ゲスト
(ka0000)
もう一度、故郷を
マスター:松尾京

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/05/02 15:00
- 完成日
- 2015/05/09 16:41
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●退屈な農村
ジェオルジの外れの農村。
ジム青年は今日もクワを持ち出し、家を出てすぐの畑に向かっていた。
「……今日も日が照ってるなあ」
ぽつりと呟く。
その声と顔には、退屈だ、という気持ちが少しばかり表れていた。
生まれ故郷にして、今も住み続けるこの村が、ジムはあまり好きではない。
都会と違い、あるものといえば畑や、牛がのろのろ歩く道に、立ち並ぶ木。
小さい頃も遊ぶものがなくて、困ることがしばしばあった。
村の唯一の特徴とも言えるものとして、敷地の中心に桜の大木があるのだが……それすら子供の頃に既に何百回と上ったし、とっくに見飽きている。
代わり映えしない日々。
退屈だな、とジムは思う。
子供時分には、大人が話してくれる都会の話に目を輝かせたものだ。
それはきらびやかな、夢の世界。
――俺はヴァリオスに行って大商人になるんだ。
――いや、フマーレで工房でも持って一旗揚げる。
――それがだめなら、ポルトワールへ出て船乗りになる。
――ええい、世界を股にかけるハンターになる!
そんなふうに夢を語ったのが懐かしい。
しがない農村が嫌だった少年ジムは……しかし現実では何も行動に起こすことはなかった。
そうして今、青年ジムとなり、農家としてこの村に家を構えることになっている。
十代の頃は、なけなしの貯金をはたいて、フマーレからポルトワール、ヴァリオスと旅行に行ったことがある。
……だが少年ジムには刺激が強すぎたのだろうか、空気に当てられただけで、そこから何かをなすことはなかった。
外の世界に出る才覚が、きっとなかったのだろう。
だから結局、自分はただの農家におさまっている。
それが、退屈だった。
そして、そういうことを考えている自分さえ、何だかさえないな、と思うのだった。
だが、そんな日々こそ、突然終わりを告げるものだ。
●事件
「ご――ゴブリンだ! ゴブリンが出たぞ! うわああっ!」
それは、亜人の強襲だった。
ジムが畑を耕そうとしたその直後のことだ。
うららかな一日に思われたこの村に、ゴブリンが現れた。
ゴブリンは集団だった。武器を持っているものもおり、目的は明白だった。
ギ、ギ、という低い声。どう猛な顔で、一瞬で村に散ると……繰り広げたのは、略奪。
畑を荒らし、家を壊し。邪魔をするものは、容赦なく刃を振るった。
「やめろ! 俺の畑を……!」
「助けてくれ!」
響く悲鳴。とどろく亜人の足音。全てが信じられない光景。
それはジムの目に、耳に、焼き付いた。
生まれて初めて見た、人間と違う、恐ろしい姿形。
将来、俺もハンターになって歪虚とやらを倒す戦士になるかも知れない――そう思ったこともあったジムは、村を襲うゴブリンの集団に、ただただ震えていることしかできなかった。
「村は捨てるんだ! 逃げるぞ!」
そんな声が聞こえると、ジムははっと正気に戻り……村人達と共に、身一つで村を出た。
それから村人は、少し離れた大きな隣村に身を寄せた。
土地はあり、同情もされて、ジム達少ない村人は温かく受け入れられた。
ジムは、かつて父の友人であったという農家の男に世話になることが出来た。
「大変だったな。しばらくはここにいるといい」
そう言われてジムは、ほっとしたのだった。
●決断
後に、ジムを含む農村の元住人で話し合いが持たれた。
それは、あの村をどうする、ということだ。
「ゴブリンは追ってこなかったから、きっと食物が欲しかっただけだ」
「わざわざこちらからあの村に出向かなければ、危険はないだろう」
「下手に退治しようとしたら、こちらにまで被害が及ぶかも知れない。だからあの村は、残念だが、もう――」
それは、寂れた農村を捨てて、ここで新しい生活を目指す、という声だった。
ジムも、賛成のつもりだった。
家を捨てるのは残念だし、無念でもあった。
けれど、ここの村でも農業は出来る。何も不便はない。家はそのうち自分で建てればいい。
なあに、あんな村を出るいいきっかけになった。命あっての物種。死者は出なかったし、新生活のきっかけと思えばいい……。
だから、ジムに反対する意志はなかった。
でも――
その夜。
ジムはふと、布団で目を覚ました。
「……」
それから少し考え事をして。
自分が涙を流しているのに気付いた。
「どうして……」
ゴブリンは怖かった。それから逃げられた安心感が、今頃こみ上げて来たのか?
……違う。
ジムは、思い出していた。
幼い頃、あの村で過ごしていた日々を。つまらないと不平を漏らしながら、牛の歩く道を一緒に歩んだことを。広い草むらを友人と共に駆け――桜の大木に上って遊んでいた、あの日々を。
出てくるのは、そんな思い出ばかりだった。
新しい生活がはじめられるかも知れない。そんな機会にいながら、かつて憧れていた華々しい都会の姿は、頭に浮かんでこない。
土臭くて、嫌になるくらい太陽が暑くて、退屈で……。
それでも、心がものすごく温まるあの村が、恋しくて仕方なかった。
きっとはじめからそうだった。
「俺は……あの村に帰りたい。帰りたいよ」
●依頼
翌日、ジムは元村民間の話し合いで、前日の考えを変えたことを伝えた。
意外にも、反対は出なかった。
ジムだけでなく、他の人達も、故郷の恋しさに気付きはじめたというように。
どころか、危険を冒してあの村の近くまで様子を見に行っていたものもいた。それによると、村はゴブリンに占拠されているらしい。
あそこにもう一度住もうなどと、無謀な話だ。
それでもジムは、諦めるつもりはなかった。
「助けてくれる人達が、いる。彼らなら――」
それは、かつて夢見る少年だったジムも、憧れていた存在だ。
ジェオルジの外れの農村。
ジム青年は今日もクワを持ち出し、家を出てすぐの畑に向かっていた。
「……今日も日が照ってるなあ」
ぽつりと呟く。
その声と顔には、退屈だ、という気持ちが少しばかり表れていた。
生まれ故郷にして、今も住み続けるこの村が、ジムはあまり好きではない。
都会と違い、あるものといえば畑や、牛がのろのろ歩く道に、立ち並ぶ木。
小さい頃も遊ぶものがなくて、困ることがしばしばあった。
村の唯一の特徴とも言えるものとして、敷地の中心に桜の大木があるのだが……それすら子供の頃に既に何百回と上ったし、とっくに見飽きている。
代わり映えしない日々。
退屈だな、とジムは思う。
子供時分には、大人が話してくれる都会の話に目を輝かせたものだ。
それはきらびやかな、夢の世界。
――俺はヴァリオスに行って大商人になるんだ。
――いや、フマーレで工房でも持って一旗揚げる。
――それがだめなら、ポルトワールへ出て船乗りになる。
――ええい、世界を股にかけるハンターになる!
そんなふうに夢を語ったのが懐かしい。
しがない農村が嫌だった少年ジムは……しかし現実では何も行動に起こすことはなかった。
そうして今、青年ジムとなり、農家としてこの村に家を構えることになっている。
十代の頃は、なけなしの貯金をはたいて、フマーレからポルトワール、ヴァリオスと旅行に行ったことがある。
……だが少年ジムには刺激が強すぎたのだろうか、空気に当てられただけで、そこから何かをなすことはなかった。
外の世界に出る才覚が、きっとなかったのだろう。
だから結局、自分はただの農家におさまっている。
それが、退屈だった。
そして、そういうことを考えている自分さえ、何だかさえないな、と思うのだった。
だが、そんな日々こそ、突然終わりを告げるものだ。
●事件
「ご――ゴブリンだ! ゴブリンが出たぞ! うわああっ!」
それは、亜人の強襲だった。
ジムが畑を耕そうとしたその直後のことだ。
うららかな一日に思われたこの村に、ゴブリンが現れた。
ゴブリンは集団だった。武器を持っているものもおり、目的は明白だった。
ギ、ギ、という低い声。どう猛な顔で、一瞬で村に散ると……繰り広げたのは、略奪。
畑を荒らし、家を壊し。邪魔をするものは、容赦なく刃を振るった。
「やめろ! 俺の畑を……!」
「助けてくれ!」
響く悲鳴。とどろく亜人の足音。全てが信じられない光景。
それはジムの目に、耳に、焼き付いた。
生まれて初めて見た、人間と違う、恐ろしい姿形。
将来、俺もハンターになって歪虚とやらを倒す戦士になるかも知れない――そう思ったこともあったジムは、村を襲うゴブリンの集団に、ただただ震えていることしかできなかった。
「村は捨てるんだ! 逃げるぞ!」
そんな声が聞こえると、ジムははっと正気に戻り……村人達と共に、身一つで村を出た。
それから村人は、少し離れた大きな隣村に身を寄せた。
土地はあり、同情もされて、ジム達少ない村人は温かく受け入れられた。
ジムは、かつて父の友人であったという農家の男に世話になることが出来た。
「大変だったな。しばらくはここにいるといい」
そう言われてジムは、ほっとしたのだった。
●決断
後に、ジムを含む農村の元住人で話し合いが持たれた。
それは、あの村をどうする、ということだ。
「ゴブリンは追ってこなかったから、きっと食物が欲しかっただけだ」
「わざわざこちらからあの村に出向かなければ、危険はないだろう」
「下手に退治しようとしたら、こちらにまで被害が及ぶかも知れない。だからあの村は、残念だが、もう――」
それは、寂れた農村を捨てて、ここで新しい生活を目指す、という声だった。
ジムも、賛成のつもりだった。
家を捨てるのは残念だし、無念でもあった。
けれど、ここの村でも農業は出来る。何も不便はない。家はそのうち自分で建てればいい。
なあに、あんな村を出るいいきっかけになった。命あっての物種。死者は出なかったし、新生活のきっかけと思えばいい……。
だから、ジムに反対する意志はなかった。
でも――
その夜。
ジムはふと、布団で目を覚ました。
「……」
それから少し考え事をして。
自分が涙を流しているのに気付いた。
「どうして……」
ゴブリンは怖かった。それから逃げられた安心感が、今頃こみ上げて来たのか?
……違う。
ジムは、思い出していた。
幼い頃、あの村で過ごしていた日々を。つまらないと不平を漏らしながら、牛の歩く道を一緒に歩んだことを。広い草むらを友人と共に駆け――桜の大木に上って遊んでいた、あの日々を。
出てくるのは、そんな思い出ばかりだった。
新しい生活がはじめられるかも知れない。そんな機会にいながら、かつて憧れていた華々しい都会の姿は、頭に浮かんでこない。
土臭くて、嫌になるくらい太陽が暑くて、退屈で……。
それでも、心がものすごく温まるあの村が、恋しくて仕方なかった。
きっとはじめからそうだった。
「俺は……あの村に帰りたい。帰りたいよ」
●依頼
翌日、ジムは元村民間の話し合いで、前日の考えを変えたことを伝えた。
意外にも、反対は出なかった。
ジムだけでなく、他の人達も、故郷の恋しさに気付きはじめたというように。
どころか、危険を冒してあの村の近くまで様子を見に行っていたものもいた。それによると、村はゴブリンに占拠されているらしい。
あそこにもう一度住もうなどと、無謀な話だ。
それでもジムは、諦めるつもりはなかった。
「助けてくれる人達が、いる。彼らなら――」
それは、かつて夢見る少年だったジムも、憧れていた存在だ。
リプレイ本文
●村へ
村の北側。四人が林の手前に来ていた。明け方で薄暗く、敵に気付かれてはなかった。
「いけいけごーごー! なのだ♪」
そんな中、ネフィリア・レインフォード(ka0444)は意気揚々と村に突撃しようとする。はっし、とその袖を掴んで止めるのはブリス・レインフォード(ka0445)だ。
「……ネフィ姉様。まだ」
「にゃう!? ……あはは。やだなー、わかってるヨ?」
あっけらかんと笑うネフィリアを横に……ブリスはトランシーバーで南側と連絡。タイミングを合わせると――見張りへの対応を開始した。
「僕は、一番西を狙います」
ユキヤ・S・ディールス(ka0382)は小声で言うと、林に隠れて西の家屋の近くへ。屋根に、ゴブリンが二体。一体は立っているが一体は寝ているようだ。
ユキヤは手をのばし、ホーリーライト。ぱっと光の弾が生まれ――ぼっ! 立っているゴブリンを一撃で倒した。
残り一体へオートマチックを構えるのは、マウローゼ・ツヴァイ(ka2489)。
「そのまま、寝ていてもらおうか」
ばすっ! 遠射された銃弾は、狙いを違わない。ギッ、と声を漏らしたその一体はそのまま静かになった。
「全員がこの程度なら、たわいもないが。――さて、向こうは」
マウローゼが見る東の家屋の前では――ブリスがウインドスラッシュを行使。
ざざざっ! 鋭い風がゴブリンを切り裂き、倒していた。
残るは、一体。ネフィリアは屋根に上るのも辞さない様子だったが……ブリスが再びそれを止めて、ウインドスラッシュで息の根を止めたのだった。
南側。こちらも茂みなどを使い、四人が気付かれずに村の前に来ていた。
「ええ。こちらも位置についたところです。では――はじめましょう」
トランシーバーに言うと、紅屋・玄珠(ka4535)は皆と見合う。同時、四人で見張りへの対応を開始した。
クドリャフカ(ka4594)は南東の屋根にいるゴブリンに照準を合わせる。木々と土に紛れるクドリャフカの姿に、ゴブリンは最後まで気付かない。
「じゃあ、行くよ。――ハートショット、エイム」
どうっ! クドリャフカが放った弾丸が胸を貫く。ゴブリンは真後ろに倒れて絶命した。
横の一体は、寝ている。そこを玄珠が狙っていた。
玄珠の影が、漆黒になったかと思うと、ふくらんで弾ける。風が吹いたように髪が踊ると――放つのはマジックアロー。飛翔した魔法の矢がゴブリンを穿ち、その命を奪った。
西側を対応するのはマリアンナ・バウアール(ka4007)。
「よし、あのゴブリンを、お願い――えいっ!」
魔力を纏わせ、マリアンナは桜型妖精とシンクロする――ファミリアアタック。
煌めきながら、妖精がゴブリンに攻撃し……どん、とゴブリンはそのまま落下。地面で動かなくなった。
残る一体は、もぞもぞと起きる前に――ばすっ、とクドリャフカが狙撃して倒した。クドリャフカは銃口を上げる。
「これなら、北の方まで狙う必要はないかな」
「クドリャフカさんの言うとおり、北でもちょうど、見張りを排除できたようです」
玄珠がトランシーバーを片手に言った。
周囲の見張りを続けていたクィーロ・ヴェリル(ka4122)が、村内に目をやる。
「敵本体はまだ何も察知していない。けど、見張りが倒されたと気付くのは、多分時間の問題だろうね」
ここからは、速度の勝負ということだ。皆頷くと――村内へ、侵入していく。
●潜入
四人は南から、建物の陰を利用して進む。
ふと、村の中心に桜の木が見えた。そこに、我が物顔で居座るゴブリン達の姿も。
「……戦争の合間に近場の農村で略奪、かぁ。結局、世界が変わってもやる事は変わらないね」
クドリャフカが呟く。クィーロは何となく、自分がいたという世界のことを思った。
「故郷、か――。帰りたいと望む人の願いは、叶えてあげたいね」
「必ず、取り返しましょう」
玄珠が返したとき、マリアンナがせっせと食糧を調達するコボルドを見つけた。
「あの一体、距離も近いし何とかおびき寄せられないかな?」
それならばと提案したのは玄珠であった。ツナ缶を、とりあえず未開封のまま、ぽんと近場へ投げ出してみる。
予想通りコボルドが興味を示した。気付かず、住居の陰まで歩いてくる。
それを迎え入れたのはクィーロだった。
瞳は胸の刺青に呼応し緋色、髪は銀色へと変貌し――どこか好戦的な笑みを浮かべ、コボルドを見下ろす。
「さぁ、お前は俺を楽しませてくれるか?」
瞬時、日本刀で一閃。クィーロに断ち切られたコボルドは、血を流しながら倒れた。
同時刻、北でも四人が村内へ進む。
住居の影から、早々に一体のコボルドを見つけたのは、ユキヤだ。そばの畑を歩いており、距離は近い。
「あの一体だけでも、先に倒しておきたいところですね」
「なら、こちらに来てもらった方が好都合だな」
マウローゼが言って銃を構えた。ぼすっ、と至近の地面を狙撃する。と、コボルドが不審げに近づいてきた。
「……こっちに来た……」
「よーし♪ 今度こそ僕にまかせるのだー♪」
ブリスが杖を握る、よりも先に前に出たのはネフィリアだ。ギッ、と驚くコボルドに肉迫したネフィリアは――髪がどこかしっとりと濡れ、猫耳と尻尾が生えている。
今度はブリスも止めることなく、ネフィリアの、霊魔撃。
どしゅっ! パイルバンカーで抉り込まれると、コボルドは壁に激突、息の根を止めた。
ネフィリアは武器を見つめる。
「何だか、ものすごい手応えだったのだ?」
ふと、ここには来ていない姉のことが思い浮かぶ。何となく、ネフィリアに、早く片付けて帰ってきて、とでも言っているような気がした。
と――そこからさらに前進しようとしたとき。
どっ! と、横の地面に矢が刺さった。
ユキヤがはっとして顔をのぞかせる。
「……敵本体の、弓兵がこちらを見ています」
するとブリスは即座にトランシーバーに語りかける。南側も、たった今攻撃を受けたところだ、と返ってきた。
敵本隊が遅まきながら異常に気付いたのだろう。
こうなれば、隠れる必要もない。四人は建物の陰から畑へ出た。
首領を含めた本隊の半数は南へ向かっていた。弓兵と斧兵の二体とメイジ一体が、こちらを向いて残っている。
ブリスはそれでも冷静に南とやり取りしていた。
「あの三体を倒して……本隊を挟み撃ちにする」
「――ならばまずは、雑魚からだな」
マウローゼは銃口を遠く、コボルドへ向けた。
南の情報と合わせると残るは二体。それは視認できる位置にいた。村を闊歩する、小悪党。
「返してもらうぞ。――全てを、だ」
どっ! マウローゼが遠射すると、一体が即座に地面に倒れた。
残る一体も――ユキヤのホーリーライトに穿たれて、食糧を抱え込んだまま息絶えた。
●交戦
南側では、コボルド退治の直後に矢が襲ってきていた。
玄珠が北と連絡し、四人はすぐに表へ出る。直後から、戦闘態勢に入った。
道へ移動しつつ、ゴブリン達に接近する。
敵は前衛に斧兵、後衛に弓兵とメイジ。それらが中央のナイトを守りながら攻めてきていた。
「ギギッ!」
声をあげるゴブリンに、玄珠は退かず、ナイトを狙った。
「桜から離れてくれるなら、好都合です。もはや情けも要りません」
斜めから、アースバレット。ごっ! とリトルラプターに一撃を喰らったナイトは、たたらを踏んだ。
その間に、クドリャフカはメイジに照準を合わせ――ばすっ! 遠射で胴を撃ち抜く。
「射程外からじゃ、手は届かないだろうからね」
「私は、前衛の進撃を止めます!」
斧兵に接敵するのはマリアンナ。再び魔力を高め――妖精に防御かいくぐらせて攻撃した。
だが、どの個体もまだ倒れない。斧兵はマリアンナに接近、斧を振るった。
が、マリアンナは身を翻し、攻撃をかすめるに留める。メイジと弓のソルジャーも反撃に入るが――
魔法の弾と矢、その攻撃を一身に受けて、クィーロが後衛にまで走り込んでいた。
「ははっ、いいじゃねえか……もっと、楽しませてみろよ!」
単身飛び込んだクィーロは、その勢いをそのまま力に転化。日本刀を激しく振るってメイジを切り裂く。
北では、四人が南下しつつ交戦に入っていた。
コボルドを掃討した直後から、弓兵が既に矢を放って来ていたが――ネフィリアは動物霊の力で動きを高め、ひらりひらりとそれを躱していく。
「そんな動きじゃ僕には当たらないよー♪」
「……ネフィ姉様、さすが」
ブリスはそんな姉を見つつ、敵に接近。するとメイジも魔法の弾を撃ち出して来るが――それを受けるユキヤはまだまだ平然としている。
「この程度ならば――まだ倒れる程ではありません。一気に、攻めましょう」
ユキヤがホーリーライトを生み出すと同時。ブリスも杖を構えている。ごうっ、とスリープクラウドで敵をまとめて巻き込むと――弓兵とメイジの二体がそのまま倒れて眠った。
「ギッ!?」
残った斧のゴブリンは驚いて見回す。きゅおっ! その間にユキヤの光の魔法が飛来してくる。ゴブリンは慌てて避けようとするが――
「そう慌てず、じっとしていればいい」
ぼっ! 突如襲ったマウローゼの牽制射撃に、動きを止めた。
どうん、とホーリーライトの直撃を喰らったときには、ネフィリアがそばまで来ていた。
「んふふ♪ パイルバンカーは……下から抉り込むように撃つべし! 撃つべし! なのだ♪」
ずん、と、魔力を込めたパイルバンカーを受け――ソルジャーは血を吹き出して絶えた。
遅れて、弓兵がギギ、と目を覚ます。が、どどっ、とマウローゼの銃弾とユキヤのホーリーライトを一身に受けて、絶命した。
南方では、メイジが倒され、ゴブリンの間に動揺が走っていた。
「このまま、全員倒しましょう!」
マリアンナは斧兵と対峙しつつ皆を鼓舞する。そして距離を取り、ファミリアアタック。ずんっ、と妖精に体当たりされた斧兵は、もはや瀕死だ。
弓兵も、慌てて弓を引いているが――そこにもぼすっ、と銃弾が飛んだ。クドリャフカだ。
「あのゴブリンは、あと一撃だね」
「なら、私がとどめを刺しましょう」
答えたのは玄珠。アースバレットで、頭を一撃。どっ、と弓兵は地に倒れた。
その前方で、クィーロはゴブリンナイトの槍を正面から受けつつ、その槍を掴んでいた。
ぽたぽたと血を垂らしながらも浮かべるのは、狂気じみた笑み。
「いいぜ……いいぜ……! もっと、来てみろよ! もっと、俺に生きてる実感を得させろ!」
ずんっ! 槍のリーチの分の距離を詰めて、勢いのままに強打。
「ギギッ!」
ナイトも肩から血を流す。それでも反撃を目論むが――どっ! と予想外の方向から狙撃を受ける。
北方向から、マウローゼが銃口をナイトへ向けていた。
●故郷
北側では――二体のソルジャーが倒されたあと、ようやく最後のメイジが目を覚ましていた。
「ギギ……ギッ!?」
だがその頃には、ネフィリアが目の前に迫っている。ずっ、と霊魔撃で胸を貫かれ――北のゴブリンは全滅した。
「ここから、合流して勝負を決めることにしましょう」
ユキヤが南を向くと、皆も頷いて、南へ走る。
そうして、南下したマウローゼはナイトへ狙いを絞り……的確な一発を放つ。
「まずは、回復をしますね」
するとユキヤが前進し、混戦状態の中、ヒーリングスフィア。広範囲に柔らかい光が広がり、傷を癒していく。
マリアンナは――それでも、ソルジャーの死にものぐるいの攻撃を喰らう。が、武器で受け止め、ファミリアアタック。最後のソルジャーを倒した。
「ギギ――ッ」
焦るナイトは、迫っていたネフィリアに刺突。合流直前にブリスにウインドガストを付与されていたネフィリアは、素速く避ける――が、かすかに刃先をかすめられてしまう。
それでもネフィリアは即座に霊魔撃で反撃。
「ここで一気に決めるのだ! 思い切り痛い一撃を……食らうのだー!!」
どすっ、と強烈な一撃を受けたナイトはよろめく。
「ネフィ姉様を傷つけたの……許さない」
同時、ブリスもウインドスラッシュでその体を切り裂いてゆく。
苦悶するナイトへ、マリアンナがシンクロした妖精での打撃をたたき込む。
「もう少しで、いけそうです!」
「蜂の巣に、してやろう」
どっ! そこへ銃弾を撃ち込んだのはマウローゼ。ナイトの乗るリトルラプターが力を失ってよろめいた。
「逃さないよ」
次いで飛んだ銃弾が、ナイト本体を射貫く。クドリャフカのライフルの一撃だ。
ナイトは息絶え絶えになりつつも、勝機はないと見たか、混戦から逃れようとするが――
「おいおい……逃げ出すなんて興ざめもいいとこだぜ……? 見苦しいから、死んでくれよ」
クィーロが立ちはだかる。そして……ざんっ、と正面からの強打。
「これで、終わりにしましょう」
ほぼ同時、ユキヤのホーリーライトも、その体を貫いている。
「ギ――」
ゴブリンナイトは一瞬声をあげると……どさ、と力尽きた。
村人達は、村へ戻った。
彼らは皆、久しぶりの故郷に嬉しそうな顔をしているのだった。
「敵は一掃した。何かあれば、またハンターを呼べばいいだろう」
マウローゼの言葉に、頷くのは――風にそよぐ桜を見上げる、ジム。
「本当に、ありがとうございました。……故郷に、日常に、帰って来られてよかった。そう思います」
「ええ。日常は、大切、ですよね」
ユキヤは穏やかな顔で答える。自分はまだ、蒼の世界に帰りたいとは思わないけれど――ふと、そんなことを思いながら。
「あなたたちにも、故郷があるんでしょう」
ジムが興味を覚えたように聞くと……ネフィリアは、明るく、首を振る。故郷はある。けれど――戻ることは考えていないのだ。
「今のほうが自由で気楽だしね♪ それに、姉妹一緒でいられるし♪ ね、ブリスちゃん」
「……ん」
ブリスははっきり答えるでもなく、ネフィリアに体を寄せていた。
「私は修行の為に、今は故郷からは遠く離れちゃってるけど……」
マリアンナはふと、文化も気候もこのあたりとは違う、辺境の故郷を思い出す。
自分も失うまでその価値に気付かないのだろうか? 少しだけ、しんみりしてしまった。
クィーロは、そんな話を、柔らかな態度で聞いているだけだ。まだ何も思い出さないか、と考えながら。
(愛郷心すら持てないのは少し寂しいものだね)
桜を見て、そう思った。
玄珠は、多くを語らない。ただ、いつか自分も故郷へ帰れると、信じている。
「来年の桜を、見に来ます」
「ええ。また変わらずに咲いて……僕も見られたら、嬉しいです」
ユキヤも答えて、桜と、空を見上げる。
クドリャフカは、そんな風景を見ながら絵を描いていた。
「――せんせは梅の方が好きだったなぁ。でも、桜も悪くないね」
桃色の花びらが舞うのは、確かに美しい。
それが、取り戻した故郷の姿だった。
村の北側。四人が林の手前に来ていた。明け方で薄暗く、敵に気付かれてはなかった。
「いけいけごーごー! なのだ♪」
そんな中、ネフィリア・レインフォード(ka0444)は意気揚々と村に突撃しようとする。はっし、とその袖を掴んで止めるのはブリス・レインフォード(ka0445)だ。
「……ネフィ姉様。まだ」
「にゃう!? ……あはは。やだなー、わかってるヨ?」
あっけらかんと笑うネフィリアを横に……ブリスはトランシーバーで南側と連絡。タイミングを合わせると――見張りへの対応を開始した。
「僕は、一番西を狙います」
ユキヤ・S・ディールス(ka0382)は小声で言うと、林に隠れて西の家屋の近くへ。屋根に、ゴブリンが二体。一体は立っているが一体は寝ているようだ。
ユキヤは手をのばし、ホーリーライト。ぱっと光の弾が生まれ――ぼっ! 立っているゴブリンを一撃で倒した。
残り一体へオートマチックを構えるのは、マウローゼ・ツヴァイ(ka2489)。
「そのまま、寝ていてもらおうか」
ばすっ! 遠射された銃弾は、狙いを違わない。ギッ、と声を漏らしたその一体はそのまま静かになった。
「全員がこの程度なら、たわいもないが。――さて、向こうは」
マウローゼが見る東の家屋の前では――ブリスがウインドスラッシュを行使。
ざざざっ! 鋭い風がゴブリンを切り裂き、倒していた。
残るは、一体。ネフィリアは屋根に上るのも辞さない様子だったが……ブリスが再びそれを止めて、ウインドスラッシュで息の根を止めたのだった。
南側。こちらも茂みなどを使い、四人が気付かれずに村の前に来ていた。
「ええ。こちらも位置についたところです。では――はじめましょう」
トランシーバーに言うと、紅屋・玄珠(ka4535)は皆と見合う。同時、四人で見張りへの対応を開始した。
クドリャフカ(ka4594)は南東の屋根にいるゴブリンに照準を合わせる。木々と土に紛れるクドリャフカの姿に、ゴブリンは最後まで気付かない。
「じゃあ、行くよ。――ハートショット、エイム」
どうっ! クドリャフカが放った弾丸が胸を貫く。ゴブリンは真後ろに倒れて絶命した。
横の一体は、寝ている。そこを玄珠が狙っていた。
玄珠の影が、漆黒になったかと思うと、ふくらんで弾ける。風が吹いたように髪が踊ると――放つのはマジックアロー。飛翔した魔法の矢がゴブリンを穿ち、その命を奪った。
西側を対応するのはマリアンナ・バウアール(ka4007)。
「よし、あのゴブリンを、お願い――えいっ!」
魔力を纏わせ、マリアンナは桜型妖精とシンクロする――ファミリアアタック。
煌めきながら、妖精がゴブリンに攻撃し……どん、とゴブリンはそのまま落下。地面で動かなくなった。
残る一体は、もぞもぞと起きる前に――ばすっ、とクドリャフカが狙撃して倒した。クドリャフカは銃口を上げる。
「これなら、北の方まで狙う必要はないかな」
「クドリャフカさんの言うとおり、北でもちょうど、見張りを排除できたようです」
玄珠がトランシーバーを片手に言った。
周囲の見張りを続けていたクィーロ・ヴェリル(ka4122)が、村内に目をやる。
「敵本体はまだ何も察知していない。けど、見張りが倒されたと気付くのは、多分時間の問題だろうね」
ここからは、速度の勝負ということだ。皆頷くと――村内へ、侵入していく。
●潜入
四人は南から、建物の陰を利用して進む。
ふと、村の中心に桜の木が見えた。そこに、我が物顔で居座るゴブリン達の姿も。
「……戦争の合間に近場の農村で略奪、かぁ。結局、世界が変わってもやる事は変わらないね」
クドリャフカが呟く。クィーロは何となく、自分がいたという世界のことを思った。
「故郷、か――。帰りたいと望む人の願いは、叶えてあげたいね」
「必ず、取り返しましょう」
玄珠が返したとき、マリアンナがせっせと食糧を調達するコボルドを見つけた。
「あの一体、距離も近いし何とかおびき寄せられないかな?」
それならばと提案したのは玄珠であった。ツナ缶を、とりあえず未開封のまま、ぽんと近場へ投げ出してみる。
予想通りコボルドが興味を示した。気付かず、住居の陰まで歩いてくる。
それを迎え入れたのはクィーロだった。
瞳は胸の刺青に呼応し緋色、髪は銀色へと変貌し――どこか好戦的な笑みを浮かべ、コボルドを見下ろす。
「さぁ、お前は俺を楽しませてくれるか?」
瞬時、日本刀で一閃。クィーロに断ち切られたコボルドは、血を流しながら倒れた。
同時刻、北でも四人が村内へ進む。
住居の影から、早々に一体のコボルドを見つけたのは、ユキヤだ。そばの畑を歩いており、距離は近い。
「あの一体だけでも、先に倒しておきたいところですね」
「なら、こちらに来てもらった方が好都合だな」
マウローゼが言って銃を構えた。ぼすっ、と至近の地面を狙撃する。と、コボルドが不審げに近づいてきた。
「……こっちに来た……」
「よーし♪ 今度こそ僕にまかせるのだー♪」
ブリスが杖を握る、よりも先に前に出たのはネフィリアだ。ギッ、と驚くコボルドに肉迫したネフィリアは――髪がどこかしっとりと濡れ、猫耳と尻尾が生えている。
今度はブリスも止めることなく、ネフィリアの、霊魔撃。
どしゅっ! パイルバンカーで抉り込まれると、コボルドは壁に激突、息の根を止めた。
ネフィリアは武器を見つめる。
「何だか、ものすごい手応えだったのだ?」
ふと、ここには来ていない姉のことが思い浮かぶ。何となく、ネフィリアに、早く片付けて帰ってきて、とでも言っているような気がした。
と――そこからさらに前進しようとしたとき。
どっ! と、横の地面に矢が刺さった。
ユキヤがはっとして顔をのぞかせる。
「……敵本体の、弓兵がこちらを見ています」
するとブリスは即座にトランシーバーに語りかける。南側も、たった今攻撃を受けたところだ、と返ってきた。
敵本隊が遅まきながら異常に気付いたのだろう。
こうなれば、隠れる必要もない。四人は建物の陰から畑へ出た。
首領を含めた本隊の半数は南へ向かっていた。弓兵と斧兵の二体とメイジ一体が、こちらを向いて残っている。
ブリスはそれでも冷静に南とやり取りしていた。
「あの三体を倒して……本隊を挟み撃ちにする」
「――ならばまずは、雑魚からだな」
マウローゼは銃口を遠く、コボルドへ向けた。
南の情報と合わせると残るは二体。それは視認できる位置にいた。村を闊歩する、小悪党。
「返してもらうぞ。――全てを、だ」
どっ! マウローゼが遠射すると、一体が即座に地面に倒れた。
残る一体も――ユキヤのホーリーライトに穿たれて、食糧を抱え込んだまま息絶えた。
●交戦
南側では、コボルド退治の直後に矢が襲ってきていた。
玄珠が北と連絡し、四人はすぐに表へ出る。直後から、戦闘態勢に入った。
道へ移動しつつ、ゴブリン達に接近する。
敵は前衛に斧兵、後衛に弓兵とメイジ。それらが中央のナイトを守りながら攻めてきていた。
「ギギッ!」
声をあげるゴブリンに、玄珠は退かず、ナイトを狙った。
「桜から離れてくれるなら、好都合です。もはや情けも要りません」
斜めから、アースバレット。ごっ! とリトルラプターに一撃を喰らったナイトは、たたらを踏んだ。
その間に、クドリャフカはメイジに照準を合わせ――ばすっ! 遠射で胴を撃ち抜く。
「射程外からじゃ、手は届かないだろうからね」
「私は、前衛の進撃を止めます!」
斧兵に接敵するのはマリアンナ。再び魔力を高め――妖精に防御かいくぐらせて攻撃した。
だが、どの個体もまだ倒れない。斧兵はマリアンナに接近、斧を振るった。
が、マリアンナは身を翻し、攻撃をかすめるに留める。メイジと弓のソルジャーも反撃に入るが――
魔法の弾と矢、その攻撃を一身に受けて、クィーロが後衛にまで走り込んでいた。
「ははっ、いいじゃねえか……もっと、楽しませてみろよ!」
単身飛び込んだクィーロは、その勢いをそのまま力に転化。日本刀を激しく振るってメイジを切り裂く。
北では、四人が南下しつつ交戦に入っていた。
コボルドを掃討した直後から、弓兵が既に矢を放って来ていたが――ネフィリアは動物霊の力で動きを高め、ひらりひらりとそれを躱していく。
「そんな動きじゃ僕には当たらないよー♪」
「……ネフィ姉様、さすが」
ブリスはそんな姉を見つつ、敵に接近。するとメイジも魔法の弾を撃ち出して来るが――それを受けるユキヤはまだまだ平然としている。
「この程度ならば――まだ倒れる程ではありません。一気に、攻めましょう」
ユキヤがホーリーライトを生み出すと同時。ブリスも杖を構えている。ごうっ、とスリープクラウドで敵をまとめて巻き込むと――弓兵とメイジの二体がそのまま倒れて眠った。
「ギッ!?」
残った斧のゴブリンは驚いて見回す。きゅおっ! その間にユキヤの光の魔法が飛来してくる。ゴブリンは慌てて避けようとするが――
「そう慌てず、じっとしていればいい」
ぼっ! 突如襲ったマウローゼの牽制射撃に、動きを止めた。
どうん、とホーリーライトの直撃を喰らったときには、ネフィリアがそばまで来ていた。
「んふふ♪ パイルバンカーは……下から抉り込むように撃つべし! 撃つべし! なのだ♪」
ずん、と、魔力を込めたパイルバンカーを受け――ソルジャーは血を吹き出して絶えた。
遅れて、弓兵がギギ、と目を覚ます。が、どどっ、とマウローゼの銃弾とユキヤのホーリーライトを一身に受けて、絶命した。
南方では、メイジが倒され、ゴブリンの間に動揺が走っていた。
「このまま、全員倒しましょう!」
マリアンナは斧兵と対峙しつつ皆を鼓舞する。そして距離を取り、ファミリアアタック。ずんっ、と妖精に体当たりされた斧兵は、もはや瀕死だ。
弓兵も、慌てて弓を引いているが――そこにもぼすっ、と銃弾が飛んだ。クドリャフカだ。
「あのゴブリンは、あと一撃だね」
「なら、私がとどめを刺しましょう」
答えたのは玄珠。アースバレットで、頭を一撃。どっ、と弓兵は地に倒れた。
その前方で、クィーロはゴブリンナイトの槍を正面から受けつつ、その槍を掴んでいた。
ぽたぽたと血を垂らしながらも浮かべるのは、狂気じみた笑み。
「いいぜ……いいぜ……! もっと、来てみろよ! もっと、俺に生きてる実感を得させろ!」
ずんっ! 槍のリーチの分の距離を詰めて、勢いのままに強打。
「ギギッ!」
ナイトも肩から血を流す。それでも反撃を目論むが――どっ! と予想外の方向から狙撃を受ける。
北方向から、マウローゼが銃口をナイトへ向けていた。
●故郷
北側では――二体のソルジャーが倒されたあと、ようやく最後のメイジが目を覚ましていた。
「ギギ……ギッ!?」
だがその頃には、ネフィリアが目の前に迫っている。ずっ、と霊魔撃で胸を貫かれ――北のゴブリンは全滅した。
「ここから、合流して勝負を決めることにしましょう」
ユキヤが南を向くと、皆も頷いて、南へ走る。
そうして、南下したマウローゼはナイトへ狙いを絞り……的確な一発を放つ。
「まずは、回復をしますね」
するとユキヤが前進し、混戦状態の中、ヒーリングスフィア。広範囲に柔らかい光が広がり、傷を癒していく。
マリアンナは――それでも、ソルジャーの死にものぐるいの攻撃を喰らう。が、武器で受け止め、ファミリアアタック。最後のソルジャーを倒した。
「ギギ――ッ」
焦るナイトは、迫っていたネフィリアに刺突。合流直前にブリスにウインドガストを付与されていたネフィリアは、素速く避ける――が、かすかに刃先をかすめられてしまう。
それでもネフィリアは即座に霊魔撃で反撃。
「ここで一気に決めるのだ! 思い切り痛い一撃を……食らうのだー!!」
どすっ、と強烈な一撃を受けたナイトはよろめく。
「ネフィ姉様を傷つけたの……許さない」
同時、ブリスもウインドスラッシュでその体を切り裂いてゆく。
苦悶するナイトへ、マリアンナがシンクロした妖精での打撃をたたき込む。
「もう少しで、いけそうです!」
「蜂の巣に、してやろう」
どっ! そこへ銃弾を撃ち込んだのはマウローゼ。ナイトの乗るリトルラプターが力を失ってよろめいた。
「逃さないよ」
次いで飛んだ銃弾が、ナイト本体を射貫く。クドリャフカのライフルの一撃だ。
ナイトは息絶え絶えになりつつも、勝機はないと見たか、混戦から逃れようとするが――
「おいおい……逃げ出すなんて興ざめもいいとこだぜ……? 見苦しいから、死んでくれよ」
クィーロが立ちはだかる。そして……ざんっ、と正面からの強打。
「これで、終わりにしましょう」
ほぼ同時、ユキヤのホーリーライトも、その体を貫いている。
「ギ――」
ゴブリンナイトは一瞬声をあげると……どさ、と力尽きた。
村人達は、村へ戻った。
彼らは皆、久しぶりの故郷に嬉しそうな顔をしているのだった。
「敵は一掃した。何かあれば、またハンターを呼べばいいだろう」
マウローゼの言葉に、頷くのは――風にそよぐ桜を見上げる、ジム。
「本当に、ありがとうございました。……故郷に、日常に、帰って来られてよかった。そう思います」
「ええ。日常は、大切、ですよね」
ユキヤは穏やかな顔で答える。自分はまだ、蒼の世界に帰りたいとは思わないけれど――ふと、そんなことを思いながら。
「あなたたちにも、故郷があるんでしょう」
ジムが興味を覚えたように聞くと……ネフィリアは、明るく、首を振る。故郷はある。けれど――戻ることは考えていないのだ。
「今のほうが自由で気楽だしね♪ それに、姉妹一緒でいられるし♪ ね、ブリスちゃん」
「……ん」
ブリスははっきり答えるでもなく、ネフィリアに体を寄せていた。
「私は修行の為に、今は故郷からは遠く離れちゃってるけど……」
マリアンナはふと、文化も気候もこのあたりとは違う、辺境の故郷を思い出す。
自分も失うまでその価値に気付かないのだろうか? 少しだけ、しんみりしてしまった。
クィーロは、そんな話を、柔らかな態度で聞いているだけだ。まだ何も思い出さないか、と考えながら。
(愛郷心すら持てないのは少し寂しいものだね)
桜を見て、そう思った。
玄珠は、多くを語らない。ただ、いつか自分も故郷へ帰れると、信じている。
「来年の桜を、見に来ます」
「ええ。また変わらずに咲いて……僕も見られたら、嬉しいです」
ユキヤも答えて、桜と、空を見上げる。
クドリャフカは、そんな風景を見ながら絵を描いていた。
「――せんせは梅の方が好きだったなぁ。でも、桜も悪くないね」
桃色の花びらが舞うのは、確かに美しい。
それが、取り戻した故郷の姿だった。
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相談卓 マリアンナ・バウアール(ka4007) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/05/02 02:58:35 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/04/28 21:38:21 |