ゲスト
(ka0000)
ルミちゃんの2分くっきんぐ ~川釣り編~
マスター:のどか

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/05/17 22:00
- 完成日
- 2015/05/25 06:19
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「あ゛~、なんか、最近満ち足りないよぉ~」
オフィスのデスクに突っ伏しながら、新米受付嬢ルミ・ヘヴンズドア(kz0060)はバタバタと机の下で足を慣らした。
周りの同僚達は「また始まったよ……」と言った感じのどこか生暖かい視線を送りながらも特に彼女に言葉を掛ける事も無く、自らの仕事に黙々と取り掛かっている。
「……なんだかとても既視感があるのですが」
隣のデスクのイルムトラウト・イトゥリツァガ(kz0067)は、ルミが散らかした分の書類の整理をしながら、ため息混じりに呟いた。
「心が足りない! ああ、ルミちゃん、食に満たされる心が足りないよぉ!」
「心の食」と言うのはルミの受け売りであるが、所謂、おなか一杯食べる事よりも、感動するほど美味しいものが食べたいとか、そう言うことらしい。
だいぶルミの言葉や感性を解読する事に慣れて来たイルムは、なんとなくそう言うことだと理解していた。
「それなら、いいものがありますよ」
さーっと、風のように2人の間に現れたモア・プリマクラッセ(kz0066)を前に、イルムは再び既視感に苛まれる。
以前はそう、丁度2ヶ月くらい前の事だっただろうか。
全く同じような場面に出くわしたような気がする。
「ほう、モアさん。何か良いものがあるのかね?」
「ええ、それはもう。ルミさんは、ローザフィッシュという魚をご存知ですか?」
前回と違い、既に変なテンションで乗り気なルミを前に、モアはつらつらと説明を始めていた。
――ローザフィッシュと呼ばれるその魚は、いわゆる降海性の回遊魚である。
肉は赤身と白身の中間のようなピンク色をしており、火を通すとほんのり花のような甘い香りがする事から、ローザフィッシュ(薔薇魚)と呼ばれている。
ジェオルジの川で生まれる魚で、生まれた稚魚たちは、そのまま河口へ下って海を回遊。
成長した所で、次の世代を残すために、またジェオルジの川へと戻ってくる。
川へと戻って来たローザフィッシュは産卵を控えて丸々と太っており、油がのって絶品なのだと言う。
「川に戻ってくる、と言うと鮭みたいなものなんですかね?」
ルミは唇に手をあててうーんと想像をめぐらせる。
思い出すのは、リアルブルーの地元の川びっしりに埋め尽くされた、川に帰ってきた鮭の群れである。
「海へ出たローザフィッシュの回遊コースは、実はまだ分かっていないのです。見つけられたら世紀の大発見とも言えるものではあるのですが……唯一つ、この時期、ジェオルジの川に帰ってくる事だけは分かっています」
「そこを狙うってわけですねっ♪」
「その通りです」
広い下流では、他の魚も釣れてしまい時間が勿体無い。
しかし上流まで行ってしまうと産卵を終え、エネルギーを使い果たしてやせ細った魚ばかりになってしまう。
勝負は中流にあると、モアは言う。
「それでですね、今回も釣り上げた余剰分をすべて我々バロテッリ商会で買い取らせて頂きたいというご提案で。それで、報酬には十分値するのではないでしょうか」
「ふふふ、お主もワルよのう……」
怪しく瞳を光らせながらハンター達への依頼書を認める2人の同僚を前に、イルムは今日一番の盛大なため息を吐いた。
が……前回食べたホテルバードの卵がびっくりするほど美味しかったのを思い出して、今回もちょっとしたお零れの期待に、胸を膨らませているのであった。
オフィスのデスクに突っ伏しながら、新米受付嬢ルミ・ヘヴンズドア(kz0060)はバタバタと机の下で足を慣らした。
周りの同僚達は「また始まったよ……」と言った感じのどこか生暖かい視線を送りながらも特に彼女に言葉を掛ける事も無く、自らの仕事に黙々と取り掛かっている。
「……なんだかとても既視感があるのですが」
隣のデスクのイルムトラウト・イトゥリツァガ(kz0067)は、ルミが散らかした分の書類の整理をしながら、ため息混じりに呟いた。
「心が足りない! ああ、ルミちゃん、食に満たされる心が足りないよぉ!」
「心の食」と言うのはルミの受け売りであるが、所謂、おなか一杯食べる事よりも、感動するほど美味しいものが食べたいとか、そう言うことらしい。
だいぶルミの言葉や感性を解読する事に慣れて来たイルムは、なんとなくそう言うことだと理解していた。
「それなら、いいものがありますよ」
さーっと、風のように2人の間に現れたモア・プリマクラッセ(kz0066)を前に、イルムは再び既視感に苛まれる。
以前はそう、丁度2ヶ月くらい前の事だっただろうか。
全く同じような場面に出くわしたような気がする。
「ほう、モアさん。何か良いものがあるのかね?」
「ええ、それはもう。ルミさんは、ローザフィッシュという魚をご存知ですか?」
前回と違い、既に変なテンションで乗り気なルミを前に、モアはつらつらと説明を始めていた。
――ローザフィッシュと呼ばれるその魚は、いわゆる降海性の回遊魚である。
肉は赤身と白身の中間のようなピンク色をしており、火を通すとほんのり花のような甘い香りがする事から、ローザフィッシュ(薔薇魚)と呼ばれている。
ジェオルジの川で生まれる魚で、生まれた稚魚たちは、そのまま河口へ下って海を回遊。
成長した所で、次の世代を残すために、またジェオルジの川へと戻ってくる。
川へと戻って来たローザフィッシュは産卵を控えて丸々と太っており、油がのって絶品なのだと言う。
「川に戻ってくる、と言うと鮭みたいなものなんですかね?」
ルミは唇に手をあててうーんと想像をめぐらせる。
思い出すのは、リアルブルーの地元の川びっしりに埋め尽くされた、川に帰ってきた鮭の群れである。
「海へ出たローザフィッシュの回遊コースは、実はまだ分かっていないのです。見つけられたら世紀の大発見とも言えるものではあるのですが……唯一つ、この時期、ジェオルジの川に帰ってくる事だけは分かっています」
「そこを狙うってわけですねっ♪」
「その通りです」
広い下流では、他の魚も釣れてしまい時間が勿体無い。
しかし上流まで行ってしまうと産卵を終え、エネルギーを使い果たしてやせ細った魚ばかりになってしまう。
勝負は中流にあると、モアは言う。
「それでですね、今回も釣り上げた余剰分をすべて我々バロテッリ商会で買い取らせて頂きたいというご提案で。それで、報酬には十分値するのではないでしょうか」
「ふふふ、お主もワルよのう……」
怪しく瞳を光らせながらハンター達への依頼書を認める2人の同僚を前に、イルムは今日一番の盛大なため息を吐いた。
が……前回食べたホテルバードの卵がびっくりするほど美味しかったのを思い出して、今回もちょっとしたお零れの期待に、胸を膨らませているのであった。
リプレイ本文
●釣り日和
川のせせらぎに乗って、心地よい風が頬を撫でる。
ルミ・ヘヴンズドア(kz0060)からの依頼で川釣りへとやって来たハンター達は、事前に話に聞いてたポイントへと足を運んでいた。
川原一面に丸っこい砂利の敷詰められた中流辺り。
やや日差しは強いが、程よくかかった雲がそれを幾分和らげる。
「ふふふ、居ますね! こうも集まっていると、腕がなります」
岸辺にしゃがみ込んだセシル・ディフィール(ka4073)は、水面下を泳ぐ魚たちを前に、流石に気分が高揚するのを感じていた。
眺める川の中には、産卵のために河口から上って来たローザフィッシュが群れを成してひしめき合っていたのだ。
「道具を置くのは、ここら辺でいいかな」
瀬崎 琴音(ka2560)はハンター達の荷物を、ちょっと開けた場所に纏めて置くと、うんと背伸びをしながら辺りの様子を眺めまわす。
川の周囲は、山とは言わないがちょっとした森林に囲まれており、そのせいもあってか空気自体は比較的涼しい。
「さて……ちょっと散歩にでも行ってくるかな」
話には聞いていた「くま」の出現報告。
とりあえず、安全確保に見回りだけでもと、琴音はそう考えていた。
「これ、くま避けの鈴置いておくから、みんな付けておきなよ」
置き土産にと、じゃらりと街で手に入れた鈴を人数分、川原に広げる。
「おっ、サンキュー。じゃあ代わりにこれ、持ってってくれよな」
そう言いながら、ダイン(ka2873)は持参した小包を琴音に手渡した。
触ると微かに柔らかい手触りのその小包には、干された肉と魚が折り込まれているらしい。
「川原に来る前に、別の食べ物があったら、そっちに気取られてくれたりしないかなぁ……って」
「なるほど。そう言う事なら撒くだけ撒いてみるよ」
琴音はそう言いながらダインの小包を受け取ると、ちりんと鈴を鳴らしながら森の方へと姿を消して行った。
吹き抜ける優しい風に、ハンター達の釣り竿がゆらりと揺れる。
こうして水面に糸を垂らして取り上げてと、30分ほど経っただろうか。
「……おお、しまったしまった、寝ちまいやがった」
岩の上でピクリと体を揺らしながら、高橋 鑑連(ka4760)はそれでも慌てた様子一つなく、竿の先の様子に目を配る。
魚が餌を突いている様子も無く、小さく鼻を鳴らして再び腰を落ち着けた。
「~、~~、~~♪」
薬師神 流(ka3856)もまた、一向に揺れない己が竿の先を眺めながら、それでもどこか楽しげに歌を口ずさむ。
「あんた、そりゃ五木の子守唄ですか」
「ええ、くま避けにでもなれば良いかと思ってね」
「かかっ、そりゃ眠くもならぁな」
故郷の世界の歌に、鑑連はどこか懐かしむ様子で笑みを浮かべた。
そう釣れないなりに楽しげな彼らの隣では、どうも落ち着かない様子のミィリア(ka2689)が、比較的短い間隔で投げては取り出し、取り出しては投げてを繰り返している。
「そんな、ただひたすら餌を垂らしているだけで良いのでござるか?」
「何度も目の前に餌が現れたら、そりゃ魚だって不思議に思ってしまうからな」
そんなミィリアに、隣のご両人と同じようじっくりゆったりと竿を構えるヴァイス(ka0364)が苦笑交じりに答えて見せた。
「じっくり待つのが釣りの醍醐味ってヤツだ。絢音の方は、スジが良さそうだな」
彼が目を向ける佐藤 絢音(ka0552)も、ミィリアと同じく見様見真似の様子ではあったが、その落ち着きっぷりは大人たちの釣り姿に負けては居ない。
「ポイントはのんびりする事なの」
自信満々に口にする絢音に、うんうんと頷くヴァイス。
「ううん……その域に達するのは難しいでござる」
目を細めてその空気を楽しむヴァイスと、ホントに少女なのかと言う高説を披露する絢音を前に、訝しげながらも頷くミィリアであった。
「――おっと、そんなことをしている間に来たぜ」
グンと大きく引いた自らの竿を前にジャラリと足場を整えるヴァイス。
水面を流れる糸を見て、体重を乗せ換え、バラしに警戒する。
そうして、ひときわ大きな水柱と共に、1匹の魚が姿を現した。
「ははっ、中々良いサイズじゃないか!」
手元でビチビチと撥ねるローザフィッシュ。
特徴と言えば産気色と呼ばれる繁殖期独特の腹の赤いライン。
それが銀色の鱗に相まって、どこか美しさをも感じさせていた。
●メイジンと子供たち
「おや……こんなに沢山の先客が居るとは珍しい」
不意に川沿いに現れたヒゲ面の男は、ハンター達へニッコリと微笑み掛けると、自らの荷物を川辺に纏める。そうして手早く準備を整えると、慣れた足取りで川辺へと降り立った。
「アンタもしかして噂の釣り名人か?」
「それはその……恥ずかしながらそうも呼ばれておりますよ」
興味本位だろうか、目を光らせて問うたダインに、男はまたもや頬を掻きながら口を開いた。
「じゃあさ、じゃあさ、ローザフィッシュを釣るコツなんての、あったりしないかな?」
そう、頭を掻きながら笑いかけるダイン。
実際、釣り状の幸先はあまり芳しくは無かった。
全体で何匹かの釣果はあるものの、眼前に見える魚群を前にしてみれば喰いが悪い方である。
「ふむ……ちょっと、餌を見せて頂いてよろしいですかな」
言いながら、ひょいとダインの使っている餌箱をのぞき込むメイジン。
そうして、自らの荷物から小さな皮袋を取り出すと、中身の白い粉をぱらぱらと餌に振り掛け始めた。
「ほほう……それは『塩』ですな」
「おや、よくお分かりで」
その様子を見てうんと唸ったのは鑑連だった。
「あたしはリアルブルーのニホンという国からきたんですがね、向こうでも釣りってのぁ盛んなんですよ。塩漬け技術はもちろんありやすが、『喰い』が落ちるってぇ、あんまり褒められたもんじゃ無ねぇのですがね」
「ごもっとも。しかし、この魚に限ってはちょっと勝手が違いましてね」
「ほほう」
「彼らは今まで、海のものを食べて生きて来たわけなのですよ。そんな魚が淡水のものを食してもと……そうは思いませんか?」
「なるほど……海のものを再現する、と」
メイジンの説明を受けながら、流はうんと一つ唸った。
とは言え、根拠も何もないのですがね……と変わらず頬を掻くメイジン。
「……お……お? き、来たぞっ!」
行ったそばから、塩振りの餌を投げ入れたダイン。
相変わらず投げ入れはヘタクソだったが、川の流れに乗ってその匂いと塩気を撒いた餌に対して、ぱくりと銀の肢体が食らいついていた。
「よっし! 初ゲット!」
初めてのキャッチに飛び上がって喜ぶダインだったが、「あんまり騒ぐと……」と仲間達に諌められ、はっと思い出したように口をつぐむ。
が、その手では何度も、ガッツポーズを繰り返していた。
「なるほどね、そういうカラクリが必要なわけだ」
そんな様子を観察していた琴音も、見様見真似で塩振り餌を針にくくりつけ、川へと投げ込んでみる。
そうすると、あれよと言う間につり上がる魚。
糸の先でビチビチと身をよじるその重みを手に受け、琴音はどこか関心するようにその姿を見つめた。
落ち着いた様子は相変わらずだが、その瞳にはどこか楽しくなって来たような輝きが、見て取れていた。
そんな時である。
がやがやとした子供の喧騒が、遠巻きに川沿いに響き渡った。
「何のさわぎなの……?」
「近くの村の子供たちですね。これはポイントを変えた方が良さそうだ」
絢音の問いに答えたメイジンは、テキパキと道具を片づけ始める。
「あ、お待ちください。よろしければ私もご一緒してよろしいでしょうか?」
そうして道具を肩に下げたメイジンに、セシルが一言、呼び止めていた。
「構いませんが、皆さんとご一緒で無くてよろしいので?」
「ふふふ、私、釣りには少し自信がありまして。獲物の大きさ辺りで一勝負、いかがですか?」
「なるほど。せっかくの出会いだ、たまにはそういうのも良いでしょう」
セシルの提案に乗ったメイジンは、そのまま少し下流のポイントへと彼女を案内して行く。
程なくして、その場に残ったハンター達の視界に、川へ一目散に駆け寄って来る子供たちの姿が映った。
「しーーーーっ!」
その姿を捉えるや否や、ミィリアがまるで威嚇する猫のように、口元に手を当てて彼らの騒ぎを制する。
「なんだよ、ねぇちゃんたち!」
川辺に陣取る大人たちを前に、困惑気味で声を荒げる子供たち。
「ああ、驚かせてすまないな。俺達、ここへ釣りに来ていてね」
ヴァイスは、にこりと優しい笑みを口元に浮かべながら、そう子供たちに声を掛ける。
「うぉ、ホントだ、すっげぇいっぱい居るぜ!」
川の中へと視線を向けた子供たちは、集まった魚たちを前に大はしゃぎ。
しかしながら、すぐにその騒ぎはヴァイスによって制された。
「遊び場を横取りしてゴメンな……そうだ、代りに川のもっと上の方に行ってみないか?」
「えー、でも、くまとか出るってかぁちゃん言ってたぜ!」
「くまなら、そのお兄さんがなんとかしちゃうでござるよ。それよりも、ものすーっごく珍しいのが今だけ見れちゃうかもしれないでござるよ?」
ミィリアがそう言うと、子供たちは興味深々の様子で目をらんらんと輝かせる。
「じゃあ、決まりだな! 行くぞ!」
そう、腕を上げて先頭を行くヴァイスに連れられて、子供たち上流を目指してゆくのだった。
「しかし、華やかな遊びは知らんくせに、こういうことばかり出来るものだ」
目の前の2本の竿の先を眺めながら、流は独り言ちるようにそう口にしていた。
ぴんと引いた一方の竿を見て、傍らのミィリアを呼ぶ。
呼ばれた彼女は待ってましたとばかりに竿に飛びつくと、そのまま慣れた手慣れた様子で魚を陸へと引き上げて見せた。
「流が言うその『華やかな~』とかよりもミィリアはこっちのがいいな。自然な感じで心地良いもの!」
針から外した魚を筒へと入れながら、ミィリアは、彼の独り言に答えるようにそう言った。
そして、どこか艶やかにも聞こえるトーンで、言葉を続ける。
「それに……ううん、何気ないことでも一緒にっていうだけで特別なものになっちゃうのかも」
「……そうだな。優越に浸るよりも、君と共に何がが出来るのが、ただ嬉しい」
そう、瞳を閉じて川のせせらぎに耳を澄ます流。
穏やかに流れる川のように、波風立たずに当たり前に隣に居る存在の尊さを、彼らは静かに感じ入っていた。
「――これが、オトナのカンケイなの。とっても勉強になるの」
「いやいやしかし、お嬢ちゃんには、まだ少し、早いでしょうな」
そんな二人の様子を瞳に映しながら、しみじみと呟く絢音に、鑑連が小さな笑みを返していた。
「おっ、ほうら見てみろよ。ローザフィッシュが卵を産んでるぞ」
子供を引き連れた上流にて、ヴァイスはそう言いながら、細い渓流となった川を指さす。
その先では、ちょうど岩陰に卵を産み付けている魚の姿があった。
「すげぇ、いっぱいだ!」
「この卵の中の何匹が、海に行って、また故郷へ帰ってこられるんだろうかな」
今目の前で卵を産むあの魚も、何万匹という仲間達の中で僅かに生き残り、今こうして人生の役目を全うしている。
「帰る場所を求めるのは……人間だけじゃ、無いんだものな」
それは誰に宛てた言葉なのか。
呟くヴァイスの隣で、次代の子供たちは貰ったチョコレート片手に楽しげな笑顔を浮かべながら、生命の神秘に心を躍らせていた。
「普段は海釣りなのですが、澄んだ水に、美しい流れ。川釣りは素晴らしいと思います」
メイジンと並んで糸を垂らしながら、不意にセシルがそう言葉を掛けた。
「私は海も好きですよ。海には懐の深さのようなものを感じます」
答えるメイジンに、セシルは笑顔で頷き返す。
と、その時、彼女の竿がぐんと大きくしなった。
引き寄せる糸の先には、おそらく今日一番の獲物ではないかと言う、まるまると太ったローザフィッシュ。
「おや、これは私の負けですかな」
そう、どこか悔しげに、それでも笑顔で頬を掻くメイジン。
セシルはひとしきり釣り上げた大物を眺めると、丁寧に針を外して、そのまま川へと魚を戻して行った。
「さ、お行きなさい。もう釣り上げられちゃだめよ?」
言いながら手を振るセシルは、くるりとメイジンに向き直ると、その日一番の笑顔を作ってみせた。
その後ろで、何かに答えるかように、ぴちゃりと1匹の魚が水面に撥ねていたのだった。
●初夏の味覚は
「皆~、お魚焼けたよ~!」
川原に香ばしい匂いが漂う。
火に当たった魚は、表面の皮目に綺麗な焼き色を付け、じゅうじゅうと染み出した油が景気の良い音を立てて、その食欲を掻き立てる。
「いただきま~す!」
誰から言ったわけでもなく、口を揃えてのその言葉に、皆は一斉に手に持った魚へとかぶりついていた。
「おいし~♪」
「ぁー、ハンターやっててよかった……」
その身を噛みしめるや否や、ルミとダインは感嘆の涙でも流しそうな勢いで点を仰ぎ、吐息を盛らす。
「これはなるほど、依頼にしてまで求められるのも分かります」
セシルもまた、感心したように笑みを浮かべながら、ほろりと骨から剥がれた身を味わった。
油の乗った身は、やや川魚的なタンパクな味わいであるものの、程よいとろみを持ち。何より弾ける皮目の油は、魚独特の生臭さが一切無く、その名の通り華やかな香りとなって喉の奥から鼻腔をくすぐる。
「がっつくのは良いが、骨の間まで綺麗に食べるんだぞ」
「はーい」
うまいうまい言いながらがっつく子供たちを前に、最後まで保護者然とするヴァイス。
「たべられるお魚はかわいそうだけど、あやねもたべないと死ぬの。だから『いただきます』……大切な言葉なの」
「ああ、そうだな」
彼らの円に交じって、魚を齧る絢音に、ヴァイスは頷き返す。
魚たちにとっては、歪虚も、自分たちも、もしかしたら同じように見えているのかもしれない。
だからこそ、大事にしなければならない感情が、自分たちにはあるのだろう。
「よかったら御結びを受け取ってくれるかな。コツを教えてくれた、お礼を兼ねてね」
「ありがとうございます。ではおひとつ」
琴音に差し出された握り飯を一つ掴んで、その口へと運ぶメイジン。
「魚に米。良い組み合わせだな。だが俺は……今日はこちらだ」
言いながら、流が取り出したのは1本の酒瓶。
「里心付きかねんと敬遠していたが、今日は特別だ」
「おお、清酒ですか」
その独特の香りに、鑑連の声も弾かれたように思わず上ずる。
「鑑連さんも良ければ。ミィリアも一献、付き合ってくれるな?」
「わ、貴重な日本のお酒……! えへ、やっぱりコレが一番かも! なんてっ♪」
焼き立ての肴を傍に、酌み交わされる小さな盃。
蒼も紅も関係なく、確かな人と命の輪が、そこには存在しているのだった。
川のせせらぎに乗って、心地よい風が頬を撫でる。
ルミ・ヘヴンズドア(kz0060)からの依頼で川釣りへとやって来たハンター達は、事前に話に聞いてたポイントへと足を運んでいた。
川原一面に丸っこい砂利の敷詰められた中流辺り。
やや日差しは強いが、程よくかかった雲がそれを幾分和らげる。
「ふふふ、居ますね! こうも集まっていると、腕がなります」
岸辺にしゃがみ込んだセシル・ディフィール(ka4073)は、水面下を泳ぐ魚たちを前に、流石に気分が高揚するのを感じていた。
眺める川の中には、産卵のために河口から上って来たローザフィッシュが群れを成してひしめき合っていたのだ。
「道具を置くのは、ここら辺でいいかな」
瀬崎 琴音(ka2560)はハンター達の荷物を、ちょっと開けた場所に纏めて置くと、うんと背伸びをしながら辺りの様子を眺めまわす。
川の周囲は、山とは言わないがちょっとした森林に囲まれており、そのせいもあってか空気自体は比較的涼しい。
「さて……ちょっと散歩にでも行ってくるかな」
話には聞いていた「くま」の出現報告。
とりあえず、安全確保に見回りだけでもと、琴音はそう考えていた。
「これ、くま避けの鈴置いておくから、みんな付けておきなよ」
置き土産にと、じゃらりと街で手に入れた鈴を人数分、川原に広げる。
「おっ、サンキュー。じゃあ代わりにこれ、持ってってくれよな」
そう言いながら、ダイン(ka2873)は持参した小包を琴音に手渡した。
触ると微かに柔らかい手触りのその小包には、干された肉と魚が折り込まれているらしい。
「川原に来る前に、別の食べ物があったら、そっちに気取られてくれたりしないかなぁ……って」
「なるほど。そう言う事なら撒くだけ撒いてみるよ」
琴音はそう言いながらダインの小包を受け取ると、ちりんと鈴を鳴らしながら森の方へと姿を消して行った。
吹き抜ける優しい風に、ハンター達の釣り竿がゆらりと揺れる。
こうして水面に糸を垂らして取り上げてと、30分ほど経っただろうか。
「……おお、しまったしまった、寝ちまいやがった」
岩の上でピクリと体を揺らしながら、高橋 鑑連(ka4760)はそれでも慌てた様子一つなく、竿の先の様子に目を配る。
魚が餌を突いている様子も無く、小さく鼻を鳴らして再び腰を落ち着けた。
「~、~~、~~♪」
薬師神 流(ka3856)もまた、一向に揺れない己が竿の先を眺めながら、それでもどこか楽しげに歌を口ずさむ。
「あんた、そりゃ五木の子守唄ですか」
「ええ、くま避けにでもなれば良いかと思ってね」
「かかっ、そりゃ眠くもならぁな」
故郷の世界の歌に、鑑連はどこか懐かしむ様子で笑みを浮かべた。
そう釣れないなりに楽しげな彼らの隣では、どうも落ち着かない様子のミィリア(ka2689)が、比較的短い間隔で投げては取り出し、取り出しては投げてを繰り返している。
「そんな、ただひたすら餌を垂らしているだけで良いのでござるか?」
「何度も目の前に餌が現れたら、そりゃ魚だって不思議に思ってしまうからな」
そんなミィリアに、隣のご両人と同じようじっくりゆったりと竿を構えるヴァイス(ka0364)が苦笑交じりに答えて見せた。
「じっくり待つのが釣りの醍醐味ってヤツだ。絢音の方は、スジが良さそうだな」
彼が目を向ける佐藤 絢音(ka0552)も、ミィリアと同じく見様見真似の様子ではあったが、その落ち着きっぷりは大人たちの釣り姿に負けては居ない。
「ポイントはのんびりする事なの」
自信満々に口にする絢音に、うんうんと頷くヴァイス。
「ううん……その域に達するのは難しいでござる」
目を細めてその空気を楽しむヴァイスと、ホントに少女なのかと言う高説を披露する絢音を前に、訝しげながらも頷くミィリアであった。
「――おっと、そんなことをしている間に来たぜ」
グンと大きく引いた自らの竿を前にジャラリと足場を整えるヴァイス。
水面を流れる糸を見て、体重を乗せ換え、バラしに警戒する。
そうして、ひときわ大きな水柱と共に、1匹の魚が姿を現した。
「ははっ、中々良いサイズじゃないか!」
手元でビチビチと撥ねるローザフィッシュ。
特徴と言えば産気色と呼ばれる繁殖期独特の腹の赤いライン。
それが銀色の鱗に相まって、どこか美しさをも感じさせていた。
●メイジンと子供たち
「おや……こんなに沢山の先客が居るとは珍しい」
不意に川沿いに現れたヒゲ面の男は、ハンター達へニッコリと微笑み掛けると、自らの荷物を川辺に纏める。そうして手早く準備を整えると、慣れた足取りで川辺へと降り立った。
「アンタもしかして噂の釣り名人か?」
「それはその……恥ずかしながらそうも呼ばれておりますよ」
興味本位だろうか、目を光らせて問うたダインに、男はまたもや頬を掻きながら口を開いた。
「じゃあさ、じゃあさ、ローザフィッシュを釣るコツなんての、あったりしないかな?」
そう、頭を掻きながら笑いかけるダイン。
実際、釣り状の幸先はあまり芳しくは無かった。
全体で何匹かの釣果はあるものの、眼前に見える魚群を前にしてみれば喰いが悪い方である。
「ふむ……ちょっと、餌を見せて頂いてよろしいですかな」
言いながら、ひょいとダインの使っている餌箱をのぞき込むメイジン。
そうして、自らの荷物から小さな皮袋を取り出すと、中身の白い粉をぱらぱらと餌に振り掛け始めた。
「ほほう……それは『塩』ですな」
「おや、よくお分かりで」
その様子を見てうんと唸ったのは鑑連だった。
「あたしはリアルブルーのニホンという国からきたんですがね、向こうでも釣りってのぁ盛んなんですよ。塩漬け技術はもちろんありやすが、『喰い』が落ちるってぇ、あんまり褒められたもんじゃ無ねぇのですがね」
「ごもっとも。しかし、この魚に限ってはちょっと勝手が違いましてね」
「ほほう」
「彼らは今まで、海のものを食べて生きて来たわけなのですよ。そんな魚が淡水のものを食してもと……そうは思いませんか?」
「なるほど……海のものを再現する、と」
メイジンの説明を受けながら、流はうんと一つ唸った。
とは言え、根拠も何もないのですがね……と変わらず頬を掻くメイジン。
「……お……お? き、来たぞっ!」
行ったそばから、塩振りの餌を投げ入れたダイン。
相変わらず投げ入れはヘタクソだったが、川の流れに乗ってその匂いと塩気を撒いた餌に対して、ぱくりと銀の肢体が食らいついていた。
「よっし! 初ゲット!」
初めてのキャッチに飛び上がって喜ぶダインだったが、「あんまり騒ぐと……」と仲間達に諌められ、はっと思い出したように口をつぐむ。
が、その手では何度も、ガッツポーズを繰り返していた。
「なるほどね、そういうカラクリが必要なわけだ」
そんな様子を観察していた琴音も、見様見真似で塩振り餌を針にくくりつけ、川へと投げ込んでみる。
そうすると、あれよと言う間につり上がる魚。
糸の先でビチビチと身をよじるその重みを手に受け、琴音はどこか関心するようにその姿を見つめた。
落ち着いた様子は相変わらずだが、その瞳にはどこか楽しくなって来たような輝きが、見て取れていた。
そんな時である。
がやがやとした子供の喧騒が、遠巻きに川沿いに響き渡った。
「何のさわぎなの……?」
「近くの村の子供たちですね。これはポイントを変えた方が良さそうだ」
絢音の問いに答えたメイジンは、テキパキと道具を片づけ始める。
「あ、お待ちください。よろしければ私もご一緒してよろしいでしょうか?」
そうして道具を肩に下げたメイジンに、セシルが一言、呼び止めていた。
「構いませんが、皆さんとご一緒で無くてよろしいので?」
「ふふふ、私、釣りには少し自信がありまして。獲物の大きさ辺りで一勝負、いかがですか?」
「なるほど。せっかくの出会いだ、たまにはそういうのも良いでしょう」
セシルの提案に乗ったメイジンは、そのまま少し下流のポイントへと彼女を案内して行く。
程なくして、その場に残ったハンター達の視界に、川へ一目散に駆け寄って来る子供たちの姿が映った。
「しーーーーっ!」
その姿を捉えるや否や、ミィリアがまるで威嚇する猫のように、口元に手を当てて彼らの騒ぎを制する。
「なんだよ、ねぇちゃんたち!」
川辺に陣取る大人たちを前に、困惑気味で声を荒げる子供たち。
「ああ、驚かせてすまないな。俺達、ここへ釣りに来ていてね」
ヴァイスは、にこりと優しい笑みを口元に浮かべながら、そう子供たちに声を掛ける。
「うぉ、ホントだ、すっげぇいっぱい居るぜ!」
川の中へと視線を向けた子供たちは、集まった魚たちを前に大はしゃぎ。
しかしながら、すぐにその騒ぎはヴァイスによって制された。
「遊び場を横取りしてゴメンな……そうだ、代りに川のもっと上の方に行ってみないか?」
「えー、でも、くまとか出るってかぁちゃん言ってたぜ!」
「くまなら、そのお兄さんがなんとかしちゃうでござるよ。それよりも、ものすーっごく珍しいのが今だけ見れちゃうかもしれないでござるよ?」
ミィリアがそう言うと、子供たちは興味深々の様子で目をらんらんと輝かせる。
「じゃあ、決まりだな! 行くぞ!」
そう、腕を上げて先頭を行くヴァイスに連れられて、子供たち上流を目指してゆくのだった。
「しかし、華やかな遊びは知らんくせに、こういうことばかり出来るものだ」
目の前の2本の竿の先を眺めながら、流は独り言ちるようにそう口にしていた。
ぴんと引いた一方の竿を見て、傍らのミィリアを呼ぶ。
呼ばれた彼女は待ってましたとばかりに竿に飛びつくと、そのまま慣れた手慣れた様子で魚を陸へと引き上げて見せた。
「流が言うその『華やかな~』とかよりもミィリアはこっちのがいいな。自然な感じで心地良いもの!」
針から外した魚を筒へと入れながら、ミィリアは、彼の独り言に答えるようにそう言った。
そして、どこか艶やかにも聞こえるトーンで、言葉を続ける。
「それに……ううん、何気ないことでも一緒にっていうだけで特別なものになっちゃうのかも」
「……そうだな。優越に浸るよりも、君と共に何がが出来るのが、ただ嬉しい」
そう、瞳を閉じて川のせせらぎに耳を澄ます流。
穏やかに流れる川のように、波風立たずに当たり前に隣に居る存在の尊さを、彼らは静かに感じ入っていた。
「――これが、オトナのカンケイなの。とっても勉強になるの」
「いやいやしかし、お嬢ちゃんには、まだ少し、早いでしょうな」
そんな二人の様子を瞳に映しながら、しみじみと呟く絢音に、鑑連が小さな笑みを返していた。
「おっ、ほうら見てみろよ。ローザフィッシュが卵を産んでるぞ」
子供を引き連れた上流にて、ヴァイスはそう言いながら、細い渓流となった川を指さす。
その先では、ちょうど岩陰に卵を産み付けている魚の姿があった。
「すげぇ、いっぱいだ!」
「この卵の中の何匹が、海に行って、また故郷へ帰ってこられるんだろうかな」
今目の前で卵を産むあの魚も、何万匹という仲間達の中で僅かに生き残り、今こうして人生の役目を全うしている。
「帰る場所を求めるのは……人間だけじゃ、無いんだものな」
それは誰に宛てた言葉なのか。
呟くヴァイスの隣で、次代の子供たちは貰ったチョコレート片手に楽しげな笑顔を浮かべながら、生命の神秘に心を躍らせていた。
「普段は海釣りなのですが、澄んだ水に、美しい流れ。川釣りは素晴らしいと思います」
メイジンと並んで糸を垂らしながら、不意にセシルがそう言葉を掛けた。
「私は海も好きですよ。海には懐の深さのようなものを感じます」
答えるメイジンに、セシルは笑顔で頷き返す。
と、その時、彼女の竿がぐんと大きくしなった。
引き寄せる糸の先には、おそらく今日一番の獲物ではないかと言う、まるまると太ったローザフィッシュ。
「おや、これは私の負けですかな」
そう、どこか悔しげに、それでも笑顔で頬を掻くメイジン。
セシルはひとしきり釣り上げた大物を眺めると、丁寧に針を外して、そのまま川へと魚を戻して行った。
「さ、お行きなさい。もう釣り上げられちゃだめよ?」
言いながら手を振るセシルは、くるりとメイジンに向き直ると、その日一番の笑顔を作ってみせた。
その後ろで、何かに答えるかように、ぴちゃりと1匹の魚が水面に撥ねていたのだった。
●初夏の味覚は
「皆~、お魚焼けたよ~!」
川原に香ばしい匂いが漂う。
火に当たった魚は、表面の皮目に綺麗な焼き色を付け、じゅうじゅうと染み出した油が景気の良い音を立てて、その食欲を掻き立てる。
「いただきま~す!」
誰から言ったわけでもなく、口を揃えてのその言葉に、皆は一斉に手に持った魚へとかぶりついていた。
「おいし~♪」
「ぁー、ハンターやっててよかった……」
その身を噛みしめるや否や、ルミとダインは感嘆の涙でも流しそうな勢いで点を仰ぎ、吐息を盛らす。
「これはなるほど、依頼にしてまで求められるのも分かります」
セシルもまた、感心したように笑みを浮かべながら、ほろりと骨から剥がれた身を味わった。
油の乗った身は、やや川魚的なタンパクな味わいであるものの、程よいとろみを持ち。何より弾ける皮目の油は、魚独特の生臭さが一切無く、その名の通り華やかな香りとなって喉の奥から鼻腔をくすぐる。
「がっつくのは良いが、骨の間まで綺麗に食べるんだぞ」
「はーい」
うまいうまい言いながらがっつく子供たちを前に、最後まで保護者然とするヴァイス。
「たべられるお魚はかわいそうだけど、あやねもたべないと死ぬの。だから『いただきます』……大切な言葉なの」
「ああ、そうだな」
彼らの円に交じって、魚を齧る絢音に、ヴァイスは頷き返す。
魚たちにとっては、歪虚も、自分たちも、もしかしたら同じように見えているのかもしれない。
だからこそ、大事にしなければならない感情が、自分たちにはあるのだろう。
「よかったら御結びを受け取ってくれるかな。コツを教えてくれた、お礼を兼ねてね」
「ありがとうございます。ではおひとつ」
琴音に差し出された握り飯を一つ掴んで、その口へと運ぶメイジン。
「魚に米。良い組み合わせだな。だが俺は……今日はこちらだ」
言いながら、流が取り出したのは1本の酒瓶。
「里心付きかねんと敬遠していたが、今日は特別だ」
「おお、清酒ですか」
その独特の香りに、鑑連の声も弾かれたように思わず上ずる。
「鑑連さんも良ければ。ミィリアも一献、付き合ってくれるな?」
「わ、貴重な日本のお酒……! えへ、やっぱりコレが一番かも! なんてっ♪」
焼き立ての肴を傍に、酌み交わされる小さな盃。
蒼も紅も関係なく、確かな人と命の輪が、そこには存在しているのだった。
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そうだんたく 佐藤 絢音(ka0552) 人間(リアルブルー)|10才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/05/17 09:40:03 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/16 08:18:31 |