ふるさとを取り戻せ!

マスター:植田誠

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/06/16 12:00
完成日
2014/06/24 02:27

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


「くそ……」
 茂みの中で青年は苦々しげにそう呟いた。その手には1枚の古い地図が握られている。
 青年が祖父から譲り受けたこの地図に記されているのは、ある村の位置。それはかつて過疎化が進み人がいなくなってしまった……いわゆる廃村。祖父が生まれ育ち……そして捨て去った故郷でもある。
 恐らく、祖父はそう長くない。気難しいところがある人だが、仲は良い方だったと思っている。だから、次第に近づいてきた祖父との別れを考えると、悲しさがこみあげてくる。
 だからその前に、幾度となく祖父が話した故郷。そこを復興させ、その様子を祖父に見せてやりたい。
 青年はそう考え、こうして家を離れ1人道なき道を地図に従い歩いてきた。
(そうしてやっと着いたと思ってたのに……)
 地図に書かれていた場所。そこにはいくつかの家屋があった跡がみられる。確かに、村はここにあった。だが同時に、青年の視界には人影のようなものが映った。
 ここは廃村。人などいるはずはない。その考え通り、そこにいたのは人ではなかった。
 その体に肉は無く、骨だけの身でありながら動き続ける……あれは、いわゆるスケルトンという奴だ。それらが1、2……全部で6体、村をフラフラと徘徊している。
 言うまでもない、あれは歪虚……このままではこの近辺のマテリアルが喪失し、この村の復興は難しくなるかもしれない。少なくとも祖父が生きている間には無理だろう。青年にはそう思えた。
(けど、どうすることもできない……)
 何故なら、青年は只の人間だから。歪虚と正面切って戦う力を持たない、只の一般人なのだ。
「くそ……っ!」
 叫びたい気持ちを押し殺し口中で呟く。自分に力が無いから、今すぐどうにかすることが出来ない。そんな悔しさを滲ませて。
 村に背を向けた青年は静かにその場を離れていく。 この状況を打破する。そのためには、歪虚と戦う力を持つ人々に助けを求めるしか手は無い。
 青年は村の方へ一度振り向き、歪虚が見えなくなったことを確認すると、今度は全速力で来た道を走り出す。
「覚醒者……ハンターズギルドのハンターならあいつらを倒してくれるはずだ……きっと!」
 こうして、ハンターズギルドに依頼が並ぶ。
 青年の『祖父のふるさとを取り戻してくれ』という願いと共に。

リプレイ本文


 8人は依頼人がそうしたように茂みから様子を窺う。その視線の先には、依頼人が見たのと同じ6体のスケルトンが徘徊していた。
 ただ、彼らが依頼人と違ったのは……彼らがあのスケルトンたちを倒す力を持つ、覚醒者。ハンターであるという点だ。
「コアのようなものは、やっぱり見当たらないね」
 十六夜・暁(ka0605)はスケルトンを遠目で見ながら言った。覚醒の影響から、足元をネコのような影が駆け回っている。
 今回の敵、スケルトンに関する情報はここに来る前にギルドなどである程度集めてきた。それによると、やはりコアのようなものは存在していないようだ。
「もし、あれば、上手く攻撃、当てられれば、楽に倒せると、思ったけど……」
 少し残念そうに雨音・みさぎ(ka1448)は呟く。
「無いならないでさ。結局動かなくなるまで殴れば同じことだよな」
「ま、そういうことっすね」
 岩井崎 旭(ka0234)に同意するように虎丸 陽一(ka1971)が頷いた。それに……情報によればスケルトンもまた歪虚の一種……雑魔に分類されるものであり、攻撃すれば倒れるし、倒されればその身はチリとなって消え再び戻ることは無い。何度倒しても再び起き上がってくるという厄介さは無さそうだ。少なくとも、今回のケースは。
 8人は声を潜めながらも敵に近づくために、物陰などに隠れながら少しずつ移動していく。
「こんな即興パーティーでチームプレイなんてできるのでしょうか……」
 みけ(ka1433)は移動しながら、ふとそんなことを呟いた。過去の経緯故に周りの事を信じきれない。だからこそ出た言葉だろう。
「大丈夫ですよ。私も援護しますしね」
 それが聞こえていたのか、シエル・ヴァンテスター(ka1612)が言った。みけはその言葉には応答せず、無言で灰色の髪を手際よく束ねていく。
戦いの始まりは近い。だからこそ、気合を入れる必要があった。
「止まって」
 集団の先頭に立っていた月架 尊(ka0114)が、小さな声と共に手で合図を送る。この先に、目立った障害物は存在していない。
「……多分、この先は気付かれます」
 ここまでくれば、後は戦うのみ。
(緊張しますね……相手は異形ですし。でも、乞われた以上は倒さなければなりません)
 戦う訓練は積んできた。あとはそれを実戦で活かせるかどうかだ。
「それでは……他者のふるさとを土足で荒らす無作法な奴らには、きっちりと反省してもらうとしましょうか」
 フィル・サリヴァン(ka1155)はそう言うと、その微笑みを崩すことなく静かに剣を抜いた。


 飛びだしたのは尊、旭、暁、フィルの4名。彼らが前衛だ。
スケルトンは、そんな彼らの動きに対し機敏に反応し、こちらを向く。
 だが、そのスケルトンを襲ったのはそのさらに後ろからの攻撃。後衛のみけ、みさぎ、シエル、陽一らによる魔法と銃による一斉攻撃だった。
今回の作戦はこうして前衛と後衛に分かれつつも基本は固まって行動するというものだ。下手に分散するよりも、数的優位を維持し、活かしていこうという意図だろう。
 何とか盾で防ごうとしたスケルトンだったが、攻撃の苛烈さは尋常なものではなかった。
「やられる前に、先制攻撃っす!」
 陽一の放った魔法の矢が持っていた腕ごとその盾を跳ね上げ……
「攻撃は最大の防御、言うから、ね」
 みさぎの放った魔法と、ほぼ同時に発射されたミケの銃弾が両足を撃つ。連続した攻撃で態勢を大きく崩されたスケルトンはそのまま前のめりに……倒れることさえ許されない。
「これでも喰らってもらいましょうか」
 シエルの魔導機械から放たれた機動砲が胴体を撃ちぬき、そのままスケルトンは塵と消えた。
まずは、一体目。
(……頭を狙ったんだけど……やっぱり遠いと当てづらいわね)
 完膚なきまでに叩き潰しながらも、ミケなどはやや不満の残った表情をしている。だが、その不満を解消するチャンスはまだある。敵はあと5体残されているのだから。
「このまま正面から当たると……ちょっとまずいかな」
 暁は後方に軽く目を向けてから、やや外回りに移動する。後衛に近づかせないことを基本的な方針として考えていた暁だが、とりあえず前衛の人数は足りている。ならば側面から回り込んで、敵を半包囲しつつ戦う。そうすれば後衛も射線を取りやすいだろうし、敵を袋叩きにするチャンスだ。
 その5体は、仲間が倒されたのを察知したのか、あごの骨をカタカタと鳴らしながらこちらへ向かって走り込んできていた。
 まずは比較的近くにいた2体がそろって旭を狙う。
「うわ、近くで見るとホント骨だけだ……あいつら何で動いてんだよ!」
 やはり初陣だからだろうか。敵の姿を目前に捉え、多少怯えもあるのだろうか。だが、その言葉とは裏腹に、旭は手を地面に付きながら姿勢を低く……かと思ったら不意に跳び上がる。霊呪の力も加わったトリッキーな動きにスケルトンはすぐさま対応することが出来ない。振るわれた剣は、虚しく空を切るのみ。
 他方、近い敵を狙うように動いていた尊。その動きを読まれたのか、それとも偶然か。自身が狙おうとしていたスケルトンに先手を打たれる。
「しまっ……!」
「やらせません!」
 だが、それを妨害するかのようにシエルが牽制の機導砲を放つ。機導砲はスケルトンを掠める。それによって体勢を崩されたか、剣は尊の急所を逸れ脇腹を掠めるように切り裂く。
「くっ……」
尊の顔が痛みに歪む。だが、もしシエルの牽制が無ければスケルトンは全力で攻撃を行ったことだろう。そうなればその傷はもっと深くにまで達していたはずだ。その点では多少運があったと言えよう。
「やったな……」
 この中ではひ弱かもしれない。だが、それでも前衛だ。やられてばかりではいられない。すぐさま体勢を立て直した尊が反撃する。スケルトンはすぐさま守りを固めるように盾を構える。
だが、尊の狙いは脚。
「これはお返しです!」
 盾の下方をすり抜けるように振るわれた剣の一撃により、スケルトンはその場に膝をつく。
「こちらも忘れて貰っては困りますよ?」
 追い打ちをかけるようにフィルが側面から迫る。倒れ込んだスケルトンはそれでも懸命に、フィルの攻撃を打ち払おうと剣を振り上げる。だが、その剣は持っていた腕ごとみけの銃撃で撃ち抜かれる。覚醒の影響で浮かんだマーカーのような模様越しの視線は、そう簡単に狙いを外すことは無いだろう。
そして、結果がら空きとなった胴体。そこにフィルの剣が振り下ろされ、スケルトンを深く切り裂いた。
「あぁ……楽しいですねぇ……」
 手に残った感触を楽しむかのようなフィルの小さな呟き。だが、切り裂かれたスケルトンはそれを聞くことも無く、塵となって消えていく。
 塵となったスケルトンの向こう側から迫ってきた別の一体。それに対し陽一は魔法の矢を放つ。
「よし、今っすよ!」
 スケルトンを牽制するために放たれた一矢。その間に回り込んでいた暁が一気に接近する。
「喰らえ!」
 低い姿勢から勢いをつけて振り抜かれたトンファーが、スケルトンの両足を砕く。砕かれた部分から走った亀裂は全身へと行き渡り、そのまま砕け散った。
「良い調子。これなら楽勝っすよねっと!」
 その言葉は油断や驕りによるものではない。陽一は確信しているのだ。『勝てる』と。
 だが、思うだけではだめだ。まだ敵は残されているのだから。その確信を事実とするために、陽一は次の敵に目を向けた。


 戦闘はまだ続く。やや離れた位置にいた残りのスケルトンも集まってきている。その様子を見ながら、ふとみさぎは思考を巡らせる。
(敵は人骨。素体となるのは何なのか……)
「……否、考える必要、無し」
 だが、すぐにその考えを頭から振り払う。今は村の再興。その為に障害の排除を。それが最優先だ。
みさぎは、杖を強く握りしめる。集中により高まった魔力。その状態から放たれた魔法の矢は重さと鋭さをより増しており、咄嗟に盾で受けたスケルトンの脚を止める。
 動きが止まった瞬間を見逃さず、フィルが追撃。
「これで倒れて貰いましょうか」
 笑顔の裏に隠された、戦いを好むフィル自身の攻撃性。それが表出したかのような激しい一撃。
剣に倒れたスケルトンはそのまま塵へと還る。
「残りは2体ですか……ん?」
 崩れ舞う塵の向こう側。別のスケルトンが自らの肋骨を手にとるのが見えた。事前の情報にあった、骨を投げる遠距離攻撃をやろうというのか。
「投げられる前に倒しておきたいところでしたが……」
だが、間合いが遠い。ならばとフィルは剣を構える。
「あれは骨か? ちっ……」
 同じくその様子を確認していた旭は、フィルに倣う。
(投げてこい、撃ち落としてやる!)
 果たしてそれが可能か……だが、できなければダメージを負う……
「任せてください!」
 だが、その心配は杞憂に終わった。
 スケルトンの動きを見た瞬間に尊はすでに動き出していた。ランアウトにより瞬時に間合いを詰めると、骨を持つ腕を剣で跳ね上げる。こうなっては投げられない。攻撃は見事阻止された。
「体勢を崩す!」
 さらに返す刃で脚へと斬り下し、両断する。自らを支えることが叶わず倒れ込むスケルトン。だが、まだ動けそうだ。だから尊は、その骨を砕くように自らの脚を頭蓋の上に。
「これできっちり倒して……って、うわっ!」
 振り下ろそうとした脚は、慌ててひっこめられた。目の前でスケルトンの頭蓋がはじけ飛んだのだ。後方に目を向けると、そこには銃を構えたみけの姿。遠射により強化された銃から撃ち込まれた弾丸によるものだろう。
(これで残りは一体……)
 みけは狙い通り頭に直撃させたことに慢心せず、次の得物を狙う。
 その最後の一体には暁が攻撃を仕掛けていた。その狙いはみけ同様頭。だが、スケルトンは盾でその攻撃を受け止める。
「クッ、やっぱり部位狙いは難しいかな……!」
 暁は、受け止められた武器ごと盾で押し返され、後方にあとずさる。
 追撃しようとしていたスケルトンを牽制するために、シエルが機導砲を放つ。スケルトンは剣を振りかざした体勢から咄嗟に身をかわし、機導砲を躱す。だが、それでスケルトンの動きに隙が生まれる。
 そこを狙いすましたように、陽一の魔法が追い打ちをかける。
 ふと脳裏に浮かんだのは、リアルブルーのコロニー、陽一の故郷。今はまだどうすることも出来ないけど、いずれ必ず……この戦いは、その反撃の狼煙だ。
「奪られたら、奪り返す、ってね。ここで決めちゃってくれ!」
「了解だぜ、陽一!」
 陽一が作ったチャンスを、旭は見逃さなかった。回避を重視した動きから、一転して攻勢に移る。
「へっへーん、トロいぜ骨野郎! 止めだ!!」
 最後の一撃は過たずスケルトンの胸骨を穿ち、背骨をも砕いた。この攻撃でスケルトンはバラバラに崩れ、ついに動かなくなった。


 こうして、ハンターたちは情報にあったすべてのスケルトンを撃破した。
「初陣、初仕事! これなら大成功って言ってもいいよな?」
 結果に安堵しながら初仕事を成功裏に終えられてよかったと安堵している。
「これなら、無職上がりのニートとは呼ばれないな!」
「さぁ、それは、どうだろう、ね」
「え゛」
「それはそうと、トラマル、何を、してる、の?」
 一方、陽一は熱心に手帳に何かを書き留めていた。
「これっすか? 敵の情報を纏めてるんすよ」
 みさぎが覗き込むと、そこにはスケルトンと戦った記録がイラストとともに描かれている。
「残骸とかが残んなかったから思い出しながらっすけどね」
 こうしてまとめた物をハンターオフィスに提供するつもりのようだ。
 彼らは同じギルドに所属している、いわば同僚だった。今周辺の警戒を行っているフィルもその一人だった。
「想定外の敵がいないとも限りませんしね」
「そうですね。気を付けるに越したことはないでしょう」
 フィルに続くように、シエルやみけも周辺の警戒を行っていた。フィルの場合は、あるいはまだ内心戦い足りないという気持ちがあったのかもしれないが。
「……」
 周辺の警戒を行いながら、みけは無言で、自身の持つ銃の感触を思い出していた。3体以上の撃破、という目標には届かなかったが、試射には十分な結果だっただろう。
「……うん、こんな感じか……」
 暁は手を握りしめながら先程まで行われていた戦闘を思い返す。受けた傷が多少痛む。
 ……だが、勝てた。
 実際の戦場で自分がどの程度動けるのかという不安も、今回の戦いである程度払拭されたかもしれない。そう考えれば多少の怪我も気にはならないだろう。
 周辺の警戒を終えたハンターたちは、こうして帰路に着く。
 これで、この村もいずれは復興することが出来るだろう。
 もはやこの地に人を脅かす敵はいなくなったのだから。

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重体一覧

参加者一覧

  • 戦闘鬼
    月架 尊(ka0114
    人間(蒼)|16才|男性|疾影士
  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭(ka0234
    人間(蒼)|20才|男性|霊闘士

  • 十六夜・暁(ka0605
    人間(蒼)|12才|女性|霊闘士
  • 闇夜を奔る斬撃
    フィル・サリヴァン(ka1155
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人

  • みけ(ka1433
    人間(紅)|15才|女性|猟撃士
  • 大口叩きの探求者
    雨音・みさぎ(ka1448
    人間(蒼)|11才|女性|魔術師

  • シエル・ヴァンテスター(ka1612
    人間(紅)|21才|男性|機導師

  • 虎丸 陽一(ka1971
    人間(蒼)|17才|男性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/10 21:39:10
アイコン 作戦相談卓
月架 尊(ka0114
人間(リアルブルー)|16才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2014/06/15 22:32:39