ゲスト
(ka0000)
工業用水路に満ちる罠
マスター:村井朋靖

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/07/06 12:00
- 完成日
- 2014/07/12 21:14
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●排水に異常アリ
蒸気工場都市フマーレには、工業用に設けられた地下水路が大小いくつも入り組んでいる。
毎日のように使用される大量の水は、ここを通って工場へ。使用済みの水は、個々に設置された処理施設を経由した後に排水。その後、都市が管理する浄化施設で念入りに処理され、常に安全な水質を保っている。
工場を動かす人たちはもちろん、この整備された水路もまた、フマーレの財産なのだ。
そんなある日の小さな金物工場。
頑固職人がいつものように溜めた水を流そうと勢いよく栓を抜くが、相手はいつものように「おう!」と威勢よくは流れず、なんだか「ちょ、ちょっと待ってくださいね……」と遠慮がちにチョロチョロと吸い込んでいく。
「ん、なんだ? おい、社長! 水が詰まるぞー!」
「あいよ、ちょっと待っとくれ。今行くから」
職人より少しだけ若い、身なりのいい小太りの男が事務所から小走りで出てきた。
「どれどれ……ありゃ、これは随分と貧相な流れ方だねぇ。しかしうちの工場で水が詰まるなんて、なんとも珍しいよ」
報告した方も「うーん」と唸りながら記憶を遡らせるが、確かにここ数年ではまったく心当たりがない。
「まぁ、完全に詰まっちまう前によ、組合のフランコさんに伝えといてくれよ」
ここで名前の出たフランコ・カルヴィーニとは、フマーレ労働組合の長であり、自由都市評議会の評議会員も兼務している人物だ。
とはいえ、フマーレ全体において、雇用者側と労働者側との対立はほぼ皆無。労働組合は事務所こそあれど、こういった際に機能する程度である。
「よし、じゃあお願いしとくかね。でもしばらくは、これで我慢してくれよ」
「おうよ、わかった。しかしお前さんも、さすがに何日もこうはいられねぇよな。早くいつもの調子を取り戻したいだろ、ん?」
職人がそう話す頃、ようやくたくさんの水を飲み干し、返事がてらに「ゴポッ」という音を鳴らした。
●水路に異物アリ
金物工場の社長から連絡を受けた労働組合の事務員は、すばやく関係各所に連絡を飛ばす。この辺は手馴れたものだ。あっという間に段取りが整う。
そこへ職場から駆けつけたフランコが「お疲れさん!」と言いながら、ドカドカと事務所に入ってくる。
「すでにあの辺の水路を封鎖を依頼し、作業は完了しています。排水の迂回もうまくいってます。そろそろ、調査の方が現地に着いた頃でしょう」
「おお、手際がいいな。ハハハ、俺は来なくてよかったかな? しかし、おかしいなぁ。あの辺はめったに水が詰まったりしないんだが……」
社長と同じ疑問を覚えたフランコが首を傾げていると、いきなりツナギ姿の男が息を切らせながら事務所に飛び込んできた。彼は、水路の調査員のひとりである。
「た、た、大変です! あの工場の排水溝にスライムが詰まってます!」
「なんだって!」
この報告に、さすがのフランコもビックリ。事務員も開いた口が塞がらない。
「そいつはいけねぇ。早く陸軍に周辺を封鎖してもらって、すぐにハンターさんに依頼しねぇと!」
「あ、フランコさん! あそこの水路は高さはあるんですが、横幅がすごく狭いんで、討伐の際は気をつけてと伝えてくださーい!」
調査員の話を背中越しに聞き、組合長は「一緒に伝えとく!」と答え、ハンターオフィスに向かって駆け出した。
「そういえば……さっき『スライムが詰まっている』とおっしゃいませんでした?」
事務員はおかしな表現がどうにも気になっていたらしく、調査員に水を勧めながら尋ねる。
「ええ、なんだか据わりがいいらしくって。じっとして動かないんです。おかげで俺らは安全に逃げれたんですけど」
排水溝に引っ付いといて据わりがいいとは、これいかに。
とはいえ、このまま放置しても、金物工場の迷惑になるのは火を見るより明らかだ。今回は速やかな排除が求められる。
「そんな様を見たら、ハンターさんも驚くでしょうねぇ……」
事務員の妄想がどんな内容かはわからないが、調査員は「ええ……」と呟いた。
蒸気工場都市フマーレには、工業用に設けられた地下水路が大小いくつも入り組んでいる。
毎日のように使用される大量の水は、ここを通って工場へ。使用済みの水は、個々に設置された処理施設を経由した後に排水。その後、都市が管理する浄化施設で念入りに処理され、常に安全な水質を保っている。
工場を動かす人たちはもちろん、この整備された水路もまた、フマーレの財産なのだ。
そんなある日の小さな金物工場。
頑固職人がいつものように溜めた水を流そうと勢いよく栓を抜くが、相手はいつものように「おう!」と威勢よくは流れず、なんだか「ちょ、ちょっと待ってくださいね……」と遠慮がちにチョロチョロと吸い込んでいく。
「ん、なんだ? おい、社長! 水が詰まるぞー!」
「あいよ、ちょっと待っとくれ。今行くから」
職人より少しだけ若い、身なりのいい小太りの男が事務所から小走りで出てきた。
「どれどれ……ありゃ、これは随分と貧相な流れ方だねぇ。しかしうちの工場で水が詰まるなんて、なんとも珍しいよ」
報告した方も「うーん」と唸りながら記憶を遡らせるが、確かにここ数年ではまったく心当たりがない。
「まぁ、完全に詰まっちまう前によ、組合のフランコさんに伝えといてくれよ」
ここで名前の出たフランコ・カルヴィーニとは、フマーレ労働組合の長であり、自由都市評議会の評議会員も兼務している人物だ。
とはいえ、フマーレ全体において、雇用者側と労働者側との対立はほぼ皆無。労働組合は事務所こそあれど、こういった際に機能する程度である。
「よし、じゃあお願いしとくかね。でもしばらくは、これで我慢してくれよ」
「おうよ、わかった。しかしお前さんも、さすがに何日もこうはいられねぇよな。早くいつもの調子を取り戻したいだろ、ん?」
職人がそう話す頃、ようやくたくさんの水を飲み干し、返事がてらに「ゴポッ」という音を鳴らした。
●水路に異物アリ
金物工場の社長から連絡を受けた労働組合の事務員は、すばやく関係各所に連絡を飛ばす。この辺は手馴れたものだ。あっという間に段取りが整う。
そこへ職場から駆けつけたフランコが「お疲れさん!」と言いながら、ドカドカと事務所に入ってくる。
「すでにあの辺の水路を封鎖を依頼し、作業は完了しています。排水の迂回もうまくいってます。そろそろ、調査の方が現地に着いた頃でしょう」
「おお、手際がいいな。ハハハ、俺は来なくてよかったかな? しかし、おかしいなぁ。あの辺はめったに水が詰まったりしないんだが……」
社長と同じ疑問を覚えたフランコが首を傾げていると、いきなりツナギ姿の男が息を切らせながら事務所に飛び込んできた。彼は、水路の調査員のひとりである。
「た、た、大変です! あの工場の排水溝にスライムが詰まってます!」
「なんだって!」
この報告に、さすがのフランコもビックリ。事務員も開いた口が塞がらない。
「そいつはいけねぇ。早く陸軍に周辺を封鎖してもらって、すぐにハンターさんに依頼しねぇと!」
「あ、フランコさん! あそこの水路は高さはあるんですが、横幅がすごく狭いんで、討伐の際は気をつけてと伝えてくださーい!」
調査員の話を背中越しに聞き、組合長は「一緒に伝えとく!」と答え、ハンターオフィスに向かって駆け出した。
「そういえば……さっき『スライムが詰まっている』とおっしゃいませんでした?」
事務員はおかしな表現がどうにも気になっていたらしく、調査員に水を勧めながら尋ねる。
「ええ、なんだか据わりがいいらしくって。じっとして動かないんです。おかげで俺らは安全に逃げれたんですけど」
排水溝に引っ付いといて据わりがいいとは、これいかに。
とはいえ、このまま放置しても、金物工場の迷惑になるのは火を見るより明らかだ。今回は速やかな排除が求められる。
「そんな様を見たら、ハンターさんも驚くでしょうねぇ……」
事務員の妄想がどんな内容かはわからないが、調査員は「ええ……」と呟いた。
リプレイ本文
●水路を行く
問題の排水溝にスライムが詰まっていると聞き、ハンターたちは動き出した。
まずは前準備として、カルムカロマ=リノクス(ka0195)は調査員に「清掃に使う台を用意してほしい」と願い出る。
「この高さを利用しない手はないからね……」
それを聞いた調査員は、手分けして大きな箱を準備した。どうやらこれを重ねて土台とするらしい。
続いて、カルムカロマは所持しているトランシーバーを、メル・アイザックス(ka0520)に手渡す。
「ボクたちは、ここから二手に分かれる。その連絡用だよ」
メルは「了解だよ」と言いながらそれを受け取り、この先の水路を見つめる。
「こういう場所はちょっとでも止まれば、ビックリするほど利益が減るからね。さっさと解決しないとねぇ」
これを聞いたエルレーン(ka1020)が、湿度の高い水路の雰囲気に怯えながらコクリと頷く。
「このままだと、工場の人がこわいめにあってかぁいそうなの……がんばるの!」
エルレーンは慣れた手つきで手裏剣にボロ布を巻くが、いざトランシーバーを持つと急に手つきが怪しくなる。
「あれっ、そういえばこれの使い方しらない……ど、どうするんだっけ?」
あたふたするエルレーンを見て、メルが使い方を指南。そして少し距離を置き、通信が可能かどうかを確認する。
「あーあー、こちらメル。エルレーン君、聞こえるか?」
「えへ……聞こえるよ! 向こうの道具、か、かっこいいねぇ」
少女はなんとか使い方を覚え、それを同じ班で行動するジェーン・ノーワース(ka2004)にご報告する。
「通信できることが確認できれば、問題ないわ。それよりもこっちね」
ジェーンは調査員に用意してもらった水路の地図を確認し、ハンターが戦いやすい場所や敵に逃げ込まれたら困る場所を探っていた。
「スライムの棲む地点は挟み撃ちにできるけど、この辺に私たちが有利な地点はないわね」
それを聞いた同班のシヴェルク(ka1571)は「ならば、最善を尽くすまでです」と頷く。
「エルレーンさん。ジェーンさんと反対側へ回り込むまでは、用心してくださいね」
この水路がお気に入りとはいえ、相手はスライム。何をきっかけに動き出すかわからない。
エルフの少年・国貴(ka1936)はそれを聞き、クスリと微笑む。
「悪気はないみたいだけど、人に迷惑をかけるのはちょっとダメだよね……」
彼の言葉に、エルレーンも「うんうん」と頷く。
「さて、そろそろお仕事しよっか。あ、台運ぶの手伝うよ。力だけは自信があるんだ」
国貴は自分も使うのか、清掃員が用意した台を持って歩き出す。それにカルムカロマとメルも同行し、後の3人はぐるりと回り込むルートを進んだ。
●住居人との出会い
まずはスライムを正面で迎え撃つ3人が、問題の水路にゆっくりと接近。敵の居所を探る。
頭上から光が差し込むとはいえ、やや薄暗い。カルムカロマは軍人にハンディライトを預け、前を照らしてもらった。
「あ! あれです。あの排水溝です!」
「見事にすっぽりと嵌ってしまっているようだね……」
カルムカロマの感想に興味を持ったのか、メルも人を掻き分けて覗き込む。
そこには排水溝にすっぽり嵌ったスライムの姿があった。よく見ると、時折うねうねと動いている。
「なんで棲むかな、こんなところに……」
「よいしょっと。誰にだって自由に生きる権利がある、っていう主張なのかな?」
随分と難しいことをのたまった国貴に対し、カルムカロマは「お互いにな」と答え、不意に憂いを帯びた表情を見せた。
「それ言い出したら、リアルブルー出身の私も同じか」
メルは明るく微笑みながら、トランシーバーでもう3人の状況を確認するが、まだ反応はない。
その間、国貴は台に乗って高さを確認。リボルバーを構えて角度を確認するが、その構え方がどうもぎこちない。
「ちょ、ちょっと。国貴君、それ使ったことあるの?」
「長柄武器じゃ邪魔かなーと思って用意してみたけど、実は全然使ったことないんだよねー。大丈夫かな……」
あっけらかんと言う国貴に対し、メルは慌てて台に上がり、トランシーバーに続いてリボルバーの使い方を伝授する。
「先に聞いといてよかったよ」
「ありがとう。きみのおかげで安全に使えそうだよ」
いつもの調子で微笑む国貴に対し、メルは「頼りにしてるわよ」と返した。
すると、トランシーバーから通信が入る。エルレーンからだ。
「あーあー。あ、あの……こっちから、軍人のおじさんが見えます」
彼女はライトで正面側の前方にいる軍人を照らすと、彼もまたライトを向けて確認する。
「こちらメル。それじゃ、お掃除しますかね」
トランシーバーを片付け、リボルビングソーを構えて前進するメル。カルムカロマもバゼラードを持ち、それに続く。
敵は呑気なもので、テリトリーに誰か入っても、依然としてうねうねしたままだ。
「ずっとそんな調子だと、ホント助かるんだけどね」
メルの覚醒に応じてか、ノコギリ刃が高速で回転。スライムの身を削り取る。
「ピギュワッ!」
奇怪な音が響いたかと思うと、スライムはようやく動き出す。少し色が濃くなったところを見ると、敵対心を抱いたのかもしれない。
「ここは危ないから、少し下がっていてもらえると助かるよ」
敵の反応を見て、カルムカロマは調査員や軍人に注意を促した。
その刹那、瞳を怪しく輝かせ、ランアウトを発動。メルの脇を潜り抜けるように走り、スライムを短剣で一閃し、薄暗い水路に緑の軌跡を描いた。
「うん? 完全に捉えたと思ったが……」
「カルム君もそう思った?」
ふたりの戸惑いは、すぐさま国貴にも伝わる。彼は台の上から角度をつけてリボルバーを発射するが、弾丸はスライムの体を貫通。例の悲鳴は響くものの、その傷はみるみるうちに塞がっていく。
「あの体、なんだか厄介だね」
攻撃は当たれども、手応えが感じられぬ敵を前に、正面に立つ誰もが長期戦を覚悟した。
●想定外の出来事
しかし、ハンターにも利する点はある。なぜなら、敵の背後を突いているのだ。
シヴェルクは国貴の放った銃弾の効果を見た上で、あえて機導砲を放つ。
「ボクが決める」
覚醒することで長い銀髪と黒い瞳となった少年は、スライムの背後から攻撃。銃弾のように貫通こそしないものの、攻撃が表面で跳ねるかのように見えた。
「ピギッ!」
「いや、それでも効いてる」
あの軟体で攻撃が和らいでいる可能性があるが、それでもダメージは与えている。ここは攻め時と仲間たちにも声をかけた。
「一気に行こう」
ジェーンは呼びかけに応じ、リボルバー「シルバーマグ」を両手で構え、懸命に応戦。その威力はスライムが後ずさるほどである。
「お互いに距離を開けてるから、誤射は気にしなくてもいいわね」
スライムが持つ特性に苦戦しつつも、挟み撃ちで戦況を有利にしている。ジェーンはそれを最大限に活かそうとした。
と、ここでエルレーンが申し訳なさそうに、ひとりの軍人に声をかける。
「ぐ、軍人のおじさん……か、かたぐるまして?」
「か、肩車ぁ? そんなこと、どうして……」
あまり飲み込みのよくない軍人は、彼女の提案に対して首を傾げた。
すると、ジェーンが向こう側にいる国貴を指差す。彼は台に乗って、今も懸命に銃を撃っていた。
「ああいうことよ。協力してあげて」
それを見た軍人は「おお!」と納得すると、急いでエルレーンを肩車する。
「ああ、帽子はキッチリ被った方がいいわよ。危ないから」
「帽子……? どういうことだ?」
察しの悪さは相変わらずだが、答えはすぐにわかる。
エルレーンが手裏剣に巻いたボロ布にはウイスキーを染み込ませてあり、これに火をつけて攻撃するつもりなのだ。
少女がシュッとマッチを擦る音がすると、軍人は大事な髪の毛を守るべく、必死に帽子を手で押さえる。
「こんなにぷよぷよしたのに、剣とかじゃ無理だもんっ!」
この少女の読みは当たっていた。とはいえ、手裏剣を纏う炎は物理的なもので大ダメージを導くには至らないが、敵を怯えさせるには十分である。
自らに迫る炎を嫌ってか、スライムは意外な行動を取った。
「ピ、ピピューッ!」
手裏剣が命中する直前、その軌道に沿って、スライムはキレイに分裂したのだ……!
「え、え……ええーーーっ?!」
エルレーンと軍人の声が水路に響き渡る。この悲鳴にも似た声のおかげで、誰もがスライムに注目できた。
サイズは先ほどの半分になったスライムは、正面側と背後側にそれぞれ1匹ずつ前進し、容赦なくその牙を剥く。
正面はカルムカロマとメルがいるから問題ないが、背後には前衛がいない。また肩車している軍人は丸腰状態なので、慌ててエルレーンを下ろし、ハンター後方へと避難した。
「あっ、おじさーん……」
「あ、後は任せたぞーっ!!」
せっかくの作戦が……エルレーンはショボンとした表情を浮かべながらも、気丈に前衛へ出た。
「こうなったら、ひ、ひとりでがんばるもん!」
少女は再び手裏剣を使い、今度は自らジャンプして角度をつけて攻撃する。
その隙間を縫うように、シヴェルクとジェーンがリボルバーを打ち鳴らし、分裂したスライムの体を存分に貫いた。
「ボクの銃弾からは逃れられないよ」
「これでもまだ挟み撃ちには違いないし、私たちが取りこぼさなければいいのよ。何も問題ないわ」
ふたりの言葉通り、敵の行動に意外性はあれど、戦況はさほど揺らいではいなかった。
●彼の行く先
正面の前衛、カルムカロマとメルはスライムを防ぎ、国貴もサイズの縮小した難敵をうまく狙い撃つ。どうやら銃の扱いにも慣れてきたようだ。
「ホントはそっちで戦うのが好きなんだけど、銃もなかなか楽しいね」
国貴は「教えてくれた人の腕がいいんだろうね」と言い添えると、メルは「褒めたって何も出ないわよ!」と返すが、こういう褒め言葉は悪い気はしない。スライムが酸を飛ばすが、これをうまく避け、ノコギリ刃と自身のリズムを重ね合わせて、端々を切り飛ばす。
「そろそろズバッといこうかね?」
それを聞き、カルムカロマはおもむろに頷く。
「サイズは変わったが……押し潰しだけは最後まで注意したいところだよ」
彼は油断なく仕留めようと、最後まで手を抜かない。ランアウトを駆使し、何度もバゼラードで刺す。
敵が体を伸ばして反撃すれば、壁を蹴ってこれを回避。落下のタイミングを活かして伸び切った部位を狙い、スラッシュエッジを纏わせた短剣で突く。
「そこだ」
「ピゴウャアーーー!」
緑の軌跡が煌くと、伸ばした体は霧散。そこに国貴がリボルバーのリロードを終え、再び射撃を開始する。
「弾の装填の仕方まで聞いてなかったから、ちょっと苦戦したよ。やっぱり槍の方が性に合ってるかな」
とはいえ、国貴が誤射するわけでなし、外せばその隙をメルたちが攻め立てるのだ。スライムにすれば、迷惑な話である。
そして止めとばかりに、メルがアルケミックパワーでリボルビングソーを強化し、それを勢いよく突き出した。
「それじゃ、そろそろさよならだね!」
「ピ、ピュイギィーーー!」
いくら弾力を持とうとも、破壊の威力を伴った武器で刺されれば消える他ない。まず半分のスライムは消え去った。
もう1匹はエルレーンが食い止め、シヴェルクとジェーンが後方より攻撃を続けていた。
「あーあ、私にも魔法が使えたらなぁ」
そう言いながらも、少女は疾影士のスキル・ランアウトをうまく駆使し、スライムの変幻自在な攻撃を避けては手裏剣を投げる。
シヴェルクはエルレーンの立体的な動きを見切り、その隙を突いて機導砲を発射。敵を追い込む。次第にスライムも、まるで泣き言に似た声を響かせ始めた。
「逃げる場所なんてないのよ。ここで終わり」
ジェーンは両手に力を込め、銃の反動を感じながら撃ち続けた。敵の悲鳴が命中の証拠。決して聞き逃しはしない。
「こちらも終わりだよ」
銀の髪を揺らし、シヴェルクが宣言する。そして攻性強化を自らに施し、渾身の力で機導砲を放つ。
一筋の光は、まるでスライムに引き寄せられるかのように伸びて行き、命中したその瞬間、その軟体を奇妙な形に歪めた。
「ピピィ!」
「もう泣き言は聞き飽きたんだよ!」
最後はエルレーンが同じ軌道で手裏剣を放ち、物理的に敵の体を切り裂く。
さっきは炎を嫌がって分裂する芸当をやってのけたが、スライムにもはやその力は残されておらず、そのまま霧散して消えた。
「ふ、ふぅ。お、終わったのかな……?」
エルレーンが水路の向こうを見ると、メルが「終わったんだよ」と返事した。
●依頼を終えて
ハンターの活躍によって、工業用水路の安全は確保された。
地上では他の調査員と一緒に、フマーレ労働組合の長であるフランコ・カルヴィーニが無事の帰還を迎える。
「さすがはハンターさんだ! 怪我はないかい?」
フランコの問いかけに、カルムカロマは「心配ありません」と答え、シヴェルクも「大丈夫ですよ」と微笑んだ。
「だけど、見事に貼りついてたね。上にある工場が困るわけだよ」
国貴がリボルバーを片付けながら呟くと、ジェーンはフードを深く被り直しながら「まったく」と同意する。
「でも、見る人が見たら、ちょっとしたお家に見えるかもね」
ジェーンの率直な感想に、フランコや調査員は「そりゃ困るねぇ」と渋い表情を浮かべる。この調子で入居を希望する者がやってくるようだと、商売上がったりだ。しかも相手は言葉が通じないし、家賃も持ってない。
「今後、同じことがあったら、ハンターさんに立ち退きの作業をお願いしなくちゃならないなぁ」
「ハンターの仕事があるっていうのは嬉しいんだけど、毎回ここってのは厳しいね」
メルは冗談交じりにそう言うと、その場のみんなも一緒に笑った。
エルレーンは用意されたタオルで体を拭いていたが、いつまで経っても悲しい表情を浮かべている。
「うっうっ、拭いても拭いてもジメジメしてる感じがするよぉ。お風呂入りたいよう……」
ハンターたちも言われて気づく。さすがは工業用水路というだけあって、なんだか拭い切れない気持ち悪さが残っていた。しかも敵はスライム。もしかすると、彼らの心にも湿気が残っているかもしれない。
そこでフランコが口を開く。
「それだったら、近くに公衆浴場があるけど、そこに招待しようか? いいよ、ここは俺の奢りで」
その言葉に、エルレーンが喜んだ。
「やったぁ! みんなで行こうよ!」
そう言うと、なんと調査員まで「おー!」と声を上げるではないか。これにはジェーンも思わず微笑んだ。
「完全に負けね、組合長さん?」
「てめぇの甘さを認めるしかないな、こりゃ……ええい、全員ついてこい!」
こうして、依頼の終わりは公衆浴場で過ごすことになった。ハンターは皆、心身共にサッパリして帰宅の途につけそうだ。
問題の排水溝にスライムが詰まっていると聞き、ハンターたちは動き出した。
まずは前準備として、カルムカロマ=リノクス(ka0195)は調査員に「清掃に使う台を用意してほしい」と願い出る。
「この高さを利用しない手はないからね……」
それを聞いた調査員は、手分けして大きな箱を準備した。どうやらこれを重ねて土台とするらしい。
続いて、カルムカロマは所持しているトランシーバーを、メル・アイザックス(ka0520)に手渡す。
「ボクたちは、ここから二手に分かれる。その連絡用だよ」
メルは「了解だよ」と言いながらそれを受け取り、この先の水路を見つめる。
「こういう場所はちょっとでも止まれば、ビックリするほど利益が減るからね。さっさと解決しないとねぇ」
これを聞いたエルレーン(ka1020)が、湿度の高い水路の雰囲気に怯えながらコクリと頷く。
「このままだと、工場の人がこわいめにあってかぁいそうなの……がんばるの!」
エルレーンは慣れた手つきで手裏剣にボロ布を巻くが、いざトランシーバーを持つと急に手つきが怪しくなる。
「あれっ、そういえばこれの使い方しらない……ど、どうするんだっけ?」
あたふたするエルレーンを見て、メルが使い方を指南。そして少し距離を置き、通信が可能かどうかを確認する。
「あーあー、こちらメル。エルレーン君、聞こえるか?」
「えへ……聞こえるよ! 向こうの道具、か、かっこいいねぇ」
少女はなんとか使い方を覚え、それを同じ班で行動するジェーン・ノーワース(ka2004)にご報告する。
「通信できることが確認できれば、問題ないわ。それよりもこっちね」
ジェーンは調査員に用意してもらった水路の地図を確認し、ハンターが戦いやすい場所や敵に逃げ込まれたら困る場所を探っていた。
「スライムの棲む地点は挟み撃ちにできるけど、この辺に私たちが有利な地点はないわね」
それを聞いた同班のシヴェルク(ka1571)は「ならば、最善を尽くすまでです」と頷く。
「エルレーンさん。ジェーンさんと反対側へ回り込むまでは、用心してくださいね」
この水路がお気に入りとはいえ、相手はスライム。何をきっかけに動き出すかわからない。
エルフの少年・国貴(ka1936)はそれを聞き、クスリと微笑む。
「悪気はないみたいだけど、人に迷惑をかけるのはちょっとダメだよね……」
彼の言葉に、エルレーンも「うんうん」と頷く。
「さて、そろそろお仕事しよっか。あ、台運ぶの手伝うよ。力だけは自信があるんだ」
国貴は自分も使うのか、清掃員が用意した台を持って歩き出す。それにカルムカロマとメルも同行し、後の3人はぐるりと回り込むルートを進んだ。
●住居人との出会い
まずはスライムを正面で迎え撃つ3人が、問題の水路にゆっくりと接近。敵の居所を探る。
頭上から光が差し込むとはいえ、やや薄暗い。カルムカロマは軍人にハンディライトを預け、前を照らしてもらった。
「あ! あれです。あの排水溝です!」
「見事にすっぽりと嵌ってしまっているようだね……」
カルムカロマの感想に興味を持ったのか、メルも人を掻き分けて覗き込む。
そこには排水溝にすっぽり嵌ったスライムの姿があった。よく見ると、時折うねうねと動いている。
「なんで棲むかな、こんなところに……」
「よいしょっと。誰にだって自由に生きる権利がある、っていう主張なのかな?」
随分と難しいことをのたまった国貴に対し、カルムカロマは「お互いにな」と答え、不意に憂いを帯びた表情を見せた。
「それ言い出したら、リアルブルー出身の私も同じか」
メルは明るく微笑みながら、トランシーバーでもう3人の状況を確認するが、まだ反応はない。
その間、国貴は台に乗って高さを確認。リボルバーを構えて角度を確認するが、その構え方がどうもぎこちない。
「ちょ、ちょっと。国貴君、それ使ったことあるの?」
「長柄武器じゃ邪魔かなーと思って用意してみたけど、実は全然使ったことないんだよねー。大丈夫かな……」
あっけらかんと言う国貴に対し、メルは慌てて台に上がり、トランシーバーに続いてリボルバーの使い方を伝授する。
「先に聞いといてよかったよ」
「ありがとう。きみのおかげで安全に使えそうだよ」
いつもの調子で微笑む国貴に対し、メルは「頼りにしてるわよ」と返した。
すると、トランシーバーから通信が入る。エルレーンからだ。
「あーあー。あ、あの……こっちから、軍人のおじさんが見えます」
彼女はライトで正面側の前方にいる軍人を照らすと、彼もまたライトを向けて確認する。
「こちらメル。それじゃ、お掃除しますかね」
トランシーバーを片付け、リボルビングソーを構えて前進するメル。カルムカロマもバゼラードを持ち、それに続く。
敵は呑気なもので、テリトリーに誰か入っても、依然としてうねうねしたままだ。
「ずっとそんな調子だと、ホント助かるんだけどね」
メルの覚醒に応じてか、ノコギリ刃が高速で回転。スライムの身を削り取る。
「ピギュワッ!」
奇怪な音が響いたかと思うと、スライムはようやく動き出す。少し色が濃くなったところを見ると、敵対心を抱いたのかもしれない。
「ここは危ないから、少し下がっていてもらえると助かるよ」
敵の反応を見て、カルムカロマは調査員や軍人に注意を促した。
その刹那、瞳を怪しく輝かせ、ランアウトを発動。メルの脇を潜り抜けるように走り、スライムを短剣で一閃し、薄暗い水路に緑の軌跡を描いた。
「うん? 完全に捉えたと思ったが……」
「カルム君もそう思った?」
ふたりの戸惑いは、すぐさま国貴にも伝わる。彼は台の上から角度をつけてリボルバーを発射するが、弾丸はスライムの体を貫通。例の悲鳴は響くものの、その傷はみるみるうちに塞がっていく。
「あの体、なんだか厄介だね」
攻撃は当たれども、手応えが感じられぬ敵を前に、正面に立つ誰もが長期戦を覚悟した。
●想定外の出来事
しかし、ハンターにも利する点はある。なぜなら、敵の背後を突いているのだ。
シヴェルクは国貴の放った銃弾の効果を見た上で、あえて機導砲を放つ。
「ボクが決める」
覚醒することで長い銀髪と黒い瞳となった少年は、スライムの背後から攻撃。銃弾のように貫通こそしないものの、攻撃が表面で跳ねるかのように見えた。
「ピギッ!」
「いや、それでも効いてる」
あの軟体で攻撃が和らいでいる可能性があるが、それでもダメージは与えている。ここは攻め時と仲間たちにも声をかけた。
「一気に行こう」
ジェーンは呼びかけに応じ、リボルバー「シルバーマグ」を両手で構え、懸命に応戦。その威力はスライムが後ずさるほどである。
「お互いに距離を開けてるから、誤射は気にしなくてもいいわね」
スライムが持つ特性に苦戦しつつも、挟み撃ちで戦況を有利にしている。ジェーンはそれを最大限に活かそうとした。
と、ここでエルレーンが申し訳なさそうに、ひとりの軍人に声をかける。
「ぐ、軍人のおじさん……か、かたぐるまして?」
「か、肩車ぁ? そんなこと、どうして……」
あまり飲み込みのよくない軍人は、彼女の提案に対して首を傾げた。
すると、ジェーンが向こう側にいる国貴を指差す。彼は台に乗って、今も懸命に銃を撃っていた。
「ああいうことよ。協力してあげて」
それを見た軍人は「おお!」と納得すると、急いでエルレーンを肩車する。
「ああ、帽子はキッチリ被った方がいいわよ。危ないから」
「帽子……? どういうことだ?」
察しの悪さは相変わらずだが、答えはすぐにわかる。
エルレーンが手裏剣に巻いたボロ布にはウイスキーを染み込ませてあり、これに火をつけて攻撃するつもりなのだ。
少女がシュッとマッチを擦る音がすると、軍人は大事な髪の毛を守るべく、必死に帽子を手で押さえる。
「こんなにぷよぷよしたのに、剣とかじゃ無理だもんっ!」
この少女の読みは当たっていた。とはいえ、手裏剣を纏う炎は物理的なもので大ダメージを導くには至らないが、敵を怯えさせるには十分である。
自らに迫る炎を嫌ってか、スライムは意外な行動を取った。
「ピ、ピピューッ!」
手裏剣が命中する直前、その軌道に沿って、スライムはキレイに分裂したのだ……!
「え、え……ええーーーっ?!」
エルレーンと軍人の声が水路に響き渡る。この悲鳴にも似た声のおかげで、誰もがスライムに注目できた。
サイズは先ほどの半分になったスライムは、正面側と背後側にそれぞれ1匹ずつ前進し、容赦なくその牙を剥く。
正面はカルムカロマとメルがいるから問題ないが、背後には前衛がいない。また肩車している軍人は丸腰状態なので、慌ててエルレーンを下ろし、ハンター後方へと避難した。
「あっ、おじさーん……」
「あ、後は任せたぞーっ!!」
せっかくの作戦が……エルレーンはショボンとした表情を浮かべながらも、気丈に前衛へ出た。
「こうなったら、ひ、ひとりでがんばるもん!」
少女は再び手裏剣を使い、今度は自らジャンプして角度をつけて攻撃する。
その隙間を縫うように、シヴェルクとジェーンがリボルバーを打ち鳴らし、分裂したスライムの体を存分に貫いた。
「ボクの銃弾からは逃れられないよ」
「これでもまだ挟み撃ちには違いないし、私たちが取りこぼさなければいいのよ。何も問題ないわ」
ふたりの言葉通り、敵の行動に意外性はあれど、戦況はさほど揺らいではいなかった。
●彼の行く先
正面の前衛、カルムカロマとメルはスライムを防ぎ、国貴もサイズの縮小した難敵をうまく狙い撃つ。どうやら銃の扱いにも慣れてきたようだ。
「ホントはそっちで戦うのが好きなんだけど、銃もなかなか楽しいね」
国貴は「教えてくれた人の腕がいいんだろうね」と言い添えると、メルは「褒めたって何も出ないわよ!」と返すが、こういう褒め言葉は悪い気はしない。スライムが酸を飛ばすが、これをうまく避け、ノコギリ刃と自身のリズムを重ね合わせて、端々を切り飛ばす。
「そろそろズバッといこうかね?」
それを聞き、カルムカロマはおもむろに頷く。
「サイズは変わったが……押し潰しだけは最後まで注意したいところだよ」
彼は油断なく仕留めようと、最後まで手を抜かない。ランアウトを駆使し、何度もバゼラードで刺す。
敵が体を伸ばして反撃すれば、壁を蹴ってこれを回避。落下のタイミングを活かして伸び切った部位を狙い、スラッシュエッジを纏わせた短剣で突く。
「そこだ」
「ピゴウャアーーー!」
緑の軌跡が煌くと、伸ばした体は霧散。そこに国貴がリボルバーのリロードを終え、再び射撃を開始する。
「弾の装填の仕方まで聞いてなかったから、ちょっと苦戦したよ。やっぱり槍の方が性に合ってるかな」
とはいえ、国貴が誤射するわけでなし、外せばその隙をメルたちが攻め立てるのだ。スライムにすれば、迷惑な話である。
そして止めとばかりに、メルがアルケミックパワーでリボルビングソーを強化し、それを勢いよく突き出した。
「それじゃ、そろそろさよならだね!」
「ピ、ピュイギィーーー!」
いくら弾力を持とうとも、破壊の威力を伴った武器で刺されれば消える他ない。まず半分のスライムは消え去った。
もう1匹はエルレーンが食い止め、シヴェルクとジェーンが後方より攻撃を続けていた。
「あーあ、私にも魔法が使えたらなぁ」
そう言いながらも、少女は疾影士のスキル・ランアウトをうまく駆使し、スライムの変幻自在な攻撃を避けては手裏剣を投げる。
シヴェルクはエルレーンの立体的な動きを見切り、その隙を突いて機導砲を発射。敵を追い込む。次第にスライムも、まるで泣き言に似た声を響かせ始めた。
「逃げる場所なんてないのよ。ここで終わり」
ジェーンは両手に力を込め、銃の反動を感じながら撃ち続けた。敵の悲鳴が命中の証拠。決して聞き逃しはしない。
「こちらも終わりだよ」
銀の髪を揺らし、シヴェルクが宣言する。そして攻性強化を自らに施し、渾身の力で機導砲を放つ。
一筋の光は、まるでスライムに引き寄せられるかのように伸びて行き、命中したその瞬間、その軟体を奇妙な形に歪めた。
「ピピィ!」
「もう泣き言は聞き飽きたんだよ!」
最後はエルレーンが同じ軌道で手裏剣を放ち、物理的に敵の体を切り裂く。
さっきは炎を嫌がって分裂する芸当をやってのけたが、スライムにもはやその力は残されておらず、そのまま霧散して消えた。
「ふ、ふぅ。お、終わったのかな……?」
エルレーンが水路の向こうを見ると、メルが「終わったんだよ」と返事した。
●依頼を終えて
ハンターの活躍によって、工業用水路の安全は確保された。
地上では他の調査員と一緒に、フマーレ労働組合の長であるフランコ・カルヴィーニが無事の帰還を迎える。
「さすがはハンターさんだ! 怪我はないかい?」
フランコの問いかけに、カルムカロマは「心配ありません」と答え、シヴェルクも「大丈夫ですよ」と微笑んだ。
「だけど、見事に貼りついてたね。上にある工場が困るわけだよ」
国貴がリボルバーを片付けながら呟くと、ジェーンはフードを深く被り直しながら「まったく」と同意する。
「でも、見る人が見たら、ちょっとしたお家に見えるかもね」
ジェーンの率直な感想に、フランコや調査員は「そりゃ困るねぇ」と渋い表情を浮かべる。この調子で入居を希望する者がやってくるようだと、商売上がったりだ。しかも相手は言葉が通じないし、家賃も持ってない。
「今後、同じことがあったら、ハンターさんに立ち退きの作業をお願いしなくちゃならないなぁ」
「ハンターの仕事があるっていうのは嬉しいんだけど、毎回ここってのは厳しいね」
メルは冗談交じりにそう言うと、その場のみんなも一緒に笑った。
エルレーンは用意されたタオルで体を拭いていたが、いつまで経っても悲しい表情を浮かべている。
「うっうっ、拭いても拭いてもジメジメしてる感じがするよぉ。お風呂入りたいよう……」
ハンターたちも言われて気づく。さすがは工業用水路というだけあって、なんだか拭い切れない気持ち悪さが残っていた。しかも敵はスライム。もしかすると、彼らの心にも湿気が残っているかもしれない。
そこでフランコが口を開く。
「それだったら、近くに公衆浴場があるけど、そこに招待しようか? いいよ、ここは俺の奢りで」
その言葉に、エルレーンが喜んだ。
「やったぁ! みんなで行こうよ!」
そう言うと、なんと調査員まで「おー!」と声を上げるではないか。これにはジェーンも思わず微笑んだ。
「完全に負けね、組合長さん?」
「てめぇの甘さを認めるしかないな、こりゃ……ええい、全員ついてこい!」
こうして、依頼の終わりは公衆浴場で過ごすことになった。ハンターは皆、心身共にサッパリして帰宅の途につけそうだ。
依頼結果
依頼成功度 | 普通 |
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面白かった! | 4人 |
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依頼相談掲示板 | |||
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相談 シヴェルク(ka1571) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/07/06 06:45:01 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/02 23:43:54 |