ゲスト
(ka0000)
百年目のエルフと酒場
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~9人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/05/25 12:00
- 完成日
- 2015/06/02 13:55
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「うわあっ」
森から出たとき、流離いのエルフ少女、フラ・キャンディは紫色の瞳をいっぱいに見開き回りを見回した。
「世界って、こんなに広かったんだ」
目の前には、農耕推進地域「ジェオルジ」の広大でぼくとつとした田園風景がどこまでも、どこまでも続いていた。しかもそれが視界の前をぐるり。見渡す限りの空、麦秋を待つ恵みの大地、やがて田植えとなる水の張られた棚田、点々と小さな民家の並ぶ集落、そして草原が色鮮やかにたたずんでいる。
「すごい、すごい、すごい……。こんなの初めて。ボク、本当に捨てられたんじゃなかったんだね!」
思わず、フラの口からそんな言葉が出た。
それは保護者のように横に立ちフラの喜びように眼を細めていた隠者の老人、ジル・コバルトをはっとさせた。
「『百年目のエルフ』というのは、小さな集落で血が濃くなりすぎるのを防ぐため旅に出すと聞いたが?」
フラ、我に返った。
改めてジルの方に向き直った。見返す顔は今にも泣き出しそうだった。
「うん、間違いないよ。ただね……」
言葉を切ると、ついに堪えきれず涙をこぼした。
「お母さんだけは『捨てるんじゃないんだからね。必要な子なんだからね』って、誰もいないところでボクを抱きして何度も繰り返して泣くんだ……」
作り笑顔に、大玉の涙。
「だからボクは頑張ってたくさん学んだんだ。大人は『里の誇りをかけて鍛える』って、ボクにたくさんの事を教えてくれた。……ボクは、里の代表なんだ」
気丈に言い張る。自分に言い聞かせるように。
「だから、恥ずかしくないよう立派にならなくちゃ……しっかりしなくちゃ」
「フラは立派じゃよ。……里を思って涙が流せるなら、もう一人前じゃ。ほれ」
ジルの柔らかい表情を見て今度はフラがはっとした。
「うん、うん……ありがとう。ジルのおじいちゃん」
ごしごしと腕で涙を拭い、差し出されたあめ玉を受け取る。大玉だ。いつものように口に含み、ころりと転がし改めて笑顔。これを見てジルもほほ笑んだ。
「さて、これからはわしがフラの後見人じゃ。あの小屋ももうどうでもいい。これから、どこに行きたい?」
「ええっとね~。まず人里に出たら……」
フラ、いつもの調子に戻った。
そしてとんでもないことを言い出す。
「なに? 夜の酒場に行きたいじゃと?!」
「うんっ。人里に出たらまずは夜の酒場で歌って踊ってお金を稼げって。ボクは子供だし、珍しいから最初はおひねりがもらえるに違いないんだって」
ジル、フラの里の入れ知恵と知り納得した。同時にその危うさに呆れたが。
「子供1人が酒場で踊るのは危険じゃ。……どれ、ハンターを雇ってやるからみんなで盛り上げるといい」
「ええー、それじゃお金稼ぎにならないよ」
この不満ににらみを利かせるジル。
「まずは知り合いをつくることじゃ。そして信頼できる友人をつくること。でないと、わしのようになる」
「ジルさんのように?」
「そうじゃ。したくもない権力争いに巻き込まれて追い出され、誰も彼もに裏切られて世捨て人として隠れ住む……ええか、これからは『百年目のエルフ』に対して、わしが誇りをかけて磨きを掛ける」
真顔のジルに、嬉しそうに頷くフラだった。ころ、と頬の中であめ玉が踊っている。
というわけで、初夏の訪れで陽気になっている「ジェオルジ」の大きな街の酒場でフラと一緒に演奏や踊り、歌って盛り上げてくれる人、求ム。
もちろん、合間にワインを飲んだりリゾットやミネストローネ、サラミやカルパッチョなど地元料理を楽しむことができる。
森から出たとき、流離いのエルフ少女、フラ・キャンディは紫色の瞳をいっぱいに見開き回りを見回した。
「世界って、こんなに広かったんだ」
目の前には、農耕推進地域「ジェオルジ」の広大でぼくとつとした田園風景がどこまでも、どこまでも続いていた。しかもそれが視界の前をぐるり。見渡す限りの空、麦秋を待つ恵みの大地、やがて田植えとなる水の張られた棚田、点々と小さな民家の並ぶ集落、そして草原が色鮮やかにたたずんでいる。
「すごい、すごい、すごい……。こんなの初めて。ボク、本当に捨てられたんじゃなかったんだね!」
思わず、フラの口からそんな言葉が出た。
それは保護者のように横に立ちフラの喜びように眼を細めていた隠者の老人、ジル・コバルトをはっとさせた。
「『百年目のエルフ』というのは、小さな集落で血が濃くなりすぎるのを防ぐため旅に出すと聞いたが?」
フラ、我に返った。
改めてジルの方に向き直った。見返す顔は今にも泣き出しそうだった。
「うん、間違いないよ。ただね……」
言葉を切ると、ついに堪えきれず涙をこぼした。
「お母さんだけは『捨てるんじゃないんだからね。必要な子なんだからね』って、誰もいないところでボクを抱きして何度も繰り返して泣くんだ……」
作り笑顔に、大玉の涙。
「だからボクは頑張ってたくさん学んだんだ。大人は『里の誇りをかけて鍛える』って、ボクにたくさんの事を教えてくれた。……ボクは、里の代表なんだ」
気丈に言い張る。自分に言い聞かせるように。
「だから、恥ずかしくないよう立派にならなくちゃ……しっかりしなくちゃ」
「フラは立派じゃよ。……里を思って涙が流せるなら、もう一人前じゃ。ほれ」
ジルの柔らかい表情を見て今度はフラがはっとした。
「うん、うん……ありがとう。ジルのおじいちゃん」
ごしごしと腕で涙を拭い、差し出されたあめ玉を受け取る。大玉だ。いつものように口に含み、ころりと転がし改めて笑顔。これを見てジルもほほ笑んだ。
「さて、これからはわしがフラの後見人じゃ。あの小屋ももうどうでもいい。これから、どこに行きたい?」
「ええっとね~。まず人里に出たら……」
フラ、いつもの調子に戻った。
そしてとんでもないことを言い出す。
「なに? 夜の酒場に行きたいじゃと?!」
「うんっ。人里に出たらまずは夜の酒場で歌って踊ってお金を稼げって。ボクは子供だし、珍しいから最初はおひねりがもらえるに違いないんだって」
ジル、フラの里の入れ知恵と知り納得した。同時にその危うさに呆れたが。
「子供1人が酒場で踊るのは危険じゃ。……どれ、ハンターを雇ってやるからみんなで盛り上げるといい」
「ええー、それじゃお金稼ぎにならないよ」
この不満ににらみを利かせるジル。
「まずは知り合いをつくることじゃ。そして信頼できる友人をつくること。でないと、わしのようになる」
「ジルさんのように?」
「そうじゃ。したくもない権力争いに巻き込まれて追い出され、誰も彼もに裏切られて世捨て人として隠れ住む……ええか、これからは『百年目のエルフ』に対して、わしが誇りをかけて磨きを掛ける」
真顔のジルに、嬉しそうに頷くフラだった。ころ、と頬の中であめ玉が踊っている。
というわけで、初夏の訪れで陽気になっている「ジェオルジ」の大きな街の酒場でフラと一緒に演奏や踊り、歌って盛り上げてくれる人、求ム。
もちろん、合間にワインを飲んだりリゾットやミネストローネ、サラミやカルパッチョなど地元料理を楽しむことができる。
リプレイ本文
●
「くふっ、くふふ」
酒場のカウンター席でそんな笑い声。
まだ日暮れ間もないまばらな酒場の影で、九龍(ka4700)がこっそりと笑いをかみ殺していた。
「あら、どうされました?」
近寄って来た女性が明るく聞く。時忘れの歌姫、リシャーナ(ka1655)である。
「くふふふ……客が集まってきましたねぇ」
「そうですね。少し早かったのですが……」
リシャーナ、振り返る。演奏することになっている仲間が集まるまでに、客の方が増えている。
それはそれとして、九龍のさらに後ろの席で。
「成功させなきゃ……成功させなきゃ……成功……成功……」
何やらぶつぶつ言ってる女性がいる。
「あの……きっと大丈夫ですわ」
リシャーナに声を掛けられ、びく、と緑色の髪が跳ねて顔が上がる。
「だ、大丈夫でしょうか……」
アリシア・トリーズン(ka4713)だった。
「大丈夫」
リシャーナと言葉が被ったのは、新たにやって来たラル・S・コーダ(ka4495)の声。
「照明はそんなに明るくなさそうです。舞台も結構広いですね。安心して踊れそう」
「よ、良かったです……こちらで一般的な踊りとかは苦手ですけど、故郷である程度習っていたので、そちらの舞いならなんとかっ」
続けて言ったラル。そして彼女と一緒に舞台を見て戻って来た少年、弓月・小太(ka4679)が頷いている。
「やあ、ラル。お待たせ」
ここでネーナ・ドラッケン(ka4376)が入店。フラ・キャンディ(kz0121)とジル・コバルトも一緒だ。
「その……ネーナさん、良かったの? 戦闘とかじゃないけど……」
フラはネーナの背後でもじもじと申し訳なさそうにしている。
「ボクの方は吟遊詩人も本職。ハンター業務に慣れるのもいいけど、少しはこっちの仕事もしないといけないと思っていた所なの」
そこにラルが近寄った。
「あ、ラルさん。……よかった。ネーナさんいるし、ラルさん前も踊ってたし」
「ふふ、フラさんの踊りも楽しみです」
にこやかに迎えるラル。
「初めまして。私達が心から楽しんで演じればそれがお客さん達にも伝わるわ。最高の夜にしましょうね」
これを見てリシャーナが挨拶すると、その後ろでびくり、と緑色の頭が跳ねた。
「た、楽しませなきゃ! いけないんですよねっ! わ、解ってます! 頑張ります! 死ぬ気で!!」
アリシア、思わず自前のベースを斧のように構える!
「くふふふっ……緊張しなくとも大丈夫ですよぉ。何時ものようにやれば良いんですぅ」
九龍、アリシアのベースに優しく手を掛けて下げてやる。
「そうだよ。いつものように!」
この言葉にフラが叫んで駆け出した。
大きく側転して舞台に上がると、タタン、と踵を鳴らした。
「フラさん?! はわわわっ。み、見えてますよぉ」
小太、フラのスカートからちらり☆した純白の何かを見て真っ赤になってたり。
客は、ざわ……と不穏な感じに。
「いけない。食事時に驚かすような入りは……」
「ラル、ネーナ、頼む!」
リシャーナの声と、馴染みに助けを求めるジルの声。ジルから飴玉を受け取り駆け寄ったラルはきょとんとするフラに飴玉を含ませ、大人しくなったところを抱きかかえて退場。変わってネーナが入り、静かにお辞儀して竪琴を構えた。
――と、とん……。
静かな音。
丁寧なメロディーライン。
ネーナが銀髪を揺らし丁寧に紡ぐ曲はBGMとして客に受け入れられた。
情緒を込めたメロディーはやがて、食事客を聴衆へと変えるのだった。
●
「へえっ。やってるね」
サングラスをかけたイレーヌ(ka1372)が遅れて到着したとき、酒場の客はすっかりネーナの曲に魅了されていた。
いま、曲が終わった。
「フラさんはまず落ち着いて……アリシアさんは自信をもって」
仲間のところでは、リシャーナがフラとアリシアに声を掛けていた。
「仕方ない、出よう。……しっとりした雰囲気だね」
イレーヌ、サングラスを取ってそれだけ言うと覚醒。着ていた服が窮屈になり、大人びた容姿になったように見える。
そのままネーナと入れ替わり舞台へと上がった。
「フラ、ジル。ボクの演奏、どうだった?」
ネーナ、しょげているフラの横に陽気に座る。
「素晴らしかったよ。フラもネーナと一緒に上がっていれば良かったの」
「ごめんなさい……ネーナさん、うらやましい」
ジルとフラの言葉。ネーナは「違うでしょ?」とフラの頬を指先でツン。
「元気出していきましょう。次はイレーヌさんですよっ」
小太も顔を出し舞台を指差す。
♪
月よ、星よ さざめく風よ
遠く伝えて 愛しき人に
いつも、ここで 貴方を待つわ
いつか歩いた 木漏れ日の中
♪
静かな歌声ながら、イレーヌの歌が酒場を虜にしていた。
遠くへ行ってしまった彼の帰りをいつまでも待つ健気な女の歌が、ぐっと客たちの男気に響いたようだ。
「九龍さん、お願いできます?」
リシャーナが聞いたのはアリシアのことだった。
「いいですよぅ。こう見えて楽師ですからねぇ。腕の見せ所ですよぉ」
さ、行きましょうとアリシアを誘う九龍。
「あ、私……隅っこが良いです、視えない方が嬉しいです……」
ぎゅっ、とベースを抱きしめてアリシアがささっと舞台の隅に。仕方ないですねぇ、と九龍が目立つ位置に座る。
そして、ボンボン、ペン、と穏やかなリズムが繰り返された。
最初はベースラインを確かめるような進行。たまに、九龍がアドリブを入れる。
「故郷の琵琶とは少し違いますねぇ」
小太、演奏に見入りながら九龍の楽器「四弦黒琵琶」に注目する。
「アリシアさんも応えましたね」
リシャーナが喜んだ通り、九龍のアレンジに釣られたアリシアが独自のリズムを挟んだ。
「ここで低音……度胸あるね」
戻って来たイレーヌも、自然に体が動いている風なアリシアに感心していた。
「でもいい感じ。フラさん、今なら激しい踊りでもいいですよ。……いいと思ったときに入ってきてくださいね」
その鬱とした低音に触発されたか、ラルが舞台にステップ・イン。軽やかな着地に九龍の右目が細められる。気付いたラルの視線が「どうしました?」と聞いている。
「くふふっ、くふふふふふふ……ああいえ失礼。どうにも楽しくて……」
九龍の小さな呟き。ラル、彼の唇の動きで察してにこり。振り向いて舞に入る。九龍、アリシアやラルが自然に動いてくれたことが楽しいのだ。
もちろん、客も乗っている。
たたん、とラルの踏んだステップに客の手拍子が続く。
♪
金の太陽と銀の月が
激しく踊る始まりの炎
♪
ラルの歌唱は、あるいは誰も知らない言葉として耳に入ったかもしれない。
ただ、ラルの見ているような光景が、その踊りと詩で客に伝わる。手拍子も自然に控えた。
♪
さあ歌おう、これはわたしの祝福
さあ踊ろう、そのステップは新しい地を踏みしめる一歩
♪
やがてしっかりと意味の分かる言葉に。九龍が強く絃を弾く。アリシアが低くメロディラインを保つ。
ラルの方はダガーを両手に持ち踊り、時折打ち合わせて高い音を入れる。そして高く足を挙げてターンジャンプ。
♪
ああ、ああ!
その旅の果てでもきっと君は笑っているよ
♪
おや。
ここで舞台の真ん中を開けたぞ?
「フラさんは踊ったりするのは好きなのですかぁ?」
ジュースを飲んでまったりしていた小太が、ちらとフラを気にして聞いた。
「うん、好き。行ってくるね!」
その視線の意味するところを得て、フラが舞台にステップ・イン。ラルを真似た。
ラルは歓迎して短剣を手渡すと、「先の通りのステップで構いませんよ」と告げて歌い出す。
♪
刃の煌めきが、軌道が
そのステップのひとつひとつが
あなたが頑張った証……
♪
短剣を引いてフラに切りかかる。それをいなして回るフラ。
激しい円舞……いや、演武となる。
剣撃でリズムを刻んで、ターンは派手に煌びやかに。客には少しのハラハラ気分を。
でも、誰も傷付けない。
誰の心も傷付かない。
ラル、息を大きく吸う。
それと分かって九龍もアリシアも力強く。特に九龍のノリがいい。まるで数多の龍をすべているようだ。
もちろんフラにも伝わった。
♪
あなたがあいされてきた証だってわかるの!
♪
カキン、と短剣同士を思いっきり振って打ち合わせた。
場に、静けさが満ちる。
「ありがとう、フラさん」
熱唱を終えたラルがフラを抱きしめた。
大きな拍手がわいた。
●
時は若干遡る。
「ようやく着いたと……」
ラルが踊り始めた時、入店した女の子がいた。
奇麗な黒髪と眼鏡が印象的な姿は、七窪 小鈴(ka0811)である。
「あ。こっちだよ」
目敏く気付いたネーナが手を振る。
「私も少し遅れたけど……」
イレーヌが酒をすっと出すが、小鈴は「飲めんけん」と断ってお茶にする。
「実はうち、迷子に……はわわ、何でもなか。うちの口調は聞き慣れん思うけん、いっちょんわからん時は聞き返して欲しかと♪」
どうやら迷子になってここの常連客に連れて来てもらったのは内緒のようで。
「うん、好き。行ってくるね!」
ここで小太の問いに答えたフラが舞台に。
「……」
小鈴の視線がフラを追う。そしてラルの踊りを見て圧倒された。
「待ち合わせてボクやフラと一緒に来ればよかったのに」
ネーナ、横から小鈴の顔を覗きこんで話を振って、気付いた。
「……固まってるの?」
「はっ!」
びく、と我に返る小鈴。すぐに一生懸命手の平に何かを書いて飲み込むふりをし始めたぞ?
「あらあら」
リシャーナが思わずくすくす笑う。
「はっ!? 人ゆー字を掌に三百回書いて、飲むとよかきーた事あると!!」
「そういう時は舞台に上がるに限るよ。ジル、行ってくる」
ネーナ、小鈴を連れて再び舞台へ。ラルたちとの入れ替わりだ。
「へえっ」
ラルたちの情熱的な踊りを堪能した客たちは思わず感心した。
ネーナと九龍の演奏に、小鈴がしゃらしゃらと御幣を使いながら前後に小刻みに動いていたのだ。
「巫女舞ですよぉ」
「小太さん、知ってるの?」
解説する小太。目を輝かせるフラ。
小鈴の舞は派手ではないが、つつましく静かで趣があった。
もっとも彼女の心の中では。
(……お、男の人多かぁ~!? 酒場って、こげん男の人が多いもんなんやね……)
そんなことも思っているようで。
というか、つつましく顎を引いて面を伏せているのは緊張しないためらしい。が、観客はそれがいい、と見入っている。
「くふふ……こういうのは初めてです?」
後ろでは演奏する九龍がアリシアに声を掛けていた。
明らかに「入れ」と言っている。
「そ、そんな私なんか……」
アリシア、変わらず逃げ腰で辞退する。
が。
(……思えば……この世界に来て「初めてやる」事なんて山の様に山の様……ふふ……)
ぼぉん、と鬱々とした重い音をアドリブで入れてしまった。
それが、この場にはない太鼓の響きの代わりとなる。
「はっ!」
これに小鈴が反応。
つられて体を大きく使い始めた。観客が拍手でこたえる。
「ふぅん?」
ネーナも面白くなり、九龍やアリシアのように独自の音色を挟むのだった。
これに手応えを得たのは、小太だった。
「こちらの踊りとかは苦手ですけど、故郷である程度習っていたのでそちらの舞いならなんとかっ」
小鈴と入れ替わりに、舞台に。
客はすっかり異国情緒あふれる雰囲気に酔っていた。続けても大丈夫、と読む。
静かに一礼してすっと足を前にする小太。緩やかで伸びのある曲が続く。
「わ、雅楽やると?」
小鈴が振り返る。
小太は袴を足を静かに運び、一挙手一投足をじっくりと見せる。
とぉん、との音で閉じた扇子を掲げ視線はその先に。
てんつく、との音で模造刀を抜き軽やかにひらめかせる。
「珍しい。勉強になりますね」
「ええ、そうね」
リシャーナとラルがうっとりと見ている。
客からも好評だ。
「異国の舞かぁ」
「フラさんも……素敵な時間を過ごしてるようですよ」
フラも思わず呟く。それに反応するリシャーナ。フラの瞳にかつての自分を重ね、つい「故郷ではどうでした?」と聞いてしまった。フラ、彼女の瞳に導かれるようにすべてを話し……そして涙を流した。
「フラさん……」
万感の思いに駆られ、リシャーナがフラを抱きしめた。耳元で何かを呟く。
そして立ち上がった。
言葉以外の何かを伝えるために。
●
「おっ?」
「わあっ」
客がざわめいたのはリシャーナが舞台に立ったから。
深い青色のマーメイドラインのドレスは、女性シンガーの誇り。声だけで魅了する証とも言えるか。
♪
愛された記憶も、悲しみも
すべて自身の彩りに……
♪
第一声が響く。決まった。
ネーナが清らかに入り、九龍がアクセントをつけ、そしてアリシアが曲に深みを与える。
「ボクに言ったことと同じだ……」
フラ、曲のメッセージをしっかりと受け止め、リシャーナの、リシャーナにしかせない唯一無二の輝きや煌きを目に焼き付ける。
「さっきはフラだったね。今度は……」
そう言って、イレーヌが立った。いつの間にか男装している。
すでに舞台は二曲目。
リシャーナが亡き恋人の面影を追いながら艶やかに切なく歌い上げる。
振るえる睫毛、何かを求めるような唇。
そこへ、イレーヌが登場。
デュエットに移行する。
そして客は気付いた。
二人の歌う曲の恋人は相思相愛ながら、両親に許されない恋をしていたのだと。
思わず、気分よく食事をしていた手を止め見入る。
最後にイレーヌがリシャーナを軽く抱き寄せた。びく、と肩を震わせ見上げたリシャーナの様子に、爆発的な拍手が送られるのだった。
「っぱぁ♪ 喉カラカラやったけん、ばりうまか~♪」
舞台は終わって楽しい食事。小鈴は再びのほほんとした感じに戻っている。
「舞台とはずいぶん違うね?」
「もう少し練習にうちこんでおけば……」
ネーナが突っ込むと、うううと小さくなる小鈴。
「はふ、こういうところで舞ったりするのは初めてで緊張したのですよぉ」
「うんっ、ボクもそうだよ」
小太とフラはリゾットを分けて食べつつ初めての体験談義。
「恐ろしい恐ろしい……」
アリシアはこれを横目にぶるぶると。
「アリシアさんと音を重ねられて嬉しいわ。今度は他の楽器も聞かせてね。フラさんはまた今度一緒に踊りましょう」
リシャーナ、アリシアを褒めたが逃げ出しそうだったのですぐにフラに話を振ったり。アリシア、ほっ。
「まるで初めてとは思えなかったね」
イレーヌはフラにサラミを差し出しあーん、ぱくりさせておいて忙しそうな店員から「代わろう」と酒の乗った盆を受け取り給仕に行く。
「どう?」
「ああ、良かった。今度やるときがあったら知らせてくれ、また来るよ」
給仕したとき客の本音が聞けたのも、場に合わせて自然に聞いたからだろう。
そんな彼女の後ろの方では、ラルが「とても楽しかった、ありがとうございますね」と皆に感謝していた。
「くふっ、くふふ」
酒場のカウンター席でそんな笑い声。
まだ日暮れ間もないまばらな酒場の影で、九龍(ka4700)がこっそりと笑いをかみ殺していた。
「あら、どうされました?」
近寄って来た女性が明るく聞く。時忘れの歌姫、リシャーナ(ka1655)である。
「くふふふ……客が集まってきましたねぇ」
「そうですね。少し早かったのですが……」
リシャーナ、振り返る。演奏することになっている仲間が集まるまでに、客の方が増えている。
それはそれとして、九龍のさらに後ろの席で。
「成功させなきゃ……成功させなきゃ……成功……成功……」
何やらぶつぶつ言ってる女性がいる。
「あの……きっと大丈夫ですわ」
リシャーナに声を掛けられ、びく、と緑色の髪が跳ねて顔が上がる。
「だ、大丈夫でしょうか……」
アリシア・トリーズン(ka4713)だった。
「大丈夫」
リシャーナと言葉が被ったのは、新たにやって来たラル・S・コーダ(ka4495)の声。
「照明はそんなに明るくなさそうです。舞台も結構広いですね。安心して踊れそう」
「よ、良かったです……こちらで一般的な踊りとかは苦手ですけど、故郷である程度習っていたので、そちらの舞いならなんとかっ」
続けて言ったラル。そして彼女と一緒に舞台を見て戻って来た少年、弓月・小太(ka4679)が頷いている。
「やあ、ラル。お待たせ」
ここでネーナ・ドラッケン(ka4376)が入店。フラ・キャンディ(kz0121)とジル・コバルトも一緒だ。
「その……ネーナさん、良かったの? 戦闘とかじゃないけど……」
フラはネーナの背後でもじもじと申し訳なさそうにしている。
「ボクの方は吟遊詩人も本職。ハンター業務に慣れるのもいいけど、少しはこっちの仕事もしないといけないと思っていた所なの」
そこにラルが近寄った。
「あ、ラルさん。……よかった。ネーナさんいるし、ラルさん前も踊ってたし」
「ふふ、フラさんの踊りも楽しみです」
にこやかに迎えるラル。
「初めまして。私達が心から楽しんで演じればそれがお客さん達にも伝わるわ。最高の夜にしましょうね」
これを見てリシャーナが挨拶すると、その後ろでびくり、と緑色の頭が跳ねた。
「た、楽しませなきゃ! いけないんですよねっ! わ、解ってます! 頑張ります! 死ぬ気で!!」
アリシア、思わず自前のベースを斧のように構える!
「くふふふっ……緊張しなくとも大丈夫ですよぉ。何時ものようにやれば良いんですぅ」
九龍、アリシアのベースに優しく手を掛けて下げてやる。
「そうだよ。いつものように!」
この言葉にフラが叫んで駆け出した。
大きく側転して舞台に上がると、タタン、と踵を鳴らした。
「フラさん?! はわわわっ。み、見えてますよぉ」
小太、フラのスカートからちらり☆した純白の何かを見て真っ赤になってたり。
客は、ざわ……と不穏な感じに。
「いけない。食事時に驚かすような入りは……」
「ラル、ネーナ、頼む!」
リシャーナの声と、馴染みに助けを求めるジルの声。ジルから飴玉を受け取り駆け寄ったラルはきょとんとするフラに飴玉を含ませ、大人しくなったところを抱きかかえて退場。変わってネーナが入り、静かにお辞儀して竪琴を構えた。
――と、とん……。
静かな音。
丁寧なメロディーライン。
ネーナが銀髪を揺らし丁寧に紡ぐ曲はBGMとして客に受け入れられた。
情緒を込めたメロディーはやがて、食事客を聴衆へと変えるのだった。
●
「へえっ。やってるね」
サングラスをかけたイレーヌ(ka1372)が遅れて到着したとき、酒場の客はすっかりネーナの曲に魅了されていた。
いま、曲が終わった。
「フラさんはまず落ち着いて……アリシアさんは自信をもって」
仲間のところでは、リシャーナがフラとアリシアに声を掛けていた。
「仕方ない、出よう。……しっとりした雰囲気だね」
イレーヌ、サングラスを取ってそれだけ言うと覚醒。着ていた服が窮屈になり、大人びた容姿になったように見える。
そのままネーナと入れ替わり舞台へと上がった。
「フラ、ジル。ボクの演奏、どうだった?」
ネーナ、しょげているフラの横に陽気に座る。
「素晴らしかったよ。フラもネーナと一緒に上がっていれば良かったの」
「ごめんなさい……ネーナさん、うらやましい」
ジルとフラの言葉。ネーナは「違うでしょ?」とフラの頬を指先でツン。
「元気出していきましょう。次はイレーヌさんですよっ」
小太も顔を出し舞台を指差す。
♪
月よ、星よ さざめく風よ
遠く伝えて 愛しき人に
いつも、ここで 貴方を待つわ
いつか歩いた 木漏れ日の中
♪
静かな歌声ながら、イレーヌの歌が酒場を虜にしていた。
遠くへ行ってしまった彼の帰りをいつまでも待つ健気な女の歌が、ぐっと客たちの男気に響いたようだ。
「九龍さん、お願いできます?」
リシャーナが聞いたのはアリシアのことだった。
「いいですよぅ。こう見えて楽師ですからねぇ。腕の見せ所ですよぉ」
さ、行きましょうとアリシアを誘う九龍。
「あ、私……隅っこが良いです、視えない方が嬉しいです……」
ぎゅっ、とベースを抱きしめてアリシアがささっと舞台の隅に。仕方ないですねぇ、と九龍が目立つ位置に座る。
そして、ボンボン、ペン、と穏やかなリズムが繰り返された。
最初はベースラインを確かめるような進行。たまに、九龍がアドリブを入れる。
「故郷の琵琶とは少し違いますねぇ」
小太、演奏に見入りながら九龍の楽器「四弦黒琵琶」に注目する。
「アリシアさんも応えましたね」
リシャーナが喜んだ通り、九龍のアレンジに釣られたアリシアが独自のリズムを挟んだ。
「ここで低音……度胸あるね」
戻って来たイレーヌも、自然に体が動いている風なアリシアに感心していた。
「でもいい感じ。フラさん、今なら激しい踊りでもいいですよ。……いいと思ったときに入ってきてくださいね」
その鬱とした低音に触発されたか、ラルが舞台にステップ・イン。軽やかな着地に九龍の右目が細められる。気付いたラルの視線が「どうしました?」と聞いている。
「くふふっ、くふふふふふふ……ああいえ失礼。どうにも楽しくて……」
九龍の小さな呟き。ラル、彼の唇の動きで察してにこり。振り向いて舞に入る。九龍、アリシアやラルが自然に動いてくれたことが楽しいのだ。
もちろん、客も乗っている。
たたん、とラルの踏んだステップに客の手拍子が続く。
♪
金の太陽と銀の月が
激しく踊る始まりの炎
♪
ラルの歌唱は、あるいは誰も知らない言葉として耳に入ったかもしれない。
ただ、ラルの見ているような光景が、その踊りと詩で客に伝わる。手拍子も自然に控えた。
♪
さあ歌おう、これはわたしの祝福
さあ踊ろう、そのステップは新しい地を踏みしめる一歩
♪
やがてしっかりと意味の分かる言葉に。九龍が強く絃を弾く。アリシアが低くメロディラインを保つ。
ラルの方はダガーを両手に持ち踊り、時折打ち合わせて高い音を入れる。そして高く足を挙げてターンジャンプ。
♪
ああ、ああ!
その旅の果てでもきっと君は笑っているよ
♪
おや。
ここで舞台の真ん中を開けたぞ?
「フラさんは踊ったりするのは好きなのですかぁ?」
ジュースを飲んでまったりしていた小太が、ちらとフラを気にして聞いた。
「うん、好き。行ってくるね!」
その視線の意味するところを得て、フラが舞台にステップ・イン。ラルを真似た。
ラルは歓迎して短剣を手渡すと、「先の通りのステップで構いませんよ」と告げて歌い出す。
♪
刃の煌めきが、軌道が
そのステップのひとつひとつが
あなたが頑張った証……
♪
短剣を引いてフラに切りかかる。それをいなして回るフラ。
激しい円舞……いや、演武となる。
剣撃でリズムを刻んで、ターンは派手に煌びやかに。客には少しのハラハラ気分を。
でも、誰も傷付けない。
誰の心も傷付かない。
ラル、息を大きく吸う。
それと分かって九龍もアリシアも力強く。特に九龍のノリがいい。まるで数多の龍をすべているようだ。
もちろんフラにも伝わった。
♪
あなたがあいされてきた証だってわかるの!
♪
カキン、と短剣同士を思いっきり振って打ち合わせた。
場に、静けさが満ちる。
「ありがとう、フラさん」
熱唱を終えたラルがフラを抱きしめた。
大きな拍手がわいた。
●
時は若干遡る。
「ようやく着いたと……」
ラルが踊り始めた時、入店した女の子がいた。
奇麗な黒髪と眼鏡が印象的な姿は、七窪 小鈴(ka0811)である。
「あ。こっちだよ」
目敏く気付いたネーナが手を振る。
「私も少し遅れたけど……」
イレーヌが酒をすっと出すが、小鈴は「飲めんけん」と断ってお茶にする。
「実はうち、迷子に……はわわ、何でもなか。うちの口調は聞き慣れん思うけん、いっちょんわからん時は聞き返して欲しかと♪」
どうやら迷子になってここの常連客に連れて来てもらったのは内緒のようで。
「うん、好き。行ってくるね!」
ここで小太の問いに答えたフラが舞台に。
「……」
小鈴の視線がフラを追う。そしてラルの踊りを見て圧倒された。
「待ち合わせてボクやフラと一緒に来ればよかったのに」
ネーナ、横から小鈴の顔を覗きこんで話を振って、気付いた。
「……固まってるの?」
「はっ!」
びく、と我に返る小鈴。すぐに一生懸命手の平に何かを書いて飲み込むふりをし始めたぞ?
「あらあら」
リシャーナが思わずくすくす笑う。
「はっ!? 人ゆー字を掌に三百回書いて、飲むとよかきーた事あると!!」
「そういう時は舞台に上がるに限るよ。ジル、行ってくる」
ネーナ、小鈴を連れて再び舞台へ。ラルたちとの入れ替わりだ。
「へえっ」
ラルたちの情熱的な踊りを堪能した客たちは思わず感心した。
ネーナと九龍の演奏に、小鈴がしゃらしゃらと御幣を使いながら前後に小刻みに動いていたのだ。
「巫女舞ですよぉ」
「小太さん、知ってるの?」
解説する小太。目を輝かせるフラ。
小鈴の舞は派手ではないが、つつましく静かで趣があった。
もっとも彼女の心の中では。
(……お、男の人多かぁ~!? 酒場って、こげん男の人が多いもんなんやね……)
そんなことも思っているようで。
というか、つつましく顎を引いて面を伏せているのは緊張しないためらしい。が、観客はそれがいい、と見入っている。
「くふふ……こういうのは初めてです?」
後ろでは演奏する九龍がアリシアに声を掛けていた。
明らかに「入れ」と言っている。
「そ、そんな私なんか……」
アリシア、変わらず逃げ腰で辞退する。
が。
(……思えば……この世界に来て「初めてやる」事なんて山の様に山の様……ふふ……)
ぼぉん、と鬱々とした重い音をアドリブで入れてしまった。
それが、この場にはない太鼓の響きの代わりとなる。
「はっ!」
これに小鈴が反応。
つられて体を大きく使い始めた。観客が拍手でこたえる。
「ふぅん?」
ネーナも面白くなり、九龍やアリシアのように独自の音色を挟むのだった。
これに手応えを得たのは、小太だった。
「こちらの踊りとかは苦手ですけど、故郷である程度習っていたのでそちらの舞いならなんとかっ」
小鈴と入れ替わりに、舞台に。
客はすっかり異国情緒あふれる雰囲気に酔っていた。続けても大丈夫、と読む。
静かに一礼してすっと足を前にする小太。緩やかで伸びのある曲が続く。
「わ、雅楽やると?」
小鈴が振り返る。
小太は袴を足を静かに運び、一挙手一投足をじっくりと見せる。
とぉん、との音で閉じた扇子を掲げ視線はその先に。
てんつく、との音で模造刀を抜き軽やかにひらめかせる。
「珍しい。勉強になりますね」
「ええ、そうね」
リシャーナとラルがうっとりと見ている。
客からも好評だ。
「異国の舞かぁ」
「フラさんも……素敵な時間を過ごしてるようですよ」
フラも思わず呟く。それに反応するリシャーナ。フラの瞳にかつての自分を重ね、つい「故郷ではどうでした?」と聞いてしまった。フラ、彼女の瞳に導かれるようにすべてを話し……そして涙を流した。
「フラさん……」
万感の思いに駆られ、リシャーナがフラを抱きしめた。耳元で何かを呟く。
そして立ち上がった。
言葉以外の何かを伝えるために。
●
「おっ?」
「わあっ」
客がざわめいたのはリシャーナが舞台に立ったから。
深い青色のマーメイドラインのドレスは、女性シンガーの誇り。声だけで魅了する証とも言えるか。
♪
愛された記憶も、悲しみも
すべて自身の彩りに……
♪
第一声が響く。決まった。
ネーナが清らかに入り、九龍がアクセントをつけ、そしてアリシアが曲に深みを与える。
「ボクに言ったことと同じだ……」
フラ、曲のメッセージをしっかりと受け止め、リシャーナの、リシャーナにしかせない唯一無二の輝きや煌きを目に焼き付ける。
「さっきはフラだったね。今度は……」
そう言って、イレーヌが立った。いつの間にか男装している。
すでに舞台は二曲目。
リシャーナが亡き恋人の面影を追いながら艶やかに切なく歌い上げる。
振るえる睫毛、何かを求めるような唇。
そこへ、イレーヌが登場。
デュエットに移行する。
そして客は気付いた。
二人の歌う曲の恋人は相思相愛ながら、両親に許されない恋をしていたのだと。
思わず、気分よく食事をしていた手を止め見入る。
最後にイレーヌがリシャーナを軽く抱き寄せた。びく、と肩を震わせ見上げたリシャーナの様子に、爆発的な拍手が送られるのだった。
「っぱぁ♪ 喉カラカラやったけん、ばりうまか~♪」
舞台は終わって楽しい食事。小鈴は再びのほほんとした感じに戻っている。
「舞台とはずいぶん違うね?」
「もう少し練習にうちこんでおけば……」
ネーナが突っ込むと、うううと小さくなる小鈴。
「はふ、こういうところで舞ったりするのは初めてで緊張したのですよぉ」
「うんっ、ボクもそうだよ」
小太とフラはリゾットを分けて食べつつ初めての体験談義。
「恐ろしい恐ろしい……」
アリシアはこれを横目にぶるぶると。
「アリシアさんと音を重ねられて嬉しいわ。今度は他の楽器も聞かせてね。フラさんはまた今度一緒に踊りましょう」
リシャーナ、アリシアを褒めたが逃げ出しそうだったのですぐにフラに話を振ったり。アリシア、ほっ。
「まるで初めてとは思えなかったね」
イレーヌはフラにサラミを差し出しあーん、ぱくりさせておいて忙しそうな店員から「代わろう」と酒の乗った盆を受け取り給仕に行く。
「どう?」
「ああ、良かった。今度やるときがあったら知らせてくれ、また来るよ」
給仕したとき客の本音が聞けたのも、場に合わせて自然に聞いたからだろう。
そんな彼女の後ろの方では、ラルが「とても楽しかった、ありがとうございますね」と皆に感謝していた。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/23 02:59:26 |
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夜の酒場を盛り上げよう イレーヌ(ka1372) ドワーフ|10才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/05/25 01:30:45 |