罰、裁きを下す者

マスター:朝臣あむ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/06/01 09:00
完成日
2015/06/08 19:20

みんなの思い出

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オープニング

●帝都郊外の村
 夜の帳が落ちた村の一角に、仄かな灯りの点いた小屋が在った。
「概ね報告書にあった通りだな。で、犯罪者は何処に居る」
 問い掛けたのは政府司法課所属の新米司法官、ニカ・アニシンだ。彼女は前髪を切り揃えた事によって露見する瞳を鋭く光らせ、報告を寄せた軍人を睨み付けた。
「犯罪者って……彼等はビラを配っていただけですよ。ですからそんな」
「は? 貴様は何を言っている。反政府組織のビラを配っていたという事は、政府にとって奴らは危険因子であろう。となれば犯罪者である事は間違いない。馬鹿な事を言うと貴様も検挙の対象に加えるか?」
「いっ!?」
 睨み据える視線と連ねられる冷たい言葉に威圧され、軍人の脚が下がる。それを見止めて息を吐くと、彼女は隣に立つ軍人にターゲットを変えた。
「貴様に聞く。反政府組織のビラを配っていた農民は何処へ消えた。隠し立てすれば貴様等が軍事であろうと容赦はしないぞ」
 言い切ったニカに軍人たちは顔を見合わせて眉を寄せた。これに彼女の元々吊り上っている眉が更に吊り上る事になる。
 そもそも彼女がここにいるのは反政府組織のビラを配る輩がいたので捌いて欲しい、と政府司法課に話が来たからだ。
 帝国政府司法課は帝国軍による犯罪調査報告を受け、帝都バルトアンデルスから司法官を派遣し現地にて罪状を言い渡す。
 帝国は地方に細かく裁判所を設置していない。故に帝都の裁判所まで犯罪者を一々招集するのではなく、小さな犯罪であれば村や街単位、或いは最寄りの師団都市にて判決を下し、そのまま監獄都市アネリブーベへ送り込んでしまうのである。
 しかし実際に足を運んでみて驚いた。
 捕縛した農民は全て姿を消し、監視の為にいた軍人はこの有様。何処に行ったのかと問い掛ければ「家に帰ったんですよ」の一言。
「何が家に帰った、だ。犯罪者の思考は常に凶悪方面に傾くと決まっている。奴らは反政府組織の連中と結託し、更なる混乱を起こそうとしているんだ。そもそも逃走するのはやましい事があるからだろう」
 違うか? そう問い掛ける彼女に軍人ら2人は呆気にとられた様子で目を見開く。これに彼女の口から何度目かの溜息が漏れた。
「田舎軍人はこれだから困る。昨今のヴルツァライヒの台頭も知らんのか」
 完全に聞こえるように放たれた声に、驚くばかりだった軍人たちの表情が変わった。
 けれどニカは続ける。
「貴様ら田舎軍人に捕縛を命じた所で同じ結果しか得られまい。無能な三下はそこで大人しくしていろ」
「なっ!」
「司法官だからと黙って聞いていれば失礼なッ! これ以上侮辱するならタダでは置かんぞ!」
「ほう?」
 スゥッと細めた目が、威勢を張った軍人に向かう。そうして冷たい笑みを口元に刻むと、持っていた銃を抜き取り目の前に突き付けた。
「無能を無能と言って何が悪い。己が職務を全うしていれば言われる事もない言葉だろう。だが貴様らは最低限の職務すらも放棄した。これは職務放棄として罪に問われる問題だぞ?」
「――」
 軍事国家である帝国において、文官は軍官よりも発言力が低い。
 通常であれば、政府所属の文官が帝国兵に大きな顔でもしようものなら袋叩きに合うだろう。
 しかし、司法官だけは違う。恐らく帝国政府の文官の中で彼女たちだけが、軍人と対等以上に話をする事ができるのだ。
 威圧と威厳。その双方に睨まれて言葉を失う軍人に更なる溜息を零し、ニカは取り出した拳銃を下げた。
 その上で言い放つ。
「至急ハンターを集め犯罪者を捕縛させろ。田舎軍人よりは役に立つだろうからな」
 行け。そう命じると、彼女は犯罪者の消えた部屋を振り返った。

●数時間前
 反政府組織のビラを配っていたとされ事情聴取を受けていた農民らは、外に落ち始めた闇に気付き腰を上げた。
「そろそろ帰らねぇと娘が心配する」
「カミさんにすぐ帰るって伝えてるしなぁ」
 口々と零される声を聞いてもわかる通り、彼等に罪を犯したと言う意識はない。
 そもそも何故ビラを配るに至ったのか。それはこの村に訪れた貧困が原因だった。
 昨年の不作に続き、昨今増え始めた歪虚が原因で食物が上手く育たないのだ。故に彼等は金を得る手段として反政府組織の頼みであるビラを配った。
「仕方ないな。おっちゃんたちはもう家に帰って良いよ。司法官さんには俺たちが事情を説明しておくから、呼ばれたら顔を出してくれるか?」
「ああ、勿論だとも」
 こうして農民たちは家路に着いた。
 この時、軍人たちは後に遣って来る司法官がどういう人物かを分かっていなかった。
 彼らは貧困に喘ぎ、それを打開するために今回の行動に出たのだ。その状況を顧みてさえもらえれば、厳重注意か罰金で納まる。そう考えていた。

リプレイ本文

「あ~あ、胸糞ワリィ。これだから頭デッカチのお役人様は嫌いなんだよ」
 頭の後ろで手を組み、ボルディア・コンフラムス(ka0796)は明りの灯る小屋を横目に声を上げる。
 中には依頼人のニカ・アニシンがいる。彼女は農民を逃してしまった軍人とは別の軍人と今回の件に関して報告書を作成しているらしい。
「どうあっても犯罪者に仕立てるつもりかよ。いけすかねぇぜ。できりゃぁあの偉そうなクソガキの鼻を明かしてやりてぇな」
 ケッ。と悪態を吐くこと僅か。ハラハラとその様子を伺う者があった。
「そんな心配そうな顔しなさんな。さすがに帝国司法官なんて立派な肩書持ってる奴に乱暴な事はしねぇよ。ンなことしたらこっちがお縄だからな」
「なら良いっすけど……で、軍人さんは今回の件をどう思ってるっすか?」
「どう、とは」
 ボルディアの返答に安堵した神楽(ka2032)は、軍人にどうしても確認しておきたい事があった。
 それは――
「農民の人たちを犯罪者にしたいっすか?」
「と、とんでもない! 元はと言えば自分らが彼らを帰宅させたのが原因ですし、自分らは反対です」
「了解っす。何とか穏便に済ませるっす。泥を被って貰うかもっすけど勘弁っす!」
 神楽はそう言うと、ニッと笑って軍人の肩を叩いた。
「とりあえず今回の依頼は『犯罪者の捕縛』ですから、そこだけは徹底しましょう」
 軍人の言い分はわかるが、下手な動きをしてニカを刺激するのだけは避けたい。とは言え、素直に彼らを犯罪者にするのはこの場の全員が賛成しかねていた。
 水城もなか(ka3532)は言葉を零しながら思案気に口元へ手を添えると、自身の愛馬を撫でる人物に目を向けた。
「馬がお好きですか?」
「ああ、すまない。あんたの馬か……良い馬だな」
「ありがとうございます」そう頭を下げると、もなかは顔を寄せる愛馬の鼻を撫でた。その仕草に、馬から手を下げたパープル(ka1067)が改めて軍人とその背後にある小屋を見る。
「反政府活動、か」
 ここに来るまでに村の状態は見させてもらったが、お世辞には裕福と言えない状態だった。
「こういう活動に参加する人ってのは、貧しい人が多い……幹部、というか思想家は本気でやっている可能性もあるが、末端構成員なんかは、貧困で喰うに困って参加している者も居るだろうな」
「そうね。私もこの間まで難民として貧しい生活をしてたからわかるけど……ほかにお金を稼ぐ手立てがなのなら、家族を養える、ご飯が食べられる……そんな話を呑んでしまっても、仕方のない事だわ……」
 反政府組織のビラを配るだけでお金が手に入るのだとしたら、自分でも同じ事をしたかもしれない。
 そう零すセイラ・イシュリエル(ka4820)は視線を落とすと、パープルの言葉を噛み締めるように両の手を握り締めた。
 その仕草にルシール・フルフラット(ka4000)が彼女の肩を叩く。
「ともあれ、ニカ……司法官殿はどうやら判断を急いでいるらしい。もしそうであるなら、彼女の代わりに判断材料を集めて来るべきだ」
 依頼書にあった『犯罪者の思考は常に凶悪方面に傾く』と言う文。そこから伺えるのは早急な想いだ。過去に犯罪者へ危惧を抱く事案でもあったのか、それとも何か別の理由があるのか。
 いずれにせよ、ニカが急いで農民を犯罪者にしたいことは間違いない。
「そうだな。罪は罪だが、それを一律にさばいて良いものでもないだろう。そうすることで生まれる反感もある。とりあえず俺は農民たちに話を聞いてみよう」
 まずはそこからだ。パープルはそう言葉を切ると、仲間と役割分担を行った上で村へ向かう事を決めた。


 馬に騎乗しながら街道を進むもなかは、手にしているLEDライトで周囲を照らすと手綱を引いて馬の足を止めた。
 彼らは生活用水を確保する為に川へ行ったらしいく、情報源は軍人と農民の家族から得ていた。
「とにかく一刻も早く見つけましょう」
 言ってもなかの足が動く。と、ライトを街道脇の道に向けた時、水桶を持って近付く者があった。
「な、なんだあんたたちは」
 驚いた表情で2人を見比べるのは探していた農民だ。後ろからは別の農民の姿も見える。
「政府司法課司法官より捕縛命令が出ています。大人しくご同行頂けますか?」
「捕縛命令!?」
「どういうことだ……!」
 彼らは驚いた様子で顔を見合わせている。
「罪状は反政府組織のビラを配ったことらしいぜ。ついでに言うと、今回の帰宅が逃亡罪にもあたるって豪語してやがる」
「逃亡罪?」
 思わず下がった足にもなかが前に出る。そして農民の退路を塞ぐように足を進めると彼らに告げた。
「身の安全はあたしたちが保証します。ですからついて来ていただけませんか?」
「し、信じられるものか! あんたたちも司法官とか言う奴の仲間なんだろ!」
「あ? 俺たちがあのクソガキの仲間? ふざけんな。あんな胸クソ悪ぃ奴、誰が仲間になんてなるかよ」
「ボルディアさん」
 ニカの事が相当気に入らないのだろう。捲し立てるボルディアに苦笑し、もなかは改めて彼らを見た。
「あたし達はハンターです。あたし達はあなたがたを助けに来ました。どうか信じて頂けませんか?」
 穏やかな笑みと落ち着いた声に、彼らの肩から余計な力が抜ける。それを見て少し声を落ち着かせてボルディアが問う。
「なあ。あんたはビラ配りを指示した奴の居場所を知ってるか? どこから来たとか、服がどんなだったとか。居場所に関わる話を知ってるなら教えて欲しいんだ」
「……知ってどうする?」
「あんたらが無事家に帰れるよう、組織の人間を探してみるんだよ。ダメで元々って奴だけどな」
 ニッと笑った彼女の顔に嘘はない。
 それを感じ取ったのだろう。彼らは顔を見合わせると、自身が持つ情報を話し始めた。

 同時刻。農民の家から移動したパープルは、暗闇の中で動く人影を見つけて足を止めた。
「おーい、ちょっと良いかー?」
 張った声に、夜の畑で作業していた人物が振り返る。その姿を見たルシールは「ふむ」と息を吐いて辺りを見回した。
「この時間に見回りか……大変だな」
 昨今の不作に影響しているらしい動物の悪さ。それを最低限の被害で済ますために農民らは交代で見回りをしていた。
 今日見回りの担当になっていたのは、ビラ配りで捕まった者の1人。パープルたちが担当するもう1人の捕縛対象者は家で待機してもらっている所だ。
「突然すまないな。私たちはハンターだ。貴殿らを軍人からの呼び出しで連れに来た」
「軍人からの呼び出し……そうか、司法官さんが来たか」
 ルシールの説明で納得したのだろう。
 やれやれと肩を竦める農民は、後ろの畑を名残惜しげに振り返ってパープルとルシールの双方に頷きを返した。
「その様子を見る限り潔白の様だな」
「ん?」
 首を傾げる姿に、2人はニカが為そうとしている処罰を説明した。これに農民の顔が真っ青になって行く。
「司法官殿は貴殿らの厳罰を望んでいる。だが勘違いするな。私たちがそのようなことはさせない。今のように抵抗なく同行してくれるならそれだけで有利に事は運ぶはずだ」
 ルシールの冷静な物言いに、農民の口から何とも言えないため息が漏れる。それでも彼は逃げようとはしなかった。
「正直不安はぬぐえないが任せるしかないようだ。よろしく頼むよ」
「了解した――と、そうだ」
 足を動かしたのも一瞬、ルシールが問う。
「ビラ配りに関わった者の親類や、関わりのある人数など教えてもらえるだろうか。それとビラ配りを頼む人物とはどう接触したのか。知っている範囲で教えてもらえると助かる」
 柔らかい物腰の中に堂々とした姿を覗かせ、ルシールは必要な限りの情報の提供を求めた。

 皆が農民らを連れ出した頃。セイラと神楽は最後の対象者を連れるべく彼の家を訪れていた。
「本件被告を裁くよう政府司法課から要請があって、司法官が出向いてきているの。司法官は皆を犯罪者として見ているわ。彼女にとって犯罪者は悪しき志向に傾いて、今後も更なる害をなす存在だとも考えているの」
 現状、彼らが置かれている状況は良くない。その事を伝えるべく言葉を重ねるセイラに、捕縛対象やその家族の顔が強張った。
「俺は頼まれてビラを配っただけで……」
「そうね。なら、そのビラが何だったのか。理解していたのかしら?」
 セイラの問いに家族の口が噤まれる。
 それを目にして彼女は更に言葉を重ねて行く。
「解らなかったなら、真摯にそう訴えましょう。理解していたなら、良くない仕事だろうことも分かっていたのよね……それでもお金が必要だった」
 言って、過去の自分が蘇る。その幻影を振り払うように首を横に振ると、彼女は農民の前に膝を着いた。
「生きる為、そして守るため……それなら猶の事、捕まってはダメよ」
「あんた……」
 言葉や言動から伝わる真摯な想いに、農民やその家族は言葉を失った。
「悪いことをしたら、素直に謝るべきだと思うの。代理人が『当人も反省している』なんて言っても、それで伝わる思いなんかないわ。嘘はつかないで、隠し事も辞めて、直接謝りましょう」
 そう微笑む彼女に、農民は何かを察したように頷き「ああ」と言葉を返した。
「よし、そうと決まれば行くっすよ。説教か奉仕活動で済ませるっすから安心するっす。こっちは1人じゃないっすからね!」
 言ってカラリと笑った神楽に、家族らは信頼を寄せる笑みを零した。


 小屋の外で壁にもたれるボルディアは、先ほどまで馬を走らせて反政府組織の痕跡を探していた。
「アジトは見付からず、か。けどまあ、大丈夫だろ」
 本当は農民が潔白だと言う確固たる事実が欲しかった。だが農民のために動いたのは彼女だけではない。
 ボルディアは小屋の中でニカと対面している面々を思い出し、フッと笑みを零した。
「俺が行くより何倍も良いだろうしな。つーか今日は寒ぃなぁ」
 そう身を震わせた彼女とは違い、小屋の中は異様な熱気に包まれ若干汗を滲ませるほどだった。
「何のつもりだ。早急にそいつらを引き渡して貰おう」
 農民らを背に立ち塞がるハンター。その姿に足を組んで座るニカの鋭い視線が飛んだ。これにもなかが口を開く。
「依頼は捕縛ですが、引き渡せとは言われていませんので」
「何?」
 熱気が一転、冷たい空気に変わるのを感じながら、パープルは努めて冷静な声で言う。
「今のままでは引き渡せない。そういうことだ」
「意味が分からんな。貴様らも無能な軍人と同じ無能なのか? そいつらは犯罪者だ。反政府組織に加担し、国に更なる危険因子を生み出そうとした」
「本当にそうだろうか? 歪虚が原因による不作からの、生活をする上で必要な金を得る為に、ビラ配りに手を出してしまった。これは歪虚の討伐が確りとなされていれば、もしくは政府が、不作に対しての補填等が行えていれば、こういった犯罪は起こらなかった。これは、俺達ハンターや、政府の力不足が原因だ。力なき者を護れなかった故の結果だ」
「今回の件は、客観的に見て彼らに完全な日があるとは思えない。そもそも農民たちは反政府組織と強いかかわりがない。この結果により見えてくるのは、厳罰を下すのは政府よりも寧ろ反政府組織に利が生まれるということだ」
 パープルの言葉を捕捉するように言葉を添えたルシールは、ここに来るまでの間に農民から聞いた言葉を思い出す。
「彼らは一様にお金の為にビラを配ったと証言している。これは厳罰を下す事で政府に対して本当の反逆者を生む切っ掛けになるのではないだろうか」
「……それこそが反逆者共の狙いだと?」
 思案気に目を細めたニカの声にルシールが頷くと、ようやく農民らがニカの前に進み出た。
「俺たちはビラの内容を理解していた。全ては金のため、家族のため、生きるために行ったことだ。もし昨年以上に不作だったら俺らはっ」
「ふん。だからと言って犯罪行為に手を染めるなど」
 くだらない。そう言葉を発する前にセイラが彼女の言葉を遮った。
「彼らに反政府の意思はないわ。今後は反政府活動に加担しないと約束してくれたもの。それにビラ配布の依頼人の容姿や応報日時や依頼金額なども素直に教えてくれたのよ」
 これでも足りない? それなら。と彼女は続ける。
「反政府活動の予兆や関係者が見つかれば、すぐに政府へ通報し、今後も村単位で政府の味方であり続ける約束も加えるわ。だから!」
「意味が分からんな」
「え」
 冷え切った声に全員の目が向かう。
「ハンター如きが何を粋がっている。正義の味方にでもなったつもりか?」
「っ、ハンターにこんな権利がないのは理解してるわ。それでも、どうかお願い……」
「くだらん。情など司法の場では無意味だ。……で、そこの貴様は何が言いたい。貴様も腹の内に何か隠しているのだろう?」
 面白くない。そう前面に出しながら、ニカは黙って説得を聞いていた神楽を見た。
 この声に、神楽は頷いて声を上げる。
「監獄都市では歪虚退治で刑期短縮っす!」
「は?」
 確かに帝国の犯罪者は第十師団に送られたうえで兵士として刑期終了を待つ。だがいきなりどうした。
「さっき村や街道を見たんすけど結構痛んでる所があるっす。なら罰はそこを直す労役ってのはどうっすか? 労役とはいえ安いけど給料だすっす。ここで給料出せば再発を防げるっす!」
「貴様は馬鹿か。その様な資金を我々が出すと――」
「労役はいわば監獄都市での強制労働とやってる事は同じっす。修繕を安くできるし反政府活動の再発防止と帝国に損はないっす!」
 それとも。と言葉を切ってから問う。
「無理して収監するっすか? そしたら働き手を失った恨みと貧困で反政府活動が爆増するっすよ?」
「彼らに罪は無いとは言わない。無法と自由は違う。だが、彼ら1人1人の背景を見ずに裁く事は、国に対しての反発を招く事になると思う。法とは、国とは、そこに住む民のものだろう」
 最後に添えられたパープルの言葉にニカの眉間に皺が寄った。そして先程まで処理していた書面を取り上げて息を吐く。
「成程。貴様らの言う後の惨事は信用に足る助言だ」
「それでは」
「アネリブーベ送りは撤回しよう。だが罪は罪だ。そこの坊主が言った労働をこいつ等に課す」
「坊主!?」
 ふん。と鼻で息を吐いて目を逸らすニカに、神楽が不満げな声を零す。それを耳にニカはもなかを見た。
「後で聴取で手に入れた情報を報告書にして提出しろ。期日は明日の朝だ」
「あ、あたしがですか!?」
「何か文句でもあるか?」
 いえ。と肩を落としたもなかの肩をルシールが叩く。そして彼女はニカを見て言った。「賢明な裁きに感謝する」と。

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  • 正しき姿勢で正しき目を
    セイラ・イシュリエルka4820

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参加者一覧

  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • 紫色の狩人
    パープル(ka1067
    人間(蒼)|30才|男性|闘狩人
  • 大悪党
    神楽(ka2032
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • 特務偵察兵
    水城もなか(ka3532
    人間(蒼)|22才|女性|疾影士
  • 落花流水の騎士
    ルシール・フルフラット(ka4000
    人間(紅)|27才|女性|闘狩人
  • 正しき姿勢で正しき目を
    セイラ・イシュリエル(ka4820
    人間(紅)|20才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/05/27 15:54:26
アイコン 相談卓
水城もなか(ka3532
人間(リアルブルー)|22才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/05/31 00:13:43