ゲスト
(ka0000)
【聖呪】魔法実習に出かけよう!
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/06/09 22:00
- 完成日
- 2015/06/16 01:37
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●教会
穏やかな風土が売りであり、街道がいくつかそばを通るため便利でもある田舎町フォークベリー。最近、ちょっと不穏な空気も漂っている。
さて、エクラ教の教会の居住区域において、マーク司祭が「既視感では?」と考え椅子に座っていた。
実際に対応済みで解決したはずだったのだが……。
薬草園の主ジャイルズ・バルネは静かに問いかける。
「で、町でのゴブリン被害はまだ耳には届いていない?」
北部を中心に亜人に関する情報が最近多く、マークも耳にしている。
この町も東でも北部に入るので、いつ大きな被害が出るか分からない。用心は必要だなともさすがに考えている。現に、数週間前に洞窟にゴブリンが住み着きかけていたのは記憶に新しい。
ハンターからの忠告もあったし、誰が考えてもそのままでは良くないと町で検討した結果、扉を付けてふさぐことにしたのだ。ゴブリンとの戦闘もあったので当分は使わないだろうが、雨宿りやちょっとした作業に重宝する洞窟だったため、そうなった。
「はい、ありませんよ……で、まさかと思いますが、また住み着いているんですか?」
マークの返答にジャイルズ・バルネはうなずいた。
「前回帰宅したヤギと、新しく買った鶏と羊一頭が取られた。一応、洞窟方向に行く足跡も見た」
マーク司祭は頭を抱えた。
「なら、ハンターズソサエティに行ってくる」
淡々としているジャイルズが立ち上がった瞬間、扉が開いて小さい影は入ってきた。
「みぎゃーーーーーーーーー」
盛大な泣き声と共に来たのは隣家の魔術師の弟子ルゥル。頭の上に乗っているペットのパルムや肩の上に乗っているフェレットがルゥルをなだめている。
「どうしたんですか」
マークはあわてて迎える。魔術師の研究室も町の外にあり薬草園の側にある。まさかゴブリンに遭遇したのか、と不安もよぎるが怪我をしている様子もない。
「これ見て下さいです」
一通の手紙を見せられ、マークは絶句する。無意識に意見を求めるように、ジャイルズに手紙を渡した。
どんな内容か興味はあり、ジャイルズは読む。
『ルゥルへ
次のステップに進みたければ、座学はだけではなく実践もしよう。
動く標的に向かってマジックアローをぶつけてみろ。
嘘をついてもわしはわかるぞ?』
「あの魔術師、ロクでもないことをするよな」
ジャイルズは立ち去る前の珍事に溜息をもらす。
「ルゥル、えっぐ、一人前の魔術師になりたいですぅ。魔術師になって、ハンターになって、転移門を使いたいですぅ」
「いや、ルゥルちゃん、なんかずれてますよね?」
マークはルゥルのハンターになりたい理由に頭痛をおぼえた。転移門使うだけなら危険はないが、どこに行ったか分からなくなるという保護者的観点からは問題が大きい。図書館に行きたいとか、ピースホライズンに行きたいというくらいだろうが、捜索範囲が格段に広がる。
疑問は、魔法に関しての授業の事。一年の半分はいない師匠に何を教わっているのかは不明だが、それなりに勉強はしている様子なのでマークは安堵した。
「動けばいいんですね! そうだ、騎士団に知り合いが……」
わざとぶつかってもらう。ちょっと非人道的だが、大して魔法の使えないルゥルなら行けると勝手にマークは考える。
「その点に関しては、追伸を読んでください」
『追伸
ぬしのことだ、マークに相談するだろう?
あやつ騎士やら聖導士やら知り合いがおる。
ルゥルくらいの魔法なら耐えられるといって、ぶつけられてもらうのは却下じゃ。
それと、そやつらを護衛に雑魔退治とかもなしじゃ! マークよ、わしの弟子を甘やかすな! 以上』
マークは手紙を手から落とした。ジャイルズはこの司祭が考えたことを想像して、驚くしかない。普段温和な司祭が、まさか人道的に問題がある手段を用いてでもルゥルに協力しようと考えるとは。
ルゥルに何かあったら、危険だなとぼんやりとジャイルズは考えた。
「と言うわけで、ルゥルはハンターのオフィスに行ってくるです」
ルゥルは一人で戦いに行くと言わないくらいには状況を把握はしていた。
「お金ないですよね」
「みぎゃー」
パニックになっているわりには的確な指摘をするマークに、ルゥルが泣いた。人を使うにはお金がいる。ボランティアしてくれる人もいるかもしれないが、現実はいろいろ対価が必要だ。
ジャイルズは手をポンとたたいた。
「ちょっと危険だが、将来の魔術師への投資をしてもいいな。どうせ、領主に依頼料は吹っかけるつもりだが」
ジャイルズのいかめしい顔に、娘や孫を見るような少しだけ優しい表情が浮かんだ。そして、ハンターズソサエティの支部に出かけるために、馬に乗った。
●依頼
「またゴブリンですか?」
眼鏡の縁を押し上げ、フォークベリー近くの大きな町グローノースにあるハンターズソサエティ支部の職員であるロビン・ドルトスは眉をひそめる。
北部から流れてくる話も耳にしており、このあたりでも何かあるのかと思うと不安は生じる。
「そういうことだ。ただ、今回は同行者に魔術師の所の弟子ルゥルを入れる」
「はい? ルゥル、てあのちびっこですよね、エルフの」
魔術師の弟子としてここまで遊びに来たことはあるので面識はある。耳を隠しているが、バレバレのエルフの女の子だ。
「そうだ。ゴブリンを退治するのはもちろんだが、ルゥルにマジックアローを使わせ、ゴブリンに当てさせる」
「……はい?」
「魔法の実習も兼ねているんだ」
ロビンは驚いて本当かと尋ねそうになるが、目の前にいるジャイルズはいたってまじめな顔をしている。いつものいかめしい、近づきがたい顔。
「つまりゴブリン退治も大事だけど、ルゥルちゃんを守るってことも入るんですか!」
ジャイルズはうなずく。
「う、うわ……結構危険だし、面倒ですよねそれ」
「それはそうなる。ただ、前回よりは大所帯ではないと思うんだが……」
「う、それは調べてもらわないと分からないですよね」
ロビンは溜息を洩らした。
穏やかな風土が売りであり、街道がいくつかそばを通るため便利でもある田舎町フォークベリー。最近、ちょっと不穏な空気も漂っている。
さて、エクラ教の教会の居住区域において、マーク司祭が「既視感では?」と考え椅子に座っていた。
実際に対応済みで解決したはずだったのだが……。
薬草園の主ジャイルズ・バルネは静かに問いかける。
「で、町でのゴブリン被害はまだ耳には届いていない?」
北部を中心に亜人に関する情報が最近多く、マークも耳にしている。
この町も東でも北部に入るので、いつ大きな被害が出るか分からない。用心は必要だなともさすがに考えている。現に、数週間前に洞窟にゴブリンが住み着きかけていたのは記憶に新しい。
ハンターからの忠告もあったし、誰が考えてもそのままでは良くないと町で検討した結果、扉を付けてふさぐことにしたのだ。ゴブリンとの戦闘もあったので当分は使わないだろうが、雨宿りやちょっとした作業に重宝する洞窟だったため、そうなった。
「はい、ありませんよ……で、まさかと思いますが、また住み着いているんですか?」
マークの返答にジャイルズ・バルネはうなずいた。
「前回帰宅したヤギと、新しく買った鶏と羊一頭が取られた。一応、洞窟方向に行く足跡も見た」
マーク司祭は頭を抱えた。
「なら、ハンターズソサエティに行ってくる」
淡々としているジャイルズが立ち上がった瞬間、扉が開いて小さい影は入ってきた。
「みぎゃーーーーーーーーー」
盛大な泣き声と共に来たのは隣家の魔術師の弟子ルゥル。頭の上に乗っているペットのパルムや肩の上に乗っているフェレットがルゥルをなだめている。
「どうしたんですか」
マークはあわてて迎える。魔術師の研究室も町の外にあり薬草園の側にある。まさかゴブリンに遭遇したのか、と不安もよぎるが怪我をしている様子もない。
「これ見て下さいです」
一通の手紙を見せられ、マークは絶句する。無意識に意見を求めるように、ジャイルズに手紙を渡した。
どんな内容か興味はあり、ジャイルズは読む。
『ルゥルへ
次のステップに進みたければ、座学はだけではなく実践もしよう。
動く標的に向かってマジックアローをぶつけてみろ。
嘘をついてもわしはわかるぞ?』
「あの魔術師、ロクでもないことをするよな」
ジャイルズは立ち去る前の珍事に溜息をもらす。
「ルゥル、えっぐ、一人前の魔術師になりたいですぅ。魔術師になって、ハンターになって、転移門を使いたいですぅ」
「いや、ルゥルちゃん、なんかずれてますよね?」
マークはルゥルのハンターになりたい理由に頭痛をおぼえた。転移門使うだけなら危険はないが、どこに行ったか分からなくなるという保護者的観点からは問題が大きい。図書館に行きたいとか、ピースホライズンに行きたいというくらいだろうが、捜索範囲が格段に広がる。
疑問は、魔法に関しての授業の事。一年の半分はいない師匠に何を教わっているのかは不明だが、それなりに勉強はしている様子なのでマークは安堵した。
「動けばいいんですね! そうだ、騎士団に知り合いが……」
わざとぶつかってもらう。ちょっと非人道的だが、大して魔法の使えないルゥルなら行けると勝手にマークは考える。
「その点に関しては、追伸を読んでください」
『追伸
ぬしのことだ、マークに相談するだろう?
あやつ騎士やら聖導士やら知り合いがおる。
ルゥルくらいの魔法なら耐えられるといって、ぶつけられてもらうのは却下じゃ。
それと、そやつらを護衛に雑魔退治とかもなしじゃ! マークよ、わしの弟子を甘やかすな! 以上』
マークは手紙を手から落とした。ジャイルズはこの司祭が考えたことを想像して、驚くしかない。普段温和な司祭が、まさか人道的に問題がある手段を用いてでもルゥルに協力しようと考えるとは。
ルゥルに何かあったら、危険だなとぼんやりとジャイルズは考えた。
「と言うわけで、ルゥルはハンターのオフィスに行ってくるです」
ルゥルは一人で戦いに行くと言わないくらいには状況を把握はしていた。
「お金ないですよね」
「みぎゃー」
パニックになっているわりには的確な指摘をするマークに、ルゥルが泣いた。人を使うにはお金がいる。ボランティアしてくれる人もいるかもしれないが、現実はいろいろ対価が必要だ。
ジャイルズは手をポンとたたいた。
「ちょっと危険だが、将来の魔術師への投資をしてもいいな。どうせ、領主に依頼料は吹っかけるつもりだが」
ジャイルズのいかめしい顔に、娘や孫を見るような少しだけ優しい表情が浮かんだ。そして、ハンターズソサエティの支部に出かけるために、馬に乗った。
●依頼
「またゴブリンですか?」
眼鏡の縁を押し上げ、フォークベリー近くの大きな町グローノースにあるハンターズソサエティ支部の職員であるロビン・ドルトスは眉をひそめる。
北部から流れてくる話も耳にしており、このあたりでも何かあるのかと思うと不安は生じる。
「そういうことだ。ただ、今回は同行者に魔術師の所の弟子ルゥルを入れる」
「はい? ルゥル、てあのちびっこですよね、エルフの」
魔術師の弟子としてここまで遊びに来たことはあるので面識はある。耳を隠しているが、バレバレのエルフの女の子だ。
「そうだ。ゴブリンを退治するのはもちろんだが、ルゥルにマジックアローを使わせ、ゴブリンに当てさせる」
「……はい?」
「魔法の実習も兼ねているんだ」
ロビンは驚いて本当かと尋ねそうになるが、目の前にいるジャイルズはいたってまじめな顔をしている。いつものいかめしい、近づきがたい顔。
「つまりゴブリン退治も大事だけど、ルゥルちゃんを守るってことも入るんですか!」
ジャイルズはうなずく。
「う、うわ……結構危険だし、面倒ですよねそれ」
「それはそうなる。ただ、前回よりは大所帯ではないと思うんだが……」
「う、それは調べてもらわないと分からないですよね」
ロビンは溜息を洩らした。
リプレイ本文
●ハンターと同行者
薬草園にハンターが着くと、依頼人であるジャイルズときぐるみを着てワンドを握るルゥルがいた。ルゥルは小刻みに震えており、頭の上のパルムと肩の上のフェレットが居心地悪そうに揺れている。
ルゥルはジャイルズにハンターが来た旨を告げられ、ようやく声を出した。
「ヨヨヨヨヨ、ヨロシクオネガイシマッスルゥル」
「よろしくね! あやねたちがるーちゃんのしゅぎょーのお手つだいするのよ」
佐藤 絢音(ka0552)が笑顔で手差し出す。同じくらい年齢の少女に言われ、ルゥルは少しきりっとした顔になる、ほんの少しだけ。
「御師に与えられた課題をこなす。いやはや、昔を思い出すねぇ」
壬生 義明(ka3397)は楽しそうに、和ますように笑う。
「私も一か月ほど前までは学生だったから、あなたと同じで見習いなのよ。一緒にがんばりましょうね」
コントラルト(ka4753)はしゃがむとルゥルを覗き込む。ルゥルは緊張とやる気と不安と期待が入り混じっているがキラキラした表情をしている。
「私もまだまだ若輩者でね、早く魔術師と名乗れるくらいには成長したいものだよ」
チマキマル(ka4372)は自嘲的につぶやくが、落ち着いた大人の雰囲気が漂うためルゥルは本当かなと疑う。
「可愛い子には旅をさせよ、ということわざがありますが、いきなり実戦に出すとはスパルタが過ぎる気がしますね。ともかく無事に課題がこなせるように私も尽力させていただきますね」
日下 菜摘(ka0881)は温かく微笑む。
「お師匠様は厳しい方のようですね。ルゥルさんも一人前の魔術師を目指されるなら、この程度の事で取り乱してはいけません」
メトロノーム・ソングライト(ka1267)は静かに柔らかく忠告しつつ、がんばれというように軽く拳を握った。
ルゥルも自分の拳を握り、小さくうなずいた。ルゥルの緊張はほぐれてきたようだ。
●手順を決めよう
「倒すだけなら簡単ですが、ルゥルさんの事もありますので、きちんとフォーメーション等決めていきませんと」
菜摘がルゥルを見ると、彼女はこっくりとうなずいている。自分の事だと言うことで、参加しているのだろう。
「そうですね。場所と洞窟の地形を教えてくれませんか」
メトロノームの言葉に、ジャイルズは薬草園から出て、手短に説明をする。
「あの林だ。ルゥルが場所を知っているし、道なりに行けばいいから迷わない」
洞窟自体は板を張り付け、扉を作ってある。以前ゴブリンに住まわれてしまったが、使うこともある洞窟だったため、完全にふさぐのを避けたのだ。それが裏目に出て今回の再住騒動。
なお、扉はかんぬきタイプで手前に開くとのこと。
「状況を見てからだけど……ゴブリンが中にいたら出さないとねぇ」
義明は一行を眺め一瞬思案顔になったが、すぐに飄々とした雰囲気に戻った。
「体力には自信はないけど、良い盾も仕入れたからそれなりに前でも戦えるわ」
コントラルトの盾を見せた。戦士と名乗るようなハンターが今回はいない。普段以上に連携が物を言う仕事のようだ。
「スリープクラウドと魔法、広場に引きずり出していけばこなせるだろう」
チマキマルの提案に、否もなく、陣形を決めて一行は出発する。
いつもなら子どもが走り回り、街道を行き来する人も多い街道。
ルゥルは見慣れている林を、知り合ったばかりのヒトたちと歩いている。隣にいるのは同じくらいの年で、すでに一人前のハンターをしている絢音。
(変な気分です)
ルゥルの中には、親近感と妙なライバル心がないまぜの気持ちが胸の奥に湧き上がっていた。
●扉とコボルド
緑が明るく輝く初夏の林。下草が伸び、木の切れ間より入り込む光が成長を促す。風が渡り、鳥の鳴き声も聞こえ、小動物が移動する音もする。
ゴブリンさえいなければ平和な林そのものであろう。今ですら、ゴブリンがいるのは冗談ではないかと思えてしまう。
林の道を道なりに進むと、広場が見えてきた。
ルゥルはこちこちになりかかっているため、絢音が彼女の手を握る。
「おっさんたちがしっかりフォローするから大丈夫だよ」
義明がルゥルの頭をポンとなでるようにふれる。
「ハイデス」
ルゥルは固い声だが、目はしっかり前を向いていた。やる気は十二分にある様子だ。
風向きには注意してそろりそろりと近づいていく。灌木の陰からこっそりと見ると、洞窟に付けられた扉は閉められている。その手前にはコボルドが三体、まどろんでいる。
ハンターたちは作戦開始だ。
メトロノームとチマキマルがそれぞれスリープクラウドをコボルドがいる空間に掛ける。どちらかでいいが、失敗や抵抗をされたときのための用心だ。
コボルド三体がぐったりと眠りについたところで、前衛となる菜摘、義明とコントラルトが足音に注意して近づく。
義明は機導術の発動体を通じ、術を組み上げていく。発動するまでの間に音がするのではとヒヤリとするが、無音でない世界なので問題ないはずだと落ち着いて行う。『デルタレイ』が発動し、三匹は光線に射抜かれ永遠の眠りについた。
扉の向こうからの反応はないかうかがう。
聞こえてくるのは沈黙であったため、ハンターたちは扉を開ける準備にかかる。
メトロノームは遮蔽物を確保するため『アースウォール』を作る。
絢音はルゥルに魔法を唱えるように促す。ルゥルは魔法を組み上げていくスピードが遅いため、一か八か一度目は早めに行動をさせる。
ゴブリンのいるはずの洞窟の扉を開くため、コントラルトは静かに近寄る。もしすでに気付かれていれば、近づくだけでも危険があるため、すぐに回避できるように、全身の神経を扉とその奥に集中させる。
盾を構えた菜摘とその側で義明が待機する。扉が開いた瞬間に中を確認し、おびき出すまたは、魔法と放つために。
チマキマルも魔法を放てるように、準備した。
ルゥルがなんとなくマテリアルを練り終わったころ、絢音はコントラルトに「扉を開けて」と合図を出した。
●そして、扉は開く
コントラルトは深呼吸を一つして、扉を一気に引っ張った。扉は180度近く開いたので、肩で押さえるように立ち、盾を構えた。
中のゴブリン達は突然の訪問者にパニックになった。
菜摘が『ホーリーライト』を、義明は『デルタレイ』を洞窟の中に向かって放った。動き回っているゴブリンだが、当たった。
ここからが勝負だ。
ゴブリン達が出てくるのかという問題。ルゥルの課題と殲滅を考えると頭が痛いため、一気にでてくることもなく、こもることもなく適宜出てくるのが理想。
スリープクラウドをメトロノームは洞窟の中に向かって放った。中が安全でないと分かれば出てくるだろうし、何体か眠ってくれると助かる。
コントラクトは扉の側にいる為、中の動きが良くわかった。一体に剣にまとわりつかせた『エレクトリーショック』を叩きこんだ。発動体らしい杖を持っているゴブリンが電気の衝撃に倒れる。
それを越えて斧を持ったゴブリンや弓を持ったゴブリンが現れた。
「まじっくあろぉー」
斧を持ったゴブリンにルゥルの魔法が飛んでいく。
この瞬間、ハンターたちはスローモーションのように風景が見えたと言っても過言ではないだろう。飛んでいく矢は「へろへろ」という音でもしそうだった。
ヒラリ。
ゴブリンは避けた。百戦錬磨のゴブリンは素早かった。
「るーちゃん、おちついて。まほうはつかえたから、よけないように強く思うのよ」
絢音が励ます。
「わ、分かりました」
ルゥルはワンドを握り直し前を見た。
チマキマルの『マジックアロー』が弓を持つゴブリンに突き刺さる、お手本のように真っ直ぐそして鋭く。
出て来たゴブリン達は近くにいる義明たち攻撃する。なかなか回避は難しいが、盾や魔法で防ぐ。当てられてもダメージを通さないのが重要だ。
弓を持っていたゴブリンは同胞を撃ったチマキマルに向かって矢を放ったが、ぎりぎりのところで届かなかった。
ゴブリン達は攻撃されているし、自分たちの新しい住処を守るために戦う。苦戦しようがここは新しく素敵な住処なのだ、と。
ゴブリンを倒すだけならたぶん、戦いは終わっていたと考えるハンターたち。
前衛に立つ三人は結構難しいことを要求されている。ルゥルに攻撃が行かないように、かといってルゥルとゴブリンの間をふさぐわけにもいかないという状況。
ルゥル頑張れ、ゴブリン避けるな! というのが心で唱えられる呪文だっただろう。
「まじっくあろぉー」
再び、たどたどしいがはっきりとした声が響き、ルゥルの手元から魔法が放たれた。一応、勢いは良く飛び、リベンジとばかりに斧を持ったゴブリンに向かう。
ゴブリンはよけようとして足をもつらせて転んだ。
ぷすり。
ルゥルの魔法は無事、動く目標に当たったのだった。
歓喜に沸く状況ではないので、淡々と事態は進んでいく。
「とどめはまかせてね」
絢音が倒れたゴブリンに銃を向ける。
「あとは、遠慮はいりませんね」
メトロノームのファイアーボールが来るという予測から、前衛に立っていた三人は一度ゴブリン達から離れる。
見事に炸裂したファイアーボールで残っていた数体は倒れ、洞窟の中で寝ていたゴブリンが目を覚ました。
あわてて出て来たゴブリンは義明と菜摘が倒す。
動くゴブリンはこれで最後だった。
●魔法と命と
「みなさん、お怪我はないですか?」
菜摘が声を掛ける。菜摘は前に出ていたこともあり、いくつか傷を負っている。
無傷ではないが、動けないといったこともなく、それぞれ返事をした。
戦いの後の洞窟や広場にはゴブリンとコボルドの死体が転がる。
ここには生と死があり、課題が終わったと喜べるような雰囲気がない。
「るーちゃん」
絢音は表情を引き締め、ルゥルを引っ張って広場に出る。
「このゴブリンさんはるーちゃんとあやねでころしたの」
ルゥルはこくりとうなずく。頭の上のパルムがルゥルを撫でているので泣いているのかもしれない。
「でもね、ゴブリンさんはジャイルズさんのヤギさんたちをおそったから、めーってしないとだめだったの」
絢音は諭す。
「まほうで命もきえるっておぼえてほしいの」
ルゥルはうなずいた。
(この子の方が、私より、ずっと大人なんですぅ)
ルゥルは林を歩くとき、絢音に対し複雑な思いを抱いたが、簡単に追いつけないと気付いた。明らかに彼女の方が先を歩いている。ルゥルは走らないと追いつけない。
「なかなか鋭いことを言うね。おっさんとしても心に留めないといけないね」
義明は優しく絢音とルゥルを見る。武器をとって直接戦うこともするので、義明には直接関係ないが、命は消えるというのは重い言葉であった。
しんみりする中、チマキマルが黙々と作業する音も響いていた。
「チマキマルさんを私たちも手伝うべき……?」
コントラルトは一度はしまった剣の柄に手を載せる。
「死んだふりの用心のためだ。それにもう終わった」
チマキマルが淡々と言い、次の行動に移った。洞窟の前にゴブリンの首を刺した木の棒をどーんと立てた。
「もし、ゴブリンどもがここに来たとしても、これを見て何が起こるか理解するだろう」
絢音とルゥルは抱き合って、コクコクと首を縦に振る。死体云々を突きぬけた状況になっている。
「こ、これは……荒々しい何かを感じます……町の人……恐れるのでは」
メトロノームがじりじりと広場から離れていく。
これを皮切りに一行はここを離れ始めた。
●未来に向かって
「無事課題がこなせましたね。次もこの調子で頑張れば、ちゃんとできると私は信じていますから。一歩ずつ進んでいけば良いんですからね」
ルゥルはびくりと菜摘を向いた。なぜか、ルゥルの連れているパルムとフェレットも同じような顔をしているので、菜摘が驚く。
「ルゥルさん、平常心ですよ」
メトロノームが優しく肩に触れる。その瞬間、ルゥルがびくっとなる。
「つ、次……次は、マジックアローを8回当てろとか、ファイアアローをおぼえるまで帰ってくるなとかでしょうか」
ルゥルは小刻みに震える。
なぜか攻撃魔法ばかりなのか。
「ルゥルは攻撃性が高いのか」
チマキマルの冷静な分析に、小さい魔術師見習いに視線が集まる。
「ぼうぎょも大事よ?」
絢音は「痛いのは嫌だもの」と続ける。
「攻撃は最大の防御って言葉もありますね」
コントラルトはちらりとルゥルを見ると、こっくりと縦にうなずく姿があった。
「目指せ、ファイアーボールですか?」
メトロノームはルゥルと目が合う。エルフで魔術師同士、感じるものがあるのか、二人はなぜか微笑みあっている。
「まあ、戦うだけが魔術師でもないんじゃないのかい? ほら、機導師だって研究肌の人もいるし」
義明は違う方向の提案を出したが、研究は先のようだなと飛び跳ねるルゥルを見ると思う。いや、むしろ研究と題して外に行くかもしれない。
「るーちゃん、ぼうぎょはじゅうようよ」
絢音はハンターの先輩として帰り道、講義を始めた。
ルゥルは緊張のほぐれた笑顔でうなずいて話を聞いていた。ハンターになるかは別として、誰かのためになるヒトになりたいと眠くなる頭で思っていた。
●後日、薬草園
「ジャイルズ、礼を言うぞ?」
どこかの土産らしいハーブの苗を手に、ルゥルの師匠は薬草園に顔を出した。
ジャイルズは溜息をもらす。これまで家を空けていたのだろう。
「ハンターの報告書のおかげで、ありのままが分かった」
「お前に今度は請求するぞ?」
「主が領主に請求書回したのは知っておる」
ルゥルの師匠は笑って立ち去った。
ジャイルズは見送りながら、ルゥルが真っ直ぐ育ってくれることを祈りつつ、ほんの一部は師匠を見習ってほしいと願った。
薬草園にハンターが着くと、依頼人であるジャイルズときぐるみを着てワンドを握るルゥルがいた。ルゥルは小刻みに震えており、頭の上のパルムと肩の上のフェレットが居心地悪そうに揺れている。
ルゥルはジャイルズにハンターが来た旨を告げられ、ようやく声を出した。
「ヨヨヨヨヨ、ヨロシクオネガイシマッスルゥル」
「よろしくね! あやねたちがるーちゃんのしゅぎょーのお手つだいするのよ」
佐藤 絢音(ka0552)が笑顔で手差し出す。同じくらい年齢の少女に言われ、ルゥルは少しきりっとした顔になる、ほんの少しだけ。
「御師に与えられた課題をこなす。いやはや、昔を思い出すねぇ」
壬生 義明(ka3397)は楽しそうに、和ますように笑う。
「私も一か月ほど前までは学生だったから、あなたと同じで見習いなのよ。一緒にがんばりましょうね」
コントラルト(ka4753)はしゃがむとルゥルを覗き込む。ルゥルは緊張とやる気と不安と期待が入り混じっているがキラキラした表情をしている。
「私もまだまだ若輩者でね、早く魔術師と名乗れるくらいには成長したいものだよ」
チマキマル(ka4372)は自嘲的につぶやくが、落ち着いた大人の雰囲気が漂うためルゥルは本当かなと疑う。
「可愛い子には旅をさせよ、ということわざがありますが、いきなり実戦に出すとはスパルタが過ぎる気がしますね。ともかく無事に課題がこなせるように私も尽力させていただきますね」
日下 菜摘(ka0881)は温かく微笑む。
「お師匠様は厳しい方のようですね。ルゥルさんも一人前の魔術師を目指されるなら、この程度の事で取り乱してはいけません」
メトロノーム・ソングライト(ka1267)は静かに柔らかく忠告しつつ、がんばれというように軽く拳を握った。
ルゥルも自分の拳を握り、小さくうなずいた。ルゥルの緊張はほぐれてきたようだ。
●手順を決めよう
「倒すだけなら簡単ですが、ルゥルさんの事もありますので、きちんとフォーメーション等決めていきませんと」
菜摘がルゥルを見ると、彼女はこっくりとうなずいている。自分の事だと言うことで、参加しているのだろう。
「そうですね。場所と洞窟の地形を教えてくれませんか」
メトロノームの言葉に、ジャイルズは薬草園から出て、手短に説明をする。
「あの林だ。ルゥルが場所を知っているし、道なりに行けばいいから迷わない」
洞窟自体は板を張り付け、扉を作ってある。以前ゴブリンに住まわれてしまったが、使うこともある洞窟だったため、完全にふさぐのを避けたのだ。それが裏目に出て今回の再住騒動。
なお、扉はかんぬきタイプで手前に開くとのこと。
「状況を見てからだけど……ゴブリンが中にいたら出さないとねぇ」
義明は一行を眺め一瞬思案顔になったが、すぐに飄々とした雰囲気に戻った。
「体力には自信はないけど、良い盾も仕入れたからそれなりに前でも戦えるわ」
コントラルトの盾を見せた。戦士と名乗るようなハンターが今回はいない。普段以上に連携が物を言う仕事のようだ。
「スリープクラウドと魔法、広場に引きずり出していけばこなせるだろう」
チマキマルの提案に、否もなく、陣形を決めて一行は出発する。
いつもなら子どもが走り回り、街道を行き来する人も多い街道。
ルゥルは見慣れている林を、知り合ったばかりのヒトたちと歩いている。隣にいるのは同じくらいの年で、すでに一人前のハンターをしている絢音。
(変な気分です)
ルゥルの中には、親近感と妙なライバル心がないまぜの気持ちが胸の奥に湧き上がっていた。
●扉とコボルド
緑が明るく輝く初夏の林。下草が伸び、木の切れ間より入り込む光が成長を促す。風が渡り、鳥の鳴き声も聞こえ、小動物が移動する音もする。
ゴブリンさえいなければ平和な林そのものであろう。今ですら、ゴブリンがいるのは冗談ではないかと思えてしまう。
林の道を道なりに進むと、広場が見えてきた。
ルゥルはこちこちになりかかっているため、絢音が彼女の手を握る。
「おっさんたちがしっかりフォローするから大丈夫だよ」
義明がルゥルの頭をポンとなでるようにふれる。
「ハイデス」
ルゥルは固い声だが、目はしっかり前を向いていた。やる気は十二分にある様子だ。
風向きには注意してそろりそろりと近づいていく。灌木の陰からこっそりと見ると、洞窟に付けられた扉は閉められている。その手前にはコボルドが三体、まどろんでいる。
ハンターたちは作戦開始だ。
メトロノームとチマキマルがそれぞれスリープクラウドをコボルドがいる空間に掛ける。どちらかでいいが、失敗や抵抗をされたときのための用心だ。
コボルド三体がぐったりと眠りについたところで、前衛となる菜摘、義明とコントラルトが足音に注意して近づく。
義明は機導術の発動体を通じ、術を組み上げていく。発動するまでの間に音がするのではとヒヤリとするが、無音でない世界なので問題ないはずだと落ち着いて行う。『デルタレイ』が発動し、三匹は光線に射抜かれ永遠の眠りについた。
扉の向こうからの反応はないかうかがう。
聞こえてくるのは沈黙であったため、ハンターたちは扉を開ける準備にかかる。
メトロノームは遮蔽物を確保するため『アースウォール』を作る。
絢音はルゥルに魔法を唱えるように促す。ルゥルは魔法を組み上げていくスピードが遅いため、一か八か一度目は早めに行動をさせる。
ゴブリンのいるはずの洞窟の扉を開くため、コントラルトは静かに近寄る。もしすでに気付かれていれば、近づくだけでも危険があるため、すぐに回避できるように、全身の神経を扉とその奥に集中させる。
盾を構えた菜摘とその側で義明が待機する。扉が開いた瞬間に中を確認し、おびき出すまたは、魔法と放つために。
チマキマルも魔法を放てるように、準備した。
ルゥルがなんとなくマテリアルを練り終わったころ、絢音はコントラルトに「扉を開けて」と合図を出した。
●そして、扉は開く
コントラルトは深呼吸を一つして、扉を一気に引っ張った。扉は180度近く開いたので、肩で押さえるように立ち、盾を構えた。
中のゴブリン達は突然の訪問者にパニックになった。
菜摘が『ホーリーライト』を、義明は『デルタレイ』を洞窟の中に向かって放った。動き回っているゴブリンだが、当たった。
ここからが勝負だ。
ゴブリン達が出てくるのかという問題。ルゥルの課題と殲滅を考えると頭が痛いため、一気にでてくることもなく、こもることもなく適宜出てくるのが理想。
スリープクラウドをメトロノームは洞窟の中に向かって放った。中が安全でないと分かれば出てくるだろうし、何体か眠ってくれると助かる。
コントラクトは扉の側にいる為、中の動きが良くわかった。一体に剣にまとわりつかせた『エレクトリーショック』を叩きこんだ。発動体らしい杖を持っているゴブリンが電気の衝撃に倒れる。
それを越えて斧を持ったゴブリンや弓を持ったゴブリンが現れた。
「まじっくあろぉー」
斧を持ったゴブリンにルゥルの魔法が飛んでいく。
この瞬間、ハンターたちはスローモーションのように風景が見えたと言っても過言ではないだろう。飛んでいく矢は「へろへろ」という音でもしそうだった。
ヒラリ。
ゴブリンは避けた。百戦錬磨のゴブリンは素早かった。
「るーちゃん、おちついて。まほうはつかえたから、よけないように強く思うのよ」
絢音が励ます。
「わ、分かりました」
ルゥルはワンドを握り直し前を見た。
チマキマルの『マジックアロー』が弓を持つゴブリンに突き刺さる、お手本のように真っ直ぐそして鋭く。
出て来たゴブリン達は近くにいる義明たち攻撃する。なかなか回避は難しいが、盾や魔法で防ぐ。当てられてもダメージを通さないのが重要だ。
弓を持っていたゴブリンは同胞を撃ったチマキマルに向かって矢を放ったが、ぎりぎりのところで届かなかった。
ゴブリン達は攻撃されているし、自分たちの新しい住処を守るために戦う。苦戦しようがここは新しく素敵な住処なのだ、と。
ゴブリンを倒すだけならたぶん、戦いは終わっていたと考えるハンターたち。
前衛に立つ三人は結構難しいことを要求されている。ルゥルに攻撃が行かないように、かといってルゥルとゴブリンの間をふさぐわけにもいかないという状況。
ルゥル頑張れ、ゴブリン避けるな! というのが心で唱えられる呪文だっただろう。
「まじっくあろぉー」
再び、たどたどしいがはっきりとした声が響き、ルゥルの手元から魔法が放たれた。一応、勢いは良く飛び、リベンジとばかりに斧を持ったゴブリンに向かう。
ゴブリンはよけようとして足をもつらせて転んだ。
ぷすり。
ルゥルの魔法は無事、動く目標に当たったのだった。
歓喜に沸く状況ではないので、淡々と事態は進んでいく。
「とどめはまかせてね」
絢音が倒れたゴブリンに銃を向ける。
「あとは、遠慮はいりませんね」
メトロノームのファイアーボールが来るという予測から、前衛に立っていた三人は一度ゴブリン達から離れる。
見事に炸裂したファイアーボールで残っていた数体は倒れ、洞窟の中で寝ていたゴブリンが目を覚ました。
あわてて出て来たゴブリンは義明と菜摘が倒す。
動くゴブリンはこれで最後だった。
●魔法と命と
「みなさん、お怪我はないですか?」
菜摘が声を掛ける。菜摘は前に出ていたこともあり、いくつか傷を負っている。
無傷ではないが、動けないといったこともなく、それぞれ返事をした。
戦いの後の洞窟や広場にはゴブリンとコボルドの死体が転がる。
ここには生と死があり、課題が終わったと喜べるような雰囲気がない。
「るーちゃん」
絢音は表情を引き締め、ルゥルを引っ張って広場に出る。
「このゴブリンさんはるーちゃんとあやねでころしたの」
ルゥルはこくりとうなずく。頭の上のパルムがルゥルを撫でているので泣いているのかもしれない。
「でもね、ゴブリンさんはジャイルズさんのヤギさんたちをおそったから、めーってしないとだめだったの」
絢音は諭す。
「まほうで命もきえるっておぼえてほしいの」
ルゥルはうなずいた。
(この子の方が、私より、ずっと大人なんですぅ)
ルゥルは林を歩くとき、絢音に対し複雑な思いを抱いたが、簡単に追いつけないと気付いた。明らかに彼女の方が先を歩いている。ルゥルは走らないと追いつけない。
「なかなか鋭いことを言うね。おっさんとしても心に留めないといけないね」
義明は優しく絢音とルゥルを見る。武器をとって直接戦うこともするので、義明には直接関係ないが、命は消えるというのは重い言葉であった。
しんみりする中、チマキマルが黙々と作業する音も響いていた。
「チマキマルさんを私たちも手伝うべき……?」
コントラルトは一度はしまった剣の柄に手を載せる。
「死んだふりの用心のためだ。それにもう終わった」
チマキマルが淡々と言い、次の行動に移った。洞窟の前にゴブリンの首を刺した木の棒をどーんと立てた。
「もし、ゴブリンどもがここに来たとしても、これを見て何が起こるか理解するだろう」
絢音とルゥルは抱き合って、コクコクと首を縦に振る。死体云々を突きぬけた状況になっている。
「こ、これは……荒々しい何かを感じます……町の人……恐れるのでは」
メトロノームがじりじりと広場から離れていく。
これを皮切りに一行はここを離れ始めた。
●未来に向かって
「無事課題がこなせましたね。次もこの調子で頑張れば、ちゃんとできると私は信じていますから。一歩ずつ進んでいけば良いんですからね」
ルゥルはびくりと菜摘を向いた。なぜか、ルゥルの連れているパルムとフェレットも同じような顔をしているので、菜摘が驚く。
「ルゥルさん、平常心ですよ」
メトロノームが優しく肩に触れる。その瞬間、ルゥルがびくっとなる。
「つ、次……次は、マジックアローを8回当てろとか、ファイアアローをおぼえるまで帰ってくるなとかでしょうか」
ルゥルは小刻みに震える。
なぜか攻撃魔法ばかりなのか。
「ルゥルは攻撃性が高いのか」
チマキマルの冷静な分析に、小さい魔術師見習いに視線が集まる。
「ぼうぎょも大事よ?」
絢音は「痛いのは嫌だもの」と続ける。
「攻撃は最大の防御って言葉もありますね」
コントラルトはちらりとルゥルを見ると、こっくりと縦にうなずく姿があった。
「目指せ、ファイアーボールですか?」
メトロノームはルゥルと目が合う。エルフで魔術師同士、感じるものがあるのか、二人はなぜか微笑みあっている。
「まあ、戦うだけが魔術師でもないんじゃないのかい? ほら、機導師だって研究肌の人もいるし」
義明は違う方向の提案を出したが、研究は先のようだなと飛び跳ねるルゥルを見ると思う。いや、むしろ研究と題して外に行くかもしれない。
「るーちゃん、ぼうぎょはじゅうようよ」
絢音はハンターの先輩として帰り道、講義を始めた。
ルゥルは緊張のほぐれた笑顔でうなずいて話を聞いていた。ハンターになるかは別として、誰かのためになるヒトになりたいと眠くなる頭で思っていた。
●後日、薬草園
「ジャイルズ、礼を言うぞ?」
どこかの土産らしいハーブの苗を手に、ルゥルの師匠は薬草園に顔を出した。
ジャイルズは溜息をもらす。これまで家を空けていたのだろう。
「ハンターの報告書のおかげで、ありのままが分かった」
「お前に今度は請求するぞ?」
「主が領主に請求書回したのは知っておる」
ルゥルの師匠は笑って立ち去った。
ジャイルズは見送りながら、ルゥルが真っ直ぐ育ってくれることを祈りつつ、ほんの一部は師匠を見習ってほしいと願った。
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相談卓です メトロノーム・ソングライト(ka1267) エルフ|14才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/06/09 21:10:03 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/05 23:41:31 |