ゲスト
(ka0000)
赤歪虚、黄歪虚、青歪虚
マスター:尾仲ヒエル

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/05/22 09:00
- 完成日
- 2015/05/27 22:57
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●大事な野菜を荒らすのは
とある山あいの小さな村。村から少し離れたところにある畑で、がっしりした体つきの老人がしゃがみこんでいた。
「まただ。これで4度目だ」
このところ一週間、村の畑の野菜が何者かに食い荒らされる被害が続いていた。他の村人の畑でも被害は出ていたが、老人の畑の野菜になぜか被害が集中していた。今日、被害にあったのは、老人が手塩にかけて育ててきたニンジンだった。収穫間近だったニンジンは掘り出され、原型をとどめないほど食い散らかされている。
ぎり、と、老人の口元から歯ぎしりの音がもれる。若い頃は傭兵として剣を振るっていた老人は、血の気の多い性格だった。
「見ていろ。とっちめてやる」
●畑にうごめく黒い影
あくる日、老人は日の出と共に家を抜け出した。村を抜けて畑へ向かう老人の手には、古びた剣が握られている。それは老人が昔、傭兵時代に愛用していたロングソードだった。
老人が足音を殺して畑に近付く。そこには既に、うごめく黒い影があった。その数は3匹。それはウサギに似ていたが、普通の生き物ではないことは一目瞭然だった。生き物たちの体の色はそれぞれ、目も覚めるような赤、青、黄の色をしていたからだ。
老人の気配に気づいたのか、生き物たちが顔を上げる。まがまがしい顔つきの中で、赤い目がぎらりと光った。普通の村人なら怖気づいて逃げ出したかもしれない。しかし、その時老人は気が付いた。掘り出されたニンジンが、またもや無残にも食い荒らされていることに。かっとなった老人は、怒鳴り声をあげて畑に駆け寄った。
「こらー!」
大声に驚いて、赤色と黄色の2匹が裏山の方角に向かって逃げていく。残ったのは青色だけだった。青色は、老人をちらりと見たあと、またゆうゆうとニンジンを食べ続けた。
「この!」
こめかみに血管を浮き上がらせた老人が剣を振り下ろす。その攻撃を青色は素早く避けた。そして、シャアっと威嚇すると、老人に向かって飛びかかった。間一髪、攻撃を避けた老人の横で、鋭い前歯がカチリと噛み合わさった。さすがにひるんだ老人だったが、そこは腕に覚えのある元傭兵。すぐに体勢を立て直すと、剣で再び斬りかかった。
すると形勢不利と見たのか、青色はきびすを返して逃げだした。前の2匹と同じように、畑の裏手にある山の方角に向かって逃げて行く。
「待て!」
●裏山にあったもの
畑は三方を岩山に囲まれ、裏山の一部は、白っぽい岩盤がむき出しになった斜面になっている。その斜面に、いつのまにか見覚えのない穴がいくつも開いていた。
「なんだ、ありゃ」
老人がぎょっとしている間に、青色がその穴にすぽっと飛び込んだ。穴の入り口は、生き物がぎりぎり通れるほどの大きさで、子供でも入れなさそうな狭さだった。
「害獣め、でてこい」
老人は穴を広げようと、剣の鞘を穴の周囲に打ちつけたが、固い岩盤は削れる様子もない。穴の中は真っ暗で、相当深いように見えた。老人がうなり声を上げた時、すぐ近くの地面から、ひょっこり青色が顔を出した。
「この!」
すかさず老人が剣で斬りかかると、青色はひょいと穴の中に逃げ込んだ。そして今度は、斜面の少し上の穴から顔を出す。見れば、斜面のそこかしこに穴が開いていた。ざっと見たところ、10個はあるだろうか。斜面を駆け上がろうとした老人の左側の穴から、今度は赤色が顔を出した。
「こっちか!」
老人が斬りかかると、すぐに穴の中に引っこんでしまう。同時に右側の穴から黄色が顔を出した。穴は奥でつながっているらしく、老人の攻撃を避けながら、3匹はひょこひょこと出入りを繰り返した。
しばらく顔を真っ赤にしながら3匹を追いかけまわしていた老人だったが、やがて息が上がって立ち止まってしまった。すると斜面の上のほうの穴から、3匹がそろって顔を出して老人を見下ろした。まるで、老人をあざ笑っているかのように。
「ああああ! もう!」
苛立ちが頂点に達した老人は、白髪頭をかきむしると叫び声を上げた。
●ハンターさんにお願い
「と、いうわけで、畑を荒らす害獣どもの駆除をお願いしたい」
渋い顔の老人が、村に到着したハンターたちに告げた。テーブルには、畑や村の位置が書き込まれた、このあたりの地図が広がっている。
「いったいどこから来たのか分からんが、奴らは全部で3匹。斜面に掘った穴に隠れているから、おびき出すためには何らかの工夫が必要だろう。本来なら自分で退治してやりたいところだが……」
「おじいちゃま、危ないことしちゃ、だめ!」
老人の膝に座った4歳くらいの少女が頬をふくらませる。雑魔と1人で戦おうとしたことが家族にばれた老人は、それ以来、この孫娘からかわいらしい監視を受けていた。
とある山あいの小さな村。村から少し離れたところにある畑で、がっしりした体つきの老人がしゃがみこんでいた。
「まただ。これで4度目だ」
このところ一週間、村の畑の野菜が何者かに食い荒らされる被害が続いていた。他の村人の畑でも被害は出ていたが、老人の畑の野菜になぜか被害が集中していた。今日、被害にあったのは、老人が手塩にかけて育ててきたニンジンだった。収穫間近だったニンジンは掘り出され、原型をとどめないほど食い散らかされている。
ぎり、と、老人の口元から歯ぎしりの音がもれる。若い頃は傭兵として剣を振るっていた老人は、血の気の多い性格だった。
「見ていろ。とっちめてやる」
●畑にうごめく黒い影
あくる日、老人は日の出と共に家を抜け出した。村を抜けて畑へ向かう老人の手には、古びた剣が握られている。それは老人が昔、傭兵時代に愛用していたロングソードだった。
老人が足音を殺して畑に近付く。そこには既に、うごめく黒い影があった。その数は3匹。それはウサギに似ていたが、普通の生き物ではないことは一目瞭然だった。生き物たちの体の色はそれぞれ、目も覚めるような赤、青、黄の色をしていたからだ。
老人の気配に気づいたのか、生き物たちが顔を上げる。まがまがしい顔つきの中で、赤い目がぎらりと光った。普通の村人なら怖気づいて逃げ出したかもしれない。しかし、その時老人は気が付いた。掘り出されたニンジンが、またもや無残にも食い荒らされていることに。かっとなった老人は、怒鳴り声をあげて畑に駆け寄った。
「こらー!」
大声に驚いて、赤色と黄色の2匹が裏山の方角に向かって逃げていく。残ったのは青色だけだった。青色は、老人をちらりと見たあと、またゆうゆうとニンジンを食べ続けた。
「この!」
こめかみに血管を浮き上がらせた老人が剣を振り下ろす。その攻撃を青色は素早く避けた。そして、シャアっと威嚇すると、老人に向かって飛びかかった。間一髪、攻撃を避けた老人の横で、鋭い前歯がカチリと噛み合わさった。さすがにひるんだ老人だったが、そこは腕に覚えのある元傭兵。すぐに体勢を立て直すと、剣で再び斬りかかった。
すると形勢不利と見たのか、青色はきびすを返して逃げだした。前の2匹と同じように、畑の裏手にある山の方角に向かって逃げて行く。
「待て!」
●裏山にあったもの
畑は三方を岩山に囲まれ、裏山の一部は、白っぽい岩盤がむき出しになった斜面になっている。その斜面に、いつのまにか見覚えのない穴がいくつも開いていた。
「なんだ、ありゃ」
老人がぎょっとしている間に、青色がその穴にすぽっと飛び込んだ。穴の入り口は、生き物がぎりぎり通れるほどの大きさで、子供でも入れなさそうな狭さだった。
「害獣め、でてこい」
老人は穴を広げようと、剣の鞘を穴の周囲に打ちつけたが、固い岩盤は削れる様子もない。穴の中は真っ暗で、相当深いように見えた。老人がうなり声を上げた時、すぐ近くの地面から、ひょっこり青色が顔を出した。
「この!」
すかさず老人が剣で斬りかかると、青色はひょいと穴の中に逃げ込んだ。そして今度は、斜面の少し上の穴から顔を出す。見れば、斜面のそこかしこに穴が開いていた。ざっと見たところ、10個はあるだろうか。斜面を駆け上がろうとした老人の左側の穴から、今度は赤色が顔を出した。
「こっちか!」
老人が斬りかかると、すぐに穴の中に引っこんでしまう。同時に右側の穴から黄色が顔を出した。穴は奥でつながっているらしく、老人の攻撃を避けながら、3匹はひょこひょこと出入りを繰り返した。
しばらく顔を真っ赤にしながら3匹を追いかけまわしていた老人だったが、やがて息が上がって立ち止まってしまった。すると斜面の上のほうの穴から、3匹がそろって顔を出して老人を見下ろした。まるで、老人をあざ笑っているかのように。
「ああああ! もう!」
苛立ちが頂点に達した老人は、白髪頭をかきむしると叫び声を上げた。
●ハンターさんにお願い
「と、いうわけで、畑を荒らす害獣どもの駆除をお願いしたい」
渋い顔の老人が、村に到着したハンターたちに告げた。テーブルには、畑や村の位置が書き込まれた、このあたりの地図が広がっている。
「いったいどこから来たのか分からんが、奴らは全部で3匹。斜面に掘った穴に隠れているから、おびき出すためには何らかの工夫が必要だろう。本来なら自分で退治してやりたいところだが……」
「おじいちゃま、危ないことしちゃ、だめ!」
老人の膝に座った4歳くらいの少女が頬をふくらませる。雑魔と1人で戦おうとしたことが家族にばれた老人は、それ以来、この孫娘からかわいらしい監視を受けていた。
リプレイ本文
●出発の前に
「何か必要なものはあるか?」
依頼人にそう尋ねられたハンターたちは、あれこれとにぎやかに相談をはじめた。しばらくして意見はまとまったらしく、金髪の青年、クローディオ・シャール(ka0030)が口火を切った。
「古い布などがあればいただきたいのです」
「古布を燃やして、その煙で雑魔たちを穴からいぶり出そうと思っているんだ」
茶色の髪の少年、レウィル=スフェーン(ka4689)が付け加える。
「こういったもので良いのですが」
よく通る低い声を響かせながら、レイ・T・ベッドフォード(ka2398)が持参した古い毛布を老人に見せた。
「なるほど。そういうことなら、村の者たちにも声をかけてみよう」
老人が協力をあおぐと、村の人々は、それぞれの家から古布や古毛布を持ち寄った。老人の家の前に、いくつも古布の小さな山ができ、すぐに穴を塞ぐために充分と思われる量が集まった。
「よいしょ、よいしょ」
毛布を抱えた依頼人の孫娘が、家の中からおぼつかない足取りで出てくると、それを古布の山の上にどさりと置いた。
「ふふ……祖父思いの良いお孫さんですね。でも貴方もいつか働かねばならない時が来る。……それまでに、いい弟を見つけるのですよ」
きょとんとした表情を浮かべる孫娘に、レイが笑顔でなにやら言い聞かせている。
「おい。出発するぞ」
そこに目つきの鋭い銀髪の少年、ウィンス・デイランダール(ka0039)が声をかけた。
「少しでもお力になれるよう頑張りますね!」
小麦色の肌の少女、ミネット・ベアール(ka3282)の言葉に、それまで緊張した表情を浮かべていた老人が相好を崩す。
「他に何か必要なようだったら、作物でもなんでも、うちの畑から持って行ってくれ」
孫娘にがっしりと服の裾を掴まれた老人に見送られ、古布を抱えたハンターたちは雑魔のいる場所へと向かった。
●もう1つの戦い
「ウサギ狩りよ! 巨大ヴォイドには役立たなかった私の狩猟獣たちが牙をむくわ!」
腕いっぱいに古布を抱えた犬養 菜摘(ka3996)が興奮した様子で声を上げた。この辺りの岩盤の色に合わせた迷彩柄のジャケットが、依頼への意気込みを物語っている。
「その子たちが狩猟獣ですか?」
ミネットが犬養の両脇を歩く2匹を見て尋ねる。
「そう。ヨーロッパケナガイタチもといフェレット……臭腺除去などもしていない野性味あふれる大きく育てた狩猟用のものよ。それと、本来の用途として調教したダックスフンド……どちらも、アナグマやアナウサギを駆り出すための獣なの」
犬養はそう言いながら誇らしげに足元の2匹を眺めた。
荒らされた老人の畑を通り過ぎたハンターたちは、斜面の手前で古布を地面におろした。斜面には報告通り、12個の穴がぽっかりと口を開けている。
「ウサギ型の歪虚か。可愛らしくはあるけど、生活圏に被害を出すのは頂けないね。どうやってこんな硬い岩場に巣を作ったんだか……」
レウィルが斜面に触れて、その硬さに驚いたような表情を浮かべる。
犬養は早速フェレットたちに指示を出し、ハンターたちが作業する間の見張りを命じた。
今まで対峙してきた獲物とは明らかに異なる雑魔の気配に対する、本能的な恐怖。そして主人への絶対的な忠誠。その2つが小さな体の中でせめぎあっているのだろうか。斜面の中央付近に立ったフェレットとダックスフンドの体は、寒くもないのに小刻みに震え続けている。
「穴は、土などを運ぶのが面倒な上側から埋めたほうが良いでしょうか」
斜面を見上げて思案するレイに、ミネットが身振りを交えながら提案する。
「煙が中に行きわたるよう、一番下の端と一番上の端だけ残して登り窯のようにしてみましょう」
「古布と一口に言えど色々ですね。大きいものは、私が扱いやすい大きさに裁断しますね」
そう言うと、レイは自分の持ってきた毛布を名残惜しそうにひと撫でしてから、ナイフで裁断しはじめた。
クローディオとレウィルが穴の入り口に手ごろな石を積み上げると、その隙間を埋めるように、レイが小さく切った毛布を押し込んでいく。最後に犬養とミネットが、近くで集めた土や藁で小さな隙間も埋めていった。
そうして分担しながら穴を埋める作業を進めていたとき、石を運んでいたはずのウィンスが、ずいっと前に進み出た。
「堅そうな岩盤じゃねーか……上等だ。相手に取って不足はない……」
そう言うと、まるで歴戦の勇士を前にしたような真剣さで、岩盤に対して槍を水平に構えた。一体何ごとかと他の者の手が止まる。
「硬い? 上等だ。だからこそ挑む……それがッ!」
その言葉と共に、ウィンスの足元から銀色のオーラが立ちのぼり、カッ、と血走った目が見開かれた。
「魂の反逆だああああああああああああああ!」
叫び声と共に、渾身の力で槍を薙ぎ払う。岩盤に迫った七色にきらめく刃は、ギインッ、という金属音と共に弾かれた。ほとんど傷のついていない岩盤をウィンスがくやしげに見つめる。
「硬いな……。だが、だからこそ掘る。それが! 魂の! 反逆ゥ!」
ウィンスはそう叫ぶと、同じ場所をひたすらに薙ぎ払い続けた。岩盤が衝撃でわずかに砕け、破片が飛び散る。
「ぬううあああああああ!」
ギィン!
「ふんぬあああああああああ!」
ガァン!
「ッらあああああああああ!」
ゴォン!
叫び声と金属音が交互に響き渡る中、ウィンスの姿を見つめるレイは感に堪えないといった様子で頷いた。
「いやはや……相変わらず素晴らしい槍さばきです。ウィンス様の『槍』ならどんな『穴』でも『掘れ』そうですね」
「ええ。なんだか、キツツキを思い出しますね」
クローディオが穴に布を押し込みながら、涼しい顔で呟く。
唖然とした様子でウィンスの行動を見つめていた残りの者たちは、2人の言葉ではっと我に返り、作業を再開した。
穴の中の雑魔は、この状況をどう感じているのだろう。レイは布を運びながら、ふと雑魔の心中を思って首を傾げた。
「……何で、でしょうね。とても悪い事をしている気になります」
やがてウィンスは岩盤の前で、がっくりと膝をついた。岩盤にはいくつもの横向きの傷が走っているものの、それは穴と呼ぶにはあまりにも浅かった。
「俺は……俺は穴一つ掘れねーのかよ……!? まだ足りねーのか、魂の反逆が……!」
握りしめた拳で地面を叩くウィンスの肩に、クローディオの手がそっと置かれる。はっと顔を上げたウィンスに、クローディオはにこやかな笑顔と共に古毛布を差し出した。
●ニンジン作戦
一番右上の穴と、左下の穴を残して埋め終わると、一行は左下の穴の前に集まった。
「ぐへへ。埋め終わりました! 火をつけて扇いで燻り出しちゃいましょう!」
穴の前に余った古布を集めると、ミネットが怪しげな笑い声と共に枯草をのせる。
「じゃあ、火をつけるよ」
そこにレウィルが用意してきた松明で火をつけた。炎が枯草と布を呑み込み、少しずつ大きくなっていく。
「んー、なんか焼き芋とかしたいですね!」
ミネットの呟きにレウィルが頷く。
「食材を焼いて、匂いで誘き出してみるのもいいかもね」
レウィルは老人の畑に残っていたニンジンを1本抜くと、燃えている布の間に差し込んだ。ほどなくして、ニンジンの焼ける甘い香りが辺りにただよいはじめる。
「美味しそうな匂いがしてきました。あんなカラフルなウサギさんが野生にいたら、どんな味がするんでしょうね」
ミネットがじゅるりとよだれをぬぐう。
●1匹目
「超聴覚を使って、上から様子をみてみますね」
そう言ってレイが斜面を登っていく。他の者たちも、それぞれに戦いの準備をはじめた。
犬養は斜面から離れた岩山に体を伏せ、猟銃を構えた。迷彩ジャケットの効果で、その姿は岩山にまぎれてほとんど見えなくなる。
鞭を構えたクローディオは、斜面の右側に位置取った。覚醒したクローディオの目の前に、足元にすり寄る黒い犬の幻影がよぎる。
「……やるしかない」
レウィルは心を落ち着かせるように深く息を吸った。そして左下の穴の横側に立つと、覚悟を決めた様子で、すらりと日本刀を引き抜いた。
左下の穴の前では、ウィンスが物思わしげな様子で槍を構えている。
「一人前のハンターになるんです」
独り言のように小さく呟くと、ミネットは斜面から少し離れた場所に立って、弓に矢をつがえた。
「いやあ、いい景色ですね」
斜面の上に到着したレイの髪が風に揺れる。レイは銀製の銃身を持つ魔導拳銃を構えると、静かに耳を澄ませた。
「雑魔の1匹は奥に隠れているみたいですね。もう1匹は、左上の塞がれた穴の前にいます。あとの1匹は右上の穴の前に近付いて……きます!」
レイの言葉通り、黄色の雑魔が右上の穴からひょっこり顔を出した。美味しそうな匂いにつられたのか、鼻をひくひくと動かしている。すかさずレイが銃の引き金を引いた。風の力をまとった銃弾が黄色の左耳に命中する。
「ギャウ!」
「逃がしません!」
穴に逃げ込む隙を与えまいとミネットが矢を放つ。限界まで引き絞った弓から放たれた矢は空を切って飛び、雑魔の体に深々と突き立った。絶叫と共に黄色の霧が散った。
●2匹目
1匹目の雑魔を倒している間に、炎の勢いは強くなってきていた。ミネットが棒でつついて布ごと穴のほうに押しやると、煙は吸い込まれるように穴の中へ向かって流れていった。
しばらくして右上の穴から白い煙が出てくる。ハンターたちはその様子を満足げに見つめた。
「さぁ、出てこないと丸焼きにしちゃうよー。出てきても見逃さないけど」
小さくレウィルが呟いたとき、ハンターたちの意表をつくように、左下の穴から何かが飛び出してきた。
燃え盛る炎が一瞬弱まった隙を逃さず、その中から姿を現したのは、炎と同じ赤色の雑魔だった。
焦げてぶすぶすと煙のあがる体をものともせず、必死の様子でハンターたちの包囲網を斜面の左上から突破しようと試みた。
「逃がさないよ」
レウィルが目にもとまらぬ速さで赤色に追いつくと、見事な回し蹴りを叩き込んだ。
「ギイ!」
空中に跳ね飛ばされた赤色の体は、斜面に激突すると、ぐったりとしたまま斜面をすべり落ちていった。そして、硬い岩盤との真剣勝負を思い返して槍を振るっていたウィンスの目の前で、ぴたりと止まった。
「邪魔だ!」
思索の邪魔をされ、苛立ったウィンスが槍を払う。七色の刃がきらめき、雑魔の体が真一文字に切り裂かれた。どことなく無念にも聞こえる断末魔と共に、赤色の雑魔は霧散した。
●3匹目
3匹中2匹の雑魔を無事に退治したハンターたちは、最後の1匹を待ち構えていた。
「なかなか出ませんね」
クローディオが表面に炎のような模様が浮かぶ鞭で斜面のあちこちを叩くと、そのたびに乾いた音と熱気が沸き上がった。しばらくそうして様子をうかがうが、雑魔の動きはない。
「これを燃やしてみようと思うんだ」
レウィルが取り出したのは紙巻煙草の箱だった。中から煙草を全て取り出すと、火の中にばらばらと投げ入れる。すぐに強い煙草の香りが煙にまじりはじめた。最後の雑魔が上下どちらの穴から出てきても良いように、ハンターたちが身構える。
その時、右上の穴から青色の雑魔が飛び出した。
「おっと。逃がしませんよ」
クローディオが白く輝く盾を手に、青色の進行方向に立ちふさがる。青色は斜面を駆け下りる勢いのまま、クローディオに飛びかかった。クローディオの目の前で鋭い牙がきらめく。
「言ったでしょう。逃がしま、せん!」
盾で攻撃を受け止めたクローディオは、そのまま青色の体を弾き飛ばした。青色の体が地面に叩き付けられる。その姿を、犬養のスコープサイトの模様が浮かび上がった瞳は見逃さなかった。
「とどめよ」
犬養の猟銃から放たれた弾丸が、起き上がろうともがく青色の眉間を正確に貫いた。
●戦いのあとで
「さすが菜摘さん! 名ハンターですね!」
ミネットの言葉に、フェレットとダックスフンドを呼び寄せた犬養が胸を張る。
「あんたの本気、見せてもらったぜ。だがこれで終わりじゃない。約束だ。いつかまた戦おうぜ!」
岩盤に向かって熱く語りかけているウィンスからそっと目をそらしながら、レウィルは燃え残った布きれを穴の前からどかした。
「あとは、その辺の岩を砕くなりして全部の穴をしっかり埋めておきたいね。巣穴をこのままにすると、また他の歪虚が住み着くかもしれないし」
「おう」
「はーい」
ハンターたちは元気よく残りの穴を埋めはじめ、すぐに全ての穴が塞がった。埋め残しがないことを確認した一行は、報告のため村に向かって出発する。
「歪虚、とは本当に……受け入れがたいものですね。獣なら食せますから……」
「やっぱり雑魔って消えちゃうんですねー……。口の中がもうウサギさんの味なんですよね」
レイの言葉に、心の底からのため息をついたミネットが、はっとしたように顔を上げた。
「そうだ。この辺で狩って皆で食べませんか? 今度は本物のウサギ狩りをするんです。ねぇ! 菜摘さん!」
話を振られた犬養が任せろと言うように大きく頷くと、その足元でフェレットたちも嬉しそうに跳ね回った。
「ヒャハー! ウサギ狩りだー!」
盛り上がる2人に、レウィルとレイが興味津々といった様子で加わった。そんな彼らをクローディオは父親のような眼差しで見守り、ウィンスは槍を握りしめたまま、どこか遠くを見つめていた。
●ハンターさんにあいがとう
村に到着したハンターたちは、集まった村人たちに雑魔の駆除が完了したことを伝えた。村人たちから、わっと歓声があがる。依頼主の老人が代表してハンターに礼を述べた。
「まさか今後のことを考えて穴まで埋めてくれるとは思ってもみなかった。ハンターというのはこれほど丁寧な仕事をしてくれるものなのだな。本当にありがとう」
「ほんとうにあいがとう」
老人に肩車された孫娘が、老人の言葉を繰り返してにこっと笑った。
見送りは村人総出で行われた。大きく手を振る老人や孫娘、村人たちに手を振り返して、見事依頼を達成したハンターたちは村を後にした。
「何か必要なものはあるか?」
依頼人にそう尋ねられたハンターたちは、あれこれとにぎやかに相談をはじめた。しばらくして意見はまとまったらしく、金髪の青年、クローディオ・シャール(ka0030)が口火を切った。
「古い布などがあればいただきたいのです」
「古布を燃やして、その煙で雑魔たちを穴からいぶり出そうと思っているんだ」
茶色の髪の少年、レウィル=スフェーン(ka4689)が付け加える。
「こういったもので良いのですが」
よく通る低い声を響かせながら、レイ・T・ベッドフォード(ka2398)が持参した古い毛布を老人に見せた。
「なるほど。そういうことなら、村の者たちにも声をかけてみよう」
老人が協力をあおぐと、村の人々は、それぞれの家から古布や古毛布を持ち寄った。老人の家の前に、いくつも古布の小さな山ができ、すぐに穴を塞ぐために充分と思われる量が集まった。
「よいしょ、よいしょ」
毛布を抱えた依頼人の孫娘が、家の中からおぼつかない足取りで出てくると、それを古布の山の上にどさりと置いた。
「ふふ……祖父思いの良いお孫さんですね。でも貴方もいつか働かねばならない時が来る。……それまでに、いい弟を見つけるのですよ」
きょとんとした表情を浮かべる孫娘に、レイが笑顔でなにやら言い聞かせている。
「おい。出発するぞ」
そこに目つきの鋭い銀髪の少年、ウィンス・デイランダール(ka0039)が声をかけた。
「少しでもお力になれるよう頑張りますね!」
小麦色の肌の少女、ミネット・ベアール(ka3282)の言葉に、それまで緊張した表情を浮かべていた老人が相好を崩す。
「他に何か必要なようだったら、作物でもなんでも、うちの畑から持って行ってくれ」
孫娘にがっしりと服の裾を掴まれた老人に見送られ、古布を抱えたハンターたちは雑魔のいる場所へと向かった。
●もう1つの戦い
「ウサギ狩りよ! 巨大ヴォイドには役立たなかった私の狩猟獣たちが牙をむくわ!」
腕いっぱいに古布を抱えた犬養 菜摘(ka3996)が興奮した様子で声を上げた。この辺りの岩盤の色に合わせた迷彩柄のジャケットが、依頼への意気込みを物語っている。
「その子たちが狩猟獣ですか?」
ミネットが犬養の両脇を歩く2匹を見て尋ねる。
「そう。ヨーロッパケナガイタチもといフェレット……臭腺除去などもしていない野性味あふれる大きく育てた狩猟用のものよ。それと、本来の用途として調教したダックスフンド……どちらも、アナグマやアナウサギを駆り出すための獣なの」
犬養はそう言いながら誇らしげに足元の2匹を眺めた。
荒らされた老人の畑を通り過ぎたハンターたちは、斜面の手前で古布を地面におろした。斜面には報告通り、12個の穴がぽっかりと口を開けている。
「ウサギ型の歪虚か。可愛らしくはあるけど、生活圏に被害を出すのは頂けないね。どうやってこんな硬い岩場に巣を作ったんだか……」
レウィルが斜面に触れて、その硬さに驚いたような表情を浮かべる。
犬養は早速フェレットたちに指示を出し、ハンターたちが作業する間の見張りを命じた。
今まで対峙してきた獲物とは明らかに異なる雑魔の気配に対する、本能的な恐怖。そして主人への絶対的な忠誠。その2つが小さな体の中でせめぎあっているのだろうか。斜面の中央付近に立ったフェレットとダックスフンドの体は、寒くもないのに小刻みに震え続けている。
「穴は、土などを運ぶのが面倒な上側から埋めたほうが良いでしょうか」
斜面を見上げて思案するレイに、ミネットが身振りを交えながら提案する。
「煙が中に行きわたるよう、一番下の端と一番上の端だけ残して登り窯のようにしてみましょう」
「古布と一口に言えど色々ですね。大きいものは、私が扱いやすい大きさに裁断しますね」
そう言うと、レイは自分の持ってきた毛布を名残惜しそうにひと撫でしてから、ナイフで裁断しはじめた。
クローディオとレウィルが穴の入り口に手ごろな石を積み上げると、その隙間を埋めるように、レイが小さく切った毛布を押し込んでいく。最後に犬養とミネットが、近くで集めた土や藁で小さな隙間も埋めていった。
そうして分担しながら穴を埋める作業を進めていたとき、石を運んでいたはずのウィンスが、ずいっと前に進み出た。
「堅そうな岩盤じゃねーか……上等だ。相手に取って不足はない……」
そう言うと、まるで歴戦の勇士を前にしたような真剣さで、岩盤に対して槍を水平に構えた。一体何ごとかと他の者の手が止まる。
「硬い? 上等だ。だからこそ挑む……それがッ!」
その言葉と共に、ウィンスの足元から銀色のオーラが立ちのぼり、カッ、と血走った目が見開かれた。
「魂の反逆だああああああああああああああ!」
叫び声と共に、渾身の力で槍を薙ぎ払う。岩盤に迫った七色にきらめく刃は、ギインッ、という金属音と共に弾かれた。ほとんど傷のついていない岩盤をウィンスがくやしげに見つめる。
「硬いな……。だが、だからこそ掘る。それが! 魂の! 反逆ゥ!」
ウィンスはそう叫ぶと、同じ場所をひたすらに薙ぎ払い続けた。岩盤が衝撃でわずかに砕け、破片が飛び散る。
「ぬううあああああああ!」
ギィン!
「ふんぬあああああああああ!」
ガァン!
「ッらあああああああああ!」
ゴォン!
叫び声と金属音が交互に響き渡る中、ウィンスの姿を見つめるレイは感に堪えないといった様子で頷いた。
「いやはや……相変わらず素晴らしい槍さばきです。ウィンス様の『槍』ならどんな『穴』でも『掘れ』そうですね」
「ええ。なんだか、キツツキを思い出しますね」
クローディオが穴に布を押し込みながら、涼しい顔で呟く。
唖然とした様子でウィンスの行動を見つめていた残りの者たちは、2人の言葉ではっと我に返り、作業を再開した。
穴の中の雑魔は、この状況をどう感じているのだろう。レイは布を運びながら、ふと雑魔の心中を思って首を傾げた。
「……何で、でしょうね。とても悪い事をしている気になります」
やがてウィンスは岩盤の前で、がっくりと膝をついた。岩盤にはいくつもの横向きの傷が走っているものの、それは穴と呼ぶにはあまりにも浅かった。
「俺は……俺は穴一つ掘れねーのかよ……!? まだ足りねーのか、魂の反逆が……!」
握りしめた拳で地面を叩くウィンスの肩に、クローディオの手がそっと置かれる。はっと顔を上げたウィンスに、クローディオはにこやかな笑顔と共に古毛布を差し出した。
●ニンジン作戦
一番右上の穴と、左下の穴を残して埋め終わると、一行は左下の穴の前に集まった。
「ぐへへ。埋め終わりました! 火をつけて扇いで燻り出しちゃいましょう!」
穴の前に余った古布を集めると、ミネットが怪しげな笑い声と共に枯草をのせる。
「じゃあ、火をつけるよ」
そこにレウィルが用意してきた松明で火をつけた。炎が枯草と布を呑み込み、少しずつ大きくなっていく。
「んー、なんか焼き芋とかしたいですね!」
ミネットの呟きにレウィルが頷く。
「食材を焼いて、匂いで誘き出してみるのもいいかもね」
レウィルは老人の畑に残っていたニンジンを1本抜くと、燃えている布の間に差し込んだ。ほどなくして、ニンジンの焼ける甘い香りが辺りにただよいはじめる。
「美味しそうな匂いがしてきました。あんなカラフルなウサギさんが野生にいたら、どんな味がするんでしょうね」
ミネットがじゅるりとよだれをぬぐう。
●1匹目
「超聴覚を使って、上から様子をみてみますね」
そう言ってレイが斜面を登っていく。他の者たちも、それぞれに戦いの準備をはじめた。
犬養は斜面から離れた岩山に体を伏せ、猟銃を構えた。迷彩ジャケットの効果で、その姿は岩山にまぎれてほとんど見えなくなる。
鞭を構えたクローディオは、斜面の右側に位置取った。覚醒したクローディオの目の前に、足元にすり寄る黒い犬の幻影がよぎる。
「……やるしかない」
レウィルは心を落ち着かせるように深く息を吸った。そして左下の穴の横側に立つと、覚悟を決めた様子で、すらりと日本刀を引き抜いた。
左下の穴の前では、ウィンスが物思わしげな様子で槍を構えている。
「一人前のハンターになるんです」
独り言のように小さく呟くと、ミネットは斜面から少し離れた場所に立って、弓に矢をつがえた。
「いやあ、いい景色ですね」
斜面の上に到着したレイの髪が風に揺れる。レイは銀製の銃身を持つ魔導拳銃を構えると、静かに耳を澄ませた。
「雑魔の1匹は奥に隠れているみたいですね。もう1匹は、左上の塞がれた穴の前にいます。あとの1匹は右上の穴の前に近付いて……きます!」
レイの言葉通り、黄色の雑魔が右上の穴からひょっこり顔を出した。美味しそうな匂いにつられたのか、鼻をひくひくと動かしている。すかさずレイが銃の引き金を引いた。風の力をまとった銃弾が黄色の左耳に命中する。
「ギャウ!」
「逃がしません!」
穴に逃げ込む隙を与えまいとミネットが矢を放つ。限界まで引き絞った弓から放たれた矢は空を切って飛び、雑魔の体に深々と突き立った。絶叫と共に黄色の霧が散った。
●2匹目
1匹目の雑魔を倒している間に、炎の勢いは強くなってきていた。ミネットが棒でつついて布ごと穴のほうに押しやると、煙は吸い込まれるように穴の中へ向かって流れていった。
しばらくして右上の穴から白い煙が出てくる。ハンターたちはその様子を満足げに見つめた。
「さぁ、出てこないと丸焼きにしちゃうよー。出てきても見逃さないけど」
小さくレウィルが呟いたとき、ハンターたちの意表をつくように、左下の穴から何かが飛び出してきた。
燃え盛る炎が一瞬弱まった隙を逃さず、その中から姿を現したのは、炎と同じ赤色の雑魔だった。
焦げてぶすぶすと煙のあがる体をものともせず、必死の様子でハンターたちの包囲網を斜面の左上から突破しようと試みた。
「逃がさないよ」
レウィルが目にもとまらぬ速さで赤色に追いつくと、見事な回し蹴りを叩き込んだ。
「ギイ!」
空中に跳ね飛ばされた赤色の体は、斜面に激突すると、ぐったりとしたまま斜面をすべり落ちていった。そして、硬い岩盤との真剣勝負を思い返して槍を振るっていたウィンスの目の前で、ぴたりと止まった。
「邪魔だ!」
思索の邪魔をされ、苛立ったウィンスが槍を払う。七色の刃がきらめき、雑魔の体が真一文字に切り裂かれた。どことなく無念にも聞こえる断末魔と共に、赤色の雑魔は霧散した。
●3匹目
3匹中2匹の雑魔を無事に退治したハンターたちは、最後の1匹を待ち構えていた。
「なかなか出ませんね」
クローディオが表面に炎のような模様が浮かぶ鞭で斜面のあちこちを叩くと、そのたびに乾いた音と熱気が沸き上がった。しばらくそうして様子をうかがうが、雑魔の動きはない。
「これを燃やしてみようと思うんだ」
レウィルが取り出したのは紙巻煙草の箱だった。中から煙草を全て取り出すと、火の中にばらばらと投げ入れる。すぐに強い煙草の香りが煙にまじりはじめた。最後の雑魔が上下どちらの穴から出てきても良いように、ハンターたちが身構える。
その時、右上の穴から青色の雑魔が飛び出した。
「おっと。逃がしませんよ」
クローディオが白く輝く盾を手に、青色の進行方向に立ちふさがる。青色は斜面を駆け下りる勢いのまま、クローディオに飛びかかった。クローディオの目の前で鋭い牙がきらめく。
「言ったでしょう。逃がしま、せん!」
盾で攻撃を受け止めたクローディオは、そのまま青色の体を弾き飛ばした。青色の体が地面に叩き付けられる。その姿を、犬養のスコープサイトの模様が浮かび上がった瞳は見逃さなかった。
「とどめよ」
犬養の猟銃から放たれた弾丸が、起き上がろうともがく青色の眉間を正確に貫いた。
●戦いのあとで
「さすが菜摘さん! 名ハンターですね!」
ミネットの言葉に、フェレットとダックスフンドを呼び寄せた犬養が胸を張る。
「あんたの本気、見せてもらったぜ。だがこれで終わりじゃない。約束だ。いつかまた戦おうぜ!」
岩盤に向かって熱く語りかけているウィンスからそっと目をそらしながら、レウィルは燃え残った布きれを穴の前からどかした。
「あとは、その辺の岩を砕くなりして全部の穴をしっかり埋めておきたいね。巣穴をこのままにすると、また他の歪虚が住み着くかもしれないし」
「おう」
「はーい」
ハンターたちは元気よく残りの穴を埋めはじめ、すぐに全ての穴が塞がった。埋め残しがないことを確認した一行は、報告のため村に向かって出発する。
「歪虚、とは本当に……受け入れがたいものですね。獣なら食せますから……」
「やっぱり雑魔って消えちゃうんですねー……。口の中がもうウサギさんの味なんですよね」
レイの言葉に、心の底からのため息をついたミネットが、はっとしたように顔を上げた。
「そうだ。この辺で狩って皆で食べませんか? 今度は本物のウサギ狩りをするんです。ねぇ! 菜摘さん!」
話を振られた犬養が任せろと言うように大きく頷くと、その足元でフェレットたちも嬉しそうに跳ね回った。
「ヒャハー! ウサギ狩りだー!」
盛り上がる2人に、レウィルとレイが興味津々といった様子で加わった。そんな彼らをクローディオは父親のような眼差しで見守り、ウィンスは槍を握りしめたまま、どこか遠くを見つめていた。
●ハンターさんにあいがとう
村に到着したハンターたちは、集まった村人たちに雑魔の駆除が完了したことを伝えた。村人たちから、わっと歓声があがる。依頼主の老人が代表してハンターに礼を述べた。
「まさか今後のことを考えて穴まで埋めてくれるとは思ってもみなかった。ハンターというのはこれほど丁寧な仕事をしてくれるものなのだな。本当にありがとう」
「ほんとうにあいがとう」
老人に肩車された孫娘が、老人の言葉を繰り返してにこっと笑った。
見送りは村人総出で行われた。大きく手を振る老人や孫娘、村人たちに手を振り返して、見事依頼を達成したハンターたちは村を後にした。
依頼結果
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生麦、生米、生卵。 レイ・T・ベッドフォード(ka2398) 人間(リアルブルー)|26才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/05/22 07:31:29 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/20 22:51:26 |