ゲスト
(ka0000)
密売人と野犬の群れ
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2015/05/18 12:00
- 完成日
- 2015/05/25 06:11
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ここは同盟領、農耕推進地域「ジェオルジ」の片田舎。
「俺はこれから集落に戻るが、お前はどうするんだ?」
男が旅支度を調えて銀髪の少年に聞いた。
少年の名は、モータル。
この男の集落に自分が身を寄せていた盗賊の襲来を告げたものの信用してもらえず盗賊に襲われ、数日経過している。
「自分の力を試したい」
モータル、ぶっきらぼうに返した。
「だったら……」
この言葉を聞いて男は改めて息を吸い込みモータルを正面に位置した。そして真顔になって言葉を絞り出す。
「いいか、『危ない橋を渡れ』」
その響きにはっとするモータル。
「自ら望んで『危ない橋を渡れ。誰かのために、自分で』」
「……」
力説する男の迫力に息を飲んだ。どう返していいか分からない。
「俺のオヤジは、あの集落で密造酒製造に積極的に関わった。……不作が続いてどうしようもなかったと子どものころに聞いた。だから俺も誇りを持って密造酒に関わった。里のみんなのために、もしもばれても里の罪にはならずに数人の罪になるように」
こくり、と頷くモータル。
この男の言いたいことはとてもよく分かった。男の実体験からくる話に大きく心を揺さぶられた。
「だから、俺は残った密造酒のいくらかを役人に窃取される前に捌くため、里を抜けた。……戻れば罪に対する償いが待ってるだろうが、この金だけは集落の復興のため、隠し財産としてこっそり渡さないといけない」
新たな使命に燃えていた。そしてモータルには、お前はもう無関係だという視線。
やがて男は小さな袋をモータルに渡す。
「これは俺に付き合ってくれた礼金だ。自分の力を試したいというなら、やってみろ」
「ありがとうございます」
「もしも」
頭を下げたモータルに、男は間髪入れずに言葉を重ねた。
「もしも、俺の言った言葉を大切にするなら、密造酒を売り捌いた『ベンド』という密売人の男に付いていくといいだろう」
「ベンド?」
「ああ。密売人と言えば聞こえは悪いが、地方で困ってる俺たちみたいな住民の暮らしを支えてくれる、良い密売人だ。決して人の命を軽んじる闇の密売人じゃない」
「良い密売人……」
モータル、瞳を輝かせた。
自らのあこがれる「義賊」像に近いと感じた。
そしてベンドという男に正式に世話になることとなった。
「ゴブリンに襲われて戦ったんなら歓迎やな。いま、護衛にハンター呼んだとこや。まあ、雇ったるわ」
背を曲げた男は両手をこね合わせながらモータルを引き取った。
「じゃあな」
「……ありがとう。『危ない橋を渡れ。自分が、誰かのために』」
モータルは男から送られた言葉を口にする。初めて、自分を認めてくれ一目置いてくれた、自己犠牲をいとわない男の中の男からの大切な言葉だ。
「そうだ。『自分が、誰かのために。危ない橋を渡れ』」
男はまっすぐモータルの視線を受けとめ、合言葉のように返して頷いた。
こうして、男は密造酒の里に帰っていった。秘密の復興資金を届けるために。
一方、モータル。
「ほなモータル、行くで。ハンターが来たら次の街や」
「何を運ぶんです?」
聞いたモータルに、ベンドは曲げた背中越しに振り向いた。にぃっ、と不気味な笑みだった。
「知らん方がええ。信用できへんなら、積荷を好きに調べてええで」
ひひひ、と笑うベンドだった。
やがてベンドは次の商いに出発する。
「年老いた馬に……小さな荷馬車が一つ。しかも荷物は樽が数えるほど……」
モータル、積荷や商隊編成を見て呆れた。
「それでハンターまで雇って……商売になるんですか?」
「ベンド商会の取り扱い商品は、目に見えるもんだけやないねん。ハートを運ぶんや!」
ベンドは意気揚々とムチをならして出発する。
道中、森の中で野犬の群れに襲われることになるが。
もちろんこれは織り込み済み。
野犬退治の囮として、そしてこの状況を利用し、ある大切な商いのために危険な近道を通るのだ。
「俺はこれから集落に戻るが、お前はどうするんだ?」
男が旅支度を調えて銀髪の少年に聞いた。
少年の名は、モータル。
この男の集落に自分が身を寄せていた盗賊の襲来を告げたものの信用してもらえず盗賊に襲われ、数日経過している。
「自分の力を試したい」
モータル、ぶっきらぼうに返した。
「だったら……」
この言葉を聞いて男は改めて息を吸い込みモータルを正面に位置した。そして真顔になって言葉を絞り出す。
「いいか、『危ない橋を渡れ』」
その響きにはっとするモータル。
「自ら望んで『危ない橋を渡れ。誰かのために、自分で』」
「……」
力説する男の迫力に息を飲んだ。どう返していいか分からない。
「俺のオヤジは、あの集落で密造酒製造に積極的に関わった。……不作が続いてどうしようもなかったと子どものころに聞いた。だから俺も誇りを持って密造酒に関わった。里のみんなのために、もしもばれても里の罪にはならずに数人の罪になるように」
こくり、と頷くモータル。
この男の言いたいことはとてもよく分かった。男の実体験からくる話に大きく心を揺さぶられた。
「だから、俺は残った密造酒のいくらかを役人に窃取される前に捌くため、里を抜けた。……戻れば罪に対する償いが待ってるだろうが、この金だけは集落の復興のため、隠し財産としてこっそり渡さないといけない」
新たな使命に燃えていた。そしてモータルには、お前はもう無関係だという視線。
やがて男は小さな袋をモータルに渡す。
「これは俺に付き合ってくれた礼金だ。自分の力を試したいというなら、やってみろ」
「ありがとうございます」
「もしも」
頭を下げたモータルに、男は間髪入れずに言葉を重ねた。
「もしも、俺の言った言葉を大切にするなら、密造酒を売り捌いた『ベンド』という密売人の男に付いていくといいだろう」
「ベンド?」
「ああ。密売人と言えば聞こえは悪いが、地方で困ってる俺たちみたいな住民の暮らしを支えてくれる、良い密売人だ。決して人の命を軽んじる闇の密売人じゃない」
「良い密売人……」
モータル、瞳を輝かせた。
自らのあこがれる「義賊」像に近いと感じた。
そしてベンドという男に正式に世話になることとなった。
「ゴブリンに襲われて戦ったんなら歓迎やな。いま、護衛にハンター呼んだとこや。まあ、雇ったるわ」
背を曲げた男は両手をこね合わせながらモータルを引き取った。
「じゃあな」
「……ありがとう。『危ない橋を渡れ。自分が、誰かのために』」
モータルは男から送られた言葉を口にする。初めて、自分を認めてくれ一目置いてくれた、自己犠牲をいとわない男の中の男からの大切な言葉だ。
「そうだ。『自分が、誰かのために。危ない橋を渡れ』」
男はまっすぐモータルの視線を受けとめ、合言葉のように返して頷いた。
こうして、男は密造酒の里に帰っていった。秘密の復興資金を届けるために。
一方、モータル。
「ほなモータル、行くで。ハンターが来たら次の街や」
「何を運ぶんです?」
聞いたモータルに、ベンドは曲げた背中越しに振り向いた。にぃっ、と不気味な笑みだった。
「知らん方がええ。信用できへんなら、積荷を好きに調べてええで」
ひひひ、と笑うベンドだった。
やがてベンドは次の商いに出発する。
「年老いた馬に……小さな荷馬車が一つ。しかも荷物は樽が数えるほど……」
モータル、積荷や商隊編成を見て呆れた。
「それでハンターまで雇って……商売になるんですか?」
「ベンド商会の取り扱い商品は、目に見えるもんだけやないねん。ハートを運ぶんや!」
ベンドは意気揚々とムチをならして出発する。
道中、森の中で野犬の群れに襲われることになるが。
もちろんこれは織り込み済み。
野犬退治の囮として、そしてこの状況を利用し、ある大切な商いのために危険な近道を通るのだ。
リプレイ本文
●
ぶひひん、と年老いた馬が嘶いた。
馬につないである小さな荷馬車の荷台には、紫色をした髪のエルフ少女がぺたんとお尻から座り込んでいる。
ケイルカ(ka4121)である。
「ねえ、この積荷、何が入っているの?」
ケイルカ、ぽんぽんと一つの樽を叩いて振り返る。
「そんな無邪気に聞かれても」
視線を受けたモータルが答える。
「まあ、子供のように開けてみたりしないだけ……」
「そんなことはしないわ。私、そんなお年頃じゃないもの」
思わずつぶやいたモータルに、とてもにっこりと微笑んで――というか、得意げな子供のように言う。
「……一目見て判断し、その人に失礼に当たらないことを言う」
ここで、すっと横からルシール・フルフラット(ka4000)が現れた。目を伏せて、まるで宮廷での社交指南のような口調で話す。次に目を開き、モータルを見た。
「もしも、立派な男性になろうとするなら心得ておくといいぞ」
くす、と微笑している。
「おや、そこの僕は会ったことがあるんだよぉ」
さらに横から、シェリアク=ベガ(ka4647)が気分良さそうにステップを踏みながら寄って来た。
「モータル……確かそっちは……」
「やっぱり! 私はベガ。元気そうならなによりだねっ」
気分が良さそうだったのは、どうやら前回の顔見知りが無事だったから。
「無事……というなら」
荷物の方では天竜寺 詩(ka0396)がケイルカのぽむぽむしていた樽をじっと見ている。
「割れ物とかだと緩衝材詰めとくとか色々考えないといけないから、何を運ぶのかは聞いておきたいかな?」
「……開けてもろうてもええで」
ここでベンドがやって来た。ひひひと肩で笑っている。
「じゃあ開けるね?」
ケイルカが開けてみると……。
「わあっ、いい匂い。アンズかな? 詩ちゃん、そっちは?」
「こっちは……ただの小麦かな?」
何の変哲もない、本来なら少量輸送しても採算の合わない荷物だ。
「ひっくりかえっても割れたりはしないね」
んんん、と考えつつ詩。
「……きっと意味があることなのね。大丈夫、馬も馬車も積荷も守りきってみせるからね」
んー、と少し考える風にしたケイルカは、にこりと決意を見せる。
「コレが拙者の初依頼! 頑張るんだよ!」
これまで黙って経緯を見守っていたシェリー・ポルトゥマ・ディーラ(ka4756)が声を張った。手は腰の大小――東方仕込みの日本刀と小太刀――にしっかりかかっている。
一方、ルシールはまっすぐベンドの方に。
「野犬退治をするにせよ、一見分かり難い大切な荷を届けるにせよ。今回の依頼の本来の目的の種明かしは是非聞いておきたいな」
「種があるかどうかは食べた後に分かるんちゃうか。……どんな実かて?」
ひひひ、とベンド。これをルシール、後で必ず教えるつもりだな、という視線を投げ念押ししておいて引き下がる。
「野犬の群れは有名みたいだねぇ」
話の途切れたところに、シェリアク。くすくすと得意そうな笑みを見せているぞ?
「どうしたの、シェリアクちゃん?」
「有名だから、ちょっと聞き込んだらいろいろ聞けたの」
ケイルカの視線に待ってましたとばかりに話すシェリアクだった。
●
とにかく馬車は急ぎ出発。
「あのねー」
馬車の横を守るシェリアクが、出発前の話題に戻す。
「襲ってくる野犬、しつこく何度も追いかけて来るんだって」
「ん?」
ルシールがいち早く反応した。
「まさか獲物を追い込む動きをしているのか?」
「ありうるよね~」
これに詩が馬車の反対側から可愛らしく首を傾げて同意してきた。
「やっぱり、森の中で隠れる場所が多いところに追い込んだ方が確実だもん」
「商人さん、先の道は一本道かな?」
シェリアク、大きなリボンを揺らしてベンドに話を振る。
「そうじゃ。追い込む、というならそこの嬢ちゃんが言った通り、襲いやすい場所に急がせて、というところかの?」
「ならば、先をしっかりと確認すればいい」
ベンドの話にルシールが皆を安心させるような口調で言い切った。
「斥候なら拙者がやるね!」
これに刀の鯉口を切りつつ、シェリーが声を大にした。
「うずうずしてるようだが、斥候ならば左右しっかり確認するのがいいだろう。私も行く」
「ルシール殿と一緒だね」
頷くシェリー。
「しっかりね。私たちは馬車の前後左右を固めるから」
詩が言ったところでルシール、気付いた。モータルに近寄る。
「ん、モータルには自分の身と、そして荷馬車を貰うとしようかな」
ぽむ、と肩を叩き言う。
「頼んだぞ」
「わ、分かった」
最後の一言で目が輝いた。初めて期待された喜びに満ち溢れている。
「でも、敵に合わせる必要ないよね♪」
今まで成り行きを見守っていたケイルカがついに口を挟んだ。
にっこにこしているぞ?
●
「はい、たくさん食べてねっ♪」
ケイルカがばさーっ、とレジャーシートを広げた後に出した物は、お弁当箱だった。
あれから馬車は何事もなく森の中の道に入った。野犬の襲撃もなく、今はかなり開けた場所に出ている。
「昼に早いけど、ええやろ。ここから先はゆっくりできへんやろし」
ベンドもその気なのでそのままランチタイムだ。
おっと、モータルはちょっと不満そうだぞ?
「でも、危険……」
「あら、あえての誘い出しよ。ランチ食べたりくつろいだりお昼寝したり、リラックスムードを醸し出してワンちゃんたちが出てくれば……」
「迎え撃てばいいだけだよっ」
おっと。
ケイルカに続いてシェリアクもお弁当箱を出したぞ。
「わ、シェリアクちゃんも? 私はスモークサーモンと野菜とチーズのサンドイッチ。コーンの冷製スープもあるのよ♪」
「私はハムサンド! 犬こないならみんなで食べよう♪」
じゃーん、と広げられるお弁当箱。ケイルカは水筒からスープを入れて配り配り。
「……」
モータルはなお不満そう。
そこにルシールとシェリーが座る。
「周りに異常はなかったな」
「安心していいよ」
さらに詩。
「見通しいいし、ここで来れば私の出番だよね」
リュミエールボウを構えてみせる。
「……すぐに出発できない状況だから、馬車狙いか護衛狙いかは一目瞭然」
「しかも敵の手の内じゃない、か」
きりり、と弦を引いてケイルカの提案した作戦の狙いを話してやる。モータル、さすがにこれで納得。
「ほらほら、食べて? 美味しい?」
「う、うん。……おいしい」
口に放り込まれたサンドの端をもぐりとやり、ケイルカに頷くモータルだった。
「ハムサンドもうまいよ! 依頼って毎回こうなら楽しいな! サムライは食わねど……なんだっけ?」
「食べられるときはしっかり食べて戦いに備える、あたりかな?」
シェリーの楽しそうな様子にルシールもにっこり。
「ボタンも喜んで食べてるよ」
詩は連れてきたペット、犬のボタンにハムをやっていたり。
「やっぱり? 犬ならお肉がいいかなって」
「野犬にはもったいない。もしも襲ってきたらまずハムサンドを守るよ!」
シェリアクがこっそりと狙いを話すと、すかさずシェリーがハム護衛に挙手。これでまた笑いが巻き起こった。
「雰囲気いいな♪ ちょっと絵を描いてくるからゆっくりしててね」
ケイルカ、少し離れてこの光景を絵にする。
「この後、生死をかけた戦いが始まるとは誰も思いもしませんでした……な~んてねっ」
もちろん任務は忘れていない。
傍らのワンドに手を掛け、来るべき戦いに備える。
この楽しいひと時を壊されなかったことを嬉しく思いつつ。
●
最初の襲撃は、太陽が南中してしばらくしてからだった。
「来た、後ろからだよっ!」
殿を守るシェリアクからの声。野犬五匹が群れを成して追いかけてきている。
「野生の犬なら火は嫌い……嫌いじゃなくても燃えちゃえばいいのっ!」
果敢に敵へと向かうシェリアク、七支刀を構えたまま左手をかざしファイアアロー。敵を派手に撃ちつつ威嚇する。
きゃん、と食らった一匹は無理せず後退。しかし残りは早い。一気に……。
「あっ。やっぱり敵は馬車狙いなんだよっ!」
やや孤立したシェリアクを、野犬たちは次々と追い抜いていた。
こちら、敵襲を知り前へ速度を上げた馬車。
『わん!』
「横から野犬、来てるみたい!」
詩の連れたペットのボタンが鼻を利かせて敵襲にいち早く気付いた。
これにケイルカが頷きワンドをぎゅっと握りしめる。
瞬間、猫の影がケイルカの足元に浮かび、にゃんにゃんごろごろし始める。
「よーし、私の方だね。……来た来た。さあさあ、ごらんあれ、猫イリュージョン。猫魔術師だけど犬には負けないから!」
掲げたワンドに猫の影が吸い込まれたかと思うと、青白いガスが前方に広がった。スリープクラウドだ。
野犬、警戒して突っ込んでこない。
「あらら、結構賢いのかしら?」
首をひねるが馬車をあらかじめ守る、という目的はより安全に果たしていたが。
「これなら狙い撃ちができるね」
幌のない馬車に飛び乗った詩、弓を引いて近付きそびれた敵を撃つ。
「追い込まれないよう、行く先を守る」
前方のルシール、盾を構え自ら割り込むつもりだったが、味方の防御策を見て前方での待ち伏せを警戒することにした。
「ルシール殿がそういうなら」
シェリーも前に走る。
こうして敵の第一攻撃はやり過ごした。
「ねえ、敵の狙いは何かなぁ?」
「馬車みたいな感じだけど……ただ前に急がせているだけみたいだよね。馬を狙うとかしないし」
シェリアクの疑問。詩も首をひねる。
「詩ちゃんが近寄らせてないからよ、きっと」
「それを言うならケイルカも近寄らせてないんじゃないかな」
味方をほめるケイルカ。ルシールはその彼女もほめる。
「ルシール殿」
ここでシェリーが木々の間から見える前方の地形を指差した。
「あそこが盛り上がっているが、このままいくと道も起伏があるか急に曲がるかしているんじゃないかな」
「よし、少し遠いが先に二人で調べておこう。何かあれば急いで引き返して知らせる」
ルシールが頷き二人で先行する。
ここが、勝負の分かれ目になった!
しばらくのち、野犬が襲ってきた。
「いい加減倒れるといいのっ!」
シェリアクのウインドスラッシュで、きゃいんと一匹の野犬が跳ねとんだ。地に落ちびくりとした後動かなくなる。いままで戦力を削る戦いを敵が仕掛けてこないので迎撃側も止めを刺せない状況が続いていたのだ。
「ねえ、今回敵が多くないかな?」
ケイルカの疑問は、スリープクラウドを回避し回り込んでくる敵がいたから。いままで二組だったのが、三組に増えている。
「前に回り込まれるかも!」
反対から全体を見るモータルの声。
「馬車は守りたい」
詩の声と同時に一瞬の閃光。敵は何かあるかもとひるむが、これはただの光だ。
「シェリアクさん、速度上げるよ!」
「詩ちゃん、分かったんだよ」
野犬の、今までとは違う速度と圧力、そして何より全戦力を集中しての攻勢はさすがにこの人数では防ぎきれるものではない。
「森の中の遠くから観察されてたのかなぁ」
「それか、ここで張られて待ち伏せされてたか」
移動戦闘をしつつ、タイミング良く攻められたことを考えるケイルカとシェリアク。
「遅くなってすまない」
「急カーブがあるけど先に待ち伏せはされてないよ」
ここでルシールとシェリーが戻って来た。盾で馬車に飛び乗ろうとする犬を防ぎ、抜刀して振り抜く刀が敵の突っ込みをけん制する。
「馬車を潰して敵を潰せと言われ老いた馬を寄越されたが……馬車は商人の財産じゃあ!」
必死に馬を急がせるベンドから、思わず漏れた裏事情。
「商人は商人なりの、戦いというものがある、と……」
これを聞いたルシール、微笑。意気に感じたようだ。
そして予期せぬ事態が目前に。
目の前に急カーブが迫ったのだ!
●
「しもうた!」
ベンド、減速できない。急カーブが迫る。
「耐えるんじゃ!」
カーブで横に流れる車体。バランスが崩れる。ここで野犬に馬が襲われたら一発横転だが……。
「大丈夫。待ち伏せの犬は……」
「はっ!」
シェリーが自信を見せる。そしてルシールが気付いたっ!
「上だっ!」
ルシール、ちゃんと警戒していた。
が、枝から大きく跳躍してバランスを必死で取ろうとしている馬に襲い掛かった野犬に、どう対処する?
その時、商人のベンドの視線を感じた。
「……ならば、騎士は騎士らしく!」
身を挺すべく、跳躍!
『おんっ!』
伸ばした剣は野犬に届いた。
吹っ飛んだ野犬は、詩の追撃の矢でくたばった。
しかし、ルシールは着地時に馬と交錯。馬に被害がないよう身をひねった分、ひどく体を打つ着地となった。
『ひひひん』
その分、馬は無事。ががが、と馬車は駆け抜けた。
「あ……今なんだよっ!」
殿のシェリアク、野犬の動きが鈍ったことを察知し味方を鼓舞する。七支刀をぶん回して足の止まった野犬を散らす。
「今なら……光あれ!」
天使の輪と片翼だけの天使の羽の現れた詩が高々と弓を掲げる。セイクリッドフラッシュが周囲の敵を包み圧した。
「猫イリュージョン再び。もう走る必要ないから、休んでね」
ぼふ、と今度は直撃するように睡眠魔法を使うケイルカ。足の止まった野犬の動きが鈍る。もちろん寝た犬もいる。
「ならば拙者は踊るよ!」
ルシール、半円の動きで敵の攻撃を避け、別の犬に半身から一気に距離を詰めての水平斬り。
「さらに行くよ!」
今度は刀をしっかり両手持ちで上段からばさり。腰を落とした姿勢で、背後に落ちる敵を感じる。
そのころには、ほとんどの犬が地に伏せていた。
「町の名士の娘が流れの吟遊詩人と両想いになっての。じゃが、二人とも家と旅を取って別れた。それで娘はせめて道中の無事を祈る手作りのお守りを渡したかったんや」
目的の町に無事に到着して、ベンドがすべてを話した。
「が、名士は駆け落ちされるのが怖いと娘を家に閉じ、手紙類も禁止した。……が、ちょうど野犬退治の囮商隊を出すと発案してワシを雇った。娘はワシへのお守りとして渡し、これを吟遊詩人に届けてくれ、と。発案者としてはワシへのお守りまで禁止するわけにもいかんいうわけや」
「なるほどね~。すっきりかも!」
シェリアクは晴れ晴れした笑顔。
「でも、アンズは?」
「お嬢ちゃんらのおかげで、収穫の喜びも無事に届けられたわい」
聞いたケイルカ、にこり。
「どうした?」
ルシールはモータルの視線を感じて振り返っていた。羨望のまなざしのようである。
詩も気付き、モータルの肩をたたいてやる。
「お疲れ様。……命を粗末にだけはしないでね。君に何かあったら悲しむ人はいるもん。……知り合った私は、少なくとも」
詩の言葉で、どうやら最後に身を投げ出した時のことか、と気付いたルシール。くすっ、と笑う。
「ありがとう。……仲間、か。いいね」
モータルの方は、ハンターたちを見て道中ずっと感じていたことをしみじみと漏らしていた。
ぶひひん、と年老いた馬が嘶いた。
馬につないである小さな荷馬車の荷台には、紫色をした髪のエルフ少女がぺたんとお尻から座り込んでいる。
ケイルカ(ka4121)である。
「ねえ、この積荷、何が入っているの?」
ケイルカ、ぽんぽんと一つの樽を叩いて振り返る。
「そんな無邪気に聞かれても」
視線を受けたモータルが答える。
「まあ、子供のように開けてみたりしないだけ……」
「そんなことはしないわ。私、そんなお年頃じゃないもの」
思わずつぶやいたモータルに、とてもにっこりと微笑んで――というか、得意げな子供のように言う。
「……一目見て判断し、その人に失礼に当たらないことを言う」
ここで、すっと横からルシール・フルフラット(ka4000)が現れた。目を伏せて、まるで宮廷での社交指南のような口調で話す。次に目を開き、モータルを見た。
「もしも、立派な男性になろうとするなら心得ておくといいぞ」
くす、と微笑している。
「おや、そこの僕は会ったことがあるんだよぉ」
さらに横から、シェリアク=ベガ(ka4647)が気分良さそうにステップを踏みながら寄って来た。
「モータル……確かそっちは……」
「やっぱり! 私はベガ。元気そうならなによりだねっ」
気分が良さそうだったのは、どうやら前回の顔見知りが無事だったから。
「無事……というなら」
荷物の方では天竜寺 詩(ka0396)がケイルカのぽむぽむしていた樽をじっと見ている。
「割れ物とかだと緩衝材詰めとくとか色々考えないといけないから、何を運ぶのかは聞いておきたいかな?」
「……開けてもろうてもええで」
ここでベンドがやって来た。ひひひと肩で笑っている。
「じゃあ開けるね?」
ケイルカが開けてみると……。
「わあっ、いい匂い。アンズかな? 詩ちゃん、そっちは?」
「こっちは……ただの小麦かな?」
何の変哲もない、本来なら少量輸送しても採算の合わない荷物だ。
「ひっくりかえっても割れたりはしないね」
んんん、と考えつつ詩。
「……きっと意味があることなのね。大丈夫、馬も馬車も積荷も守りきってみせるからね」
んー、と少し考える風にしたケイルカは、にこりと決意を見せる。
「コレが拙者の初依頼! 頑張るんだよ!」
これまで黙って経緯を見守っていたシェリー・ポルトゥマ・ディーラ(ka4756)が声を張った。手は腰の大小――東方仕込みの日本刀と小太刀――にしっかりかかっている。
一方、ルシールはまっすぐベンドの方に。
「野犬退治をするにせよ、一見分かり難い大切な荷を届けるにせよ。今回の依頼の本来の目的の種明かしは是非聞いておきたいな」
「種があるかどうかは食べた後に分かるんちゃうか。……どんな実かて?」
ひひひ、とベンド。これをルシール、後で必ず教えるつもりだな、という視線を投げ念押ししておいて引き下がる。
「野犬の群れは有名みたいだねぇ」
話の途切れたところに、シェリアク。くすくすと得意そうな笑みを見せているぞ?
「どうしたの、シェリアクちゃん?」
「有名だから、ちょっと聞き込んだらいろいろ聞けたの」
ケイルカの視線に待ってましたとばかりに話すシェリアクだった。
●
とにかく馬車は急ぎ出発。
「あのねー」
馬車の横を守るシェリアクが、出発前の話題に戻す。
「襲ってくる野犬、しつこく何度も追いかけて来るんだって」
「ん?」
ルシールがいち早く反応した。
「まさか獲物を追い込む動きをしているのか?」
「ありうるよね~」
これに詩が馬車の反対側から可愛らしく首を傾げて同意してきた。
「やっぱり、森の中で隠れる場所が多いところに追い込んだ方が確実だもん」
「商人さん、先の道は一本道かな?」
シェリアク、大きなリボンを揺らしてベンドに話を振る。
「そうじゃ。追い込む、というならそこの嬢ちゃんが言った通り、襲いやすい場所に急がせて、というところかの?」
「ならば、先をしっかりと確認すればいい」
ベンドの話にルシールが皆を安心させるような口調で言い切った。
「斥候なら拙者がやるね!」
これに刀の鯉口を切りつつ、シェリーが声を大にした。
「うずうずしてるようだが、斥候ならば左右しっかり確認するのがいいだろう。私も行く」
「ルシール殿と一緒だね」
頷くシェリー。
「しっかりね。私たちは馬車の前後左右を固めるから」
詩が言ったところでルシール、気付いた。モータルに近寄る。
「ん、モータルには自分の身と、そして荷馬車を貰うとしようかな」
ぽむ、と肩を叩き言う。
「頼んだぞ」
「わ、分かった」
最後の一言で目が輝いた。初めて期待された喜びに満ち溢れている。
「でも、敵に合わせる必要ないよね♪」
今まで成り行きを見守っていたケイルカがついに口を挟んだ。
にっこにこしているぞ?
●
「はい、たくさん食べてねっ♪」
ケイルカがばさーっ、とレジャーシートを広げた後に出した物は、お弁当箱だった。
あれから馬車は何事もなく森の中の道に入った。野犬の襲撃もなく、今はかなり開けた場所に出ている。
「昼に早いけど、ええやろ。ここから先はゆっくりできへんやろし」
ベンドもその気なのでそのままランチタイムだ。
おっと、モータルはちょっと不満そうだぞ?
「でも、危険……」
「あら、あえての誘い出しよ。ランチ食べたりくつろいだりお昼寝したり、リラックスムードを醸し出してワンちゃんたちが出てくれば……」
「迎え撃てばいいだけだよっ」
おっと。
ケイルカに続いてシェリアクもお弁当箱を出したぞ。
「わ、シェリアクちゃんも? 私はスモークサーモンと野菜とチーズのサンドイッチ。コーンの冷製スープもあるのよ♪」
「私はハムサンド! 犬こないならみんなで食べよう♪」
じゃーん、と広げられるお弁当箱。ケイルカは水筒からスープを入れて配り配り。
「……」
モータルはなお不満そう。
そこにルシールとシェリーが座る。
「周りに異常はなかったな」
「安心していいよ」
さらに詩。
「見通しいいし、ここで来れば私の出番だよね」
リュミエールボウを構えてみせる。
「……すぐに出発できない状況だから、馬車狙いか護衛狙いかは一目瞭然」
「しかも敵の手の内じゃない、か」
きりり、と弦を引いてケイルカの提案した作戦の狙いを話してやる。モータル、さすがにこれで納得。
「ほらほら、食べて? 美味しい?」
「う、うん。……おいしい」
口に放り込まれたサンドの端をもぐりとやり、ケイルカに頷くモータルだった。
「ハムサンドもうまいよ! 依頼って毎回こうなら楽しいな! サムライは食わねど……なんだっけ?」
「食べられるときはしっかり食べて戦いに備える、あたりかな?」
シェリーの楽しそうな様子にルシールもにっこり。
「ボタンも喜んで食べてるよ」
詩は連れてきたペット、犬のボタンにハムをやっていたり。
「やっぱり? 犬ならお肉がいいかなって」
「野犬にはもったいない。もしも襲ってきたらまずハムサンドを守るよ!」
シェリアクがこっそりと狙いを話すと、すかさずシェリーがハム護衛に挙手。これでまた笑いが巻き起こった。
「雰囲気いいな♪ ちょっと絵を描いてくるからゆっくりしててね」
ケイルカ、少し離れてこの光景を絵にする。
「この後、生死をかけた戦いが始まるとは誰も思いもしませんでした……な~んてねっ」
もちろん任務は忘れていない。
傍らのワンドに手を掛け、来るべき戦いに備える。
この楽しいひと時を壊されなかったことを嬉しく思いつつ。
●
最初の襲撃は、太陽が南中してしばらくしてからだった。
「来た、後ろからだよっ!」
殿を守るシェリアクからの声。野犬五匹が群れを成して追いかけてきている。
「野生の犬なら火は嫌い……嫌いじゃなくても燃えちゃえばいいのっ!」
果敢に敵へと向かうシェリアク、七支刀を構えたまま左手をかざしファイアアロー。敵を派手に撃ちつつ威嚇する。
きゃん、と食らった一匹は無理せず後退。しかし残りは早い。一気に……。
「あっ。やっぱり敵は馬車狙いなんだよっ!」
やや孤立したシェリアクを、野犬たちは次々と追い抜いていた。
こちら、敵襲を知り前へ速度を上げた馬車。
『わん!』
「横から野犬、来てるみたい!」
詩の連れたペットのボタンが鼻を利かせて敵襲にいち早く気付いた。
これにケイルカが頷きワンドをぎゅっと握りしめる。
瞬間、猫の影がケイルカの足元に浮かび、にゃんにゃんごろごろし始める。
「よーし、私の方だね。……来た来た。さあさあ、ごらんあれ、猫イリュージョン。猫魔術師だけど犬には負けないから!」
掲げたワンドに猫の影が吸い込まれたかと思うと、青白いガスが前方に広がった。スリープクラウドだ。
野犬、警戒して突っ込んでこない。
「あらら、結構賢いのかしら?」
首をひねるが馬車をあらかじめ守る、という目的はより安全に果たしていたが。
「これなら狙い撃ちができるね」
幌のない馬車に飛び乗った詩、弓を引いて近付きそびれた敵を撃つ。
「追い込まれないよう、行く先を守る」
前方のルシール、盾を構え自ら割り込むつもりだったが、味方の防御策を見て前方での待ち伏せを警戒することにした。
「ルシール殿がそういうなら」
シェリーも前に走る。
こうして敵の第一攻撃はやり過ごした。
「ねえ、敵の狙いは何かなぁ?」
「馬車みたいな感じだけど……ただ前に急がせているだけみたいだよね。馬を狙うとかしないし」
シェリアクの疑問。詩も首をひねる。
「詩ちゃんが近寄らせてないからよ、きっと」
「それを言うならケイルカも近寄らせてないんじゃないかな」
味方をほめるケイルカ。ルシールはその彼女もほめる。
「ルシール殿」
ここでシェリーが木々の間から見える前方の地形を指差した。
「あそこが盛り上がっているが、このままいくと道も起伏があるか急に曲がるかしているんじゃないかな」
「よし、少し遠いが先に二人で調べておこう。何かあれば急いで引き返して知らせる」
ルシールが頷き二人で先行する。
ここが、勝負の分かれ目になった!
しばらくのち、野犬が襲ってきた。
「いい加減倒れるといいのっ!」
シェリアクのウインドスラッシュで、きゃいんと一匹の野犬が跳ねとんだ。地に落ちびくりとした後動かなくなる。いままで戦力を削る戦いを敵が仕掛けてこないので迎撃側も止めを刺せない状況が続いていたのだ。
「ねえ、今回敵が多くないかな?」
ケイルカの疑問は、スリープクラウドを回避し回り込んでくる敵がいたから。いままで二組だったのが、三組に増えている。
「前に回り込まれるかも!」
反対から全体を見るモータルの声。
「馬車は守りたい」
詩の声と同時に一瞬の閃光。敵は何かあるかもとひるむが、これはただの光だ。
「シェリアクさん、速度上げるよ!」
「詩ちゃん、分かったんだよ」
野犬の、今までとは違う速度と圧力、そして何より全戦力を集中しての攻勢はさすがにこの人数では防ぎきれるものではない。
「森の中の遠くから観察されてたのかなぁ」
「それか、ここで張られて待ち伏せされてたか」
移動戦闘をしつつ、タイミング良く攻められたことを考えるケイルカとシェリアク。
「遅くなってすまない」
「急カーブがあるけど先に待ち伏せはされてないよ」
ここでルシールとシェリーが戻って来た。盾で馬車に飛び乗ろうとする犬を防ぎ、抜刀して振り抜く刀が敵の突っ込みをけん制する。
「馬車を潰して敵を潰せと言われ老いた馬を寄越されたが……馬車は商人の財産じゃあ!」
必死に馬を急がせるベンドから、思わず漏れた裏事情。
「商人は商人なりの、戦いというものがある、と……」
これを聞いたルシール、微笑。意気に感じたようだ。
そして予期せぬ事態が目前に。
目の前に急カーブが迫ったのだ!
●
「しもうた!」
ベンド、減速できない。急カーブが迫る。
「耐えるんじゃ!」
カーブで横に流れる車体。バランスが崩れる。ここで野犬に馬が襲われたら一発横転だが……。
「大丈夫。待ち伏せの犬は……」
「はっ!」
シェリーが自信を見せる。そしてルシールが気付いたっ!
「上だっ!」
ルシール、ちゃんと警戒していた。
が、枝から大きく跳躍してバランスを必死で取ろうとしている馬に襲い掛かった野犬に、どう対処する?
その時、商人のベンドの視線を感じた。
「……ならば、騎士は騎士らしく!」
身を挺すべく、跳躍!
『おんっ!』
伸ばした剣は野犬に届いた。
吹っ飛んだ野犬は、詩の追撃の矢でくたばった。
しかし、ルシールは着地時に馬と交錯。馬に被害がないよう身をひねった分、ひどく体を打つ着地となった。
『ひひひん』
その分、馬は無事。ががが、と馬車は駆け抜けた。
「あ……今なんだよっ!」
殿のシェリアク、野犬の動きが鈍ったことを察知し味方を鼓舞する。七支刀をぶん回して足の止まった野犬を散らす。
「今なら……光あれ!」
天使の輪と片翼だけの天使の羽の現れた詩が高々と弓を掲げる。セイクリッドフラッシュが周囲の敵を包み圧した。
「猫イリュージョン再び。もう走る必要ないから、休んでね」
ぼふ、と今度は直撃するように睡眠魔法を使うケイルカ。足の止まった野犬の動きが鈍る。もちろん寝た犬もいる。
「ならば拙者は踊るよ!」
ルシール、半円の動きで敵の攻撃を避け、別の犬に半身から一気に距離を詰めての水平斬り。
「さらに行くよ!」
今度は刀をしっかり両手持ちで上段からばさり。腰を落とした姿勢で、背後に落ちる敵を感じる。
そのころには、ほとんどの犬が地に伏せていた。
「町の名士の娘が流れの吟遊詩人と両想いになっての。じゃが、二人とも家と旅を取って別れた。それで娘はせめて道中の無事を祈る手作りのお守りを渡したかったんや」
目的の町に無事に到着して、ベンドがすべてを話した。
「が、名士は駆け落ちされるのが怖いと娘を家に閉じ、手紙類も禁止した。……が、ちょうど野犬退治の囮商隊を出すと発案してワシを雇った。娘はワシへのお守りとして渡し、これを吟遊詩人に届けてくれ、と。発案者としてはワシへのお守りまで禁止するわけにもいかんいうわけや」
「なるほどね~。すっきりかも!」
シェリアクは晴れ晴れした笑顔。
「でも、アンズは?」
「お嬢ちゃんらのおかげで、収穫の喜びも無事に届けられたわい」
聞いたケイルカ、にこり。
「どうした?」
ルシールはモータルの視線を感じて振り返っていた。羨望のまなざしのようである。
詩も気付き、モータルの肩をたたいてやる。
「お疲れ様。……命を粗末にだけはしないでね。君に何かあったら悲しむ人はいるもん。……知り合った私は、少なくとも」
詩の言葉で、どうやら最後に身を投げ出した時のことか、と気付いたルシール。くすっ、と笑う。
「ありがとう。……仲間、か。いいね」
モータルの方は、ハンターたちを見て道中ずっと感じていたことをしみじみと漏らしていた。
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商隊護衛作戦卓 ケイルカ(ka4121) エルフ|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/05/18 01:56:10 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/14 23:03:30 |