ゲスト
(ka0000)
もう一度、故郷を
マスター:松尾京

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2015/05/02 15:00
- リプレイ完成予定
- 2015/05/11 15:00
オープニング
●退屈な農村
ジェオルジの外れの農村。
ジム青年は今日もクワを持ち出し、家を出てすぐの畑に向かっていた。
「……今日も日が照ってるなあ」
ぽつりと呟く。
その声と顔には、退屈だ、という気持ちが少しばかり表れていた。
生まれ故郷にして、今も住み続けるこの村が、ジムはあまり好きではない。
都会と違い、あるものといえば畑や、牛がのろのろ歩く道に、立ち並ぶ木。
小さい頃も遊ぶものがなくて、困ることがしばしばあった。
村の唯一の特徴とも言えるものとして、敷地の中心に桜の大木があるのだが……それすら子供の頃に既に何百回と上ったし、とっくに見飽きている。
代わり映えしない日々。
退屈だな、とジムは思う。
子供時分には、大人が話してくれる都会の話に目を輝かせたものだ。
それはきらびやかな、夢の世界。
――俺はヴァリオスに行って大商人になるんだ。
――いや、フマーレで工房でも持って一旗揚げる。
――それがだめなら、ポルトワールへ出て船乗りになる。
――ええい、世界を股にかけるハンターになる!
そんなふうに夢を語ったのが懐かしい。
しがない農村が嫌だった少年ジムは……しかし現実では何も行動に起こすことはなかった。
そうして今、青年ジムとなり、農家としてこの村に家を構えることになっている。
十代の頃は、なけなしの貯金をはたいて、フマーレからポルトワール、ヴァリオスと旅行に行ったことがある。
……だが少年ジムには刺激が強すぎたのだろうか、空気に当てられただけで、そこから何かをなすことはなかった。
外の世界に出る才覚が、きっとなかったのだろう。
だから結局、自分はただの農家におさまっている。
それが、退屈だった。
そして、そういうことを考えている自分さえ、何だかさえないな、と思うのだった。
だが、そんな日々こそ、突然終わりを告げるものだ。
●事件
「ご――ゴブリンだ! ゴブリンが出たぞ! うわああっ!」
それは、亜人の強襲だった。
ジムが畑を耕そうとしたその直後のことだ。
うららかな一日に思われたこの村に、ゴブリンが現れた。
ゴブリンは集団だった。武器を持っているものもおり、目的は明白だった。
ギ、ギ、という低い声。どう猛な顔で、一瞬で村に散ると……繰り広げたのは、略奪。
畑を荒らし、家を壊し。邪魔をするものは、容赦なく刃を振るった。
「やめろ! 俺の畑を……!」
「助けてくれ!」
響く悲鳴。とどろく亜人の足音。全てが信じられない光景。
それはジムの目に、耳に、焼き付いた。
生まれて初めて見た、人間と違う、恐ろしい姿形。
将来、俺もハンターになって歪虚とやらを倒す戦士になるかも知れない――そう思ったこともあったジムは、村を襲うゴブリンの集団に、ただただ震えていることしかできなかった。
「村は捨てるんだ! 逃げるぞ!」
そんな声が聞こえると、ジムははっと正気に戻り……村人達と共に、身一つで村を出た。
それから村人は、少し離れた大きな隣村に身を寄せた。
土地はあり、同情もされて、ジム達少ない村人は温かく受け入れられた。
ジムは、かつて父の友人であったという農家の男に世話になることが出来た。
「大変だったな。しばらくはここにいるといい」
そう言われてジムは、ほっとしたのだった。
●決断
後に、ジムを含む農村の元住人で話し合いが持たれた。
それは、あの村をどうする、ということだ。
「ゴブリンは追ってこなかったから、きっと食物が欲しかっただけだ」
「わざわざこちらからあの村に出向かなければ、危険はないだろう」
「下手に退治しようとしたら、こちらにまで被害が及ぶかも知れない。だからあの村は、残念だが、もう――」
それは、寂れた農村を捨てて、ここで新しい生活を目指す、という声だった。
ジムも、賛成のつもりだった。
家を捨てるのは残念だし、無念でもあった。
けれど、ここの村でも農業は出来る。何も不便はない。家はそのうち自分で建てればいい。
なあに、あんな村を出るいいきっかけになった。命あっての物種。死者は出なかったし、新生活のきっかけと思えばいい……。
だから、ジムに反対する意志はなかった。
でも――
その夜。
ジムはふと、布団で目を覚ました。
「……」
それから少し考え事をして。
自分が涙を流しているのに気付いた。
「どうして……」
ゴブリンは怖かった。それから逃げられた安心感が、今頃こみ上げて来たのか?
……違う。
ジムは、思い出していた。
幼い頃、あの村で過ごしていた日々を。つまらないと不平を漏らしながら、牛の歩く道を一緒に歩んだことを。広い草むらを友人と共に駆け――桜の大木に上って遊んでいた、あの日々を。
出てくるのは、そんな思い出ばかりだった。
新しい生活がはじめられるかも知れない。そんな機会にいながら、かつて憧れていた華々しい都会の姿は、頭に浮かんでこない。
土臭くて、嫌になるくらい太陽が暑くて、退屈で……。
それでも、心がものすごく温まるあの村が、恋しくて仕方なかった。
きっとはじめからそうだった。
「俺は……あの村に帰りたい。帰りたいよ」
●依頼
翌日、ジムは元村民間の話し合いで、前日の考えを変えたことを伝えた。
意外にも、反対は出なかった。
ジムだけでなく、他の人達も、故郷の恋しさに気付きはじめたというように。
どころか、危険を冒してあの村の近くまで様子を見に行っていたものもいた。それによると、村はゴブリンに占拠されているらしい。
あそこにもう一度住もうなどと、無謀な話だ。
それでもジムは、諦めるつもりはなかった。
「助けてくれる人達が、いる。彼らなら――」
それは、かつて夢見る少年だったジムも、憧れていた存在だ。
ジェオルジの外れの農村。
ジム青年は今日もクワを持ち出し、家を出てすぐの畑に向かっていた。
「……今日も日が照ってるなあ」
ぽつりと呟く。
その声と顔には、退屈だ、という気持ちが少しばかり表れていた。
生まれ故郷にして、今も住み続けるこの村が、ジムはあまり好きではない。
都会と違い、あるものといえば畑や、牛がのろのろ歩く道に、立ち並ぶ木。
小さい頃も遊ぶものがなくて、困ることがしばしばあった。
村の唯一の特徴とも言えるものとして、敷地の中心に桜の大木があるのだが……それすら子供の頃に既に何百回と上ったし、とっくに見飽きている。
代わり映えしない日々。
退屈だな、とジムは思う。
子供時分には、大人が話してくれる都会の話に目を輝かせたものだ。
それはきらびやかな、夢の世界。
――俺はヴァリオスに行って大商人になるんだ。
――いや、フマーレで工房でも持って一旗揚げる。
――それがだめなら、ポルトワールへ出て船乗りになる。
――ええい、世界を股にかけるハンターになる!
そんなふうに夢を語ったのが懐かしい。
しがない農村が嫌だった少年ジムは……しかし現実では何も行動に起こすことはなかった。
そうして今、青年ジムとなり、農家としてこの村に家を構えることになっている。
十代の頃は、なけなしの貯金をはたいて、フマーレからポルトワール、ヴァリオスと旅行に行ったことがある。
……だが少年ジムには刺激が強すぎたのだろうか、空気に当てられただけで、そこから何かをなすことはなかった。
外の世界に出る才覚が、きっとなかったのだろう。
だから結局、自分はただの農家におさまっている。
それが、退屈だった。
そして、そういうことを考えている自分さえ、何だかさえないな、と思うのだった。
だが、そんな日々こそ、突然終わりを告げるものだ。
●事件
「ご――ゴブリンだ! ゴブリンが出たぞ! うわああっ!」
それは、亜人の強襲だった。
ジムが畑を耕そうとしたその直後のことだ。
うららかな一日に思われたこの村に、ゴブリンが現れた。
ゴブリンは集団だった。武器を持っているものもおり、目的は明白だった。
ギ、ギ、という低い声。どう猛な顔で、一瞬で村に散ると……繰り広げたのは、略奪。
畑を荒らし、家を壊し。邪魔をするものは、容赦なく刃を振るった。
「やめろ! 俺の畑を……!」
「助けてくれ!」
響く悲鳴。とどろく亜人の足音。全てが信じられない光景。
それはジムの目に、耳に、焼き付いた。
生まれて初めて見た、人間と違う、恐ろしい姿形。
将来、俺もハンターになって歪虚とやらを倒す戦士になるかも知れない――そう思ったこともあったジムは、村を襲うゴブリンの集団に、ただただ震えていることしかできなかった。
「村は捨てるんだ! 逃げるぞ!」
そんな声が聞こえると、ジムははっと正気に戻り……村人達と共に、身一つで村を出た。
それから村人は、少し離れた大きな隣村に身を寄せた。
土地はあり、同情もされて、ジム達少ない村人は温かく受け入れられた。
ジムは、かつて父の友人であったという農家の男に世話になることが出来た。
「大変だったな。しばらくはここにいるといい」
そう言われてジムは、ほっとしたのだった。
●決断
後に、ジムを含む農村の元住人で話し合いが持たれた。
それは、あの村をどうする、ということだ。
「ゴブリンは追ってこなかったから、きっと食物が欲しかっただけだ」
「わざわざこちらからあの村に出向かなければ、危険はないだろう」
「下手に退治しようとしたら、こちらにまで被害が及ぶかも知れない。だからあの村は、残念だが、もう――」
それは、寂れた農村を捨てて、ここで新しい生活を目指す、という声だった。
ジムも、賛成のつもりだった。
家を捨てるのは残念だし、無念でもあった。
けれど、ここの村でも農業は出来る。何も不便はない。家はそのうち自分で建てればいい。
なあに、あんな村を出るいいきっかけになった。命あっての物種。死者は出なかったし、新生活のきっかけと思えばいい……。
だから、ジムに反対する意志はなかった。
でも――
その夜。
ジムはふと、布団で目を覚ました。
「……」
それから少し考え事をして。
自分が涙を流しているのに気付いた。
「どうして……」
ゴブリンは怖かった。それから逃げられた安心感が、今頃こみ上げて来たのか?
……違う。
ジムは、思い出していた。
幼い頃、あの村で過ごしていた日々を。つまらないと不平を漏らしながら、牛の歩く道を一緒に歩んだことを。広い草むらを友人と共に駆け――桜の大木に上って遊んでいた、あの日々を。
出てくるのは、そんな思い出ばかりだった。
新しい生活がはじめられるかも知れない。そんな機会にいながら、かつて憧れていた華々しい都会の姿は、頭に浮かんでこない。
土臭くて、嫌になるくらい太陽が暑くて、退屈で……。
それでも、心がものすごく温まるあの村が、恋しくて仕方なかった。
きっとはじめからそうだった。
「俺は……あの村に帰りたい。帰りたいよ」
●依頼
翌日、ジムは元村民間の話し合いで、前日の考えを変えたことを伝えた。
意外にも、反対は出なかった。
ジムだけでなく、他の人達も、故郷の恋しさに気付きはじめたというように。
どころか、危険を冒してあの村の近くまで様子を見に行っていたものもいた。それによると、村はゴブリンに占拠されているらしい。
あそこにもう一度住もうなどと、無謀な話だ。
それでもジムは、諦めるつもりはなかった。
「助けてくれる人達が、いる。彼らなら――」
それは、かつて夢見る少年だったジムも、憧れていた存在だ。
解説
●目的
農村の奪還。
●場所
ゴブリンに占拠された農村。
以下は概略図。
----------
木木 木木
木■ ■木
木 桜 木
木■ ■木
木木 木木
----------
50×50スクエア。
柵代わりに背の低い林が立ち、中央に草むらに囲まれた桜の大木がある。
桜を中心に十字形に道が走り(道幅4スクエア)、■で表される四隅に木造住宅が点在する。
それ以外は畑などの農地。
道の両側周辺もほぼ農地なので、意図的に四隅に近づかない限りは住宅が邪魔になることはない。
農地はほぼ荒らされているため、踏み込んでも構わないとのこと。
●敵
・ゴブリンナイト×1
小さい恐竜リトルラプターに騎乗している。サイズ2。
首領格で、槍を装備している。
食物を集め、桜の大木のもとに陣取る。
集団の中では戦闘力が群を抜いていたという。
・ゴブリンソルジャー×4
斧+盾を装備した個体が南北に1体ずつ、弓を装備した個体が南北に1体ずつ、ゴブリンナイトを囲うように守る。
・ゴブリンメイジ×2
魔法のような力を使う。
ソルジャーの脇を守るような形で、ゴブリンナイトの南北に位置する。
・ゴブリン×8
村の四隅の住宅の屋根で各2体ずつが見張り。
・コボルド×4
ゴブリンに使われている。
村のあちこちで食物などを調達。基本的には道を行き来している。
農村の奪還。
●場所
ゴブリンに占拠された農村。
以下は概略図。
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木木 木木
木■ ■木
木 桜 木
木■ ■木
木木 木木
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50×50スクエア。
柵代わりに背の低い林が立ち、中央に草むらに囲まれた桜の大木がある。
桜を中心に十字形に道が走り(道幅4スクエア)、■で表される四隅に木造住宅が点在する。
それ以外は畑などの農地。
道の両側周辺もほぼ農地なので、意図的に四隅に近づかない限りは住宅が邪魔になることはない。
農地はほぼ荒らされているため、踏み込んでも構わないとのこと。
●敵
・ゴブリンナイト×1
小さい恐竜リトルラプターに騎乗している。サイズ2。
首領格で、槍を装備している。
食物を集め、桜の大木のもとに陣取る。
集団の中では戦闘力が群を抜いていたという。
・ゴブリンソルジャー×4
斧+盾を装備した個体が南北に1体ずつ、弓を装備した個体が南北に1体ずつ、ゴブリンナイトを囲うように守る。
・ゴブリンメイジ×2
魔法のような力を使う。
ソルジャーの脇を守るような形で、ゴブリンナイトの南北に位置する。
・ゴブリン×8
村の四隅の住宅の屋根で各2体ずつが見張り。
・コボルド×4
ゴブリンに使われている。
村のあちこちで食物などを調達。基本的には道を行き来している。
マスターより
今あるものの大切さは、考えようと思っても中々考えられなかったりします。
今回は、不意にその機会が訪れてしまった村人の話です。
敵は力で全てをねじ伏せる略奪団です。放っておいても命を狙ってくるような敵なので、後顧の憂いを断つためにも掃討することが望まれるでしょう。数は多いですが、力に作戦にと、持っているものを生かして戦ってみてください。
今回は、不意にその機会が訪れてしまった村人の話です。
敵は力で全てをねじ伏せる略奪団です。放っておいても命を狙ってくるような敵なので、後顧の憂いを断つためにも掃討することが望まれるでしょう。数は多いですが、力に作戦にと、持っているものを生かして戦ってみてください。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2015/05/09 16:41
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 マリアンナ・バウアール(ka4007) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/05/02 02:58:35 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/04/28 21:38:21 |