ゲスト
(ka0000)
罪深き教会と子供達
マスター:天田洋介

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/06/05 22:00
- 完成日
- 2015/06/10 01:34
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
グラズヘイム王国・王都【イルダーナ】。
休日の朝。仲良し四人組は面白い何かを求めて遠出を試みる。
具体的には第六街区の向こう側へ。衛兵に咎められると厄介なので、城門を通過するときには親と勘違いしてくれそうな大人の後ろをついていく。
そうやって四人の子供は王都の外にでた。
「ここも充分に街中だよね」
「そうだなあ。家も建っているし、商売人も元気いいし」
少年ピスティア・ノートと少年ボナンザ・ロッソは第七街区予定地を眺めて感想を言い合う。
歪虚との戦いで故郷を追われた王国民が集まって、このような巨大集落が形成されている。王国としても放置はせず、新たな王都外縁として第七の城壁を建築しようとしていた。しかしごく一部が多少城壁っぽくなってきたといった程度でまだまだの状態である。
通りの脇には物珍しい料理屋台が並んでいた。
「この豆の煮込み料理、凄い色。どんな味かしら?」
「食べてみましょうか?」
少女ミリア・シューイッツと少女マリナ・ピュールスはさっそく買い食い。ピスティアとボナンザも炙り肉が挟まれたパンを買って齧り付いた。
両親に連れられて何度か通過したことはあるものの、こうして自由に歩くのは初めてである。見聞きするすべてが新鮮に感じられた。
「あれって教会だよな」
「そうね。やっぱりあるんだ」
ボナンザとミリアが買ったばかりのサクランボを食べながら遠くを眺める。四人の子供は何となくエクラ教の教会を目指す。
「そういや俺、今日はお祈りをしてないな」
ボナンザの一言で中へ入ることに。教会の内部にはとても綺麗で複雑な装飾が施されていた。
「司祭様とかいないのかな?」
マリナが奥を眺めながら呟く。礼拝堂内には自分達以外いなかった。しばらくすれば誰かがくるだろうと四人の子供は椅子に座って待ち続ける。
十数分後、どこからか声が聞こえてきた。
「光などばかげておる」
「まったくだ。歪虚様こそが我らを真に救う存在ぞ」
耳を澄ますと声は足元から届いている。床の一部が開き、司祭と助祭の格好をした男性二名が現れた。
「なんでガキ共が」
「……お前達、聞いたな?」
司祭と助祭が四人の子供を睨みつける。二人に捕まった子供達は地下室へと閉じ込められた。
「どうしよう……」
「参ったわね」
真っ暗闇の中、ミリアとマリナが弱々しく呟く。
「さっき食べたばかりなのに腹が減っていたよ」
全員が家族に内緒でこの第七街区予定地へやって来ている。但し、ボナンザは何人かのプルミエールの学友に話したようだ。
「姉さんからもらった赤い玉石のブローチを礼拝堂の床にわざと落としといた。あれに気づいてもらえれば……やっぱり難しいかな」
ピスティアは脱出方法を捻りだそうと頑張ったが思いつかない。地下室に至るまでの階段はとても長かった。大声をだしても礼拝堂には届かないだろう。
その日の晩、子供達が帰ってこない事態に両親や家族がとても心配する。多くの人々に手伝ってもらって方々探し回ったが一晩経っても見つからない。
翌朝、家族の代表者がハンターズソサエティ支部に駆け込んで協力を求めた。どうか四人の子供を探して欲しいと。
休日の朝。仲良し四人組は面白い何かを求めて遠出を試みる。
具体的には第六街区の向こう側へ。衛兵に咎められると厄介なので、城門を通過するときには親と勘違いしてくれそうな大人の後ろをついていく。
そうやって四人の子供は王都の外にでた。
「ここも充分に街中だよね」
「そうだなあ。家も建っているし、商売人も元気いいし」
少年ピスティア・ノートと少年ボナンザ・ロッソは第七街区予定地を眺めて感想を言い合う。
歪虚との戦いで故郷を追われた王国民が集まって、このような巨大集落が形成されている。王国としても放置はせず、新たな王都外縁として第七の城壁を建築しようとしていた。しかしごく一部が多少城壁っぽくなってきたといった程度でまだまだの状態である。
通りの脇には物珍しい料理屋台が並んでいた。
「この豆の煮込み料理、凄い色。どんな味かしら?」
「食べてみましょうか?」
少女ミリア・シューイッツと少女マリナ・ピュールスはさっそく買い食い。ピスティアとボナンザも炙り肉が挟まれたパンを買って齧り付いた。
両親に連れられて何度か通過したことはあるものの、こうして自由に歩くのは初めてである。見聞きするすべてが新鮮に感じられた。
「あれって教会だよな」
「そうね。やっぱりあるんだ」
ボナンザとミリアが買ったばかりのサクランボを食べながら遠くを眺める。四人の子供は何となくエクラ教の教会を目指す。
「そういや俺、今日はお祈りをしてないな」
ボナンザの一言で中へ入ることに。教会の内部にはとても綺麗で複雑な装飾が施されていた。
「司祭様とかいないのかな?」
マリナが奥を眺めながら呟く。礼拝堂内には自分達以外いなかった。しばらくすれば誰かがくるだろうと四人の子供は椅子に座って待ち続ける。
十数分後、どこからか声が聞こえてきた。
「光などばかげておる」
「まったくだ。歪虚様こそが我らを真に救う存在ぞ」
耳を澄ますと声は足元から届いている。床の一部が開き、司祭と助祭の格好をした男性二名が現れた。
「なんでガキ共が」
「……お前達、聞いたな?」
司祭と助祭が四人の子供を睨みつける。二人に捕まった子供達は地下室へと閉じ込められた。
「どうしよう……」
「参ったわね」
真っ暗闇の中、ミリアとマリナが弱々しく呟く。
「さっき食べたばかりなのに腹が減っていたよ」
全員が家族に内緒でこの第七街区予定地へやって来ている。但し、ボナンザは何人かのプルミエールの学友に話したようだ。
「姉さんからもらった赤い玉石のブローチを礼拝堂の床にわざと落としといた。あれに気づいてもらえれば……やっぱり難しいかな」
ピスティアは脱出方法を捻りだそうと頑張ったが思いつかない。地下室に至るまでの階段はとても長かった。大声をだしても礼拝堂には届かないだろう。
その日の晩、子供達が帰ってこない事態に両親や家族がとても心配する。多くの人々に手伝ってもらって方々探し回ったが一晩経っても見つからない。
翌朝、家族の代表者がハンターズソサエティ支部に駆け込んで協力を求めた。どうか四人の子供を探して欲しいと。
リプレイ本文
●
四人の子供が姿を消してから三日目の早朝。
ハンター一行は行方不明の一人、ピスティア・ノートの自宅を訪ねる。事前の連絡により、他の子の肉親や親しい者達が集められていた。
「まずは子供達の背格好や当日の服装を教えてもらえますか?」
レオン・フォイアロート(ka0829)は酷く落ち込んでいた子供達の両親に質問する。
(誘拐か、どっかに売り飛ばされてなきゃいいんだが)
リカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)はやり取りを眺めながら心の中で呟く。
「みなさん、仲が良かったんですよね。どこかにいくとは聞いてはいませんでしたか?」
「我にも聞かせてくれ」
マヘル・ハシバス(ka0440)とフィオナ・クラレント(ka4101)は別室の学友達に話しかける。
「学友のみなさん、朝早く大変でしたの」
ファリス(ka2853)はフェリーナ・ノートと一緒にお茶を運んだ。彼女は四人の子供と面識がある。今回の事件は他人事とは思えなかった。
「もしかしてあれかな」
クッキーを食べた男の子の記憶が蘇る。ボナンザが第七街区予定地が面白そうだといっていたのを。
「あたしも聞いたわ」
女の子にはその地の屋台料理に興味があると話していたらしい。
「あの、私も連れて行ってくれませんでしょうか?」
フェリーナはピスティアの姉である。エルディン(ka4144)は彼女の手を取ると瞳を見つめた。
「それは心強いです。是非妹さんが身につけていた品を貸して頂けませんでしょうか?」
「あ、あのピスティアは男の子です。枕カバーはどうでしょうか?」
「これは失礼。では弟さんの枕カバー、お願いします」
「少し待っていてくださいね。神父様」
長い黒髪を揺らしてフェリーナが枕カバーを持ってきてくれる。余計な臭いがつかないよう今はケースに仕舞っておく。
「来未さん、お願いして構いませんか?」
「わかりました。身代金等の要求がない以上私達から動くべき、です!」
エルディンに頼まれた来未 結(ka4610)は親達がいる部屋へ移動した。そして子供達の特徴を聞いて似顔絵を描く。焦る気持ちを抑えつつ、事件当日に着ていた服の襟元も反映させる。
四人の子供達が第七街区予定地へ向かったのはまず間違いなかった。
アクセル・ランパード(ka0448)とフィオナはフェリーナに頼んでピスティアの個室を見せてもらう。
「こちらはエクラ教のシンボルですね。祈りをかかしていないのでしょう」
「信仰心が厚いようだな。これがついている建造物が教会か。他にも違いはあるのか?」
「向こうの教会とは似て非なる物、ですね」
教会の建物は大抵石造りである。装飾はリアルブルーに比べると自由で聖人の像が飾られてることが多い。
シンボルは放射状に広がった五つの棘に半円が重なったような形をしていた。墓地の設置については様々なようである。
訪ねてから二時間後、ハンター一行はノート家を立ち去る。フェリーナを連れて第七街区予定地へと向かうのだった。
●
子供達が住む地区に一番近い第六城壁東門から第七街区予定地へと出た。
「担当の区分けはこれでいいだろう」
レオンが預かっていた地図を見ながら大まかな捜索範囲が割り当てられる。
さらに集合時間と場所を決めてハンター達は散らばった。フェリーナはエルディン、来未結と行動を共にする。
酒場に立ち寄ったリカルドは給仕に袖の下を渡してこの辺りのことを訊ねた。やり取りの中で教会が触れられる。
「そこら中に教会があれば、礼拝も楽になるってもんだ」
移住者の中には聖職者もいて、大小かなりの教会が存在するという。
表向きの情報が得られたところで路地裏へと向かう。次に路上生活者から世の中のドブくさい話を聞きだした。
「子供を攫って稼ぎにするような奴を知っていたら教えてくれ」
酒瓶を餌にして髭面の男の口を軽くしようとする。
多くて答えられないと笑う髭面の男。立ち去ろうとしたリカルドを待てと呼び止める。
「嘘つきが欲しいのは信頼さ。そういうとき医者や教師に化けることが多いな。でなけゃ教会の司祭とかさ。余程うまくやらねぇと化けの皮が剥がれるんだがよ」
リカルドは酒瓶を髭面の男に投げて路地裏から出て行く。魔導短伝話を取りだして知り得た情報を仲間に伝えるのだった。
「……あまり治安がいいとは言えない場所ですね」
マヘルは第七街区予定地を眺めて呟く。良いも悪いも雑多に煮込まれた闇鍋といった雰囲気だった。今来た道を少しだけ遡り、第六城壁門の衛兵に子供達の似顔絵を見てもらう。
「すまんが覚えていないね。見るからに怪しい者では無い限り、この通り素通りなのでね」
「見かけたら保護してソサエティの支部へ連絡をください」
次に探ったのは屋台だ。ボナンザが楽しみにしていたようなので、買い食いは絶対しただろう。
「何日か前に買いに来たね。この子たち」
「そ、そうなんですか?!」
何となくだが覚えている屋台の店主はいる。的外れな周辺を探していたのではないことがわかって、マヘルは安堵のため息をついた。
マヘルと同じく、レオンは第六城壁門の衛兵に子供達のことを訊いて回った。
これといった事実は得られなかったが、まもなく魔導短伝話がかかってる。仲間が屋台で子供達の目撃証言を得たという。
レオンも屋台を調べていくうちに子供達の足取りが掴めた。
(光と闇がやけに近い場所だな)
賑やかな通りから一歩路地裏に入ると社会の裏側が目に飛び込んでくる。どの街でもそういった部分はあるのだがこの周辺は露骨だった。
連絡がある度に目撃場所と日時を地図に描き込んでいく。そうやって少しずつ的が絞られていくのだった。
アクセルとフィオナは行動を共にしていた。
「こんな子達を見かけませんでしたか?」
アクセルが甘味屋台の主に似顔絵を見せる。
一時間が過ぎた頃、小腹が空いたので休憩をとることに。岩に腰かけて屋台で買ったハムチーズ挟みのクレープを頂く。
「子供達に帰ることが出来ぬ事態が起きたと仮定しよう。信仰深い者が真っ先に頼るのはどこかという話だ」
フィオナがこれまでに気づいたことを話しだす。
「トラブルに巻き込まれた場合、普通は騎士団や教会等へ逃げ込むハズ。なのに、連絡が一切無いと?」
「そうだ。普通の教会であれば、信者を無碍にすることはなかろう。ましてや子供だ。何かしらの使いがきていない状況がおかしい。拐かしの類であるなら今まで何の脅迫も来ておらんのも変な話であろう?」
これまでだけで三個所も教会を見かけている。これから先は教会発見を優先することに。深追いせず、場所の把握に努めるのだった。
ファリスはワンドなどの正体がばれそうな品を隠して教会を訪ねてみる。
「どうされたのですか?」
「友達とはぐれてしまったの。もしものときはここを目印にしていたの」
「それは大変ですね。よろしければ中へどうぞ」
「ありがとうですの」
助祭に導かれてファリスは教会の中へ。案内された食堂の椅子に座っているとお茶を用意してくれた。
少し探ったが建物に怪しい点はない。司祭も真面目。疑うのをやめたファリスはこの辺りの教会について訊ねてみた。
「由々しきことなのですが――」
中には邪教めいた教会もあるらしい。表向きは光の信仰を貫いているので困っているという。
窓から外を眺めて適当に演技し、ファリスは教会を立ち去るのだった。
「あの道具屋ならきっとピスティアが立ち寄ると思います」
重装馬・レドに跨がっていたフェリーナが指さす。すると彼女の肩に乗っていた梟のクロが飛び立って道具屋の庇に掴まる。
「そうですね。行ってみましょうか」
来未結はレドの手綱を引いて道具屋へ向かう。
「弟さんはこういうのが好きなんですね」
エルディンは棚に並んでいた鋏や玄翁を眺める。まもなく枕カバーを取りだし、柴犬のペテロに嗅がせた。
斧に近づいて小さく三回吠える。店内にピスティアはいたようだ。問題は野外なのだが、今日まで雨は降っていない。日が経っているので難しいが追跡してもらう。
一所をぐるぐると回るペテロ。エルディン、来未結、フェリーナが見つめていると、やがて歩きだす。
細い露地を二十メートル程進んだところで広い通りにでた。往来が激しくて、どうやらここまでのようである。
「この辺りに屋台はないようですね。弟達はきっと別の用事で通ったのでは? それさえわかれば」
フェリーナが広い通りを眺めながら考えを口にする。三人は待ちあわせの時間まで手がかりを探すのだった。
●
午後三時頃、全員が待ちあわせ場所に集まる。トランシーバーや魔導短伝話でやり取りしていたが改めて報告し合った。
子供達が目撃された場所や犬が嗅ぎつけた周囲を鑑みて捜索範囲が狭められる。多くのハンターが注目していたのは教会だ。
周辺に教会を名乗る施設は二個所存在する。一個所は非常にこぢんまりとしていて不可解な点は感じられない。
目標を一つに絞り、全員で疑わしき教会を目指す。
「教会の建物は大昔から建っているらしいな。やばい商売に手を染めている噂もある」
リカルドがガントレットについていた血をハンカチで拭う。つい先程絡んできた気の荒い連中から教えてもらった情報である。
ファリスとマヘルが先行して教会を訪問した。
「どうされたのです?」
「祈りを捧げたいのです。お願いします」
玄関の鐘を鳴らすと中から助祭が現れる。
「……今日は敬虔な方が多いようですね。しばしお待ちを」
助祭がファリスとマヘルを礼拝堂まで案内すると再び玄関の鐘が鳴った。礼拝堂に二人を残して助祭は玄関へと戻る。
助祭が玄関の扉を開けるとたくさんの人が立っていた。アクセル、エルディン、フィオナ、来未結、そしてフェリーナだ。
「助祭様、あの……司祭様はいらっしゃいますでしょうか? 大事な話があるんです」
来未結は服装などから助祭と見抜く。
「司祭様はただ今出かけております。すぐには戻らないかと。どのようなご用件でしょうか?」
腰を屈めた助祭が来未結に微笑んだ。
「実は数名の子が行方不明になっているのです。ですが大の教会嫌いだった様でして。こちらに訪れてませんよね?」
アクセルは不安げな表情を浮かべて事情を説明する。話しが続いている間に、柴犬のペテロが助祭の足元をすり抜けて教会内へと飛び込んだ。
「ダメですよ、そんなことをしては」
追いかけて教会に立ち入ったエルディンがペテロを抱きかかえる。そして玄関付近に飾られていた聖人の像に目をやった。
「不勉強ですみませんが、私の知らない聖人の像ですね」
「司祭様が以前に住まわれていた地方の聖人様だとか」
「それはそれは。光の神よ、子供達をお守りください」
エルディンは祈りを捧げる。そのときリカルドとレオンがわざと遅れて教会にやってきた。
「どうだ。子供達は見つかったか?」
「中々趣がある教会だな」
二人の姿は助祭に威圧感を与える。
「すみません、先に信者の方を待たせていますので。四人のお子さんが早く見つかるとよいですね。こちらで何かわかれば連絡させて頂きます」
助祭は焦った様子で一同を追い返そうとした。
「我らはそのようなこと口にしておらんぞ」
フィオナが矛盾を喝破した。探している子供の数は伝えていないと。
「あの、いい加減出て行ってください!」
「最近教会の司祭様は神聖武器の携帯が義務付けられたとか! ですよね? 皆さん」
助祭は教会の中にいたエルディンを押しだそうとする。間に無理矢理入り込んだ来未結はシャインを発動させた。
薄暗に突如現れた目映い輝きに助祭の目が眩んだ。
「だめです! だめですー!!」
来未結は助祭に抱きついて動きを拘束。その間に他の者達は教会の中へ。フェリーナはエルディンが護衛していた。
礼拝堂に入るとファリスとマヘルの姿が見える。
「これを椅子の下で見つけましたの!」
埃だらけのファリスが持っていたのはブローチだ。
「それ、私がピスティアにあげたものです」
ファリスが駆け寄ってブローチを確かめる。
「ここ、足音が違うんです。下に空洞があるのでしょうか?」
マヘルが立つ床の周辺だけ足音が微妙に違う。ペテロがマヘルを中心に回りながら激しく何度も吠えた。
「弟さんのにおいがするようですね」
エルディンがペテロを落ち着かせるために頭と喉を撫でてあげる。
助祭が来未結を引きずるようにして礼拝堂内へやって来た。
「はいはい、無実なら無実で賠償金ぐらい幾らでも払ってやるから、大人しくしてもらおうか」
リカルドは銃口を助祭に向けて黙らせる。その間にレオンが床の一部を外して、隠し階段を発見した。
「おそらく」
「司祭はこの下だろうな」
アクセルとフィオナの意見に異論を挟む者はいない。
助祭に背格好が似ていたレオンが急遽変装することになった。
助祭に化けたレオンがランタンを片手に地下の階段へ。新たに囚われた子供役としてファリスも連れて行く。
「ちょうどいいところに。強情なガキ共でこいつら一口も食いもせん。ん? その娘はどうしたんだ?」
レオンは無言で近づいて司祭を気絶させる。落ちた鍵をファリスが拾って鉄扉の錠前を外した。
「無事なの?」
「ファリスさん?」
ランタンで地下室を照らすと四人の子供がいてファリスは安堵する。
全員立って歩けるというので一緒に階段を上っていく。レオンは礼拝堂まで上りきると肩に担いでいた司祭を床へと転がした。
フェリーナとピスティアが抱き合って喜び合う。他の子供達にもフェリーナは順に抱きしめてあげる。
子供達はエルディンと来未結が用意してくれた食べ物を大喜びで頂いた。
「この痣、どうしたんだ? こいつらに殴られたのか?」
子供達が正直に答えると、リカルドは司祭と助祭を起こして隣の部屋へと連れて行く。物音と銃声がした後で閉じられた扉が開いた。
床に転がる司祭と助祭は気絶したまま、それぞれの片足が赤く染まっている。
「憲兵に引き渡すときに拘束する手間が省けるだろ、まあいいや。治療費は俺の給料から差っ引いといてくれ」
そしてリカルドは子供達の頭を撫でながらこういった。司祭達に出された食べ物を口にしなかったのは正しい判断だったと。
●
来未結が重装馬で官憲に通報。宵の口の教会は憲兵で溢れかえった。
詳しい事情は後日となり、四人の子供は早めに開放される。ハンター達によってフェリーナと一緒に各家庭へと送り届けた。
教会の罪が暴かれるのはこれからだ。
発見された毒物は施しの食事に混ぜられていたに違いない。徐々に健康を害すように少量ずつ盛られていたのだろう。
夜遅いのでハンター全員がノート家に泊まらせてもらった。
「助けてくれてありがとう」
翌朝、四人の子供と親族達が見送ってくれる。ハンター一行は子供達が無事でよかったと話しながら転移門で帰路に就くのだった。
四人の子供が姿を消してから三日目の早朝。
ハンター一行は行方不明の一人、ピスティア・ノートの自宅を訪ねる。事前の連絡により、他の子の肉親や親しい者達が集められていた。
「まずは子供達の背格好や当日の服装を教えてもらえますか?」
レオン・フォイアロート(ka0829)は酷く落ち込んでいた子供達の両親に質問する。
(誘拐か、どっかに売り飛ばされてなきゃいいんだが)
リカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)はやり取りを眺めながら心の中で呟く。
「みなさん、仲が良かったんですよね。どこかにいくとは聞いてはいませんでしたか?」
「我にも聞かせてくれ」
マヘル・ハシバス(ka0440)とフィオナ・クラレント(ka4101)は別室の学友達に話しかける。
「学友のみなさん、朝早く大変でしたの」
ファリス(ka2853)はフェリーナ・ノートと一緒にお茶を運んだ。彼女は四人の子供と面識がある。今回の事件は他人事とは思えなかった。
「もしかしてあれかな」
クッキーを食べた男の子の記憶が蘇る。ボナンザが第七街区予定地が面白そうだといっていたのを。
「あたしも聞いたわ」
女の子にはその地の屋台料理に興味があると話していたらしい。
「あの、私も連れて行ってくれませんでしょうか?」
フェリーナはピスティアの姉である。エルディン(ka4144)は彼女の手を取ると瞳を見つめた。
「それは心強いです。是非妹さんが身につけていた品を貸して頂けませんでしょうか?」
「あ、あのピスティアは男の子です。枕カバーはどうでしょうか?」
「これは失礼。では弟さんの枕カバー、お願いします」
「少し待っていてくださいね。神父様」
長い黒髪を揺らしてフェリーナが枕カバーを持ってきてくれる。余計な臭いがつかないよう今はケースに仕舞っておく。
「来未さん、お願いして構いませんか?」
「わかりました。身代金等の要求がない以上私達から動くべき、です!」
エルディンに頼まれた来未 結(ka4610)は親達がいる部屋へ移動した。そして子供達の特徴を聞いて似顔絵を描く。焦る気持ちを抑えつつ、事件当日に着ていた服の襟元も反映させる。
四人の子供達が第七街区予定地へ向かったのはまず間違いなかった。
アクセル・ランパード(ka0448)とフィオナはフェリーナに頼んでピスティアの個室を見せてもらう。
「こちらはエクラ教のシンボルですね。祈りをかかしていないのでしょう」
「信仰心が厚いようだな。これがついている建造物が教会か。他にも違いはあるのか?」
「向こうの教会とは似て非なる物、ですね」
教会の建物は大抵石造りである。装飾はリアルブルーに比べると自由で聖人の像が飾られてることが多い。
シンボルは放射状に広がった五つの棘に半円が重なったような形をしていた。墓地の設置については様々なようである。
訪ねてから二時間後、ハンター一行はノート家を立ち去る。フェリーナを連れて第七街区予定地へと向かうのだった。
●
子供達が住む地区に一番近い第六城壁東門から第七街区予定地へと出た。
「担当の区分けはこれでいいだろう」
レオンが預かっていた地図を見ながら大まかな捜索範囲が割り当てられる。
さらに集合時間と場所を決めてハンター達は散らばった。フェリーナはエルディン、来未結と行動を共にする。
酒場に立ち寄ったリカルドは給仕に袖の下を渡してこの辺りのことを訊ねた。やり取りの中で教会が触れられる。
「そこら中に教会があれば、礼拝も楽になるってもんだ」
移住者の中には聖職者もいて、大小かなりの教会が存在するという。
表向きの情報が得られたところで路地裏へと向かう。次に路上生活者から世の中のドブくさい話を聞きだした。
「子供を攫って稼ぎにするような奴を知っていたら教えてくれ」
酒瓶を餌にして髭面の男の口を軽くしようとする。
多くて答えられないと笑う髭面の男。立ち去ろうとしたリカルドを待てと呼び止める。
「嘘つきが欲しいのは信頼さ。そういうとき医者や教師に化けることが多いな。でなけゃ教会の司祭とかさ。余程うまくやらねぇと化けの皮が剥がれるんだがよ」
リカルドは酒瓶を髭面の男に投げて路地裏から出て行く。魔導短伝話を取りだして知り得た情報を仲間に伝えるのだった。
「……あまり治安がいいとは言えない場所ですね」
マヘルは第七街区予定地を眺めて呟く。良いも悪いも雑多に煮込まれた闇鍋といった雰囲気だった。今来た道を少しだけ遡り、第六城壁門の衛兵に子供達の似顔絵を見てもらう。
「すまんが覚えていないね。見るからに怪しい者では無い限り、この通り素通りなのでね」
「見かけたら保護してソサエティの支部へ連絡をください」
次に探ったのは屋台だ。ボナンザが楽しみにしていたようなので、買い食いは絶対しただろう。
「何日か前に買いに来たね。この子たち」
「そ、そうなんですか?!」
何となくだが覚えている屋台の店主はいる。的外れな周辺を探していたのではないことがわかって、マヘルは安堵のため息をついた。
マヘルと同じく、レオンは第六城壁門の衛兵に子供達のことを訊いて回った。
これといった事実は得られなかったが、まもなく魔導短伝話がかかってる。仲間が屋台で子供達の目撃証言を得たという。
レオンも屋台を調べていくうちに子供達の足取りが掴めた。
(光と闇がやけに近い場所だな)
賑やかな通りから一歩路地裏に入ると社会の裏側が目に飛び込んでくる。どの街でもそういった部分はあるのだがこの周辺は露骨だった。
連絡がある度に目撃場所と日時を地図に描き込んでいく。そうやって少しずつ的が絞られていくのだった。
アクセルとフィオナは行動を共にしていた。
「こんな子達を見かけませんでしたか?」
アクセルが甘味屋台の主に似顔絵を見せる。
一時間が過ぎた頃、小腹が空いたので休憩をとることに。岩に腰かけて屋台で買ったハムチーズ挟みのクレープを頂く。
「子供達に帰ることが出来ぬ事態が起きたと仮定しよう。信仰深い者が真っ先に頼るのはどこかという話だ」
フィオナがこれまでに気づいたことを話しだす。
「トラブルに巻き込まれた場合、普通は騎士団や教会等へ逃げ込むハズ。なのに、連絡が一切無いと?」
「そうだ。普通の教会であれば、信者を無碍にすることはなかろう。ましてや子供だ。何かしらの使いがきていない状況がおかしい。拐かしの類であるなら今まで何の脅迫も来ておらんのも変な話であろう?」
これまでだけで三個所も教会を見かけている。これから先は教会発見を優先することに。深追いせず、場所の把握に努めるのだった。
ファリスはワンドなどの正体がばれそうな品を隠して教会を訪ねてみる。
「どうされたのですか?」
「友達とはぐれてしまったの。もしものときはここを目印にしていたの」
「それは大変ですね。よろしければ中へどうぞ」
「ありがとうですの」
助祭に導かれてファリスは教会の中へ。案内された食堂の椅子に座っているとお茶を用意してくれた。
少し探ったが建物に怪しい点はない。司祭も真面目。疑うのをやめたファリスはこの辺りの教会について訊ねてみた。
「由々しきことなのですが――」
中には邪教めいた教会もあるらしい。表向きは光の信仰を貫いているので困っているという。
窓から外を眺めて適当に演技し、ファリスは教会を立ち去るのだった。
「あの道具屋ならきっとピスティアが立ち寄ると思います」
重装馬・レドに跨がっていたフェリーナが指さす。すると彼女の肩に乗っていた梟のクロが飛び立って道具屋の庇に掴まる。
「そうですね。行ってみましょうか」
来未結はレドの手綱を引いて道具屋へ向かう。
「弟さんはこういうのが好きなんですね」
エルディンは棚に並んでいた鋏や玄翁を眺める。まもなく枕カバーを取りだし、柴犬のペテロに嗅がせた。
斧に近づいて小さく三回吠える。店内にピスティアはいたようだ。問題は野外なのだが、今日まで雨は降っていない。日が経っているので難しいが追跡してもらう。
一所をぐるぐると回るペテロ。エルディン、来未結、フェリーナが見つめていると、やがて歩きだす。
細い露地を二十メートル程進んだところで広い通りにでた。往来が激しくて、どうやらここまでのようである。
「この辺りに屋台はないようですね。弟達はきっと別の用事で通ったのでは? それさえわかれば」
フェリーナが広い通りを眺めながら考えを口にする。三人は待ちあわせの時間まで手がかりを探すのだった。
●
午後三時頃、全員が待ちあわせ場所に集まる。トランシーバーや魔導短伝話でやり取りしていたが改めて報告し合った。
子供達が目撃された場所や犬が嗅ぎつけた周囲を鑑みて捜索範囲が狭められる。多くのハンターが注目していたのは教会だ。
周辺に教会を名乗る施設は二個所存在する。一個所は非常にこぢんまりとしていて不可解な点は感じられない。
目標を一つに絞り、全員で疑わしき教会を目指す。
「教会の建物は大昔から建っているらしいな。やばい商売に手を染めている噂もある」
リカルドがガントレットについていた血をハンカチで拭う。つい先程絡んできた気の荒い連中から教えてもらった情報である。
ファリスとマヘルが先行して教会を訪問した。
「どうされたのです?」
「祈りを捧げたいのです。お願いします」
玄関の鐘を鳴らすと中から助祭が現れる。
「……今日は敬虔な方が多いようですね。しばしお待ちを」
助祭がファリスとマヘルを礼拝堂まで案内すると再び玄関の鐘が鳴った。礼拝堂に二人を残して助祭は玄関へと戻る。
助祭が玄関の扉を開けるとたくさんの人が立っていた。アクセル、エルディン、フィオナ、来未結、そしてフェリーナだ。
「助祭様、あの……司祭様はいらっしゃいますでしょうか? 大事な話があるんです」
来未結は服装などから助祭と見抜く。
「司祭様はただ今出かけております。すぐには戻らないかと。どのようなご用件でしょうか?」
腰を屈めた助祭が来未結に微笑んだ。
「実は数名の子が行方不明になっているのです。ですが大の教会嫌いだった様でして。こちらに訪れてませんよね?」
アクセルは不安げな表情を浮かべて事情を説明する。話しが続いている間に、柴犬のペテロが助祭の足元をすり抜けて教会内へと飛び込んだ。
「ダメですよ、そんなことをしては」
追いかけて教会に立ち入ったエルディンがペテロを抱きかかえる。そして玄関付近に飾られていた聖人の像に目をやった。
「不勉強ですみませんが、私の知らない聖人の像ですね」
「司祭様が以前に住まわれていた地方の聖人様だとか」
「それはそれは。光の神よ、子供達をお守りください」
エルディンは祈りを捧げる。そのときリカルドとレオンがわざと遅れて教会にやってきた。
「どうだ。子供達は見つかったか?」
「中々趣がある教会だな」
二人の姿は助祭に威圧感を与える。
「すみません、先に信者の方を待たせていますので。四人のお子さんが早く見つかるとよいですね。こちらで何かわかれば連絡させて頂きます」
助祭は焦った様子で一同を追い返そうとした。
「我らはそのようなこと口にしておらんぞ」
フィオナが矛盾を喝破した。探している子供の数は伝えていないと。
「あの、いい加減出て行ってください!」
「最近教会の司祭様は神聖武器の携帯が義務付けられたとか! ですよね? 皆さん」
助祭は教会の中にいたエルディンを押しだそうとする。間に無理矢理入り込んだ来未結はシャインを発動させた。
薄暗に突如現れた目映い輝きに助祭の目が眩んだ。
「だめです! だめですー!!」
来未結は助祭に抱きついて動きを拘束。その間に他の者達は教会の中へ。フェリーナはエルディンが護衛していた。
礼拝堂に入るとファリスとマヘルの姿が見える。
「これを椅子の下で見つけましたの!」
埃だらけのファリスが持っていたのはブローチだ。
「それ、私がピスティアにあげたものです」
ファリスが駆け寄ってブローチを確かめる。
「ここ、足音が違うんです。下に空洞があるのでしょうか?」
マヘルが立つ床の周辺だけ足音が微妙に違う。ペテロがマヘルを中心に回りながら激しく何度も吠えた。
「弟さんのにおいがするようですね」
エルディンがペテロを落ち着かせるために頭と喉を撫でてあげる。
助祭が来未結を引きずるようにして礼拝堂内へやって来た。
「はいはい、無実なら無実で賠償金ぐらい幾らでも払ってやるから、大人しくしてもらおうか」
リカルドは銃口を助祭に向けて黙らせる。その間にレオンが床の一部を外して、隠し階段を発見した。
「おそらく」
「司祭はこの下だろうな」
アクセルとフィオナの意見に異論を挟む者はいない。
助祭に背格好が似ていたレオンが急遽変装することになった。
助祭に化けたレオンがランタンを片手に地下の階段へ。新たに囚われた子供役としてファリスも連れて行く。
「ちょうどいいところに。強情なガキ共でこいつら一口も食いもせん。ん? その娘はどうしたんだ?」
レオンは無言で近づいて司祭を気絶させる。落ちた鍵をファリスが拾って鉄扉の錠前を外した。
「無事なの?」
「ファリスさん?」
ランタンで地下室を照らすと四人の子供がいてファリスは安堵する。
全員立って歩けるというので一緒に階段を上っていく。レオンは礼拝堂まで上りきると肩に担いでいた司祭を床へと転がした。
フェリーナとピスティアが抱き合って喜び合う。他の子供達にもフェリーナは順に抱きしめてあげる。
子供達はエルディンと来未結が用意してくれた食べ物を大喜びで頂いた。
「この痣、どうしたんだ? こいつらに殴られたのか?」
子供達が正直に答えると、リカルドは司祭と助祭を起こして隣の部屋へと連れて行く。物音と銃声がした後で閉じられた扉が開いた。
床に転がる司祭と助祭は気絶したまま、それぞれの片足が赤く染まっている。
「憲兵に引き渡すときに拘束する手間が省けるだろ、まあいいや。治療費は俺の給料から差っ引いといてくれ」
そしてリカルドは子供達の頭を撫でながらこういった。司祭達に出された食べ物を口にしなかったのは正しい判断だったと。
●
来未結が重装馬で官憲に通報。宵の口の教会は憲兵で溢れかえった。
詳しい事情は後日となり、四人の子供は早めに開放される。ハンター達によってフェリーナと一緒に各家庭へと送り届けた。
教会の罪が暴かれるのはこれからだ。
発見された毒物は施しの食事に混ぜられていたに違いない。徐々に健康を害すように少量ずつ盛られていたのだろう。
夜遅いのでハンター全員がノート家に泊まらせてもらった。
「助けてくれてありがとう」
翌朝、四人の子供と親族達が見送ってくれる。ハンター一行は子供達が無事でよかったと話しながら転移門で帰路に就くのだった。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 リカルド=フェアバーン(ka0356) 人間(リアルブルー)|32才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/06/04 23:05:02 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/02 00:46:41 |