ゲスト
(ka0000)
本気のケンカ求む
マスター:松尾京

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/05/16 19:00
- 完成日
- 2015/05/22 18:50
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●欠乏
蒸気工場都市フマーレ。
金属加工を営むその工場で――
定時からだいぶ遅れてようやく終業すると、工場長のハワードは息をついた。
「やっと終われるか。……まわりは連休取ってるところもあるってのに。うちはどうにもうまくまわらねえな」
まだ作業場に残り、あくびをしたり伸びをしたりしている工員を見る。
どこか、だらけた雰囲気だった。
工員が悪いわけではないのはわかっている。
どうにも最近、自分自身のモチベーションが低いのだ。
いや、わかっている。そもそも自分が工場を持てているだけ、まだよくやっている方だというのは。
●男の出自
ハワードは元々ポルトワールの生まれだ。
が、風光明媚な表の街ではなく、ダウンタウンの生まれの、荒くれ者である。
ハワードがダウンタウンにいた頃は、ケンカは日常茶飯事であった。何となく鬱屈した若者なりに、誰ともわからない男どもと殴り合って、今を生きている実感を得たりしていたものだった。
ただ、人並みに歳を取って行くにつれて、このままではいけないと、各地を流浪してフマーレで職を得た。
そうして必死に生きるうちに、血の気の多かった若者は一つの工場を持つまでになったのだ。
ハワードにとって、それはまちがいなく成長だと言えた。
が、ようやく人生に多少の余裕が出てきたところで、張り合いがなくなっているのは明らかだった。
いや、仕事は忙しいし、やることは山ほどある。張り合いという意味では少し、違った。
何というか、そう――血の気が足りない。
●それだ
ハワードは工員の男二人を何となく見つめた。
「お前ら、ちょっと殴り合ってみろ」
「え?」
「殴り合ってみろ。拳でな。しゅっ、しゅっ!」
工員は顔をしかめた。『またはじまったよ』という表情である。
ハワードは普段からめちゃくちゃな要求をしてくることがあって、そのエネルギーが工場を持つまでに至らしめたのだが……たまに本当に意味不明なこと言うので工員は困った。
工員はぽこぽこと殴り合った。
「全然ちがうわ! そんなんじゃないだろうがッ!」
ハワードが口角泡を飛ばすと工員は迷惑そうに見た。
「どうしろって言うんですか」
「こっちはガチを求めてるんだよ。本気でやってみろと言っている」
「そんなこと言っても、俺、人殴ったことなんかないし……女にビンタ張られたことはあるけど」
「ポール、お前何したんだよ……いや、女に叩かれたことは俺もあるが」
「うぐぐ。このもやしっこどもめ」
ハワードはうめいた。ただ、この若者らが何とくケンカのまねごとをしただけでも、少々沸き立つものはあった。
――本当に強い奴が、ガチでやり合ったら……。
治安の悪いダウンタウンで、男たちが何かを晴らそうと、殴り合っていたあの光景。それを手に汗握りながら眺めていたあのとき。
思い出して、ハワードはにわかに興奮する。
それはガラの悪い若者の、紛れもない青春であった。
……とはいえ、工場を持つ自分が暴力沙汰など、シャレにならない。
そこで思いついたことがあった。
●依頼
ハワードはポールに顎をしゃくった。
「はいそこ、ポール」
「何すか? 工場長」
「この界隈で一番、ケンカが強いのは誰だ?」
「工場長の奥さんですか?」
「違……くは、ないか……ええい、そうじゃない。もっと視野を広げて考えろ!」
「強い人って言ったら、ハンターでしょ」
もう一人の工員が言って、それだ、とハワードは頷いた。
「ひと舞台作ってハンター同士、戦ってもらおう。休日の奴も多いし、みんな集めて観戦だ!」
すると何だ何だと他の工員も集まってくる。話を聞くと、ポールを含め男たちは盛り上がった。
「ケンカ騒ぎはこの辺でもあるけど……ハンターが戦うなんて、面白そうですね」
「俺はそういうの大好きだぜ! 最近仕事仕事だったし、息抜きが欲しかったんだ!」
「広い場所を用意すれば、この地区のやつらはみんな集まるんじゃないか」
「早速準備だ!」
都合の良いことに、移転作業を終えたばかりで、今はほぼ空状態の倉庫が一つあった。広さはそこで充分だろう。
ハワードは期待を浮かべた。
「あとは、ここに来てくれるハンターを探すだけだな!」
そして――ハンターオフィスの画面にブン、と……『本気のケンカ求む』の文字列が躍った。
蒸気工場都市フマーレ。
金属加工を営むその工場で――
定時からだいぶ遅れてようやく終業すると、工場長のハワードは息をついた。
「やっと終われるか。……まわりは連休取ってるところもあるってのに。うちはどうにもうまくまわらねえな」
まだ作業場に残り、あくびをしたり伸びをしたりしている工員を見る。
どこか、だらけた雰囲気だった。
工員が悪いわけではないのはわかっている。
どうにも最近、自分自身のモチベーションが低いのだ。
いや、わかっている。そもそも自分が工場を持てているだけ、まだよくやっている方だというのは。
●男の出自
ハワードは元々ポルトワールの生まれだ。
が、風光明媚な表の街ではなく、ダウンタウンの生まれの、荒くれ者である。
ハワードがダウンタウンにいた頃は、ケンカは日常茶飯事であった。何となく鬱屈した若者なりに、誰ともわからない男どもと殴り合って、今を生きている実感を得たりしていたものだった。
ただ、人並みに歳を取って行くにつれて、このままではいけないと、各地を流浪してフマーレで職を得た。
そうして必死に生きるうちに、血の気の多かった若者は一つの工場を持つまでになったのだ。
ハワードにとって、それはまちがいなく成長だと言えた。
が、ようやく人生に多少の余裕が出てきたところで、張り合いがなくなっているのは明らかだった。
いや、仕事は忙しいし、やることは山ほどある。張り合いという意味では少し、違った。
何というか、そう――血の気が足りない。
●それだ
ハワードは工員の男二人を何となく見つめた。
「お前ら、ちょっと殴り合ってみろ」
「え?」
「殴り合ってみろ。拳でな。しゅっ、しゅっ!」
工員は顔をしかめた。『またはじまったよ』という表情である。
ハワードは普段からめちゃくちゃな要求をしてくることがあって、そのエネルギーが工場を持つまでに至らしめたのだが……たまに本当に意味不明なこと言うので工員は困った。
工員はぽこぽこと殴り合った。
「全然ちがうわ! そんなんじゃないだろうがッ!」
ハワードが口角泡を飛ばすと工員は迷惑そうに見た。
「どうしろって言うんですか」
「こっちはガチを求めてるんだよ。本気でやってみろと言っている」
「そんなこと言っても、俺、人殴ったことなんかないし……女にビンタ張られたことはあるけど」
「ポール、お前何したんだよ……いや、女に叩かれたことは俺もあるが」
「うぐぐ。このもやしっこどもめ」
ハワードはうめいた。ただ、この若者らが何とくケンカのまねごとをしただけでも、少々沸き立つものはあった。
――本当に強い奴が、ガチでやり合ったら……。
治安の悪いダウンタウンで、男たちが何かを晴らそうと、殴り合っていたあの光景。それを手に汗握りながら眺めていたあのとき。
思い出して、ハワードはにわかに興奮する。
それはガラの悪い若者の、紛れもない青春であった。
……とはいえ、工場を持つ自分が暴力沙汰など、シャレにならない。
そこで思いついたことがあった。
●依頼
ハワードはポールに顎をしゃくった。
「はいそこ、ポール」
「何すか? 工場長」
「この界隈で一番、ケンカが強いのは誰だ?」
「工場長の奥さんですか?」
「違……くは、ないか……ええい、そうじゃない。もっと視野を広げて考えろ!」
「強い人って言ったら、ハンターでしょ」
もう一人の工員が言って、それだ、とハワードは頷いた。
「ひと舞台作ってハンター同士、戦ってもらおう。休日の奴も多いし、みんな集めて観戦だ!」
すると何だ何だと他の工員も集まってくる。話を聞くと、ポールを含め男たちは盛り上がった。
「ケンカ騒ぎはこの辺でもあるけど……ハンターが戦うなんて、面白そうですね」
「俺はそういうの大好きだぜ! 最近仕事仕事だったし、息抜きが欲しかったんだ!」
「広い場所を用意すれば、この地区のやつらはみんな集まるんじゃないか」
「早速準備だ!」
都合の良いことに、移転作業を終えたばかりで、今はほぼ空状態の倉庫が一つあった。広さはそこで充分だろう。
ハワードは期待を浮かべた。
「あとは、ここに来てくれるハンターを探すだけだな!」
そして――ハンターオフィスの画面にブン、と……『本気のケンカ求む』の文字列が躍った。
リプレイ本文
●開幕
「お前らぁ、ハンター同士の戦いが見たいかぁ!」
エヴァンス・カルヴィ(ka0639)が拳を突き上げると、ウオォォ!と男たちの声が響いた。
倉庫の中は、活況の様相を呈していた。ハンターたちを、血に飢えた男たちは歓喜を持って出迎える。
今回、けがで不参加のエヴァンスは、盛り上げ役を買って出ていた。
「しかし、あんたの戦いも見たかったな! かなり、強そうだぜ」
ハンターを案内してきたハワードが言うと、エヴァンスは答えた。
「まあ、仕方ねえさ! 俺は今日、別口で会場を沸かせてやるぜ!」
そして、『それじゃあとびっきりのバトルを見せてやるぜぇ!』とさら客を熱くする。
ハワードが早速、という表情をすると、エヴァンスは頷いた。
「じゃあ、さっさとはじめるか? バトル、開幕だ」
●リカルドVSサントール
初戦。倉庫の中程に二人の戦士が立つと、場の期待感は最高潮となっていた。
板金で即席の卓を用意したエヴァンスが、声をあげる。
『実況はこの俺、歴戦の傭兵にしてハンター、エヴァンス・カルヴィがお届けするぜ! さあ、最初の対戦者は二人! まずは……“流水演武”リカルド=イージス=バルデラマ!』
その一人、リカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)は、かすかに肩をすくめて対面を見る。
「スパーリング大会というか、合同練習のような感じだろ? 俺は、ケンカは弱いからなぁ」
『――対するは、“絡みつく慚愧の鎖”サントール・アスカ!』
中距離でリカルドと向き合うサントール・アスカ(ka2820)は、それに答えた。
「変わった仕事ではあるね。俺も、人相手のケンカなんて久しぶりだな」
かすかに物思うような口調。二人の言葉は、戦いに対して控えでもある。だが――
(対人戦闘訓練だと考えるなら、そのように戦うだけだ)
覚醒と共に髪を白くし、瞳の色も変化させるリカルドは……戦意がないわけではなく。
「街でやってたケンカ、ハンター相手に通じるかな」
言って獣のような猫背となるサントールも、戦いを充分に楽しむつもりだった。
『近接系装備で固めたリカルドと、軽装だが銃を持つサントール。その活かし方が見所だな! 勝負――はじめ!』
エヴァンスが金属をカァン、と打ち鳴らすと――ケンカ開始だ。
わずかな瞬発力の差で――最初に動いたのは、サントールだ。さっと正面に拳銃を構える。
(まずは、ある程度削らせてもらうよ)
どうっ!と発砲。そして即座に床を蹴り、後退した。銃弾は、ばしっ!とリカルドの脚部に命中している。
おお、とどよめく聴衆だが――それで倒れるリカルドではない。
(痛い一撃――だからこそ、何度も喰らうわけにはいかないな)
リカルドは退かず、全力で、距離を詰めにかかった。
ごう、とひと息で接近する。が、それでも武器はぎりぎり、届かない。この点は、初期位置の差によるものとも言える。
サントールは瞬脚による移動で再び下がり……再度の銃撃。が、リカルドは、目を見開く。
(二回目なら――最初よりも、射線が読みやすい)
とっさに身を躱し、銃弾からそれた。
うおっ、と観衆の驚きが響くと同時、また全力で移動。とうとう、サントールに肉迫した。
サントールはリカルドの胴部を撃つ、が、リカルドも今度は攻撃に移った。
(何か、周りに吸収してもらうのもいいだろう)
犯罪組織で教えていた近接格闘――その片鱗を見せるように、足での打撃を見舞った。
がっ!と直撃。揺らいだサントールに、リカルドはもう一撃を加えようとするが――しゅうっ! それは空を裂く。
たっ、と降り立つサントール。マルチステップを駆使し、紙一重で打撃を避けていた。
『意表を突く打撃、だがサントールも華麗に避けたあっ!』
エヴァンスの実況に、一瞬の静寂の後、再び倉庫は熱狂した。
ここまで、ごく短時間。想像以上に激しく、巧みな戦いだ。ハワードも熱くなって拳を振り回している。
「ハンターってのは、すげえな、やっぱり!」
エヴァンスは笑った。
「これからもっと、面白くなるぜ。あいつら、格闘をやりたがってる」
リカルドとサントールは、しばし見合っていた。
「今のを躱されるとはな。かなりの動きだ」
「そっちこそ。武器に惑わされて、一瞬危なかったよ」
サントールは答えつつ――そのまま離れない。
互いににらみ合い――瞬間、はじまったのは格闘戦。
ずっ、と先に踏み込んだのはリカルド。再度バランスを崩す狙いで、殴打を放った。
どっ、とそれは体へヒット。サントールは、かすかに苦悶を浮かべる。武器での攻撃でないとはいえ、軽装のサントールには重い一撃だ。
が、追撃を狙うリカルドの一撃は、拳ではねのけられた。リカルドは再び蹴りを繰り出すが――
「そう何度も――喰らわないよっ!」
サントールはマテリアルを込め……ぶわっ、とアクロバティックに打撃を避けた。
リカルドの背後へ降り立つと、攻撃されるよりも早く、その腕を取って関節を固める。
『おおっと! サントールが繰り出したのは、何と関節技だぁ!』
エヴァンスの実況に、観客は声をあげる。リカルドは首だけ動かしてサントールを見た。
「こういう心得もあるのか。中々恐ろしいな」
「何、放蕩してたときの遊びだよ」
強力に締めつけると、リカルドはかすかに声を漏らした。
だが、筋力や器用さで言えば、リカルドもサントールに大きく劣らない。サントールが寝技へ持ち込もうとした一瞬、全力を込めて抜け出し、距離を取った。
「まだまだ――っ」
サントールは逃さず接近し、パンチ。どっ、とリカルドの体に直撃する。
「……くっ」
だがリカルドも、攻撃されっぱなしではない。サントールの腕を掴んで、投げるように床に落とす。
どん、と大音が響く。サントールはそれでも受け身を取っていたが――
(これ以上の接近戦は難しいか)
即座に判断し、距離を取って銃撃へ移る。ぼっ! ぼっ! と銃弾がリカルドを穿つ、だが。
複数の銃弾を耐え抜く防御と体力を、リカルドは持っていた。
再び距離が無くなったところで――リカルドは振動刀を構え、一閃。
ざんっ! 強烈な渾身撃が、サントールの体力を一気に奪った。
『――そこまでだ! 勝者はリカルドッ!』
立ち上がったサントールは、リカルドと握手した。
「楽しかった。いいケンカをさせてもらったよ」
「お互いにな。またいつか、やるか」
リカルドはそう答えた。
二人を、観客達は拍手を持って迎え入れた。
「今回はリカルドの攻撃力が戦況を分けたな。ただ、二人とも、強かったぜ」
エヴァンスのそんな感想に、ハワードは言った。
「何にせよ面白かったぜ! 俺は、殴り合いが見られて満足だ!」
●文太VSアンフィスVSフィーナ
本日最後の試合。その三人が登場すると、庫内は弾けんばかりの盛況となった。
男一人に女二人、という組み合わせも興味を引いていた。エヴァンスの声が響く。
『さあ、二試合目はバトルロイヤルだぜ! 最初の出場者は……“ハンター”冬樹文太!』
「エヴァンスの兄ちゃんは大仰やなぁ」
冬樹 文太(ka0124)は銃をもてあそびながら、『男なら負けるなー!』とか無責任な声を投げてくる観衆に適当に手を振っていた。
『二人目は、“名バッター”アンフィス!』
「楽しそうで、いいよね。倉庫内でケンカだもんね。そうこないとねっ♪」
対してアンフィス(ka3134)は両手を振って、声援を全身に受けていた。
『最後はこいつだ、“ちかよるなきけん”フィーナ・ウィンスレット!』
「こう丁寧に紹介されますと緊張してしまいますね」
フィーナ・ウィンスレット(ka3974)は明らかに緊張している声では無かったのだが……観客がそれに気付くよしはなく。ただその微笑みに魅了されていた。
卓から、エヴァンスとポールの会話が響く。
『白熱しそうなバトルだが。ポールはどう思う?』
『そうだな。銃を持った文太さんが有利な気もするけど。女子陣は……戦う姿が想像できないな』
『二人とも間違いなく、くせ者ではあるとは言えるな。ただじゃ倒れん』
「おや、くせ者とは失礼ですね。まあ、参加するからには穏便且つ平和的にぶち殺そうと思っていますが」
フィーナが言うと、横でアンフィスが愛犬パピィを脇に置き、キリッとした顔をした。
「彼はそこにいぬ……なんてね」
「いや、くせ者以外の何ものでもないやん……?」
文太が思わず突っ込んだところで、時間いっぱい。
初期位置についたあと――カァン、と戦闘の合図が打ち鳴らされた。
「ま、女だからって容赦せんし、かかってこいや」
バトル開始直後。にっ、と笑う文太。
アンフィスは場の中心、フィーナは南の廃材の付近。文太は東寄りに、その二人をにらんでいる状態だったが――
「では遠慮無く」
と、最初に行動したのはフィーナだ。廃材の山の裏に入り、見えなくなった。
廃材の山の一カ所から音がするので、文太は警戒しつつ接近する。
アンフィスは既に、廃材にだだだっ、と突進しはじめていた。
「近づいて殴る。それだけさ!」
山に近づくと、筋力充填。力を高めた上で、山の裏に突っ込んだ。
「てなわけでたけなわで! 覚悟ー!」
ぶん、とアンフィスは鎚を振り下ろす――が、がきっ!と床を打つだけ。
はっと気付くと、フィーナは山の上にいた。
音は、小さな廃材を投げて作ったブラフ。
「では死んでください」
どおぉっ! フィーナは機杖を突き出し、アンフィスに機導砲を放った。
だが、アンフィスは紙一重で避ける。さすがに、物音を不審に思い警戒していたのだ。
「失敗ですか」
フィーナも、ブラフは通信機器で行うのが理想だったが……魔導短伝話は通信にマテリアルを利用する関係上、遠隔で作動させておくことが出来ない。そして、トランシーバーはあいにく用意していない。
『うおっと、すさまじい光! だがアンフィスは、どうやら避けられたようだ!』
庫内は、機導砲の派手な見た目に沸いていた。
そして、姿を現したフィーナを文太は逃さない。
「機導師は面倒やからな。もうちょいおとなしくしててもらおか」
ばすっ、と威嚇射撃。その場にくぎ付けにした。
そこにアンフィスも上ってきて、フィーナへ反撃。ずん!とクラッシュブロウをたたき込んだ。
フィーナはしかし……倒れなかった。
笑みを浮かべたまま、二人に言う。
「やりましたね?」
フィーナはまた廃材の陰に飛び込んで隠れた。
全く見えなくなったので……アンフィスは、壁と廃材の間、東から走り込む。文太も、西から挟む狙いで近づいた。
「そっちも、せっかく参加したんやし、もっと実況せえよ!」
卓を向いて言う文太に、エヴァンスは返した。
『してるさ! それより、よそ見してるとひどい目に遭うぞ』
えっ、と文太が見ると……フィーナが出てきて、文太の目の前にいた。
にこりと笑うフィーナ。文太が拳銃を構えるより早く、エレクトリックショックを見舞った。
痺れて倒れた文太に対し――すっ、と片脚を上げる。
えっ? と文太が目を見開くと同時。フィーナは豪速で足を落とした。
「うぉおおっ!?」
ガツッ!! 文太が腰を引くと、一瞬前まで文太の股間があった位置を、フィーナのハイヒールが踏み抜いた。
「何すんねん!?」
「当然、股間を踏み抜こうとしました」
「色々おかしいやろ! 潰れたらどないすねん!」
「マテリアルヒーリングとかで元に戻るんじゃないですか。多分」
「適当か!」
痺れを押して逃げる文太。背後からアンフィスが現れると、フィーナもさっさと動く。
庫内は熱狂……と恐怖で、騒然としていた。
「ハンターの女性ってみんなああなの?」
内股になったポールに、エヴァンスは首を振った。
「自信を持って答えさせてもらおう――そんなことはない、と」
『――ともかくだ。予測不能のバトル、勝者は誰だ!?』
エヴァンスの実況がとどろく中――走るアンフィスがかち合ったのは、文太。
アンフィスはフィーナ狙いだが、一応は通りすがりなので鎚を振るった。
「えーい!」
「っと、当たらんで!」
痺れも回復し、文太は攻撃を躱す。普通の殴り殴られならば、やはり楽しかった。
銃で射撃し返すと、アンフィスは腕を振るった。
「あー! うら若き乙女を拳銃で撃つとか悪いんだー!?」
「今更や! こちとらもっとえらい目に遭うとこやったしな!」
アンフィスは、くっと苦しげになると……相棒を呼んだ。
「ピンチの時は――カモンパピィ!」
走ってくる犬を撫でると、アンフィスはキリッとした表情になる。
「ま、なんもないけどね」
「ないんかい!」
文太は心から突っ込んだ。
「彼はそこにいぬ……」
「それはさっき聞いたわ! ええ加減に、まじめにやれやボケぇッ!?」
文太は発砲しまくる。が、突っ込み根性による無駄撃ちで、アンフィスにダメージは無い。
その隙に、アンフィスは鎚で文太の顔面を殴打した。
「ぐおっ!?」
思いのほか、深い一撃。フィーナにやられた分もたたって……文太は前のめりに、ばたりと倒れた。
残ったのは二人。
フィーナとしては待ち望んだ状況ではあった、が――
(アンフィスさんが体力を回復したとなると、簡単ではありませんか)
彼女に機導砲は、ぎりぎり届かない。距離を詰めれば届くが、そうなると向こうからも近づきやすくなる。
アンフィスに機導砲を複数回耐えられたら、その間に確実に距離をゼロにされる――
と、先に突進したのはアンフィスだった。
「フィーナ殿! 今度こそ覚悟!」
フィーナはとっさに機導砲を発射。
だがアンフィスは案の定、倒れなかった。素早い反応で、何とかフィーナはもう一発を放つ。
アンフィスは、ぷすぷすと煙を上げつつも、それも耐えた。
ぶおん!とクラッシュブロウ。直撃を喰らって、フィーナは倒れた。
『そこまでだ! 勝者、アンフィス!』
●閉幕
それぞれ応急手当などを受けた後、こちらも、互いに握手した。
「勝ちはアンフィスの嬢ちゃんに持ってかれたか。女性はやっぱ、強いわ」
「ふっ。策士作曲……ってやつだね。でもみんな、強かったよー」
「少々の心残りも無くは無いですが。概ね、いい戦いでしたね」
フィーナの言葉には観客の男たちも恐々とするのだった。
「混戦だったな。今回は巡り巡って、素直な力技が功を奏したっぽかったが」
エヴァンスが言うと――ハワードがやってきて、皆に礼を言った。
「今日はありがとうな! 本当に、楽しかったぜ。久しぶりに、血湧き肉躍るって感覚を味わった!」
その顔には、是非またいつか見たい、という希望が浮かんでいた。
「いつでも呼んでくれよ。そのときは、俺も戦うぜ」
最後、エヴァンスは言って笑った。
それには皆も、同意するように頷く。
ハワードも笑って、伸びをした。
生きるための栄養を得たという満足げな表情が、そこには浮かんでいた。
「お前らぁ、ハンター同士の戦いが見たいかぁ!」
エヴァンス・カルヴィ(ka0639)が拳を突き上げると、ウオォォ!と男たちの声が響いた。
倉庫の中は、活況の様相を呈していた。ハンターたちを、血に飢えた男たちは歓喜を持って出迎える。
今回、けがで不参加のエヴァンスは、盛り上げ役を買って出ていた。
「しかし、あんたの戦いも見たかったな! かなり、強そうだぜ」
ハンターを案内してきたハワードが言うと、エヴァンスは答えた。
「まあ、仕方ねえさ! 俺は今日、別口で会場を沸かせてやるぜ!」
そして、『それじゃあとびっきりのバトルを見せてやるぜぇ!』とさら客を熱くする。
ハワードが早速、という表情をすると、エヴァンスは頷いた。
「じゃあ、さっさとはじめるか? バトル、開幕だ」
●リカルドVSサントール
初戦。倉庫の中程に二人の戦士が立つと、場の期待感は最高潮となっていた。
板金で即席の卓を用意したエヴァンスが、声をあげる。
『実況はこの俺、歴戦の傭兵にしてハンター、エヴァンス・カルヴィがお届けするぜ! さあ、最初の対戦者は二人! まずは……“流水演武”リカルド=イージス=バルデラマ!』
その一人、リカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)は、かすかに肩をすくめて対面を見る。
「スパーリング大会というか、合同練習のような感じだろ? 俺は、ケンカは弱いからなぁ」
『――対するは、“絡みつく慚愧の鎖”サントール・アスカ!』
中距離でリカルドと向き合うサントール・アスカ(ka2820)は、それに答えた。
「変わった仕事ではあるね。俺も、人相手のケンカなんて久しぶりだな」
かすかに物思うような口調。二人の言葉は、戦いに対して控えでもある。だが――
(対人戦闘訓練だと考えるなら、そのように戦うだけだ)
覚醒と共に髪を白くし、瞳の色も変化させるリカルドは……戦意がないわけではなく。
「街でやってたケンカ、ハンター相手に通じるかな」
言って獣のような猫背となるサントールも、戦いを充分に楽しむつもりだった。
『近接系装備で固めたリカルドと、軽装だが銃を持つサントール。その活かし方が見所だな! 勝負――はじめ!』
エヴァンスが金属をカァン、と打ち鳴らすと――ケンカ開始だ。
わずかな瞬発力の差で――最初に動いたのは、サントールだ。さっと正面に拳銃を構える。
(まずは、ある程度削らせてもらうよ)
どうっ!と発砲。そして即座に床を蹴り、後退した。銃弾は、ばしっ!とリカルドの脚部に命中している。
おお、とどよめく聴衆だが――それで倒れるリカルドではない。
(痛い一撃――だからこそ、何度も喰らうわけにはいかないな)
リカルドは退かず、全力で、距離を詰めにかかった。
ごう、とひと息で接近する。が、それでも武器はぎりぎり、届かない。この点は、初期位置の差によるものとも言える。
サントールは瞬脚による移動で再び下がり……再度の銃撃。が、リカルドは、目を見開く。
(二回目なら――最初よりも、射線が読みやすい)
とっさに身を躱し、銃弾からそれた。
うおっ、と観衆の驚きが響くと同時、また全力で移動。とうとう、サントールに肉迫した。
サントールはリカルドの胴部を撃つ、が、リカルドも今度は攻撃に移った。
(何か、周りに吸収してもらうのもいいだろう)
犯罪組織で教えていた近接格闘――その片鱗を見せるように、足での打撃を見舞った。
がっ!と直撃。揺らいだサントールに、リカルドはもう一撃を加えようとするが――しゅうっ! それは空を裂く。
たっ、と降り立つサントール。マルチステップを駆使し、紙一重で打撃を避けていた。
『意表を突く打撃、だがサントールも華麗に避けたあっ!』
エヴァンスの実況に、一瞬の静寂の後、再び倉庫は熱狂した。
ここまで、ごく短時間。想像以上に激しく、巧みな戦いだ。ハワードも熱くなって拳を振り回している。
「ハンターってのは、すげえな、やっぱり!」
エヴァンスは笑った。
「これからもっと、面白くなるぜ。あいつら、格闘をやりたがってる」
リカルドとサントールは、しばし見合っていた。
「今のを躱されるとはな。かなりの動きだ」
「そっちこそ。武器に惑わされて、一瞬危なかったよ」
サントールは答えつつ――そのまま離れない。
互いににらみ合い――瞬間、はじまったのは格闘戦。
ずっ、と先に踏み込んだのはリカルド。再度バランスを崩す狙いで、殴打を放った。
どっ、とそれは体へヒット。サントールは、かすかに苦悶を浮かべる。武器での攻撃でないとはいえ、軽装のサントールには重い一撃だ。
が、追撃を狙うリカルドの一撃は、拳ではねのけられた。リカルドは再び蹴りを繰り出すが――
「そう何度も――喰らわないよっ!」
サントールはマテリアルを込め……ぶわっ、とアクロバティックに打撃を避けた。
リカルドの背後へ降り立つと、攻撃されるよりも早く、その腕を取って関節を固める。
『おおっと! サントールが繰り出したのは、何と関節技だぁ!』
エヴァンスの実況に、観客は声をあげる。リカルドは首だけ動かしてサントールを見た。
「こういう心得もあるのか。中々恐ろしいな」
「何、放蕩してたときの遊びだよ」
強力に締めつけると、リカルドはかすかに声を漏らした。
だが、筋力や器用さで言えば、リカルドもサントールに大きく劣らない。サントールが寝技へ持ち込もうとした一瞬、全力を込めて抜け出し、距離を取った。
「まだまだ――っ」
サントールは逃さず接近し、パンチ。どっ、とリカルドの体に直撃する。
「……くっ」
だがリカルドも、攻撃されっぱなしではない。サントールの腕を掴んで、投げるように床に落とす。
どん、と大音が響く。サントールはそれでも受け身を取っていたが――
(これ以上の接近戦は難しいか)
即座に判断し、距離を取って銃撃へ移る。ぼっ! ぼっ! と銃弾がリカルドを穿つ、だが。
複数の銃弾を耐え抜く防御と体力を、リカルドは持っていた。
再び距離が無くなったところで――リカルドは振動刀を構え、一閃。
ざんっ! 強烈な渾身撃が、サントールの体力を一気に奪った。
『――そこまでだ! 勝者はリカルドッ!』
立ち上がったサントールは、リカルドと握手した。
「楽しかった。いいケンカをさせてもらったよ」
「お互いにな。またいつか、やるか」
リカルドはそう答えた。
二人を、観客達は拍手を持って迎え入れた。
「今回はリカルドの攻撃力が戦況を分けたな。ただ、二人とも、強かったぜ」
エヴァンスのそんな感想に、ハワードは言った。
「何にせよ面白かったぜ! 俺は、殴り合いが見られて満足だ!」
●文太VSアンフィスVSフィーナ
本日最後の試合。その三人が登場すると、庫内は弾けんばかりの盛況となった。
男一人に女二人、という組み合わせも興味を引いていた。エヴァンスの声が響く。
『さあ、二試合目はバトルロイヤルだぜ! 最初の出場者は……“ハンター”冬樹文太!』
「エヴァンスの兄ちゃんは大仰やなぁ」
冬樹 文太(ka0124)は銃をもてあそびながら、『男なら負けるなー!』とか無責任な声を投げてくる観衆に適当に手を振っていた。
『二人目は、“名バッター”アンフィス!』
「楽しそうで、いいよね。倉庫内でケンカだもんね。そうこないとねっ♪」
対してアンフィス(ka3134)は両手を振って、声援を全身に受けていた。
『最後はこいつだ、“ちかよるなきけん”フィーナ・ウィンスレット!』
「こう丁寧に紹介されますと緊張してしまいますね」
フィーナ・ウィンスレット(ka3974)は明らかに緊張している声では無かったのだが……観客がそれに気付くよしはなく。ただその微笑みに魅了されていた。
卓から、エヴァンスとポールの会話が響く。
『白熱しそうなバトルだが。ポールはどう思う?』
『そうだな。銃を持った文太さんが有利な気もするけど。女子陣は……戦う姿が想像できないな』
『二人とも間違いなく、くせ者ではあるとは言えるな。ただじゃ倒れん』
「おや、くせ者とは失礼ですね。まあ、参加するからには穏便且つ平和的にぶち殺そうと思っていますが」
フィーナが言うと、横でアンフィスが愛犬パピィを脇に置き、キリッとした顔をした。
「彼はそこにいぬ……なんてね」
「いや、くせ者以外の何ものでもないやん……?」
文太が思わず突っ込んだところで、時間いっぱい。
初期位置についたあと――カァン、と戦闘の合図が打ち鳴らされた。
「ま、女だからって容赦せんし、かかってこいや」
バトル開始直後。にっ、と笑う文太。
アンフィスは場の中心、フィーナは南の廃材の付近。文太は東寄りに、その二人をにらんでいる状態だったが――
「では遠慮無く」
と、最初に行動したのはフィーナだ。廃材の山の裏に入り、見えなくなった。
廃材の山の一カ所から音がするので、文太は警戒しつつ接近する。
アンフィスは既に、廃材にだだだっ、と突進しはじめていた。
「近づいて殴る。それだけさ!」
山に近づくと、筋力充填。力を高めた上で、山の裏に突っ込んだ。
「てなわけでたけなわで! 覚悟ー!」
ぶん、とアンフィスは鎚を振り下ろす――が、がきっ!と床を打つだけ。
はっと気付くと、フィーナは山の上にいた。
音は、小さな廃材を投げて作ったブラフ。
「では死んでください」
どおぉっ! フィーナは機杖を突き出し、アンフィスに機導砲を放った。
だが、アンフィスは紙一重で避ける。さすがに、物音を不審に思い警戒していたのだ。
「失敗ですか」
フィーナも、ブラフは通信機器で行うのが理想だったが……魔導短伝話は通信にマテリアルを利用する関係上、遠隔で作動させておくことが出来ない。そして、トランシーバーはあいにく用意していない。
『うおっと、すさまじい光! だがアンフィスは、どうやら避けられたようだ!』
庫内は、機導砲の派手な見た目に沸いていた。
そして、姿を現したフィーナを文太は逃さない。
「機導師は面倒やからな。もうちょいおとなしくしててもらおか」
ばすっ、と威嚇射撃。その場にくぎ付けにした。
そこにアンフィスも上ってきて、フィーナへ反撃。ずん!とクラッシュブロウをたたき込んだ。
フィーナはしかし……倒れなかった。
笑みを浮かべたまま、二人に言う。
「やりましたね?」
フィーナはまた廃材の陰に飛び込んで隠れた。
全く見えなくなったので……アンフィスは、壁と廃材の間、東から走り込む。文太も、西から挟む狙いで近づいた。
「そっちも、せっかく参加したんやし、もっと実況せえよ!」
卓を向いて言う文太に、エヴァンスは返した。
『してるさ! それより、よそ見してるとひどい目に遭うぞ』
えっ、と文太が見ると……フィーナが出てきて、文太の目の前にいた。
にこりと笑うフィーナ。文太が拳銃を構えるより早く、エレクトリックショックを見舞った。
痺れて倒れた文太に対し――すっ、と片脚を上げる。
えっ? と文太が目を見開くと同時。フィーナは豪速で足を落とした。
「うぉおおっ!?」
ガツッ!! 文太が腰を引くと、一瞬前まで文太の股間があった位置を、フィーナのハイヒールが踏み抜いた。
「何すんねん!?」
「当然、股間を踏み抜こうとしました」
「色々おかしいやろ! 潰れたらどないすねん!」
「マテリアルヒーリングとかで元に戻るんじゃないですか。多分」
「適当か!」
痺れを押して逃げる文太。背後からアンフィスが現れると、フィーナもさっさと動く。
庫内は熱狂……と恐怖で、騒然としていた。
「ハンターの女性ってみんなああなの?」
内股になったポールに、エヴァンスは首を振った。
「自信を持って答えさせてもらおう――そんなことはない、と」
『――ともかくだ。予測不能のバトル、勝者は誰だ!?』
エヴァンスの実況がとどろく中――走るアンフィスがかち合ったのは、文太。
アンフィスはフィーナ狙いだが、一応は通りすがりなので鎚を振るった。
「えーい!」
「っと、当たらんで!」
痺れも回復し、文太は攻撃を躱す。普通の殴り殴られならば、やはり楽しかった。
銃で射撃し返すと、アンフィスは腕を振るった。
「あー! うら若き乙女を拳銃で撃つとか悪いんだー!?」
「今更や! こちとらもっとえらい目に遭うとこやったしな!」
アンフィスは、くっと苦しげになると……相棒を呼んだ。
「ピンチの時は――カモンパピィ!」
走ってくる犬を撫でると、アンフィスはキリッとした表情になる。
「ま、なんもないけどね」
「ないんかい!」
文太は心から突っ込んだ。
「彼はそこにいぬ……」
「それはさっき聞いたわ! ええ加減に、まじめにやれやボケぇッ!?」
文太は発砲しまくる。が、突っ込み根性による無駄撃ちで、アンフィスにダメージは無い。
その隙に、アンフィスは鎚で文太の顔面を殴打した。
「ぐおっ!?」
思いのほか、深い一撃。フィーナにやられた分もたたって……文太は前のめりに、ばたりと倒れた。
残ったのは二人。
フィーナとしては待ち望んだ状況ではあった、が――
(アンフィスさんが体力を回復したとなると、簡単ではありませんか)
彼女に機導砲は、ぎりぎり届かない。距離を詰めれば届くが、そうなると向こうからも近づきやすくなる。
アンフィスに機導砲を複数回耐えられたら、その間に確実に距離をゼロにされる――
と、先に突進したのはアンフィスだった。
「フィーナ殿! 今度こそ覚悟!」
フィーナはとっさに機導砲を発射。
だがアンフィスは案の定、倒れなかった。素早い反応で、何とかフィーナはもう一発を放つ。
アンフィスは、ぷすぷすと煙を上げつつも、それも耐えた。
ぶおん!とクラッシュブロウ。直撃を喰らって、フィーナは倒れた。
『そこまでだ! 勝者、アンフィス!』
●閉幕
それぞれ応急手当などを受けた後、こちらも、互いに握手した。
「勝ちはアンフィスの嬢ちゃんに持ってかれたか。女性はやっぱ、強いわ」
「ふっ。策士作曲……ってやつだね。でもみんな、強かったよー」
「少々の心残りも無くは無いですが。概ね、いい戦いでしたね」
フィーナの言葉には観客の男たちも恐々とするのだった。
「混戦だったな。今回は巡り巡って、素直な力技が功を奏したっぽかったが」
エヴァンスが言うと――ハワードがやってきて、皆に礼を言った。
「今日はありがとうな! 本当に、楽しかったぜ。久しぶりに、血湧き肉躍るって感覚を味わった!」
その顔には、是非またいつか見たい、という希望が浮かんでいた。
「いつでも呼んでくれよ。そのときは、俺も戦うぜ」
最後、エヴァンスは言って笑った。
それには皆も、同意するように頷く。
ハワードも笑って、伸びをした。
生きるための栄養を得たという満足げな表情が、そこには浮かんでいた。
依頼結果
参加者一覧
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/12 02:30:59 |
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相談用 サントール・アスカ(ka2820) 人間(クリムゾンウェスト)|25才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/05/16 15:27:12 |