ゲスト
(ka0000)
【聖呪】薬草園の主、ゴブリン退治を依頼す
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/05/20 22:00
- 完成日
- 2015/05/25 20:05
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●薬草園
薬草園の荒れ方を見て、眉間により深い皺を刻むジャイルズ・バルネ。
わりと平穏かつ、薬草の育成がしやすいグラズヘイム王国北東寄りの町に住み早十年。
運が良かったのか、このような事態はこれまでなかった。
薬草園は町の外であり、自主的に作った塀が唯一の侵入者を防御する物品。その塀だって土地を区切る印以外の意味をなさないほど、簡素なものである。
薬草園では鶏とヤギも飼っていたが、狼や狐に取られたこともない。ジャイルズも作業場にこもって生活していても、危険を感じたことがなかった。
作業もひと段落している今は、町の中の家に帰っていた。日中は世話をしにやってくる毎日であった。
だからこそジャイルズ自身は被害がなかった。
ジャイルズがいなかったから被害が出たのかもしれない。人気がないと判断されて。
被害は3羽の鶏と2頭のヤギだ。
一部踏みあられされた薬草たち。
小屋の周りを見ると二足歩行している足跡がある。人間のものに近く、人間のものではない。形状からジャイルズは推測する。
手には猟銃を持ち、足跡を追いかける。薬草園の脇の道を横切った先にある林に続いているようだ。足跡を途中で見失い、危険だと判断して戻ってくる。
「ゴブリンが住み着いた?」
町の状況はどうだろうかと、情報を求めて顔役でもある司祭に会いに行くことにした。
●教会
礼拝の時間ではなかったので、司祭を捕まえるのは簡単だった。
ダイニングで椅子を勧められ、茶も用意される。
「どうしたんですか、ジャイルズさん」
「マーク司祭、最近町でのゴブリンの被害は聞いたことあるか?」
「え? まだ私の耳には入っていませんよ?」
畑や林、街道での被害をマークは思い出そうとする。国全体の情報を思い浮かべるが、現状手元に情報はない。
「なら、隣の魔術師は」
「マーナは特に何も言ってませんが……先週帰ってきたとき」
教会の隣に住む魔術師マーナはマークの友人であり、弟子をおいて旅に出るくせがある。彼女からの情報が入っていることもジャイルズは多少期待していた。
なお、魔術師の弟子は時々、薬草園を勉強も兼ね手伝いに顔を出す。
「そうか……」
ジャイルズは腕を組むと思案する。情報源としてマーク司祭は大して役に立たなかった。
「領主に頼むより、自らハンターを雇った方が早いな」
「まあ、状況や交渉によると思いますが」
領主は比較的まじめに仕事はしてくれるが、行動が早いとは言えない。懐に余裕があれば後から請求する方が確実で安心である。
「行ってくる」
「え?」
説明もないため、マークが慌てる。
「ゴブリンが薬草園で飼っていたヤギと鶏を持って行ったんだ。その上、薬草を踏みつけ、枝を折り……」
「はい?」
マークは声が裏返る。ジャイルズの尋ねていたことが非常に身近な話だとようやく気付いた。
「それ、結構危険じゃないですか? 薬草園と言ったら街道の側ですし、町の人も行く林の側ですよ?」
「だから、司祭の話を聞きに来たんだ。もし他にもあるなら、こちらも便乗しようと考えた。ないなら、私が自らいかねばならないだろう?」
「あ、ええ、そうですか」
気さくな司祭は町人に好かれているため、皆気軽に情報を置いていく。本人が望まなくても。
ジャイルズという人間は、結構合理的である。仏頂面が基本だから、近づきがたいが結構全体を見てくれる親切な人物だとマークは知っている。
「町の奴にはあんたが言っておいてくれ」
「どこのあたりが危険ですか?」
「たぶん、裏手にある洞窟じゃないかと?」
推測しかない。ただ、何か住み着くにしてもあの洞窟くらいしか思いつかないのはマークも同じだった。
家を建てるような生き物であればまた話は変わってくるが。
「分かりました」
ジャイルズは馬にまたがるとハンターズソサエティのある隣町に急いだ。
残された司祭は、町はずれに走って行く子らを見つけて、あわてて止めに入った。
薬草園の荒れ方を見て、眉間により深い皺を刻むジャイルズ・バルネ。
わりと平穏かつ、薬草の育成がしやすいグラズヘイム王国北東寄りの町に住み早十年。
運が良かったのか、このような事態はこれまでなかった。
薬草園は町の外であり、自主的に作った塀が唯一の侵入者を防御する物品。その塀だって土地を区切る印以外の意味をなさないほど、簡素なものである。
薬草園では鶏とヤギも飼っていたが、狼や狐に取られたこともない。ジャイルズも作業場にこもって生活していても、危険を感じたことがなかった。
作業もひと段落している今は、町の中の家に帰っていた。日中は世話をしにやってくる毎日であった。
だからこそジャイルズ自身は被害がなかった。
ジャイルズがいなかったから被害が出たのかもしれない。人気がないと判断されて。
被害は3羽の鶏と2頭のヤギだ。
一部踏みあられされた薬草たち。
小屋の周りを見ると二足歩行している足跡がある。人間のものに近く、人間のものではない。形状からジャイルズは推測する。
手には猟銃を持ち、足跡を追いかける。薬草園の脇の道を横切った先にある林に続いているようだ。足跡を途中で見失い、危険だと判断して戻ってくる。
「ゴブリンが住み着いた?」
町の状況はどうだろうかと、情報を求めて顔役でもある司祭に会いに行くことにした。
●教会
礼拝の時間ではなかったので、司祭を捕まえるのは簡単だった。
ダイニングで椅子を勧められ、茶も用意される。
「どうしたんですか、ジャイルズさん」
「マーク司祭、最近町でのゴブリンの被害は聞いたことあるか?」
「え? まだ私の耳には入っていませんよ?」
畑や林、街道での被害をマークは思い出そうとする。国全体の情報を思い浮かべるが、現状手元に情報はない。
「なら、隣の魔術師は」
「マーナは特に何も言ってませんが……先週帰ってきたとき」
教会の隣に住む魔術師マーナはマークの友人であり、弟子をおいて旅に出るくせがある。彼女からの情報が入っていることもジャイルズは多少期待していた。
なお、魔術師の弟子は時々、薬草園を勉強も兼ね手伝いに顔を出す。
「そうか……」
ジャイルズは腕を組むと思案する。情報源としてマーク司祭は大して役に立たなかった。
「領主に頼むより、自らハンターを雇った方が早いな」
「まあ、状況や交渉によると思いますが」
領主は比較的まじめに仕事はしてくれるが、行動が早いとは言えない。懐に余裕があれば後から請求する方が確実で安心である。
「行ってくる」
「え?」
説明もないため、マークが慌てる。
「ゴブリンが薬草園で飼っていたヤギと鶏を持って行ったんだ。その上、薬草を踏みつけ、枝を折り……」
「はい?」
マークは声が裏返る。ジャイルズの尋ねていたことが非常に身近な話だとようやく気付いた。
「それ、結構危険じゃないですか? 薬草園と言ったら街道の側ですし、町の人も行く林の側ですよ?」
「だから、司祭の話を聞きに来たんだ。もし他にもあるなら、こちらも便乗しようと考えた。ないなら、私が自らいかねばならないだろう?」
「あ、ええ、そうですか」
気さくな司祭は町人に好かれているため、皆気軽に情報を置いていく。本人が望まなくても。
ジャイルズという人間は、結構合理的である。仏頂面が基本だから、近づきがたいが結構全体を見てくれる親切な人物だとマークは知っている。
「町の奴にはあんたが言っておいてくれ」
「どこのあたりが危険ですか?」
「たぶん、裏手にある洞窟じゃないかと?」
推測しかない。ただ、何か住み着くにしてもあの洞窟くらいしか思いつかないのはマークも同じだった。
家を建てるような生き物であればまた話は変わってくるが。
「分かりました」
ジャイルズは馬にまたがるとハンターズソサエティのある隣町に急いだ。
残された司祭は、町はずれに走って行く子らを見つけて、あわてて止めに入った。
リプレイ本文
●到着
ハンターズソサエティの支部を出て、平和そうな町にハンターたちは安堵する。これを守るのが仕事だと考えると身も引き締まる。
「みなさん、よろしく。それにしても、アティとネア姉さんと初めての依頼って嬉しいことだな」
今回の仕事仲間にあいさつしつつ、ヘルヴェル(ka4784)は自然と笑みが浮かんだ。
「気は抜いちゃだめよ」
アティニュス(ka4735)は困ったような笑みを見せる。
「人里近くにゴブリンだ。それは不安だろうからね」
ネーナ・ドラッケン(ka4376)がうなずく。
「この地域でゴブリンがらみって珍しいんだよね」
アルテア・A・コートフィールド(ka2553)は事前に調べた情報を元に眉をしかめる。
「薬草園を襲うのって食糧確保のためでしょうか?」
エリス・カルディコット(ka2572)は実際の位置を見ないと分からないと首をかしげる。
「きちんと退治しておかないとヤギや鶏だけではすまなくなるかもしれないからな。早々に駆除することにしようぜ」
Anbar(ka4037)に促され、現場がある隣町に移動することになるが……。
「男は俺とあんただけか」
ポツリつぶやいたのを聞き、アルテアはむっとして抗議する。
「僕のどこが男だっていうんだ!」
「あ、いや……ほら……」
ボーイッシュな少女にやり込められた少年の姿は、微笑ましい。
(私のほうが、男なんですけどね。女性ばかりに一人男っていうのも緊張しますしね、Anbar様、これでなじめました)
苦笑しつつエリスは心の中でつぶやき、応援する。見た目のままではないとあえて言う必要はないので黙っている。
「ハンターに男も女もないだろ! お互いのことわかったし、いいことづくめのけんかだよ」
ネーナはにこやかにまとめた。今回の仕事こそ、男だろうが女だろうが関係ない。力と連携が物を言うのだから。
移動中、状況確認、互いの攻撃の特徴等、仕事をこなす上で必要なことを話すとき、すでに打ち解けいた。
薬草園は町のはずれの、街道と林が入り混じる地域にある。そのためソサエティ支部がある町からだと、小さい町の中を抜けることとなる。
川が走り、町がある。川に沿う形で畑が多くあり、耕す人の姿もある。
ゴブリンが住み着いたとはいえ、まだ大事になっていないのははっきりした。
ハンターたちが町の中を移動していると、子供たちと出会う。「これであっちにいけるようになるよ」ということを異口同音に話しながら、嬉しそうにどこかに走り去った。
薬草園にたどり着くと、壊れた部分を直しているジャイルズがいた。作業を中断してハンターたちを迎える。
「こんにちは、ハンターオフィスから来た者だ」
ヘルヴェルが元気よく告げると、むすっとした顔のジャイルズはうなずいた。
「場所は分かるはずだ。そこの林、道が見えるだろう。入って行けば、後は道なりだ」
なぜここが狙われたのか、エリスは疑問に思っていたが、ここが一番近い食料調達ポイントなのだ。高い壁があるわけでもないため、入り込みやすい。
「あんた、危ないと分かっていてここにいるのか?」
Anbarが尋ねるとジャイルズはふんと鼻で笑う。
「日中から出てくるようだったら、もうおしまいだろう」
「確かにな」
ゴブリンたちが日中から人間の集落に攻めてくるならば、相当の数がいるか大きな存在が背後にいると考えられる。ゴブリンだってばかではないから不用意に生活の境界をまたがない。
時々その境界を踏み越え、今回のような事件が起こる。
「この辺ってゴブリンの住まいとかってあったの?」
アルテアの質問にジャイルズは首を横に振った。
「もちろんすべてを知っているわけではないが、この近辺はないと言っていい」
そんなものがあったら、薬草園が厳重な設備になっていた可能性はある。子供たちだって自由に走り回れない。
「薬草園が踏み荒らされたとも聞きましたが?」
「まあ、ヤギたちが逃げれば……心配し過ぎだ」
「そうですか! そうですよね」
ジャイルズはエリスの心配を解くように、眉間のしわを浅くした。言われて薬草園を見ると、確かに建物の近くが荒れたような感じであった。
薬草園にて戦闘の準備をしておく。場所もあり、安全が確保されている。
ヘルヴェルはハンディライトを腰に付けた。戦闘になったとき、両手は必要であり、洞窟の中を知るには必要だ。ネーナは片手が開く武器なので、ライトは手に持つ。
それ以外の者も、武器やアイテムの最終確認をした。
「ヤギたち生きているかもしれないし、救助と参りましょうか」
アティニュスにネーナがうなずいた。
●偵察
林の中の道は分かりやすく、迷わない。襲撃に用心し、音もたてないように進む。
道があっているのは、時折上がる悲しげなヤギの声が教えてくれる。コボルドたちのそわそわするような動きもだんだん伝わってくる。目の前に御馳走がある状態だろうか。
コボルドの影が見えたところで、一行は止まった。
アティニュスとエリスが静かに動く、洞窟前の広場をそれぞれ左右に回り込む形で。アティニュスはヤギの状況を、エリスは攻撃するための場所の確保の意味があった。
アティニュスは離れたところから音に気をつけつつ回り込む。
広場の四隅にコボルドは配置されているようだ。そして、洞窟の前にヤギがおり、鳴いている。できれば、戦いが起こる前に連れて帰りたい。
(助けてと言われてるみたいね)
ヤギの鳴き声に気を取られた瞬間、枝を踏んだ音が響いた。
アティニュスははっとして足を止め、武器に手を掛け様子をうかがう。ヤギの近くにいるコボルドが向かってくるのが分かった。
アティニュスは仕込み傘から刃を抜いてコボルドを攻撃した。
●攻撃
コボルドが動いたのは待機していた者たちも分かった。
ネーナとAnbarが一番手前にいるコボルドに攻撃を仕掛ける。一体は倒し損ねるが、続いてたヘルヴェルが倒す。
「犬は好きなんだけどな、仕方がない、ねッ」
アルテアはつぶやき移動して、少し視界が開けた瞬間、洞窟近くにいるコボルドに銃弾を叩きこむ。
エリスも移動した先で、洞窟近くのコボルドを一体倒す。技を使って一掃するには敵は散開していた。
残った一体のコボルドが吠えた、警告のために。
ゴブリンが数体出てくる。石の、原始的な武器を手に状況を把握しようときょろきょろしている。
「でめぇえぇぇえぇ」
やけっぱちのようなヤギの悲鳴が上がる。
アティニュスはヤギを戦場となる広場から引き離したかった。仲間の動きを見て、一時戦線離脱しても何とかなると判断する。
「よしっ」
アティニュスは刃を仕舞い、ヤギに声を掛ける。
「おいで、こっちだよ」
ヤギは警戒しているが、ゴブリンも怖い、林に逃げるかとうろうろしている。人間に慣れているためか、アティニュスの方に足を踏み出した。
この間にネーナが残り一体のコボルドを倒した。
「俺が『道』を切り開くから、こぼれたのを頼むぜ」
Anbarが闘志を高め、正面から広場に飛び出す。この大音声は敵を引き付けるし、味方に対しても行動方針となる。
敵の数はおおよそだ、洞窟の広さを考えての。技を温存しつつも、確実に仕留めていくしかない。
銃撃しているアルテアとエリスは、ゴブリンを確実に攻撃する。
ヘルヴェルはヤギを広場から逃そうとしているアティニュスを助ける為、武器を構えつつ回り込んで近づいた。
ゴブリンたちは飛び出してきたAnbarに向かう。
ネーナはヤギとゴブリンの間に入った。その近くにヘルヴェルが茂みから飛び出し、ゴブリンに攻撃した。
「いい子だからこっち、こっち」
その横でアティニュスが必死にヤギを誘導する。
Anbarが目の前にいるゴブリンを攻撃し、アルテアがとどめを刺した。
エリスは範囲攻撃を考えるが、広場にいるのは二体という微妙さから、一体への攻撃にする。無駄な弾を使う必要はない。
洞窟内から弓と魔法の攻撃をゴブリン達が行ってきた。Anbarとネーナに弓と魔法が当たる。耐えられないものではなかったが、何度も続くと危険ではある。遠距離攻撃してくる者を倒したいところだが、手に武器を持ったゴブリンが現れ行く手を遮る。
確実に葬って行かねばならない。
「ここから本番だな!」
近くに来たゴブリンをネーナは切りつけ、踊るように一度離れる。
「たあぁ!」
そのゴブリンに対し、ヘルヴェルがとどめと棍を振り下ろした。
アルテアは機導砲を撃つ。防御魔法も視野に入れた方がいいなと状況を見る。
Anbarは斧を持ったゴブリンに対し、祖霊の力を借りた強い一撃を繰り出す。
エリスは密集している敵を狙い、マテリアルを活性化さえた攻撃を加える。銃弾は雨のように敵に降り注いだ。
「何匹いるか分かりません。皆様、油断をなさらぬように」
範囲攻撃だって何度もできるものではない。慎重に確実に。
「無論だ」
Anbarが応じて、敵ににらみを利かせる。
ゴブリンを逃がすつもりはないのは一同共通の考えだ。
さて、ようやくヤギは広場から出て、茂みに隠れて行った。
「ここでじっとしていてね。……私も戦うわよ!」
アティニュスがヤギに話しかけた後、武器を抜いて広場に出る。
ネーナとヘルヴェルが「待ってました」と目で言った。
義姉妹という縁を持つネーナ、アティニュス、ヘルヴェルは連携のとれた動きをとる。動きを翻弄するネーナと真っ直ぐ対峙するヘルヴェル。舞うように動きを阻害し間隙を突くアティニュス。確実に、一体一体を倒す。仲間全体を見ることを忘れることはない。
もちろん、アルテア、エリス、Anbarは役割を持ちつつ敵を減らしていく。敵が逃げるのを阻むAnbar、攻守を考え魔法と武器を使うアルテアは。エリスは範囲攻撃が不要となってからは素早く的確にゴブリンを撃ち葬っていく。
それぞれの連携が、全体の連携につながる。
最終的には6人一丸となり、洞窟にいたすべてのゴブリン達を撃破した。
●洞窟の中は?
洞窟からの攻撃がなくなってから、ライトを片手に中を確認する。
中に隠れている者もなく、食べ散らかしたをはじめとした生活臭があるだけだった。
武器や荷物から、敵はいないとネーナは判断した。
「アティ、あたしは疲れた、癒してくれ~」
ヘルヴェルはアティニュスに抱きつき甘える。
アティニュスはニコリしとしながら、ヘルヴェルをポンポンと優しくたたく。ぬくもりと心音……いずれをとっても安堵につながる心地よさだ。
洞窟の中には生きている動物はいなかった。もう一匹いたかもしれないヤギ、鶏の残骸はゴミ捨て場となっているらしい一画にあった。
「あのヤギは運が良かったのね……」
「そうみたいだな」
アティニュスにネーナが相槌を打った。
「ウサギか何かの小動物の骨か……」
Anbarは落ちている骨の形状から判断する。
「生活していた……だけで特に何もなさそうだね」
アルテアは眉間にしわが寄る。本当にそれだけかと疑ってかかるが、目の前の状況はシンプルに考えて良いと言っている。
「ええ、私もいろいろ疑いました」
エリスも同意して苦笑する。生きたままヤギを連れて来た事だって、ここで仲間と食べるだけだったと考えると、考え過ぎたと思える。
不穏な動きをあちこちで感じているため、現実を見ても楽観できなかった。まだ何かあるかもしれない、と。
「あの、動物たちは埋めてあげませんか……」
アティニュスは自然の摂理と考えても、身近な生き物が不慮の事故に巻き込まれると悲しい気持ちになる。
一同は食糧とされた動物たちを、土に埋めて洞窟を後にした。
「帰るぞ」
ネーナが広場の外を見ると、ちょっと遠くの灌木で白い影が「めぇ」と鳴いた。
アティニュスは走っていって、ヤギを誘導し始めた。ヤギは震えているが、ゆっくりと歩き始めた。
帰り道、ヘルヴィナは荷物から飴を取り出すと、自分の口、ネーナとアティニュスの口にも放り込む。
「甘い物は疲れを癒すからな! 皆もどうぞ!」
勧められた方もうなずきながら遠慮はしなかった。戦いが無事終わり、一息つきたい。
●薬草園
報告のために来たハンターたちを見て、ジャイルズは話を促す。ジャイルズは渋面であるが、安堵している様子をうかがわせる。
アティニュスに引かれてヤギはジャイルズに引き渡された。ヤギは薬草園に入ると、きょろきょろして歩き出す。
「ゴブリン、コボルド合わせて26匹……結構住み着いてた」
「まあ、それ以上は住まないと思うが厄介だな」
Anbarの言葉を聞き、ジャイルズは腕を組んでうなずいた。
「特に盗まれたものもないか? 生物以外、洞窟にそれらしいものはなかったけど一応確認」
「ああ、ない。それにしても、ヤギが残ったのは単純に運が良かったんだろう」
ネーナはうなずきながら、連れてきたヤギを見た。
「コボルドたち、ヤギによだれ垂らしてたから」
一歩遅いと悲鳴が聞こえた危険もあったのかとヘルヴェルは耳をふさぐ。
「洞窟、何か活用手段がない限りは同じことがあり得ます。埋めるべきかと……」
アティニュスの提案にジャイルズも同意し、町には報告すると言う。
「薬草園が襲われることがないといいですね……」
エリスはさわやかな香りが漂う園庭を見る。花も咲いているものがあり、春から初夏の雰囲気が漂う。
「畑と一緒で、城壁の中は無理だからな」
ジャイルズは仕方がないと苦笑する。鉢植えで育てられるものは限度がある。
「手早く片付けてくれて助かった」
ジャイルズは淡々と礼を述べた。
「今後も何かあればハンターオフィスまでご連絡を」
アルテアの言葉に、ジャイルズはうなずいた。
ハンターが立ち去った後、眉間のしわを深くジャイルズは溜息を洩らした。薬草園を守る手立てを考えないとならない。
帰ってきたヤギは震えていたが、いつもの所で草をはみ始め「めぇ」と鳴いた。
ハンターズソサエティの支部を出て、平和そうな町にハンターたちは安堵する。これを守るのが仕事だと考えると身も引き締まる。
「みなさん、よろしく。それにしても、アティとネア姉さんと初めての依頼って嬉しいことだな」
今回の仕事仲間にあいさつしつつ、ヘルヴェル(ka4784)は自然と笑みが浮かんだ。
「気は抜いちゃだめよ」
アティニュス(ka4735)は困ったような笑みを見せる。
「人里近くにゴブリンだ。それは不安だろうからね」
ネーナ・ドラッケン(ka4376)がうなずく。
「この地域でゴブリンがらみって珍しいんだよね」
アルテア・A・コートフィールド(ka2553)は事前に調べた情報を元に眉をしかめる。
「薬草園を襲うのって食糧確保のためでしょうか?」
エリス・カルディコット(ka2572)は実際の位置を見ないと分からないと首をかしげる。
「きちんと退治しておかないとヤギや鶏だけではすまなくなるかもしれないからな。早々に駆除することにしようぜ」
Anbar(ka4037)に促され、現場がある隣町に移動することになるが……。
「男は俺とあんただけか」
ポツリつぶやいたのを聞き、アルテアはむっとして抗議する。
「僕のどこが男だっていうんだ!」
「あ、いや……ほら……」
ボーイッシュな少女にやり込められた少年の姿は、微笑ましい。
(私のほうが、男なんですけどね。女性ばかりに一人男っていうのも緊張しますしね、Anbar様、これでなじめました)
苦笑しつつエリスは心の中でつぶやき、応援する。見た目のままではないとあえて言う必要はないので黙っている。
「ハンターに男も女もないだろ! お互いのことわかったし、いいことづくめのけんかだよ」
ネーナはにこやかにまとめた。今回の仕事こそ、男だろうが女だろうが関係ない。力と連携が物を言うのだから。
移動中、状況確認、互いの攻撃の特徴等、仕事をこなす上で必要なことを話すとき、すでに打ち解けいた。
薬草園は町のはずれの、街道と林が入り混じる地域にある。そのためソサエティ支部がある町からだと、小さい町の中を抜けることとなる。
川が走り、町がある。川に沿う形で畑が多くあり、耕す人の姿もある。
ゴブリンが住み着いたとはいえ、まだ大事になっていないのははっきりした。
ハンターたちが町の中を移動していると、子供たちと出会う。「これであっちにいけるようになるよ」ということを異口同音に話しながら、嬉しそうにどこかに走り去った。
薬草園にたどり着くと、壊れた部分を直しているジャイルズがいた。作業を中断してハンターたちを迎える。
「こんにちは、ハンターオフィスから来た者だ」
ヘルヴェルが元気よく告げると、むすっとした顔のジャイルズはうなずいた。
「場所は分かるはずだ。そこの林、道が見えるだろう。入って行けば、後は道なりだ」
なぜここが狙われたのか、エリスは疑問に思っていたが、ここが一番近い食料調達ポイントなのだ。高い壁があるわけでもないため、入り込みやすい。
「あんた、危ないと分かっていてここにいるのか?」
Anbarが尋ねるとジャイルズはふんと鼻で笑う。
「日中から出てくるようだったら、もうおしまいだろう」
「確かにな」
ゴブリンたちが日中から人間の集落に攻めてくるならば、相当の数がいるか大きな存在が背後にいると考えられる。ゴブリンだってばかではないから不用意に生活の境界をまたがない。
時々その境界を踏み越え、今回のような事件が起こる。
「この辺ってゴブリンの住まいとかってあったの?」
アルテアの質問にジャイルズは首を横に振った。
「もちろんすべてを知っているわけではないが、この近辺はないと言っていい」
そんなものがあったら、薬草園が厳重な設備になっていた可能性はある。子供たちだって自由に走り回れない。
「薬草園が踏み荒らされたとも聞きましたが?」
「まあ、ヤギたちが逃げれば……心配し過ぎだ」
「そうですか! そうですよね」
ジャイルズはエリスの心配を解くように、眉間のしわを浅くした。言われて薬草園を見ると、確かに建物の近くが荒れたような感じであった。
薬草園にて戦闘の準備をしておく。場所もあり、安全が確保されている。
ヘルヴェルはハンディライトを腰に付けた。戦闘になったとき、両手は必要であり、洞窟の中を知るには必要だ。ネーナは片手が開く武器なので、ライトは手に持つ。
それ以外の者も、武器やアイテムの最終確認をした。
「ヤギたち生きているかもしれないし、救助と参りましょうか」
アティニュスにネーナがうなずいた。
●偵察
林の中の道は分かりやすく、迷わない。襲撃に用心し、音もたてないように進む。
道があっているのは、時折上がる悲しげなヤギの声が教えてくれる。コボルドたちのそわそわするような動きもだんだん伝わってくる。目の前に御馳走がある状態だろうか。
コボルドの影が見えたところで、一行は止まった。
アティニュスとエリスが静かに動く、洞窟前の広場をそれぞれ左右に回り込む形で。アティニュスはヤギの状況を、エリスは攻撃するための場所の確保の意味があった。
アティニュスは離れたところから音に気をつけつつ回り込む。
広場の四隅にコボルドは配置されているようだ。そして、洞窟の前にヤギがおり、鳴いている。できれば、戦いが起こる前に連れて帰りたい。
(助けてと言われてるみたいね)
ヤギの鳴き声に気を取られた瞬間、枝を踏んだ音が響いた。
アティニュスははっとして足を止め、武器に手を掛け様子をうかがう。ヤギの近くにいるコボルドが向かってくるのが分かった。
アティニュスは仕込み傘から刃を抜いてコボルドを攻撃した。
●攻撃
コボルドが動いたのは待機していた者たちも分かった。
ネーナとAnbarが一番手前にいるコボルドに攻撃を仕掛ける。一体は倒し損ねるが、続いてたヘルヴェルが倒す。
「犬は好きなんだけどな、仕方がない、ねッ」
アルテアはつぶやき移動して、少し視界が開けた瞬間、洞窟近くにいるコボルドに銃弾を叩きこむ。
エリスも移動した先で、洞窟近くのコボルドを一体倒す。技を使って一掃するには敵は散開していた。
残った一体のコボルドが吠えた、警告のために。
ゴブリンが数体出てくる。石の、原始的な武器を手に状況を把握しようときょろきょろしている。
「でめぇえぇぇえぇ」
やけっぱちのようなヤギの悲鳴が上がる。
アティニュスはヤギを戦場となる広場から引き離したかった。仲間の動きを見て、一時戦線離脱しても何とかなると判断する。
「よしっ」
アティニュスは刃を仕舞い、ヤギに声を掛ける。
「おいで、こっちだよ」
ヤギは警戒しているが、ゴブリンも怖い、林に逃げるかとうろうろしている。人間に慣れているためか、アティニュスの方に足を踏み出した。
この間にネーナが残り一体のコボルドを倒した。
「俺が『道』を切り開くから、こぼれたのを頼むぜ」
Anbarが闘志を高め、正面から広場に飛び出す。この大音声は敵を引き付けるし、味方に対しても行動方針となる。
敵の数はおおよそだ、洞窟の広さを考えての。技を温存しつつも、確実に仕留めていくしかない。
銃撃しているアルテアとエリスは、ゴブリンを確実に攻撃する。
ヘルヴェルはヤギを広場から逃そうとしているアティニュスを助ける為、武器を構えつつ回り込んで近づいた。
ゴブリンたちは飛び出してきたAnbarに向かう。
ネーナはヤギとゴブリンの間に入った。その近くにヘルヴェルが茂みから飛び出し、ゴブリンに攻撃した。
「いい子だからこっち、こっち」
その横でアティニュスが必死にヤギを誘導する。
Anbarが目の前にいるゴブリンを攻撃し、アルテアがとどめを刺した。
エリスは範囲攻撃を考えるが、広場にいるのは二体という微妙さから、一体への攻撃にする。無駄な弾を使う必要はない。
洞窟内から弓と魔法の攻撃をゴブリン達が行ってきた。Anbarとネーナに弓と魔法が当たる。耐えられないものではなかったが、何度も続くと危険ではある。遠距離攻撃してくる者を倒したいところだが、手に武器を持ったゴブリンが現れ行く手を遮る。
確実に葬って行かねばならない。
「ここから本番だな!」
近くに来たゴブリンをネーナは切りつけ、踊るように一度離れる。
「たあぁ!」
そのゴブリンに対し、ヘルヴェルがとどめと棍を振り下ろした。
アルテアは機導砲を撃つ。防御魔法も視野に入れた方がいいなと状況を見る。
Anbarは斧を持ったゴブリンに対し、祖霊の力を借りた強い一撃を繰り出す。
エリスは密集している敵を狙い、マテリアルを活性化さえた攻撃を加える。銃弾は雨のように敵に降り注いだ。
「何匹いるか分かりません。皆様、油断をなさらぬように」
範囲攻撃だって何度もできるものではない。慎重に確実に。
「無論だ」
Anbarが応じて、敵ににらみを利かせる。
ゴブリンを逃がすつもりはないのは一同共通の考えだ。
さて、ようやくヤギは広場から出て、茂みに隠れて行った。
「ここでじっとしていてね。……私も戦うわよ!」
アティニュスがヤギに話しかけた後、武器を抜いて広場に出る。
ネーナとヘルヴェルが「待ってました」と目で言った。
義姉妹という縁を持つネーナ、アティニュス、ヘルヴェルは連携のとれた動きをとる。動きを翻弄するネーナと真っ直ぐ対峙するヘルヴェル。舞うように動きを阻害し間隙を突くアティニュス。確実に、一体一体を倒す。仲間全体を見ることを忘れることはない。
もちろん、アルテア、エリス、Anbarは役割を持ちつつ敵を減らしていく。敵が逃げるのを阻むAnbar、攻守を考え魔法と武器を使うアルテアは。エリスは範囲攻撃が不要となってからは素早く的確にゴブリンを撃ち葬っていく。
それぞれの連携が、全体の連携につながる。
最終的には6人一丸となり、洞窟にいたすべてのゴブリン達を撃破した。
●洞窟の中は?
洞窟からの攻撃がなくなってから、ライトを片手に中を確認する。
中に隠れている者もなく、食べ散らかしたをはじめとした生活臭があるだけだった。
武器や荷物から、敵はいないとネーナは判断した。
「アティ、あたしは疲れた、癒してくれ~」
ヘルヴェルはアティニュスに抱きつき甘える。
アティニュスはニコリしとしながら、ヘルヴェルをポンポンと優しくたたく。ぬくもりと心音……いずれをとっても安堵につながる心地よさだ。
洞窟の中には生きている動物はいなかった。もう一匹いたかもしれないヤギ、鶏の残骸はゴミ捨て場となっているらしい一画にあった。
「あのヤギは運が良かったのね……」
「そうみたいだな」
アティニュスにネーナが相槌を打った。
「ウサギか何かの小動物の骨か……」
Anbarは落ちている骨の形状から判断する。
「生活していた……だけで特に何もなさそうだね」
アルテアは眉間にしわが寄る。本当にそれだけかと疑ってかかるが、目の前の状況はシンプルに考えて良いと言っている。
「ええ、私もいろいろ疑いました」
エリスも同意して苦笑する。生きたままヤギを連れて来た事だって、ここで仲間と食べるだけだったと考えると、考え過ぎたと思える。
不穏な動きをあちこちで感じているため、現実を見ても楽観できなかった。まだ何かあるかもしれない、と。
「あの、動物たちは埋めてあげませんか……」
アティニュスは自然の摂理と考えても、身近な生き物が不慮の事故に巻き込まれると悲しい気持ちになる。
一同は食糧とされた動物たちを、土に埋めて洞窟を後にした。
「帰るぞ」
ネーナが広場の外を見ると、ちょっと遠くの灌木で白い影が「めぇ」と鳴いた。
アティニュスは走っていって、ヤギを誘導し始めた。ヤギは震えているが、ゆっくりと歩き始めた。
帰り道、ヘルヴィナは荷物から飴を取り出すと、自分の口、ネーナとアティニュスの口にも放り込む。
「甘い物は疲れを癒すからな! 皆もどうぞ!」
勧められた方もうなずきながら遠慮はしなかった。戦いが無事終わり、一息つきたい。
●薬草園
報告のために来たハンターたちを見て、ジャイルズは話を促す。ジャイルズは渋面であるが、安堵している様子をうかがわせる。
アティニュスに引かれてヤギはジャイルズに引き渡された。ヤギは薬草園に入ると、きょろきょろして歩き出す。
「ゴブリン、コボルド合わせて26匹……結構住み着いてた」
「まあ、それ以上は住まないと思うが厄介だな」
Anbarの言葉を聞き、ジャイルズは腕を組んでうなずいた。
「特に盗まれたものもないか? 生物以外、洞窟にそれらしいものはなかったけど一応確認」
「ああ、ない。それにしても、ヤギが残ったのは単純に運が良かったんだろう」
ネーナはうなずきながら、連れてきたヤギを見た。
「コボルドたち、ヤギによだれ垂らしてたから」
一歩遅いと悲鳴が聞こえた危険もあったのかとヘルヴェルは耳をふさぐ。
「洞窟、何か活用手段がない限りは同じことがあり得ます。埋めるべきかと……」
アティニュスの提案にジャイルズも同意し、町には報告すると言う。
「薬草園が襲われることがないといいですね……」
エリスはさわやかな香りが漂う園庭を見る。花も咲いているものがあり、春から初夏の雰囲気が漂う。
「畑と一緒で、城壁の中は無理だからな」
ジャイルズは仕方がないと苦笑する。鉢植えで育てられるものは限度がある。
「手早く片付けてくれて助かった」
ジャイルズは淡々と礼を述べた。
「今後も何かあればハンターオフィスまでご連絡を」
アルテアの言葉に、ジャイルズはうなずいた。
ハンターが立ち去った後、眉間のしわを深くジャイルズは溜息を洩らした。薬草園を守る手立てを考えないとならない。
帰ってきたヤギは震えていたが、いつもの所で草をはみ始め「めぇ」と鳴いた。
依頼結果
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アティニュス(ka4735)
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/18 18:51:24 |
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ゴブリン退治 アティニュス(ka4735) 人間(リアルブルー)|16才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2015/05/20 18:00:19 |