ゲスト
(ka0000)
【夜煌】花を探そう
マスター:四月朔日さくら

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/06/07 12:00
- 完成日
- 2015/06/14 08:03
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「そういえば、また実施されるそうですね。夜煌祭」
ガーディナの中で、そんなことを楽しそうにいうのはジーク・真田(kz0090)。もともと夜煌祭のリムネラ(kz0018)に惚れ込んでの現職と言うこともある為、酷くそわそわとしている。
「エエ……でも、前回よりモ、トッテモ規模は大きいデスよ」
リムネラも笑顔で応じた。……ほんの少しの空元気が混じっているのは、彼女の思い詰める性質もあってだろう。
「でもそんなに大規模にもなると、仕度も大変でしょう?」
問われて、リムネラは頷く。
辺境全域で、巫女が行う――となれば、それは規模もさることながらやるべきことも多いわけで。
同盟の商人たちの手伝いもあるといっても、やること自体は山積みだ。
「僕……手伝えること、ありませんかね」
ジークは問う。
「え?」
リムネラが目をぱちくりさせると、ジークは嬉しそうに笑った。
「リムネラさんの潜在的なファンは多いんですよ。それに聖地奪還がなせたことによる夜煌祭ですから、その勝利がたとえ辛勝であっても祝勝会というものをしたくなるものなんです。特にハンターの人は、けっこうお祭り好きも多いですからね」
なるほど、言われてみればもっともな話だ。
「ジャア、お願いしたいんですケレド……花を、探してクレマスカ?」
大規模な祭りになるので、捧げ物としても使われる花の量が多いのだという。リゼリオで買い占めるわけにも行かないので、近くの花畑などをリサーチして欲しいのだという。
「……花ですね! わかりました!」
ジークは頷くと、さっそくハンターズソサエティへの依頼文を書き始めた。
「そういえば、また実施されるそうですね。夜煌祭」
ガーディナの中で、そんなことを楽しそうにいうのはジーク・真田(kz0090)。もともと夜煌祭のリムネラ(kz0018)に惚れ込んでの現職と言うこともある為、酷くそわそわとしている。
「エエ……でも、前回よりモ、トッテモ規模は大きいデスよ」
リムネラも笑顔で応じた。……ほんの少しの空元気が混じっているのは、彼女の思い詰める性質もあってだろう。
「でもそんなに大規模にもなると、仕度も大変でしょう?」
問われて、リムネラは頷く。
辺境全域で、巫女が行う――となれば、それは規模もさることながらやるべきことも多いわけで。
同盟の商人たちの手伝いもあるといっても、やること自体は山積みだ。
「僕……手伝えること、ありませんかね」
ジークは問う。
「え?」
リムネラが目をぱちくりさせると、ジークは嬉しそうに笑った。
「リムネラさんの潜在的なファンは多いんですよ。それに聖地奪還がなせたことによる夜煌祭ですから、その勝利がたとえ辛勝であっても祝勝会というものをしたくなるものなんです。特にハンターの人は、けっこうお祭り好きも多いですからね」
なるほど、言われてみればもっともな話だ。
「ジャア、お願いしたいんですケレド……花を、探してクレマスカ?」
大規模な祭りになるので、捧げ物としても使われる花の量が多いのだという。リゼリオで買い占めるわけにも行かないので、近くの花畑などをリサーチして欲しいのだという。
「……花ですね! わかりました!」
ジークは頷くと、さっそくハンターズソサエティへの依頼文を書き始めた。
リプレイ本文
●
(お花畑探し、ですか……ふふ、お花は大好きですわ!)
依頼の話に飛びついたのは八人のハンターたち。立場も身分もばらばらだが、だいたいにおいて冒頭のロジー・ビィ(ka0296)のような考えを抱いているのだった。
「ねえ、今の時期に咲く花はどんなお花? 頑張って、た~くさんのお花、見つけ出すですのー」
パルムのパルパルと一緒に笑っているのはエルフの少女チョココ(ka2449)。以前にリムネラ(kz0018)とも面識があったこともあって、彼女の頼みとあらばという感じにぐっと拳を握りしめている。
ガーディナメンバーも少なくない。カミーユ・鏑木(ka2479)もそんな一人で、今年はひときわ大規模になると言われている夜煌祭、そして巫女でありリーダーであるリムネラの為にもユニオンのメンバーとしてがんばらないと、と意気込んでいる。
「さぁ皆、頑張りましょう♪」
そう言ってウィンクをする彼……いや彼女……まあとにかくカミーユは、なんだかとても楽しそうにしていた。
「花……花ですか。私の部族では仕留めた動物とかを捧げていたので、祭りに花という発想はなかったです」
花より団子っぽい言葉を漏らすのはミネット・ベアール(ka3282)。狩猟部族の出身としては、そう言う発想がまずなかったのだろう。大きな瞳をくりくりと動かして、そして笑うのだ。
「少しでもお手伝い出来るよう、頑張りますねっ! でも、美味しそうなお花畑……なかなか見つかりませんね」
彼女のなかで採ることはすなわち食べることに直結している。つまり、今回の花たちも、おそらくはそう言うことなのだろう。あえてそれ以上追求しないのは、仲間たちの良心と言うところだろうか。
「でも、夜煌祭のお花って、どんな風に使われるんだろう? ボクたちが見つけたお花も、誰かの心をしあわせにしてくれるのなら、いいな」
柔らかな言葉遣いでそんなことを呟きながら、セツァルリヒト(ka3807)はふんわりと微笑んだ。彼に限ったことではないけれど、幼い姿をしていてもハンターには歪虚を倒すだけの能力がある。覚醒者が一目置かれるのもそこにあるのだから、少年少女だからといってばかにすることは出来ない。彼らが見てきた世界は、非常に厳しいものなのだから。
以前依頼で知り合ったというファン・リーエ(ka4772)とヴァレス・デュノフガリオ(ka4770)は今回ペアで参加だ。と言ってもファンがヴァレスを誘ったというていをとっているのだが――ヴァレスのほうはそんな魂胆まではわかっていない。
「今回はありがとうな、誘いに応じてくれて」
ファンとしてはヴァレスに息抜きをして貰いたくて、この依頼に誘ったのだが――
「こちらこそお誘いありがとうね」
そうやって微笑む青年は鈍い訳ではないのだろうが、そこまでは見抜いていないらしい。縁が出来たから依頼に誘われたと、純粋にそう信じている。
ファンの手にはバスケット。そしてさらにその傍らには、愛らしい少女の姿をした妖精の姿もある。『咲楽』という名前をつけているらしい。
「なるほど、花のことは花に、か」
妖精を連れているハンターはそう多い訳ではない。ヴァレスのみならずハンターたちは物珍しそうに妖精を見つめながら、ニコニコと笑った。
精霊の先導を受け、彼らは進む。目的地へと。
「……でも、出来ればお花畑はそれなりに残しておきたいから、いくつか見つけた方がいいですよね」
セツァルリヒトは事前に郊外に出ることの多いハンターや商人にも情報を聞いて回っていたのだ。綺麗な花畑を知らないかと、そう尋ねて。他のメンバーも、地図で調べたり、情報の収集をしたり、それぞれに活動していた。
「むやみやたらに探すよりも効率が上がるでしょうし」
というのはロジーの弁。
チョココは養蜂家の知恵も借りた。ミツバチが向かう先にはきっとはなもあるだろうから、と。
そんなわけで、ある程度候補は絞れてある。
リゼリオから歩いておよそ一時間ほどに、花畑が点在していることは依頼人でもあるジーク・真田(kz0090)からも聞いてはいたが――実際、郊外の丘からその様子を目にして、誰からともなくため息がこぼれた。
●
初夏という季節柄もあってか、あちらこちらに広がっているのは色とりどりの花、花、花。
土壌も肥沃なのだろう、鮮やかに咲き誇る花々に思わず声も出せずにいたが、
「素敵ですのー!」
チョココが目を輝かせてそう叫んだものだから、そこははっと皆が我に返る。
「花畑のほうも、適度に散乱しているかんじだから……いい場所を見つけたみたいね♪」
カミーユが口元を緩ませる。
一方ミネットも口元を緩ませているが、これは全くもってカミーユとは別の意味合いを含んでいるのは賢明なハンターならわかることだろう。
「どの花がおいしいですかねっ?」
意気込んで尋ねるミネットだが……いや、食用ではないからそこまではわからない。
「地図にある付近ですね。間違いないです」
マッパーも担当していたセシル・ディフィール(ka4073)が、そう言ってにっこりと微笑む。地図に効率の良いルートを細かに記してある為、夜煌祭のときに花を運ぶのには大変役にたつだろう。
「でも、よい日和でよかったです。とりあえず一度解散して、花の種類や量などを調べておきましょう。お昼頃にもう一度集まって、道すがらにあった野原でお昼をいただいましょうか」
セシルの提案は魅力的で、なにがしかの食糧を持ってきたメンバーたちはこぞって頷いた。やはりこういう依頼だからこそ、羽を伸ばすことも大事だと思うのだ。
●
「それにしても、花がいっぱいなのです……!」
チョココはパルパルにそう言いながら、花を見てとろけるように微笑む。特注の麦わら帽子を被ったパルパルのほうはわかっているのかいないのか、きょとんとした顔でチョココを見つめていた。
咲いている花は色とりどり。でもどれも自然に出来たものなのだろう、ふわふわと風に揺られてそよぐさまも酷く絵になっている。
「料理も勿論楽しみだけれど、この花と爽やかな風に囲まれると考えただけでもなんだか素敵ですわね」
ロジーが笑ってみせると、カミーユもくすりとほほえみながら頷いた。
「そうねぇ。ピクニックには本当、おあつらえ向きなシチュエーションよねぇ……少し遅い花見兼ピクニックって感じもいいわね♪」
大きなバスケットにはそれに見合うだけのご馳走も準備してあるらしい。女子力の高いカミーユである。
その一方で女子力がやや残念なミネットは、動物を見るときと同じ動体視力を活用しようとしたが……そもそも植物は動かないものであるから、はっきり言って、殆ど意味が無い。
加えて、口元からはよだれがこぼれ落ちかけている。正直な話、周囲からぜったいに心配される。いや、どん引きされる……? 周りにひとがいないのが、せめてもの救いだろう。
しかしそれは、別の危惧を生む可能性がある。すなわち、本当に食べてしまいかねないと言うことで。あらかじめ釘は刺されているから、まあ大丈夫――だと信じたい。
(綺麗な花……これが、夜煌祭で誰かの心をいやす物になれば、いいんだけれど)
一通り見て回ったセツァルリヒトはそんな感想を抱く。
今年の夜煌祭はひときわ大規模であるのだから、事前に準備するものも多かろう。花の種類や色、その他必要そうな情報を纏めてメモを取る。セシルも同様のことを行ないながら、気づけばもう昼食の時間になっていた。
●
「さぁ、お昼ご飯よ♪」
カミーユが大きなバスケットから取り出したのは、大きなレジャーシート。
「皆お腹減っていると思って、豪華なランチとドリンクを用意してきているわ」
そう言ってウィンクするカミーユ。聞けば酒も用意しているという用意周到ぶりには舌を巻かざるを得ない。
カミーユの準備してきたのは特製ローストビーフ〈お手製のハニーマスタードソース添え〉を筆頭に、ジューシーな薄切りのステーキ〈肉汁とワインを煮詰めたソースを添えて〉、トマトとチーズを添えたオニオンスライスサラダ〈和風ソース添え〉、そしてツナやポテトなどのサンドイッチの数々。
誰もがゴクリと息をのむのがわかった。こんな立派なランチは、そうそうお目にかかることもないだろう。
「チョココはデザートを用意してきたのですわー」
彼女のバスケットには蜂蜜とバターをふんだんに使ったマドレーヌと、チョココ特製ちょこっとチョコラスク。
その脇に置いてある植木鉢について尋ねてみると、一種につき一輪を根元からつんで鉢に移したのだという。地図に添えて提出するつもりらしい。
「野の花はありのままの姿が一番だと、思いますわ」
ぽつり呟く少女の言葉に、なるほどと頷くハンターたち。
「それにしても……カミーユの料理、とても美味しそう」
ロジーはさっそくアルコール飲料を片手に、頬をわずかに染めて微笑む。肉をあまり食べるたちではないが、見ているだけでも幸せになれそうな気がするのだ。
「一面のお花に囲まれて飲むアルコールは格別ですわ」
そんなことを言ってみせるロジーだが、まだ依頼途中なので飲み過ぎに出欲しいところである。ロジー、更に他の人のグラスが空いているときは継ぎ足してしまうところもるので、あまり無理強いをしてもいけないのだが。
一方、カミーユの料理に目を輝かせているのはミネット。
「こ、これっ、すっごく美味しそうです! 私にとってお花畑よりもお花畑が、今カミーユさんの腕の中に……!」
狩猟民族出身の為か、肉料理に目が釘付けになってしまうのは仕方ないものといえるのだろう。しかもどんどん食べて、なんて言われたら、ミネットは更に興奮してしまう。
「ありがとうございます! カミーユさんが狩猟神『グチャラ=ゲチャラ』に見えてきました……是非とも崇めます」
邪神めいたその名前を崇めているらしいが、彼女の信仰が気になるところである。
食事を持ってきていないのはセツァルリヒトも同様だが、彼はカミーユにサンドイッチをいくらかわけて貰いそれをのんびりと食す。飲み物は紅茶を持参していたので、それを飲みながらの優雅な食事といったかんじだ。
「花を見ながら、食事をするなんてとても素敵ですね。心が豊かになる気がします」
少年の言葉に、誰もが心洗われる。
「紅茶ならこちらにもありますよ」
セシルが微笑みながら、魔法瓶と茶葉を取り出す。ここで淹れるつもりで準備してきたらしい。
「可愛らしい花が多いですね。クリンソウを見つけましたよ。花弁がハート型に見えて、それが何とも可愛らしいんです」
サンプルとばかりに一輪つんできたものを周囲に見せれば、おおっと周囲のハンターたちも声を上げる。なるほどこれはたしかに可愛らしい。
「そういえば、故郷の食べものを作ってきたので紹介しよう」
東方出身のファンが取り出したもの――それは、おにぎり。
「あ、おにぎりだね。食べてもいいのかな」
目を輝かせて、ヴァレスは一つそれを手に取る。
「え……知ってるの?」
ヴァレスの反応に少し驚いたが、
「リアルブルーにも同じような料理もあって、よく作られていてね」
しかしその言葉を聞いて、ファンは何とも言えない表情を浮かべている。でもその表情の理由がわからなくて、青年は首をかしげるばかり。
「……なあ、他に何かないかい? その、私で役に立てそうなこと、とか」
僅かなためらいのあとに、ファンは問う。すると、
「あ、そうだ。折角ならうちで働いてみない? 茶店を開いたばかりで、人手を探してたんだ♪」
「茶店……というと、お茶を飲むところ、だよね?」
「うん。そういえばどこに住んでるのかな」
ヴァレスの問いに、ファンは首を小さく横に振る。
「知っての通りと右方から出てきたばかりで、宿暮らしの根無し草さ」
「なら、住み込みはどうかな? 部屋も空いてるし、働くなら都合がいい」
「……いいのか?」
言葉少なに尋ねると、ヴァレスはにっこりと頷いた。
「勿論、リーエなら大歓迎するよ♪」
その言葉の根拠は以前の依頼でみた才覚や誠実さ――そんなものが彼に響いたかららしい。ファンも、ヴァレスの人となりは一応理解しているつもりだ。
「変わった男だね、君は。とりあえず試験的に雇うといい。あとは働き次第で判断してくれ」
「あいよ、それじゃあよろしくね♪」
いいながら、二人はおにぎりにかぶりつく。二人の関係はなかなか面白いことになりそうだ。
●
「でも、何とも贅沢なひとときですね」
そう呟いたのはセシルだ。ここのところ休む間もなく大規模な戦闘の連続だったから、いっそう戸惑うと言うことなのかも知れないが――それでも、この平穏な時間を取り戻す為に戦ってきたのだ。これがひとときのものであるかも知れないけれど、「変えていきたい」という強い意志を彼らは持ち合わせている。
きっとそれはいつか実現するだろう。少しずつでもそれに近づけばいいのだ。
やることはまだまだたくさんある。
けれど、それを実行しようという意志があれば、きっと良い方向に転がっていく。
夜煌祭も、そんな一つなのだから。
「――なんだか祭りも楽しみですね」
誰からともなくこぼれた言葉。
ハンターたちはそれが成功するようにと強く祈るのだった。
(お花畑探し、ですか……ふふ、お花は大好きですわ!)
依頼の話に飛びついたのは八人のハンターたち。立場も身分もばらばらだが、だいたいにおいて冒頭のロジー・ビィ(ka0296)のような考えを抱いているのだった。
「ねえ、今の時期に咲く花はどんなお花? 頑張って、た~くさんのお花、見つけ出すですのー」
パルムのパルパルと一緒に笑っているのはエルフの少女チョココ(ka2449)。以前にリムネラ(kz0018)とも面識があったこともあって、彼女の頼みとあらばという感じにぐっと拳を握りしめている。
ガーディナメンバーも少なくない。カミーユ・鏑木(ka2479)もそんな一人で、今年はひときわ大規模になると言われている夜煌祭、そして巫女でありリーダーであるリムネラの為にもユニオンのメンバーとしてがんばらないと、と意気込んでいる。
「さぁ皆、頑張りましょう♪」
そう言ってウィンクをする彼……いや彼女……まあとにかくカミーユは、なんだかとても楽しそうにしていた。
「花……花ですか。私の部族では仕留めた動物とかを捧げていたので、祭りに花という発想はなかったです」
花より団子っぽい言葉を漏らすのはミネット・ベアール(ka3282)。狩猟部族の出身としては、そう言う発想がまずなかったのだろう。大きな瞳をくりくりと動かして、そして笑うのだ。
「少しでもお手伝い出来るよう、頑張りますねっ! でも、美味しそうなお花畑……なかなか見つかりませんね」
彼女のなかで採ることはすなわち食べることに直結している。つまり、今回の花たちも、おそらくはそう言うことなのだろう。あえてそれ以上追求しないのは、仲間たちの良心と言うところだろうか。
「でも、夜煌祭のお花って、どんな風に使われるんだろう? ボクたちが見つけたお花も、誰かの心をしあわせにしてくれるのなら、いいな」
柔らかな言葉遣いでそんなことを呟きながら、セツァルリヒト(ka3807)はふんわりと微笑んだ。彼に限ったことではないけれど、幼い姿をしていてもハンターには歪虚を倒すだけの能力がある。覚醒者が一目置かれるのもそこにあるのだから、少年少女だからといってばかにすることは出来ない。彼らが見てきた世界は、非常に厳しいものなのだから。
以前依頼で知り合ったというファン・リーエ(ka4772)とヴァレス・デュノフガリオ(ka4770)は今回ペアで参加だ。と言ってもファンがヴァレスを誘ったというていをとっているのだが――ヴァレスのほうはそんな魂胆まではわかっていない。
「今回はありがとうな、誘いに応じてくれて」
ファンとしてはヴァレスに息抜きをして貰いたくて、この依頼に誘ったのだが――
「こちらこそお誘いありがとうね」
そうやって微笑む青年は鈍い訳ではないのだろうが、そこまでは見抜いていないらしい。縁が出来たから依頼に誘われたと、純粋にそう信じている。
ファンの手にはバスケット。そしてさらにその傍らには、愛らしい少女の姿をした妖精の姿もある。『咲楽』という名前をつけているらしい。
「なるほど、花のことは花に、か」
妖精を連れているハンターはそう多い訳ではない。ヴァレスのみならずハンターたちは物珍しそうに妖精を見つめながら、ニコニコと笑った。
精霊の先導を受け、彼らは進む。目的地へと。
「……でも、出来ればお花畑はそれなりに残しておきたいから、いくつか見つけた方がいいですよね」
セツァルリヒトは事前に郊外に出ることの多いハンターや商人にも情報を聞いて回っていたのだ。綺麗な花畑を知らないかと、そう尋ねて。他のメンバーも、地図で調べたり、情報の収集をしたり、それぞれに活動していた。
「むやみやたらに探すよりも効率が上がるでしょうし」
というのはロジーの弁。
チョココは養蜂家の知恵も借りた。ミツバチが向かう先にはきっとはなもあるだろうから、と。
そんなわけで、ある程度候補は絞れてある。
リゼリオから歩いておよそ一時間ほどに、花畑が点在していることは依頼人でもあるジーク・真田(kz0090)からも聞いてはいたが――実際、郊外の丘からその様子を目にして、誰からともなくため息がこぼれた。
●
初夏という季節柄もあってか、あちらこちらに広がっているのは色とりどりの花、花、花。
土壌も肥沃なのだろう、鮮やかに咲き誇る花々に思わず声も出せずにいたが、
「素敵ですのー!」
チョココが目を輝かせてそう叫んだものだから、そこははっと皆が我に返る。
「花畑のほうも、適度に散乱しているかんじだから……いい場所を見つけたみたいね♪」
カミーユが口元を緩ませる。
一方ミネットも口元を緩ませているが、これは全くもってカミーユとは別の意味合いを含んでいるのは賢明なハンターならわかることだろう。
「どの花がおいしいですかねっ?」
意気込んで尋ねるミネットだが……いや、食用ではないからそこまではわからない。
「地図にある付近ですね。間違いないです」
マッパーも担当していたセシル・ディフィール(ka4073)が、そう言ってにっこりと微笑む。地図に効率の良いルートを細かに記してある為、夜煌祭のときに花を運ぶのには大変役にたつだろう。
「でも、よい日和でよかったです。とりあえず一度解散して、花の種類や量などを調べておきましょう。お昼頃にもう一度集まって、道すがらにあった野原でお昼をいただいましょうか」
セシルの提案は魅力的で、なにがしかの食糧を持ってきたメンバーたちはこぞって頷いた。やはりこういう依頼だからこそ、羽を伸ばすことも大事だと思うのだ。
●
「それにしても、花がいっぱいなのです……!」
チョココはパルパルにそう言いながら、花を見てとろけるように微笑む。特注の麦わら帽子を被ったパルパルのほうはわかっているのかいないのか、きょとんとした顔でチョココを見つめていた。
咲いている花は色とりどり。でもどれも自然に出来たものなのだろう、ふわふわと風に揺られてそよぐさまも酷く絵になっている。
「料理も勿論楽しみだけれど、この花と爽やかな風に囲まれると考えただけでもなんだか素敵ですわね」
ロジーが笑ってみせると、カミーユもくすりとほほえみながら頷いた。
「そうねぇ。ピクニックには本当、おあつらえ向きなシチュエーションよねぇ……少し遅い花見兼ピクニックって感じもいいわね♪」
大きなバスケットにはそれに見合うだけのご馳走も準備してあるらしい。女子力の高いカミーユである。
その一方で女子力がやや残念なミネットは、動物を見るときと同じ動体視力を活用しようとしたが……そもそも植物は動かないものであるから、はっきり言って、殆ど意味が無い。
加えて、口元からはよだれがこぼれ落ちかけている。正直な話、周囲からぜったいに心配される。いや、どん引きされる……? 周りにひとがいないのが、せめてもの救いだろう。
しかしそれは、別の危惧を生む可能性がある。すなわち、本当に食べてしまいかねないと言うことで。あらかじめ釘は刺されているから、まあ大丈夫――だと信じたい。
(綺麗な花……これが、夜煌祭で誰かの心をいやす物になれば、いいんだけれど)
一通り見て回ったセツァルリヒトはそんな感想を抱く。
今年の夜煌祭はひときわ大規模であるのだから、事前に準備するものも多かろう。花の種類や色、その他必要そうな情報を纏めてメモを取る。セシルも同様のことを行ないながら、気づけばもう昼食の時間になっていた。
●
「さぁ、お昼ご飯よ♪」
カミーユが大きなバスケットから取り出したのは、大きなレジャーシート。
「皆お腹減っていると思って、豪華なランチとドリンクを用意してきているわ」
そう言ってウィンクするカミーユ。聞けば酒も用意しているという用意周到ぶりには舌を巻かざるを得ない。
カミーユの準備してきたのは特製ローストビーフ〈お手製のハニーマスタードソース添え〉を筆頭に、ジューシーな薄切りのステーキ〈肉汁とワインを煮詰めたソースを添えて〉、トマトとチーズを添えたオニオンスライスサラダ〈和風ソース添え〉、そしてツナやポテトなどのサンドイッチの数々。
誰もがゴクリと息をのむのがわかった。こんな立派なランチは、そうそうお目にかかることもないだろう。
「チョココはデザートを用意してきたのですわー」
彼女のバスケットには蜂蜜とバターをふんだんに使ったマドレーヌと、チョココ特製ちょこっとチョコラスク。
その脇に置いてある植木鉢について尋ねてみると、一種につき一輪を根元からつんで鉢に移したのだという。地図に添えて提出するつもりらしい。
「野の花はありのままの姿が一番だと、思いますわ」
ぽつり呟く少女の言葉に、なるほどと頷くハンターたち。
「それにしても……カミーユの料理、とても美味しそう」
ロジーはさっそくアルコール飲料を片手に、頬をわずかに染めて微笑む。肉をあまり食べるたちではないが、見ているだけでも幸せになれそうな気がするのだ。
「一面のお花に囲まれて飲むアルコールは格別ですわ」
そんなことを言ってみせるロジーだが、まだ依頼途中なので飲み過ぎに出欲しいところである。ロジー、更に他の人のグラスが空いているときは継ぎ足してしまうところもるので、あまり無理強いをしてもいけないのだが。
一方、カミーユの料理に目を輝かせているのはミネット。
「こ、これっ、すっごく美味しそうです! 私にとってお花畑よりもお花畑が、今カミーユさんの腕の中に……!」
狩猟民族出身の為か、肉料理に目が釘付けになってしまうのは仕方ないものといえるのだろう。しかもどんどん食べて、なんて言われたら、ミネットは更に興奮してしまう。
「ありがとうございます! カミーユさんが狩猟神『グチャラ=ゲチャラ』に見えてきました……是非とも崇めます」
邪神めいたその名前を崇めているらしいが、彼女の信仰が気になるところである。
食事を持ってきていないのはセツァルリヒトも同様だが、彼はカミーユにサンドイッチをいくらかわけて貰いそれをのんびりと食す。飲み物は紅茶を持参していたので、それを飲みながらの優雅な食事といったかんじだ。
「花を見ながら、食事をするなんてとても素敵ですね。心が豊かになる気がします」
少年の言葉に、誰もが心洗われる。
「紅茶ならこちらにもありますよ」
セシルが微笑みながら、魔法瓶と茶葉を取り出す。ここで淹れるつもりで準備してきたらしい。
「可愛らしい花が多いですね。クリンソウを見つけましたよ。花弁がハート型に見えて、それが何とも可愛らしいんです」
サンプルとばかりに一輪つんできたものを周囲に見せれば、おおっと周囲のハンターたちも声を上げる。なるほどこれはたしかに可愛らしい。
「そういえば、故郷の食べものを作ってきたので紹介しよう」
東方出身のファンが取り出したもの――それは、おにぎり。
「あ、おにぎりだね。食べてもいいのかな」
目を輝かせて、ヴァレスは一つそれを手に取る。
「え……知ってるの?」
ヴァレスの反応に少し驚いたが、
「リアルブルーにも同じような料理もあって、よく作られていてね」
しかしその言葉を聞いて、ファンは何とも言えない表情を浮かべている。でもその表情の理由がわからなくて、青年は首をかしげるばかり。
「……なあ、他に何かないかい? その、私で役に立てそうなこと、とか」
僅かなためらいのあとに、ファンは問う。すると、
「あ、そうだ。折角ならうちで働いてみない? 茶店を開いたばかりで、人手を探してたんだ♪」
「茶店……というと、お茶を飲むところ、だよね?」
「うん。そういえばどこに住んでるのかな」
ヴァレスの問いに、ファンは首を小さく横に振る。
「知っての通りと右方から出てきたばかりで、宿暮らしの根無し草さ」
「なら、住み込みはどうかな? 部屋も空いてるし、働くなら都合がいい」
「……いいのか?」
言葉少なに尋ねると、ヴァレスはにっこりと頷いた。
「勿論、リーエなら大歓迎するよ♪」
その言葉の根拠は以前の依頼でみた才覚や誠実さ――そんなものが彼に響いたかららしい。ファンも、ヴァレスの人となりは一応理解しているつもりだ。
「変わった男だね、君は。とりあえず試験的に雇うといい。あとは働き次第で判断してくれ」
「あいよ、それじゃあよろしくね♪」
いいながら、二人はおにぎりにかぶりつく。二人の関係はなかなか面白いことになりそうだ。
●
「でも、何とも贅沢なひとときですね」
そう呟いたのはセシルだ。ここのところ休む間もなく大規模な戦闘の連続だったから、いっそう戸惑うと言うことなのかも知れないが――それでも、この平穏な時間を取り戻す為に戦ってきたのだ。これがひとときのものであるかも知れないけれど、「変えていきたい」という強い意志を彼らは持ち合わせている。
きっとそれはいつか実現するだろう。少しずつでもそれに近づけばいいのだ。
やることはまだまだたくさんある。
けれど、それを実行しようという意志があれば、きっと良い方向に転がっていく。
夜煌祭も、そんな一つなのだから。
「――なんだか祭りも楽しみですね」
誰からともなくこぼれた言葉。
ハンターたちはそれが成功するようにと強く祈るのだった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/03 10:24:19 |
|
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相談卓(雑談卓?) ファン・リーエ(ka4772) 人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2015/06/07 04:12:33 |