ゲスト
(ka0000)
麗しのローズガーデン
マスター:瑞木雫

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/05/17 19:00
- 完成日
- 2015/05/25 21:09
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●招待されたハンター達
葉桜の候、風薫る皐月の日に。
なんでも、薔薇を愛する令嬢……ロゼお嬢様が毎年催しになるというガーデンパーティーがあるらしい。
ロゼは生まれてこの方、ずっと薔薇の花を愛していた。
遠くに覗かせるお城のような邸宅ですらおまけのものであるかのように、美しい薔薇達が凛と咲き誇る薔薇の花園。それが迷路の如く続いていて、見る者を惚れ惚れとさせるだろう。
―――情熱の紅。
―――愛々しいピンク。
―――純麗の白。
―――煌煌たる黄。
―――高潔の紫。
―――神秘の青。
そんな多種多彩の麗しさを秘めた華麗な薔薇の花園で、ローズティーや洋菓子を頂いたり……。
ロゼが招待した吹奏楽団の演奏に聴き浸りながらお喋りを楽しむ事が目的な、所謂富裕層の社交場という訳である。
「うふふ。今年もよろしくね、ハンターさん達」
ロゼは微笑みを浮かべた。
するとふわり、と甘い香りが漂うだろう。花、というよりももっと甘い、蜂蜜のような。
そしてその香りに併せたかのような黄色の麗しいドレスも美しい。
今年も……というのは、ガーデンパーティーを開く際にはいつも、ハンター達に警護の依頼を頼んでいるのである。
特に今迄何かがあったという訳ではないけれど、万が一の時の為にとお願いしているのだ。
「―――と言っても、どうか楽しんでいってね。何かあればその時はお願いするけれど、私にとって貴方達も大切なお客様だわ」
ロゼは大のもてなし好きで、パーティー好きとしても有名だった。
半熟卵のサンドイッチや、チーズやトマトを乗せたクラッカー、ローストビーフ、色鮮やかなバーニャカウダー。
薔薇の花びらを添えたケーキ、フィナンシェ、ローズマカロン。
ローズティーに、フルーツジュース、ハーブティー、紅茶、珈琲、シャンパン、ワイン。
他にもたくさん。
用意している軽食や飲み物が美味しそうで、カスミソウと共に真紅の薔薇を飾った真っ白のテーブルが美しいのも、客人が満足していって欲しいからだ。
きっと警護中は仕事に専念するよりも、一般の客人と共に楽しんでいってくれるほうがロゼにとって嬉しいことなのだろう。
「ああ、それと! お着替えもしていただかなければねっ」
そしてロゼは張り切った様子で、ハンター達の背中を押していったのだった。
●ロゼのガーデンパーティー
ガーデンパーティーは大勢の紳士淑女が集い、彼女が愛をこめて育てた薔薇を愛でにくる――――。
さて、何をすればいいだろう?
貴方達は警戒しながら、首を捻ることだろう。
その答えは簡単だ。
……そう、要は楽しめばいいらしい。
客人に貴方がもしハンターである事を明かすならば、彼らはとても関心するだろうし、話も弾むはずだ。
話すよりも食べることに夢中になることだって歓迎で、
両親に連れてこられたものの暇をしている子供たちの相手をしてあげるのだっていいかもしれない。
あるいはロゼが可愛がっている大型犬・ゴンと遊ぶのも。……恐らく、ずっとお昼寝中だが。
勿論、おしゃべりが大好きなロゼは話しかけて貰えたならば、きっと笑顔で応える。
―――楽しんでくれているからしら?
特に何も起こらない間は、貴方も歓迎された客人。
優雅なひとときを共に過ごすのが、きっと一番。
貴方も思い思いに、パーティーを楽しむことができるだろう。
●花蜜に誘われる蜂
―――さてさて。こうしていつものように何事もなく平穏に終わったこのパーティー。
実はお開きとなって招待客は全員お帰りになった直後に、事件が起きるのである。
「きゃあああ!!」
ロゼの悲鳴が響き渡る。
「い、一体なんなの……!?」
パーティーは終わったばかりで暫くその場に残っていたハンター達も、招かれざる客が遅れてやってきた事にはすぐ気付くだろう。
蜂型の雑魔が20体。
通常の蜂よりも大きく、全長1メートルはあるだろうか。
お尻には鋭く尖った針があり、羽も少々特殊な硬さなようで、剣でさえ切り裂く事はできなさそうだ。
先程まではまったく姿を見せなかった筈だが、どこからやってきたのだろうか。その答えは、わからない。
そしてぶん、ぶん、ぶん、と20体それぞれが容赦なく好きなように飛び回るのを見て。
ロゼは瞳孔を開いて、わなわなとしはじめるのだった。
「ちょ、ちょっと! 私の薔薇を傷つけたらタダじゃおかないわよっ!!」
先程の淑やかさはどこへやら。
大切なものを傷つけられかねない状況にいてもたってもいられず、たとえハンター達の制止があったとしても言わずにはいられなかっただろう。
―――すると。
ぶん……?
ぶぶぶぶぶぶ。
ぶうううん。
「な……!」
なんと、20体が一斉に襲い掛かってきた。
ロゼただひとりに向かって!
「きゃああああ!」
ロゼ、大パニックなのである。
蜂の雑魔20体は今のところハンター達には目も暮れず、ロゼだけを狙った。
もちろん蜂の雑魔は彼女の言葉を理解できる知能はなく、挑発されて怒ったから……という訳ではない。
理由はもっと別のところにあるのだろう。
「いいわ、来なさい! ここは私の薔薇を傷つけてしまうかもしれないですものね!」
どうやらロゼというお嬢様は意外と強かな性格であるようだ。
そう言い残すと同時に、俊足で駆け出した。
速い!
そして突っ走っていくロゼの後ろを20体の蜂の雑魔が追ってついていく状況に。
「お願いします……! この蜂達をこらしめてやってちょうだい! あと、薔薇は絶対に傷つけないでねっっ」
ーーーぶううん。
こうしてハンター達は、切実な想いを叫びながらヒールで逃げるお嬢様の救出に向かうのだった!
葉桜の候、風薫る皐月の日に。
なんでも、薔薇を愛する令嬢……ロゼお嬢様が毎年催しになるというガーデンパーティーがあるらしい。
ロゼは生まれてこの方、ずっと薔薇の花を愛していた。
遠くに覗かせるお城のような邸宅ですらおまけのものであるかのように、美しい薔薇達が凛と咲き誇る薔薇の花園。それが迷路の如く続いていて、見る者を惚れ惚れとさせるだろう。
―――情熱の紅。
―――愛々しいピンク。
―――純麗の白。
―――煌煌たる黄。
―――高潔の紫。
―――神秘の青。
そんな多種多彩の麗しさを秘めた華麗な薔薇の花園で、ローズティーや洋菓子を頂いたり……。
ロゼが招待した吹奏楽団の演奏に聴き浸りながらお喋りを楽しむ事が目的な、所謂富裕層の社交場という訳である。
「うふふ。今年もよろしくね、ハンターさん達」
ロゼは微笑みを浮かべた。
するとふわり、と甘い香りが漂うだろう。花、というよりももっと甘い、蜂蜜のような。
そしてその香りに併せたかのような黄色の麗しいドレスも美しい。
今年も……というのは、ガーデンパーティーを開く際にはいつも、ハンター達に警護の依頼を頼んでいるのである。
特に今迄何かがあったという訳ではないけれど、万が一の時の為にとお願いしているのだ。
「―――と言っても、どうか楽しんでいってね。何かあればその時はお願いするけれど、私にとって貴方達も大切なお客様だわ」
ロゼは大のもてなし好きで、パーティー好きとしても有名だった。
半熟卵のサンドイッチや、チーズやトマトを乗せたクラッカー、ローストビーフ、色鮮やかなバーニャカウダー。
薔薇の花びらを添えたケーキ、フィナンシェ、ローズマカロン。
ローズティーに、フルーツジュース、ハーブティー、紅茶、珈琲、シャンパン、ワイン。
他にもたくさん。
用意している軽食や飲み物が美味しそうで、カスミソウと共に真紅の薔薇を飾った真っ白のテーブルが美しいのも、客人が満足していって欲しいからだ。
きっと警護中は仕事に専念するよりも、一般の客人と共に楽しんでいってくれるほうがロゼにとって嬉しいことなのだろう。
「ああ、それと! お着替えもしていただかなければねっ」
そしてロゼは張り切った様子で、ハンター達の背中を押していったのだった。
●ロゼのガーデンパーティー
ガーデンパーティーは大勢の紳士淑女が集い、彼女が愛をこめて育てた薔薇を愛でにくる――――。
さて、何をすればいいだろう?
貴方達は警戒しながら、首を捻ることだろう。
その答えは簡単だ。
……そう、要は楽しめばいいらしい。
客人に貴方がもしハンターである事を明かすならば、彼らはとても関心するだろうし、話も弾むはずだ。
話すよりも食べることに夢中になることだって歓迎で、
両親に連れてこられたものの暇をしている子供たちの相手をしてあげるのだっていいかもしれない。
あるいはロゼが可愛がっている大型犬・ゴンと遊ぶのも。……恐らく、ずっとお昼寝中だが。
勿論、おしゃべりが大好きなロゼは話しかけて貰えたならば、きっと笑顔で応える。
―――楽しんでくれているからしら?
特に何も起こらない間は、貴方も歓迎された客人。
優雅なひとときを共に過ごすのが、きっと一番。
貴方も思い思いに、パーティーを楽しむことができるだろう。
●花蜜に誘われる蜂
―――さてさて。こうしていつものように何事もなく平穏に終わったこのパーティー。
実はお開きとなって招待客は全員お帰りになった直後に、事件が起きるのである。
「きゃあああ!!」
ロゼの悲鳴が響き渡る。
「い、一体なんなの……!?」
パーティーは終わったばかりで暫くその場に残っていたハンター達も、招かれざる客が遅れてやってきた事にはすぐ気付くだろう。
蜂型の雑魔が20体。
通常の蜂よりも大きく、全長1メートルはあるだろうか。
お尻には鋭く尖った針があり、羽も少々特殊な硬さなようで、剣でさえ切り裂く事はできなさそうだ。
先程まではまったく姿を見せなかった筈だが、どこからやってきたのだろうか。その答えは、わからない。
そしてぶん、ぶん、ぶん、と20体それぞれが容赦なく好きなように飛び回るのを見て。
ロゼは瞳孔を開いて、わなわなとしはじめるのだった。
「ちょ、ちょっと! 私の薔薇を傷つけたらタダじゃおかないわよっ!!」
先程の淑やかさはどこへやら。
大切なものを傷つけられかねない状況にいてもたってもいられず、たとえハンター達の制止があったとしても言わずにはいられなかっただろう。
―――すると。
ぶん……?
ぶぶぶぶぶぶ。
ぶうううん。
「な……!」
なんと、20体が一斉に襲い掛かってきた。
ロゼただひとりに向かって!
「きゃああああ!」
ロゼ、大パニックなのである。
蜂の雑魔20体は今のところハンター達には目も暮れず、ロゼだけを狙った。
もちろん蜂の雑魔は彼女の言葉を理解できる知能はなく、挑発されて怒ったから……という訳ではない。
理由はもっと別のところにあるのだろう。
「いいわ、来なさい! ここは私の薔薇を傷つけてしまうかもしれないですものね!」
どうやらロゼというお嬢様は意外と強かな性格であるようだ。
そう言い残すと同時に、俊足で駆け出した。
速い!
そして突っ走っていくロゼの後ろを20体の蜂の雑魔が追ってついていく状況に。
「お願いします……! この蜂達をこらしめてやってちょうだい! あと、薔薇は絶対に傷つけないでねっっ」
ーーーぶううん。
こうしてハンター達は、切実な想いを叫びながらヒールで逃げるお嬢様の救出に向かうのだった!
リプレイ本文
●華やかなドレスアップ
ミィナ・アレグトーリア(ka0317)とイレス・アーティーアート(ka4301)は、ロゼと共に衣装室でパーティーの為の身支度を整えていた。コーディネートはロゼにお任せ。素敵なお嬢さん二人を自分の手でドレスアップできるとあって彼女は張り切っているらしく、「こちらはどうかしら。こちらは?」―――と、様々な美しいドレスを合わせつつ楽しんでいるようで。
三人はあっという間に仲良くなり、コーディネートの相談も弾んで楽しんでいた。
「せっかくの薔薇を楽しむ会ですから匂いも注意しないとですわね。ロゼさん何か良い香水とかないでしょうか?」
「この香水はどうかしら。私のお気に入りなの!」
ロゼは花をモチーフにしたクリスタルの香水瓶を取り出すと、イレスに「使ってみる?」と微笑みかける。
イレスが使用すると、花のようでフェミニンな甘い香りが漂って。
「甘いけど甘すぎない素敵な香りなんよ~」
まさしく上品で、甘美。―――ミィナもとろけそうになるかぐわしさで。
「……えと、そのー、うちも使わせてもろうたらダメ……? ……かなぁ?」
お願いするのがちょっぴり恥ずかしくて、ほんのり染まる愛らしい頬。ミィナのふんわりした微笑みも可愛らしく、心を掴まれたロゼは「勿論よ!」是非使って欲しいと香水瓶を渡すだろう。
花蜜の香りを纏う三人は、この後も楽しそうに話題に花を咲かせていた――。
―――ドレスコード。
ハンター達は警護を任されると共に、正装での参加を求められていた。勿論ドレスコード付のパーティーだからこそのお願いだったのだが、実はちゃっかり、ハンター達のドレス・スーツ姿を拝めることを、ロゼは楽しみにしていたらしい。
美しいものが大好きな彼女はドレスアップして登場した彼らを見つめ、目をきらきらと輝かせた。
「一応、パーティって聞いたから正装してきたんだけど……どうかなー?」
目に留める華美な紅のスーツをすらりと着こなすラン・ヴィンダールヴ(ka0109)が首を捻る。
「素敵よ、ランさん!」
鈍い光沢感のある生地は鮮麗さを際立たせ、華やぎのある彼。そっと彼の胸元に羽根付の薔薇コサージュを足したなら、色男に益々磨きがかかったわ、と彼女が惚れ惚れしながら喜んで。
カフカ・ブラックウェル(ka0794)のデビルスーツ姿にも、目の保養とばかりに魅せられていた。
悪魔のような妖しい黒は真夜中を想わせ、柔らかなアッシュブロンドの髪はまるで月光の煌めきのよう。胸には紫薔薇を一輪挿し、ロゼの追加コーディネートも加え、差し色に蒼、翠、白、と。落ち着いた彩りは彼の秀麗さを引き立たせている。
そんなランとカフカが並ぶ構図に、ロゼは。
「……これは私の友人達が放っとかないわね」
「「?」」
「いえっ、なんでもないのよ! おほほ~」
羽根の扇子を取り出した彼女は自らを仰ぎながら誤魔化していると、隅っこのほうに隠れている佐井 灯(ka4758)を発見。
ノースリーブドレスは純美な白を基調とし、清純な美が魅力的。丈が短めの薔薇に模したスカートは麗しく、腰に差された得物の刀はドレスとの親和を計れるように工夫されていた。
「あ、あの……。あんまり見つめられると恥ずかしい、かなって……」
「だって素敵なんですもの! 綺麗だわぁ」
食い入るように見つめる視線が熱烈すぎて、灯は隠れたい想いでいっぱいになったかもしれない。
「皆さん素敵ですわね」
イレスが、微笑む。ロゼがコーディネートした流麗なオリオンブルーのドレス。青銀の髪は綺麗に後ろへ流すように品良く纏め、飾りには可憐な白が美しいパスカリを。この白薔薇は、イレスが薔薇の中でも好きな薔薇なのだという。イヤリングも優美で、コメットブルーの煌めきを放ち、揺れていた。
ほんわり頷いていたミィナもロゼのコーディネートで、髪はふわりと巻いて、爛漫な花の如く、愛くるしげなターコイズグリーンのドレスを。警護を視野に入れる為動きやすさを希望したミィナのリクエストに応え、軽やかながら、フェミニンな可愛らしさが溢れていた。
そしてミィナは、メイム(ka2290)の煌めくばかりのドレスを一目見て、つぶらな眸をきらきらと光り輝かせる。
「メイムさんのドレス、凄いのん。素敵なのん!」
―――メイムのドレスチェンジは、華麗で豪華。
思わず仲間達もロゼも注目し、感嘆の声を漏らすだろう。
黒い薄手のドレスグローブ、膝丈まであるブーツ、白地に銀模様のマスカレードを着用。
頭部にはエンジェルティアラ。銀灰色の羽にルビーをあしらって、上品に煌めいている。
小さな黒と灰紫の薔薇を咲かせるように飾っている漆黒のゴシックドレスは絢爛で。
ロゼから借りたレースをあしらった黒の日傘も、メイムにぴったり。
誰もが目を奪うような、見事なドレスアップなのだった。
「上品で良いよねー?」
ランも緩やかな声色で、頷いて。
「それにこれも……」
灯が目に留まったものは、メイムがアクセントに装着していた銀製留め具。
「あたし達の氏族の祖霊神エスタナトレーヒのモチーフなんだよ、青いのはターコイズ。素敵でしょう?」
メイムは首を傾げながら、にこっと笑顔を浮かべた。
こうしてドレスアップした彼らはパーティーが始まる前のこの時間を、楽しげにお喋りしながら過ごしたのだった。
(何も起きないと良いんだけどねー)
ラン達はそれぞれの想いを、胸に抱きながら………。
●麗しのローズガーデン
そうして大勢の招待客を迎えた薔薇のガーデンパーティー。
警護を依頼されているハンター達だったが、「どうかお楽しみになって」というお願いもあり、其々思い思いに過ごしながらも気を引き締めて。
(今の所問題は無さそう、かな……)
カフカは、会場内を隈なく概観しつつ、パーティーの演奏をしている薔薇の楽団に混じり、ハープを持ち出した。それにしても見事な薔薇の数々。感動を覚える程の美、だ。
感銘を受けたカフカは繊細な旋律を奏で、優しい音色で招待客の紳士淑女を包み込む。彼が演奏を終えて舞台から降りようとするならば、ハープ奏者の麗人である彼に虜になった女性達が出待ちを。彼女達が彼を解放するのは、もう暫くあとのことになることだろう。
「こんにちは、美しいお嬢さん。良ければ僕とお話しませんか?」
女性の招待客は淑やかな振る舞いながらも優雅な美青年であるランに声を掛けられ、きゃーっと目をハートに。
ランの虜になった女性は多く、いつのまにか「私がラン様とお話しするのよ!」「私とよ!」と微笑ましい取り合いが始まっていた。
「こうやって、雰囲気を楽しむだけでも充分、楽しい、よ。綺麗な薔薇がいっぱいで、眺めてて飽きないし……」
一方会場の隅っこで大人しくしていた灯は、お客様に代わる代わると声を掛けられていて。
「こんな素敵な場所に、ボクなんかが居ていいのかな……とも思うけど」
どちらかといえば内向的な性格の灯は、人の中に入っていくのが苦手だが、喋り掛けられた時はきちんと応対を。
きっとお客様方は、謙虚に笑顔を緩めながらお喋りする灯に好意を持ちながら楽しんでいた。
―――そして招待客との時間を過ごしたその後は、みんなロゼの元へ。
「いやー、素敵な庭だねー? こんな素敵な場所で楽しめるなんて、最高だねー? 依頼、ありがとうねー?」
ランがゆるっと言うとロゼは嬉しそうに微笑んだ。
「うふふ」
上機嫌な彼女はこの後もハンター達とのお喋りに夢中に。ミィナにお勧め料理のレシピを教えたり、カフカに薔薇を育てるコツを話したり、イレスの質問には薔薇は生まれた時から惹かれる花だったこと……そしてどの色もどの子達も愛おしくて選べないほど愛しているということを答えて。
「そういえばロゼさん、いい匂いがする……」
灯が彼女の花蜜のような香りに気付くと、カフカも続いた。
「優しい香りの香水だね?」
褒められて嬉しいロゼは「きっとこれね、花蜜の香りなのよ」とクリスタルの香水瓶をハンター達に見せる頃、
「あ。そろそろパーティーが終わる時刻なんじゃないかなー」
あっという間に時間は過ぎていて、メイムがロゼに教えてあげた。
「あら、いけない!」
メイムにお礼を言うとロゼは楽団が演奏していた舞台に立ち、「それでは皆様、お楽しみの最中ではありますが、これにてガーデンパーティーを終了したいと思います」と締めの挨拶を。
「無事に終わりましたわね」
イレスが言うと、ハンター達は共に頷いた。招待客に被害が被る事もなくて、皆幸せそうに、楽しそうに退場していくのを見送りつつ、ほっと一息安堵していたのだが――――。
まさか、パーティー内にお客さんが居なくなった直後に、あんな事が起きるなんて。
彼ら彼女達は、思いも寄らなかっただろう。
●波乱は突然に。ロゼを狙う蜂を追いかけて
「……何てこった……」
(パーティーの警護だけで終わると思ったのに……)
カフカの翡翠の瞳は食い入るように見つめつつ、目を疑った。
(危ない、ロゼさんが……!)
―――この緊急事態に灯は、『覚醒』。
「お、お嬢様をお願いします!」
使用人が慌ただしく預かっていた槍をイレスに渡しロゼを託すと、イレスは頼もしく頷いた。
「お任せくださいですわ」
ハンター達は急いで駆けだした。20体の蜂雑魔に狙われている、彼女の後を。
「私の薔薇は大丈夫……!?」
自分の事よりも薔薇を心配するロゼ。
「僕が守るし大丈夫だから、安心してねー?」
それには後方で薔薇が安全なように注意深く見張っていたランが、彼女を宥めて。
「ロゼさんにも、薔薇にも、指一本触れさせないのん!」
たとえ逞しいロゼと言えど蜂雑魔を撒いて逃げ切るのには限度がある。だからこそ蜂雑魔の数を減らしておきたかったミィナは、射線に注意をして―――。
雷撃による攻撃を与え、蜂を一体消滅させた。
●美しき戦
「ミィナさんもイレスさんも大丈夫!?」
「へ、平気なのん……!」
「ロゼさんがおっしゃった薔薇のないエリアまであともう少しなんですよね。そこまで頑張りましょう」
麗しいドレスを纏うロゼ、ミィナ、イレスが先頭に立ち、薔薇の小道を駆け抜ける―――。
蜂雑魔達はロゼと共にミィナとイレスも狙っているようだ。
どうやら残りの19体はミィナのライトニングボルトで振り返った瞬間に気付いたらしい。
―――蜂雑魔達を誘惑する花蜜を漂わせる乙女が、あともう二人居ると。
一見不可解な戦況だったが蜂雑魔達が何に惹かれているかは、追いかけるハンター達にもお見通し。
「ロゼさーん多分原因は香水瓶、広い場所で地面に捨てて横に逃げて~」
薔薇のない地点に辿り着くとメイムはロゼに指示をした。
いつも持ち歩いているお気に入りの香水瓶。
それが原因だと教えられると、ロゼは成程と納得したようだった。
「ロゼちゃん! その香水、貸してくれるかな?」
先程と雰囲気が変わった灯は、まるで静やかな白から溌剌な白へと。
その変化に驚くロゼだったが、「ならお願いね……!」と香水瓶を託す。
「ありがとう、ロゼちゃん!」
軽やかな白薔薇の乙女は香水瓶の蓋を開け、華麗にステップを踏むように「こっちだよー!」
自らに向かってくるように挑発。
そして誘われてきた蜂雑魔の集中狙いを的確に避け、好戦的な灯は楽しそうに電光石火をお見舞い。
見事な撃滅ぶりに感心していたロゼ。
するとまだ走るのを辞める訳にはいかない彼女へと、真っ白いテーブルクロスが守るように包み込む。
ロゼが振り返れば、麗しき紳士が。
「白は蜂を刺激しない色だから……気休めかもしれないけど!」
カフカは追いかける直前にテーブルクロスを3枚、持ち出していた。
これで蜂雑魔は香りがいい真っ白な対象よりも、香りもよくて刺激的な色の対象物を狙いやすくなるだろう。冷静で賢明な処置であり、沈着な判断だ。
それでも追いかけてくる蜂雑魔は、イレスが守りの構えで立ちはだかった。
―――青き瞳の乙女は、凛とした眼差しで敵を射る。
鮮やかに槍を振るい、可憐なドレスを身に纏いながらも勇ましく、ロゼを守り、撃滅させていく。
守られていたロゼはそんなイレスの武勇に惚れ惚れすることだろう。
友達から無事を祈られているような心強さを感じたメイムは同行していたパルムに華麗に指示を。
「行ってキノコ!」
メイムは手を前にかざすポーズすら麗しく、魔力を纏ったパルムは蜂雑魔へと攻撃。
「さー、こっちにもおいでー? あはは」
香水を借りて標的になり、優雅に追いかけっこを楽しんでいるようにも窺えて絵になるランは、ロゼから離れた場所まで引き離すとレイピアを構えて。野生の瞳で脆い関節を見抜き、鋭い一閃を与えた。
「さてと、どんどん片付けないとねー……?」
カフカも香水を借りて身に着けるならば、出来るだけ多くの蜂雑魔を誘った。同様にミィナも、カフカとは違う方面へと。
誘導する彼らの目的は、スリープクラウド。
まんまと罠に嵌った残りの蜂雑魔達は全て眠りにつくだろう。
「よし、成功だね」
「やったのん!」
カフカとミィナは美しく作戦成功が決まって、手ごたえを感じる。
――こうなれば蜂雑魔の撃滅はたやすい。
ハンター達は華麗に総攻撃を与え、眠りについている蜂雑魔を確実に一撃で仕留めながら。
「シュート~」
メイムは鮮やかにファミリアアタック。
「これで終わりだよ!」
最後の一体を確実にしとめるべく、灯は颯爽と疾風剣で鮮やかに撃退し美しく最後を決めるのだった―――。
●親愛なる友と、特別なパーティー
「本当にありがとう、助かったわぁ」
彼らが居なければ今頃どうなっていたことか―――。
ずっと守ってくれたハンター達に感謝しながら、微笑みを浮かべ提案する。
「そうだわ、皆さんお疲れでしょう? お礼もしたいですし、これからお茶にしない?」
温かで香り高いローズティーを召し上がれ。
今度は小さなテーブルで、彼らだけの特別なパーティーだ。
「このローズティー、美味しいねー?」
ランがローズティーを口にして温まりながら言うと、灯がうんうんと頷いた。
「本当に美味しい」
薔薇を愛するお嬢様ということもあって絶品なその味に感激して。
「ロゼさん、もしよければローズティーの美味しいレシピを教えていただきたいですわ」
「あっ、私も教えて欲しいのんっ」
「勿論喜んでお教えするわ。皆さんは素敵な私の友人ですもの」
すっかり親しげになったロゼは、ミィナとイレスにとっておきのレシピを。
「よくやった、キノコ」
一方メイムは皆とのお喋りも楽しみつつ、戦闘で活躍したパルムを褒め称えていた。
―――麗しのローズガーデンを見つめ、カフカは目を細める。
先程までの慌ただしさが嘘のような、風薫る薔薇の庭。彼らが守った薔薇達は誇らしげに美しく、咲いていた。
ミィナ・アレグトーリア(ka0317)とイレス・アーティーアート(ka4301)は、ロゼと共に衣装室でパーティーの為の身支度を整えていた。コーディネートはロゼにお任せ。素敵なお嬢さん二人を自分の手でドレスアップできるとあって彼女は張り切っているらしく、「こちらはどうかしら。こちらは?」―――と、様々な美しいドレスを合わせつつ楽しんでいるようで。
三人はあっという間に仲良くなり、コーディネートの相談も弾んで楽しんでいた。
「せっかくの薔薇を楽しむ会ですから匂いも注意しないとですわね。ロゼさん何か良い香水とかないでしょうか?」
「この香水はどうかしら。私のお気に入りなの!」
ロゼは花をモチーフにしたクリスタルの香水瓶を取り出すと、イレスに「使ってみる?」と微笑みかける。
イレスが使用すると、花のようでフェミニンな甘い香りが漂って。
「甘いけど甘すぎない素敵な香りなんよ~」
まさしく上品で、甘美。―――ミィナもとろけそうになるかぐわしさで。
「……えと、そのー、うちも使わせてもろうたらダメ……? ……かなぁ?」
お願いするのがちょっぴり恥ずかしくて、ほんのり染まる愛らしい頬。ミィナのふんわりした微笑みも可愛らしく、心を掴まれたロゼは「勿論よ!」是非使って欲しいと香水瓶を渡すだろう。
花蜜の香りを纏う三人は、この後も楽しそうに話題に花を咲かせていた――。
―――ドレスコード。
ハンター達は警護を任されると共に、正装での参加を求められていた。勿論ドレスコード付のパーティーだからこそのお願いだったのだが、実はちゃっかり、ハンター達のドレス・スーツ姿を拝めることを、ロゼは楽しみにしていたらしい。
美しいものが大好きな彼女はドレスアップして登場した彼らを見つめ、目をきらきらと輝かせた。
「一応、パーティって聞いたから正装してきたんだけど……どうかなー?」
目に留める華美な紅のスーツをすらりと着こなすラン・ヴィンダールヴ(ka0109)が首を捻る。
「素敵よ、ランさん!」
鈍い光沢感のある生地は鮮麗さを際立たせ、華やぎのある彼。そっと彼の胸元に羽根付の薔薇コサージュを足したなら、色男に益々磨きがかかったわ、と彼女が惚れ惚れしながら喜んで。
カフカ・ブラックウェル(ka0794)のデビルスーツ姿にも、目の保養とばかりに魅せられていた。
悪魔のような妖しい黒は真夜中を想わせ、柔らかなアッシュブロンドの髪はまるで月光の煌めきのよう。胸には紫薔薇を一輪挿し、ロゼの追加コーディネートも加え、差し色に蒼、翠、白、と。落ち着いた彩りは彼の秀麗さを引き立たせている。
そんなランとカフカが並ぶ構図に、ロゼは。
「……これは私の友人達が放っとかないわね」
「「?」」
「いえっ、なんでもないのよ! おほほ~」
羽根の扇子を取り出した彼女は自らを仰ぎながら誤魔化していると、隅っこのほうに隠れている佐井 灯(ka4758)を発見。
ノースリーブドレスは純美な白を基調とし、清純な美が魅力的。丈が短めの薔薇に模したスカートは麗しく、腰に差された得物の刀はドレスとの親和を計れるように工夫されていた。
「あ、あの……。あんまり見つめられると恥ずかしい、かなって……」
「だって素敵なんですもの! 綺麗だわぁ」
食い入るように見つめる視線が熱烈すぎて、灯は隠れたい想いでいっぱいになったかもしれない。
「皆さん素敵ですわね」
イレスが、微笑む。ロゼがコーディネートした流麗なオリオンブルーのドレス。青銀の髪は綺麗に後ろへ流すように品良く纏め、飾りには可憐な白が美しいパスカリを。この白薔薇は、イレスが薔薇の中でも好きな薔薇なのだという。イヤリングも優美で、コメットブルーの煌めきを放ち、揺れていた。
ほんわり頷いていたミィナもロゼのコーディネートで、髪はふわりと巻いて、爛漫な花の如く、愛くるしげなターコイズグリーンのドレスを。警護を視野に入れる為動きやすさを希望したミィナのリクエストに応え、軽やかながら、フェミニンな可愛らしさが溢れていた。
そしてミィナは、メイム(ka2290)の煌めくばかりのドレスを一目見て、つぶらな眸をきらきらと光り輝かせる。
「メイムさんのドレス、凄いのん。素敵なのん!」
―――メイムのドレスチェンジは、華麗で豪華。
思わず仲間達もロゼも注目し、感嘆の声を漏らすだろう。
黒い薄手のドレスグローブ、膝丈まであるブーツ、白地に銀模様のマスカレードを着用。
頭部にはエンジェルティアラ。銀灰色の羽にルビーをあしらって、上品に煌めいている。
小さな黒と灰紫の薔薇を咲かせるように飾っている漆黒のゴシックドレスは絢爛で。
ロゼから借りたレースをあしらった黒の日傘も、メイムにぴったり。
誰もが目を奪うような、見事なドレスアップなのだった。
「上品で良いよねー?」
ランも緩やかな声色で、頷いて。
「それにこれも……」
灯が目に留まったものは、メイムがアクセントに装着していた銀製留め具。
「あたし達の氏族の祖霊神エスタナトレーヒのモチーフなんだよ、青いのはターコイズ。素敵でしょう?」
メイムは首を傾げながら、にこっと笑顔を浮かべた。
こうしてドレスアップした彼らはパーティーが始まる前のこの時間を、楽しげにお喋りしながら過ごしたのだった。
(何も起きないと良いんだけどねー)
ラン達はそれぞれの想いを、胸に抱きながら………。
●麗しのローズガーデン
そうして大勢の招待客を迎えた薔薇のガーデンパーティー。
警護を依頼されているハンター達だったが、「どうかお楽しみになって」というお願いもあり、其々思い思いに過ごしながらも気を引き締めて。
(今の所問題は無さそう、かな……)
カフカは、会場内を隈なく概観しつつ、パーティーの演奏をしている薔薇の楽団に混じり、ハープを持ち出した。それにしても見事な薔薇の数々。感動を覚える程の美、だ。
感銘を受けたカフカは繊細な旋律を奏で、優しい音色で招待客の紳士淑女を包み込む。彼が演奏を終えて舞台から降りようとするならば、ハープ奏者の麗人である彼に虜になった女性達が出待ちを。彼女達が彼を解放するのは、もう暫くあとのことになることだろう。
「こんにちは、美しいお嬢さん。良ければ僕とお話しませんか?」
女性の招待客は淑やかな振る舞いながらも優雅な美青年であるランに声を掛けられ、きゃーっと目をハートに。
ランの虜になった女性は多く、いつのまにか「私がラン様とお話しするのよ!」「私とよ!」と微笑ましい取り合いが始まっていた。
「こうやって、雰囲気を楽しむだけでも充分、楽しい、よ。綺麗な薔薇がいっぱいで、眺めてて飽きないし……」
一方会場の隅っこで大人しくしていた灯は、お客様に代わる代わると声を掛けられていて。
「こんな素敵な場所に、ボクなんかが居ていいのかな……とも思うけど」
どちらかといえば内向的な性格の灯は、人の中に入っていくのが苦手だが、喋り掛けられた時はきちんと応対を。
きっとお客様方は、謙虚に笑顔を緩めながらお喋りする灯に好意を持ちながら楽しんでいた。
―――そして招待客との時間を過ごしたその後は、みんなロゼの元へ。
「いやー、素敵な庭だねー? こんな素敵な場所で楽しめるなんて、最高だねー? 依頼、ありがとうねー?」
ランがゆるっと言うとロゼは嬉しそうに微笑んだ。
「うふふ」
上機嫌な彼女はこの後もハンター達とのお喋りに夢中に。ミィナにお勧め料理のレシピを教えたり、カフカに薔薇を育てるコツを話したり、イレスの質問には薔薇は生まれた時から惹かれる花だったこと……そしてどの色もどの子達も愛おしくて選べないほど愛しているということを答えて。
「そういえばロゼさん、いい匂いがする……」
灯が彼女の花蜜のような香りに気付くと、カフカも続いた。
「優しい香りの香水だね?」
褒められて嬉しいロゼは「きっとこれね、花蜜の香りなのよ」とクリスタルの香水瓶をハンター達に見せる頃、
「あ。そろそろパーティーが終わる時刻なんじゃないかなー」
あっという間に時間は過ぎていて、メイムがロゼに教えてあげた。
「あら、いけない!」
メイムにお礼を言うとロゼは楽団が演奏していた舞台に立ち、「それでは皆様、お楽しみの最中ではありますが、これにてガーデンパーティーを終了したいと思います」と締めの挨拶を。
「無事に終わりましたわね」
イレスが言うと、ハンター達は共に頷いた。招待客に被害が被る事もなくて、皆幸せそうに、楽しそうに退場していくのを見送りつつ、ほっと一息安堵していたのだが――――。
まさか、パーティー内にお客さんが居なくなった直後に、あんな事が起きるなんて。
彼ら彼女達は、思いも寄らなかっただろう。
●波乱は突然に。ロゼを狙う蜂を追いかけて
「……何てこった……」
(パーティーの警護だけで終わると思ったのに……)
カフカの翡翠の瞳は食い入るように見つめつつ、目を疑った。
(危ない、ロゼさんが……!)
―――この緊急事態に灯は、『覚醒』。
「お、お嬢様をお願いします!」
使用人が慌ただしく預かっていた槍をイレスに渡しロゼを託すと、イレスは頼もしく頷いた。
「お任せくださいですわ」
ハンター達は急いで駆けだした。20体の蜂雑魔に狙われている、彼女の後を。
「私の薔薇は大丈夫……!?」
自分の事よりも薔薇を心配するロゼ。
「僕が守るし大丈夫だから、安心してねー?」
それには後方で薔薇が安全なように注意深く見張っていたランが、彼女を宥めて。
「ロゼさんにも、薔薇にも、指一本触れさせないのん!」
たとえ逞しいロゼと言えど蜂雑魔を撒いて逃げ切るのには限度がある。だからこそ蜂雑魔の数を減らしておきたかったミィナは、射線に注意をして―――。
雷撃による攻撃を与え、蜂を一体消滅させた。
●美しき戦
「ミィナさんもイレスさんも大丈夫!?」
「へ、平気なのん……!」
「ロゼさんがおっしゃった薔薇のないエリアまであともう少しなんですよね。そこまで頑張りましょう」
麗しいドレスを纏うロゼ、ミィナ、イレスが先頭に立ち、薔薇の小道を駆け抜ける―――。
蜂雑魔達はロゼと共にミィナとイレスも狙っているようだ。
どうやら残りの19体はミィナのライトニングボルトで振り返った瞬間に気付いたらしい。
―――蜂雑魔達を誘惑する花蜜を漂わせる乙女が、あともう二人居ると。
一見不可解な戦況だったが蜂雑魔達が何に惹かれているかは、追いかけるハンター達にもお見通し。
「ロゼさーん多分原因は香水瓶、広い場所で地面に捨てて横に逃げて~」
薔薇のない地点に辿り着くとメイムはロゼに指示をした。
いつも持ち歩いているお気に入りの香水瓶。
それが原因だと教えられると、ロゼは成程と納得したようだった。
「ロゼちゃん! その香水、貸してくれるかな?」
先程と雰囲気が変わった灯は、まるで静やかな白から溌剌な白へと。
その変化に驚くロゼだったが、「ならお願いね……!」と香水瓶を託す。
「ありがとう、ロゼちゃん!」
軽やかな白薔薇の乙女は香水瓶の蓋を開け、華麗にステップを踏むように「こっちだよー!」
自らに向かってくるように挑発。
そして誘われてきた蜂雑魔の集中狙いを的確に避け、好戦的な灯は楽しそうに電光石火をお見舞い。
見事な撃滅ぶりに感心していたロゼ。
するとまだ走るのを辞める訳にはいかない彼女へと、真っ白いテーブルクロスが守るように包み込む。
ロゼが振り返れば、麗しき紳士が。
「白は蜂を刺激しない色だから……気休めかもしれないけど!」
カフカは追いかける直前にテーブルクロスを3枚、持ち出していた。
これで蜂雑魔は香りがいい真っ白な対象よりも、香りもよくて刺激的な色の対象物を狙いやすくなるだろう。冷静で賢明な処置であり、沈着な判断だ。
それでも追いかけてくる蜂雑魔は、イレスが守りの構えで立ちはだかった。
―――青き瞳の乙女は、凛とした眼差しで敵を射る。
鮮やかに槍を振るい、可憐なドレスを身に纏いながらも勇ましく、ロゼを守り、撃滅させていく。
守られていたロゼはそんなイレスの武勇に惚れ惚れすることだろう。
友達から無事を祈られているような心強さを感じたメイムは同行していたパルムに華麗に指示を。
「行ってキノコ!」
メイムは手を前にかざすポーズすら麗しく、魔力を纏ったパルムは蜂雑魔へと攻撃。
「さー、こっちにもおいでー? あはは」
香水を借りて標的になり、優雅に追いかけっこを楽しんでいるようにも窺えて絵になるランは、ロゼから離れた場所まで引き離すとレイピアを構えて。野生の瞳で脆い関節を見抜き、鋭い一閃を与えた。
「さてと、どんどん片付けないとねー……?」
カフカも香水を借りて身に着けるならば、出来るだけ多くの蜂雑魔を誘った。同様にミィナも、カフカとは違う方面へと。
誘導する彼らの目的は、スリープクラウド。
まんまと罠に嵌った残りの蜂雑魔達は全て眠りにつくだろう。
「よし、成功だね」
「やったのん!」
カフカとミィナは美しく作戦成功が決まって、手ごたえを感じる。
――こうなれば蜂雑魔の撃滅はたやすい。
ハンター達は華麗に総攻撃を与え、眠りについている蜂雑魔を確実に一撃で仕留めながら。
「シュート~」
メイムは鮮やかにファミリアアタック。
「これで終わりだよ!」
最後の一体を確実にしとめるべく、灯は颯爽と疾風剣で鮮やかに撃退し美しく最後を決めるのだった―――。
●親愛なる友と、特別なパーティー
「本当にありがとう、助かったわぁ」
彼らが居なければ今頃どうなっていたことか―――。
ずっと守ってくれたハンター達に感謝しながら、微笑みを浮かべ提案する。
「そうだわ、皆さんお疲れでしょう? お礼もしたいですし、これからお茶にしない?」
温かで香り高いローズティーを召し上がれ。
今度は小さなテーブルで、彼らだけの特別なパーティーだ。
「このローズティー、美味しいねー?」
ランがローズティーを口にして温まりながら言うと、灯がうんうんと頷いた。
「本当に美味しい」
薔薇を愛するお嬢様ということもあって絶品なその味に感激して。
「ロゼさん、もしよければローズティーの美味しいレシピを教えていただきたいですわ」
「あっ、私も教えて欲しいのんっ」
「勿論喜んでお教えするわ。皆さんは素敵な私の友人ですもの」
すっかり親しげになったロゼは、ミィナとイレスにとっておきのレシピを。
「よくやった、キノコ」
一方メイムは皆とのお喋りも楽しみつつ、戦闘で活躍したパルムを褒め称えていた。
―――麗しのローズガーデンを見つめ、カフカは目を細める。
先程までの慌ただしさが嘘のような、風薫る薔薇の庭。彼らが守った薔薇達は誇らしげに美しく、咲いていた。
依頼結果
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- 月氷のトルバドゥール
カフカ・ブラックウェル(ka0794)
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/13 09:35:35 |
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相談卓 佐井 灯(ka4758) 人間(リアルブルー)|17才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2015/05/17 16:33:42 |