ゲスト
(ka0000)
黒猫少年探偵団と猫探し
マスター:sagitta

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 寸志
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/05/09 15:00
- 完成日
- 2015/05/17 18:24
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●路地裏で
港湾都市ポルトワール。世界中からの荷物が集まる活気あふれた港をもつこの町は、さまざまな土地から来た人びとが交わるところとしても有名だ。クリムゾン・ウェスト各地からの移住者はもちろん、リアルブルーからの来訪者もこの町では、多種多様な色にあふれた雑踏の中に紛れている。
ここは港からもほど近い、住宅街の一角。朝採れたばかりの海産物を並べる屋台が立ち並ぶ広場から、道を二本ほどへだてたところにある、小さな路地。そこに、この町の姿を凝縮したような、出身や顔立ちの違う10歳前後の少年が三人、集まっていた。
「ひまだなぁ……もぐもぐ。おい、ミッシェル、もぐ、何かおもしろいことないのかぁ?」
手にした焼き魚をほおばりながら目だけをかたわらの少年に向けて尋ねたのは、ひときわ横幅の大きな少年だ。彼の肌は、この町の漁師たちのそれによく見られるような、よく日に焼けた色をしている。
「食べながらしゃべらないでくださいよ、ガンタ。そんなかんたんに、おもしろいことがころがってるわけないじゃないですか……」
ミッシェルとよばれた色白で細身の少年が、うんざりしたような表情で答えた。彼の手には、一冊の本が握られていた。内容は、名探偵が難事件を解決する、子ども向けの物語シリーズの一冊のようだ。
「なんだよ、つまんねぇなぁ。おい、カイト、そっちはどうだ?」
ガンタが、くるり、と身体をひねり、先ほどからなにやら道ばたにしゃがみ込んでいたもうひとりの少年に声をかける。
「……うーん、なるほど、この行列の出所はこっちか……うむ、うむ」
声をかけられた少年は、ガンタの問いには答えず、熱心に地面を見つめながらぶつぶつとつぶやいているようだった。
「カイト、なにかおもしろいことでも見つけたんですか?」
カイトとよばれた少年は、何事かと近づいてきた二人に対して振り向きもしない。
「……あった!」
カイトが突然上げた大声に、ミッシェルとガンタが目を丸くする。
「いったい何があったんです?」
「アリの巣だよ!」
「……アリの巣?」
「ほら、ここだ。さっきから、このながーく続いてるアリの行列が、いったいどこからはじまっているのか、調べていたんだ。そしたら、ここ、ほら、この石畳のすき間にアリの巣があるだろ、この行列のはじまりは、このアリの巣だったんだ!」
カイトが興奮した声で説明するが、二人の少年はしらけた顔だ。
「たかがアリの巣の、なにがそんなに楽しいんだよ……」
「何かおもしろいことでもあったのかと思ったじゃないですか……」
「いや、だって不思議じゃないか? こんなに長い行列をつくって、よくアリは自分の巣の場所がわからなくならないよなぁ。きっとなにか目印があるにちがいないけど、それがわからないんだよなぁ……」
どうやら彼の知的好奇心は、二人の友人には伝わらなかったらしい。二人はがっかりした表情で、元の位置に座り直してしまう。
「あれ? ルーチェはどうした?」
カイトが、不思議そうに二人に尋ねる。
「だから、何か家の用事があるからおくれるらしいって、さっき説明したじゃないですか……全くカイトは何かに夢中になると全然話を聞いてないんですから……」
「でもそれにしても、確かにおそいな。何かあったのかなぁ?」
三人がそんなことを言い合っていたちょうどそのとき、バタバタとせわしない足音が路地に近づいてくるのが聞こえてきた。
「お、ルーチェ、おそかったじゃないか、何かあった……」
「たいへんたいへんたいへん、たいへんなのおおおおおおお!!」
振り向いたカイトの質問を遮って、悲鳴のような叫び声とともに、女の子が駆け込んでくる。
「ノッテが、いなくなっちゃったのおおおおおお!!」
「「「なんだって?」」」
ルーチェ、とよばれた少女の言葉に、三人が一斉に立ち上がった。ちなみに、ノッテというのはルーチェが飼っている黒猫のことだ。
「これは、事件のにおいがする!」
そう言ったカイトの表情は、心なしか、うれしそうだった。
●状況確認
「なるほど、つまり、ノッテは昨日の夜からルーチェの家に帰ってきていないわけですね?」
一通りの説明を聞いたミッシェルが、真剣な表情で腕を組む。
「そうなの。いつも朝ごはんはうちで食べているから、きっと今ごろ、おなかをすかせているにちがいないわ……」
「それは、かわいそうだぁ。おなかすいてるのは、つらいよなぁ」
ルーチェの言葉に、ガンタが今にも泣きそうな表情になる。彼にとって、おなかがすいているということは何よりもたいへんな事態だ。
「朝ごはんはうちで……ってことは、昼ごはんや夕飯は別のところで食べるってこと?」
カイトが尋ねると、ルーチェはこくん、とうなずいた。
「ノッテは飼い猫だけど、外で飼っているから、ずっとうちにいるわけじゃないの。毎日決まったルートで、ポルトワールのなかを移動しているわ」
「毎日決まったルート、か。なるほどな……ルーチェ、頼みがあるんだ」
カイトがルーチェの肩をつかんで、真剣な表情でそう言った。顔が、近い。ルーチェのほほが、わずかに赤く染まるが、カイトはそんなことには気づかない。
「ノッテの一日のルートを、書き出してほしいんだ。それを手がかりに、ノッテを探してみよう」
「カイト、僕たちでノッテを見つけるつもりですか?」
ミッシェルが不安そうに尋ねると、カイトがうれしそうににやりと笑ってみせる。
「もちろんだ、……と言いたいところだけど、あまり遠出すると怒られるから、大人の助けを借りた方がいいかもな。そうだ、ハンターに依頼してみよう」
「「「ハンターに?」」」
カイトの意外な言葉に、三人が、目を丸くする。その表情は、好奇心が抑えきれない、といった感じだ。
「……おもしろくなってきたぞ。黒猫少年探偵団、事件解決に向けて行動開始、ってところだな」
「何だい、その黒猫少年探偵団、って」
不思議そうな顔をするガンタに、カイトがびしっと親指を立ててみせた。
「オレたちの四人のグループ名さ。ハンターと協力して、事件を解決するんだ」
「いいですね!」
「かっこいい!」
探偵好きのミッシェルが身を乗り出し、ルーチェはきらきらした目でカイトを見つめている。
「そうと決まったら、ハンターオフィスへ!」
港湾都市ポルトワール。世界中からの荷物が集まる活気あふれた港をもつこの町は、さまざまな土地から来た人びとが交わるところとしても有名だ。クリムゾン・ウェスト各地からの移住者はもちろん、リアルブルーからの来訪者もこの町では、多種多様な色にあふれた雑踏の中に紛れている。
ここは港からもほど近い、住宅街の一角。朝採れたばかりの海産物を並べる屋台が立ち並ぶ広場から、道を二本ほどへだてたところにある、小さな路地。そこに、この町の姿を凝縮したような、出身や顔立ちの違う10歳前後の少年が三人、集まっていた。
「ひまだなぁ……もぐもぐ。おい、ミッシェル、もぐ、何かおもしろいことないのかぁ?」
手にした焼き魚をほおばりながら目だけをかたわらの少年に向けて尋ねたのは、ひときわ横幅の大きな少年だ。彼の肌は、この町の漁師たちのそれによく見られるような、よく日に焼けた色をしている。
「食べながらしゃべらないでくださいよ、ガンタ。そんなかんたんに、おもしろいことがころがってるわけないじゃないですか……」
ミッシェルとよばれた色白で細身の少年が、うんざりしたような表情で答えた。彼の手には、一冊の本が握られていた。内容は、名探偵が難事件を解決する、子ども向けの物語シリーズの一冊のようだ。
「なんだよ、つまんねぇなぁ。おい、カイト、そっちはどうだ?」
ガンタが、くるり、と身体をひねり、先ほどからなにやら道ばたにしゃがみ込んでいたもうひとりの少年に声をかける。
「……うーん、なるほど、この行列の出所はこっちか……うむ、うむ」
声をかけられた少年は、ガンタの問いには答えず、熱心に地面を見つめながらぶつぶつとつぶやいているようだった。
「カイト、なにかおもしろいことでも見つけたんですか?」
カイトとよばれた少年は、何事かと近づいてきた二人に対して振り向きもしない。
「……あった!」
カイトが突然上げた大声に、ミッシェルとガンタが目を丸くする。
「いったい何があったんです?」
「アリの巣だよ!」
「……アリの巣?」
「ほら、ここだ。さっきから、このながーく続いてるアリの行列が、いったいどこからはじまっているのか、調べていたんだ。そしたら、ここ、ほら、この石畳のすき間にアリの巣があるだろ、この行列のはじまりは、このアリの巣だったんだ!」
カイトが興奮した声で説明するが、二人の少年はしらけた顔だ。
「たかがアリの巣の、なにがそんなに楽しいんだよ……」
「何かおもしろいことでもあったのかと思ったじゃないですか……」
「いや、だって不思議じゃないか? こんなに長い行列をつくって、よくアリは自分の巣の場所がわからなくならないよなぁ。きっとなにか目印があるにちがいないけど、それがわからないんだよなぁ……」
どうやら彼の知的好奇心は、二人の友人には伝わらなかったらしい。二人はがっかりした表情で、元の位置に座り直してしまう。
「あれ? ルーチェはどうした?」
カイトが、不思議そうに二人に尋ねる。
「だから、何か家の用事があるからおくれるらしいって、さっき説明したじゃないですか……全くカイトは何かに夢中になると全然話を聞いてないんですから……」
「でもそれにしても、確かにおそいな。何かあったのかなぁ?」
三人がそんなことを言い合っていたちょうどそのとき、バタバタとせわしない足音が路地に近づいてくるのが聞こえてきた。
「お、ルーチェ、おそかったじゃないか、何かあった……」
「たいへんたいへんたいへん、たいへんなのおおおおおおお!!」
振り向いたカイトの質問を遮って、悲鳴のような叫び声とともに、女の子が駆け込んでくる。
「ノッテが、いなくなっちゃったのおおおおおお!!」
「「「なんだって?」」」
ルーチェ、とよばれた少女の言葉に、三人が一斉に立ち上がった。ちなみに、ノッテというのはルーチェが飼っている黒猫のことだ。
「これは、事件のにおいがする!」
そう言ったカイトの表情は、心なしか、うれしそうだった。
●状況確認
「なるほど、つまり、ノッテは昨日の夜からルーチェの家に帰ってきていないわけですね?」
一通りの説明を聞いたミッシェルが、真剣な表情で腕を組む。
「そうなの。いつも朝ごはんはうちで食べているから、きっと今ごろ、おなかをすかせているにちがいないわ……」
「それは、かわいそうだぁ。おなかすいてるのは、つらいよなぁ」
ルーチェの言葉に、ガンタが今にも泣きそうな表情になる。彼にとって、おなかがすいているということは何よりもたいへんな事態だ。
「朝ごはんはうちで……ってことは、昼ごはんや夕飯は別のところで食べるってこと?」
カイトが尋ねると、ルーチェはこくん、とうなずいた。
「ノッテは飼い猫だけど、外で飼っているから、ずっとうちにいるわけじゃないの。毎日決まったルートで、ポルトワールのなかを移動しているわ」
「毎日決まったルート、か。なるほどな……ルーチェ、頼みがあるんだ」
カイトがルーチェの肩をつかんで、真剣な表情でそう言った。顔が、近い。ルーチェのほほが、わずかに赤く染まるが、カイトはそんなことには気づかない。
「ノッテの一日のルートを、書き出してほしいんだ。それを手がかりに、ノッテを探してみよう」
「カイト、僕たちでノッテを見つけるつもりですか?」
ミッシェルが不安そうに尋ねると、カイトがうれしそうににやりと笑ってみせる。
「もちろんだ、……と言いたいところだけど、あまり遠出すると怒られるから、大人の助けを借りた方がいいかもな。そうだ、ハンターに依頼してみよう」
「「「ハンターに?」」」
カイトの意外な言葉に、三人が、目を丸くする。その表情は、好奇心が抑えきれない、といった感じだ。
「……おもしろくなってきたぞ。黒猫少年探偵団、事件解決に向けて行動開始、ってところだな」
「何だい、その黒猫少年探偵団、って」
不思議そうな顔をするガンタに、カイトがびしっと親指を立ててみせた。
「オレたちの四人のグループ名さ。ハンターと協力して、事件を解決するんだ」
「いいですね!」
「かっこいい!」
探偵好きのミッシェルが身を乗り出し、ルーチェはきらきらした目でカイトを見つめている。
「そうと決まったら、ハンターオフィスへ!」
リプレイ本文
●顔合わせ
「猫ちゃんいなくなっちゃったなの? ふふん、大丈夫! ここは鴉羽の名探偵・アルナイルおねーさんにおまかせなの!」
ここは午前中のハンターオフィス。カイトたち少年探偵団からおおよその話を聞き終えて、ハンターたちが猫探しの算段をはじめたところで、アルナイル・モーネ(ka0854)がバン、っと胸を張ってみせた。ちなみに、名探偵の肩書きは、誰にも言われたことがないが、まぁ、その場の雰囲気というやつだ。実際、黒猫少年探偵団のメンバーたちは、尊敬のまなざしでアルナイルを見ている。
「飼い猫さんがいなくなったのですね? 今まではそんなことはなかったんですよね。それは心配かも……大丈夫、一緒に探しましょう。宜しくお願いしますね」
エステル・クレティエ(ka3783)も、優しい表情で少年たちにほほえみかける。
「ふむ。ふだんの行動ルートがわかってるってんなら……」
思案顔でつぶやいたのは、鬼若(ka4681)だ。
「猫の散歩の道筋を、四班に分けて探すって段取りでいきやしょうか」
「四班に分けて……?」
不思議そうに尋ねたルーチェに、鬼若がこくりとうなずく。
「へぇ。そうすりゃ、くだんの猫と、行き違いになることもないでしょう」
「探偵団のメンバー1人につき、ハンター2人が一緒で4班や。うちらも一時的に、黒猫探偵団の仲間入りやな」
鬼若の言葉を引き継いで、耀華(ka4866)が楽しそうに言う。
「エティも仲間になれたらうれしいなぁ……。探偵団とか、かっこいいもん」
少年探偵団のメンバーと同年代のエティ・メルヴィル(ka3732)が、うらやましそうにつぶやくと、カイトが大きくうなずいてみせた。
「もちろん、助けてくれるみんなは、オレたち黒猫少年探偵団のなかまたちさ!」
「やったぁ!」
エティがうれしそうに声を上げる。
「ん? なんですか?」
不意にミッシェルが後ろを振り向く。そこにはなにかを訴えかけるような瞳で彼を見つめるアジュガ(ka3846)。どうやら彼女がミッシェルの服のすそを引っ張ったらしい。
「アジュも」
「え? ……ああ、もちろん、あなたも僕たちの、なかまです」
ミッシェルが笑顔で答えると、アジュガはうれしそうにこくん、とうなずいた。
「君がリーダーなんだね。通信機を渡しておくよ!」
ハーレキン(ka3214)がとびきりの笑顔でトランシーバーを取り出し、カイトに渡す。
「これは、トランシーバー! すごい! 本格的!」
ほかのハンターたちもそれぞれトランシーバーを取り出し、メンバーに手渡していった。興奮した声を上げるカイトと少年探偵団のメンバーを見て、ハンターたちの表情がゆるむ。
「情報共有は捜査の基本なの!」
アルナイルがうれしそうに叫ぶ。
「ところで、ノッテさんはどんな猫さんなの?」
ルーチェに尋ねたのは、メイド服姿のマリエル(ka0116)だ。
「かわいい猫だよ!」
張り切って答えるルーチェ。
「そうなのですね。えっと、オスなのかメスなのかとか、あと性格とかも教えてもらえますか?」
「あたしと同じ、女の子だよっ! 性格はね、おくびょうで人見知りなの。だからきっと、今もさびしがっていると思うの……」
言いながら、ルーチェの顔がみるみる曇っていく。今にも泣き出しそうだ。すぐ隣では、感情移入してしまったためか、アジュガまで泣きそうになっている。
「顔馴染みが姿を見せなくなったとあっちゃ、そりゃ寂しいもんでしょう。異境に来ての第一歩、先ずは猫の尻尾を掴む処から」
場を和ませるように鬼若が独りごち、猫探しは始まったのだった。
●ルーチェ宅
ルーチェとともにルーチェの家に向かったのは、鬼若とエステル。
まずは在宅していたルーチェの母親に挨拶を済ませたあと、念のためとルーチェの家の中を捜索することにした。捜索の前に、エステルがぽんと手を打って、ルーチェに尋ねる。
「ルーチェさん、ノッテちゃんのお気に入りのおもちゃとかってある?」
「あるよ、これ! このふわふわした毛糸の玉をとりつけたおもちゃは、お母さんがつくってくれたの」
ルーチェが差し出したおもちゃを、エステルが受け取った。おもちゃは、確かにずいぶんとお気に入りだったようで、ところどころがほつれ、全体的にうっすら黒くなっている。
「では、これをふりながら、ノッテちゃんを探してみましょう」
しばらく、三人で手分けをして家の中を探したが、さすがに家にはいないようだ。
「では、家の周辺を探すことにしましょうか。ルーチェさん、ノッテさんの特徴を教えてね」
エステルの言葉にルーチェがうなずき、三人は家の外に出ることにする。
「もしかしたら高い木の上から降りられなくなっているかもしれません。私は双眼鏡をもっていますから、木の天辺も忘れずに探しましょう」
そう言って、エステルが首から提げた双眼鏡を示してみせる。
「このあたりは勝手知ったる何とやら、ルーチェのお嬢にご案内いただきやしょう。なにかありやしたらこの鬼若、お嬢の子分として存分にお使いくだせぇ」
あくまでルーチェを立てる鬼若の振る舞いに、機嫌をよくしたルーチェがしっかりとうなずいた。
「うん、案内するよ、ついてきて!」
●空き地
「猫が集まる空き地があるんだ。ノッテがいるかどうかはわからないけど、そこに行けばなにかヒントがあるんじゃないかな」
ノッテがよく猫会議を繰り広げているという空き地に向かったのは、カイトだ。彼なりに今回の事件を解決するための糸口を探しているようだ。カイトに同行したハンターは、マリエルと耀華の二人。
「カイト隊長、猫ちゃ探し、頑張ろな~」
陽気な口調で、耀華が声をかける。カイトも、口には出さないまでも、「カイト隊長」という響きに、なかなか上機嫌のようだ。
「そういや、カイト隊長もマリエルも、リアルブルー出身何やろ? あっちはどんな感じなん? こっちと似たとこもあんのん?」
歩き出したと同時に、耀華が二人に向かって興味津々で尋ねはじめる。
「実は私は、記憶がないんです。だから、あちらのことは全然覚えてなくて……」
マリエルが申し訳なさそうにつぶやく。
「なんや、悪いこと聞いてしまったなぁ」
「いいえ、私は話せることはあまりないですけれど、話を聞くのは大好きですから。カイトさんは、リアルブルーのこと、覚えていますか?」
マリエルがカイトに話を振ると、カイトの顔がぱっと輝いた。
「オレは覚えてるよ! あっちには、なんでもあるんだ。ゲームとか、機械とか……こっちはそういうの全然ないんだよなぁ」
「そうなん? カイト隊長は、あっちに帰りたいとおもっとるんか?」
耀華が尋ねると、カイトはうーん、と腕を組み、首をひねった。
「こっちに来たばっかりのときはそう思ってた。でも、今はあいつらがいるからなぁ」
「カイトさんは、みなさんと仲良しなんですね」
マリエルがうれしそうにほほえむ。
「だって、あいつらあぶなっかしいし。オレが、守ってやらないとさ」
「頼もしいですね。そういえば、カイトさんのご両親はハンターなのでしたっけ」
「うん。父さんや母さんみたいなハンターになるのが、俺の夢なんだ!」
●魚市場
「美味しそうな魚がいっぱい、おなかすいた……」
「ガンタ、せっかくだから買い食いして行こうなの!」
「で、でも、僕お金もってない……」
「しょーがない、ここはおごってやるなの! 腹が減っては戦もなんちゃらなの、ひつよーけーひだから問題ないなの!」
「や、やったー!」
ところ変わって魚市場。ガンタとアルナイル、ハーレキンの3人でノッテを探しに……来たはずなのだが、アルナイルとガンタは買い食いに夢中のようだ。
「わあ、立派な魚ですね! やっぱり長くここで御商売を?」
一方のハーレキンが持ち前の社交性を活かして早速、お店の人と話を弾ませている。どちらかというと今後魚を安く買えるように……という交渉のように聞こえるが。
「いいですねぇ。また、次の機会にはどっさりと魚を買っていきますから、そのときにはどうぞ負けてくださいね!……ところで、猫の話を聞きたいんですけど」
しばらく話したところで、ようやく本題に入ったようだ。さすがというか、仲良くなってから、さらに言葉巧みに話すもので店の人の口も自然と軽やかになる。
「ああ、その猫だったら確かに夕方にうちにくるやつだな。どこで知ったものか、ちょうど仕事が一段落したころにくるもんだから、ついつい情がわいちまって、売れ残りを分けてやってるのさ。そういや、昨日から来てねぇな……」
「やっぱり来てないなのね……」
いつの間にか話を聞いていたアルナイルがうーむ、とうなる。買い食いに気をとられていてもそこはハンター。ペットのカラスである漆と一緒に、周囲の捜索はしていたらしい。
「残念、ほかの人たちと連絡を取ってみようか」
ハーレキンが言うと、口の中を焼き魚でいっぱいにしたガンタがもごもごとうなずいた。
「その前に晩ご飯のお魚を買っていくなのー!」
●民家
ノッテの行動ルートの最後の1ヶ所、民家に向かったのは、ミッシェルとエティ、アジュガの三人。
「ミッシェルちゃんは何か動物とか飼ってたりする? エティはね、うさぎさんが大好きなの! ほら、このうさぎさんのぬいぐるみも可愛いでしょう?」
民家までの道すがら、エティがうれしそうにミッシェルに話しかけていた。ちなみに、アジュガはすっかりミッシェルになついて、ミッシェルの服のすそをぎゅっと握りしめている。
「うさぎが好きなんですか? きぐうですね、じつは僕も、うさぎを飼っているんです」
「本当? 男の子はそういうのに興味ないかと思ってたんだけど、うれしいな!」
ミッシェルの言葉に、エティが目を輝かせる。
「僕は、みんなからよくあんまり男らしくないって言われるんですよ。ただかわいいものが好きなだけなんだけどなぁ。カイトは、別に変じゃない、って言ってくれるんですけどね」
ミッシェルがほほえむ。
「ついた」
アジュガが小さくつぶやいた。見れば、目的の民家は目の前だ。
傾きはじめた午後の日差しは、庭にうっそうと茂る木々に半ば遮られていて、周囲は少し薄暗い。一人暮らしのおばあさんが住んでいるというその屋敷は、かなり年季が入ったもので、ぼろぼろのたたずまいは少し怖い感じだった。
「……アジュガ、何をしてるんです?」
見れば、アジュガが屋敷の扉の前にポテトチップをまいていた。
「うーん、猫は、ポテトチップを食べないんじゃないでしょうか?」
「ミッシェル、食べる?」
「……あ、いただきます……って、そうじゃなくて」
答えたミッシェルに対し、アジュガは不思議そうに首をかしげてみせる。
その間にエティは、家の周囲を捜索していたらしい。残念そうな表情で、ミッシェルのところへ戻ってくる。
「こ、ここは、直接尋ねてみるしかなさそうですね」
覚悟を決めたように、ミッシェルがつぶやき、屋敷の扉をどんどんと叩いた。人見知りのアジュガは、ミッシェルの後ろに隠れてしまっている。
「あの、ごめんくださーい。黒猫が、こちらに来ませんでしたかー?」
ミッシェルが奥に向かって声をかけると、しばらくして奥から声が聞こえた――。
「はいはい、きとるよー」
●大団円
しばらく後。
おばあさんの屋敷の前に、黒猫少年探偵団のメンバーとハンターたち、総勢12人が勢揃いしていた。ミッシェルがトランシーバーを使ってみんなを呼んだのだ。
ノッテは果たして、おばあさんの家にいた。今はおばあさんの膝の上で、気持ちよさそうに丸くなっている。
「ノッテ! 心配したよ!」
ルーチェが今にも泣きそうな表情でノッテに駆け寄る。
「ごめんねぇ。あなたの家の猫だとは知らなかったんだよ」
おばあさんがゆったりとルーチェに声をかける。
「その黒猫ちゃんはいつも通り夕方にうちに来て、それで、出会っちゃったんだね」
そう言っておばあさんが指さした先には、すまし顔で丸くなる、一匹の白猫。
「お婿さんを見つけたのね……」
マリエルがぽそっとつぶやく。
そう、どうやらノッテは、いつも通りおばあさんの家で夕飯を食べ、そこで出会った白猫と恋に落ちたようなのだ。
「猫でも恋の一字に纏わる出来事もありやしょう」
鬼若が楽しそうに独りごちる。
「その白い猫は、おばあさんの猫なんですか?」
ハーレキンが尋ねるとおばあさんは首を横に振った。
「そっちの黒猫とおんなじで、うちによく来るけれど飼ってるわけじゃない。首輪もしてないから、野良猫かねぇ」
「ノッテ、今日はうちに帰ろう。またここに来ていいからね」
ルーチェがそう声をかけると、ノッテはうーん、とのびをしてから、ぴょん、とルーチェの腕の中に飛び込んだ。アジュガとエティがそこに駆け寄って、ノッテの身体をなでる。ノッテが満足そうにニャーン、と鳴いた。
「おなかがすいたでしょうから、どこかでごはんでも食べましょうか」
マリエルの提案に、ガンタがぱっと手を上げる。
「さんせーい!」
みんなの明るい笑い声が、ポルトワールの夕空にのぼっていった。
「猫ちゃんいなくなっちゃったなの? ふふん、大丈夫! ここは鴉羽の名探偵・アルナイルおねーさんにおまかせなの!」
ここは午前中のハンターオフィス。カイトたち少年探偵団からおおよその話を聞き終えて、ハンターたちが猫探しの算段をはじめたところで、アルナイル・モーネ(ka0854)がバン、っと胸を張ってみせた。ちなみに、名探偵の肩書きは、誰にも言われたことがないが、まぁ、その場の雰囲気というやつだ。実際、黒猫少年探偵団のメンバーたちは、尊敬のまなざしでアルナイルを見ている。
「飼い猫さんがいなくなったのですね? 今まではそんなことはなかったんですよね。それは心配かも……大丈夫、一緒に探しましょう。宜しくお願いしますね」
エステル・クレティエ(ka3783)も、優しい表情で少年たちにほほえみかける。
「ふむ。ふだんの行動ルートがわかってるってんなら……」
思案顔でつぶやいたのは、鬼若(ka4681)だ。
「猫の散歩の道筋を、四班に分けて探すって段取りでいきやしょうか」
「四班に分けて……?」
不思議そうに尋ねたルーチェに、鬼若がこくりとうなずく。
「へぇ。そうすりゃ、くだんの猫と、行き違いになることもないでしょう」
「探偵団のメンバー1人につき、ハンター2人が一緒で4班や。うちらも一時的に、黒猫探偵団の仲間入りやな」
鬼若の言葉を引き継いで、耀華(ka4866)が楽しそうに言う。
「エティも仲間になれたらうれしいなぁ……。探偵団とか、かっこいいもん」
少年探偵団のメンバーと同年代のエティ・メルヴィル(ka3732)が、うらやましそうにつぶやくと、カイトが大きくうなずいてみせた。
「もちろん、助けてくれるみんなは、オレたち黒猫少年探偵団のなかまたちさ!」
「やったぁ!」
エティがうれしそうに声を上げる。
「ん? なんですか?」
不意にミッシェルが後ろを振り向く。そこにはなにかを訴えかけるような瞳で彼を見つめるアジュガ(ka3846)。どうやら彼女がミッシェルの服のすそを引っ張ったらしい。
「アジュも」
「え? ……ああ、もちろん、あなたも僕たちの、なかまです」
ミッシェルが笑顔で答えると、アジュガはうれしそうにこくん、とうなずいた。
「君がリーダーなんだね。通信機を渡しておくよ!」
ハーレキン(ka3214)がとびきりの笑顔でトランシーバーを取り出し、カイトに渡す。
「これは、トランシーバー! すごい! 本格的!」
ほかのハンターたちもそれぞれトランシーバーを取り出し、メンバーに手渡していった。興奮した声を上げるカイトと少年探偵団のメンバーを見て、ハンターたちの表情がゆるむ。
「情報共有は捜査の基本なの!」
アルナイルがうれしそうに叫ぶ。
「ところで、ノッテさんはどんな猫さんなの?」
ルーチェに尋ねたのは、メイド服姿のマリエル(ka0116)だ。
「かわいい猫だよ!」
張り切って答えるルーチェ。
「そうなのですね。えっと、オスなのかメスなのかとか、あと性格とかも教えてもらえますか?」
「あたしと同じ、女の子だよっ! 性格はね、おくびょうで人見知りなの。だからきっと、今もさびしがっていると思うの……」
言いながら、ルーチェの顔がみるみる曇っていく。今にも泣き出しそうだ。すぐ隣では、感情移入してしまったためか、アジュガまで泣きそうになっている。
「顔馴染みが姿を見せなくなったとあっちゃ、そりゃ寂しいもんでしょう。異境に来ての第一歩、先ずは猫の尻尾を掴む処から」
場を和ませるように鬼若が独りごち、猫探しは始まったのだった。
●ルーチェ宅
ルーチェとともにルーチェの家に向かったのは、鬼若とエステル。
まずは在宅していたルーチェの母親に挨拶を済ませたあと、念のためとルーチェの家の中を捜索することにした。捜索の前に、エステルがぽんと手を打って、ルーチェに尋ねる。
「ルーチェさん、ノッテちゃんのお気に入りのおもちゃとかってある?」
「あるよ、これ! このふわふわした毛糸の玉をとりつけたおもちゃは、お母さんがつくってくれたの」
ルーチェが差し出したおもちゃを、エステルが受け取った。おもちゃは、確かにずいぶんとお気に入りだったようで、ところどころがほつれ、全体的にうっすら黒くなっている。
「では、これをふりながら、ノッテちゃんを探してみましょう」
しばらく、三人で手分けをして家の中を探したが、さすがに家にはいないようだ。
「では、家の周辺を探すことにしましょうか。ルーチェさん、ノッテさんの特徴を教えてね」
エステルの言葉にルーチェがうなずき、三人は家の外に出ることにする。
「もしかしたら高い木の上から降りられなくなっているかもしれません。私は双眼鏡をもっていますから、木の天辺も忘れずに探しましょう」
そう言って、エステルが首から提げた双眼鏡を示してみせる。
「このあたりは勝手知ったる何とやら、ルーチェのお嬢にご案内いただきやしょう。なにかありやしたらこの鬼若、お嬢の子分として存分にお使いくだせぇ」
あくまでルーチェを立てる鬼若の振る舞いに、機嫌をよくしたルーチェがしっかりとうなずいた。
「うん、案内するよ、ついてきて!」
●空き地
「猫が集まる空き地があるんだ。ノッテがいるかどうかはわからないけど、そこに行けばなにかヒントがあるんじゃないかな」
ノッテがよく猫会議を繰り広げているという空き地に向かったのは、カイトだ。彼なりに今回の事件を解決するための糸口を探しているようだ。カイトに同行したハンターは、マリエルと耀華の二人。
「カイト隊長、猫ちゃ探し、頑張ろな~」
陽気な口調で、耀華が声をかける。カイトも、口には出さないまでも、「カイト隊長」という響きに、なかなか上機嫌のようだ。
「そういや、カイト隊長もマリエルも、リアルブルー出身何やろ? あっちはどんな感じなん? こっちと似たとこもあんのん?」
歩き出したと同時に、耀華が二人に向かって興味津々で尋ねはじめる。
「実は私は、記憶がないんです。だから、あちらのことは全然覚えてなくて……」
マリエルが申し訳なさそうにつぶやく。
「なんや、悪いこと聞いてしまったなぁ」
「いいえ、私は話せることはあまりないですけれど、話を聞くのは大好きですから。カイトさんは、リアルブルーのこと、覚えていますか?」
マリエルがカイトに話を振ると、カイトの顔がぱっと輝いた。
「オレは覚えてるよ! あっちには、なんでもあるんだ。ゲームとか、機械とか……こっちはそういうの全然ないんだよなぁ」
「そうなん? カイト隊長は、あっちに帰りたいとおもっとるんか?」
耀華が尋ねると、カイトはうーん、と腕を組み、首をひねった。
「こっちに来たばっかりのときはそう思ってた。でも、今はあいつらがいるからなぁ」
「カイトさんは、みなさんと仲良しなんですね」
マリエルがうれしそうにほほえむ。
「だって、あいつらあぶなっかしいし。オレが、守ってやらないとさ」
「頼もしいですね。そういえば、カイトさんのご両親はハンターなのでしたっけ」
「うん。父さんや母さんみたいなハンターになるのが、俺の夢なんだ!」
●魚市場
「美味しそうな魚がいっぱい、おなかすいた……」
「ガンタ、せっかくだから買い食いして行こうなの!」
「で、でも、僕お金もってない……」
「しょーがない、ここはおごってやるなの! 腹が減っては戦もなんちゃらなの、ひつよーけーひだから問題ないなの!」
「や、やったー!」
ところ変わって魚市場。ガンタとアルナイル、ハーレキンの3人でノッテを探しに……来たはずなのだが、アルナイルとガンタは買い食いに夢中のようだ。
「わあ、立派な魚ですね! やっぱり長くここで御商売を?」
一方のハーレキンが持ち前の社交性を活かして早速、お店の人と話を弾ませている。どちらかというと今後魚を安く買えるように……という交渉のように聞こえるが。
「いいですねぇ。また、次の機会にはどっさりと魚を買っていきますから、そのときにはどうぞ負けてくださいね!……ところで、猫の話を聞きたいんですけど」
しばらく話したところで、ようやく本題に入ったようだ。さすがというか、仲良くなってから、さらに言葉巧みに話すもので店の人の口も自然と軽やかになる。
「ああ、その猫だったら確かに夕方にうちにくるやつだな。どこで知ったものか、ちょうど仕事が一段落したころにくるもんだから、ついつい情がわいちまって、売れ残りを分けてやってるのさ。そういや、昨日から来てねぇな……」
「やっぱり来てないなのね……」
いつの間にか話を聞いていたアルナイルがうーむ、とうなる。買い食いに気をとられていてもそこはハンター。ペットのカラスである漆と一緒に、周囲の捜索はしていたらしい。
「残念、ほかの人たちと連絡を取ってみようか」
ハーレキンが言うと、口の中を焼き魚でいっぱいにしたガンタがもごもごとうなずいた。
「その前に晩ご飯のお魚を買っていくなのー!」
●民家
ノッテの行動ルートの最後の1ヶ所、民家に向かったのは、ミッシェルとエティ、アジュガの三人。
「ミッシェルちゃんは何か動物とか飼ってたりする? エティはね、うさぎさんが大好きなの! ほら、このうさぎさんのぬいぐるみも可愛いでしょう?」
民家までの道すがら、エティがうれしそうにミッシェルに話しかけていた。ちなみに、アジュガはすっかりミッシェルになついて、ミッシェルの服のすそをぎゅっと握りしめている。
「うさぎが好きなんですか? きぐうですね、じつは僕も、うさぎを飼っているんです」
「本当? 男の子はそういうのに興味ないかと思ってたんだけど、うれしいな!」
ミッシェルの言葉に、エティが目を輝かせる。
「僕は、みんなからよくあんまり男らしくないって言われるんですよ。ただかわいいものが好きなだけなんだけどなぁ。カイトは、別に変じゃない、って言ってくれるんですけどね」
ミッシェルがほほえむ。
「ついた」
アジュガが小さくつぶやいた。見れば、目的の民家は目の前だ。
傾きはじめた午後の日差しは、庭にうっそうと茂る木々に半ば遮られていて、周囲は少し薄暗い。一人暮らしのおばあさんが住んでいるというその屋敷は、かなり年季が入ったもので、ぼろぼろのたたずまいは少し怖い感じだった。
「……アジュガ、何をしてるんです?」
見れば、アジュガが屋敷の扉の前にポテトチップをまいていた。
「うーん、猫は、ポテトチップを食べないんじゃないでしょうか?」
「ミッシェル、食べる?」
「……あ、いただきます……って、そうじゃなくて」
答えたミッシェルに対し、アジュガは不思議そうに首をかしげてみせる。
その間にエティは、家の周囲を捜索していたらしい。残念そうな表情で、ミッシェルのところへ戻ってくる。
「こ、ここは、直接尋ねてみるしかなさそうですね」
覚悟を決めたように、ミッシェルがつぶやき、屋敷の扉をどんどんと叩いた。人見知りのアジュガは、ミッシェルの後ろに隠れてしまっている。
「あの、ごめんくださーい。黒猫が、こちらに来ませんでしたかー?」
ミッシェルが奥に向かって声をかけると、しばらくして奥から声が聞こえた――。
「はいはい、きとるよー」
●大団円
しばらく後。
おばあさんの屋敷の前に、黒猫少年探偵団のメンバーとハンターたち、総勢12人が勢揃いしていた。ミッシェルがトランシーバーを使ってみんなを呼んだのだ。
ノッテは果たして、おばあさんの家にいた。今はおばあさんの膝の上で、気持ちよさそうに丸くなっている。
「ノッテ! 心配したよ!」
ルーチェが今にも泣きそうな表情でノッテに駆け寄る。
「ごめんねぇ。あなたの家の猫だとは知らなかったんだよ」
おばあさんがゆったりとルーチェに声をかける。
「その黒猫ちゃんはいつも通り夕方にうちに来て、それで、出会っちゃったんだね」
そう言っておばあさんが指さした先には、すまし顔で丸くなる、一匹の白猫。
「お婿さんを見つけたのね……」
マリエルがぽそっとつぶやく。
そう、どうやらノッテは、いつも通りおばあさんの家で夕飯を食べ、そこで出会った白猫と恋に落ちたようなのだ。
「猫でも恋の一字に纏わる出来事もありやしょう」
鬼若が楽しそうに独りごちる。
「その白い猫は、おばあさんの猫なんですか?」
ハーレキンが尋ねるとおばあさんは首を横に振った。
「そっちの黒猫とおんなじで、うちによく来るけれど飼ってるわけじゃない。首輪もしてないから、野良猫かねぇ」
「ノッテ、今日はうちに帰ろう。またここに来ていいからね」
ルーチェがそう声をかけると、ノッテはうーん、とのびをしてから、ぴょん、とルーチェの腕の中に飛び込んだ。アジュガとエティがそこに駆け寄って、ノッテの身体をなでる。ノッテが満足そうにニャーン、と鳴いた。
「おなかがすいたでしょうから、どこかでごはんでも食べましょうか」
マリエルの提案に、ガンタがぱっと手を上げる。
「さんせーい!」
みんなの明るい笑い声が、ポルトワールの夕空にのぼっていった。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/09 09:43:44 |
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【相談卓】猫ちゃん捜索隊 アルナイル・モーネ(ka0854) 人間(リアルブルー)|18才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/05/09 13:07:02 |