ゲスト
(ka0000)
福引き大作戦
マスター:篠崎砂美

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~15人
- サポート
- 0~10人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/05/14 19:00
- 完成日
- 2015/05/19 05:06
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「商店街で、福引き大売り出しですか?」
「ええ」
戸惑いがちな顔のセレーネ・リコお嬢様に、デレトーレ支配人がうなずきました。
中央にCAM像のそびえ立つこの商店街も、ちゃんとした店構えの商店が揃い、以前にも増した賑わいを見せ始めています。
そこで、商店街のさらなる発展と集客を目指して、大売り出しをしようという企画が立ったのでした。
この大売り出しの目玉が、福引きです。
各商店で買い物をしたお客様に、案内所でくじを引いて楽しんでもらおうという企画です。リアルブルーでは珍しくもないセールだということですが、異なる店同士が共通の賞品をサービスするというのはクリムゾンウェストでは結構斬新です。
「それで、お店から賞品をだしてほしいということなのですわね」
なんのお願いかと思っていたお嬢様が、うんうんと納得します。
商工会の方からある程度の援助があるため、必要な賞品を用意することはできます。けれども、それだけではバリエーション不足になりかねません。やはり、ここは商店街の各お店の特色を生かした賞品が必要です。
「これは、ライバル店に負けてはいられませんわね」
素晴らしい賞品で、お店の印象をよくしようとお嬢様が気合いを入れます。店頭の商品の方も、イベントに合わせた特別商品を用意しなければなりません。これは、今から準備が大変です。
「それでは、みなさん、よろしくお願いします」
各店舗を順番に回りながら、デレトーレ支配人はお願いしていきました。
「はいはい、そっち、モール飾って。抽選器はこのテーブルの上に固定して」
案内所の方では、フィネステラ嬢が福引き会場の設置を指示しています。案内所はきらびやかに飾り立てられ、準備は整っていきます。
「うんうん、なかなか。さて、どんな賞品が集まるのかしらねえ」
面白いのが集まればいいなあと、フィネステラ嬢が小さな胸を期待でふくらませました。
「ええ」
戸惑いがちな顔のセレーネ・リコお嬢様に、デレトーレ支配人がうなずきました。
中央にCAM像のそびえ立つこの商店街も、ちゃんとした店構えの商店が揃い、以前にも増した賑わいを見せ始めています。
そこで、商店街のさらなる発展と集客を目指して、大売り出しをしようという企画が立ったのでした。
この大売り出しの目玉が、福引きです。
各商店で買い物をしたお客様に、案内所でくじを引いて楽しんでもらおうという企画です。リアルブルーでは珍しくもないセールだということですが、異なる店同士が共通の賞品をサービスするというのはクリムゾンウェストでは結構斬新です。
「それで、お店から賞品をだしてほしいということなのですわね」
なんのお願いかと思っていたお嬢様が、うんうんと納得します。
商工会の方からある程度の援助があるため、必要な賞品を用意することはできます。けれども、それだけではバリエーション不足になりかねません。やはり、ここは商店街の各お店の特色を生かした賞品が必要です。
「これは、ライバル店に負けてはいられませんわね」
素晴らしい賞品で、お店の印象をよくしようとお嬢様が気合いを入れます。店頭の商品の方も、イベントに合わせた特別商品を用意しなければなりません。これは、今から準備が大変です。
「それでは、みなさん、よろしくお願いします」
各店舗を順番に回りながら、デレトーレ支配人はお願いしていきました。
「はいはい、そっち、モール飾って。抽選器はこのテーブルの上に固定して」
案内所の方では、フィネステラ嬢が福引き会場の設置を指示しています。案内所はきらびやかに飾り立てられ、準備は整っていきます。
「うんうん、なかなか。さて、どんな賞品が集まるのかしらねえ」
面白いのが集まればいいなあと、フィネステラ嬢が小さな胸を期待でふくらませました。
リプレイ本文
●大売り出し
「あなたが今回のバイトさんね、よろしく。で、それは何?」
セレーネ・リコお嬢様が、唐草模様の風呂敷包みを背負った紅薔薇(ka4766)に訊ねました。
「せっかく、他国に来たのでのう、手土産じゃ」
そう言って紅薔薇が取り出したのは、東国風の衣服や小物です。
「まあ珍しい」
お嬢様が目を輝かせました。
「せっかく西の国に来たのじゃから、東西の文化を合わせてみるのも面白かろう?」
「ええ」
さっそく、『珍しい東方の衣装』を売り文句に、きらびやかな装飾具や、ゆったりとした袖の大きな服などを、お店の目立つ所に飾ります。
紅薔薇も、東方の衣装に着替えてらしさを演出しました。
「わあ、これって和服?」
サングラスをかけた若い女の子が、さっそく新しい衣装に飛びついてきました。また、お忍びのアットリーチェちゃんのようです。
「これは、エトファリカの衣装じゃ」
すかさず、紅薔薇が訂正します。
「いらっしゃいませ」
ちょっとぞんざいな紅薔薇の接客に、お嬢様が慌てて出てきました。
「お気に召しましたでしょうか。こちらは、今日入ったばかりの逸品で、大御奉仕セール中でございます」
「クリムゾンウェストにも、こういう服があるんだあ。ロッソ以外で、初めて見た」
「うむ。いい品を選んできたからのう。どうじゃ、こちらのアクセサリーなども、そなたに似合いそうじゃぞ」
感心するアットリーチェに、紅薔薇がすかさず商品を勧めます。
「じゃ、それを」
「お買い上げ、ありがとうなのじゃ。これは、福引き券じゃ。何かいい物があたるかもしれぬぞ」
さい先よく服が売れたので、紅薔薇が上機嫌でアットリーチェに福引き券を渡しました。
「売れるものねえ。これは、東方との取り引きルートも考えなくちゃいけないかしら」
その様子を見て、お嬢様が何やら考え始めたようです。
「他のお店も繁盛してるみたいですね。こちらも頑張らなくちゃ」
通りすがりにその様子を見ていたミオレスカ(ka3496)が、ちょっとライバル心を刺激されました。
「どうか、お店が繁盛しますように」
CAM像にお参りすると、ミオレスカは自分がバイトしているパン屋さんへと急ぎました。ついでに、途中で立ち寄った大霊堂ショップで、お祓いも受けてきます。
「本日、福引きセールにつき大売り出しをしています~♪」
通りでは、看板を持ったトリス・ラートリー(ka0813)が、辺境の民族衣装に派手な飾りをつけて精一杯目立とうとしながら、大売り出しのチラシを道行く人たちに配っていました。
「ほう、セールですか。いったい、どのようなことをしているのでしょうか?」
チラシを受け取ったアクセル・ランパード(ka0448)が、トリスに訊ねました。
「はい。お買い上げいただいたお客様には、もれなく福引きに参加できる券をさしあげております」
トリスが満面の笑みを浮かべて説明しました。
「なるほど、こういった経営手法は、将来の領地運営にも生かせるかもしれません」
マメにメモをとるアクセルでした。
アクセルが居ならぶお店の方に顔をむけますと、目についたのは、様々な食器などをならべているお店です。
「そこのお兄さん、どうじゃろう、ちょっと見ていかんかね」
美しく花を飾った店内から、レーヴェ・W・マルバス(ka0276)がアクセルを手招きしました。
お店の中には、ドワーフらしい精緻な細工のキッチン用品が、所狭しとならべられていました。
「ほしいのは、茶葉の方なのですが、このカップも、なかなか素敵ですねえ」
精細な絵付けのティーセットに魅せられて、アクセルが興味を示します。
「あら、なかなかいい物売ってるじゃない」
近くにいたセリオ・テカリオも、それに気づいて近づいてきました。カップを手にとって、上に下にと確かめます。
「そうじゃろう、そうじゃろう」
うんうん、物を見る目があると、レーヴェが満足そうにうなずきます。
「じゃ、これをいただくとして、ペーパーナイフはあるかしら?」
セリオが訊ねました。
「ペーパーナイフ……。ちょっと待つのじゃ」
そう言うと、レーヴェがキッチンナイフを持って店の奥に引っ込みました。
「やはり、紅茶が先ですね」
その間に、アクセルは紅茶屋へとむかいます。
「お待たせしたのじゃ」
ぴっかぴかのペーパーナイフを持って、レーヴェが戻ってきました。どうやら、奧で打ち直して研いで、キッチンナイフをペーパーナイフに即興で作り直してしまったようです。さすがはドワーフ。
「じゃあ、これもちょうだい」
「まいどありーなのじゃ」
セリオに言われて、レーヴェはほくほく顔でティーセットとペーパーナイフをつつみ始めました。
「お茶、飲みませんかあ。お茶占いもやってますよー」
ミチーノ・インフォルの呼び声に誘われて、アクセルは紅茶屋へやってきました。どうやら、占いだけではお客が来ないので、ワゴンで各地のお茶も売り出したようです。
「おや、そのお茶は?」
「これはね、グリーンティーって言う珍しいお茶なのよ。サルヴァトーレ・ロッソ製のレア物なんだから」
興味を示したアクセルに、さっそくミチーノが売り込みます。
「試飲できますか?」
「もちろん。占いもできる優れ物よ」
そう言うると、ミチーノがアクセルに差し出したカップの中をのぞき込みました。中には、何やら棒状の物が浮いています。茶柱です。
「凄い、大吉よ!」
ミチーノが叫びました。
「きっと福引きで……」
「お、お茶をちょうだい……」
嬉々として占いの結果を述べようとしたミチーノの眼前に、突然包帯だらけの娘が顔を出しました。先の戦闘で重体となる傷を負ったセリス・アルマーズ(ka1079)です。
「こ、これは、紅茶じゃなーい!!」
緑茶を見たセリスが、大声で叫びながらヨロヨロとその場を去っていきました。
「ふ、不吉な……」
緑茶の中で真っ二つになった茶柱を見て、ミチーノがつぶやきました。
「とりあえず、あちらの紅茶を一袋……」
唖然としながらも、アクセルは、紅茶を一つつみ買っていきました。
「なんだか騒がしいなあ。それで、占い屋というのはここなんですね」
「ええ」
チラシを配り追えた妻のトリスと合流したアルベルト・ラートリー(ka2135)が、ミチーノのワゴンにやってきました。
「いらっしゃいませ。お茶、それとも占い?」
「お茶と占いで」
アルベルトに言われて、ミチーノがお茶を淹れました。中には、二本の茶柱がくっついて立っています。
「一人でなければ、可能性は高まるでしょう。ラッキーナンバーは2です」
ミチーノは、そうラートリー夫妻に言いました。
「ぜいぜい……。紅茶がないなんて……。いたたたた。傷が痛くなってきちゃったじゃない」
包帯人間のセリスは、ふらふらとしながら商店街を歩いていました。
「おっと、大丈夫かな、お嬢ちゃん」
通りかかったバルバロス(ka2119)が、転びかけたセリスをひょいとだきあげて言いました。
「く、薬を……」
「よおし、分かった」
弱々しく言うセリスを、バルバロスが近くの店まで運んでいきます。
「いらっしゃいませ♪ B.Grossaへ、ようこそ」
重厚な店構えの大霊堂のアンテナショップで、ウィスカ・オーロン(Uisca Amhran(ka0754))が、二人を出迎えました。ギルド巫女の集い“B.Grossa”の支援で、絶賛「聖地奪回記念セール」を開催中です。
「この人に薬を頼む」
店頭に置かれている白竜の像にパンパンと柏手を打ってから、バルバロスがウィスカに言いました。
「はい。巫女による癒やしのリラクゼーション御希望ですね。ただいまタイムセール中ですので、お二人にかけさせていただきます」
「いや、ワシは……」
「そーれー」
ふわりとしたツーピースの撒き衣と、身体に巻きつけて胸元で結んだ青いリボンを翻して、ウィスカが神聖な舞を披露しました。光でできた翼がその背中に広がり、その光が二人に降り注いで傷を癒やしていきます。
「ああ、なんだか生き返るわあ」
セリスがほんわかした顔になります。もちろん、これで重体が全快するというわけではありませんが、今感じている痛みはずいぶんと和らぎました。
「うおおおお、元気になったら腹が空いたあ。食い物屋はどこだあ!」
「ちょ、ちょっと……」
元気になりすぎたバルバロスは、そう叫ぶと走りだしました。包帯が引っ掛かってしまって、そのままセリスも引きずられていきます。
「ああ、まだ他にも、白竜様のぬいぐるみとか、サブレとか、魔法花火とか、御神託とか……行ってしまわれました」
まだまだ他にも目玉商品はあるのにと叫ぶウィスカでした。
「すみません、このCAMパンというのを十セットいただけますでしょうか」
数軒先のパン屋では、アクセルの注文に、ミオレスカがCAMパンをせっせと袋に詰め込んでいきました。
「これだけあれば、ギルドのみんなにも十分行き渡るでしょう」
いいお土産ができたとアクセルが満足していると、バルバロスが凄い勢いで走ってきました。
「パンをくれ~!」
「ど、どうしたのバルバロスさん!?」
ギルド仲間の凄い勢いに、思わずミオレスカが身を引きます。なんだか、包帯だらけの女の人を引きずってきているようにも見えるのですが。
「パンをくれ~!」
「わ、分かったからおじいちゃん、落ち着いて……」
「わ、私にもパンを……。できれば、甘いジャムパンを……」
せっかく復活したエネルギーを失いかけて、セリスが慌てて甘い物を欲しました。
急きたてられるようにして、ミオレスカは二人にCAMパンを渡しました。
●福引き所
「おめでとうございます。四等賞アイドルフィギアがあたりましたあ」
福引き所をお手伝いしている観那(ka4583)が、案内所の奧から景品を取ってくると、よいしょと台の上に登ってアットリーチェに手渡しました。
「うっ、こ、これは……」
もうすべて処分されたと思っていたのに、なぜこんな所にと、思いっきりトラウマスイッチを押されて、アットリーチェが落ち込みました。
「いいえ、これさえ破壊してしまえば、これで最後……と思いたい」
そうつぶやくと、アットリーチェはそそくさと路地裏へ姿を消していきました。
「次の方、どうぞー」
フィネステラが、次のお客様を呼びます。
「ぜいぜい。よいしょっと」
這うようにしてやってきたセリスが、全身全霊でガラガラを回しました。
銅色の玉が、ポトンとガラガラから出てきました。
「大当たり、三等、包丁セットです」
ハンドベルを鳴らしながら、観那が叫びました。
「なんでも、ゴブリンぐらい軽く倒せるほどの包丁だそうですよ」
「ゴブリンも倒せる包丁……今の私では、これくらいしか使えないのね……、早く怪我治そう……」
包帯姿で包丁を振り回す自分の姿をちょっと想像して、セリスが苦笑しました。でも、ちょっといいかも……。
「お待たせしました、次の方ー」
観那に呼ばれて、セリオがガラガラの前にやってきました。
「これを回せばいいのですか。ふーん、珍しい機械ですね」
「あのー、早く回してくださいね」
物珍しげにガラガラを見つめるセリオを、観那がちょっと急かしました。
ガラガラガラ。
白玉です。
そのとき、裏通りで、ガッチャーンと、盛大な音が聞こえてきました。
「何!? もしかして大当たり?」
何かの合図かと、セリオが期待に目を輝かせます。
「残念賞! 商店街で使える二割引券になります」
「あら、外れでも、そんなに悪くはないですね」
観那が用意しておいた大量の二割引券を一枚もらって、セリオがほくほく顔になりました。
「さて、何があたるでしょうか……」
続いて、アクセルがガラガラを回しました。
金です。金の玉です。
「大当たり! 一等賞が出ましたー!」
観那が、鐘を鳴らして叫びます。
「おめでとうございます『豪華! 聖地への旅一週間』が賞品となります」
「旅行ですか。聖地では、どのような信仰が行われているのかとても興味がありますね」
「細かい日程などは、大霊堂ショップでお聞きください」
思わぬ所で悪くない物があたったかなと、アクセルが今後の予定を想像してふむふむとうなずきました。
「それでは、次の方どうぞ」
「いい物があたりますように……てえいっ」
ミオレスカが、気合いを込めてガラガラを回しました。
銀の玉が転がり出てきます。
「大当たり、二等賞です。東方のお着物となります!」
鐘を鳴らして、観那が言いました。広い帯で胴の所を巻く形の巻き衣です。なんとも鮮やかな縫い取りがしてあります。
「似合う……かなあ?」
なじみのない服に、ちょっとミオレスカが戸惑いがちに言いました。
「こちらは、服飾店の方で、お身体に合わせてサイズ直しをしてくれるようですから、後でお立ち寄りください」
観那が、紅薔薇から渡された説明書きを読みあげました。
「次は、私たちですね」
今度は、トリスを連れたアルベルトがやってきました。
「確か、二人力を合わせるといいんだったか?」
ミチーノに言われたことを思い出して、二人が一緒にガラガラを回しました。
ピンクの玉と白玉が出てきます。
「残念、五等賞と残念賞です」
そう言って、観那が三色CAMパンと割引券を渡しました。チョコ・アン・クリームが中に入ったメロンパン生地のCAMの形をしたパンです。
「なんだあ、占い、あたらなかったですね」
ちょっと残念そうにアルベルトが言いました。
「でも、ちょうどいい。この割引券で何か食べていきましょう」
「また買い物したら来てくださいね。今度は凄い物があたるかもしれませんよ」
まだまだ商店街で買い物をするらしいラートリー夫妻に、観那が言いました。
「うむ、気合いを入れるかな」
「あの、壊さないでくださいね」
なんだか、気合い入りまくりのバルバロスに、観那がちょっと心配そうに言いました。
「善処する。どっせえいやあっ!」
言葉とは裏腹に、バルバロスが思いっきりガラガラを回しました。
ぽーん。
出てきたのは虹色の玉です。
「えっ、大当たり! 特等でーす!!」
「うおおおお!!」
鐘を振り千切るように鳴らす観那の姿に、バルバロスが諸手を挙げて喜びました。
「特等は、激レア中の激レア、サルヴァトーレ・ロッソでしか手に入らないポケットティッシュになります」
「おおおおお、この薄い紙はなんだあ。なんという技術! め、珍しい!!」
手渡されたポケットティッシュに、クリムゾンウェストのドワーフであるバルバロスが、その技術の高さに目をキラキラと輝かせました。
「さあ、次の方どうぞー」
セールは大盛り上がりで、福引き所には長い列ができていました。それは、夕方まで途切れず、ラートリー夫妻が食事から戻ってきても続いていました。
「大当たりでーす!!」
「あなたが今回のバイトさんね、よろしく。で、それは何?」
セレーネ・リコお嬢様が、唐草模様の風呂敷包みを背負った紅薔薇(ka4766)に訊ねました。
「せっかく、他国に来たのでのう、手土産じゃ」
そう言って紅薔薇が取り出したのは、東国風の衣服や小物です。
「まあ珍しい」
お嬢様が目を輝かせました。
「せっかく西の国に来たのじゃから、東西の文化を合わせてみるのも面白かろう?」
「ええ」
さっそく、『珍しい東方の衣装』を売り文句に、きらびやかな装飾具や、ゆったりとした袖の大きな服などを、お店の目立つ所に飾ります。
紅薔薇も、東方の衣装に着替えてらしさを演出しました。
「わあ、これって和服?」
サングラスをかけた若い女の子が、さっそく新しい衣装に飛びついてきました。また、お忍びのアットリーチェちゃんのようです。
「これは、エトファリカの衣装じゃ」
すかさず、紅薔薇が訂正します。
「いらっしゃいませ」
ちょっとぞんざいな紅薔薇の接客に、お嬢様が慌てて出てきました。
「お気に召しましたでしょうか。こちらは、今日入ったばかりの逸品で、大御奉仕セール中でございます」
「クリムゾンウェストにも、こういう服があるんだあ。ロッソ以外で、初めて見た」
「うむ。いい品を選んできたからのう。どうじゃ、こちらのアクセサリーなども、そなたに似合いそうじゃぞ」
感心するアットリーチェに、紅薔薇がすかさず商品を勧めます。
「じゃ、それを」
「お買い上げ、ありがとうなのじゃ。これは、福引き券じゃ。何かいい物があたるかもしれぬぞ」
さい先よく服が売れたので、紅薔薇が上機嫌でアットリーチェに福引き券を渡しました。
「売れるものねえ。これは、東方との取り引きルートも考えなくちゃいけないかしら」
その様子を見て、お嬢様が何やら考え始めたようです。
「他のお店も繁盛してるみたいですね。こちらも頑張らなくちゃ」
通りすがりにその様子を見ていたミオレスカ(ka3496)が、ちょっとライバル心を刺激されました。
「どうか、お店が繁盛しますように」
CAM像にお参りすると、ミオレスカは自分がバイトしているパン屋さんへと急ぎました。ついでに、途中で立ち寄った大霊堂ショップで、お祓いも受けてきます。
「本日、福引きセールにつき大売り出しをしています~♪」
通りでは、看板を持ったトリス・ラートリー(ka0813)が、辺境の民族衣装に派手な飾りをつけて精一杯目立とうとしながら、大売り出しのチラシを道行く人たちに配っていました。
「ほう、セールですか。いったい、どのようなことをしているのでしょうか?」
チラシを受け取ったアクセル・ランパード(ka0448)が、トリスに訊ねました。
「はい。お買い上げいただいたお客様には、もれなく福引きに参加できる券をさしあげております」
トリスが満面の笑みを浮かべて説明しました。
「なるほど、こういった経営手法は、将来の領地運営にも生かせるかもしれません」
マメにメモをとるアクセルでした。
アクセルが居ならぶお店の方に顔をむけますと、目についたのは、様々な食器などをならべているお店です。
「そこのお兄さん、どうじゃろう、ちょっと見ていかんかね」
美しく花を飾った店内から、レーヴェ・W・マルバス(ka0276)がアクセルを手招きしました。
お店の中には、ドワーフらしい精緻な細工のキッチン用品が、所狭しとならべられていました。
「ほしいのは、茶葉の方なのですが、このカップも、なかなか素敵ですねえ」
精細な絵付けのティーセットに魅せられて、アクセルが興味を示します。
「あら、なかなかいい物売ってるじゃない」
近くにいたセリオ・テカリオも、それに気づいて近づいてきました。カップを手にとって、上に下にと確かめます。
「そうじゃろう、そうじゃろう」
うんうん、物を見る目があると、レーヴェが満足そうにうなずきます。
「じゃ、これをいただくとして、ペーパーナイフはあるかしら?」
セリオが訊ねました。
「ペーパーナイフ……。ちょっと待つのじゃ」
そう言うと、レーヴェがキッチンナイフを持って店の奥に引っ込みました。
「やはり、紅茶が先ですね」
その間に、アクセルは紅茶屋へとむかいます。
「お待たせしたのじゃ」
ぴっかぴかのペーパーナイフを持って、レーヴェが戻ってきました。どうやら、奧で打ち直して研いで、キッチンナイフをペーパーナイフに即興で作り直してしまったようです。さすがはドワーフ。
「じゃあ、これもちょうだい」
「まいどありーなのじゃ」
セリオに言われて、レーヴェはほくほく顔でティーセットとペーパーナイフをつつみ始めました。
「お茶、飲みませんかあ。お茶占いもやってますよー」
ミチーノ・インフォルの呼び声に誘われて、アクセルは紅茶屋へやってきました。どうやら、占いだけではお客が来ないので、ワゴンで各地のお茶も売り出したようです。
「おや、そのお茶は?」
「これはね、グリーンティーって言う珍しいお茶なのよ。サルヴァトーレ・ロッソ製のレア物なんだから」
興味を示したアクセルに、さっそくミチーノが売り込みます。
「試飲できますか?」
「もちろん。占いもできる優れ物よ」
そう言うると、ミチーノがアクセルに差し出したカップの中をのぞき込みました。中には、何やら棒状の物が浮いています。茶柱です。
「凄い、大吉よ!」
ミチーノが叫びました。
「きっと福引きで……」
「お、お茶をちょうだい……」
嬉々として占いの結果を述べようとしたミチーノの眼前に、突然包帯だらけの娘が顔を出しました。先の戦闘で重体となる傷を負ったセリス・アルマーズ(ka1079)です。
「こ、これは、紅茶じゃなーい!!」
緑茶を見たセリスが、大声で叫びながらヨロヨロとその場を去っていきました。
「ふ、不吉な……」
緑茶の中で真っ二つになった茶柱を見て、ミチーノがつぶやきました。
「とりあえず、あちらの紅茶を一袋……」
唖然としながらも、アクセルは、紅茶を一つつみ買っていきました。
「なんだか騒がしいなあ。それで、占い屋というのはここなんですね」
「ええ」
チラシを配り追えた妻のトリスと合流したアルベルト・ラートリー(ka2135)が、ミチーノのワゴンにやってきました。
「いらっしゃいませ。お茶、それとも占い?」
「お茶と占いで」
アルベルトに言われて、ミチーノがお茶を淹れました。中には、二本の茶柱がくっついて立っています。
「一人でなければ、可能性は高まるでしょう。ラッキーナンバーは2です」
ミチーノは、そうラートリー夫妻に言いました。
「ぜいぜい……。紅茶がないなんて……。いたたたた。傷が痛くなってきちゃったじゃない」
包帯人間のセリスは、ふらふらとしながら商店街を歩いていました。
「おっと、大丈夫かな、お嬢ちゃん」
通りかかったバルバロス(ka2119)が、転びかけたセリスをひょいとだきあげて言いました。
「く、薬を……」
「よおし、分かった」
弱々しく言うセリスを、バルバロスが近くの店まで運んでいきます。
「いらっしゃいませ♪ B.Grossaへ、ようこそ」
重厚な店構えの大霊堂のアンテナショップで、ウィスカ・オーロン(Uisca Amhran(ka0754))が、二人を出迎えました。ギルド巫女の集い“B.Grossa”の支援で、絶賛「聖地奪回記念セール」を開催中です。
「この人に薬を頼む」
店頭に置かれている白竜の像にパンパンと柏手を打ってから、バルバロスがウィスカに言いました。
「はい。巫女による癒やしのリラクゼーション御希望ですね。ただいまタイムセール中ですので、お二人にかけさせていただきます」
「いや、ワシは……」
「そーれー」
ふわりとしたツーピースの撒き衣と、身体に巻きつけて胸元で結んだ青いリボンを翻して、ウィスカが神聖な舞を披露しました。光でできた翼がその背中に広がり、その光が二人に降り注いで傷を癒やしていきます。
「ああ、なんだか生き返るわあ」
セリスがほんわかした顔になります。もちろん、これで重体が全快するというわけではありませんが、今感じている痛みはずいぶんと和らぎました。
「うおおおお、元気になったら腹が空いたあ。食い物屋はどこだあ!」
「ちょ、ちょっと……」
元気になりすぎたバルバロスは、そう叫ぶと走りだしました。包帯が引っ掛かってしまって、そのままセリスも引きずられていきます。
「ああ、まだ他にも、白竜様のぬいぐるみとか、サブレとか、魔法花火とか、御神託とか……行ってしまわれました」
まだまだ他にも目玉商品はあるのにと叫ぶウィスカでした。
「すみません、このCAMパンというのを十セットいただけますでしょうか」
数軒先のパン屋では、アクセルの注文に、ミオレスカがCAMパンをせっせと袋に詰め込んでいきました。
「これだけあれば、ギルドのみんなにも十分行き渡るでしょう」
いいお土産ができたとアクセルが満足していると、バルバロスが凄い勢いで走ってきました。
「パンをくれ~!」
「ど、どうしたのバルバロスさん!?」
ギルド仲間の凄い勢いに、思わずミオレスカが身を引きます。なんだか、包帯だらけの女の人を引きずってきているようにも見えるのですが。
「パンをくれ~!」
「わ、分かったからおじいちゃん、落ち着いて……」
「わ、私にもパンを……。できれば、甘いジャムパンを……」
せっかく復活したエネルギーを失いかけて、セリスが慌てて甘い物を欲しました。
急きたてられるようにして、ミオレスカは二人にCAMパンを渡しました。
●福引き所
「おめでとうございます。四等賞アイドルフィギアがあたりましたあ」
福引き所をお手伝いしている観那(ka4583)が、案内所の奧から景品を取ってくると、よいしょと台の上に登ってアットリーチェに手渡しました。
「うっ、こ、これは……」
もうすべて処分されたと思っていたのに、なぜこんな所にと、思いっきりトラウマスイッチを押されて、アットリーチェが落ち込みました。
「いいえ、これさえ破壊してしまえば、これで最後……と思いたい」
そうつぶやくと、アットリーチェはそそくさと路地裏へ姿を消していきました。
「次の方、どうぞー」
フィネステラが、次のお客様を呼びます。
「ぜいぜい。よいしょっと」
這うようにしてやってきたセリスが、全身全霊でガラガラを回しました。
銅色の玉が、ポトンとガラガラから出てきました。
「大当たり、三等、包丁セットです」
ハンドベルを鳴らしながら、観那が叫びました。
「なんでも、ゴブリンぐらい軽く倒せるほどの包丁だそうですよ」
「ゴブリンも倒せる包丁……今の私では、これくらいしか使えないのね……、早く怪我治そう……」
包帯姿で包丁を振り回す自分の姿をちょっと想像して、セリスが苦笑しました。でも、ちょっといいかも……。
「お待たせしました、次の方ー」
観那に呼ばれて、セリオがガラガラの前にやってきました。
「これを回せばいいのですか。ふーん、珍しい機械ですね」
「あのー、早く回してくださいね」
物珍しげにガラガラを見つめるセリオを、観那がちょっと急かしました。
ガラガラガラ。
白玉です。
そのとき、裏通りで、ガッチャーンと、盛大な音が聞こえてきました。
「何!? もしかして大当たり?」
何かの合図かと、セリオが期待に目を輝かせます。
「残念賞! 商店街で使える二割引券になります」
「あら、外れでも、そんなに悪くはないですね」
観那が用意しておいた大量の二割引券を一枚もらって、セリオがほくほく顔になりました。
「さて、何があたるでしょうか……」
続いて、アクセルがガラガラを回しました。
金です。金の玉です。
「大当たり! 一等賞が出ましたー!」
観那が、鐘を鳴らして叫びます。
「おめでとうございます『豪華! 聖地への旅一週間』が賞品となります」
「旅行ですか。聖地では、どのような信仰が行われているのかとても興味がありますね」
「細かい日程などは、大霊堂ショップでお聞きください」
思わぬ所で悪くない物があたったかなと、アクセルが今後の予定を想像してふむふむとうなずきました。
「それでは、次の方どうぞ」
「いい物があたりますように……てえいっ」
ミオレスカが、気合いを込めてガラガラを回しました。
銀の玉が転がり出てきます。
「大当たり、二等賞です。東方のお着物となります!」
鐘を鳴らして、観那が言いました。広い帯で胴の所を巻く形の巻き衣です。なんとも鮮やかな縫い取りがしてあります。
「似合う……かなあ?」
なじみのない服に、ちょっとミオレスカが戸惑いがちに言いました。
「こちらは、服飾店の方で、お身体に合わせてサイズ直しをしてくれるようですから、後でお立ち寄りください」
観那が、紅薔薇から渡された説明書きを読みあげました。
「次は、私たちですね」
今度は、トリスを連れたアルベルトがやってきました。
「確か、二人力を合わせるといいんだったか?」
ミチーノに言われたことを思い出して、二人が一緒にガラガラを回しました。
ピンクの玉と白玉が出てきます。
「残念、五等賞と残念賞です」
そう言って、観那が三色CAMパンと割引券を渡しました。チョコ・アン・クリームが中に入ったメロンパン生地のCAMの形をしたパンです。
「なんだあ、占い、あたらなかったですね」
ちょっと残念そうにアルベルトが言いました。
「でも、ちょうどいい。この割引券で何か食べていきましょう」
「また買い物したら来てくださいね。今度は凄い物があたるかもしれませんよ」
まだまだ商店街で買い物をするらしいラートリー夫妻に、観那が言いました。
「うむ、気合いを入れるかな」
「あの、壊さないでくださいね」
なんだか、気合い入りまくりのバルバロスに、観那がちょっと心配そうに言いました。
「善処する。どっせえいやあっ!」
言葉とは裏腹に、バルバロスが思いっきりガラガラを回しました。
ぽーん。
出てきたのは虹色の玉です。
「えっ、大当たり! 特等でーす!!」
「うおおおお!!」
鐘を振り千切るように鳴らす観那の姿に、バルバロスが諸手を挙げて喜びました。
「特等は、激レア中の激レア、サルヴァトーレ・ロッソでしか手に入らないポケットティッシュになります」
「おおおおお、この薄い紙はなんだあ。なんという技術! め、珍しい!!」
手渡されたポケットティッシュに、クリムゾンウェストのドワーフであるバルバロスが、その技術の高さに目をキラキラと輝かせました。
「さあ、次の方どうぞー」
セールは大盛り上がりで、福引き所には長い列ができていました。それは、夕方まで途切れず、ラートリー夫妻が食事から戻ってきても続いていました。
「大当たりでーす!!」
依頼結果
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面白かった! | 5人 |
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- トリス・ラートリー(ka0813)
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依頼相談掲示板 | |||
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【相談】福引に挑戦 ミオレスカ(ka3496) エルフ|18才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2015/05/14 01:02:07 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/14 01:39:23 |