• 戦闘

枯山に散る鎮魂歌

マスター:朝海りく

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/05/02 09:00
リプレイ完成予定
2015/05/11 09:00

オープニング

●鎮魂歌
 ああ、一体どうして、こんな事になってしまったのか。
 焼けるような痛み、否、これは神経を直接えぐられるような痛みだろうか。身体のどこがどう痛いのか分からないけれど、ただ、とにかく、痛い。
 内側から鼓膜を叩きつけるような心音と、それに混じって聞こえてくる仲間たちの悲鳴、断末魔の叫び。ああ、ついさっきまで一緒に笑っていたのに、一緒に音を奏でていたのに、ああ、どうして。
 彼女は身体を引きずるように地面を這った。思うように進まない。進めない。じりじりと動くことしか出来ない自分に苛立ちが募る。膨らむ焦燥。不思議と、恐怖は感じない。
 前方で、必死に駆けていた仲間が一人、また倒れた。
 勝ち誇ったかのように低く轟く咆哮が、山道の空気をびりびりと震わせる。
 彼女は唇を噛んだ。途端に口の中に広がる血の味、匂い。
 誰も彼も、仲間たちはみな、一様に地面に転がっている。自分たちの乗っていた馬車さえもひっくり返り、中の荷物が散乱していた。
 ああ、あれは我らが子供たちに贈る大切なものだったのに。どうしてこんなことに。どうして。どうして。
 彼女は幾度となく同じ問いを繰り返しながら、それでも、地面に這いつくばり、じりじり、じりじりと進み続ける。
 やっとの思いで、彼の元に辿り着けた。うつ伏せに寝転がる彼の手を握る。まだ、温もりが残っていた。彼が生きていた証。しかしぴくりとも動かないその指は、どんなに、どんなに強く握ろうとも、それを返してくれることは、ない。
(――――こんなことなら……)
 こんなことになるのなら、あのとき、素直に頷いていれば良かった。ばかみたい、なんて茶化さずに、ちゃんと、向き合っていれば良かったのだ。
 ほんの小一時間前に彼が贈ってくれた、優しくもあたたかな旋律。想いのこもった美しい音色。
 彼の想いは届いたけれど、自分のこころは行き場をなくしてしまった。伝えることは、もう出来ない。
 彼女は、赤く濡れた土に爪を立てた。

 大地の精霊よ、これが試練だというのならば、無力な私たちにはあんまりです。
 大地の精霊よ、これが罰だというのならば、私たちは一体どんな罪を犯したというのでしょうか。
 大地の精霊よ。
 どうか、加護を。どうか、慈悲を。
 せめて彼が、仲間たちが、安らかに眠れるように。その魂が、迷うことなく貴方の元へ召されるように。どうか、どうか。

 どうか――――……。

 彼女は鉛のような身体をゆっくりと起こした。足の感覚はなかったけれど、かろうじて座ることだけは出来た。
 上空を旋回していた強大な殺戮者が、ばさりと翼を羽ばたかせる。
 それを視界の端に捉えながら、彼女は、彼の手を両手で握り締めたまま口を開いた。ひゅうひゅうと喉が鳴る。声が掠れた。
 それでも、音を繋いでゆく。想いを込めて、願いを込めて。

 死にゆく者へ捧げる鎮魂歌は、間もなくして、散った。

●ハンターズソサエティ支部
「そう、ですか……」
 受付嬢は、苦々しく息を吐き出した。
 あまりにも凄惨な光景だったと、最後にそう付け足した男もまた、目を伏せたまま顔を上げずにいる。
 草木もまばらな山道で見たあの光景は、今でも男の目に焼き付いて、離れない。
 あちらこちらに転がる骸。引きずり倒されたような馬車が二台と、その周囲に散乱していた独特の形状を持つ楽器の数々。恐らく、民族音楽を中心とした小さな楽団か何かだったのだろう。
 中でも、引きずったような血の跡の先で、若い男女が手を重ねたまま息絶えているその様を目にした時には、胸が詰まる思いだったという。
「……あの山に、ワイバーンが棲みついちまったって噂は聞いたことがある。抜けた先にゃだだっ広い荒野と部族集落がいくつかあるだけだから、通る奴もそういねぇとは思うけどよ」
 男は、無精髭の生えた頬を掻いた。
 その先を引き継ぐように、受付嬢が小さくも強く、頷く。
「わかりました、討伐依頼として至急手続きに移ります。……あなたも、しばらくは近付かないようにしてくださいね」
「ああ、そうするよ。……お山の大将が居なくなるまで、俺の里帰りも……延期だな」
 揶揄するようにそう言って口元に笑みを張り付ける彼もまた、複雑な思いを抱えているようだった。しかしそれを吐き出すつもりはないのか、そのまま受付嬢に背を向けた。支部を出ようと一歩進んだところで、ふと振り返る。
「……頼んだぜ」
 短い言葉だった。しかしその瞳の奥に垣間見える、憤りや、物哀しさや、様々に、ごちゃごちゃに混ざる感情を持て余すように男は目を細めた。
 その瞳を真っ直ぐに見つめ返した彼女は、依頼を請け負うハンター達に代わり、もう一度、力強く頷いた。

解説

●依頼内容
ワイバーンの討伐。

●敵情報など
ワイバーン一体ですが、その個体戦闘能力は強め。サイズ2、常時飛行状態となります。
標的に対しては後肢の爪で切り付けるか、大きく鋭い牙を持つ口での噛みつきを行います。
※1ターンにつき、メインアクションでの攻撃回数が二回となります。

依頼を出しにきた男は現場を見て即座に引き返したとのことであり、ワイバーンには遭遇しておりません。
目撃情報が極端に少なく、山の何処に住処があるかは不明、出現条件もほぼ不明。
そのため、ただ山道を進むだけではすぐに遭遇出来ない可能性有。また、急な坂が続きますので、往復による疲労にも注意が必要です。
※往復回数もしくは移動距離に応じて、戦闘時の命中・回避判定にマイナス補正が入ります。片道一発で遭遇出来れば、能力値そのままに戦闘に移ります。

被害に遭った一団を含め、オープニングや下記情報からある程度推測して頂き、討伐依頼に臨んでください。
・男が山道を訪れたのが夜であること。現場を見てすぐさまその場を離れたこと。
・敵はその山を縄張りにしている飛竜であること。
・被害に遭ったのは演奏を好む楽団であったこと。

●地形情報
上記山道、横幅4スクエアの一本道での戦闘。
向かって左側は剥き出しの岩肌、右側は急勾配の崖となっています。
楽団が被害にあった場所(山の中腹辺り)で遭遇した場合には、そこかしこに彼らの亡骸がある上、馬車から散乱した荷物(楽器の他に、集落に住む子供たちのためのお菓子や装飾品など)が細々と散らばっていますので、足元にも注意が必要です。

マスターより

こんにちは、朝海りくです。
今までほのぼの系の依頼が中心でしたが、今回はハンターの皆様にがっつりしっかり戦って頂こうと思い、このような依頼を出しました。
敵はワイバーン、解説にもありますが能力としては強め。さらに遭遇までの行動が後の戦闘に大きく影響を与えることとなります。有利に運べるよう上手く立ち回って頂ければと思います。

そしてなにより、被害にあった名もなき小さな楽団の無念、やりきれない想い。
彼らに代わってそれを晴らし、そして、その魂が安らかな眠りにつけますよう皆様の力をお貸しくださいませ。

それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/05/09 23:46

参加者一覧

  • all-rounder
    ラスティ(ka1400
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 大悪党
    神楽(ka2032
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • 掲げた穂先に尊厳を
    ルーエル・ゼクシディア(ka2473
    人間(紅)|17才|男性|聖導士
  • ヒトとして生きるもの
    蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009
    エルフ|22才|女性|魔術師
  • メテオクイーン
    キーリ(ka4642
    エルフ|13才|女性|魔術師

  • ショウコ=ヒナタ(ka4653
    人間(蒼)|18才|女性|猟撃士
依頼相談掲示板
アイコン 作戦相談卓
ラスティ(ka1400
人間(リアルブルー)|20才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2015/05/01 21:11:03
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/04/27 22:48:15