ゲスト
(ka0000)
コボルドだワン
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2015/06/05 19:00
- 完成日
- 2015/06/11 22:42
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ここは自由都市圏内にある、海辺の町。白い壁とオレンジ色の瓦で統一された町並みが、海の青さとあいまって目に快い。
名産は潮風を浴びて作られる柑橘類と、干し鱈。
商業、工業より農業、漁業に力を注いでいるだけあって、のどかな町である。
そののどかな町に、コボルドが出没するようになった。
どこからどう流れてきたのか知らないが、商店の店先から食い物をかっぱらったり、干してある魚を食ったり、飲食店のゴミ箱を引っ繰り返したり、道に穴を掘りまくったりと、ろくなことをしない。
本日町議会はその件について話し合っている。
「今のところ被害は軽微ですが、なにしろ根は凶暴らしいですし。いつ本格的に人間に対し、牙をむくか分かりませんぞ。お年寄りや子供が噛まれるかも知れない。危険です」
「一部の市民が餌付けをしているとの話もあるが……住み着かれたら迷惑どころではすまないぞ。『コボルドを1匹見かけたら、残り999匹が近くにいると思え』というドワーフの諺もあるからな。ここで増えられたらことだ。いったんはびこると、追い出せなくなる」
「野良猫の増加も問題になっておりますからなあ。この上コボルドまで増えるとなると衛生的に大変よろしくないかと」
「現在のところ目撃されているのは1匹だけらしいが」
「それが怪しいところなのだよ。一体コボルドが1匹でいるなんてこと、あるかね? あれは基本的に群れる生き物らしいじゃないかね」
「社会的な自立性を持たないため、大抵ゴブリンに隷属しているとも聞く。近隣にそういった親玉が潜んでいるということも考えられないか?」
「……やはりハンターに確かめてもらうべきだろうな」
●
河口付近にかかる石橋の上。
女学生の団体がこぞってきゃあきゃあはしゃいでいる。歯を剥き威嚇しているコボルドを前にして。
「出た!」
「ほんとにめっちゃかわいい!」
「やだー、触りたーい」
危険な亜人を目の当たりにしながら緊張感が皆無である。揃いも揃ってよほど肝が据わっているのか。腕に覚えがあるのか。
否、そうではない。こういう反応をされる責任は、コボルド自身にある。
わしっ! わしっ! わしっ!
まず声。小型犬が吠えているみたいでちっとも迫力がない。
次に大きさ。コボルドの平均より小さい。おおむね60センチくらいしかない。
さらに顔。確かにコボルドは犬顔だが、それにしたって犬犬し過ぎる。全身深い縮れ毛に覆われむくむくしており、二本足で歩くプードルにしか見えない。
これで怖がれと言う方が無理だ。
「ほらこっちおいでー」
「おいでおいで、パンあげるから」
彼女たちは惜しみ無くパンを投げてやった。
コボルドは吠えるのを止めた。投げられたパンを前足でかき集め、すたこらどこかに逃げて行く。
●
小さなコボルドは川の土手に掘った巣穴に潜り込み、両手一杯に抱え込んだパンを食べ始めた。
彼は仲間たちと共にゴブリンの「おやぶん」に連れられ、辺境からはるばるここまで遠征してきた。道中こそ泥や追いはぎなどで稼いでいたところ、運悪くハンターの団体と鉢合わせ。「おやぶん」はたちまち討伐。仲間たちはてんでばらばらに逃げ出し、自分も逃げ出し、気が付けば見知らぬ土地に1人きり。
この場合匂いを辿っていち早く辺境に帰り、新たな「おやぶん」を見つけるのがコボルドとして正しい行動なのだが、彼はなかなかその決心がつかないでいた。
この地の人間はとても弱い。吠えれば恐れおののき、このようにすぐ食べ物を貢いでくる。辺境では仲間からチビチビと軽んじられていたが、ここにおいてはオレ最強。すごく気分がいい――そう思っているからだ。
自分の姿形が愛らしいから食べ物をもらえるのだという事実には、てんで気づいていない。
無理もない。コボルド的審美眼からすれば彼は、「鋭い牙」「尖った鼻先」「長い手足」といったメス心をくすぐる要素を何一つ持ち合わせていない、非モテ系ぶちゃいく男子なのである。
名産は潮風を浴びて作られる柑橘類と、干し鱈。
商業、工業より農業、漁業に力を注いでいるだけあって、のどかな町である。
そののどかな町に、コボルドが出没するようになった。
どこからどう流れてきたのか知らないが、商店の店先から食い物をかっぱらったり、干してある魚を食ったり、飲食店のゴミ箱を引っ繰り返したり、道に穴を掘りまくったりと、ろくなことをしない。
本日町議会はその件について話し合っている。
「今のところ被害は軽微ですが、なにしろ根は凶暴らしいですし。いつ本格的に人間に対し、牙をむくか分かりませんぞ。お年寄りや子供が噛まれるかも知れない。危険です」
「一部の市民が餌付けをしているとの話もあるが……住み着かれたら迷惑どころではすまないぞ。『コボルドを1匹見かけたら、残り999匹が近くにいると思え』というドワーフの諺もあるからな。ここで増えられたらことだ。いったんはびこると、追い出せなくなる」
「野良猫の増加も問題になっておりますからなあ。この上コボルドまで増えるとなると衛生的に大変よろしくないかと」
「現在のところ目撃されているのは1匹だけらしいが」
「それが怪しいところなのだよ。一体コボルドが1匹でいるなんてこと、あるかね? あれは基本的に群れる生き物らしいじゃないかね」
「社会的な自立性を持たないため、大抵ゴブリンに隷属しているとも聞く。近隣にそういった親玉が潜んでいるということも考えられないか?」
「……やはりハンターに確かめてもらうべきだろうな」
●
河口付近にかかる石橋の上。
女学生の団体がこぞってきゃあきゃあはしゃいでいる。歯を剥き威嚇しているコボルドを前にして。
「出た!」
「ほんとにめっちゃかわいい!」
「やだー、触りたーい」
危険な亜人を目の当たりにしながら緊張感が皆無である。揃いも揃ってよほど肝が据わっているのか。腕に覚えがあるのか。
否、そうではない。こういう反応をされる責任は、コボルド自身にある。
わしっ! わしっ! わしっ!
まず声。小型犬が吠えているみたいでちっとも迫力がない。
次に大きさ。コボルドの平均より小さい。おおむね60センチくらいしかない。
さらに顔。確かにコボルドは犬顔だが、それにしたって犬犬し過ぎる。全身深い縮れ毛に覆われむくむくしており、二本足で歩くプードルにしか見えない。
これで怖がれと言う方が無理だ。
「ほらこっちおいでー」
「おいでおいで、パンあげるから」
彼女たちは惜しみ無くパンを投げてやった。
コボルドは吠えるのを止めた。投げられたパンを前足でかき集め、すたこらどこかに逃げて行く。
●
小さなコボルドは川の土手に掘った巣穴に潜り込み、両手一杯に抱え込んだパンを食べ始めた。
彼は仲間たちと共にゴブリンの「おやぶん」に連れられ、辺境からはるばるここまで遠征してきた。道中こそ泥や追いはぎなどで稼いでいたところ、運悪くハンターの団体と鉢合わせ。「おやぶん」はたちまち討伐。仲間たちはてんでばらばらに逃げ出し、自分も逃げ出し、気が付けば見知らぬ土地に1人きり。
この場合匂いを辿っていち早く辺境に帰り、新たな「おやぶん」を見つけるのがコボルドとして正しい行動なのだが、彼はなかなかその決心がつかないでいた。
この地の人間はとても弱い。吠えれば恐れおののき、このようにすぐ食べ物を貢いでくる。辺境では仲間からチビチビと軽んじられていたが、ここにおいてはオレ最強。すごく気分がいい――そう思っているからだ。
自分の姿形が愛らしいから食べ物をもらえるのだという事実には、てんで気づいていない。
無理もない。コボルド的審美眼からすれば彼は、「鋭い牙」「尖った鼻先」「長い手足」といったメス心をくすぐる要素を何一つ持ち合わせていない、非モテ系ぶちゃいく男子なのである。
リプレイ本文
「コボルトォ!? 1匹!? そんなの、ケシズ「しいっ!」
台詞の途中でガラーク・ジラント(ka2176)から遮られたエルム(ka0121)は、怪訝な顔をした。
「何?」
「何じゃないだろう。これから例のコボルドについて、聞き込みをしようとしているんだぞ……餌付けしている人間を警戒させるような言動は謹め。どこで誰が聞いているか分からないのだからな」
「ああ、そっか。ごめんね」
もっともな指摘に頭をかくエルム。思ったことをつい口に出してしまうのは、彼女の美点であり欠点だ。
そこを分かっている小村 倖祢(ka3892)は苦笑する。愛犬『ポテチ』の頭を撫でて。
「まあケシズミはともかく、所詮コボルドだからね。このまま放っておくわけには行かないよね。犬みたいに毛むくじゃらでころっころしてるなら、そりゃ餌付けもしたくなるし匿っちゃいたくもなるだろうけど」
アルマ・アニムス(ka4901)は依頼内容について期待を膨らませていた。かなりの愛らしさという前評判、ぜひともこの目で真実を確かめてみたい。
「かわいいは正義で、もふもふは至高です……餌をやりたいと言う方々の気持ちはそれなりに理解出来ます。かといって野放しにはできませんけど」
浪風 白露(ka1025)が眉間に軽くしわを寄せた。彼女の足元にはコリーが、伏せの姿勢で待機している。
「外見はどうでもコボルトだろう。餌付けしててよく襲われなかったよな。あいつらは子供の指くらい簡単に食いちぎるぞ」
控えめにうんうん頷くレイ・アレス(ka4097)。
「コボルドは本来凶暴ですからね。これまでケガ人などが出ていないのは、単に運がよかったんだとしか」
フレイア(ka4777)は連れてきた柴犬をお座りさせ、チラシを読んでいる。
「面白い亜人もいたものです。で・す・が 躾はきちんとしなければなりません」
それが気になった満月美華(ka0515)は、単刀直入に尋ねてみた。
「フレイアさん、そのチラシは?」
「ああ、これは来る途中の町で講演してたサーカス団からいただいてきたものです。可能なら捕まえたコボルドを、ここに預けてもいいかなと思いまして……」
「……コボルドって、芸出来るの?」
「少なくとも犬程度の芸なら、やれるのではないかと」
● 聞きこみ
「よーしよしよし、よーしよしよし、いい子だいい子だー」
ガラークはやり過ぎではと思うほど濃いスキンシップをポテチに行っていた。ふかふかした顔を撫でまくり、こねまくる。
その光景に、暇で犬好きな通行人が釣られてきた。
「おや、このあたりでは見かけない犬ですな。犬種はなんですか?」
ガラークに同行していた倖祢が、すかさず脇から畳み掛ける。
「これはシバって言うんですよー」
「ほお、シバ。このあたりでは珍しいですなあ」
相手が食いついてきたと見て、2人は本題に入る。あくまでも自然な流れで。
「そうですか? 俺はさっきもっと珍しい二足歩行の可愛いワンちゃん見かけたんだけど、この辺の子なんです? 首輪がついていませんでしたけど……確かプードルみたいな顔してたかなあ」
「えっ、本当にそんな珍しい犬が! いいなあー、俺もかわいいワンちゃん見たいなあー」
「あ、いいえ、違うんですよ。犬じゃないんですそれ。コボルドなんですよ。どこからか流れてきたらしいんですけど、餌付けする人がいるから町に居着いちゃって」
「そうなんだー、知らなかった。で、餌付けってどこでやってるんだ?」
「川とか港とか、そのあたりですかねえ。朝早くなんか、ゴミ置き場にも出ますけど」
● 続聞き込み
フレイアと美華は証拠物件たる縮れ毛を拾う。それを見つけるのは簡単だった。何しろ町をちょっと見回ってみれば、掘り返した跡だらけなので。
情報取得を確実にするため、真面目そうな人を狙って聞き込みをする。差し当たっての狙い目は、コボルドから被害を受けている商店主。
「戸口を閉めていても器用に開けちゃうんですよ。こっちがお勘定してて手が放せないときなんか狙うんです。腹の立つったら。巣ですか? さあ、正確には分からないんですけどねえ……よく出てくるのは港とか川の側とか、後飲食店の近くとか」
そうまで頻繁に町に現れるというなら、町の近くに棲みついている可能性が高い――己の読みに自信を持ったフレイアは美華とともに、情報提供者に礼を述べ、場を離れる。
先頭は柴犬だ。ふんふか周辺の匂いを嗅ぎつつ歩いて行く。
「少し、調子に乗りすぎね」
「そうですね。こうまで人間のエリアに入ってくるとは、明らかに増長しています。分を弁えさせてあげませんと」
「全くよね。でも町の中というなら探索範囲もそう広くないわ。とりあえずさっき聞いた出没地域を探しましょうか」
● 続々聞き込み。
「もしもーし。ガラーク? 倖祢? きこえる? なんか情報ないかなぁ」
橋の欄干によりかかって魔導短伝話をしているエルム。
彼女と一緒に捜索をしていたレイは、パンを持った女学生たちが、橋のたもとからこちらを見ているのに気づいた。
(あれはもしかして、餌付け?)
そちらに歩み寄り、礼儀正しく帽子を取り、挨拶。
「え、ええと、初めまして……あ、あの……最近この町に可愛いワンちゃんが現れるって聞いたのですが……」
彼の後ろではエルムが、伝話を続けている。
「ええそうね、飲み水は必要だろうから、川の近くなんかアヤシイわね。とりあえず見つけたら2、3発ファイアーアローをぶちかまし――え、ダメなの!? 平和的に解決するのね。OK、わかったわ」。
女学生たちは不審そうな表情をした。
今の会話聞こえてる。これはごまかしても駄目だ、とレイは判断する。
「あの、僕たちはハンターですが、コボルドを退治しにきたわけではありません。捕まえるだけです。故郷に返すか、あるいは適当なところに引き取ってもらうするつもりなんです。どうかご協力願えませんか? このままの状態を続けていては周囲にとっても彼自身にとっても、よくありませんので……」
● 遭遇。
アルマと白露は港に来ていた。先に聞き込みをしていた仲間たちから『コボルドは川の近くや港で餌を貰っているらしい』との情報を得たので、急遽こちらに向かったのである。
港にはちょうど何隻か漁船が帰ってきていた。
野良猫がたくさん集まってきている。
そこへ漁師が売り物にならない雑魚を投げてやっているのだが――
わし、わしっ!
明らかにおかしいのが1匹交じっている。
白露が連れてきているコリーがわん、と鳴いた。
疾風のように駆け出し、魚を投げていた漁師に飛びつく。尻尾をちぎれんばかりに振りながら。
「おおっ!? な、なんだ、どこの犬だ!」
「私のです。すいません……大丈夫ですか?」
口調を変え申し訳なさそうに謝罪しながらも、白夜は、相手の真正面に陣取る。これ以上魚を投げられないように。
「あのー、もしかして今のは餌付けですか?」
「あ? ああ、いや、そんな大層なもんじゃねえけどな。どうせ捨てちまうもんだし」
「あのですねー、動物でも食べさせちゃいけない食べ物とかあるんですよねぇ。いえ、猫はいいんですよ猫は。でもコボルドにはねぇ、適当でないというか。野良だと場合によっては――」
彼女がそうやって時間稼ぎしている間、アルマはコボルドを凝視していた。
「……なんですかこのかわいい生物は。話には聞いていましたけど、ここまでとは……!」
魚が来ないので不平の唸りを上げていたコボルドは彼の存在に気づき、餌を巻き上げてやろうと近づく。
うー、わしっ、わしっ、わし!
かん高い声は、アルマの燃えるハートに油を注いだ。
「……お持ち帰りです。これはもうお持ち帰りします。決定事項です。僕は本気です」
次の瞬間機導砲が放たれた。
直撃を食らったコボルドは軽く吹き飛ばされ海に落ちる。
危険を察し、そのまま泳いで逃げ始める。
白露たちはその姿を見失わぬよう岸辺から追いかけ、仲間たちへ『コボルド発見』の連絡を入れる。
● 釣り出し。
港から河口を伝い大急ぎで巣穴に逃げ戻ってきたコボルドは、しばらく穴の奥にうずくまっていた。俺最強という信念をちょっと揺らがせながら。
外からいい匂いがしてきた。
鼻をひくつかせつつ出てみると、巣穴の前に干し肉、チーズ、干し肉、魚の干物、肉のワイン煮、ナッツ、パン、牛乳。
それを見て彼は自信を取り戻す。貢ぎ物を寄越してくるということはやはり、オレは強いと認められているのだと。
というわけで遠慮なしに飲み食いして行く。
仲間がいるなら分けねばならないが、差し当たり単独行動をしているので、その気遣いは無用。
食べ終わったところ少し先の方にまた餌を見つけ、移動。それを繰り返して行くうち川からどんどん離れていくのだが、本人はあまり気にしていない。
ハンターたちが餌付けの人々を引き留めたり、匂いに引かれてやってくる有象無象の野良猫たちを追い払ったりしているについても、特別不審を抱かない。特に後者については『俺様の食べ物を人間が守ろうとしているのだ。俺様偉い』と斜め上の解釈をする始末だ。
腹が膨れてきたからか、そのうちだんだん眠くなってきた。ので、その場に丸まって寝る。ハンターがロープを持って近づいてくるのも気づかずに。
● 躾タイム。
ここは町外れの廃材置き場。
わし! わし! わし!
怒りの声を上げるコボルドは、首にロープをつけられていた。端を持っているのは、倖祢だ。
コボルドの前に立ち吠えかかられている美華は、フレイアに首を巡らせる。
「……まず最初にジョギングなんてどうかしら?」
「それはいい考えですね。どちらにしてもダイエットが必要な体のようですし」
「よね。じゃあ倖祢くん、しっかり持って放さないでよ!」
美華の手のひらから火球が生まれた。
火球はコボルドの足元に叩きつけられるやいなや爆発を起こす。
「次はあてるわよ♪」
轟音と爆風の衝撃にコボルドは、口を開けたまま固った。数秒そのままでいて、大急ぎできびすを返し走りだした。
ロープの端を握っている倖祢が併走する。材木置き場から出ないよう、うまく引き回しながら。
「おととと! 結構早いね!」
それを美華が追いかける。満面の笑みで銃撃(当たらないようにだが)を繰り返す。
「あははは、まて~」
きゃんきゃんきゃん!
フレイアもマジックアローで加勢する。
「ほらほら、足を止めないで!」
やられる側の外見が外見であるため、はた目には動物虐待と見えなくもない。
と、コボルドが積まれていた廃材の隙間に逃げ込んだ。
「あれっ。おーい、おーい、出ておいでー」
うううわしっ! うううわしっ!
倖祢がロープを引っ張っても踏ん張り通す
そこでガラークが動いた。
「ふ、可愛い鳴き声だな」
廃材目がけ鉄腕を奮い、粉々に粉砕。
コボルドは縮み上がり白目をむいて倒れた。コリー1匹と柴犬2匹が匂いを嗅いでも、ぴくりともしない。
これはまずいのではないだろうかと心配したアルマが近づき、様子を見ようとした瞬間、がぶりと足を噛まれる。
白露が言った。
「そういえばコボルドは手ごわい敵に会ったとき、死んだふりすることがあるそうだな」
フレイアが手をぽんと打ち合わせる。
「その話、私も聞いたことがあります。油断させておいて不意打ちを狙うとか。まあ、大抵返り討ちに遭うらしいですが」
アルマは穏やかにかつ強力にコボルドの口をこじ開け、足から外す。
目が笑っていない。
「こわーい躾けのお時間ですよ? さぁもふ君、お覚悟を」
立て続けに機導砲が火を吹いた。
きゃんきゃんきゃん!
光が炸裂するごとに、元よりちりちりした毛並みが、更にちりちりになっていく。
ほどなくして今度こそ本当に気絶したコボルドに、レイはヒールをかけてやった。
「コボちゃん、しっかり」
起き上がったコボルドは、かなり現実感覚を取り戻していた。
だがしかし彼の外見を見て『こいつになら勝てるかもしれない』と、つい思ってしまう。
わし、わしっ!
うなってくる相手を困ったように眺め、レイは、チョップを入れる。
痛かったらしい。コボルドが頭を押さえてうずくまった。
それをもふくる倖祢。
「ごめんねコボちゃん。手荒な真似したくなかったけど、ちょっとおイタが過ぎたね。おとなしく俺たちの言うこと聞いたほうがいいよ? 消し炭にされたくなかったらね……しっかし丸いなー!」
エルムがコボルドの鼻面に、びしと指を突き付けた。
「コボルト君、やってきたのが私達だったからよかったけど、もし他のハンターだったら、貴方は今日、殺されちゃってたかもしれないわよ。私としては、さっさと故郷に帰って、人間には今後近づかない事をオススメするわ」
「いいえ、この子は僕が連れて帰りますっ! 僕のお持ち帰りですっ!」
「そ、そう? いや別にそれでもいいけどさ」
アルマの勢いに彼女はいささか引き気味だ。
フレイアが意見する。
「ハンター個人が世話をするのは大変そうですが、大丈夫ですか?」
「大丈夫です!」
「……それなら今のうちに、もっとレベルの高い躾を施しておかなくてはいけませんね」
不安げにきょろきょろするコボルドに、ガラークがアドバイスしてやる。
「貴様は気づいてないようだが、いいか? 人になら貴様はモテる。人に害なし続け狩られるか、人につきモテモテ犬生をエンジョイするか、だ」
コボルドにもし人の言葉が分かったなら、こう言っただろう。
同種族にモテなきゃ、意味ないじゃん。
● 再出発。
町を離れるその日コボルドは、シルクハットにジャケット、首にリボンという見違えるようないで立ち。
「コボちゃんさよならー」
「さよならー」
コボルドの手形色紙を持つご贔屓筋に彼は、シルクハットを取って一礼した。
歓声が上がる。
あのコボルドがここまで更生したかと、普段彼にいい印象を持っていなかった町の人々も、惜しみ無い拍手を送る。
「元気でなー」
「これからは真面目にやるんだぞー」
だがコボルド当人は真面目にやろうとか全然思っていなかった。
重要なのはこういった変な格好をして妙な仕草をすれば、人間たちが以前にも増し自分を敬う――食べ物のみならず、以前「おやぶん」が事あるごとに集めてこいと言っていた「オカネ」まで貢いでくる――ことだ。
でも自分に貢がれてきたものは、全部このアルマとかいうエルフが取り上げてしまう。
ハンターが危険なことは十分すぎるほど理解したので、正面きって逆らうことは控えておく。
しかし貢ぎ物は俺への貢物なのだからして俺が独占するのが当然ではないのか。
納得いかない。
そんな風に不満を募らせた彼は、数日後。
「あれ、もふもふ君、どこですか、もふもふくーん!」
衣装一式を持ってアルマの元から逃げた。
その行方は目下、洋として知れない。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
コボちゃんに現実を ガラーク・ジラント(ka2176) 人間(リアルブルー)|28才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/06/04 23:31:02 |
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![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/31 17:34:48 |