小さな影

マスター:風亜智疾

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/07/10 22:00
完成日
2014/07/20 12:55

このシナリオは3日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ヴァリオス郊外。
 中心部からかなり離れた場所に、その空き家はあった。
 今はまだ住人もおらず、中には残された家具が少しだけ。
 恐らく屋敷を建てた元の住人はやや裕福であったのだろう。
 何らかの理由で屋敷を移ったその後も、しっかりと管理を依頼出来るほどの財力を持っていたおかげで、その屋敷は未だ綺麗なまま保たれていた。
 そんな屋敷に、最近複数の音が舞い降りた。

「は? 屋敷の中から音がする?」
「そうなんだよ。こう……ビタンビタンと床を叩きつけるような音で……」
 屋敷の管理を任されている男が、妻にそんな話を漏らしたのは、噂が立って直ぐの頃だった。
「何処かの床が軋んだ音じゃないのかい?」
「いや。まるでこう……這いずり回ってるっていうか、飛び跳ねてるっていうか」
 はっきりしない男に、妻は少々冷めた視線でぼそり呟く。
「あぁもうはっきりしない男だねぇアンタも。なら、さっさと確かめてきな! 今すぐに!」
 家を叩き出されるように出た男は、内心怯えつつ、屋敷に向かうのだった。

 そして男は、屋敷の外から大広間を覗くことに成功する。
 中には入る勇気がなかった。が、それが正しい行動だったのだと直ぐに分かった。
 何故なら、その屋敷の中には――。

「まだ改装が行えない?」
 屋敷の中を確認した翌日、男は新しく入居する予定の女性の下へと訪れていた。
 男から説明を受けた女性は、それだったらと小さく微笑んだ。
「ハンターオフィスに行かれては? ハンターの皆さんなら、きっと上手くやって下さるでしょう」
 なんでも、先日この女性はハンターオフィスを経由して、ハンター達に依頼を出したのだという。
 その時のハンター達の働きをいたく気に入って、きっと力を貸してくれるだろう。と。
「それに……。恐らくは、それは一般人が手を出していいものではないでしょう。誰かが怪我をする前に、早めに退治を依頼して下さいね?」

「あのすみません、お願いがあるのですが……」
 男がハンターオフィスに相談にやって来たのは、新しい入居者との面会が終わった後だった。
「実は、私が管理を任されてる空き家におかしなものがいるんです」
 真っ青な顔で継げる男を見上げたオフィスの職員が、「まあ落ち着いて」と席を勧める。
 飲み物を一気に飲み干して、男は青褪めたままの表情で状況を説明し始めた。
 どうにも、空き家からビタンビタンと音がする。無人のはずなのに、だ。
 おかしいと思って屋敷に行き、中を恐る恐る覗いてみたら。
 そこには半透明の生き物がいた。それも沢山。
 ブヨブヨと飛び跳ね、中に残った家具に当たってはまた飛び跳ねるその生き物を見て、男は悟ったのだ。

 ―これは、一般人が手を出していいものではない、と。

「確認しましたが、大広間以外にはどうもいないみたいなんです。改装しますから、多少なら物が壊れて構いません。ですので、可能な限り早く、あれをどうにかして下さい」
 屋敷には、次の住居人が決まっているらしい。
 街外れに住もうというその変わり者は、とある商会の主人らしいのだが……。
「分かりました。そのご依頼、受領します」
 オフィス職員は頷くと、男の情報を元に、依頼書を作成するのだった。

リプレイ本文

■降る音
 屋敷の中から聞こえて来るビタンビタンという音に、ハンター達は顔を見合わせた。
「スライムかー……凄く斬り応えの無さそうだよねー、軟体生物って」
「あまり良い思い出はないのですけれど、これもお仕事です」
 十六夜(ka0172)の言葉に、少し曇った表情で言葉を返すのはメトロノーム・ソングライト(ka1267)だ。
 一方、離れた場所で屋敷を見つつ、伊勢 渚(ka2038)は愛飲している煙草を一本取り出し、指先でくるりと回している。
「掃除は苦手でな。派手に暴れさせてもらって、早いとこ一服させてもらうぜ」
 ヘビースモーカーの彼にしては、珍しく喫煙を我慢しているらしい。
 仕事上がりの一服が何よりの至福なのだろう。
「なんとなく埃くさそう……ま、取りあえずちゃっちゃと片付けて、風呂入ってさっぱりしようかな」
 シドウ(ka1962)は、スライムが出現してから恐らくは片付けられていないだろう室内を想像して、小さく苦笑を漏らす。
 その横で、ひょこんと顔を覗かせたのはリオン(ka1757)だ。
「ハーイ☆ドーモ! ASCのリオンちゃんが”ゴミ掃除”に参りましたヨ!」
 音の聞こえる方を見て、今度はどんな敵と会えるのか楽しそうに笑っている。
「スラちゃんたちを面白可笑しくブチのめ……お掃除しちゃうゾ☆」 
 ただし、リオンは別の『もの』へも、楽しげに視線を向けていた。
「おやおやァ? あっちは仲睦まじい感じィ? うらやまし~☆」
 視線の先にいたのは、恋人、そして姉妹で今回の依頼に参加した瀬織 怜皇(ka0684)、星輝 Amhran(ka0724)、Uisca Amhran(ka0754)の3名だ。
彼らは屋敷の見取り図を手にしていた。
「皆さん、見取り図を確認しましたが、入り口は正面と裏口の2箇所。大広間の入り口は1箇所のようですよ」
「ならレオ、私達は正面から入りましょう?」
 ぐい、と怜皇の服を引っ張ったウィスカを見やって、星輝は小さく苦笑を漏らす。
「そう急くな、イスカ。まずは皆と作戦の確認をせねばならんじゃろう?」
 『イスカ』という愛称でウィスカを呼ぶ姉と同じ様に笑いつつ、怜皇はぽん、とウィスカの頭を撫でた。
「あまり力みすぎてはいけませんよ。イスカ」
「……うん」
 仲睦まじい姿を見て、リオンが笑いながら。
「あれ~? もしかしてリオンちゃん達、お邪魔ムシ?」
 そんな事を言ったもんだから、思わず怜皇は頭を下げてしまった、出発前のひとこまだ。

■突入会敵
 予めメンバーは班を2つに分けていた。
 怜皇、星輝、ウィスカ、渚のA班と、十六夜、メトロノーム、リオン、シドウのB班。
 A班は正面から。B班は裏口から、万が一敵が大広間以外に現れた時の事を警戒して分かれて突入してみたが。
「……どうやら、大広間以外にはいない、みたいですね」
「念の為、広間を片付けたら他の部屋も見て回る。それでいいんじゃない?」
 合流した双方。怜皇の言葉に十六夜が答え、全員がそれで構わないと頷き返した丁度その頃。
 一行は目的地の大広間前へと到着した。
「……家具は壁際に寄せられてるな」
 扉を薄く開き、その隙間から中の様子を確認して渚が呟く。
「ある程度、動き回ることは可能ですね。とはいえ、やはり家具は可能な限り壊さない方針でいきましょう」
 シドウがひとつ頷き、全員を見回した。
「では、予定通りにいきましょうか」
 全員が頷き返した次の瞬間。

 バァン!
 音を立てて、扉が開け放たれた。

■跳ねるモノ
 ビタンビタン、ビッタン。
 音と共に、大広間の中に広がるのは、半透明の小さな蠢き達。
「仕方ない。一服前の運動だ。早くやっつけちまおう」
 A班、渚は小さく溜息を吐くと、手にしたアサルトライフルを構え、前衛が動き易いようにとスライムの動きを牽制するように射撃を開始する。
 その隙に、前衛の星輝と怜皇が駆け込んだ。
 事前にウィスカが施していた光の鎧が、体当たりを仕掛けてくるスライムから星輝を守っている。
「キララ姉さまに手出しはさせませんっ」
 光球を放つウィスカ目掛けて酸を放とうとした1体のスライムを、一瞬収束した光の剣を手にした怜皇がなぎ払った。
「イスカにも、手出しは許しません」
 パンッ! と割れるような音と共に、一体のスライムが消滅する。
 どうやら、元々分裂を繰り返していたせいで、体力自体は残り少ないらしい。
 アサルトライフルから弾丸を放ちながら、前衛へと体当たりをしようとする敵を睨む。
「悪いな、そこで踊ってるといい。死のワルツといこうじゃないか」
 パンッ! 二度目の破裂音。渚の弾丸で、2体目のスライムが消滅した。

 B班、前衛のリオンと十六夜が駆ける。
「あぁ、本当にもう、斬り応えのない……」
 入り口近くにいた敵目掛けて一閃。袈裟懸けに切り裂き、返す二閃目で更に細かく切り刻む。
 パンッ! 破裂音。まずは1体撃破だ。
「ワォ! 十六夜チャンてば攻撃的~☆ じゃ、アタシもがんばろー!」
 楽しそうに笑いながら、独特のステップでスライムへと駆け込んだリオンが、一気に拳を振り抜いた。
 手にした武器が文字通り「全力で」スライムに叩きつけられ。
 パンッ! 一際大きい音と共に、スライムが消滅する。
 そのリオンの背後から迫る1体のスライムに反応したのはメトロノームだ。
「そう来ると思いました。でも、させません」
 一歩後に退いていたメトロノームだからこそ気づいたその攻撃。
 それを打ち消すように放たれたカマイタチによって、スライムがぼとりと床に落ちる。
 畳み掛けようと、リオンが拳を振り上げた次の瞬間。
 ぐ、っと。スライムの体が一瞬沈みこんだ。
「……リオンさん!」
 咄嗟に叫んだのは、後衛のシドウだ。
 振り返ったリオンの、その視線の先で。
 スライムが放った酸が、リオンの右腕に勢いよく噴きかかった。
「っ!!」
 じゅぅ、と、溶ける音と共に、リオンの顔が一瞬顰められる。
「今回復します」
 シドウが癒しの力を発動させ、リオンの負傷を最低限に食い止めようと回復を行った。
 暖かい光と共に、少しずつ傷が癒えていく。
 その間、顔を俯かせていたリオンを気遣って、シドウが何か言葉をかけようとした、次の瞬間。
「……やってくれちゃったネ? それじゃあ……本気で、ぶっ潰す」
 にたり、と。加虐的な笑みを浮かべたリオンが、一気に負傷した腕で武器を振り下ろした。
 パンッ!!
 今までの音のどれよりも激しい音を立てて、スライムがまた1匹消滅する。
「さァ……次はどーの子だ☆」

 A班にも、負傷者が発生していた。
 閃く刃で敵をないだ星輝の一撃をまともに浴びて、敵が音を立てて破裂――。
 しなかった。
 そう。スライムなのだ。
 スライムの特技。それは、分裂。
 切られた力を利用したのか、もう最後の手段だと分裂したスライムは、2体同時に酸を星輝へと放つ。
 ステップを踏み、片方は回避出来たが、もう片方が間に合わない。
 太刀を割り込ませようかと考えたが、酸で溶かされては意味がない。
 咄嗟に袖を翻して、利き腕と逆の腕一本で酸をなぎ払う。
「……っく」
 音を立てて、皮膚、その下までも溶かそうとする酸に顔を顰める。
「キララ姉さま!!」
 青褪めたウィスカが、思わず駆け寄った。
「すぐに回復させるからね」
「イスカ!」
 星輝へと、暖かい癒しの光を送るウィスカへと、背後から迫ったスライムが体当たりを食らわせる。
「きゃっ……!?」
 例え小さいスライムであっても、体当たりされればそれなりの衝撃になる。
 倒れこんだウィスカを見た怜皇が、静かに手を振り上げた。
 現れた光の刃を、ウィスカへと体当たりしたスライムへと叩き込む。
 その横で、更に後方から狙いを定めていた渚が、分裂したもう1体へと銃弾を浴びせた。
 パンパンッ!! 2度の破裂音と共に、分裂したスライムが消滅する。
「イスカとキララに手を出さないでもらいましょうか」
 静かに激昂する怜皇の後方で、渚は小さく肩を竦めた。

■残数
 半数を撃退した頃には、ハンター達はスライムの行動予測をある程度立てることが出来るようになっていた。
 恐らくは、ここで発生したスライムのうち、3体程度が、元々発生したものなのだろう。
 行動パターンが似ているのだ。
 となれば、慣れてしまえばハンター達に有利な戦場になる。
 入り口を閉ざし密室状態になった大広間であれば、敵は逃げられない。
「問題は家具、ですけど……最低限の傷で、済んでいると判断して良さそうですね」
 メトロノームが一歩退いたところから、状況を確認しつつ薄青い水晶の結晶弾のような礫を放つ。
 パンッ! 音を立てて1体が撃破された。
「残り4体。早く済ませてしまいましょう」
 シドウが声をかけ、前衛のサポートに動く。
 その前方で、笑みを浮かべたリオンと、斬り応えのない敵に辟易し始めた十六夜が動き回る。
 振り上げられた拳が、翻された一閃が、それぞれ1体ずつを捕らえて。
 パンパンッ! 連続する破裂音と共に、2体のスライムが消滅した。
「残り2体。あとはこちらに任せてください」
 怜皇の言葉に頷くように、ウィスカと星輝が顔を見合わせた。
「私達の絆の力を見せてあげますっ」
 ウィスカが声を上げ、光り輝く弾を放つ。
 飛び跳ねるスライムに命中するも、まだ倒れない。
 其処へ、星輝飛び込んだ。
 刀を一閃、更に返す太刀で一閃。
 パンっ! 音を立てて、1体が消滅する。
 後1体。
 残されたスライムが、最後の抵抗を見せるように、後衛の渚めがけて体当たりをしようと飛び跳ねる。
 縮まった距離をものともせず、渚は静かに銃口を向け。
「あばよ。あの世で会ったら宜しく頼むぜ。もっとも……オレは覚えて無いと思うがな」
 冷たく低くそう呟くと、引き金を弾く。
 パンッ!!
 最後の破裂音が、大広間に響き渡った。

■戦いの後で
 全てのスライムを撃破した後、ハンター達がまず行ったのは屋敷の探索だった。
 どこかにスライムが潜んでいたら大変な事になる。と、念入りに行われた作業のおかげで、スライムは大広間以外には居ない事が判明した。
「ちょっと一服してもいいか? そろそろ吸いたいんだが……?」
 探索も終わり、後は個人行動。という時点で、渚がひとりふらりと外へと向かっていった。
 極度のヘビースモーカーである彼が、ここまで煙草を我慢していたのだ。
 無理もないだろう。
 残りのメンバーは、室内を確認して、自分達で直せる状態の家具達を補修していった。
「今回は斬り甲斐なかったな……帰ってお酒でも飲んで憂さ晴らししよっと」
「レオ、キララ姉さま、次の方が早く住めるといいですね」
 新しく入る、という住人の為を思って行われたその行動が、後にどういう反応で返ってくるのか。
 ハンター達はまだ、知らない。

依頼結果

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参加者一覧


  • 十六夜(ka0172
    人間(蒼)|20才|女性|闘狩人
  • 聖なる焔預かりし者
    瀬織 怜皇(ka0684
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 【魔装】の監視者
    星輝 Amhran(ka0724
    エルフ|10才|女性|疾影士
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • アルテミスの調べ
    メトロノーム・ソングライト(ka1267
    エルフ|14才|女性|魔術師
  • HappyTerror
    リオン(ka1757
    人間(蒼)|20才|女性|疾影士
  • 導きの灯り
    シドウ(ka1962
    人間(蒼)|23才|男性|聖導士
  • 白煙の狙撃手
    伊勢 渚(ka2038
    人間(紅)|25才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/07/09 21:28:44
アイコン 相談卓
リオン(ka1757
人間(リアルブルー)|20才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2014/07/10 18:24:24