ゲスト
(ka0000)
ユニオンはキレイに使いまショウ
マスター:四月朔日さくら

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/07/11 19:00
- 完成日
- 2014/07/15 21:43
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
今日もユニオンはなんだかんだと大騒ぎ。
ハンターという人種はなんだかんだでお祭り好きで、楽しいことが大好きで、楽しいことのためなら下手をすれば命まで投げ打てる。
そのくらいの勢いで、誰もがハンター生活を満喫している。
無論、雑魔が出たとなればその手助けにも行くし、それ以外にも市井の人々の助けになることを行うのもハンターとしてのつとめ。
ただ、このユニオンという空間は基本的にハンターしかいないため、ちょっとばかり――羽目をはずしてしまいがちなのだろう。
●
『ガーディナ』のリーダー、リムネラ(kz0018)はひとつため息をついた。
「賑やかなのは大いにwelcomeですケド、賑やかすぎると……ネェ?」
毎度毎度の賑やかなユニオン。
しかしそれは即ち、ユニオンで静かに過ごせることが少ない――ということで。
気づけばユニオン内のあちらこちらにホコリがたまっている。人の出入りが激しいため、掃除をするタイミングがなかなかないのだ。
「……このママだとまずいのデース……」
ユニオンが汚れたままでは気分的にも落ち着かない。せめてユニオンメンバーの出入りが激しい一階の談話室と小会議室、それにご不浄だけでも綺麗にしないと、ユニオンとしての面目的にも問題が生じる。
――そこではたとリムネラは思いついた。
「ソレなら、発想の転換デスネ♪ 皆サンに、この事務所の掃除をやってもらいまショウ♪」
依頼としてはごく単純だが、掃除が終わったあとに労えば、きっとまたユニオン自体が活気づくはず。リムネラは鼻歌を歌いながら、早速ハンターズソサエティに提出する文書を作成し始めた。
今日もユニオンはなんだかんだと大騒ぎ。
ハンターという人種はなんだかんだでお祭り好きで、楽しいことが大好きで、楽しいことのためなら下手をすれば命まで投げ打てる。
そのくらいの勢いで、誰もがハンター生活を満喫している。
無論、雑魔が出たとなればその手助けにも行くし、それ以外にも市井の人々の助けになることを行うのもハンターとしてのつとめ。
ただ、このユニオンという空間は基本的にハンターしかいないため、ちょっとばかり――羽目をはずしてしまいがちなのだろう。
●
『ガーディナ』のリーダー、リムネラ(kz0018)はひとつため息をついた。
「賑やかなのは大いにwelcomeですケド、賑やかすぎると……ネェ?」
毎度毎度の賑やかなユニオン。
しかしそれは即ち、ユニオンで静かに過ごせることが少ない――ということで。
気づけばユニオン内のあちらこちらにホコリがたまっている。人の出入りが激しいため、掃除をするタイミングがなかなかないのだ。
「……このママだとまずいのデース……」
ユニオンが汚れたままでは気分的にも落ち着かない。せめてユニオンメンバーの出入りが激しい一階の談話室と小会議室、それにご不浄だけでも綺麗にしないと、ユニオンとしての面目的にも問題が生じる。
――そこではたとリムネラは思いついた。
「ソレなら、発想の転換デスネ♪ 皆サンに、この事務所の掃除をやってもらいまショウ♪」
依頼としてはごく単純だが、掃除が終わったあとに労えば、きっとまたユニオン自体が活気づくはず。リムネラは鼻歌を歌いながら、早速ハンターズソサエティに提出する文書を作成し始めた。
リプレイ本文
●
人が集まれば、賑やかになる。
だが同時に、いつも使っている場所が汚れてしまうという危惧が存在するわけで――
ユニオン『ガーディナ』も、その御多分にもれず、という現状だった。
「とりあえず、今はこんなかんじなのデース……」
恥ずかしさをややこらえつつ、リムネラ(kz0018)が申し訳なさそうにユニオン内を案内する。……確かに、人の出入りが激しい影響もあって、綺麗とは言いがたい。
「料理をするのも嬉しいのですケド、皆サンに気持よく使ってもらいたいから……ネ」
その言葉に頷くのは、『ガーディナ』所属のハンター達。自分たちのユニオンを気持ちよく使いたいというのは誰の心にもあることだから、早速息巻くハンター達もいる。ここに至るまでに様々な下働きや使用人の仕事を経てきたアミグダ・ロサ(ka0144)は、部屋の様子をざっと見て、
「まずは掃除用具の確認もしないといけませんですね」
そう言って小さく微笑んだ。様々な職種をこなしてきた彼女にとって、掃除なんて日常茶飯事なのである。
「今はこちらに居を構えていますし、このくらいは日常の勤めのうちですしね」
そう言うと、他のハンター達も頷く。……約一名をのぞいて。
その『約一名』、名前をジョナサン・キャラウェイ(ka1084)というのだが、リアルブルー出身の自称「悪の天才科学者」である。……うん、色んな意味でヤバイ。
「僕の好きなもの、それは! シミひとつない……悪っ! しかししかし、なんてことだ。ここは見事に汚れきっているじゃないか……まったく……。いいだろう、汚れの溜まったこの辺境ユニオン、悪の天才がまるっとお掃除しちゃうぞ!」
結果として掃除をすると言っているわけではあるが、その美意識の違い故か、そんなことを言ってみる。……微妙に小市民な香りが漂っているけれど。
「お世話になっているユニオンを綺麗にするのは、所属者の勤めですものね! 誇りがかぶっているガーディナなんて似合わないので、ピカピカにしましょう!」
誇りあるユニオンが埃あるユニオンになるのは嫌だなぁーなんて思いながら、エテ(ka1888)はにっこりと笑う。服装は汚れても良いようなシャツとズボン、そして長い桃色の髪は項で一つに縛っている。こちらもこちらで準備は万全だ。
一方、他のユニオン所属者たちも、興味津々といった様子で今回参加していた。
「整理整頓やお片づけは大事ですからっ。これも交流の一つですよね、今日はよろしくお願いしまーすっ」
快活そうな見た目にぴったりくる、元気いっぱいの挨拶をするのは帝国ユニオン『APV』所属のメリエ・フリョーシカ(ka1991)。他にも『APV』所属なのは金刀比良 十六那(ka1841)なども同様なのだが、彼女は逆にやや落ち着きのない態度を見せている。
(そ、掃除くらいは、ちゃんとしたことあるわよ、ダイジョウブダイジョウブ……)
先日料理で失神者を出して以来、家事に対する抵抗感がダダ上がりの彼女、すでに心臓が破裂しそう。
「孤児院でも掃除は俺の仕事の一つだった、けど……なんで俺、こんなところにいるんだ?」
わずかに首をひねっているのは帝国出身者の孤児院に住んでいるティー・W・カルブンクルス(ka0506)。帝国ではなく辺境のユニオンの仕事なのであるが、よくわからなくとも彼としては今は仕事をまっとうするのが第一と考えたのだろう、不平不満も言うことなく腕まくりをする。
「とりあえず俺は力仕事担当かな。指示があったら言ってくれると助かる」
「ですね! 整頓された場というのは商いの上でも大事。ユニオンというのは棚卸しなどもないでしょうし、できれば定期的にお掃除をしたいところですね!」
小柄ながらもそう言って商人らしさを出しているのはラズリー・クレエステル(ka1349)、幼いながらもすでに一端の商人としての器量を備えている。帝国ユニオンと辺境ユニオンの違いをふむふむとチェックしてから、まずは持ち運びできそうな家具を部屋から表へと移動させることを提案した。これはアミグダも同様の提案をしていたのですんなりと賛成される。
大掃除の始まりだ。
●
「どこにどの家具や荷物があったかをあらかじめ荷札などでしるし付けしておけば、後でもう一度配置するときに困らないでしょう?」
アミグダの発想はごくシンプルだが便利なもので、なるほどこうすれば荷物の配置で後々困ることもないだろう。
「ええと、これは談話室のソファ、と」
荷札の書き込みはラズリーの担当だ。わかりやすいように記号などでチェックしておく。チェックが終わったものから順に、ハンター達が手分けして表に運び出した。荷物を置く前にはちゃんと汚れないようにというティーの提案で、汚れても問題ない敷物をしいている。
ギルド街ではなんだなんだと様子を見に来るものもいたが、ユニオンの盛況ぶりを知らぬ者のほうが少ないため、掃除中だといえばすぐに納得してもらえた。
(力仕事は苦手だが、……ああ、わかっている。このメンバーを見れば僕がやらないでは済まないっていうことは)
ジョナサンは力なく笑いながら、荷物運びを手伝っている。とは言え一般人よりは身体能力に優れた覚醒者、本人が思うよりは作業ができたといえよう。十六那は棚の引き出しなどを外し、大きな家具を運ぶときの軽量化を試みる。いつも自分が使っているユニオンではないので、若干力みがちだが、それはやむをえないだろう。
そして皆が荷物を運んでいる間にアミグダは談話室内にある暖炉の木灰を集めてみずにつけ、即席の洗浄液に仕立てあげた。石材や陶器を洗うのに、灰を入れた水の上澄みというのは効果的なのである。
「辺境だから変わった模様の生地とか本とか、あるかなーって思ったけど、結構普通だね」
そんな感想を漏らすのは同盟出身で現在は王国ユニオンに所属しているルア・パーシアーナ(ka0355)。仕立屋の娘ということもあってか、各地の稀覯本や民族衣装のデザインなどに興味津々なのである。
「そういうのは、多分重要資料にも混じってるんじゃないですかね。あ、でもこのじゅうたんは辺境のだと思いますけど」
ラズリーが指さしたのは談話室に敷かれていたじゅうたん。元々放牧生活をしている部族も多い辺境では、こういう織物のたぐいも特産品として各地で販売されているのだ。
そうこうしているうちに、荷物の運び出しがひと通り終わって、ようやく内部の掃除だ。
●
アミグダの計画はまったくもって完璧といえた。
まずは屋内にあった調度品を別の場所へと運び出し、室内を空っぽにする。高いところにある埃は固く絞った雑巾で落とし、更に部屋から廊下の順に床を丁寧に掃いて埃を外へ追いやる。家具も雑巾で吹いて埃を落とす。
そして部屋や廊下の雑巾がけを行い、細かい汚れやシミを拭きとっていく。そして最後に元あった場所へと家具を戻す――。
余裕があれば玄関やご不浄も木灰液を使って汚れ落としを行うつもりだ。
この計画を聞いて、誰もがおおっと唸る。そこまで事細やかに決めていた人はいなかったからだ。いや、アミグダの提案があるからこそ、安心して作業を出来ると言い換えることができるのかもしれない。
「お水は井戸もあったし、ここで汲めば問題ないね」
ルアが早速掃除用の桶に水を蓄えて戻ってくる。水拭きするものも、乾燥をキッチリするべきものと、水でゴシゴシ洗っても問題ないものにさらに分けていく。本も、ずっと光に当てないままだと虫が食ってしまうので、虫干しもついでに行う。ユニオンの出入口はそのためすっかりおかしなことになってしまっているが、まあこれもやむをえまい。
「そういえば大丈夫たぁ思うが、外に出した家具を見張る奴がいたほうがいいんじゃないか?」
ティーの提案はたしかにもっともだ。ユニオンの周囲には野次馬たちが山をなしている。特にこれの立候補者はいなかったので、ティーが担当することになった。
(まぁ、しょーがねぇな)
人数が少なくなったとは言えるが、万が一の盗難があっては困るので、必要な人材ではある。必要なときは交代するように頼んで、彼は表にでた。
さて、ユニオン内の掃除で任されているのは一階部分のオープンスペース、玄関から談話室にかけての空間だ。そこに至るまでにふたつの小会議室とご不浄もあるが、そこも清掃の対象である。つまり簡単にいえば、ユニオンの共有空間が対象、と言い換えることができるだろう。
その中での担当はおおよそ以下のとおり。
会議室は主に十六那。玄関から廊下にかけては、メリエの担当になる。メリエ個人としては階段の先も気になるらしいが――そちらはリムネラからも釘を差されているのでグッと我慢。
(禁止事項を守るのがプロの仕事人の鉄則……って、お父さんもいってたし!)
幼少期になくした父の言葉を思い出しながら、首をブンブンと強く横にふる。
談話室は、いつも世話になっているからというエテが中心に行う。
(運んでいるだけでも埃まみれになっちゃいますね……)
エテは屋外でパンパンと身体の埃をはたき落としてから、改めて談話室をぐるりと見やる。
他愛もない話をしたり、時には料理をしたり、大事な場所。ユニオンという場所柄、人の出入りも多い――
(だからこそ、入念にお掃除しないと!)
いつも世話になっているからこその思い。とはいえ、
「やっぱり人の出入りが多いと埃もすごいですね……」
備え付けの棚や窓枠を軽くなぞっただけでも、指に埃がついてくる。
「……でも、汚れが落ちるって結構、楽しいかも……です」
ラズリーもエテの指示を仰ぎながら、談話室を掃除する。普段使い慣れているユニオンと構造が異なるため、ガーディナ所属のエテの意見は非常に参考になるのだ。元々の配置図とにらめっこしながら、やり残しがないように心がける。
「あ、あれ、時計ですよね。可愛い!」
ラズリーがやや上ずった声で言う。そこにあったのは確かに、やや年代物の壁掛け時計だった。リムネラに聞いてみたところ、ユニオンが開かれるときに祝いの品としていただいたものだという。元々技術屋、細工師としての知識も存分に兼ね備えている彼女としては、そちらの手入れを優先したいと思ったようだ。機械や細工物を『可愛い』という彼女の感性は珍しいといえなくもないが、商人としての目利きは確かのようだった。
「ふう、それにしても僕は全く小間使いのようなことしかしていないな」
ジョナサンはため息を尽きながら会議室の掃除を手伝っていく。とはいえ、
「ねえジョナサンさん。あの高いところ、手が届かないから手伝って欲しいんだけれど」
そう言われれば悪い気は起きず、生来のお人好しさも相まって気がつけば存分にこき使われている有り様。本人はあまりそのことに気づいていないけれど。おかげでジョナサン自身はかなり埃まみれになってしまった上に、本人が粗大ゴミではないかと思われるほどの有り様になってしまっている。しかし小さな染みの一つでも見つければそれを執拗に消そうとするあたり、ある意味掃除に向いているタイプなのかもしれない。
主に絨毯などの洗浄を担当しているのはルア。土埃をはたき落としてからつけ置き洗いだ。辺境の産物と思われるそれは見慣れない色柄で、うっとり眺めていたいところだが――
(掃除しないとなぁ……)
そう思いつつも、絨毯の美しい模様に後ろ髪は惹かれっぱなし。また、虫干ししている本に書かれている挿絵などにもつい目が言ってしまうのを必死に我慢してしまう。そうしないと、作業が滞ってしまうのだ。
水洗いのできる調度品もざっと水流しをし、拭いて仕上げる。手の開いた人が来ればいいのだが――なかなかそういう訳にはいかない模様だ。
何しろ掃除に夢中になっていたり、小物の手入れに夢中になっていたり、自身がボロ雑巾のようになっていたりで、手のあいている人がそうそういないのである。
ちなみにアミグダは作業の監督的な立場であちこちを確認していたし、十六那に関しては慣れない掃除に四苦八苦している様子なので、他に手が回るどころではない。魔法を使うとたいてい悲惨なことになるのでそれはセーブしているが、手伝いに回れるほどの余裕が無いのが実情だった。
メリエの掃除する場所は玄関やご不浄といった、汚れるとひと目でわかってしまうところ。基本的な掃除のやり方は他とそれほど変わりない。埃を落としてほうきで掃き、雑巾で拭いてからさらに乾拭き。
(こういうのって、淡い匂いとかあるといいですよね)
軽めの香水を置いてみる。爽やかなシトラスのものだ。そこに更にちいさな造花を飾ってみれば、殺風景なご不浄もずいぶんと雰囲気が変わる。
「さて、まだ手の足りないところにヘルプ入れるようにはなったけど……」
見れば、どこも手が足りていない。手が足りていないというか、それぞれが作業にこだわりを持っていて、停滞しがちなのである。
「が、頑張って、リムネラさんのお茶をいただかないとっ」
思わず震えるメリエであった。
●
「ようやくお茶会ですネ♪」
掃除もひと通り終わり、家具をもう一度はじめと同じ場所に置き終わった頃、掃除中にはあえて口を挟まなかったリムネラがそっとやってきて紅茶を振る舞う。あらかじめ作ってあったのだろう、水出しと思われるそれは程よく喉を潤してくれた。
「そうだ、お菓子を持ってきたんですよ」
メリエがそう言って差し出した菓子は、どれも可愛らしい雰囲気。
「最近帝国では緑茶、というのが流行の兆しを見せ始めていて、これがよく合うんです」
笑顔で彼女が言うと、ハンター達から我も我もと手が伸びる。
「疲れましたけど、ガーディナは私の拠り所ですから。きれいな場所のほうが居心地がいいですものね」
エテもなんだか嬉しそうだ。十六那はやや緊張気味ではあるが、だんだん気分もほぐれてきたらしい。
「……散らかすなっていう、張り紙もした方がいいかもね」
「ソレは名案ネ! Thanks♪」
そう提案すればリムネラは華のように笑う。それを見て
(リムネラさんとタングラムさんでは、やはり印象が違うわね)
と思ったり。
「そうだ、もし良かったら帝国の置物なんかどうですかっ? こういう買い物を考えながらのお茶会も楽しいですよっ」
ラズリーが屈託なく笑う。ジョナサンは疲れ果ててはいるものの、満足そうだ。
「そう言えば、これを土産にもらっても平気か?」
ティーが尋ねると、リムネラは笑顔で頷く。
「ぜひ、皆サンでどうぞデース♪」
そんなやりとりを聞きながら、アミグダは思う。
(家事の後の休憩はいいですねえ……)
●
きっと、こんな毎日が、ユニオンの日常を支えている。
リムネラは微笑んで、感謝の言葉を述べたのだった。
人が集まれば、賑やかになる。
だが同時に、いつも使っている場所が汚れてしまうという危惧が存在するわけで――
ユニオン『ガーディナ』も、その御多分にもれず、という現状だった。
「とりあえず、今はこんなかんじなのデース……」
恥ずかしさをややこらえつつ、リムネラ(kz0018)が申し訳なさそうにユニオン内を案内する。……確かに、人の出入りが激しい影響もあって、綺麗とは言いがたい。
「料理をするのも嬉しいのですケド、皆サンに気持よく使ってもらいたいから……ネ」
その言葉に頷くのは、『ガーディナ』所属のハンター達。自分たちのユニオンを気持ちよく使いたいというのは誰の心にもあることだから、早速息巻くハンター達もいる。ここに至るまでに様々な下働きや使用人の仕事を経てきたアミグダ・ロサ(ka0144)は、部屋の様子をざっと見て、
「まずは掃除用具の確認もしないといけませんですね」
そう言って小さく微笑んだ。様々な職種をこなしてきた彼女にとって、掃除なんて日常茶飯事なのである。
「今はこちらに居を構えていますし、このくらいは日常の勤めのうちですしね」
そう言うと、他のハンター達も頷く。……約一名をのぞいて。
その『約一名』、名前をジョナサン・キャラウェイ(ka1084)というのだが、リアルブルー出身の自称「悪の天才科学者」である。……うん、色んな意味でヤバイ。
「僕の好きなもの、それは! シミひとつない……悪っ! しかししかし、なんてことだ。ここは見事に汚れきっているじゃないか……まったく……。いいだろう、汚れの溜まったこの辺境ユニオン、悪の天才がまるっとお掃除しちゃうぞ!」
結果として掃除をすると言っているわけではあるが、その美意識の違い故か、そんなことを言ってみる。……微妙に小市民な香りが漂っているけれど。
「お世話になっているユニオンを綺麗にするのは、所属者の勤めですものね! 誇りがかぶっているガーディナなんて似合わないので、ピカピカにしましょう!」
誇りあるユニオンが埃あるユニオンになるのは嫌だなぁーなんて思いながら、エテ(ka1888)はにっこりと笑う。服装は汚れても良いようなシャツとズボン、そして長い桃色の髪は項で一つに縛っている。こちらもこちらで準備は万全だ。
一方、他のユニオン所属者たちも、興味津々といった様子で今回参加していた。
「整理整頓やお片づけは大事ですからっ。これも交流の一つですよね、今日はよろしくお願いしまーすっ」
快活そうな見た目にぴったりくる、元気いっぱいの挨拶をするのは帝国ユニオン『APV』所属のメリエ・フリョーシカ(ka1991)。他にも『APV』所属なのは金刀比良 十六那(ka1841)なども同様なのだが、彼女は逆にやや落ち着きのない態度を見せている。
(そ、掃除くらいは、ちゃんとしたことあるわよ、ダイジョウブダイジョウブ……)
先日料理で失神者を出して以来、家事に対する抵抗感がダダ上がりの彼女、すでに心臓が破裂しそう。
「孤児院でも掃除は俺の仕事の一つだった、けど……なんで俺、こんなところにいるんだ?」
わずかに首をひねっているのは帝国出身者の孤児院に住んでいるティー・W・カルブンクルス(ka0506)。帝国ではなく辺境のユニオンの仕事なのであるが、よくわからなくとも彼としては今は仕事をまっとうするのが第一と考えたのだろう、不平不満も言うことなく腕まくりをする。
「とりあえず俺は力仕事担当かな。指示があったら言ってくれると助かる」
「ですね! 整頓された場というのは商いの上でも大事。ユニオンというのは棚卸しなどもないでしょうし、できれば定期的にお掃除をしたいところですね!」
小柄ながらもそう言って商人らしさを出しているのはラズリー・クレエステル(ka1349)、幼いながらもすでに一端の商人としての器量を備えている。帝国ユニオンと辺境ユニオンの違いをふむふむとチェックしてから、まずは持ち運びできそうな家具を部屋から表へと移動させることを提案した。これはアミグダも同様の提案をしていたのですんなりと賛成される。
大掃除の始まりだ。
●
「どこにどの家具や荷物があったかをあらかじめ荷札などでしるし付けしておけば、後でもう一度配置するときに困らないでしょう?」
アミグダの発想はごくシンプルだが便利なもので、なるほどこうすれば荷物の配置で後々困ることもないだろう。
「ええと、これは談話室のソファ、と」
荷札の書き込みはラズリーの担当だ。わかりやすいように記号などでチェックしておく。チェックが終わったものから順に、ハンター達が手分けして表に運び出した。荷物を置く前にはちゃんと汚れないようにというティーの提案で、汚れても問題ない敷物をしいている。
ギルド街ではなんだなんだと様子を見に来るものもいたが、ユニオンの盛況ぶりを知らぬ者のほうが少ないため、掃除中だといえばすぐに納得してもらえた。
(力仕事は苦手だが、……ああ、わかっている。このメンバーを見れば僕がやらないでは済まないっていうことは)
ジョナサンは力なく笑いながら、荷物運びを手伝っている。とは言え一般人よりは身体能力に優れた覚醒者、本人が思うよりは作業ができたといえよう。十六那は棚の引き出しなどを外し、大きな家具を運ぶときの軽量化を試みる。いつも自分が使っているユニオンではないので、若干力みがちだが、それはやむをえないだろう。
そして皆が荷物を運んでいる間にアミグダは談話室内にある暖炉の木灰を集めてみずにつけ、即席の洗浄液に仕立てあげた。石材や陶器を洗うのに、灰を入れた水の上澄みというのは効果的なのである。
「辺境だから変わった模様の生地とか本とか、あるかなーって思ったけど、結構普通だね」
そんな感想を漏らすのは同盟出身で現在は王国ユニオンに所属しているルア・パーシアーナ(ka0355)。仕立屋の娘ということもあってか、各地の稀覯本や民族衣装のデザインなどに興味津々なのである。
「そういうのは、多分重要資料にも混じってるんじゃないですかね。あ、でもこのじゅうたんは辺境のだと思いますけど」
ラズリーが指さしたのは談話室に敷かれていたじゅうたん。元々放牧生活をしている部族も多い辺境では、こういう織物のたぐいも特産品として各地で販売されているのだ。
そうこうしているうちに、荷物の運び出しがひと通り終わって、ようやく内部の掃除だ。
●
アミグダの計画はまったくもって完璧といえた。
まずは屋内にあった調度品を別の場所へと運び出し、室内を空っぽにする。高いところにある埃は固く絞った雑巾で落とし、更に部屋から廊下の順に床を丁寧に掃いて埃を外へ追いやる。家具も雑巾で吹いて埃を落とす。
そして部屋や廊下の雑巾がけを行い、細かい汚れやシミを拭きとっていく。そして最後に元あった場所へと家具を戻す――。
余裕があれば玄関やご不浄も木灰液を使って汚れ落としを行うつもりだ。
この計画を聞いて、誰もがおおっと唸る。そこまで事細やかに決めていた人はいなかったからだ。いや、アミグダの提案があるからこそ、安心して作業を出来ると言い換えることができるのかもしれない。
「お水は井戸もあったし、ここで汲めば問題ないね」
ルアが早速掃除用の桶に水を蓄えて戻ってくる。水拭きするものも、乾燥をキッチリするべきものと、水でゴシゴシ洗っても問題ないものにさらに分けていく。本も、ずっと光に当てないままだと虫が食ってしまうので、虫干しもついでに行う。ユニオンの出入口はそのためすっかりおかしなことになってしまっているが、まあこれもやむをえまい。
「そういえば大丈夫たぁ思うが、外に出した家具を見張る奴がいたほうがいいんじゃないか?」
ティーの提案はたしかにもっともだ。ユニオンの周囲には野次馬たちが山をなしている。特にこれの立候補者はいなかったので、ティーが担当することになった。
(まぁ、しょーがねぇな)
人数が少なくなったとは言えるが、万が一の盗難があっては困るので、必要な人材ではある。必要なときは交代するように頼んで、彼は表にでた。
さて、ユニオン内の掃除で任されているのは一階部分のオープンスペース、玄関から談話室にかけての空間だ。そこに至るまでにふたつの小会議室とご不浄もあるが、そこも清掃の対象である。つまり簡単にいえば、ユニオンの共有空間が対象、と言い換えることができるだろう。
その中での担当はおおよそ以下のとおり。
会議室は主に十六那。玄関から廊下にかけては、メリエの担当になる。メリエ個人としては階段の先も気になるらしいが――そちらはリムネラからも釘を差されているのでグッと我慢。
(禁止事項を守るのがプロの仕事人の鉄則……って、お父さんもいってたし!)
幼少期になくした父の言葉を思い出しながら、首をブンブンと強く横にふる。
談話室は、いつも世話になっているからというエテが中心に行う。
(運んでいるだけでも埃まみれになっちゃいますね……)
エテは屋外でパンパンと身体の埃をはたき落としてから、改めて談話室をぐるりと見やる。
他愛もない話をしたり、時には料理をしたり、大事な場所。ユニオンという場所柄、人の出入りも多い――
(だからこそ、入念にお掃除しないと!)
いつも世話になっているからこその思い。とはいえ、
「やっぱり人の出入りが多いと埃もすごいですね……」
備え付けの棚や窓枠を軽くなぞっただけでも、指に埃がついてくる。
「……でも、汚れが落ちるって結構、楽しいかも……です」
ラズリーもエテの指示を仰ぎながら、談話室を掃除する。普段使い慣れているユニオンと構造が異なるため、ガーディナ所属のエテの意見は非常に参考になるのだ。元々の配置図とにらめっこしながら、やり残しがないように心がける。
「あ、あれ、時計ですよね。可愛い!」
ラズリーがやや上ずった声で言う。そこにあったのは確かに、やや年代物の壁掛け時計だった。リムネラに聞いてみたところ、ユニオンが開かれるときに祝いの品としていただいたものだという。元々技術屋、細工師としての知識も存分に兼ね備えている彼女としては、そちらの手入れを優先したいと思ったようだ。機械や細工物を『可愛い』という彼女の感性は珍しいといえなくもないが、商人としての目利きは確かのようだった。
「ふう、それにしても僕は全く小間使いのようなことしかしていないな」
ジョナサンはため息を尽きながら会議室の掃除を手伝っていく。とはいえ、
「ねえジョナサンさん。あの高いところ、手が届かないから手伝って欲しいんだけれど」
そう言われれば悪い気は起きず、生来のお人好しさも相まって気がつけば存分にこき使われている有り様。本人はあまりそのことに気づいていないけれど。おかげでジョナサン自身はかなり埃まみれになってしまった上に、本人が粗大ゴミではないかと思われるほどの有り様になってしまっている。しかし小さな染みの一つでも見つければそれを執拗に消そうとするあたり、ある意味掃除に向いているタイプなのかもしれない。
主に絨毯などの洗浄を担当しているのはルア。土埃をはたき落としてからつけ置き洗いだ。辺境の産物と思われるそれは見慣れない色柄で、うっとり眺めていたいところだが――
(掃除しないとなぁ……)
そう思いつつも、絨毯の美しい模様に後ろ髪は惹かれっぱなし。また、虫干ししている本に書かれている挿絵などにもつい目が言ってしまうのを必死に我慢してしまう。そうしないと、作業が滞ってしまうのだ。
水洗いのできる調度品もざっと水流しをし、拭いて仕上げる。手の開いた人が来ればいいのだが――なかなかそういう訳にはいかない模様だ。
何しろ掃除に夢中になっていたり、小物の手入れに夢中になっていたり、自身がボロ雑巾のようになっていたりで、手のあいている人がそうそういないのである。
ちなみにアミグダは作業の監督的な立場であちこちを確認していたし、十六那に関しては慣れない掃除に四苦八苦している様子なので、他に手が回るどころではない。魔法を使うとたいてい悲惨なことになるのでそれはセーブしているが、手伝いに回れるほどの余裕が無いのが実情だった。
メリエの掃除する場所は玄関やご不浄といった、汚れるとひと目でわかってしまうところ。基本的な掃除のやり方は他とそれほど変わりない。埃を落としてほうきで掃き、雑巾で拭いてからさらに乾拭き。
(こういうのって、淡い匂いとかあるといいですよね)
軽めの香水を置いてみる。爽やかなシトラスのものだ。そこに更にちいさな造花を飾ってみれば、殺風景なご不浄もずいぶんと雰囲気が変わる。
「さて、まだ手の足りないところにヘルプ入れるようにはなったけど……」
見れば、どこも手が足りていない。手が足りていないというか、それぞれが作業にこだわりを持っていて、停滞しがちなのである。
「が、頑張って、リムネラさんのお茶をいただかないとっ」
思わず震えるメリエであった。
●
「ようやくお茶会ですネ♪」
掃除もひと通り終わり、家具をもう一度はじめと同じ場所に置き終わった頃、掃除中にはあえて口を挟まなかったリムネラがそっとやってきて紅茶を振る舞う。あらかじめ作ってあったのだろう、水出しと思われるそれは程よく喉を潤してくれた。
「そうだ、お菓子を持ってきたんですよ」
メリエがそう言って差し出した菓子は、どれも可愛らしい雰囲気。
「最近帝国では緑茶、というのが流行の兆しを見せ始めていて、これがよく合うんです」
笑顔で彼女が言うと、ハンター達から我も我もと手が伸びる。
「疲れましたけど、ガーディナは私の拠り所ですから。きれいな場所のほうが居心地がいいですものね」
エテもなんだか嬉しそうだ。十六那はやや緊張気味ではあるが、だんだん気分もほぐれてきたらしい。
「……散らかすなっていう、張り紙もした方がいいかもね」
「ソレは名案ネ! Thanks♪」
そう提案すればリムネラは華のように笑う。それを見て
(リムネラさんとタングラムさんでは、やはり印象が違うわね)
と思ったり。
「そうだ、もし良かったら帝国の置物なんかどうですかっ? こういう買い物を考えながらのお茶会も楽しいですよっ」
ラズリーが屈託なく笑う。ジョナサンは疲れ果ててはいるものの、満足そうだ。
「そう言えば、これを土産にもらっても平気か?」
ティーが尋ねると、リムネラは笑顔で頷く。
「ぜひ、皆サンでどうぞデース♪」
そんなやりとりを聞きながら、アミグダは思う。
(家事の後の休憩はいいですねえ……)
●
きっと、こんな毎日が、ユニオンの日常を支えている。
リムネラは微笑んで、感謝の言葉を述べたのだった。
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整理整頓の妙(相談卓 メリエ・フリョーシカ(ka1991) 人間(クリムゾンウェスト)|17才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/07/11 13:57:32 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/06 22:05:17 |