ゲスト
(ka0000)
ショーブ湯
マスター:月宵
みんなの思い出? もっと見る
オープニング
辺境にあるとある集落では、鉱物を祀っていた。
集落では鉱物から力を得る、と言う考えがある。
集落は山高い所にあり、その為か鉱石の力の溶け込んだ湯。つまり温泉は、この地では大きな意味を持っていたのだ……
●ゴング鳴らされる!
「さぁ!やってきました、集落名物『ショーブ湯』の時間だぁ!」
ワアアアアアアアアァァァ
拡声器片手に青年が大声をはる。
各場所から歓声が上がる、その歓声の先には我々ハンター達。そして、その先に広々とした温泉だ。白い濁り湯は、覚醒者を今かと待つように揺蕩う。
「司会進行は、マ・エダがお送り致します。ルールは簡単。温泉の中で死闘を繰り広げる……温泉デスマッチだァ!」
上がる歓声はこの集落の部族達のもの。
彼らはこの時期になると、覚醒者達をこの祭に招き入れ参加者達を応援し、その勇姿を見守るのだ。
勿論、本当に殺しあうワケじゃない。男女共に、胸元と腰に巻いた白い布。これが外れたら負け、と言う単純ながら『別な意味で命懸け』な戦いなのだ。しかも、もうもうと湯気が上がる温泉の中で、激しく動くのだ。あっという間にのぼせるだろう。
「そして、そしてぇ、勝ち抜いた猛者三名には、巫女様と秘湯での入浴が待っているぞぉ!モチ、混浴だぁぁ!」
それに応え、甲斐甲斐しく会釈を行い、穏やかな笑みを浮かべる女性が一人。茶色のウェブがかった長髪。体の線が解らないほど分厚いローブを着込んでいる。彼女こそ、この集落の巫女だ。
そこらかしこから上がる歓声は、男性だけのものじゃない。この秘湯は本来なら、部外者には解放されない場所で、女性には嬉しい美肌効果があると言う。
無論、早々脱落した者へのケアもバッチリ。
源泉を使ったゆで野菜や、身体を解すマッサージもしてもらえるのだ。
さぁ、集えつわもの達よ。
「にゅうよくに行きたいかァ~!!」
集落では鉱物から力を得る、と言う考えがある。
集落は山高い所にあり、その為か鉱石の力の溶け込んだ湯。つまり温泉は、この地では大きな意味を持っていたのだ……
●ゴング鳴らされる!
「さぁ!やってきました、集落名物『ショーブ湯』の時間だぁ!」
ワアアアアアアアアァァァ
拡声器片手に青年が大声をはる。
各場所から歓声が上がる、その歓声の先には我々ハンター達。そして、その先に広々とした温泉だ。白い濁り湯は、覚醒者を今かと待つように揺蕩う。
「司会進行は、マ・エダがお送り致します。ルールは簡単。温泉の中で死闘を繰り広げる……温泉デスマッチだァ!」
上がる歓声はこの集落の部族達のもの。
彼らはこの時期になると、覚醒者達をこの祭に招き入れ参加者達を応援し、その勇姿を見守るのだ。
勿論、本当に殺しあうワケじゃない。男女共に、胸元と腰に巻いた白い布。これが外れたら負け、と言う単純ながら『別な意味で命懸け』な戦いなのだ。しかも、もうもうと湯気が上がる温泉の中で、激しく動くのだ。あっという間にのぼせるだろう。
「そして、そしてぇ、勝ち抜いた猛者三名には、巫女様と秘湯での入浴が待っているぞぉ!モチ、混浴だぁぁ!」
それに応え、甲斐甲斐しく会釈を行い、穏やかな笑みを浮かべる女性が一人。茶色のウェブがかった長髪。体の線が解らないほど分厚いローブを着込んでいる。彼女こそ、この集落の巫女だ。
そこらかしこから上がる歓声は、男性だけのものじゃない。この秘湯は本来なら、部外者には解放されない場所で、女性には嬉しい美肌効果があると言う。
無論、早々脱落した者へのケアもバッチリ。
源泉を使ったゆで野菜や、身体を解すマッサージもしてもらえるのだ。
さぁ、集えつわもの達よ。
「にゅうよくに行きたいかァ~!!」
リプレイ本文
「おーう!」
エダの台詞を瞳に光をたたえ、返したのはカミーユ・鏑木(ka2479)だ。
心が乙女な彼?には、美肌効果の温泉そして……
(そして合法的に良い男に触れれる、当に天国よ)
が、目的である。
「これが噂に行く温泉ですか。のんびり浸かりたいところですが……まずは勝負に勝手からですね」
スクール水着姿で髪を結びながら気合いを入れるのは、エルフのシャルティナ(ka0119)だ。
如何にして勝つか、その戦略を組み立てている。
「あのおねがいですから!」
係の人間に止められているのは、ネフィリア・レインフォード(ka0444)だ。腰の布だけを巻いていこうとしたところ、無理矢理止められ両手をあげながら、胸元に布を巻かれる。
「一つだけのほうが守りやすかったのにー。でもダメならしょうがないのだ。これで頑張るのだ!」
「温泉は裸で入るものなのにー苦しいのだ…」
一際大きい実を窮屈げに押さえ付ける布に、黒の夢(ka0187)はぶつくさと愚痴る。彼女にしてみれば、温泉に入ればそれでいいのだ。そんな暢気な彼女のボディーガードがゴンザレス=T=アルマ(ka2575)だ。狼の被り物の下で、何やら邪なことを考えている……
「アルマ、待てである」
「ハイ! 黒の夢様!」
と主に言いはするものの、その瞳は明らかに獲物を探す狼。いや、被り物が狼を模しているだけだが。
ちなみに、ゴンザレスはバイである。
●試合開始
「皆様に古よりの精霊の加護ぞあれ」
巫女が鳴らす太鼓の音が、観客の歓声を更に増大させる。それが戦い始まりの合図であった。
さて、試合は始まったワケだが、現在の状況は3タイプに別れている。あるものは始まって早々に動くもの。あるものは先ずは温泉に入り、好機を伺うもの。
そして……
「…すやすや…悪くない…寝心地で…すぷー」
このドゥアル(ka3746)の様に、全く勝負に興味なく、温泉を堪能するものだ。シュノーケル装備で溺れ対策も万全に、温泉睡眠を楽しむのだ。
「この場でしか…得られない環境…おやすも…」
こっちでは、リリア・ノヴィドール(ka3056)が入浴中。その隣には、ゴンザレスと黒の夢が温泉につかっていた。
一度は視線を合わすリリアとゴンザレス。しかし、お互いに襲撃の意思がないと知れば、両者それ以上のアクションは起こさなかった。
またこちらでは、黄緑のビキニを着用するアルラウネ(ka4841)が、のぼせ防止に温泉の縁に腰掛けている。同時にこの近辺を眺めていた。
武器代わりになるものは何かないか、出来れば自分の技に適する棒状のものが良い。そんな風に考えていた。そんなことをしているうちに、他から飛んでくる悲鳴に若干あきれたように肩を落とした。
(女は見られる内が華」とは言うけれど)
尤も彼女には、人に裸体を見せる気は更々ない。
「美肌効果のあるお風呂に浸かりながら酒が飲めるなんて、何としても生き残らないと!」
一段と気合いが入るのはリーラ・ウルズアイ(ka4343)である。入浴に水着は無粋と、あえて着ておらず。シュノーケル装着しながら、湯の中に潜水する。潜水からの奇襲、それもあるが同時に湯に潜った相手への注意のためでもある。
その時が来るまで、リーラはひっそり息を潜めることにした。
しかし、穏やかばかりがショーブ湯ではない。寧ろこっちが本番。
「おう!俺だよ! シャチだよ! 皆のシャチさんだぜ!!」
そうシャチ。Orca(ka4396)が二足歩行で覆い被さるように全力で布を掴みにかかる。
Orcaの鼻の先にはネフィリアがいて、彼女にヒレじゃない方の手を伸ばす。
「そう簡単に取られてはあげないのだー! 勝負するからには勝つ! それが心情なのだ♪」
華麗に避けた、と思いきやOrcaの傍らを湯に潜り並走。ネフィリアの野生の瞳が光れば、その手にはいつのまにか白い布が握られていた。
「お湯の中から失礼するのだ♪この手ぬぐい貰っていくねー♪」
ステンッ
「ぬおわぁぁあ!?」
そのまま滑ってつるるん。パシャパシャと真っ直ぐ水を切りながら進み岩地に乗り上げ、活き良くピチピチとなっていたのである。
「みたかぁ! 俺のシャチさんの出オチっぷりを!」
本人は、酷く満足げである。これぞ背中ならぬ『男は背びれで語る』だ。
互いに水柱ならぬ、湯柱を立て合うのはカミーユ、そして鹿島 雲雀(ka3706)である。
雲雀は、戦友のリリティア・オルベール(ka3054)を誘ってこの温泉を訪れた。
「要は脱衣ゲームって事だろ? いいねぇ、燃えてくるってもんだ!」
また、別の場所ではシャルティナにフェリル・L・サルバ(ka4516)が当たる。
出来ればまだじっとしていたかったシャルティナだが、フェリルが背後から来たため作戦を変更した。
瞬時にランアウトで腰を落とし距離をつめ、男の胸元の布に手を伸ばす。だが……
「覚悟しろオラァ!混浴権は俺のもんだあああああ!!」
何かを色々と捨ててきているフェリルの水鉄砲連射に気を取られ、シャルティナの胸元の布がバサァ。その瞬間湯気がモワモワ、とシャルティナを包む。
「残念、負けてしまいましたか…」
「安心しな。剥かれた女の子をまじまじ見るような真似はしねぇよ。多分maybe」
偶然装ってチラ見していたら、説得力はないのだよ。
辺りの光景に、心臓ドキドキ顔真っ赤かなのはこの人、時音 ざくろ(ka1250)だ。時期が時期だけに、菖蒲湯だと思って入りにきたら、こんなことになっていた。
「みんなの格好も…」
ある意味現在も混浴なのだ。そりゃお年頃のざくろなら、顔が柘榴の実色にもなる。
「いくぜ!」
こんな無防備なざくろに、狙いをつけたのが如月(ka4886)なのだ。最初から覚醒状態。頭部に双角、背後に鬼の幻影を連れてステップを踏み、布を掴みにかかる!
ズボッ
ざくろに如月が手を掛けるその瞬間、巨大なソレが視界いっぱいに邪魔をした。ざくろは一気に後退し、ソレは元の団扇に戻っていた。
そう、孔雀の団扇を超重錬成で大きくし、それで防いだのだ。
「小手先の技がいつまで持つだろうな」
団扇は盾ではない。現に如月が開けた穴が、団扇にもぽっかり残っている。後もっても数発か。
「でもざくろ、絶対負けないもん!」
●二回戦~
ゆっくりと温泉を満喫していたリリアにも、とうとうその時が来たようだ。相手は、ネフィリア。本当は後半に動くつもりであったが、もう一枚布を手に入れてしまった。こうなったからには、動くしかない。
「にゃは♪そろそろ本気で行こうかな? 狩猟の血が騒ぐのだ♪」
既にゲットした布に気分を昂揚とさせ、リリアの腰に巻いた布を取らんと襲いかかる。
「恥ずかしいから、さっさと終わらせるの」
ドッジダッシュで避けてから、素早く側面へ視線と水鉄砲の銃口を胸元に向け……
パシッ
「ふにゃ!?」
だが実際に撃たれたのは、腰の布の結び目に向けて。ネフィリアが驚いている間にほどけ、白い水面に更に白い姿を晒した
。
チラチラと絶景を堪能したフェリルは次の獲物へ、そこにいたのは湯から浮き上がったばかりのリーラだ。
いくらシュノーケルを着けたとはいえ温泉は、お湯である。たまにでも顔を水面に出さないとのぼせる。そして、リーラもまたフェリルに気付く。 まだ距離は遠い。これなら勝負を仕掛けられる。
リーラはウインドスラッシュを発動。
自分の早さでは、他の参加者には勝てない。ならば、布は切り落とすのが手っ取り早い。
「あまい、あまい。あむぁぁい!」
先程の一勝に調子に乗ったフェリルは、回避しながら彼女の目の前まで接近。
その早さに驚嘆し、ここで勝ち負けを確定する。
「奥の手を食ら―――」
「覚悟しろオラァ!混浴権は俺のもんだあああああ!!」
スリープクラウド発動間に合わず。残念、リーラの試合はここで終わった。
「さて、ご飯貰おうかな」
彼女は悔しさをおくびも出さず、物理的にも隠さず、スタスタと温泉から上がるのであった……
一段と湯気上がるのは、カミーユと雲雀の戦場からだ。二人とも息がだいぶ上がり、特に雲雀は微かに頭がぼんやりして来ていた。
これがカミーユの作戦。攻撃してしまえば、傷をつけてしまう。ならば、どうすれば良いか。
そこで考えたのが湯であった。避ける際に激しく飛沫を上げることで、湯気を激しく奔流させる。それにより、長時間湯にあたった故の気絶を狙っていた。
互いに疲れてきた、このままでは埒が開かない。先に動いたのは雲雀であった。素早く接近、そして掴んだのだ。
そう、カミーユが彼女の手首を。それからそのまま引き倒し、手首の関節を曲げ背中に押し付け湯の中に沈める。
首から下まで湯に浸からされ、必死にもがく雲雀に、カミーユは優しく耳元で告げる。
「のぼせるのが先か、手ぬぐいを渡すか…ど・っ・ち・が・良・い?」
今まで浴びるばかりであった上半身に、この湯は全く熱すぎる。
火照り、赤くなる顔で彼女は呟く。
「集団戦でモノをいうのは3つ……だ。囲まれない為の機動力、隙を逃さぬ観察眼……」
のぼせ始めて意識が混濁しているのか、そんな風に考えるカミーユ、その背後に。
「ふっふっふ…隙だらけなのですー!!」
「っ……そういうことね」
背後にいたのはリリティア。どうやらしてやられたようだ、とカミーユは口元を吊り上げた。
こうして、彼は白のビキニパンツを見せることになったのであった。
「んでもって仲間との連携ってな」
友の肩を借りながら、雲雀はしてやったりと笑ってみせた。
如月が水筒に入れた水を飲み下して口元を拭う。動いたのはざくろ。ジェットブーツを発動させて、如月に突進してくる。
起動は読めた。そう思ったところ、目の前でざくろはUターンする。
「なに!?」
大きな水飛沫に目を閉じてしまえば、隣にはいつの間にかざくろの姿。
「えい!!」
如月の手は空を掴み、ざくろの手には勝利のフラッグが握られる。が、事はこれで終わらなかった。
「貴公が邪魔しましたのね……」
ざくろが声の方向を向くと、桃色の双眸を開眼し、覚醒したドゥアルの姿があった。どうやら、さっきの水飛沫に自分が起こされご立腹のようだ。
「ええ!? ごめん、そんなつも――」
「わたくしの睡眠時間を削る者には、死あるのみなのよ」
魔法の詠唱により光が両方の手のひらに収束し、目の前でいきなり弾けた。
「「え?」」
ちゅど~ん!!
なんと。ドゥアルのホーリーライトが、目の前で暴発したのだ。光が収まり、無傷のざくろは目を開く。
そこには、大の字で湯に浮かぶドゥアルの姿が……
「うわぁぁぁぁ!?」
勿論、胸、腰の布の存在は爆発の彼方。ざくろだけが、それを見たのだった……
「あんたってやつは……」
如月の視線が、痛い。
「違う、これは事故だもーん!」
●天国
いよいよ、勝負の佳境。ハンター達も逆上せ初めたその頃、早々脱落していた彼らはと言うと。
「ああ、良い出オチだった。あ、そこの白いとこ、念入りにな!」
「あ、はい」
(白いところ?)
岩盤に寝そべりながら、マッサージ師を困らせるOrca。
「この温泉卵、美味しいですわ」
「こちらの温泉蒸し野菜は如何でしょうか?」
健康重視に、食材を接種するシャルティナ。いくらカロリー低いとはいえ、食べすぎではなかろうか。
「かー、この温泉割りいける!」
「塩もないのに、味がついているから、ツマミにいいぞ」
酒盛りはじめたリーラと、按摩を堪能する如月。焼酎に温泉の塩味が、なんとも味わいを深くしてくれる。
ぶっちゃけ、こっちが天国とすら思えてくる光景である。
●決戦
向かい合う二組。リリティアと雲雀、そしてゴンザレスと黒の夢だ。もう大分ライバルは消えた。恐らく、これが最後やもと三人は考えていた。
に、比べて黒の夢と来たら、ゴンザレスを世にさかなのオモチャを浮かべて遊んでいた。
(…やはり気になさらないな…)
くんかくんかすーはー、しつつも真面目に考えてるのだ。
実質2VS1、だが彼女の邪魔をさせるワケにはいかない。後で、おうちで『色々』するためにも……
「いくぜ!」
雲雀は温泉の外周を走り、黒の夢に手を伸ばす。
「あ~待つのじゃ。我輩の玩具」
しかし、調度流されたオモチャを追う形で黒の夢はこれを回避。しかし、追撃にリリティアが向かう。
「ソレガシハ、黒の夢様ノ忠犬!」
庇う形でゴンザレスが合間に入る。だが、こっちはこの行動も折り込み済み。
「いただきなのです!」
ゴンザレスの腰の布を引っ張る。抵抗しようと、ゴンザレスも引くには引くがやがて自分の手からすり抜けた。
「ヌワァァァ! スミマセン黒の夢様ァァァ」
ベション、と湯の中にお供が沈めば、残すは黒の夢、ただ一人である。二人が彼女に詰め寄る……が。
「気持ちいいからもうちょっとだけこうしてたいのな…だめ?」
首かしげる歳上のその人に、二人は肩の力が抜けて「はい」と了承せざるを得ない。
こうして、暫くすると黒の夢が湯から上がり、二人の勝者がここに決まったのだ。
ざくろ、リリア、フェリルが視線を交わす。
一気に動く三人。リリアが水鉄砲を発射し、ざくろは飛沫を飛ばしながら湯を駆け、フェリルが高笑いしながら走る。
攻防目まぐるしい接戦。それを、今まで幸運にも一度も試合を免れているアルラウネが見つめていた。この勝敗が決したら、自分も出る。だがやはり、武器代わりになるものが欲しい。
何かないか。そんなことを考えて、湯をまさぐったその時だ。手に当たるものに、確信を覚えた。
(そうだ、コレなら……)
長かった三竦みの戦いにも、漸く決着がつきそうだ。ドッジダッシュで避けたフェリルだが、布にざくろの手が掠めていた。
「しまったぁぁぁ!」
完全にほどけ、太ももに貼り付く布。ここで終わり。そう実際終わりなのだ。
彼女いない歴20年。混浴の夢はついと消えた、が男は鉄砲を撃つのをやめない!
「毎日アヒルちゃんの玩具と一緒に入浴している寂しい男の気持ちがお前にはわかるかーーーッ!?」
やたら滅多な水がざくろに向けられる。
「って違う、ざくろは違う! 男、男だから」
だが、それも数発。すぐに空になった。だが、撃つ行為をフェリルは止めない。
『戦士の皆さんお願いしま~す』
拡声器から聴こえる、エダの死の宣告。
ずらずらり、並ぶは屈強な集落の戦士達。ガッシリフェリルを全員で羽交い締め。
「神聖な湯に、不正は無用。出ていただきます」
「は・な・せぇ!」
「見苦しいわよ」
「往生際が悪い」
「って、なんでちゃっかり混ざって…さ、さわるなあ!」
えっさほいさ、と担がれながら彼は『マッサージ』に行ってしまった……若干二名、部族じゃないものも混ざっていたようだが。
アアアアアアアアアアアアア
「さて、仕切り直しと行きましょうか」
リリアの発言に今まで機会を伺っていたアルラウネが、自らの覚醒を促しながら現れる。その手には、落ちていた布を固く結んで、棒状にしたものを手にしていた。そう道具はそこらじゅうに溢れていたのだ。
「ここまでよ!」
水鉄砲にてのフェイントアタック。しかし、リリアも熱気に当てられていたのか、弾道はアルラウネから大きく反れる。
アルラウネは鉄砲に臆することなく前へ歩を進め、棒状の布にてまるで疾風の如く突くようにリリアに当てる。
衝撃で弛む結び目。しかし、彼女は外れる寸前で、結び目を手で押さえつけ結び直そうとする。
この一瞬の隙をざくろは見逃さない。
巨大になった団扇が、リリアの目の前に降り下ろされる。直接ぶつからずとも、結び目が弛い今の状態なら布を吹き飛ばせる筈だ。
「もらったよ!」
ツルン
(あれ?既視感)
●御褒美
優勝した三人は、巫女様一人の案内で秘湯へと案内された。切り立った岩肌から眺める集落すら望めぬ程の高度からの絶景。
若干ぬるめな無色透明な湯が、火照った身体にじんわりとしみてくる。水着ももうは必要ないので、皆が素肌で泉質を楽しんでいる。若干肌もしっとりしてきている、様な気もする。
「きもちいいーですねぇ、雲雀ー」
「いやー、動き回った後の風呂ってのも格別だな。疲れが湯の中へと溶け出していくわー……」
のんびりする二人に、クスクスと巫女が笑いかけてくる。ここに男性がいれば、さぞ喜んだであろう見事なプロポーションだ。
「まさか、私が勝ってしまうとは」
山々を眺めながら呟くのは、アルラウネであった。
まさかざくろが彼処で、手元狂って団扇ぶつけて自爆。その隙を見て、リリアの布を奪えるなんて思ってもみなかった。
ただその後、水着と覚醒した身体の色が同色で、まるで一体化したような色合い。丸裸のグリーンウーマンに辺りは騒然。間近で見たざくろは再び気絶。「私、そんなに注目浴びる様なことしたかしら?」と本人は平常心で何も気にせずであったが。
「むにゃ……これはまた、新たな触感…すぴー」
「ちがう……じこ、全て事故なん、だ…」
気絶したドゥエルとざくろは、黒の夢の看病を受けている。場所は黒の夢の膝の上。仰向けなおかげで、見事に顔に黒いあれが乗っかっている。別な意味で眠りにつきそうなので、こっちとしては心配だ。
「…………」
今は大人しく黒の夢をマッサージしているゴンザレスだが、この後が恐ろしい……ざくろ逃げて、ちょうにげて。
「けど、やっぱり温泉は静かに入るものね」
「また来たいですねー…今度は二人っきりで、どうでしょう?」
「おう、そうだな。今度はリリティアと二人で温泉巡りの旅ってのもいい」
そんな崖下の出来事など、彼女達は青空と湯を隅々まで楽しむのであった……
エダの台詞を瞳に光をたたえ、返したのはカミーユ・鏑木(ka2479)だ。
心が乙女な彼?には、美肌効果の温泉そして……
(そして合法的に良い男に触れれる、当に天国よ)
が、目的である。
「これが噂に行く温泉ですか。のんびり浸かりたいところですが……まずは勝負に勝手からですね」
スクール水着姿で髪を結びながら気合いを入れるのは、エルフのシャルティナ(ka0119)だ。
如何にして勝つか、その戦略を組み立てている。
「あのおねがいですから!」
係の人間に止められているのは、ネフィリア・レインフォード(ka0444)だ。腰の布だけを巻いていこうとしたところ、無理矢理止められ両手をあげながら、胸元に布を巻かれる。
「一つだけのほうが守りやすかったのにー。でもダメならしょうがないのだ。これで頑張るのだ!」
「温泉は裸で入るものなのにー苦しいのだ…」
一際大きい実を窮屈げに押さえ付ける布に、黒の夢(ka0187)はぶつくさと愚痴る。彼女にしてみれば、温泉に入ればそれでいいのだ。そんな暢気な彼女のボディーガードがゴンザレス=T=アルマ(ka2575)だ。狼の被り物の下で、何やら邪なことを考えている……
「アルマ、待てである」
「ハイ! 黒の夢様!」
と主に言いはするものの、その瞳は明らかに獲物を探す狼。いや、被り物が狼を模しているだけだが。
ちなみに、ゴンザレスはバイである。
●試合開始
「皆様に古よりの精霊の加護ぞあれ」
巫女が鳴らす太鼓の音が、観客の歓声を更に増大させる。それが戦い始まりの合図であった。
さて、試合は始まったワケだが、現在の状況は3タイプに別れている。あるものは始まって早々に動くもの。あるものは先ずは温泉に入り、好機を伺うもの。
そして……
「…すやすや…悪くない…寝心地で…すぷー」
このドゥアル(ka3746)の様に、全く勝負に興味なく、温泉を堪能するものだ。シュノーケル装備で溺れ対策も万全に、温泉睡眠を楽しむのだ。
「この場でしか…得られない環境…おやすも…」
こっちでは、リリア・ノヴィドール(ka3056)が入浴中。その隣には、ゴンザレスと黒の夢が温泉につかっていた。
一度は視線を合わすリリアとゴンザレス。しかし、お互いに襲撃の意思がないと知れば、両者それ以上のアクションは起こさなかった。
またこちらでは、黄緑のビキニを着用するアルラウネ(ka4841)が、のぼせ防止に温泉の縁に腰掛けている。同時にこの近辺を眺めていた。
武器代わりになるものは何かないか、出来れば自分の技に適する棒状のものが良い。そんな風に考えていた。そんなことをしているうちに、他から飛んでくる悲鳴に若干あきれたように肩を落とした。
(女は見られる内が華」とは言うけれど)
尤も彼女には、人に裸体を見せる気は更々ない。
「美肌効果のあるお風呂に浸かりながら酒が飲めるなんて、何としても生き残らないと!」
一段と気合いが入るのはリーラ・ウルズアイ(ka4343)である。入浴に水着は無粋と、あえて着ておらず。シュノーケル装着しながら、湯の中に潜水する。潜水からの奇襲、それもあるが同時に湯に潜った相手への注意のためでもある。
その時が来るまで、リーラはひっそり息を潜めることにした。
しかし、穏やかばかりがショーブ湯ではない。寧ろこっちが本番。
「おう!俺だよ! シャチだよ! 皆のシャチさんだぜ!!」
そうシャチ。Orca(ka4396)が二足歩行で覆い被さるように全力で布を掴みにかかる。
Orcaの鼻の先にはネフィリアがいて、彼女にヒレじゃない方の手を伸ばす。
「そう簡単に取られてはあげないのだー! 勝負するからには勝つ! それが心情なのだ♪」
華麗に避けた、と思いきやOrcaの傍らを湯に潜り並走。ネフィリアの野生の瞳が光れば、その手にはいつのまにか白い布が握られていた。
「お湯の中から失礼するのだ♪この手ぬぐい貰っていくねー♪」
ステンッ
「ぬおわぁぁあ!?」
そのまま滑ってつるるん。パシャパシャと真っ直ぐ水を切りながら進み岩地に乗り上げ、活き良くピチピチとなっていたのである。
「みたかぁ! 俺のシャチさんの出オチっぷりを!」
本人は、酷く満足げである。これぞ背中ならぬ『男は背びれで語る』だ。
互いに水柱ならぬ、湯柱を立て合うのはカミーユ、そして鹿島 雲雀(ka3706)である。
雲雀は、戦友のリリティア・オルベール(ka3054)を誘ってこの温泉を訪れた。
「要は脱衣ゲームって事だろ? いいねぇ、燃えてくるってもんだ!」
また、別の場所ではシャルティナにフェリル・L・サルバ(ka4516)が当たる。
出来ればまだじっとしていたかったシャルティナだが、フェリルが背後から来たため作戦を変更した。
瞬時にランアウトで腰を落とし距離をつめ、男の胸元の布に手を伸ばす。だが……
「覚悟しろオラァ!混浴権は俺のもんだあああああ!!」
何かを色々と捨ててきているフェリルの水鉄砲連射に気を取られ、シャルティナの胸元の布がバサァ。その瞬間湯気がモワモワ、とシャルティナを包む。
「残念、負けてしまいましたか…」
「安心しな。剥かれた女の子をまじまじ見るような真似はしねぇよ。多分maybe」
偶然装ってチラ見していたら、説得力はないのだよ。
辺りの光景に、心臓ドキドキ顔真っ赤かなのはこの人、時音 ざくろ(ka1250)だ。時期が時期だけに、菖蒲湯だと思って入りにきたら、こんなことになっていた。
「みんなの格好も…」
ある意味現在も混浴なのだ。そりゃお年頃のざくろなら、顔が柘榴の実色にもなる。
「いくぜ!」
こんな無防備なざくろに、狙いをつけたのが如月(ka4886)なのだ。最初から覚醒状態。頭部に双角、背後に鬼の幻影を連れてステップを踏み、布を掴みにかかる!
ズボッ
ざくろに如月が手を掛けるその瞬間、巨大なソレが視界いっぱいに邪魔をした。ざくろは一気に後退し、ソレは元の団扇に戻っていた。
そう、孔雀の団扇を超重錬成で大きくし、それで防いだのだ。
「小手先の技がいつまで持つだろうな」
団扇は盾ではない。現に如月が開けた穴が、団扇にもぽっかり残っている。後もっても数発か。
「でもざくろ、絶対負けないもん!」
●二回戦~
ゆっくりと温泉を満喫していたリリアにも、とうとうその時が来たようだ。相手は、ネフィリア。本当は後半に動くつもりであったが、もう一枚布を手に入れてしまった。こうなったからには、動くしかない。
「にゃは♪そろそろ本気で行こうかな? 狩猟の血が騒ぐのだ♪」
既にゲットした布に気分を昂揚とさせ、リリアの腰に巻いた布を取らんと襲いかかる。
「恥ずかしいから、さっさと終わらせるの」
ドッジダッシュで避けてから、素早く側面へ視線と水鉄砲の銃口を胸元に向け……
パシッ
「ふにゃ!?」
だが実際に撃たれたのは、腰の布の結び目に向けて。ネフィリアが驚いている間にほどけ、白い水面に更に白い姿を晒した
。
チラチラと絶景を堪能したフェリルは次の獲物へ、そこにいたのは湯から浮き上がったばかりのリーラだ。
いくらシュノーケルを着けたとはいえ温泉は、お湯である。たまにでも顔を水面に出さないとのぼせる。そして、リーラもまたフェリルに気付く。 まだ距離は遠い。これなら勝負を仕掛けられる。
リーラはウインドスラッシュを発動。
自分の早さでは、他の参加者には勝てない。ならば、布は切り落とすのが手っ取り早い。
「あまい、あまい。あむぁぁい!」
先程の一勝に調子に乗ったフェリルは、回避しながら彼女の目の前まで接近。
その早さに驚嘆し、ここで勝ち負けを確定する。
「奥の手を食ら―――」
「覚悟しろオラァ!混浴権は俺のもんだあああああ!!」
スリープクラウド発動間に合わず。残念、リーラの試合はここで終わった。
「さて、ご飯貰おうかな」
彼女は悔しさをおくびも出さず、物理的にも隠さず、スタスタと温泉から上がるのであった……
一段と湯気上がるのは、カミーユと雲雀の戦場からだ。二人とも息がだいぶ上がり、特に雲雀は微かに頭がぼんやりして来ていた。
これがカミーユの作戦。攻撃してしまえば、傷をつけてしまう。ならば、どうすれば良いか。
そこで考えたのが湯であった。避ける際に激しく飛沫を上げることで、湯気を激しく奔流させる。それにより、長時間湯にあたった故の気絶を狙っていた。
互いに疲れてきた、このままでは埒が開かない。先に動いたのは雲雀であった。素早く接近、そして掴んだのだ。
そう、カミーユが彼女の手首を。それからそのまま引き倒し、手首の関節を曲げ背中に押し付け湯の中に沈める。
首から下まで湯に浸からされ、必死にもがく雲雀に、カミーユは優しく耳元で告げる。
「のぼせるのが先か、手ぬぐいを渡すか…ど・っ・ち・が・良・い?」
今まで浴びるばかりであった上半身に、この湯は全く熱すぎる。
火照り、赤くなる顔で彼女は呟く。
「集団戦でモノをいうのは3つ……だ。囲まれない為の機動力、隙を逃さぬ観察眼……」
のぼせ始めて意識が混濁しているのか、そんな風に考えるカミーユ、その背後に。
「ふっふっふ…隙だらけなのですー!!」
「っ……そういうことね」
背後にいたのはリリティア。どうやらしてやられたようだ、とカミーユは口元を吊り上げた。
こうして、彼は白のビキニパンツを見せることになったのであった。
「んでもって仲間との連携ってな」
友の肩を借りながら、雲雀はしてやったりと笑ってみせた。
如月が水筒に入れた水を飲み下して口元を拭う。動いたのはざくろ。ジェットブーツを発動させて、如月に突進してくる。
起動は読めた。そう思ったところ、目の前でざくろはUターンする。
「なに!?」
大きな水飛沫に目を閉じてしまえば、隣にはいつの間にかざくろの姿。
「えい!!」
如月の手は空を掴み、ざくろの手には勝利のフラッグが握られる。が、事はこれで終わらなかった。
「貴公が邪魔しましたのね……」
ざくろが声の方向を向くと、桃色の双眸を開眼し、覚醒したドゥアルの姿があった。どうやら、さっきの水飛沫に自分が起こされご立腹のようだ。
「ええ!? ごめん、そんなつも――」
「わたくしの睡眠時間を削る者には、死あるのみなのよ」
魔法の詠唱により光が両方の手のひらに収束し、目の前でいきなり弾けた。
「「え?」」
ちゅど~ん!!
なんと。ドゥアルのホーリーライトが、目の前で暴発したのだ。光が収まり、無傷のざくろは目を開く。
そこには、大の字で湯に浮かぶドゥアルの姿が……
「うわぁぁぁぁ!?」
勿論、胸、腰の布の存在は爆発の彼方。ざくろだけが、それを見たのだった……
「あんたってやつは……」
如月の視線が、痛い。
「違う、これは事故だもーん!」
●天国
いよいよ、勝負の佳境。ハンター達も逆上せ初めたその頃、早々脱落していた彼らはと言うと。
「ああ、良い出オチだった。あ、そこの白いとこ、念入りにな!」
「あ、はい」
(白いところ?)
岩盤に寝そべりながら、マッサージ師を困らせるOrca。
「この温泉卵、美味しいですわ」
「こちらの温泉蒸し野菜は如何でしょうか?」
健康重視に、食材を接種するシャルティナ。いくらカロリー低いとはいえ、食べすぎではなかろうか。
「かー、この温泉割りいける!」
「塩もないのに、味がついているから、ツマミにいいぞ」
酒盛りはじめたリーラと、按摩を堪能する如月。焼酎に温泉の塩味が、なんとも味わいを深くしてくれる。
ぶっちゃけ、こっちが天国とすら思えてくる光景である。
●決戦
向かい合う二組。リリティアと雲雀、そしてゴンザレスと黒の夢だ。もう大分ライバルは消えた。恐らく、これが最後やもと三人は考えていた。
に、比べて黒の夢と来たら、ゴンザレスを世にさかなのオモチャを浮かべて遊んでいた。
(…やはり気になさらないな…)
くんかくんかすーはー、しつつも真面目に考えてるのだ。
実質2VS1、だが彼女の邪魔をさせるワケにはいかない。後で、おうちで『色々』するためにも……
「いくぜ!」
雲雀は温泉の外周を走り、黒の夢に手を伸ばす。
「あ~待つのじゃ。我輩の玩具」
しかし、調度流されたオモチャを追う形で黒の夢はこれを回避。しかし、追撃にリリティアが向かう。
「ソレガシハ、黒の夢様ノ忠犬!」
庇う形でゴンザレスが合間に入る。だが、こっちはこの行動も折り込み済み。
「いただきなのです!」
ゴンザレスの腰の布を引っ張る。抵抗しようと、ゴンザレスも引くには引くがやがて自分の手からすり抜けた。
「ヌワァァァ! スミマセン黒の夢様ァァァ」
ベション、と湯の中にお供が沈めば、残すは黒の夢、ただ一人である。二人が彼女に詰め寄る……が。
「気持ちいいからもうちょっとだけこうしてたいのな…だめ?」
首かしげる歳上のその人に、二人は肩の力が抜けて「はい」と了承せざるを得ない。
こうして、暫くすると黒の夢が湯から上がり、二人の勝者がここに決まったのだ。
ざくろ、リリア、フェリルが視線を交わす。
一気に動く三人。リリアが水鉄砲を発射し、ざくろは飛沫を飛ばしながら湯を駆け、フェリルが高笑いしながら走る。
攻防目まぐるしい接戦。それを、今まで幸運にも一度も試合を免れているアルラウネが見つめていた。この勝敗が決したら、自分も出る。だがやはり、武器代わりになるものが欲しい。
何かないか。そんなことを考えて、湯をまさぐったその時だ。手に当たるものに、確信を覚えた。
(そうだ、コレなら……)
長かった三竦みの戦いにも、漸く決着がつきそうだ。ドッジダッシュで避けたフェリルだが、布にざくろの手が掠めていた。
「しまったぁぁぁ!」
完全にほどけ、太ももに貼り付く布。ここで終わり。そう実際終わりなのだ。
彼女いない歴20年。混浴の夢はついと消えた、が男は鉄砲を撃つのをやめない!
「毎日アヒルちゃんの玩具と一緒に入浴している寂しい男の気持ちがお前にはわかるかーーーッ!?」
やたら滅多な水がざくろに向けられる。
「って違う、ざくろは違う! 男、男だから」
だが、それも数発。すぐに空になった。だが、撃つ行為をフェリルは止めない。
『戦士の皆さんお願いしま~す』
拡声器から聴こえる、エダの死の宣告。
ずらずらり、並ぶは屈強な集落の戦士達。ガッシリフェリルを全員で羽交い締め。
「神聖な湯に、不正は無用。出ていただきます」
「は・な・せぇ!」
「見苦しいわよ」
「往生際が悪い」
「って、なんでちゃっかり混ざって…さ、さわるなあ!」
えっさほいさ、と担がれながら彼は『マッサージ』に行ってしまった……若干二名、部族じゃないものも混ざっていたようだが。
アアアアアアアアアアアアア
「さて、仕切り直しと行きましょうか」
リリアの発言に今まで機会を伺っていたアルラウネが、自らの覚醒を促しながら現れる。その手には、落ちていた布を固く結んで、棒状にしたものを手にしていた。そう道具はそこらじゅうに溢れていたのだ。
「ここまでよ!」
水鉄砲にてのフェイントアタック。しかし、リリアも熱気に当てられていたのか、弾道はアルラウネから大きく反れる。
アルラウネは鉄砲に臆することなく前へ歩を進め、棒状の布にてまるで疾風の如く突くようにリリアに当てる。
衝撃で弛む結び目。しかし、彼女は外れる寸前で、結び目を手で押さえつけ結び直そうとする。
この一瞬の隙をざくろは見逃さない。
巨大になった団扇が、リリアの目の前に降り下ろされる。直接ぶつからずとも、結び目が弛い今の状態なら布を吹き飛ばせる筈だ。
「もらったよ!」
ツルン
(あれ?既視感)
●御褒美
優勝した三人は、巫女様一人の案内で秘湯へと案内された。切り立った岩肌から眺める集落すら望めぬ程の高度からの絶景。
若干ぬるめな無色透明な湯が、火照った身体にじんわりとしみてくる。水着ももうは必要ないので、皆が素肌で泉質を楽しんでいる。若干肌もしっとりしてきている、様な気もする。
「きもちいいーですねぇ、雲雀ー」
「いやー、動き回った後の風呂ってのも格別だな。疲れが湯の中へと溶け出していくわー……」
のんびりする二人に、クスクスと巫女が笑いかけてくる。ここに男性がいれば、さぞ喜んだであろう見事なプロポーションだ。
「まさか、私が勝ってしまうとは」
山々を眺めながら呟くのは、アルラウネであった。
まさかざくろが彼処で、手元狂って団扇ぶつけて自爆。その隙を見て、リリアの布を奪えるなんて思ってもみなかった。
ただその後、水着と覚醒した身体の色が同色で、まるで一体化したような色合い。丸裸のグリーンウーマンに辺りは騒然。間近で見たざくろは再び気絶。「私、そんなに注目浴びる様なことしたかしら?」と本人は平常心で何も気にせずであったが。
「むにゃ……これはまた、新たな触感…すぴー」
「ちがう……じこ、全て事故なん、だ…」
気絶したドゥエルとざくろは、黒の夢の看病を受けている。場所は黒の夢の膝の上。仰向けなおかげで、見事に顔に黒いあれが乗っかっている。別な意味で眠りにつきそうなので、こっちとしては心配だ。
「…………」
今は大人しく黒の夢をマッサージしているゴンザレスだが、この後が恐ろしい……ざくろ逃げて、ちょうにげて。
「けど、やっぱり温泉は静かに入るものね」
「また来たいですねー…今度は二人っきりで、どうでしょう?」
「おう、そうだな。今度はリリティアと二人で温泉巡りの旅ってのもいい」
そんな崖下の出来事など、彼女達は青空と湯を隅々まで楽しむのであった……
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/11 06:23:09 |