ゲスト
(ka0000)
おじいさんとキノコ狩り
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/06/07 22:00
- 完成日
- 2015/06/11 08:14
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●ゴブリン討伐は口実?
ハンターズソサエティに立ち寄ったハンター達。依頼の報告を済ませていた彼らの肩を後ろから叩く者がいた。
「おー、ハンターさん方、ちょっと頼まれてほしいのじゃが」
声を掛けてきたのは、初老の男性だ。頭が完全に丸まったおじいさんだが、まだまだ元気。精力的にお仕事をしているからなのだろう。
とはいえ、そのおじいさん……ダリオ爺さんはほとほと困り果てていたようで、苦い顔をしてしまっている。
「実はの、近所の小さな山にゴブリンが移動してきたらしくての」
キノコ狩りなどで生計を立てているこのおじいさん。この日はいつもの山へと出かけようと考えていたのだが、その途中で山にゴブリンが立ち入ったという情報を耳にしていた。その為、山に行くのを断念したという。
その山は、じめじめと湿気が多くてキノコが生育するのに適しており、そこに生えているキノコを狩ってダリオ爺さんは生計を立てている。老い先短い自分は、いまさら他の仕事や、他の方法でのキノコ育成などできないというのだ。
ならばこそ、ダリオ爺さんはゴブリンが出るとしても山に向かいたいと考えるようだ。さすがにご老人1人をゴブリンのいる山には行かせられないと、ハンター達はダリオ爺さんに同行することにする。
「そうじゃ、せっかくだから、キノコ狩りも手伝ってもらえんかの?」
にやりと笑う爺さん。もしかしたら、彼にとってゴブリン狩りは口実で、実はキノコ狩りの人手が欲しいのではないかとすら、ハンター達は考えてしまう。
「今日はこのまま帰るでの、すまんが明日の朝、改めて頼むぞい」
日も暮れかけている。爺さんは手を上げ、外へと出ていってしまった。
ダリオ爺さんにまんまとはめられた気すらするハンター達ではあったが、下手すると1人で山へ登りかねない。爺さんに同行する為にも、その日はこの集落で一夜を明かすことにしたのだった。
ハンターズソサエティに立ち寄ったハンター達。依頼の報告を済ませていた彼らの肩を後ろから叩く者がいた。
「おー、ハンターさん方、ちょっと頼まれてほしいのじゃが」
声を掛けてきたのは、初老の男性だ。頭が完全に丸まったおじいさんだが、まだまだ元気。精力的にお仕事をしているからなのだろう。
とはいえ、そのおじいさん……ダリオ爺さんはほとほと困り果てていたようで、苦い顔をしてしまっている。
「実はの、近所の小さな山にゴブリンが移動してきたらしくての」
キノコ狩りなどで生計を立てているこのおじいさん。この日はいつもの山へと出かけようと考えていたのだが、その途中で山にゴブリンが立ち入ったという情報を耳にしていた。その為、山に行くのを断念したという。
その山は、じめじめと湿気が多くてキノコが生育するのに適しており、そこに生えているキノコを狩ってダリオ爺さんは生計を立てている。老い先短い自分は、いまさら他の仕事や、他の方法でのキノコ育成などできないというのだ。
ならばこそ、ダリオ爺さんはゴブリンが出るとしても山に向かいたいと考えるようだ。さすがにご老人1人をゴブリンのいる山には行かせられないと、ハンター達はダリオ爺さんに同行することにする。
「そうじゃ、せっかくだから、キノコ狩りも手伝ってもらえんかの?」
にやりと笑う爺さん。もしかしたら、彼にとってゴブリン狩りは口実で、実はキノコ狩りの人手が欲しいのではないかとすら、ハンター達は考えてしまう。
「今日はこのまま帰るでの、すまんが明日の朝、改めて頼むぞい」
日も暮れかけている。爺さんは手を上げ、外へと出ていってしまった。
ダリオ爺さんにまんまとはめられた気すらするハンター達ではあったが、下手すると1人で山へ登りかねない。爺さんに同行する為にも、その日はこの集落で一夜を明かすことにしたのだった。
リプレイ本文
●キノコ狩りに行くぞい
早朝。
まだ、日も昇り切っておらず、その上、しとしとと降り続く雨。辺りはかなり薄暗い。
「キノコ食べ放題と聞いて、飛んで来ましたよー」
まだまだ育ちざかりの最上 風(ka0891)は、朝からかなり元気だ。
また眠っている者も多い時間帯だが、ダリオ爺さんはすでにハンター達を待ち構えていた。
「今日は頼んだぞい」
「あわよくば、木の実とか山菜とかも狙えるかもと、下心満載ですよ?」
金欠な彼女は己の欲を率直にダリオへとぶつける。爺さんはそれを聞き、にっこりと笑う。
「農家の皆さん朝早すぎでしょう、常識的に考えて……」
水流崎トミヲ(ka4852)は眠い目をこすらせて、大きな欠伸をする。
(キノコ狩りだし朝早いし雨降りだしぃー)
声には出さないが、小鳥遊 時雨(ka4921)もテンションは急降下中だ。昨日、依頼を受けた時には、「ゴブリン退治? こないだゴブリンの大群と戦ったばっかだからお任せっ!」とドヤ顔で意気込んでいたものだが。
「まだ眠いけど頑張るぞー、おー」
腕を上げる時雨は、寝ぼけているようにも見えた。
昨日依頼をこなした後、その依頼の黒幕について語っていた、レウィル=スフェーン(ka4689)。さらなる依頼を受けるかどうか悩んでいたようだったが。
「まぁ、ゴブリンを退治した後に、きのこ狩りで骨休みするのも悪くないか」
そんなわけで、レウィルも爺さんの依頼を引き受けている。
Hollow(ka4450)も、こうして巡り合ったのも何かの縁だからと、助力を申し出ていた。
「……翁にお尋ねしますが、なぜこのような早朝から出発しなくてはならないのですか?」
外は生憎の雨。まして朝も早く、かなり薄暗い。少しでも明るい方がキノコを探しやすいのではと、Hollowは問う。
「ふん、ゴブリンなんぞに食わすキノコなど、1本1株とてないわい!」
「生業とも言えるキノコ採りを、ゴブリンに邪魔されるのは複雑な心境でしょうね」
声を荒げる爺さん。山にゴブリンが立ち入ったことがよほど気に入らないのだろう。先にキノコを狩っておきたいという気持ちが見て取れた。ややふくよかな体型が特徴的なエルフ、マルグリット・ピサン(ka4332)がそんな爺さんの心境を慮る。
「私達がお手伝いしますので、ゴブリンを懲らしめてしまいましょう!」
彼女の言葉に、爺さんはおおと満足そうに頷いていた。
「ほっほっほっ、ではゆくぞい」
ハンターという護衛兼手伝い要因を得た爺さんは張り切っていた。
(やれやれ、これは体よくこき使わされそうかな?)
嘆息する、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)。その分、キノコを刈りつくして、ハンターの恐ろしさを教えてあげようと、彼女は考えるのである。
程なくダリオを含めたハンター達は雨具を着る。予め時雨が人数分オフィスへ手配してくれていたのだ。
出発のタイミング、アルトは自身の馬を用意し、爺さんへ乗るよう促す。
「軍馬だけど大人しい子だから、全力で走らせない限り大丈夫だと思う」
そこで、いやいやとトミヲが進み出る。
「ダリオ老は結構あれでしょ、農業慣れしてるんでしょ?」
確かに、毎日かなり歩いているダリオの足にはまだしっかりとした筋肉がついている。
「足腰強いと思うけど……背負って上げても、いいよ……」
頬を赤らめて屈む彼の眼鏡がキラリと光る。
(なういおにゃのこと同乗させる気はないから! 二人乗りで!)
「それじゃ、お願いするかの」
爺さんとしては楽ができればそれでよかったが。青年の本心を見透かした爺さんは、遠慮なくトミヲの馬へと乗るのである。
●群生地に向かうぞい!
出発したメンバー達。
明け方にどんよりした雲が空を覆っているとかなり暗く、視界が悪い。おまけに足元がぬかるんでいる。
その対策の為にと、クリスティン・エリューナク(ka3736)がLEDライトで正面を照らす。これは、敵に自分達の居場所を主張することでもある。
「キノコを敵に採られない様に、出来れば道中で討伐したいですの」
クリスティンの思惑通り、うまくこちらを見つけて襲い掛かってきてくれると早いのだが……。
風もやや眠そうにシャインを使ってロッドの先に光を灯し、周囲を照らし出す。
「ダリオさん、ダリオさん、ゴブリンはどこに出たのですか?」
「悪いが、詳しくは分からんのう……」
必死になって歩くトミヲの上で、首を傾げるダリオ爺さん。
その脇で、Hollowがゴブリンが出た場合について、綿密に仲間と相談を密に行っていた。
程なく、一行は山道へ入る。
林道の傾斜は緩く、さほど険しい道ではない。馬も問題なく通れそうだ。眠いと言い出した風を、馬に乗せてメンバー達は進む。
その飼い主であるアルトはやや先行し、上空を飛ぶ妖精にも力を借りてゴブリンの捜索に当たっている。
彼女はゴブリンの足跡が残っていないかと確認するが、残念ながらそれらしき跡を確認することができない。
また、レウィルも、木の上を伝って移動し、高所から索敵を行っている。キノコの群生地へと敵がたどり着く前に発見したいと、彼は望遠鏡を覗き込み、できる限り敵の姿を探し続ける。
護衛班メンバーへと視点を戻すと、時雨は捜索班2人からの連絡を待ちながら、アルトの馬の面倒をして、先へと進んでいる。
「地面もぬかるんでて足元泥だらけー。足跡とか残ってるかなっ?」
やはり彼女もぬかるむ足元へと目をやり、敵の行動が分かればと思っていたが、生憎発見には至れてはいないようだ。
マルグリットも鋭敏視覚を駆使して、敵を探す。捜索を行ってくれている2人が注意を払ってくれている。少しくらいは力になりたいと考えていたのだ。
「ダリオさん、ダリオさん、風に山歩きのコツとか極意とか奥義を伝授して下さい」
「あっ、私はキノコ講座受けたいですっ!」
確かに、いつゴブリンが現れるとも分からぬ状況。しかし、一行は和気藹々としながら進んでいたようだ。……1人を除いて。
「くく……っ! 僕のDT魔力がビンビン反応しているねえ!」
ダリオを背に乗せて歩いていたトミヲは、「そこだ!」とあちこちを指差していたが、敵影はない。自分以外の唯一の男性レウィルがいなくなったことで女性ばかりになった状況に、彼は少し居心地悪そうにしながら騒いでいたのである。
●すまんが頼むぞい!
林道から脇道へと足を踏み入れるハンター達。アルトの馬を木につないで木陰で休ませてから先へ進む。敵の遭遇の危険も高まることから、トミヲも背からダリオを下ろしていたようだ。
その時、時雨の短伝話が鳴る。レウィルがゴブリンを発見したのだ。
彼が発見したのは林の中。どうやら5体一緒に行動しているらしい。
連絡を取り合いつつ合流するメンバー達。果たして、キノコの群生地にゴブリンが到着する前に遭遇することができるか……。
林の中を進むゴブリン達の行く手を遮るように、ハンターが現れる。アルトが敵の進行方向をメンバー達へと伝え、囲むように布陣したのだ。
にやりと微笑むアルトに、苛立つゴブリン達が棍棒を振り上げてきた。
「おぬし達頼んだぞい!」
ダリオの掛け声に合わせるかのように、メンバー達は敵を迎撃し始めた。
「老! 危ないからこっちに来たまえ!」
やや前に出ているダリオへ、トミヲが後ろへ下がるよう呼びかけた。彼はダリオの代わりに棍棒の殴打を受けてしまう。
「ときめいたらだめだぜ……?」
「……何言っておるのじゃ」
頬を赤らめるトミヲは、きっと戦闘中だということを忘れているに違いない。
それでも、彼は青白いガスを宙へと作り出し、ゴブリン達を包み込む。
「僕の溜まりきったDT魔力が大! 爆! 発! ……爆煙!」
数体のゴブリンは気を失い、倒れてしまったようだ。
立ったままのゴブリン目がけ、集中したマルグリットが両手で持つワンドを差し向けると、魔力で集めた水を球状にして目の前のゴブリンへと叩き付けた。
ゴブリンもただ攻撃を受けているだけではない。力で持って叩きつける棍棒の威力は、一般人ではとても耐えられない一撃だ。
時雨は一度殴られながらも、敵をきっと見据える。
「がんがんばしばし倒しちゃうよー!」
時雨は伝家の宝刀……愛用のハリセンを握りしめ、勢いよく殴ってきた敵へと振るう。スパーンという衝撃音が林の中に響き渡った。
中央に位置取るダリオを守るように、メンバー達は壁をなし、正面のゴブリンの攻撃に備える。
風はダリオを守るべく、その体を光で包み込む。プロテクションのスキルは、多少殴られたくらいではびくともしない程の力を爺さんへと与えた。
クリスティンも、ダリオを守るメンバーに近づくゴブリン目がけ、輝く光の弾を飛ばす。光に焼かれた敵は、叫び声を上げてぬかるみの中へ伏してしまう。
逆サイドにいたHollowも棍棒を叩きつけてくる敵へ、カービン銃を突き付ける。放たれる号砲はゴブリンの頭を穿ち、絶命させた。
しかし、眠っていたゴブリンが起き上がってきていた。力任せに叩きつけるゴブリンの棍棒は確かに痛手となる一撃ではある。
回り込まれたゴブリンの殴打を食らったマルグリットがマテリアルヒーリングのスキルを行使すれば、その傷は瞬く間に癒えてしまう。
ハンターは全力でゴブリンへと応戦していく。1体、また1体と倒れるゴブリン。仲間を倒されてハンターに恐れをなし始める敵だが、ハンター達の包囲網が敵の逃亡を許さない。
「逃げられたら山狩りしなくちゃけないしなぁ」
アルトは思う。この場でゴブリンは仕留めねばならないと。
クリスティンがLEDライトで敵を照らし出す。その居場所が明確になった敵。アルトが刀で斬り伏せ、さらにレウィルが接近した。
彼は乱暴に振るった一太刀の後に左手で殴りつけ、さらに腹を蹴りつける。最後のゴブリンは叫びすら上げず、林の中へと沈んでいったのだった。
「お怪我はありませんの?」
クリスティンがダリオと仲間達に呼びかける。ダリオに傷はほとんどなく、怪我を負った仲間も、彼女の放つ柔らかい光に包まれ、傷を瞬時に癒したのだった。
●さあ、キノコを刈るぞい!
無事、ゴブリンからキノコを守り切ったハンター達。
「それじゃ、遠慮なく刈ってほしいぞい!」
改めて、キノコを目にするハンター達。群生地というだけあって、様々な種類のキノコが生えている。
「キノコを採るのも、生えて居る所を見るのも初めてですの!」
綺麗なキノコや、地味なキノコ。面白い形のキノコ……。クリスティンは目を輝かせて、その一つ一つを眺めていく。
その中のキノコに、時雨は見覚えがあった。
「あれ、リアルブルーで見たことあるヤツ? ってことはもしかしてマツタケとかあるかも、あるかもっ!?」
雨が降っているというのに、時雨は飛び跳ねる。
「がっつり狩るぞー!」
泥まみれになるのをいとわずに、時雨は走り回る。メンバー達も、早速キノコを狩り始めた。
「マツタケとかトリュフ的な、高級キノコとかは無いのですか?」
風がキノコを取りつつ、値の張りそうなキノコを探す。とはいえ、なかなか生育しないからこその高級品。すぐに見つかるという状況ではなさそうだ。
「キノコってパスタの具にしてもいいし、スープやグラタンに入れてもよし、単純にソテーにしても美味しいですよね」
マルグリットは色々な料理に頭を巡らせる。どれも食べられるキノコということで、彼女はどんどん収穫していく。悲しいかな、雨のせいで匂いが分かりづらいのが残念だ。
アルトも、サバイバル知識を駆使してキノコを探す。
(駆け出しで赤貧だった頃は、こうして野山で食料をあさってたな……)
そんな感傷に浸っていた彼女だが、すぐに我を取り戻し、パルムや妖精にもキノコ探しを頼んでいた。
ふと、彼女の視線はパルムに注がれる。おなじキノコである彼らは共食いになるのではないかという素朴な疑問を抱いていた。
その疑問を払拭することなく、彼女はキノコを運ぶ。外で待機している馬が、多くのキノコを運んでくれることだろう。
「魔法使いになっても、キノコ探ししなくてはならないなんて……MURI」
トミヲもぶつくさ言いつつキノコを探す。1つ見つけたキノコの周辺を見て、大きな葉っぱをかき分けると……。そこには沢山のキノコが。なんだかんだ言って、彼はうまくキノコの収穫を進めていたようだ。
「ダリオ老! どうだい! これ! 僕のキノコは!」
「おお、実に色艶立派なエノキじゃのう」
Hollowやクリスティンは、うんうん頷くダリオの指示を受けつつ、キノコを刈る。生えやすい場所、そして、毒キノコと食用キノコの違いなど、その全てを理解するには時間は足らなかったが、参考にはなったようだ。
「……なるほど、良い勉強になりますね。やはり、素人が簡単に手を出すものではないのでしょうか?」
「下手に食べると、命にかかわるからのう」
「この、毒々しくて華やかなキノコは食べられますか?」
食用キノコばかりが生えているにも関わらず、風は如何にも怪しい色のキノコばかりを採集してきていた。
「あっ、そのキノコは知ってるよ! 食べられるやつだ」
レウィルがその1つを手に取る。
「半日くらい笑いが止まらなくなったり、幻覚見たりしたけど死ななかったから、食べられるよ」
ダリオは思わず、戦慄する。それを毒キノコと呼ぶのじゃと呟いて。もちろん、そのキノコの山はカゴから除外する。
「おぬし、毒キノコの採集だけならわしを上回るかもしれんな……」
「……あぁ、貴重な山の恵みが……」
レウィルはそれを少し残念そうに眺めていた。
ある程度キノコが採れたタイミングで、ダリオ爺さんがにかっと笑う。
「どれ、キノコ料理でも振る舞ってやろうかの」
雨を凌げる物陰へ移動したダリオは火を起こし、朝食代わりにとキノコを焼いていく。
「えー、現物支給じゃないのー!?」
「戻ったら分けてやるでの」
風やアルトは晴れやかな顔をする。キノコがもらえるとあって嬉しそうだ。
さて、キノコを焼く爺さん。その手際は実に見事だ。
その焼いているキノコを見て、レウィルが叫ぶ。
「あっ、ダリオさん、毒キノコです! これは毒キノコですよ!」
彼が指差しているのは、シイタケだ。
「食べた瞬間、僕の舌に全力で喧嘩を売ってくる怨敵です、間違いありません!!」
しかしながら、風は塩で味付けされたシイタケに舌鼓を打ち、これでもかと書き込むように食べていた。そのキノコは香ばしく、歯ごたえがあって実に美味しい。
降り続く雨。しかしながら、キノコを守り切ったハンターも、爺さんも、その表情はとても晴れやかだった。
早朝。
まだ、日も昇り切っておらず、その上、しとしとと降り続く雨。辺りはかなり薄暗い。
「キノコ食べ放題と聞いて、飛んで来ましたよー」
まだまだ育ちざかりの最上 風(ka0891)は、朝からかなり元気だ。
また眠っている者も多い時間帯だが、ダリオ爺さんはすでにハンター達を待ち構えていた。
「今日は頼んだぞい」
「あわよくば、木の実とか山菜とかも狙えるかもと、下心満載ですよ?」
金欠な彼女は己の欲を率直にダリオへとぶつける。爺さんはそれを聞き、にっこりと笑う。
「農家の皆さん朝早すぎでしょう、常識的に考えて……」
水流崎トミヲ(ka4852)は眠い目をこすらせて、大きな欠伸をする。
(キノコ狩りだし朝早いし雨降りだしぃー)
声には出さないが、小鳥遊 時雨(ka4921)もテンションは急降下中だ。昨日、依頼を受けた時には、「ゴブリン退治? こないだゴブリンの大群と戦ったばっかだからお任せっ!」とドヤ顔で意気込んでいたものだが。
「まだ眠いけど頑張るぞー、おー」
腕を上げる時雨は、寝ぼけているようにも見えた。
昨日依頼をこなした後、その依頼の黒幕について語っていた、レウィル=スフェーン(ka4689)。さらなる依頼を受けるかどうか悩んでいたようだったが。
「まぁ、ゴブリンを退治した後に、きのこ狩りで骨休みするのも悪くないか」
そんなわけで、レウィルも爺さんの依頼を引き受けている。
Hollow(ka4450)も、こうして巡り合ったのも何かの縁だからと、助力を申し出ていた。
「……翁にお尋ねしますが、なぜこのような早朝から出発しなくてはならないのですか?」
外は生憎の雨。まして朝も早く、かなり薄暗い。少しでも明るい方がキノコを探しやすいのではと、Hollowは問う。
「ふん、ゴブリンなんぞに食わすキノコなど、1本1株とてないわい!」
「生業とも言えるキノコ採りを、ゴブリンに邪魔されるのは複雑な心境でしょうね」
声を荒げる爺さん。山にゴブリンが立ち入ったことがよほど気に入らないのだろう。先にキノコを狩っておきたいという気持ちが見て取れた。ややふくよかな体型が特徴的なエルフ、マルグリット・ピサン(ka4332)がそんな爺さんの心境を慮る。
「私達がお手伝いしますので、ゴブリンを懲らしめてしまいましょう!」
彼女の言葉に、爺さんはおおと満足そうに頷いていた。
「ほっほっほっ、ではゆくぞい」
ハンターという護衛兼手伝い要因を得た爺さんは張り切っていた。
(やれやれ、これは体よくこき使わされそうかな?)
嘆息する、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)。その分、キノコを刈りつくして、ハンターの恐ろしさを教えてあげようと、彼女は考えるのである。
程なくダリオを含めたハンター達は雨具を着る。予め時雨が人数分オフィスへ手配してくれていたのだ。
出発のタイミング、アルトは自身の馬を用意し、爺さんへ乗るよう促す。
「軍馬だけど大人しい子だから、全力で走らせない限り大丈夫だと思う」
そこで、いやいやとトミヲが進み出る。
「ダリオ老は結構あれでしょ、農業慣れしてるんでしょ?」
確かに、毎日かなり歩いているダリオの足にはまだしっかりとした筋肉がついている。
「足腰強いと思うけど……背負って上げても、いいよ……」
頬を赤らめて屈む彼の眼鏡がキラリと光る。
(なういおにゃのこと同乗させる気はないから! 二人乗りで!)
「それじゃ、お願いするかの」
爺さんとしては楽ができればそれでよかったが。青年の本心を見透かした爺さんは、遠慮なくトミヲの馬へと乗るのである。
●群生地に向かうぞい!
出発したメンバー達。
明け方にどんよりした雲が空を覆っているとかなり暗く、視界が悪い。おまけに足元がぬかるんでいる。
その対策の為にと、クリスティン・エリューナク(ka3736)がLEDライトで正面を照らす。これは、敵に自分達の居場所を主張することでもある。
「キノコを敵に採られない様に、出来れば道中で討伐したいですの」
クリスティンの思惑通り、うまくこちらを見つけて襲い掛かってきてくれると早いのだが……。
風もやや眠そうにシャインを使ってロッドの先に光を灯し、周囲を照らし出す。
「ダリオさん、ダリオさん、ゴブリンはどこに出たのですか?」
「悪いが、詳しくは分からんのう……」
必死になって歩くトミヲの上で、首を傾げるダリオ爺さん。
その脇で、Hollowがゴブリンが出た場合について、綿密に仲間と相談を密に行っていた。
程なく、一行は山道へ入る。
林道の傾斜は緩く、さほど険しい道ではない。馬も問題なく通れそうだ。眠いと言い出した風を、馬に乗せてメンバー達は進む。
その飼い主であるアルトはやや先行し、上空を飛ぶ妖精にも力を借りてゴブリンの捜索に当たっている。
彼女はゴブリンの足跡が残っていないかと確認するが、残念ながらそれらしき跡を確認することができない。
また、レウィルも、木の上を伝って移動し、高所から索敵を行っている。キノコの群生地へと敵がたどり着く前に発見したいと、彼は望遠鏡を覗き込み、できる限り敵の姿を探し続ける。
護衛班メンバーへと視点を戻すと、時雨は捜索班2人からの連絡を待ちながら、アルトの馬の面倒をして、先へと進んでいる。
「地面もぬかるんでて足元泥だらけー。足跡とか残ってるかなっ?」
やはり彼女もぬかるむ足元へと目をやり、敵の行動が分かればと思っていたが、生憎発見には至れてはいないようだ。
マルグリットも鋭敏視覚を駆使して、敵を探す。捜索を行ってくれている2人が注意を払ってくれている。少しくらいは力になりたいと考えていたのだ。
「ダリオさん、ダリオさん、風に山歩きのコツとか極意とか奥義を伝授して下さい」
「あっ、私はキノコ講座受けたいですっ!」
確かに、いつゴブリンが現れるとも分からぬ状況。しかし、一行は和気藹々としながら進んでいたようだ。……1人を除いて。
「くく……っ! 僕のDT魔力がビンビン反応しているねえ!」
ダリオを背に乗せて歩いていたトミヲは、「そこだ!」とあちこちを指差していたが、敵影はない。自分以外の唯一の男性レウィルがいなくなったことで女性ばかりになった状況に、彼は少し居心地悪そうにしながら騒いでいたのである。
●すまんが頼むぞい!
林道から脇道へと足を踏み入れるハンター達。アルトの馬を木につないで木陰で休ませてから先へ進む。敵の遭遇の危険も高まることから、トミヲも背からダリオを下ろしていたようだ。
その時、時雨の短伝話が鳴る。レウィルがゴブリンを発見したのだ。
彼が発見したのは林の中。どうやら5体一緒に行動しているらしい。
連絡を取り合いつつ合流するメンバー達。果たして、キノコの群生地にゴブリンが到着する前に遭遇することができるか……。
林の中を進むゴブリン達の行く手を遮るように、ハンターが現れる。アルトが敵の進行方向をメンバー達へと伝え、囲むように布陣したのだ。
にやりと微笑むアルトに、苛立つゴブリン達が棍棒を振り上げてきた。
「おぬし達頼んだぞい!」
ダリオの掛け声に合わせるかのように、メンバー達は敵を迎撃し始めた。
「老! 危ないからこっちに来たまえ!」
やや前に出ているダリオへ、トミヲが後ろへ下がるよう呼びかけた。彼はダリオの代わりに棍棒の殴打を受けてしまう。
「ときめいたらだめだぜ……?」
「……何言っておるのじゃ」
頬を赤らめるトミヲは、きっと戦闘中だということを忘れているに違いない。
それでも、彼は青白いガスを宙へと作り出し、ゴブリン達を包み込む。
「僕の溜まりきったDT魔力が大! 爆! 発! ……爆煙!」
数体のゴブリンは気を失い、倒れてしまったようだ。
立ったままのゴブリン目がけ、集中したマルグリットが両手で持つワンドを差し向けると、魔力で集めた水を球状にして目の前のゴブリンへと叩き付けた。
ゴブリンもただ攻撃を受けているだけではない。力で持って叩きつける棍棒の威力は、一般人ではとても耐えられない一撃だ。
時雨は一度殴られながらも、敵をきっと見据える。
「がんがんばしばし倒しちゃうよー!」
時雨は伝家の宝刀……愛用のハリセンを握りしめ、勢いよく殴ってきた敵へと振るう。スパーンという衝撃音が林の中に響き渡った。
中央に位置取るダリオを守るように、メンバー達は壁をなし、正面のゴブリンの攻撃に備える。
風はダリオを守るべく、その体を光で包み込む。プロテクションのスキルは、多少殴られたくらいではびくともしない程の力を爺さんへと与えた。
クリスティンも、ダリオを守るメンバーに近づくゴブリン目がけ、輝く光の弾を飛ばす。光に焼かれた敵は、叫び声を上げてぬかるみの中へ伏してしまう。
逆サイドにいたHollowも棍棒を叩きつけてくる敵へ、カービン銃を突き付ける。放たれる号砲はゴブリンの頭を穿ち、絶命させた。
しかし、眠っていたゴブリンが起き上がってきていた。力任せに叩きつけるゴブリンの棍棒は確かに痛手となる一撃ではある。
回り込まれたゴブリンの殴打を食らったマルグリットがマテリアルヒーリングのスキルを行使すれば、その傷は瞬く間に癒えてしまう。
ハンターは全力でゴブリンへと応戦していく。1体、また1体と倒れるゴブリン。仲間を倒されてハンターに恐れをなし始める敵だが、ハンター達の包囲網が敵の逃亡を許さない。
「逃げられたら山狩りしなくちゃけないしなぁ」
アルトは思う。この場でゴブリンは仕留めねばならないと。
クリスティンがLEDライトで敵を照らし出す。その居場所が明確になった敵。アルトが刀で斬り伏せ、さらにレウィルが接近した。
彼は乱暴に振るった一太刀の後に左手で殴りつけ、さらに腹を蹴りつける。最後のゴブリンは叫びすら上げず、林の中へと沈んでいったのだった。
「お怪我はありませんの?」
クリスティンがダリオと仲間達に呼びかける。ダリオに傷はほとんどなく、怪我を負った仲間も、彼女の放つ柔らかい光に包まれ、傷を瞬時に癒したのだった。
●さあ、キノコを刈るぞい!
無事、ゴブリンからキノコを守り切ったハンター達。
「それじゃ、遠慮なく刈ってほしいぞい!」
改めて、キノコを目にするハンター達。群生地というだけあって、様々な種類のキノコが生えている。
「キノコを採るのも、生えて居る所を見るのも初めてですの!」
綺麗なキノコや、地味なキノコ。面白い形のキノコ……。クリスティンは目を輝かせて、その一つ一つを眺めていく。
その中のキノコに、時雨は見覚えがあった。
「あれ、リアルブルーで見たことあるヤツ? ってことはもしかしてマツタケとかあるかも、あるかもっ!?」
雨が降っているというのに、時雨は飛び跳ねる。
「がっつり狩るぞー!」
泥まみれになるのをいとわずに、時雨は走り回る。メンバー達も、早速キノコを狩り始めた。
「マツタケとかトリュフ的な、高級キノコとかは無いのですか?」
風がキノコを取りつつ、値の張りそうなキノコを探す。とはいえ、なかなか生育しないからこその高級品。すぐに見つかるという状況ではなさそうだ。
「キノコってパスタの具にしてもいいし、スープやグラタンに入れてもよし、単純にソテーにしても美味しいですよね」
マルグリットは色々な料理に頭を巡らせる。どれも食べられるキノコということで、彼女はどんどん収穫していく。悲しいかな、雨のせいで匂いが分かりづらいのが残念だ。
アルトも、サバイバル知識を駆使してキノコを探す。
(駆け出しで赤貧だった頃は、こうして野山で食料をあさってたな……)
そんな感傷に浸っていた彼女だが、すぐに我を取り戻し、パルムや妖精にもキノコ探しを頼んでいた。
ふと、彼女の視線はパルムに注がれる。おなじキノコである彼らは共食いになるのではないかという素朴な疑問を抱いていた。
その疑問を払拭することなく、彼女はキノコを運ぶ。外で待機している馬が、多くのキノコを運んでくれることだろう。
「魔法使いになっても、キノコ探ししなくてはならないなんて……MURI」
トミヲもぶつくさ言いつつキノコを探す。1つ見つけたキノコの周辺を見て、大きな葉っぱをかき分けると……。そこには沢山のキノコが。なんだかんだ言って、彼はうまくキノコの収穫を進めていたようだ。
「ダリオ老! どうだい! これ! 僕のキノコは!」
「おお、実に色艶立派なエノキじゃのう」
Hollowやクリスティンは、うんうん頷くダリオの指示を受けつつ、キノコを刈る。生えやすい場所、そして、毒キノコと食用キノコの違いなど、その全てを理解するには時間は足らなかったが、参考にはなったようだ。
「……なるほど、良い勉強になりますね。やはり、素人が簡単に手を出すものではないのでしょうか?」
「下手に食べると、命にかかわるからのう」
「この、毒々しくて華やかなキノコは食べられますか?」
食用キノコばかりが生えているにも関わらず、風は如何にも怪しい色のキノコばかりを採集してきていた。
「あっ、そのキノコは知ってるよ! 食べられるやつだ」
レウィルがその1つを手に取る。
「半日くらい笑いが止まらなくなったり、幻覚見たりしたけど死ななかったから、食べられるよ」
ダリオは思わず、戦慄する。それを毒キノコと呼ぶのじゃと呟いて。もちろん、そのキノコの山はカゴから除外する。
「おぬし、毒キノコの採集だけならわしを上回るかもしれんな……」
「……あぁ、貴重な山の恵みが……」
レウィルはそれを少し残念そうに眺めていた。
ある程度キノコが採れたタイミングで、ダリオ爺さんがにかっと笑う。
「どれ、キノコ料理でも振る舞ってやろうかの」
雨を凌げる物陰へ移動したダリオは火を起こし、朝食代わりにとキノコを焼いていく。
「えー、現物支給じゃないのー!?」
「戻ったら分けてやるでの」
風やアルトは晴れやかな顔をする。キノコがもらえるとあって嬉しそうだ。
さて、キノコを焼く爺さん。その手際は実に見事だ。
その焼いているキノコを見て、レウィルが叫ぶ。
「あっ、ダリオさん、毒キノコです! これは毒キノコですよ!」
彼が指差しているのは、シイタケだ。
「食べた瞬間、僕の舌に全力で喧嘩を売ってくる怨敵です、間違いありません!!」
しかしながら、風は塩で味付けされたシイタケに舌鼓を打ち、これでもかと書き込むように食べていた。そのキノコは香ばしく、歯ごたえがあって実に美味しい。
降り続く雨。しかしながら、キノコを守り切ったハンターも、爺さんも、その表情はとても晴れやかだった。
依頼結果
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相談卓 小鳥遊 時雨(ka4921) 人間(リアルブルー)|16才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2015/06/07 21:45:31 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/05 21:55:23 |