ゲスト
(ka0000)
【不動】女王の指揮
マスター:とりる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 7日
- 締切
- 2015/06/02 22:00
- 完成日
- 2015/06/07 10:18
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●過去
かつて辺境では部族同士による紛争があった。海辺に住まうネレイド族とて例外ではない。
――いや、武勇を重んずる、戦闘部族であるネレイド族だからこそ必然的に他部族との紛争が頻発したのだ。
ネレイド族の伝承の中で熾烈を極めた戦いの一つとされているのは……
リアルブルーでいうところの『魔法少女』のような衣服を纏った部族との決戦だったと言い伝えられている――。
●現在
辺境の草原。巨人達が行進する地鳴りが響く。
それらと交戦するのはイルカの旗章を掲げた水色の髪・金色の瞳・褐色の肌という神秘的な外見的特徴の若き戦士達。
***
美しい水色のショートボブ、艶めかしい褐色の肌、踊り子のような衣装を身に纏った少女が高い岩場を蹴り、跳躍。
金色の瞳がはっきりと捉えているのは彼女の数倍はあろうかという巨人、その頭部。少女はそれに対し、両手に持った斧を振るい、神速の斬撃を繰り出す。
眼を潰された巨人はもがき、苦しむ。少女は着地し、素早く岩場を登り、また跳躍。再び両手の斧を振るい、巨人の全身を斬り刻んだ。
一つ目の巨人は大きな音を立てて地に伏し、間もなく黒い霧となって消え去った……。
「うーん、まだまだかなー」
ショートボブの少女は自分の戦闘結果にあまり納得がいかない様子。
若き族長などと持てはやされているものの、自分はまだまだ未熟だ。もっともっと鍛錬を積む必要がある。
少女は女性らしく成長しつつありながらも、きゅっと引き締まった肉体に闘気を込め、次の獲物に向かおうとしたとき、
「ミサキ様!」
呼び止められた。少女――ネレイド族長、ミサキ・ネレイド(kz0079)は振り向く。
聞き覚えのあり過ぎる声の主は同じネレイド族であり、族長を守る近衛隊隊長、ヴァイン・ネレイドであった。
「またこんな最前線に出られて!」
ヴァインは怒った様子である。「族長である貴女にもしものことがあったらどうするのです!?」と彼女は続けた。
「む~ん、ヴァインは私がこの程度でやられると思ってるの?」
「そ、そんなことはありませんが……万が一というものが……」
ミサキがキッと睨むと、ヴァインは急に萎縮したようになる。戦士特有の威圧感は流石族長と言ったところか。
「それに族長が先陣を切って戦わないでどうするのさ。族長は皆を引っ張って行くものなんだよ!」
「それはそうですが、ミサキ様は毎回お一人で突出し過ぎです! 敵……怠惰の残党は予想より数や強力な個体が多いです。一旦後方の陣地へお下がりください」
今度はヴァインのほうが威圧してきた。……ここで言うことを聞かなければ後で説教一時間コースだろう。従っておくべきだ。
「も~、わかったよぅ」
ミサキは頬を膨らませつつ両手の斧を腰に仕舞った。
「それで、状況は?」
現在、ネレイド族の戦闘部隊は辺境の草原にて、ハンターと共同で怠惰の残党狩りの真っ最中であった。
「第一、第二小隊の戦況は順調に推移。敵を駆逐しています。ただ、やはり予想していたよりも敵は数や強力な個体が多く、排除に時間が掛かっている模様です」
「……まったく、怠惰は図体が大きいから厄介だね。脳筋が多いけどさ」
「脳筋なのはミサキ様もです! ……繰り返しますが敵は『数や強力な個体が多く』決して油断は出来ません」
「むむぅ! 私が脳筋とは失礼な! ちゃんと考えて戦ってるもん!」
ぷんすかと怒るミサキだったが……ここは戦場だ。確かに油断は禁物。死とは急に訪れるものである。……ネレイド村の壊滅がそうだった。
「第三小隊はどうなってるの?」
脳みそをクールダウンしたミサキは落ち着いた口調でヴァインに尋ねる。……先ほどまでの戦闘で少し昂っていたようだ。
「ミサキ様の指示通り、戦場周辺の警戒に当たっています。今のところ異常は――」
ヴァインが言いかけたそのとき、
「ミサキ様ーーー!!」
「ミサキ様~~~!!」
よく似た容姿の――ミサキより幼い少女二人が全力疾走して来た。
「リリレル! ミリレル! 一体どうしたのです? そんなに慌てて」
……リリレルとミリレルの二人はヴァインと同じミサキの近衛隊の隊員である。
「もしかしてあなた達、陣地をアリサ一人に任せて来たのですか?」
信じられない、といった風なヴァイン。
「そ、そうだけど……」
「今はそれどころじゃないんです……!」
二人は焦った様子で言う。アリサとは同じく近衛隊の一人だが少しそそっかしいところがある。確かに一人で陣地を任せるのは不安だ……とミサキは思った。
「で、何があったの?」
何か良くない事態が発生したことを察したミサキは真剣な表情で問う。
「警戒中の第三小隊からの伝令です! 戦場付近で……アレクサンドル・バーンズ(kz0112)らしき姿を目撃したと!」
「――っ!?」
ミリレルの言葉に、ミサキとヴァインに衝撃が走った。――災厄の十三魔、悪名高き天命輪転のアレクサンドル・バーンズ。
「アレクサンドルに動き……何かアクシデントが起こった場合は他のハンターチームが対応に当たるって話だから、こっちは今のところ現状維持でいいと思うけど……」
「わかった。全部隊に通達! 警戒を厳にしつつ、私達はこのまま怠惰残党の排除を続けます。ハンターさん達にもそう伝えて。第三小隊との連絡は密に」
二人の話を聞いたミサキは族長然とした表情・口調で言い、指示を出す。近衛隊の三人は「了解!」と頷いた。
「私も……一旦陣地に下がって全体の指揮を執るね。必要ならまた前に出るけど。じゃあ三人とも、一旦陣地へ戻るよ」
「了解!」の声と共にミサキと近衛隊の三人は駆け出した。
アレクサンドル・バーンズ――聞いた話では、積極的に戦場へ出てくるタイプでは無かったはずだ。一体何を企んでいるのか……。
そのように思考しつつ、ミサキ達は後方の陣地を目指した。
かつて辺境では部族同士による紛争があった。海辺に住まうネレイド族とて例外ではない。
――いや、武勇を重んずる、戦闘部族であるネレイド族だからこそ必然的に他部族との紛争が頻発したのだ。
ネレイド族の伝承の中で熾烈を極めた戦いの一つとされているのは……
リアルブルーでいうところの『魔法少女』のような衣服を纏った部族との決戦だったと言い伝えられている――。
●現在
辺境の草原。巨人達が行進する地鳴りが響く。
それらと交戦するのはイルカの旗章を掲げた水色の髪・金色の瞳・褐色の肌という神秘的な外見的特徴の若き戦士達。
***
美しい水色のショートボブ、艶めかしい褐色の肌、踊り子のような衣装を身に纏った少女が高い岩場を蹴り、跳躍。
金色の瞳がはっきりと捉えているのは彼女の数倍はあろうかという巨人、その頭部。少女はそれに対し、両手に持った斧を振るい、神速の斬撃を繰り出す。
眼を潰された巨人はもがき、苦しむ。少女は着地し、素早く岩場を登り、また跳躍。再び両手の斧を振るい、巨人の全身を斬り刻んだ。
一つ目の巨人は大きな音を立てて地に伏し、間もなく黒い霧となって消え去った……。
「うーん、まだまだかなー」
ショートボブの少女は自分の戦闘結果にあまり納得がいかない様子。
若き族長などと持てはやされているものの、自分はまだまだ未熟だ。もっともっと鍛錬を積む必要がある。
少女は女性らしく成長しつつありながらも、きゅっと引き締まった肉体に闘気を込め、次の獲物に向かおうとしたとき、
「ミサキ様!」
呼び止められた。少女――ネレイド族長、ミサキ・ネレイド(kz0079)は振り向く。
聞き覚えのあり過ぎる声の主は同じネレイド族であり、族長を守る近衛隊隊長、ヴァイン・ネレイドであった。
「またこんな最前線に出られて!」
ヴァインは怒った様子である。「族長である貴女にもしものことがあったらどうするのです!?」と彼女は続けた。
「む~ん、ヴァインは私がこの程度でやられると思ってるの?」
「そ、そんなことはありませんが……万が一というものが……」
ミサキがキッと睨むと、ヴァインは急に萎縮したようになる。戦士特有の威圧感は流石族長と言ったところか。
「それに族長が先陣を切って戦わないでどうするのさ。族長は皆を引っ張って行くものなんだよ!」
「それはそうですが、ミサキ様は毎回お一人で突出し過ぎです! 敵……怠惰の残党は予想より数や強力な個体が多いです。一旦後方の陣地へお下がりください」
今度はヴァインのほうが威圧してきた。……ここで言うことを聞かなければ後で説教一時間コースだろう。従っておくべきだ。
「も~、わかったよぅ」
ミサキは頬を膨らませつつ両手の斧を腰に仕舞った。
「それで、状況は?」
現在、ネレイド族の戦闘部隊は辺境の草原にて、ハンターと共同で怠惰の残党狩りの真っ最中であった。
「第一、第二小隊の戦況は順調に推移。敵を駆逐しています。ただ、やはり予想していたよりも敵は数や強力な個体が多く、排除に時間が掛かっている模様です」
「……まったく、怠惰は図体が大きいから厄介だね。脳筋が多いけどさ」
「脳筋なのはミサキ様もです! ……繰り返しますが敵は『数や強力な個体が多く』決して油断は出来ません」
「むむぅ! 私が脳筋とは失礼な! ちゃんと考えて戦ってるもん!」
ぷんすかと怒るミサキだったが……ここは戦場だ。確かに油断は禁物。死とは急に訪れるものである。……ネレイド村の壊滅がそうだった。
「第三小隊はどうなってるの?」
脳みそをクールダウンしたミサキは落ち着いた口調でヴァインに尋ねる。……先ほどまでの戦闘で少し昂っていたようだ。
「ミサキ様の指示通り、戦場周辺の警戒に当たっています。今のところ異常は――」
ヴァインが言いかけたそのとき、
「ミサキ様ーーー!!」
「ミサキ様~~~!!」
よく似た容姿の――ミサキより幼い少女二人が全力疾走して来た。
「リリレル! ミリレル! 一体どうしたのです? そんなに慌てて」
……リリレルとミリレルの二人はヴァインと同じミサキの近衛隊の隊員である。
「もしかしてあなた達、陣地をアリサ一人に任せて来たのですか?」
信じられない、といった風なヴァイン。
「そ、そうだけど……」
「今はそれどころじゃないんです……!」
二人は焦った様子で言う。アリサとは同じく近衛隊の一人だが少しそそっかしいところがある。確かに一人で陣地を任せるのは不安だ……とミサキは思った。
「で、何があったの?」
何か良くない事態が発生したことを察したミサキは真剣な表情で問う。
「警戒中の第三小隊からの伝令です! 戦場付近で……アレクサンドル・バーンズ(kz0112)らしき姿を目撃したと!」
「――っ!?」
ミリレルの言葉に、ミサキとヴァインに衝撃が走った。――災厄の十三魔、悪名高き天命輪転のアレクサンドル・バーンズ。
「アレクサンドルに動き……何かアクシデントが起こった場合は他のハンターチームが対応に当たるって話だから、こっちは今のところ現状維持でいいと思うけど……」
「わかった。全部隊に通達! 警戒を厳にしつつ、私達はこのまま怠惰残党の排除を続けます。ハンターさん達にもそう伝えて。第三小隊との連絡は密に」
二人の話を聞いたミサキは族長然とした表情・口調で言い、指示を出す。近衛隊の三人は「了解!」と頷いた。
「私も……一旦陣地に下がって全体の指揮を執るね。必要ならまた前に出るけど。じゃあ三人とも、一旦陣地へ戻るよ」
「了解!」の声と共にミサキと近衛隊の三人は駆け出した。
アレクサンドル・バーンズ――聞いた話では、積極的に戦場へ出てくるタイプでは無かったはずだ。一体何を企んでいるのか……。
そのように思考しつつ、ミサキ達は後方の陣地を目指した。
リプレイ本文
●巨人狩り
怠惰残党掃討作戦・ハンター担当戦域。
ネレイド族の戦闘部隊と共同で怠惰残党の掃討作戦を行っていたハンター達だったが――
その最中、戦域周辺に災厄の十三魔、アレクサンドル・バーンズ(kz0112)出現の報を受け、現在は態勢を立て直し中である。
「十三魔の一角が突っ込んでくるとは……全く以て尋常ではないですね」
全身鎧を纏った、まさに『質実剛健』といった風貌の米本 剛(ka0320)が言う。
しかしながらその表情は固い。戦域近くに現れたのはあの災厄の十三魔が一人、アレクサンドル・バーンズなのだ。
「ネレイド族との関係云々は正直興味が無いとは言えませんが……自分としては今はどうでも良い、と思いますな」
米本はふう、と一息吐き、表情を平常に戻した。
「彼と因縁があったネレイド族と現在のネレイド族はまた違う方々なのでしょうからね。兎も角、我々は我々の為すべき事を為しましょう」
全身鎧の武人は力強く言い、己の気を引き締めた。
「ボクは日高・明(ka0476)。改めてよろしくね」
漆黒の髪に黒曜石の様な輝きの瞳、一見クールな印象の青年は明るい口調で皆に声をかけた。
(アレクサンドルとは妹がやりあってる。楽にしてやる為にも頑張らなくっちゃなあ!)
討伐対象は残党とは言え強力な怠惰の巨人。だが彼はやる気十分の様子である。
「大きいのがいっぱいなの、バルバロス(ka2119)じーじも大きいの」
可愛らしい小さな少女、佐藤 絢音(ka0552)は身長2m以上の巨躯、最早ドワーフを超越した何か――白髭と赤褐色の肌が目立つバルバロスを見上げる。
「巨人の残党か……楽しめそうだのう」
絢音の頭頂部を優しく撫でながらバルバロスが言った。
「ざんとーをやっつけるの、でも怠惰の歪虚の子は傷ついて本気になると手強いの」
「油断は出来ん、歯応えがありそうな敵だのう。だが殺られる前に叩き潰せば良い話だ」
「そーなのよ。だから、なるべく本気を出す前にそっこーで片付けるのが一番なのよ」
「うむ、速攻だな」
身長やら体躯やら外見上は色々と真逆な二人は意気投合し、怠惰残党狩りの方針について話す。
「妹に調整して貰ったこの刀、巨人は切れ味を試すには良い相手だね。試させてもらうよ」
東方風の衣装を身に纏った赤髪赤目のイケメン女子、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は自分に合わせてカスタマイズした愛刀を撫でる。
「迅速に敵戦力を排除していく方針だね」
少女と見紛う容姿・線の細い美少年、霧雨 悠月(ka4130)はグッと拳を握り、もう片方の手で腰に差した身の丈よりも大きな斬馬刀の柄をぎゅっと握る。
彼の表情は凛としていて……爽やかで……一片も迷いを感じさせなかった。
「だね。どんなに悪い事態になっても対応できるように迅速に敵を片付ける……!」
悠月の言葉に、神谷 春樹(ka4560)が頷き、気合を入れる様に言った。
「ん、今回は状況が状況ですし出来る限り素早く対応しなければいけませんね。馬に乗るのは初めてですけど、頑張ります……」
全身鎧を纏ったサクラ・エルフリード(ka2598)が若干緊張した面持ちで呟いた。
同じ全身鎧といっても米本とは対照的で、サクラの鎧は白銀と黄金を基調としており優美さを感じさせる。
更に彼女の美しく長い銀髪とルビーの瞳、色白の肌、美少女と言える容貌。故に米本が武人であれば、サクラは戦乙女の様である。
そして今回、再度怠惰の残党へ攻撃を仕掛ける際には全員が騎乗して一気に距離を詰める手筈となっている。
サクラ以外は戦馬、あるいはゴースロンを連れている。サクラの愛馬は乗用馬だが、あくまで移動用。接敵後は降り、後方に下がらせる予定だ。
「あやねがちいちゃいからバルバロスじーじが余計大きく見えるの……お馬に乗るのも大変なの」
絢音が頑張って愛馬へよじよじと上り、騎乗する。他の皆も続き、一斉に騎乗。
「それでは参りましょうぞ!」
米本が大きく声を張り上げ、皆も合わせて「おぉー!!」と叫び、敵群へ進撃を開始した――。
●VS怠惰残党 前半
騎乗したハンター達は岩場に囲まれた広い草原を駆ける。
まず遠くに見えたのは――ひときわ大きな巨人。サイクロプスだ。
「やはり前に出ていましたか」
愛馬の手綱を引きながら米本が言う。
「まずは奴に攻撃を集中ですね」
戦馬を操る明が答える。
「族長さんの言ったとおりサイクロプスが前線に居たの。両班でそっこー潰すのよ」
続けて絢音。今回ハンター達は二班に分かれて行動するがサイクロプスが前に居た場合にはまず両班で集中攻撃を仕掛ける。
「あやねはB班なの。バルバロスじーじと米本おじちゃんと、霧雨……ちゃん、くん? と一緒のチームなのよ」
「あはは……僕は男の子だよ」
絢音にも女の子? と疑われていた悠月は苦笑い。バルバロスと米本は「うむ」「よろしくお願いします」と答える。
「相手に当たる前に【攻性強化】をじーじにかけておくのよ、一番大火力を底上げするの」
「ありがたい。アレクサンドルが出張って来ている以上、殲滅速度が肝要。一気に真っ直ぐ前進して敵と交戦するぞ」
バルバロスは身体の力が増すのを感じつつ、手綱を握り締める。
……程無く接敵。サクラは馬を降り、身体を撫でてやってから後方へ帰した。
他のハンターは騎乗した状態での戦闘となる。
***
敵の陣容は正面中央にサイクロプスが一体。その後方にトロル二体、オーガ四体と続いていた。
先手を取ったのはハンター達。後続と合流される前に一気に叩く!
一番槍を務めるのは――アルト。
巨木の様な巨人の腕から繰り出される打撃を避けながら、抜刀。接近。
【連撃】を使用した振動刀を仲間の想いを感じながら振るう――。
「まずは挨拶代わりだ! 受け取れぇ!!」
二度の鋭い斬撃が巨人の身体を深く斬り裂いた。初撃からの重い二撃により巨躯が揺らぐ。
二番槍は――悠月。
「何時もなら一対一は望む所なんだけどね……今回は時間が押してるんだ」
(巨体の敵はやはり脚が狙い目なのかな……斜め後ろに位置取ったりすると、相手には意外と死角かもね)
馬を操り、その位置へ。
「僕も一太刀くらい……! やあああっ!!」
愛らしい容姿に反し、叫び、悠月は斬馬刀による渾身の一撃を放つ。
――その斬撃は巨人の急所に入り、かなりの生命力を奪う。
「……堪らないね、燃えてきたっ」
「さて、こちらも行きますよ!」
米本はやや距離を取り【シャドウブリット】を撃ち放つ。――見事に命中。確実に生命力を削る。
「こっちがお留守なんだよ!」
続いて明。【攻めの構え】からの長剣による斬撃を加える。
「この距離なら届く……! 聖なる槍の一撃を受けるのです……!」
サクラ。彼女は霊槍を投擲。――霊槍は確実に巨人を捉え、その皮膚を貫通し肉にまで突き刺さる。
間を置かずに春樹。
「相手がサイクロプスだからなんだ! 切り裂けぇ!!」
【スラッシュエッジ】を使用した霊刀による斬撃。
……怒涛の連続攻撃を受けた巨人は最早虫の息。そこへ。
「あやねは銃を使って支援するの。相手は大きくて射線が遮られないから援護は容易いの」
絢音が自分の身長と同じ位の魔導銃を構え、狙いを定め――発砲。
「暴れ馬でもあやねは使いこなしてみせるの!」
高威力のマテリアルの弾丸が――巨人の足を貫いた!
巨人の身体は大きく揺らいだ後に大きな音を立てて地面に倒れ伏し、間もなく黒い霧となり消え去った。
サイクロプスを撃破!
***
速攻を掛けてサイクロプス撃破したハンター達は当初の作戦通り二班に分かれる。
A班:
アルト、サクラ、明、春樹
B班:
悠月、米本、絢音、バルバロス
***
まだ動いていなかったバルバロス。
「あやね……やるのう。わしも負けていられん」
彼はトロルへ狙いを定め――巨大な斧を全力で振り降ろす。
「せぇぇぇい!!」
咆哮。それは最早斬撃と呼んで良いのやら。斧はトロルの岩の様な身体に深く食い込み、致命傷を与えた。
●VS怠惰残党 後半
あっという間にサイクロプスを倒された巨人達だが、やられてばかりではなく当然反撃が来る。
A班――こちらはトロル一体、オーガ二体を相手取る。
まずはトロルが動いた。狙いは……春樹。繰り出される岩の様な拳。彼は回避しようとするが間に合わず――
「くっ!」
春樹は咄嗟に両腕で身体を庇った。しかし巨人の拳は彼の身体ごと殴り付け、吹き飛ばす。
「ぐあああああっ!?」
落馬。地面に叩き付けられ、転がった春樹は動かない。戦闘不能。
次にオーガが動く。狙いは――サクラ。機動力を失った彼女は巨躯から繰り出される打撃を避けられない。
「くうう……!」
オーガの拳はサクラの胴を激しく打ち付けた。しかし全身鎧に守られていたおかげか致命傷では無い。
だが……もう一体のオーガもサクラを狙って打撃を繰り出す。人並みの知能を持つのだ。弱っている敵を狙うのは当然。
「きゃあああああっ!?」
今度は拳が急所に命中。サクラは戦闘不能とまではいかない物の、致命傷を受けてしまった。
***
B班――こちらも同じくトロル一体、オーガ二体が相手だ。
トロルは先ほど攻撃を加えてきたバルバロスへ敵意を剥き出しに殴り掛かって来る。が、
「この程度、蚊に刺された様な物だ」
バルバロスはしっかりと受け止め、ダメージを最小限に抑える。
続いてオーガの狙いは悠月。振り被られる拳は彼の急所に命中し致命傷を与える。
「うわあっ!? ぐ、まだ……」
必死に痛みを堪える悠月だったがもう一体のオーガの拳が眼前に迫っていた。
「えっ――」
悠月の身体が宙を舞う。オーガの打撃を受け、地面に伏した悠月は戦闘不能。
***
A班――
「よくも仲間をぉ!!」
怒りに震えるアルトは再度【連撃】を使用。仲間の想いを感じつつ、振動刀を振るい憎きトロルへ二度の斬撃を加える。
岩の様な身体を斬り裂き致命傷を与えた。
「くぅ……ここは一旦下がります。申し訳ありません」
前衛は二人に任せ、サクラは一旦後退する。
明は【チャージング】を使用。
「いっけえええええ!!」
勢いを付け、妹の想いを感じながら剣をトロルに思い切り突き刺す。
……トロルはびくびくと痙攣した後にずしんと地に伏し、黒い霧となって消えた。トロルを撃破!
***
B班――
「くっ、霧雨さんが……」
倒れている仲間を見やり、米本は悔しそうに歯噛みする。
「仕返しをさせて頂く!!」
米本は馬をトロルへ向かわせ、振動刀を全力で振り降ろした。――その攻撃はトロルの脳天を直撃。
トロルは倒れ、霧散する。
「絶対にゆるさないの!」
絢音も怒りの表情を浮かべつつ、魔導銃を構えてオーガへ照準。マテリアルの弾丸がオーガを貫き、致命傷を与える。
「一気に行くかのう!」
バルバロスは【ラウンドスウィング】を使用。巨大な斧を振り回し、丁度密集していたオーガ二体へ攻撃を仕掛ける。
――オーガ一体は避けたがもう一体は急所へ凄まじい斧の一撃が入り、消滅。オーガ一体を一撃で撃破。
***
残る敵も少なくなってきた……。
A班――二体のオーガは明を囲む。
「くっ……僕を狙うか……!」
巨大な拳が明の頭部に命中。ぐわんぐわんと揺さぶられ、明は倒れそうになり、
続けてもう一発の拳が明の脚を激しく打つ。
「ぐぅ……あああっ!!」
明は激痛に思わず叫んだ。致命傷である。
***
B班――残った一体のオーガはがむしゃらにバルバロスへ拳を繰り出した。
それはバルバロスの急所に入り、彼の巨体が揺らぐ。
「良いパンチだな……だがまだまだ」
***
A班――
「はあああっ! これでお仕舞!」
アルトは【連撃】を使用し、オーガを切り刻み、撃破。
サクラは――致命傷を負っている身だが回復では無く、オーガへ霊槍を投擲。
「今は……畳み掛ける時です……!」
「そうだね……ここで仕留める!」
明も続いて【攻めの構え】を使用しての斬撃を加える! が、まだオーガは倒れない。
B班――米本は残ったオーガに対し無慈悲な斬撃。
「掃討が任務ですからな、容赦はしませんよ」
足を切断されたオーガはバランスを崩し転倒しつつ……そのまま消滅した。
そして、絢音。
「こっちは片付いたの。残るはA班のほうのオーガだけなの」
魔導銃を構え、瀕死のオーガへ正確に照準を合わせる。
「これで、おしまいなの!!」
放たれたマテリアルの弾丸は狙い違わずオーガを貫く。……オーガはずしんと倒れ、黒い霧となって消滅した。
「作戦完了、だな。全く、あやねにはしてやられた」
バルバロスは微笑み、絢音は「えへへ、あやね頑張ったの」と嬉しそうに笑う。
その後、A班とB班は合流。負傷して動けない春樹は米本が背負い、同じく負傷している悠月はバルバロスが背負った。
主が戦闘不能の馬は他の者が回収し、一同は速やかにネレイド族の本陣へ後退。
その後に怠惰残党掃討作戦を終えたネレイド族の全部隊、及びハンター達はミサキの指揮により迅速に撤退行動を開始。
アレクサンドルからの干渉を受ける事なく無事に開拓地『ホープ』へと帰還した。
●マフォジョ族とネレイド族
ホープへ帰還したネレイド族とハンター達。
まずは負傷者の治療が行われている。
「皆さん、回復をしますので私の方へ集まって下さい……」
自身の治療を終えたサクラが言い、
「自分もお手伝いしますよ」
米本が続いた。流石に今回の作戦では多数の負傷者が出た。聖導士の二人は大忙しである。
***
「くぅ……情けない……」
「その通り。不覚を取った」
重体の悠月と春樹は流石にすぐには治らないのでベッドに寝かされている。
と、そこへ族長のミサキがやって来た。
「お疲れ様です。ハンターの皆さんのおかげで迅速に作戦を終える事が出来ました。お二人は名誉の負傷ですね」
ミサキは二人を労い「ゆっくり休んで下さい」と微笑んだ。
***
「怠惰の巨人……思ったより厄介だったな。しかしそれよりも絢音ちゃんが凄い」
明が言い、バルバロスは「全くだ」と頷く。
「そんな事ないの。確かにあやねは頑張ったけど、それは皆が居てこそなの」
と、絢音は眉根をピンと吊り上げて言った。幼いのに本当にしっかりした子だと男二人は思う。
***
アルトは――
「ネレイド族とマフォジョ族の過去……何か因縁がなかったか聞いてみたいな」
近衛隊隊長・ヴァインへ質問していた。
「私が知っているのは昔、リアルブルーで言う『魔法少女』らしき者が前線に立つ部族と紛争があった、という事位ですね」
「ふむり……」
それを聞き、アルトは顎に手を当てた。
***
そして間もなく勝利の宴が始まった。今回のハンター達の活躍により怠惰の残党は大きく数を減らしただろう。
しかし……アレクサンドルの暗躍は未だ続いている……。
怠惰残党掃討作戦・ハンター担当戦域。
ネレイド族の戦闘部隊と共同で怠惰残党の掃討作戦を行っていたハンター達だったが――
その最中、戦域周辺に災厄の十三魔、アレクサンドル・バーンズ(kz0112)出現の報を受け、現在は態勢を立て直し中である。
「十三魔の一角が突っ込んでくるとは……全く以て尋常ではないですね」
全身鎧を纏った、まさに『質実剛健』といった風貌の米本 剛(ka0320)が言う。
しかしながらその表情は固い。戦域近くに現れたのはあの災厄の十三魔が一人、アレクサンドル・バーンズなのだ。
「ネレイド族との関係云々は正直興味が無いとは言えませんが……自分としては今はどうでも良い、と思いますな」
米本はふう、と一息吐き、表情を平常に戻した。
「彼と因縁があったネレイド族と現在のネレイド族はまた違う方々なのでしょうからね。兎も角、我々は我々の為すべき事を為しましょう」
全身鎧の武人は力強く言い、己の気を引き締めた。
「ボクは日高・明(ka0476)。改めてよろしくね」
漆黒の髪に黒曜石の様な輝きの瞳、一見クールな印象の青年は明るい口調で皆に声をかけた。
(アレクサンドルとは妹がやりあってる。楽にしてやる為にも頑張らなくっちゃなあ!)
討伐対象は残党とは言え強力な怠惰の巨人。だが彼はやる気十分の様子である。
「大きいのがいっぱいなの、バルバロス(ka2119)じーじも大きいの」
可愛らしい小さな少女、佐藤 絢音(ka0552)は身長2m以上の巨躯、最早ドワーフを超越した何か――白髭と赤褐色の肌が目立つバルバロスを見上げる。
「巨人の残党か……楽しめそうだのう」
絢音の頭頂部を優しく撫でながらバルバロスが言った。
「ざんとーをやっつけるの、でも怠惰の歪虚の子は傷ついて本気になると手強いの」
「油断は出来ん、歯応えがありそうな敵だのう。だが殺られる前に叩き潰せば良い話だ」
「そーなのよ。だから、なるべく本気を出す前にそっこーで片付けるのが一番なのよ」
「うむ、速攻だな」
身長やら体躯やら外見上は色々と真逆な二人は意気投合し、怠惰残党狩りの方針について話す。
「妹に調整して貰ったこの刀、巨人は切れ味を試すには良い相手だね。試させてもらうよ」
東方風の衣装を身に纏った赤髪赤目のイケメン女子、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は自分に合わせてカスタマイズした愛刀を撫でる。
「迅速に敵戦力を排除していく方針だね」
少女と見紛う容姿・線の細い美少年、霧雨 悠月(ka4130)はグッと拳を握り、もう片方の手で腰に差した身の丈よりも大きな斬馬刀の柄をぎゅっと握る。
彼の表情は凛としていて……爽やかで……一片も迷いを感じさせなかった。
「だね。どんなに悪い事態になっても対応できるように迅速に敵を片付ける……!」
悠月の言葉に、神谷 春樹(ka4560)が頷き、気合を入れる様に言った。
「ん、今回は状況が状況ですし出来る限り素早く対応しなければいけませんね。馬に乗るのは初めてですけど、頑張ります……」
全身鎧を纏ったサクラ・エルフリード(ka2598)が若干緊張した面持ちで呟いた。
同じ全身鎧といっても米本とは対照的で、サクラの鎧は白銀と黄金を基調としており優美さを感じさせる。
更に彼女の美しく長い銀髪とルビーの瞳、色白の肌、美少女と言える容貌。故に米本が武人であれば、サクラは戦乙女の様である。
そして今回、再度怠惰の残党へ攻撃を仕掛ける際には全員が騎乗して一気に距離を詰める手筈となっている。
サクラ以外は戦馬、あるいはゴースロンを連れている。サクラの愛馬は乗用馬だが、あくまで移動用。接敵後は降り、後方に下がらせる予定だ。
「あやねがちいちゃいからバルバロスじーじが余計大きく見えるの……お馬に乗るのも大変なの」
絢音が頑張って愛馬へよじよじと上り、騎乗する。他の皆も続き、一斉に騎乗。
「それでは参りましょうぞ!」
米本が大きく声を張り上げ、皆も合わせて「おぉー!!」と叫び、敵群へ進撃を開始した――。
●VS怠惰残党 前半
騎乗したハンター達は岩場に囲まれた広い草原を駆ける。
まず遠くに見えたのは――ひときわ大きな巨人。サイクロプスだ。
「やはり前に出ていましたか」
愛馬の手綱を引きながら米本が言う。
「まずは奴に攻撃を集中ですね」
戦馬を操る明が答える。
「族長さんの言ったとおりサイクロプスが前線に居たの。両班でそっこー潰すのよ」
続けて絢音。今回ハンター達は二班に分かれて行動するがサイクロプスが前に居た場合にはまず両班で集中攻撃を仕掛ける。
「あやねはB班なの。バルバロスじーじと米本おじちゃんと、霧雨……ちゃん、くん? と一緒のチームなのよ」
「あはは……僕は男の子だよ」
絢音にも女の子? と疑われていた悠月は苦笑い。バルバロスと米本は「うむ」「よろしくお願いします」と答える。
「相手に当たる前に【攻性強化】をじーじにかけておくのよ、一番大火力を底上げするの」
「ありがたい。アレクサンドルが出張って来ている以上、殲滅速度が肝要。一気に真っ直ぐ前進して敵と交戦するぞ」
バルバロスは身体の力が増すのを感じつつ、手綱を握り締める。
……程無く接敵。サクラは馬を降り、身体を撫でてやってから後方へ帰した。
他のハンターは騎乗した状態での戦闘となる。
***
敵の陣容は正面中央にサイクロプスが一体。その後方にトロル二体、オーガ四体と続いていた。
先手を取ったのはハンター達。後続と合流される前に一気に叩く!
一番槍を務めるのは――アルト。
巨木の様な巨人の腕から繰り出される打撃を避けながら、抜刀。接近。
【連撃】を使用した振動刀を仲間の想いを感じながら振るう――。
「まずは挨拶代わりだ! 受け取れぇ!!」
二度の鋭い斬撃が巨人の身体を深く斬り裂いた。初撃からの重い二撃により巨躯が揺らぐ。
二番槍は――悠月。
「何時もなら一対一は望む所なんだけどね……今回は時間が押してるんだ」
(巨体の敵はやはり脚が狙い目なのかな……斜め後ろに位置取ったりすると、相手には意外と死角かもね)
馬を操り、その位置へ。
「僕も一太刀くらい……! やあああっ!!」
愛らしい容姿に反し、叫び、悠月は斬馬刀による渾身の一撃を放つ。
――その斬撃は巨人の急所に入り、かなりの生命力を奪う。
「……堪らないね、燃えてきたっ」
「さて、こちらも行きますよ!」
米本はやや距離を取り【シャドウブリット】を撃ち放つ。――見事に命中。確実に生命力を削る。
「こっちがお留守なんだよ!」
続いて明。【攻めの構え】からの長剣による斬撃を加える。
「この距離なら届く……! 聖なる槍の一撃を受けるのです……!」
サクラ。彼女は霊槍を投擲。――霊槍は確実に巨人を捉え、その皮膚を貫通し肉にまで突き刺さる。
間を置かずに春樹。
「相手がサイクロプスだからなんだ! 切り裂けぇ!!」
【スラッシュエッジ】を使用した霊刀による斬撃。
……怒涛の連続攻撃を受けた巨人は最早虫の息。そこへ。
「あやねは銃を使って支援するの。相手は大きくて射線が遮られないから援護は容易いの」
絢音が自分の身長と同じ位の魔導銃を構え、狙いを定め――発砲。
「暴れ馬でもあやねは使いこなしてみせるの!」
高威力のマテリアルの弾丸が――巨人の足を貫いた!
巨人の身体は大きく揺らいだ後に大きな音を立てて地面に倒れ伏し、間もなく黒い霧となり消え去った。
サイクロプスを撃破!
***
速攻を掛けてサイクロプス撃破したハンター達は当初の作戦通り二班に分かれる。
A班:
アルト、サクラ、明、春樹
B班:
悠月、米本、絢音、バルバロス
***
まだ動いていなかったバルバロス。
「あやね……やるのう。わしも負けていられん」
彼はトロルへ狙いを定め――巨大な斧を全力で振り降ろす。
「せぇぇぇい!!」
咆哮。それは最早斬撃と呼んで良いのやら。斧はトロルの岩の様な身体に深く食い込み、致命傷を与えた。
●VS怠惰残党 後半
あっという間にサイクロプスを倒された巨人達だが、やられてばかりではなく当然反撃が来る。
A班――こちらはトロル一体、オーガ二体を相手取る。
まずはトロルが動いた。狙いは……春樹。繰り出される岩の様な拳。彼は回避しようとするが間に合わず――
「くっ!」
春樹は咄嗟に両腕で身体を庇った。しかし巨人の拳は彼の身体ごと殴り付け、吹き飛ばす。
「ぐあああああっ!?」
落馬。地面に叩き付けられ、転がった春樹は動かない。戦闘不能。
次にオーガが動く。狙いは――サクラ。機動力を失った彼女は巨躯から繰り出される打撃を避けられない。
「くうう……!」
オーガの拳はサクラの胴を激しく打ち付けた。しかし全身鎧に守られていたおかげか致命傷では無い。
だが……もう一体のオーガもサクラを狙って打撃を繰り出す。人並みの知能を持つのだ。弱っている敵を狙うのは当然。
「きゃあああああっ!?」
今度は拳が急所に命中。サクラは戦闘不能とまではいかない物の、致命傷を受けてしまった。
***
B班――こちらも同じくトロル一体、オーガ二体が相手だ。
トロルは先ほど攻撃を加えてきたバルバロスへ敵意を剥き出しに殴り掛かって来る。が、
「この程度、蚊に刺された様な物だ」
バルバロスはしっかりと受け止め、ダメージを最小限に抑える。
続いてオーガの狙いは悠月。振り被られる拳は彼の急所に命中し致命傷を与える。
「うわあっ!? ぐ、まだ……」
必死に痛みを堪える悠月だったがもう一体のオーガの拳が眼前に迫っていた。
「えっ――」
悠月の身体が宙を舞う。オーガの打撃を受け、地面に伏した悠月は戦闘不能。
***
A班――
「よくも仲間をぉ!!」
怒りに震えるアルトは再度【連撃】を使用。仲間の想いを感じつつ、振動刀を振るい憎きトロルへ二度の斬撃を加える。
岩の様な身体を斬り裂き致命傷を与えた。
「くぅ……ここは一旦下がります。申し訳ありません」
前衛は二人に任せ、サクラは一旦後退する。
明は【チャージング】を使用。
「いっけえええええ!!」
勢いを付け、妹の想いを感じながら剣をトロルに思い切り突き刺す。
……トロルはびくびくと痙攣した後にずしんと地に伏し、黒い霧となって消えた。トロルを撃破!
***
B班――
「くっ、霧雨さんが……」
倒れている仲間を見やり、米本は悔しそうに歯噛みする。
「仕返しをさせて頂く!!」
米本は馬をトロルへ向かわせ、振動刀を全力で振り降ろした。――その攻撃はトロルの脳天を直撃。
トロルは倒れ、霧散する。
「絶対にゆるさないの!」
絢音も怒りの表情を浮かべつつ、魔導銃を構えてオーガへ照準。マテリアルの弾丸がオーガを貫き、致命傷を与える。
「一気に行くかのう!」
バルバロスは【ラウンドスウィング】を使用。巨大な斧を振り回し、丁度密集していたオーガ二体へ攻撃を仕掛ける。
――オーガ一体は避けたがもう一体は急所へ凄まじい斧の一撃が入り、消滅。オーガ一体を一撃で撃破。
***
残る敵も少なくなってきた……。
A班――二体のオーガは明を囲む。
「くっ……僕を狙うか……!」
巨大な拳が明の頭部に命中。ぐわんぐわんと揺さぶられ、明は倒れそうになり、
続けてもう一発の拳が明の脚を激しく打つ。
「ぐぅ……あああっ!!」
明は激痛に思わず叫んだ。致命傷である。
***
B班――残った一体のオーガはがむしゃらにバルバロスへ拳を繰り出した。
それはバルバロスの急所に入り、彼の巨体が揺らぐ。
「良いパンチだな……だがまだまだ」
***
A班――
「はあああっ! これでお仕舞!」
アルトは【連撃】を使用し、オーガを切り刻み、撃破。
サクラは――致命傷を負っている身だが回復では無く、オーガへ霊槍を投擲。
「今は……畳み掛ける時です……!」
「そうだね……ここで仕留める!」
明も続いて【攻めの構え】を使用しての斬撃を加える! が、まだオーガは倒れない。
B班――米本は残ったオーガに対し無慈悲な斬撃。
「掃討が任務ですからな、容赦はしませんよ」
足を切断されたオーガはバランスを崩し転倒しつつ……そのまま消滅した。
そして、絢音。
「こっちは片付いたの。残るはA班のほうのオーガだけなの」
魔導銃を構え、瀕死のオーガへ正確に照準を合わせる。
「これで、おしまいなの!!」
放たれたマテリアルの弾丸は狙い違わずオーガを貫く。……オーガはずしんと倒れ、黒い霧となって消滅した。
「作戦完了、だな。全く、あやねにはしてやられた」
バルバロスは微笑み、絢音は「えへへ、あやね頑張ったの」と嬉しそうに笑う。
その後、A班とB班は合流。負傷して動けない春樹は米本が背負い、同じく負傷している悠月はバルバロスが背負った。
主が戦闘不能の馬は他の者が回収し、一同は速やかにネレイド族の本陣へ後退。
その後に怠惰残党掃討作戦を終えたネレイド族の全部隊、及びハンター達はミサキの指揮により迅速に撤退行動を開始。
アレクサンドルからの干渉を受ける事なく無事に開拓地『ホープ』へと帰還した。
●マフォジョ族とネレイド族
ホープへ帰還したネレイド族とハンター達。
まずは負傷者の治療が行われている。
「皆さん、回復をしますので私の方へ集まって下さい……」
自身の治療を終えたサクラが言い、
「自分もお手伝いしますよ」
米本が続いた。流石に今回の作戦では多数の負傷者が出た。聖導士の二人は大忙しである。
***
「くぅ……情けない……」
「その通り。不覚を取った」
重体の悠月と春樹は流石にすぐには治らないのでベッドに寝かされている。
と、そこへ族長のミサキがやって来た。
「お疲れ様です。ハンターの皆さんのおかげで迅速に作戦を終える事が出来ました。お二人は名誉の負傷ですね」
ミサキは二人を労い「ゆっくり休んで下さい」と微笑んだ。
***
「怠惰の巨人……思ったより厄介だったな。しかしそれよりも絢音ちゃんが凄い」
明が言い、バルバロスは「全くだ」と頷く。
「そんな事ないの。確かにあやねは頑張ったけど、それは皆が居てこそなの」
と、絢音は眉根をピンと吊り上げて言った。幼いのに本当にしっかりした子だと男二人は思う。
***
アルトは――
「ネレイド族とマフォジョ族の過去……何か因縁がなかったか聞いてみたいな」
近衛隊隊長・ヴァインへ質問していた。
「私が知っているのは昔、リアルブルーで言う『魔法少女』らしき者が前線に立つ部族と紛争があった、という事位ですね」
「ふむり……」
それを聞き、アルトは顎に手を当てた。
***
そして間もなく勝利の宴が始まった。今回のハンター達の活躍により怠惰の残党は大きく数を減らしただろう。
しかし……アレクサンドルの暗躍は未だ続いている……。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/29 22:29:58 |
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質問卓 米本 剛(ka0320) 人間(リアルブルー)|30才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/05/31 18:48:02 |
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相談卓 米本 剛(ka0320) 人間(リアルブルー)|30才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/06/02 17:20:08 |