの場でゲームオーバー」
彼女が放った光り輝く一矢が、ワイバーンの顔を直撃した。その足が、がくんと折れる。
「縄張りを守るためとはいえ、彼らを『追い出す』ではなく『殺める』手段を取った時点で……こうなる運命だったんだ。悪いけど、キミと同じ手段を取らせてもらう」
ワイバーンに近接したルーエルがパイルバンカーを構える。マテリアルを込め、その持ち手を引いた。直後、高速で放たれた杭がその腹を穿つ。
前へと傾いだ巨体が、そのまま崩れ落ちた。
「あなたの物語はここでおしまい。残念だったね」
「……せめて己の選んだこの地で眠れ」
キーリとルーエルの静かな声が、戦いの終幕を告げる。
罪無き命を奪ったワイバーンは、舞い上がる土煙の中、息絶えた――――。
●死者の弔い
討伐を終えたハンター達の前に並ぶ、名も無き楽団の、遺体。
「僕はここで彼らを弔っていくよ。……僕には、このくらいしかしてあげられないけど」
ルーエルが遺体を見つめたまま、そう告げた。その手には、ワイバーンの爪が握られている。討伐の証拠として、オフィスへ持ち帰るものだ。
「私も手伝うよ。……って言っても、私はエルフ式のお祈りしか知らないんだけどね。んー、聖導師の君、人間式のお祈りを教えて?」
「もちろん。……ありがとう、嬉しいよ」
小首を傾げるキーリに、ルーエルが笑みを返す。
その隣に佇んでいた蜜鈴もまた、煙管を片手に微笑んだ。
「妾は鎮魂の舞をの? 妾の民は空へと還す舞であったが、此の者達は大地へ還りたいと望む様じゃの……願いは、叶えようて……」
蜜鈴がゆっくりと、静かに、舞う。死者への弔い――……その想いを込めて。
「……おやすみ……」
優しい声が、無念の死を遂げた楽団たちに掛けられた。
「現世では無理だったけど、後世では……ううん、来世では、幸せにね」
寄り添うように並ぶ男女の骸に、キーリがそっと語りかける。
「弔いが終わったら、全部まとめて故郷に届けてくるっすよ」
神楽が、自身が借りてきた馬車をトントンと叩いた。中には遺品と、土産らしき物が積まれている。遺体もあるため全部は積み切れなかったが、それでも供養にはなるだろう。
「……皆、近くで埋葬してあげたほうが良さそうかな。特に男女の二人組はね。……伝えてもらえるかな」
「りょーかいっす!」
ルーエルの言葉に、神楽が元気良く返した。
蜜鈴、キーリ、ルーエルの三人によって行われる死者の弔い。
ラスティはそれを見守っていた。仇は、討った。少しでも、その無念は晴れただろうか。
「可哀想だとは思うけど……これも運命だね」
静かに弔いの様子を眺めていたショウコが、ぽつりと、呟いた。
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作戦相談卓 ラスティ(ka1400) 人間(リアルブルー)|20才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/05/01 21:11:03 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/04/27 22:48:15 |