• 春郷祭1015

【春郷祭】祭とハーブと盗賊と

マスター:樹シロカ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/06/06 19:00
完成日
2015/06/14 22:05

みんなの思い出

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オープニング

●事の発端
 同盟領内に存在する農耕推進地域ジェオルジ。
 この地では初夏と晩秋の頃に、各地の村長が統治者一族の土地に集まって報告を行う寄り合いが行われる。その後、労をねぎらうべくささやかなお祭りが催されていたのだが、昨年の秋から状況が一変。同盟の商人や各地からの観光客が集まるお祭りとして賑わっていた。
 そして今年の春。遠き辺境の地での戦いが終息に向かったのを見計らい、延期にしていた春の村長祭を開催する運びとなった。
 今回は辺境のお祭りとの共催となり、より一層の盛り上がりが予想されるのだが……そんな慌ただしくも賑やかなある日のこと、ジェオルジ領主の館ではちょっとした問題が起きていた。
「ティーモが枯れた、ですって?」
 前領主の妻にして現領主の母、事実上のジェオルジの最高権力者であるバルバラは、料理長の報告に眉をひそめた。
「枯れたと言っても根っこは生きてますから、世話をすればまた使えるようになるんですがね。祭には間に合いそうもないんです」
 申し訳なさそうに帽子を取った料理長に、バルバラは気にしないようにと手を振る。
 様々な料理に使うハーブのティーモは、少し前までは館の農園に邪魔になる程茂っていたのだ。
 それが一時期にせよ枯れた原因は予想がついた。彼女の夫、前領主のルーベンが、すぐ近くで自分の実験植物を植えていたのが災いしたのだろう。
「でもないとなると貴方も困るわね。……ああ、ちょうどよかったわ」
 通りかかったのはジェオルジ一族唯一のハンター、長女のルイーザだった。
「ルイーザ、貴女と来たら今年も暇そうね」
 ルイーザは顔を引きつらせながら抵抗を試みる。
「とんでもありませんわ、お母様。私はお茶会の準備がですね……」
「それはまだ間に合うわね。ちょっと頼まれてくれないかしら」
 口調こそ丁寧だが、誰もバルバラには逆らえない。ルイーザはしおしおと母の言いつけに従うこととなった。

●そして山へ
 が、結果的に、それはルイーザにとって助け舟といえた。
「ま、しょうがないわよね! お母様の言いつけなんだもの!!」
 一応、ハンター達のお陰でお茶会に必要な様々なことを覚えたルイーザだが、やはり身体を動かす方が性に合っている。
 山で籠いっぱいのティーモを採ってこいという言いつけは、お茶会の支度を誰かに放り投げる口実としてはうってつけだった。
「では嬢、陽が昇りきる前に出発しようかの」
 日に焼けた顔をほころばせるのは、この辺りの村々を診療して回っているボッティという年寄りの医者だ。
 ティーモは薬にもなるので、自分も確保しておきたいとついてきたのだ。
「アンジェロ君、頼むぞ」
「はい、任せてください」
 笑顔の爽やかな青年が、大きな籠を背中に担ぎあげた。
 この辺りで一番良質なティーモが手に入るのは、シニストラ村近くの山だ。道案内を引き受けたのはシニストラ村の村長の息子のアンジェロである。
 3人は足取り軽く、新緑の山へと入っていった。

●迫る危険
 若き領主セスト・ジェオルジ(kz0034)の元に、若い娘の面会人がやってきたのはそのすぐ後のことだった。
「デストラ村のリタさん、ですか」
 その名前には覚えがあった。秋の郷祭の際、仲の悪いふたつの村が問題を起こした原因となったために、自ら囮を買って出た娘だ。
 飛び込んで来たリタは、膝を屈めて礼をするのももどかしそうに状況を語り始めた。
「申し訳ありません領主さま、お忙しいところを」
 彼女の恋人アンジェロが、ルイーザ・ジェオルジとボッティ医師と共に薬草を採りに山に向かったのだが、出発してすぐに陸軍の一隊が村にやってきた。彼らは近隣の村を荒らし回っている盗賊の集団を追ってきたのだが、どうやら賊は近くの山へ逃げ込んだらしい。危険なので山には近付かないように、というのだ。
「……そしてその賊には、ハンター崩れもいる訳ですか。それは流石に姉上がいるとはいえ、危険ですね」
 セストはすぐに決断した。
「ハンターの皆さんに依頼を出します。なんとか連絡をつけて、急いで山を降りるように伝えて貰いましょう」

リプレイ本文


 セストと対面したリアン・カーネイ(ka0267)は、丁寧な挨拶の後に切り出した。
「早速ですが。ルイーザさん達一行の服装などを、判る範囲で教えて頂けませんか」
 当然の確認である。が、セストの視線は宙を泳いだ。
「服装ですか……」
 エーミ・エーテルクラフト(ka2225)は、セストの死角を選んでにじり寄る。
「ふふ、お姉さまはまた今回も素敵な衣装でいらっしゃったのかしら?」
「……これはエーミ殿。ええ、ご明察です」
 セストは諦めたように軽く溜息をつく。
「今日は新緑に映えると言って、カナリアイエローの帽子と外套を身につけています。遠目にもすぐわかるでしょう」
「カナリアイエロー……?」
 リアンが思わず繰り返した。
 ルイーザは都会的なファッションセンスの持ち主である。逆に言えば、ジェオルジでは奇抜すぎるのだ。
 エーミはその恰好を見たときのセストの表情を想像し、くすくす笑いを漏らす。
 この若き領主は立場のためか、表情の変化に乏しいところがある。だがエーミはその仮面の裏側には、きっと何かが隠れていると感じていた。少し自分と似ている、とも。
 だから親しみと、仮面の隙間をめくってみたいような悪戯心で、軽くつついてみるのだ。
「それにしても、ここの前領主様は相変わらず面白いわね。後でその実験植物なんかも見せてもらえるかしら?」
 だがまずは、本来の目的を達成してから。
 リタから聞いた状況を確認し、ハンター達は作戦を練る。
 ウェスペル・ハーツ(ka1065)は頬を赤くして、ふんすと鼻息荒く拳を握った。
「ルイーザさんたちはうーたちが絶対お助けするなの!」
 双子の兄ルーキフェル・ハーツ(ka1064)も良く似た仕草で気合を入れる。
「るーたちにお任せですお、まるっとお助けですお!」
 その頭をルトガー・レイヴンルフト(ka1847)の大きな手が撫でた。
「ルーは今回は兄弟と一緒か」
 厳つい顔の中で、瞳が優しく細められていた。まだ小さいのに一人前のハンターであろうとする姿が健気に思えるようだ。
「よろしくおねがいするですお! 今日はうーもいっしょなのですお!」
「ルトガーのことはるーからきいてるなの! かっこいいおじさんですなの!」
 きゃっきゃと双子に囲まれながらまんざらでもない様子のルトガーだったが、依頼のことはちゃんと考えている。
「リタがここまで来る時間を考えても、もう充分山頂付近にいる頃合いだろう。討伐隊もかなり進んでいる筈だ。俺は通信を担当しよう」
 コロネ・ユイレ(ka3594)はなるべく付近の村人に見えるように、服装を整える。
「ただルイーザ達を探すだけならともかく、盗賊がいるから気をつけなければな……」
 ラィル・ファーディル・ラァドゥ(ka1929)もフード付きの地味な外套を借りた。
「盗賊が10人も山に逃げ込んでいるなんて危ないしなあ。追い詰められて何を仕出かすか分からんし、はよルイーザたちを見つけなあかんな!」
 盗賊は討伐隊から逃げる為に山に入りこんだという。逃げ切れないと思えば自棄になって打って出たり、一般人と見れば人質にしたりしかねない。
 なるべくならルイーザ達を見つけるまでは、刺激しないようにしたい。
 ミオレスカ(ka3496)がリタに用意して貰った赤い布を控えめに差し出した。
「私たちの目印です。陸軍の討伐隊の皆さんに知らせて、間違ってこちらを捕らえないようにしてもらいましょう」
 互いの腕に布を巻きつけ、いざ出発。
「皆さんもくれぐれも気をつけてくださいね」
 リタに見送られて山へと入る。


 ハンター達は2班に分かれた。
 とにかく先行しルイーザ達と合流する東班はミオレスカ、ルトガー、エーミ、ラィル。情報収集しつつ必要があれば道中の盗賊を足止めするのが西班のリアン、コロネ、そしてウェスペルとルーキフェルの兄弟である。
 互いの連絡が取れるように魔導短伝話を調整した。

 西側のなだらかな道を急ぎながら、リアンは樹上や傍の草むらに注意を払う。
「仮に連絡が取れても、ルイーザさんは一般人の同行者がふたりもいますからね。無理はできないでしょう」
 ウェスペルが一生懸命に歩きながら、頭も一生懸命に働かせる。
「山に慣れた人が東側から行って2時間なの。慣れてない人はもっとかかるはずなの。だからもしこっちで出くわすとしたら、隠れてる一般人の盗賊だと思うの」
「うー頭いいお、遭遇するのは一般人かもですお!」
 きらきらとルーキフェルが目を輝かせた。
「でも盗賊か、あとは逃げて隠れてるおじいちゃん先生だったりするかもですお! それから挟み撃ちのために隠れてる討伐隊……の可能性も一応は頭に入れておきますお!」
「遅らせるのは幾らでも遅らせられるからな」
 コロネはトランシーバーで陸軍と連絡が取れないか、幾度か呼びかけてみる。
 だが山で電波が届きにくいのか、もっと先に居るのか、中々連絡はつかなかった。東側も同様らしい。
「……何だ?」
 コロネがふと足を止め、木立の間に目を凝らす。
「……さっきあそこで何か動いたような気がする」
 他の3人にしか聞こえないよう、コロネは殆ど唇を動かさずに目線で合図を送った。
 ウェスペルとルーキフェルがわざと少し先に立って行く。
 果たして、小さな双子を狙って、木立の間からクマのような大男が2人現れた。
「ガキか! ちょうどいい、俺達が逃げるまで付き合って貰うぜ」
 もうひとりの男はトランシーバーを使っている。
 どうやら4人の服装に油断したようだ。飛び出そうとするリアンとコロネをウィンクで制し、ルーキフェルはウェスペルを背後に庇う。
「こわいなのー! おかあさーん!!」
「お手伝いに来ただけなのに……うー、しっかりするお……!」
 ぷるぷる震えて見せる2人。だがウェスペルはルーキフェルの背後で間合いを計っていた。
 ちょうど盗賊2人が近付いたところを狙って、スリープクラウドを発動。トランシーバーを握っていた男があっという間にその場に倒れる。
「こいつらハンターか!」
 手前の男が吠えた。
「効かなかったですなの……」
 ウェスペルが思わず泣き真似を忘れて呟く。
 その間にも盗賊は剣を抜いて飛びかかって来た。どうやらこれはハンター崩れらしい。
「通さぬよ、その程度の攻撃!」
 穏やかな普段の表情に似合わぬ、鋭い声。柔らかな赤い光を纏ったリアンが、白銀の槍で盗賊の剣を叩き落とした。
「貴様らは精霊より賜りし力の愚弄、其の物だ!」
 慌てふためいて伸ばした賊の手の先で、落ちていたトランシーバーを叩き壊す。その間に近付いていたウェスペルのスリープクラウドが、今度こそ賊を眠らせた。
 ウェスペルとルーキフェルは隠し持っていたロープを取り出しとびつく。
「他にもいるかもなの。リアンさんとコロネさんは先に山頂を目指してほしいの!」
「ここはるーたちに任せて、コロネさんとリアンさんはお先に行って下さいおー!」
「わかった。だが油断はするなよ」
 コロネは頷き、リアンと共に駆け出した。
「ルイーザ達は大丈夫なのか。東側が間にあっていればいいが……とにかく急ごう」


 ルトガーは急な斜面を軽々と駆け抜けて行く。
「おい、ルイーザ。聞こえるか? 聞こえたら返事しろ!」
 伝波増幅で通信範囲を拡大し、片手の伝話でルイーザを、反対の手に持ったトランシーバーで陸軍を呼びだす。
「討伐隊の方が近いかもしれんね。そこから中継して貰う手もあるやろ」
 ラィルの指摘通り、ややあって陸軍から反応があった。依頼の内容などをルトガーが手短に伝える。その横からエーミが声を潜めて付け加えた。
「私がもし追われている盗賊なら、見張りを立てるわ。3人と連絡が取れるまでは、盗賊を刺激しないで進みたいの。追いつくまで少し待ってもらえないかしら?」
 そのとき、ミオレスカが西からの報告を伝える。
「……西側で斥候が見つかったそうです。やはり盗賊は所々に潜んでいるかもしれません」
 忙しく通信がかわされ、西側の討伐隊は斥候を確保しに一部が下山、他はハンターと合流して山頂を目指すことになった。
 東班はとにかく先を急ぐ。
 暫くして、ようやくルイーザの呑気な声が応答した。
『あら、いつかのおじさまね。お久しぶり!』
「いいかルイーザ、今から言うことをよく聞け」
 ルトガーはなるべく簡潔に状況を伝える。
『……わかったわ。あたし達は山小屋に避難するわね』
 これでひとまずは安心だ。少なくともボッティ先生とアンジェロが人質に取られるようなことはないだろう。

 東側の道は急峻で、岩場が多い。その為賊が隠れる場も少ないようだった。
 ようやく山頂が見えたところで、今度はルイーザから通信が入った。
『ちょっとまずいことになったわ』
 まずいと言いつつ、何処となくルイーザの声が興奮しているのは気のせいか。
『見るからに怪しい一団が、小屋に近付いてるの。人数は……6人ね』
 賊にとっても、山小屋は一時的に休息を取るには格好の場所と見えたようだ。あるいは目印として、他の仲間と合流するつもりか。
「人数が足りんなあ。他にも隠れてるのかもしれんね」
 ラィルの懸念はもっともだが、とにかくルイーザと合流するしかない。そのとき山間に銃声が木霊した。
「まさか、おっぱじめちまったか」
 ルトガーがスピードを上げる。果たして、山小屋の窓から真っ黄色の女が身を乗り出し、猟銃を構えているではないか。
「ちょっと待って……って、お姉様に言っておくべきだったかもしれないわね。今更だけど」
 エーミは軽く肩をすくめると、他の3人にウィンドガストを送り回避を容易にする。自身はパルムを小屋と反対方向に走らせた。
 小屋の周辺がにわかに騒がしくなる。
「何だこいつらは! 仲間か!」
 屈強な男達が剣や棍棒を振り上げた。ルトガーはひと際大柄な男に一気に近付くと、エレクトリックショックを見舞う。
「覚醒者じゃなかったらすまんな」
 だがひとりずつをより分けている暇はない。ミオレスカも銀色に輝く銃を構える。その髪が虹色に輝き、ふわりと広がる。
「強そうな人から順に、足止めですね。あ、覚醒者以外は陸軍の皆さんにお願いします」
 ミオレスカ、割とシビアである。だがそもそも依頼内容は盗賊退治ではなく、ルイーザ達の保護だ。
 ラィルはルトガーのエレクトリックショックで動けなくなった男の身体を乗り越え、その先の男の腕を狙う。
「加勢に来たで、ルイーザ!」
 続いて駆けつけようとしたエーミだったが、パルムが慌てふためいて戻ってきたのに気付いた。
 良く見れば、木立の陰で茂みが不自然に揺れている。
「それで隠れてるつもりかしら?」
 飛び出そうとする相手の機先を制し、ワンドを翳す。ウォーターシュートの水流が賊を巻き込んだ。
「くそっ、早くあの小屋に逃げ込め!」
 賊のひとりが走りだした目の前で、小屋の扉が勢い良く開く。
 中から出て来たのは黄色いルイーザ。目が据わっている。
「馬鹿にしてくれるじゃない? あたしを舐めるんじゃないわよ!」
 言い終わらないうちに、賊の靴の爪先に穴が開いた。


 西側から駆けつけたコロネ、リアンが加勢に加わり、あっという間に賊は制圧された。
「西側に2人、小屋の前に6人、あと、茂みに隠れていたのが2人で10人なの!」
 陸軍の兵士達がしっかりと縛りあげている賊を、ウェスペルが数え上げる。手配されていた全員を確保したようだ。
「ご協力感謝します!」
「いてえ! くそっ、お前らの方がよっぽどひでえじゃねえか!!」
 悲鳴と抗議を上げる賊の傷口に、エーミがにっこり笑って薬を塗り付けた。
「あら、勝者が敗者に何をしようと勝手でしょ? それにこうしてちゃんと傷の手当てもしてあげてるじゃない」
「ぎゃああああああ」
 途中に生えている色々な物をすりつぶしたモノを張り付けるエーミ。一応配合は間違っていない……はずである。

「先生、今回はハンターと一緒に山に入ったのに、盗賊団とはついてないな」
 ルトガーが笑いながら、ボッティに声を掛けた。
「おう、お前さんか。いやあ、嬢ちゃんも頑張ってくれたんだがなあ」
「まあ、家に籠っていたって、災害に巻き込まれることはあるからな。この世のどこにも安全な場所なんてないってことだな」
「その通りじゃな。だがその方が世の中面白いて」
「違いない」
 カラカラと笑いあうのも無事であればこそ。
「ともかくご無事で何よりです。皆さん怪我はありませんか」
 リアンが丁寧に挨拶し、ルイーザも少し気取って笑顔で礼を取る。
「有難う。おかげで助かったわ。ちょっと暴れ足りなかったけど!」
 コロネは安堵したように山頂の空気を吸い込み、ポケットに入れていた菓子を取り出す。
「あら、おやつ? だったらお礼にこれどうぞ。あたしたちもお昼にしようと思ってたところだったの。皆さんもどうぞ!」
 ルイーザがにっこり笑ってジェオルジ名物・まめしを差し出した。
「ありがとう……」
 程良く塩味の効いたまめしは、疲れた体に沁みとおるようだ。

 一息入れたのを見計らって、ミオレスカが立ち上がる。
「さて、ティーモを採って帰りましょう。お祭りの美味しい料理に必要とあらば、そこに全力を尽くすのが、ハンターです」
「いいのを選んでたくさん取って帰るですお! きっとセストも喜びますおね」
 ふんぬと力瘤を作るルーキフェルに、アンジェロが声を掛けた。
「また助けられちゃったね。怪我は無かったかな?」
 ルーキフェルとウェスペルの顔がぱっと明るくなる。
「アンジェロも元気そうで良かったお!」
「アンジェロはお久しぶりなの! リタがすごい心配してたなの!」
「そうか……まさか盗賊団に出くわすなんて思わないからね」
 青年が苦笑いで頭を掻く。
「で、リタとはいつ結婚するなの?」
「やっぱり結婚するんですかお?」
 金色と紫色の真ん丸な目が、そろってアンジェロを見つめて輝く。
「え? あ、うん、近いうちに……かな……はは、結婚ってね……お金がいるんだよ……家、とか……」
 何故か膝を抱えて座り込む青年を、無垢な子供はきゃっきゃと取り囲んだ。
 ルイーザがふふんと鼻を鳴らす。
「いーじゃなーい。彼女さんだってそれぐらい待ってくれるわ。ま、道案内とかなら優先的に依頼するわよ」
「ヨロシクオネガイシマス」
 ルイーザがらみの案件はちょっと微妙かもしれない……と思いながらも、青年はそう言った。
「結婚、ねえ……」
 エーミが小首を傾げる。そういえばこういう話題になったら、セストはどんな顔をするだろうか。
 きっと能面のような顔で逃げ出すのだろうと思うと、少し可笑しい。
「ね、お姉様。ティーモを使った料理ってここにはどんなものがあるのかしら、教えてもらえると嬉しいわ?」
「え? あ、そうね。家に戻ったら……」
 ルイーザは自分に聞かれても困るという強張った表情で笑った。

<了>

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MVP一覧

  • クラシカルライダー
    ルトガー・レイヴンルフトka1847
  • システィーナのお兄さま
    ラィル・ファーディル・ラァドゥka1929
  • 解を導きし者
    エーミ・エーテルクラフトka2225

重体一覧

参加者一覧

  • 海の戦士
    リアン・カーネイ(ka0267
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • がんばりやさん
    ルーキフェル・ハーツ(ka1064
    エルフ|10才|男性|闘狩人
  • がんばりやさん
    ウェスペル・ハーツ(ka1065
    エルフ|10才|男性|魔術師
  • クラシカルライダー
    ルトガー・レイヴンルフト(ka1847
    人間(紅)|50才|男性|機導師
  • システィーナのお兄さま
    ラィル・ファーディル・ラァドゥ(ka1929
    人間(紅)|24才|男性|疾影士
  • 解を導きし者
    エーミ・エーテルクラフト(ka2225
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • 疾風刃
    コロネ・ユイレ(ka3594
    エルフ|17才|男性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 救助隊相談室
リアン・カーネイ(ka0267
人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/06/06 12:09:34
アイコン 【質問】教えてください
ミオレスカ(ka3496
エルフ|18才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2015/06/06 12:12:16
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/06/01 21:27:30