ゲスト
(ka0000)
なんか来た!~酒場を襲うニンジン達~
マスター:瑞木雫

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/05/07 07:30
- 完成日
- 2015/05/16 00:12
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●大人気パブリックハウス『バルバドール』!!
ある町のとあるところ。連日大盛況で賑わっている巷で有名なパブリックハウスがあった。
名を、『バルバドール』という。
リアルブルーからの住人にとっては英国のパブリックハウスを彷彿するような一軒。
扉を開けば、大柄の金髪のお兄さんがお出迎え。
「イラッシャイマセ! ようこそ、バルバドールへ」
彼はライアン。初対面だとウェイターの人かなと思われがちなのだが、れっきとしたバルバドールの店長だ。
普段はお客さんにも従業員にも弄られているがいざという時はしっかり者で、なんだかんだ頼られているし慕われている男である。
●明るく賑やかな、バルバドールの人々
「五名様ですね! ブリちゃん。テーブル席の案内宜しくっ!」
「はぁーい♪ ではお席、案内しまぁーす♪」
語尾にハァト。
ライアンに頼まれたウェイトレスは、きゃぴっと挨拶した。彼女は名の通りぶりっこちゃんで、とてもあざとい。つまりあざとすぎて逆に男を騙せない系残念女子なのだ。因みにドン引きの冷たい目をしない彼氏募集中である。
「お次のお客様はカウンターですね! さぁさ、どうぞ!」
カウンターの席は、賑やかでワイワイしているテーブル席とは対照的にバーのように落ち着いた空間で、大勢よりも少数で楽しみたい方向けに提供している。
一人で来たならばバーテンダーと話すのも良いかもしれない。ではここで三人の個性的なバーテンダーを紹介するとしよう。
「貴女の瞳の色に合わせて作りました」
紳士的な爽やかな笑顔を浮かべるのが、イケメン君。派手な見た目をしているが、意外と大人しく謙虚な性格をしている。そしておまけに天然たらしで、彼を目当てに通う女性客も少なくはないとか。
「そうねぇ。でも仕方ないわ、それが男っていう生き物なのよ」
涙を流しながら相談する女性客へ親身になっているおネエさんが、ヲトメさん。バルバドールの心優しきお姉さん的存在であり、相談役…………ちなみに男だ。
「………」
カシャカシャカシャカシャカシャカシャ!
そして無口とはいえ忘れてならないのがこの人。ハードボイルドな見た目のボイルドさん。イケメン君やヲトメさんがお客さんとの交流も大切にする一方で、ボイルドさんは兎に角スピーディーに酒を出す事に徹底した人物で影の重要人物なのである。
お客さんの間ではカクテルマシーンと評価されているよう模様。良い意味で。
「はい、お待ち! 私お手製の魚のオーブン焼きだよ~」
テーブル席に温かい料理を持っていったのが、キッチン兼ホールの最強のオフクロさん。ふくよかで肝っ玉の据わったバルバドールのお母さん的存在である。
彼女には従業員……そしてライアンでさえ、頭が上がらない。
バルバドールの従業員はみんな個性溢れる楽しい奴ら。
彼らのサービスはもちろんのこと、提供する食事も酒も豊富で絶品。そして沢山食べて飲めるのに、リーズナブルめ。
この満足度の高さが若い男女からお年寄りの方まで愛される人気の強みなのかもしれない。
……おっと。どうやらバルバドールの扉を開ける次なるお客さんがご来店のようだ。
「イラッシャイマセ!」
満面の笑顔を浮かべながら貴方を、――――歓迎する。
●事件は起きた!
店内は陽気な音楽が流れ、楽しく笑い、楽しく雑談し、今日は特別な催しで可愛らしい民族衣装を着た女の子たちが長いスカートの裾を軽く摘みながら踊っている。
美味しい料理を食べ、酒に酔い、バルバドールのお客さんはいつもと変わらず機嫌よく、盛り上がっていたのだったが――――。
「なんだありゃあ……」
偶然窓から外の様子を眺めたお客さんの一人が呟いた。 すると。
―――ドォン!
何かがぶつかるような音がした。
「うわっ!」
異常事態発生に何事かと真っ先に駆けつけてきたライアンが思わず驚くような声を上げた。
「……海賊のコスプレをした、……ニンジン」
今日も今日とて忙しなくカクテルを振っているボイルドさんが、良い声で呟く。見たまんまの印象を。
―――ドォン。 ドォン。
「な、なんだいあれは」
オフクロさんの目が点になる。
「ニンジンが体当たりをしているんじゃないかな?」
イケメン君の天然な回答に、
「それは見なくてもわかるわよ……」
ヲトメさんがつっこみをした。
「きゃぁ、こわぁい」
きゃぴ!
そしてブリちゃんは計算しつくされたかわいこちゃんのポーズをする。
―――ドォン。ドォン。
従業員もお客さんも、きっと気付けば思わず二度見してしまうだろう。
なんと外で海賊の格好をしているように見えるでっかいニンジン達がバルバドールの外壁を体当たりしているではないか!
そしてこの事に離れた席で座っていたお客さんまでが気付くような状況となったのはあっという間だった。
雑魔が店を攻撃している!
それはとても恐ろしい事でこの場にいる200人の身に危険が迫っている状況とも言えるだろう。
場合によってはパニックになってもおかしくはない。
しかし、このバルバドールの店内で起きたのは、良くも悪くも、予想外の反応なのだった…………………。
わっはっはっはっはっはっはっは!!
なんとも愉快そうな笑い声。
実に暢気!
酔っているのか!?
……酔っているのだろう。
海賊のコスプレをしたでっかいニンジンはどう見ても雑魔だった。
だがその見た目がそこそこファンシーであり、そして一生懸命体当たりをしているようだがバルバドールの外壁はびくともせず、外に出なければ安全っぽいこの状況が、酔っているお客さんには恐怖に感じれないのかもしれない。
なんか笑われてるっぽいニンジンは、ぼよんっ、ぼよんっ、とその場を跳ねていた。でっかいボディの割に、柔軟なのらしい。ぼよん、ぼよん、と跳ねながら店の外を動き回りつつ、めげずに体当たりを繰り返していた。
お客さんは爆笑の渦なのである。
だがただ一人、この店の店長であり責任者であるライアンは血相を変えていた。そして人知れず、一人脳内会議を始めるのだった。
やべぇ!
これじゃあ帰宅したいお客さんの身が危険じゃねえか!
戦うか?
いや、無理だろ!
俺そんな力ないし……。嗚呼、こんな時、彼らが居てくれれば………。
あ!
そうか!
これはもしや、俺が人生で一度は言ってみたい台詞ランキングナンバー1に輝くあの台詞を使用するべき時なんじゃないか!
名案を思い付いたライアンは意を決し、すぅぅ……っと息を吸い込んで、店内に響くような大声で言った。
「お客様の中に、ハンターの方はいらっしゃいませんかー!!!!!!!」
ある町のとあるところ。連日大盛況で賑わっている巷で有名なパブリックハウスがあった。
名を、『バルバドール』という。
リアルブルーからの住人にとっては英国のパブリックハウスを彷彿するような一軒。
扉を開けば、大柄の金髪のお兄さんがお出迎え。
「イラッシャイマセ! ようこそ、バルバドールへ」
彼はライアン。初対面だとウェイターの人かなと思われがちなのだが、れっきとしたバルバドールの店長だ。
普段はお客さんにも従業員にも弄られているがいざという時はしっかり者で、なんだかんだ頼られているし慕われている男である。
●明るく賑やかな、バルバドールの人々
「五名様ですね! ブリちゃん。テーブル席の案内宜しくっ!」
「はぁーい♪ ではお席、案内しまぁーす♪」
語尾にハァト。
ライアンに頼まれたウェイトレスは、きゃぴっと挨拶した。彼女は名の通りぶりっこちゃんで、とてもあざとい。つまりあざとすぎて逆に男を騙せない系残念女子なのだ。因みにドン引きの冷たい目をしない彼氏募集中である。
「お次のお客様はカウンターですね! さぁさ、どうぞ!」
カウンターの席は、賑やかでワイワイしているテーブル席とは対照的にバーのように落ち着いた空間で、大勢よりも少数で楽しみたい方向けに提供している。
一人で来たならばバーテンダーと話すのも良いかもしれない。ではここで三人の個性的なバーテンダーを紹介するとしよう。
「貴女の瞳の色に合わせて作りました」
紳士的な爽やかな笑顔を浮かべるのが、イケメン君。派手な見た目をしているが、意外と大人しく謙虚な性格をしている。そしておまけに天然たらしで、彼を目当てに通う女性客も少なくはないとか。
「そうねぇ。でも仕方ないわ、それが男っていう生き物なのよ」
涙を流しながら相談する女性客へ親身になっているおネエさんが、ヲトメさん。バルバドールの心優しきお姉さん的存在であり、相談役…………ちなみに男だ。
「………」
カシャカシャカシャカシャカシャカシャ!
そして無口とはいえ忘れてならないのがこの人。ハードボイルドな見た目のボイルドさん。イケメン君やヲトメさんがお客さんとの交流も大切にする一方で、ボイルドさんは兎に角スピーディーに酒を出す事に徹底した人物で影の重要人物なのである。
お客さんの間ではカクテルマシーンと評価されているよう模様。良い意味で。
「はい、お待ち! 私お手製の魚のオーブン焼きだよ~」
テーブル席に温かい料理を持っていったのが、キッチン兼ホールの最強のオフクロさん。ふくよかで肝っ玉の据わったバルバドールのお母さん的存在である。
彼女には従業員……そしてライアンでさえ、頭が上がらない。
バルバドールの従業員はみんな個性溢れる楽しい奴ら。
彼らのサービスはもちろんのこと、提供する食事も酒も豊富で絶品。そして沢山食べて飲めるのに、リーズナブルめ。
この満足度の高さが若い男女からお年寄りの方まで愛される人気の強みなのかもしれない。
……おっと。どうやらバルバドールの扉を開ける次なるお客さんがご来店のようだ。
「イラッシャイマセ!」
満面の笑顔を浮かべながら貴方を、――――歓迎する。
●事件は起きた!
店内は陽気な音楽が流れ、楽しく笑い、楽しく雑談し、今日は特別な催しで可愛らしい民族衣装を着た女の子たちが長いスカートの裾を軽く摘みながら踊っている。
美味しい料理を食べ、酒に酔い、バルバドールのお客さんはいつもと変わらず機嫌よく、盛り上がっていたのだったが――――。
「なんだありゃあ……」
偶然窓から外の様子を眺めたお客さんの一人が呟いた。 すると。
―――ドォン!
何かがぶつかるような音がした。
「うわっ!」
異常事態発生に何事かと真っ先に駆けつけてきたライアンが思わず驚くような声を上げた。
「……海賊のコスプレをした、……ニンジン」
今日も今日とて忙しなくカクテルを振っているボイルドさんが、良い声で呟く。見たまんまの印象を。
―――ドォン。 ドォン。
「な、なんだいあれは」
オフクロさんの目が点になる。
「ニンジンが体当たりをしているんじゃないかな?」
イケメン君の天然な回答に、
「それは見なくてもわかるわよ……」
ヲトメさんがつっこみをした。
「きゃぁ、こわぁい」
きゃぴ!
そしてブリちゃんは計算しつくされたかわいこちゃんのポーズをする。
―――ドォン。ドォン。
従業員もお客さんも、きっと気付けば思わず二度見してしまうだろう。
なんと外で海賊の格好をしているように見えるでっかいニンジン達がバルバドールの外壁を体当たりしているではないか!
そしてこの事に離れた席で座っていたお客さんまでが気付くような状況となったのはあっという間だった。
雑魔が店を攻撃している!
それはとても恐ろしい事でこの場にいる200人の身に危険が迫っている状況とも言えるだろう。
場合によってはパニックになってもおかしくはない。
しかし、このバルバドールの店内で起きたのは、良くも悪くも、予想外の反応なのだった…………………。
わっはっはっはっはっはっはっは!!
なんとも愉快そうな笑い声。
実に暢気!
酔っているのか!?
……酔っているのだろう。
海賊のコスプレをしたでっかいニンジンはどう見ても雑魔だった。
だがその見た目がそこそこファンシーであり、そして一生懸命体当たりをしているようだがバルバドールの外壁はびくともせず、外に出なければ安全っぽいこの状況が、酔っているお客さんには恐怖に感じれないのかもしれない。
なんか笑われてるっぽいニンジンは、ぼよんっ、ぼよんっ、とその場を跳ねていた。でっかいボディの割に、柔軟なのらしい。ぼよん、ぼよん、と跳ねながら店の外を動き回りつつ、めげずに体当たりを繰り返していた。
お客さんは爆笑の渦なのである。
だがただ一人、この店の店長であり責任者であるライアンは血相を変えていた。そして人知れず、一人脳内会議を始めるのだった。
やべぇ!
これじゃあ帰宅したいお客さんの身が危険じゃねえか!
戦うか?
いや、無理だろ!
俺そんな力ないし……。嗚呼、こんな時、彼らが居てくれれば………。
あ!
そうか!
これはもしや、俺が人生で一度は言ってみたい台詞ランキングナンバー1に輝くあの台詞を使用するべき時なんじゃないか!
名案を思い付いたライアンは意を決し、すぅぅ……っと息を吸い込んで、店内に響くような大声で言った。
「お客様の中に、ハンターの方はいらっしゃいませんかー!!!!!!!」
リプレイ本文
●ハンターの方はいらっしゃいました!
「おいおい店長、そんな都合よくハンターが居る訳ないじゃないか!」
お客さん達がワハハと明るく笑い飛ばしながら言った。―――いや、もし本当にハンターが居ないなら彼らの置かれている状況は相当不味い訳なのだが。しかしそこは幸運にも、心配御無用。店内には8人のハンターが居てくれたのである。
「たとえ非情な運命がどんなに私を翻弄しようとも、そこに敵がいるというのなら戦いましょう」
窓越にニンジン雑魔の様子を視察していたセリア・シャルリエ(ka4666)に、お客さん達は注目した。
「それが私の宿命(さだめ)なのですから」
おぉぉぉ!
店内にどっと歓声が沸き上がる。
セリアはお酒を飲もうと頼めば未成年者ゆえに断られ、帰ろうとすればこうしてニンジン雑魔の邪魔が入られ……と現在やさぐれ中なのだが、芝居掛かった台詞と立ち振る舞いをしてくれるあたり、サービス精神はたっぷりなほうなのかもしれない。
「もしかして……キャプテンフックご一行?」
エリス・ブーリャ(ka3419)は首を捻る。
どうやら赤ら面の海賊がバルバドールの外壁を派手にノックしているのだと思ったエリスは、児童書の主人公の如く立ち上がり、窓越しに見える海賊達へとビシッと言った。
「ネバーランドにようこそ、キャプテンフックご一行! 残念だけどお引取り願っちゃうよ」
―――オォォォ!
お客さんのテンションは益々盛り上がっていく。
「なんや、腹も膨れて折角良い酔いかげんやっちゅーのに煩いやっちゃな。しゃーない、ちょっくら風穴開けたるかいな」
クレナ(ka0451)はドリルをよいしょと担いで。
近くで飲んでいたお客さん達から「頑張れよー!」とか「気ぃつけてけよー」と応援されれば、「おおきにな~」と愛想を振りまいた。
彼女は少女のような容姿だが立派な成人で、おまけにザルを通り越す大酒飲み。その気持ちのいい飲みっぷりが常連客に気に入られ、仲良くなっていたようである。
―――因みに酒の強さは、こちらも負けてない。
「ちょっと飲んで帰るだけのつもりだったんだけど」
エール5、6杯を飲みながら素面である忌咲(ka4296)は、仕方ない、と息を吐きながら言った。
彼女も成人しているにも関わらず、若く見える容姿ゆえに信じてもらえず、リアルブルーの身分証が通じない所も少なくはなくて、外でお酒を飲むには苦労しているのである。
「お店に万が一が有ったら、飲みに来るとこ減っちゃう」
雑魔は放って置けない上に此処が潰れたら一大事と立ち上がった。お客さんは喝采の嵐だ。
ごはんがてら飲みに来ていたつもりだった葛城・遊奈(ka4543)はというと、近くに座っていた常連客に「なぁ、お嬢ちゃんもハンターなんじゃねえのか?」と絡まれていた。
「う。わ、私は確かにハンターですけど、え、ええと……!」
最初は渋っていたが観念し、ならばせめてもと「こ、このお酒飲み終わってからでいいですか……」
「ほら、行くわよ」
スズハ・F・デスペラード(ka4544)が遊奈を軽く引っ張った。
「す、スズちゃん、待って~! まだお酒が~!」
「お酒は後でゆっくり楽しみなさいな」
うぅ……と遊奈は少ししょんぼりしつつ、スズハについていく事に。
「楽しい食事を邪魔するものは、何人たりとも許しません。……じゅるり」
Maryar Cihthay(ka4654)も続いた。
もしかしたらニンジンが食べられるかもしれないという期待に、想いを馳せて。
「店長。人参のグラッセは作れますか?」
「ん? あぁ、作れると思うが……ってまさかお嬢ちゃんアレを食べる気か?!」
歪虚を食べるというのは基本的に滅多に行え無いことである。一般的には倒せば消滅する存在であり、例え残ったとしても美味しくなくなってしまうものなのだ。
―――ただし、極めて稀な例外は確かに存在する。
その可能性というのは猶更極めて極めて稀なのだが。
「はい、食べたいです」
迷いも曇りないMaryarを見てライアンは思わず息を飲む。
(なんて澄んだ目を……!)
そして最後のハンター、静架(ka0387)はというと。
絶望、悲しみ、怒り―――いや、言葉では表現しがたい面持ちで目の前の温かい食事を見つめていた。
「なぁ、アンタもハンターなんだろ?」
空気を読まない常連客の一声。
おい、バカ……!
と、別の常連客が空気を読まなかった常連客を黙らせようとするものの既に遅し。
「……っ!」
振り向いた静架の眼差しは射抜く程鋭く、ギロりと睨んでいた。
「「ひっ」」
「……とっておいて下さい。冷める前に終わらせます」
フラ……と立ち上がった静架は尋常ではない殺気を纏う。食ったら半殺し。そんな声が聞こえてきそうな無言の重圧に、常連客はごくり、とした。あのニンジン……終わったな、と。
―――さぁ、なぜ静架が雑魔滅殺に燃えたのかというのは終盤に説明させて貰うとしよう。
こうして8人が揃うと、お客さん達はお祭り騒ぎ。
「出てきてはいけませんよ」
Maryarが釘をさせば良い返事が返ってくるものの、本当に聞いてくれるかは怪しいところ。
「よーし! じゃあ準備はいい?」
エリスはバルバドールの扉のドアノブに手を掛けながら窺うと、滅殺に燃える静架が「はい」と短く返す。そして全員の答えもYES。準備万端だ。
「なら、行くよー!」
――この扉の向こうにはきっと海賊が押し寄せてきているだろう。
エリスは想定しながら扉を開けると盾を構えてジェットブーツを噴射。
ぼよんっ、ぼよんっ!?
突如の先制攻撃で慌てたニンジン雑魔達はエリスから逃れようとして見事に綺麗な突破口を作った。
―――うぉおぉ、頑張れぇハンター達ー!
お客さんの温かい声援を、背に。
●美食となるか、それとも……
「ね、ね? あれ何に見える? 本物のニンジン? エルちゃんの妄想じゃないの?」
エリスは首を捻りながら敵をじぃ、と見た。
いざ敵を間近で見てみると、どうやら海賊の格好をしているだけのニンジン雑魔であることが発覚した模様。
一方でセリアはランアウトでニンジン雑魔に接近すると、スラッシュエッジで精度の高い確実な一撃を与えた!
すると、
ぼよーん!
「……呆気ないですね」
いとも簡単に一体倒してしまった。……と同時に撃破後も消滅してしまうのを確認できるだろう。
今回の場合、『海賊姿となり、柔軟に跳ぶ巨大な人参』である事から雑魔化は深く進んでいる事が推測できる。
故に倒した時には、跡形もなく消滅してしまうのだ。
「とっとと、消えなさい!」
どうやら食べられない事を悟ったMaryarがボウから強弾の矢を放ち、また一体を確実に撃破する。
そしてエリスは、酒瓶を手に。
「こいつはエルちゃんからのおごりだ」
酒を吸わせるようにぶっかけ、ファイアスローワーを噴射。これで食べられたら良かったのになぁって内心思いながら。
「さぁさぁ次々いこか、バラバラになりたい奴からかかってこんかい」
突いて廻して突き破る、ドリルこそアルケミストの生きる道!
クレナも絶好調に仕留めていた。
スズハは魔法による攻撃に専念しつつ、あるチャレンジを試みる。
「さぁ、どいつから料理されたいのかしら?」
三種のスキルによるニンジン雑魔クッキングだ。
だがウォーターシュートで何かを濡らしたり、ファイアアローで焼いたりすることはできず、可能であるのはウィンドスラッシュで切り刻むことのみ。
うーん、残念。と、一息吐いた瞬間、彼女が見たものは―――。
「あっ!」
危ない! スズハは咄嗟にファイアアローを撃つ。遊奈の死角に近付いて体当たりを喰らわせようとしていたニンジン雑魔に。
「っ、ええい! 当たれー!!」
そして遊奈の方も攻性強化の拳銃を撃ち放っていた。それはスズハを死角から狙っていたニンジン雑魔に命中する。
ぱちり、と瞬く両者。
お互いがお互いの死角を気に掛けていた友達想いの二人は、助けると同時に助けられたのだ。
これには思わず、二人で笑ってしまうだろう。
●仕上げ!
そんなこんなで圧倒的なハンター達の優勢で戦闘はいよいよ最終局面を迎え、残るは8体となった。
お客さんの盛り上がりは最高潮!
その内の1体を倒し終え機導砲を撃ち尽くした忌咲は、注意した。
「危ないから、外には出ないで。見物するなら、窓からにしてね」
しかし彼らの盛り上がりの暴走は止められない。店内でお客さんを最後まで引き止めようとしていたライアンが「わるーい!」と叫びの詫びを入れている。
「んー、しょうがないか」
この大人数の盛り上がりは野次馬の気が済むように手の届く範囲で見物させてあげるのが今の最善かもしれない。忌咲は後の戦闘は仲間達に任せ、注意を払いながら集客を整理する。
「!」
1体倒した時に、Maryarはお客さん達の声援がより近くになった事に気付いた。
「わぁ……!」
遊奈も1体倒した後に驚く。
「あーあー、出てきてもうたん?」
クレナもあちゃー、と言うが、彼らの楽観的さ、そして心から喜んで楽しんでいる姿は、ハンター達にもちょっと和むものがあったかもしれなくて。
「この状況でやるしかないようですね……」
セリアはお客さんに被害がいかないようにランアウトでお客さんを背に敵に回り込みつつ、スラッシュエッジ!
「アンタ達、よーく見てなさい!」
でも前に出てきちゃ駄目よ、とスズハは一言添えながら煽ると、観せて楽しませる為にウォーターシュートをぶつけた。
「ママ見て、ティンカーベルになったみたい」
そして仲間とタイミングを合わせ、ジェットブーツで空を飛びあがったエリスは純白の杖を地面に向ける。そして渾身の機導砲を。
ワァァ!
大歓声が響く戦場で、ニンジン雑魔はなんとなく危機を察知したらしく、
ぼよん、ぼよんっ!
とその場を跳ねつつ逃げようとした――――が。
「お望み通り、収穫して差し上げます」
静架がそれを許さない。
「そのふざけた風体、地べたに這いつくばらせて差し上げましょう」
そんなふうにニンジン雑魔を見下ろす静架の目は、ブチ切れ気味で。
ボヨヨー……!
ふふふ……あはは……っ!
と、若干壊れかけている静架によって逃走を図ったニンジン雑魔は為す術もなく倒されてしまうのである。
「アンタが最後かいな? 覚悟しぃやせーの、ぽちっとな」
そして残る一体をクレナが。
一条の光を放って、派手にこの場を〆た!
ワアアアア!!!!
お客さん達から熱い拍手が送られた。ハンター達の大勝利なのである!!
●祝勝の宴
ハンター達は店に戻ると目一杯讃えられ、お客さん達からの盛大な喝采で迎えられた。今宵のバルバドールは彼らが主役で、英雄だ!
「よっしゃ、盛り上がっていこー」
クレナは飲み直しながら、再び常連客と仲良く飲んでいる。
「まさか本当に奢って貰えるとはね」
スズハが少々驚きの反応を。
「ええと……じゃあ頑張ったご褒美に、甘くて美味しいお酒を貰ってもいいですか?」
遊奈が控えめに注文すると、きっとお客さんやバーテンダーからは温かい微笑みが返るだろう。
その一方で、忌咲に気前よく奢るよと言っていたお客さんの方は、「じゃあお言葉に甘えて。マスター、一番良いお酒持って来て!」と注文された為、悲鳴をあげていたそうだが。
Maryarもニンジンが食べれなかった事を心の何処かで残念に思いつつ、メニューを追加すると―――。
「多分食べたかったのとはまた違うと思うけど、うちの人参料理だって絶品だぜ?」
軽くウィンクしつつ自信を持って言うライアンがMaryarに運んできたのは、バルバドール特製の人参のグラッセ。
一口、口に運ぶならば、蕩けるような甘味が口の中にじわっと広がったことだろう。
酔っ払い達に賞賛され、たくさん可愛がられたセリアは気分を落ち着かせた後に身なりを整えバーカウンターに座っていた。
『リアルブルー』をイメージしたカクテルの青さを見つめながら。
(飲めないカクテルに、帰れない故郷……か)
やさぐれつつバーテンダーのイケメン君とリアルブルーの話をしていると、そこへエリスが。
イケメン君は、ふふと微笑みを浮かべて。
「戦ってるお姿、とても素敵でしたよ。お客さんもお二人に熱狂されてて……まるでバルバドールのアイドルのようでした」
「えー! 今日はエルちゃん、良い子のヒーローになったつもりだったのにー」
「……そうだ。良かったら、このカクテルいかがですか? 奢りますよ」
セリアは注文していたカクテルを、エリスに。――けれどきっと『リアルブルー』の味わいは『甘くはない』。だからミントの葉を添えたミルクプリンを共に、と。
……静架はじんわり沁みていた。
自身が注文した温かい食事を綺麗に平らげ、幸せに浸っていたのだ。
「お昼ご飯抜きの強行軍……たいへんでしたね」
「だからあんなに殺気だってたのね」
遊奈とスズハが静架の話を聞いて、労わると同時に納得していた。
そう。殺気の真相は依頼完了報告を終え空腹の腹を満たす為に来店し料理が運ばれて早々、ニンジン雑魔に邪魔された、という事だったのだ。
――そして。
「静架さん、店長からの差し入れで人参スティックを頂きましたよ」
Maryarが皆の為に人参スティックを運んでくると、静架は思わず「うっ」と眉を潜めた。
「すみません、これだけはちょっと……」
「んー? 野菜嫌いなんー?」
拒んでいるような反応に、横からクレナが問いかけてみた。
「いや、野菜が嫌い何じゃありません。生の野菜が苦手なんです」
野菜に限らず肉も魚も全て生は駄目だ、と。
なるほど、とMaryarとクレナが頷いた。
「なら焼いて貰ったほうがよさそうですね」
「おつまみももっと作ってもらわんとな!」
―――こうして宴は賑やかに。お客さんの方もハンター達への激励と、興奮と、美味過ぎる人参で酒がもっと進んで、熱が冷めないまま夜が更けていく。
「これ……閉店時間に店を閉めれそうにねえなぁ」
ライアンが笑いながら呟くと、
「たまには閉店延ばしても良いんじゃない?」
と、忌咲はこっそり言う。
「良ければご一緒に…どうでしょう?」
そして今宵共に戦ったメンバーに遊奈が声を掛けていた。
きっと皆で飲んだ方が楽しい、と。
「それでは、改めて……かんぱ~い!」
隣にいる遊奈が楽しそうに、輪の中で乾杯しているのを見て、
「乾杯」
スズハは目を細め、柔らかい表情を浮かべていた。
今日偶然この事件に巻き込まれ突発的にチームとなったハンター8人だけれど、協力し合って雑魔を退治した彼らは、とても仲がいいチームであった事は間違いない。
そしてそんな彼らの楽しい宴はまだまだ始まったばかり―――。
めでたしめでたし。
「おいおい店長、そんな都合よくハンターが居る訳ないじゃないか!」
お客さん達がワハハと明るく笑い飛ばしながら言った。―――いや、もし本当にハンターが居ないなら彼らの置かれている状況は相当不味い訳なのだが。しかしそこは幸運にも、心配御無用。店内には8人のハンターが居てくれたのである。
「たとえ非情な運命がどんなに私を翻弄しようとも、そこに敵がいるというのなら戦いましょう」
窓越にニンジン雑魔の様子を視察していたセリア・シャルリエ(ka4666)に、お客さん達は注目した。
「それが私の宿命(さだめ)なのですから」
おぉぉぉ!
店内にどっと歓声が沸き上がる。
セリアはお酒を飲もうと頼めば未成年者ゆえに断られ、帰ろうとすればこうしてニンジン雑魔の邪魔が入られ……と現在やさぐれ中なのだが、芝居掛かった台詞と立ち振る舞いをしてくれるあたり、サービス精神はたっぷりなほうなのかもしれない。
「もしかして……キャプテンフックご一行?」
エリス・ブーリャ(ka3419)は首を捻る。
どうやら赤ら面の海賊がバルバドールの外壁を派手にノックしているのだと思ったエリスは、児童書の主人公の如く立ち上がり、窓越しに見える海賊達へとビシッと言った。
「ネバーランドにようこそ、キャプテンフックご一行! 残念だけどお引取り願っちゃうよ」
―――オォォォ!
お客さんのテンションは益々盛り上がっていく。
「なんや、腹も膨れて折角良い酔いかげんやっちゅーのに煩いやっちゃな。しゃーない、ちょっくら風穴開けたるかいな」
クレナ(ka0451)はドリルをよいしょと担いで。
近くで飲んでいたお客さん達から「頑張れよー!」とか「気ぃつけてけよー」と応援されれば、「おおきにな~」と愛想を振りまいた。
彼女は少女のような容姿だが立派な成人で、おまけにザルを通り越す大酒飲み。その気持ちのいい飲みっぷりが常連客に気に入られ、仲良くなっていたようである。
―――因みに酒の強さは、こちらも負けてない。
「ちょっと飲んで帰るだけのつもりだったんだけど」
エール5、6杯を飲みながら素面である忌咲(ka4296)は、仕方ない、と息を吐きながら言った。
彼女も成人しているにも関わらず、若く見える容姿ゆえに信じてもらえず、リアルブルーの身分証が通じない所も少なくはなくて、外でお酒を飲むには苦労しているのである。
「お店に万が一が有ったら、飲みに来るとこ減っちゃう」
雑魔は放って置けない上に此処が潰れたら一大事と立ち上がった。お客さんは喝采の嵐だ。
ごはんがてら飲みに来ていたつもりだった葛城・遊奈(ka4543)はというと、近くに座っていた常連客に「なぁ、お嬢ちゃんもハンターなんじゃねえのか?」と絡まれていた。
「う。わ、私は確かにハンターですけど、え、ええと……!」
最初は渋っていたが観念し、ならばせめてもと「こ、このお酒飲み終わってからでいいですか……」
「ほら、行くわよ」
スズハ・F・デスペラード(ka4544)が遊奈を軽く引っ張った。
「す、スズちゃん、待って~! まだお酒が~!」
「お酒は後でゆっくり楽しみなさいな」
うぅ……と遊奈は少ししょんぼりしつつ、スズハについていく事に。
「楽しい食事を邪魔するものは、何人たりとも許しません。……じゅるり」
Maryar Cihthay(ka4654)も続いた。
もしかしたらニンジンが食べられるかもしれないという期待に、想いを馳せて。
「店長。人参のグラッセは作れますか?」
「ん? あぁ、作れると思うが……ってまさかお嬢ちゃんアレを食べる気か?!」
歪虚を食べるというのは基本的に滅多に行え無いことである。一般的には倒せば消滅する存在であり、例え残ったとしても美味しくなくなってしまうものなのだ。
―――ただし、極めて稀な例外は確かに存在する。
その可能性というのは猶更極めて極めて稀なのだが。
「はい、食べたいです」
迷いも曇りないMaryarを見てライアンは思わず息を飲む。
(なんて澄んだ目を……!)
そして最後のハンター、静架(ka0387)はというと。
絶望、悲しみ、怒り―――いや、言葉では表現しがたい面持ちで目の前の温かい食事を見つめていた。
「なぁ、アンタもハンターなんだろ?」
空気を読まない常連客の一声。
おい、バカ……!
と、別の常連客が空気を読まなかった常連客を黙らせようとするものの既に遅し。
「……っ!」
振り向いた静架の眼差しは射抜く程鋭く、ギロりと睨んでいた。
「「ひっ」」
「……とっておいて下さい。冷める前に終わらせます」
フラ……と立ち上がった静架は尋常ではない殺気を纏う。食ったら半殺し。そんな声が聞こえてきそうな無言の重圧に、常連客はごくり、とした。あのニンジン……終わったな、と。
―――さぁ、なぜ静架が雑魔滅殺に燃えたのかというのは終盤に説明させて貰うとしよう。
こうして8人が揃うと、お客さん達はお祭り騒ぎ。
「出てきてはいけませんよ」
Maryarが釘をさせば良い返事が返ってくるものの、本当に聞いてくれるかは怪しいところ。
「よーし! じゃあ準備はいい?」
エリスはバルバドールの扉のドアノブに手を掛けながら窺うと、滅殺に燃える静架が「はい」と短く返す。そして全員の答えもYES。準備万端だ。
「なら、行くよー!」
――この扉の向こうにはきっと海賊が押し寄せてきているだろう。
エリスは想定しながら扉を開けると盾を構えてジェットブーツを噴射。
ぼよんっ、ぼよんっ!?
突如の先制攻撃で慌てたニンジン雑魔達はエリスから逃れようとして見事に綺麗な突破口を作った。
―――うぉおぉ、頑張れぇハンター達ー!
お客さんの温かい声援を、背に。
●美食となるか、それとも……
「ね、ね? あれ何に見える? 本物のニンジン? エルちゃんの妄想じゃないの?」
エリスは首を捻りながら敵をじぃ、と見た。
いざ敵を間近で見てみると、どうやら海賊の格好をしているだけのニンジン雑魔であることが発覚した模様。
一方でセリアはランアウトでニンジン雑魔に接近すると、スラッシュエッジで精度の高い確実な一撃を与えた!
すると、
ぼよーん!
「……呆気ないですね」
いとも簡単に一体倒してしまった。……と同時に撃破後も消滅してしまうのを確認できるだろう。
今回の場合、『海賊姿となり、柔軟に跳ぶ巨大な人参』である事から雑魔化は深く進んでいる事が推測できる。
故に倒した時には、跡形もなく消滅してしまうのだ。
「とっとと、消えなさい!」
どうやら食べられない事を悟ったMaryarがボウから強弾の矢を放ち、また一体を確実に撃破する。
そしてエリスは、酒瓶を手に。
「こいつはエルちゃんからのおごりだ」
酒を吸わせるようにぶっかけ、ファイアスローワーを噴射。これで食べられたら良かったのになぁって内心思いながら。
「さぁさぁ次々いこか、バラバラになりたい奴からかかってこんかい」
突いて廻して突き破る、ドリルこそアルケミストの生きる道!
クレナも絶好調に仕留めていた。
スズハは魔法による攻撃に専念しつつ、あるチャレンジを試みる。
「さぁ、どいつから料理されたいのかしら?」
三種のスキルによるニンジン雑魔クッキングだ。
だがウォーターシュートで何かを濡らしたり、ファイアアローで焼いたりすることはできず、可能であるのはウィンドスラッシュで切り刻むことのみ。
うーん、残念。と、一息吐いた瞬間、彼女が見たものは―――。
「あっ!」
危ない! スズハは咄嗟にファイアアローを撃つ。遊奈の死角に近付いて体当たりを喰らわせようとしていたニンジン雑魔に。
「っ、ええい! 当たれー!!」
そして遊奈の方も攻性強化の拳銃を撃ち放っていた。それはスズハを死角から狙っていたニンジン雑魔に命中する。
ぱちり、と瞬く両者。
お互いがお互いの死角を気に掛けていた友達想いの二人は、助けると同時に助けられたのだ。
これには思わず、二人で笑ってしまうだろう。
●仕上げ!
そんなこんなで圧倒的なハンター達の優勢で戦闘はいよいよ最終局面を迎え、残るは8体となった。
お客さんの盛り上がりは最高潮!
その内の1体を倒し終え機導砲を撃ち尽くした忌咲は、注意した。
「危ないから、外には出ないで。見物するなら、窓からにしてね」
しかし彼らの盛り上がりの暴走は止められない。店内でお客さんを最後まで引き止めようとしていたライアンが「わるーい!」と叫びの詫びを入れている。
「んー、しょうがないか」
この大人数の盛り上がりは野次馬の気が済むように手の届く範囲で見物させてあげるのが今の最善かもしれない。忌咲は後の戦闘は仲間達に任せ、注意を払いながら集客を整理する。
「!」
1体倒した時に、Maryarはお客さん達の声援がより近くになった事に気付いた。
「わぁ……!」
遊奈も1体倒した後に驚く。
「あーあー、出てきてもうたん?」
クレナもあちゃー、と言うが、彼らの楽観的さ、そして心から喜んで楽しんでいる姿は、ハンター達にもちょっと和むものがあったかもしれなくて。
「この状況でやるしかないようですね……」
セリアはお客さんに被害がいかないようにランアウトでお客さんを背に敵に回り込みつつ、スラッシュエッジ!
「アンタ達、よーく見てなさい!」
でも前に出てきちゃ駄目よ、とスズハは一言添えながら煽ると、観せて楽しませる為にウォーターシュートをぶつけた。
「ママ見て、ティンカーベルになったみたい」
そして仲間とタイミングを合わせ、ジェットブーツで空を飛びあがったエリスは純白の杖を地面に向ける。そして渾身の機導砲を。
ワァァ!
大歓声が響く戦場で、ニンジン雑魔はなんとなく危機を察知したらしく、
ぼよん、ぼよんっ!
とその場を跳ねつつ逃げようとした――――が。
「お望み通り、収穫して差し上げます」
静架がそれを許さない。
「そのふざけた風体、地べたに這いつくばらせて差し上げましょう」
そんなふうにニンジン雑魔を見下ろす静架の目は、ブチ切れ気味で。
ボヨヨー……!
ふふふ……あはは……っ!
と、若干壊れかけている静架によって逃走を図ったニンジン雑魔は為す術もなく倒されてしまうのである。
「アンタが最後かいな? 覚悟しぃやせーの、ぽちっとな」
そして残る一体をクレナが。
一条の光を放って、派手にこの場を〆た!
ワアアアア!!!!
お客さん達から熱い拍手が送られた。ハンター達の大勝利なのである!!
●祝勝の宴
ハンター達は店に戻ると目一杯讃えられ、お客さん達からの盛大な喝采で迎えられた。今宵のバルバドールは彼らが主役で、英雄だ!
「よっしゃ、盛り上がっていこー」
クレナは飲み直しながら、再び常連客と仲良く飲んでいる。
「まさか本当に奢って貰えるとはね」
スズハが少々驚きの反応を。
「ええと……じゃあ頑張ったご褒美に、甘くて美味しいお酒を貰ってもいいですか?」
遊奈が控えめに注文すると、きっとお客さんやバーテンダーからは温かい微笑みが返るだろう。
その一方で、忌咲に気前よく奢るよと言っていたお客さんの方は、「じゃあお言葉に甘えて。マスター、一番良いお酒持って来て!」と注文された為、悲鳴をあげていたそうだが。
Maryarもニンジンが食べれなかった事を心の何処かで残念に思いつつ、メニューを追加すると―――。
「多分食べたかったのとはまた違うと思うけど、うちの人参料理だって絶品だぜ?」
軽くウィンクしつつ自信を持って言うライアンがMaryarに運んできたのは、バルバドール特製の人参のグラッセ。
一口、口に運ぶならば、蕩けるような甘味が口の中にじわっと広がったことだろう。
酔っ払い達に賞賛され、たくさん可愛がられたセリアは気分を落ち着かせた後に身なりを整えバーカウンターに座っていた。
『リアルブルー』をイメージしたカクテルの青さを見つめながら。
(飲めないカクテルに、帰れない故郷……か)
やさぐれつつバーテンダーのイケメン君とリアルブルーの話をしていると、そこへエリスが。
イケメン君は、ふふと微笑みを浮かべて。
「戦ってるお姿、とても素敵でしたよ。お客さんもお二人に熱狂されてて……まるでバルバドールのアイドルのようでした」
「えー! 今日はエルちゃん、良い子のヒーローになったつもりだったのにー」
「……そうだ。良かったら、このカクテルいかがですか? 奢りますよ」
セリアは注文していたカクテルを、エリスに。――けれどきっと『リアルブルー』の味わいは『甘くはない』。だからミントの葉を添えたミルクプリンを共に、と。
……静架はじんわり沁みていた。
自身が注文した温かい食事を綺麗に平らげ、幸せに浸っていたのだ。
「お昼ご飯抜きの強行軍……たいへんでしたね」
「だからあんなに殺気だってたのね」
遊奈とスズハが静架の話を聞いて、労わると同時に納得していた。
そう。殺気の真相は依頼完了報告を終え空腹の腹を満たす為に来店し料理が運ばれて早々、ニンジン雑魔に邪魔された、という事だったのだ。
――そして。
「静架さん、店長からの差し入れで人参スティックを頂きましたよ」
Maryarが皆の為に人参スティックを運んでくると、静架は思わず「うっ」と眉を潜めた。
「すみません、これだけはちょっと……」
「んー? 野菜嫌いなんー?」
拒んでいるような反応に、横からクレナが問いかけてみた。
「いや、野菜が嫌い何じゃありません。生の野菜が苦手なんです」
野菜に限らず肉も魚も全て生は駄目だ、と。
なるほど、とMaryarとクレナが頷いた。
「なら焼いて貰ったほうがよさそうですね」
「おつまみももっと作ってもらわんとな!」
―――こうして宴は賑やかに。お客さんの方もハンター達への激励と、興奮と、美味過ぎる人参で酒がもっと進んで、熱が冷めないまま夜が更けていく。
「これ……閉店時間に店を閉めれそうにねえなぁ」
ライアンが笑いながら呟くと、
「たまには閉店延ばしても良いんじゃない?」
と、忌咲はこっそり言う。
「良ければご一緒に…どうでしょう?」
そして今宵共に戦ったメンバーに遊奈が声を掛けていた。
きっと皆で飲んだ方が楽しい、と。
「それでは、改めて……かんぱ~い!」
隣にいる遊奈が楽しそうに、輪の中で乾杯しているのを見て、
「乾杯」
スズハは目を細め、柔らかい表情を浮かべていた。
今日偶然この事件に巻き込まれ突発的にチームとなったハンター8人だけれど、協力し合って雑魔を退治した彼らは、とても仲がいいチームであった事は間違いない。
そしてそんな彼らの楽しい宴はまだまだ始まったばかり―――。
めでたしめでたし。
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お客様はハンターでした。 静架(ka0387) 人間(リアルブルー)|19才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2015/05/07 00:01:26 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/03 19:27:51 |