ゲスト
(ka0000)
夢を見ない羊たち
マスター:大林さゆる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/06/15 09:00
- 完成日
- 2015/06/21 18:02
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ぼんやりと聴こえるのは、羊の声。
古ぼけた牧場で、少女は生き別れた両親を待ち続けていた。
会いたい。
会いたい。
幼い少女が、最後に見たものは、両親の笑顔。
「……お父さん、お母さん…ずっと…ずっと…待ってるよ」
ただ一人。
少女は我が家で、父と母の帰りを待っていた。
小さな心を震わせながら……。
●
自由都市同盟の牧畜地域。
酪農家たちは、ここ最近の出来事に悩まされていた。
「俺の飼ってる馬たちが、何匹か行方不明でな」
「ワシのところでは、羊の群れが半分近く、いつのまにか消えちまって…」
互いに話し合い、被害は日に日に増えていることが判明した。
「そういや、聞いたか。エルちゃんのご両親がいなくなっちまったそうだよ」
初老の男性が言うと、話を聞いていた若い者たちが驚いていた。
「なにっ?! 家畜だけじゃなくて、人間も行方不明だって?!」
何者の仕業かは分からないが、狙いは人間にまで及んできたことが分かり、酪農家たちは震え上がった。
「これはただごとでねーな。ハンターオフィスに相談してみるか」
代表の男が事件を報告し、分かる範囲内で捜査が始まった。
数名のハンターが調査したところ、二本足で歩く羊の姿をした雑魔が出没し、家畜や人間を襲っている可能性が浮上した。
「雑魔と言っても、数が多いな。エルという少女が住んでいる地域では、雑草が生い茂って、大蛇もいる。これでは、うかつに近付けないし、少女も逃げることができない」
雑魔の羊たちは群れで家畜を襲撃し、魔法の矢でハンターたちを翻弄する。
かと思えば、雑魔の羊は前のめりになり、いきなり突撃してきて、ハンターを蹴散らしていく。
「意外と手強いな…もう一度、本部に連絡してみよう」
調査したハンターたちは、雑魔と大蛇を退治するため、さらにハンターを募集することにした。
●
せめてエルという少女だけでも助けようと、若い男たちが古惚けた牧場に足を運んだ。
雑草が行く手を阻み、なかなか進むことができない。
しばらくすると、一人の男性が悲鳴をあげた。
音もなく忍びよってきたのは、豹柄の鱗が生々しい大蛇だ。
見れば、おおよそ全長8メートル…これほどの大蛇ならば一般人では対抗できない。
「逃げろー!!」
そう叫んだ時には、すでに男性が一人、大蛇に呑み込まれていた。
あまりの素早さに、呑み込まれた瞬間さえ、分からないくらいだった。
大蛇の胴体は、人の大きさほどに膨れ上がり、頭と尻尾の辺りは細長くなっていた。
『力』のない者には、自然の脅威には敵わない。
逃げ延びることができたのは、三人だった。
「一般人の俺達が下手に動いたら、かえって危険だな」
「……まさか大蛇が、人間を呑み込むなんて…」
「……ウルトの両親に、なんて言えばいいんだ…」
ウルトとは、大蛇に呑み込まれた男性の名だ。
三人が村に戻った頃には、夜になっていた。
「こんな夜遅くまで、何をしておったのじゃ」
長老が鋭い眼差しで言うが、三人は黙り込んでいた。
何かあったと察した長老は、自宅に三人の若い男性を招き入れ、落ち着いた頃に、尋ねた。
「ウルトの姿が見当たらないが……まさか、お前たち……」
「……すみません。長老……俺達、エルだけでも助けたいと思って…」
一人で両親を待ち続けていた少女エルが気掛かりで、男性たちは古惚けた牧場に向ったことを長老に話した。
「それで……ウルトは、大蛇の餌食になったのじゃな」
長老の言葉に、男性たちは打ちのめされたように、声を殺して泣いた。
「やっぱり一般人の俺達じゃ、一人の少女さえ救えないのか…」
自分の非力さに、男性の一人が呟くように言った。
そんな彼らの想いも知らず、大蛇はひっそりと隠れていた。
だが、生物に善悪の概念はない。
善と悪。
それを決めるのは、人間だ。
本当に、人間なのか?
だとしたら、羊の姿をした雑魔が出没するようになったのは、何故だ。
否、迷っている暇はない。
雑魔が人を襲うことは事実だからだ。
急がねばなるまい。
これ以上、犠牲者が出る前に……。
古ぼけた牧場で、少女は生き別れた両親を待ち続けていた。
会いたい。
会いたい。
幼い少女が、最後に見たものは、両親の笑顔。
「……お父さん、お母さん…ずっと…ずっと…待ってるよ」
ただ一人。
少女は我が家で、父と母の帰りを待っていた。
小さな心を震わせながら……。
●
自由都市同盟の牧畜地域。
酪農家たちは、ここ最近の出来事に悩まされていた。
「俺の飼ってる馬たちが、何匹か行方不明でな」
「ワシのところでは、羊の群れが半分近く、いつのまにか消えちまって…」
互いに話し合い、被害は日に日に増えていることが判明した。
「そういや、聞いたか。エルちゃんのご両親がいなくなっちまったそうだよ」
初老の男性が言うと、話を聞いていた若い者たちが驚いていた。
「なにっ?! 家畜だけじゃなくて、人間も行方不明だって?!」
何者の仕業かは分からないが、狙いは人間にまで及んできたことが分かり、酪農家たちは震え上がった。
「これはただごとでねーな。ハンターオフィスに相談してみるか」
代表の男が事件を報告し、分かる範囲内で捜査が始まった。
数名のハンターが調査したところ、二本足で歩く羊の姿をした雑魔が出没し、家畜や人間を襲っている可能性が浮上した。
「雑魔と言っても、数が多いな。エルという少女が住んでいる地域では、雑草が生い茂って、大蛇もいる。これでは、うかつに近付けないし、少女も逃げることができない」
雑魔の羊たちは群れで家畜を襲撃し、魔法の矢でハンターたちを翻弄する。
かと思えば、雑魔の羊は前のめりになり、いきなり突撃してきて、ハンターを蹴散らしていく。
「意外と手強いな…もう一度、本部に連絡してみよう」
調査したハンターたちは、雑魔と大蛇を退治するため、さらにハンターを募集することにした。
●
せめてエルという少女だけでも助けようと、若い男たちが古惚けた牧場に足を運んだ。
雑草が行く手を阻み、なかなか進むことができない。
しばらくすると、一人の男性が悲鳴をあげた。
音もなく忍びよってきたのは、豹柄の鱗が生々しい大蛇だ。
見れば、おおよそ全長8メートル…これほどの大蛇ならば一般人では対抗できない。
「逃げろー!!」
そう叫んだ時には、すでに男性が一人、大蛇に呑み込まれていた。
あまりの素早さに、呑み込まれた瞬間さえ、分からないくらいだった。
大蛇の胴体は、人の大きさほどに膨れ上がり、頭と尻尾の辺りは細長くなっていた。
『力』のない者には、自然の脅威には敵わない。
逃げ延びることができたのは、三人だった。
「一般人の俺達が下手に動いたら、かえって危険だな」
「……まさか大蛇が、人間を呑み込むなんて…」
「……ウルトの両親に、なんて言えばいいんだ…」
ウルトとは、大蛇に呑み込まれた男性の名だ。
三人が村に戻った頃には、夜になっていた。
「こんな夜遅くまで、何をしておったのじゃ」
長老が鋭い眼差しで言うが、三人は黙り込んでいた。
何かあったと察した長老は、自宅に三人の若い男性を招き入れ、落ち着いた頃に、尋ねた。
「ウルトの姿が見当たらないが……まさか、お前たち……」
「……すみません。長老……俺達、エルだけでも助けたいと思って…」
一人で両親を待ち続けていた少女エルが気掛かりで、男性たちは古惚けた牧場に向ったことを長老に話した。
「それで……ウルトは、大蛇の餌食になったのじゃな」
長老の言葉に、男性たちは打ちのめされたように、声を殺して泣いた。
「やっぱり一般人の俺達じゃ、一人の少女さえ救えないのか…」
自分の非力さに、男性の一人が呟くように言った。
そんな彼らの想いも知らず、大蛇はひっそりと隠れていた。
だが、生物に善悪の概念はない。
善と悪。
それを決めるのは、人間だ。
本当に、人間なのか?
だとしたら、羊の姿をした雑魔が出没するようになったのは、何故だ。
否、迷っている暇はない。
雑魔が人を襲うことは事実だからだ。
急がねばなるまい。
これ以上、犠牲者が出る前に……。
リプレイ本文
調査隊のハンターたちが村の警護をしていると、長老に案内されて別のハンターたちがやってきた。
「行方不明の人を探すっちゅうても、まずは周辺の雑魔や大蛇を退治せりゃならん訳やな」
冬樹 文太(ka0124)は長老から話を聞いて、依頼における真の目的を察した。
「現状で分かっているのは、牧場に少女が一人で残ってることッスか」
退治するのも重要であるが、長良 芳人(ka3874)はエルという名の少女を救出することを優先したいと告げた。
「人助けに理由は必要かぃ、いや、ないねぃ」
一刃(ka4882)はへらへらと笑うが、その本心は全ての未来有る人のため……少女を助け出すことであり、村人たちを守り、同行した仲間たちを手助けすることだった。それは一刃にとって、願いそのものだった。
「妾と皆で敵を撹乱するからの。大船に乗ったつもりでいるがよいぞ」
オイゲーニエ・N・マラボワ(ka2304)が気さくな笑みを浮かべる。
「よろしくお願いしますよ! 長良さん! 今回のヒーローに何かあっては困りますから、全力で援護しますよ」
ジーク・ヴュラード(ka3589)が力説すると、芳人は少し照れたように言った。
「自分はハンターなんで、女の子は絶対に助けたいだけッス」
「今も一人取り残されて不安に違いありません…わたしも、救出のお手伝いで雑魔たちを倒しますです」
朗らかな瞳でそう告げたのは、 ターニャ=リュイセンヴェルグ(ka4979)だ。
「ほな、俺も長良の兄ちゃんを援護するで。敵はぎょうさんおるから時間との勝負や。さっさと助け出して来いや」
にぃと笑いながら文太は、芳人の頭を軽く叩き、背を向ける。
「……絶対に……助けて来い」
静かにそう告げる文太……人懐こい性格とは裏腹に雑魔への怒りが微かに滲み出ていた。
「了解ッス。まずはできるだけ敵の数を減らして、それから少女の救出に向かうつもりッス」
くったくな微笑みで芳人はそう言うが、どことなく哀愁が混ざっているようにも思えた。
詳しいことは分からないが、誰もが重い運命を背負っているのは確かだ。
ターニャもまた、その一人であった。
●
村から北へ2キロ付近にある牧場が目的地だ。
少女を救出するためには、そこまで行く必要があったが、敵がどこへ潜んでいるのかもよく分からない。
そこで、オイゲーニエは作戦を考えた。
事前に香辛料の手投げ弾を作ることにしたのだ。
村人たちからコショウ、山椒、ニンニクの香辛料を少しずつ貰い受け、使い古した布で包み、懐に携帯することにした。文太も敵を誘き寄せることに賛成して、長老から香辛料を貰った。
村から1キロほど離れても、敵は出現しなかった。中間地点に着くと、土がむき出しになっている場所があった。文太は枝を拾って地面に付き立てると、枝先に火を付けて香辛料を撒き散らす。美味しそうな香りが漂い、草むらが微かに動いていた。
匂いに反応したのは、大蛇の方が先だった。二匹の大蛇が姿を現し、芳人に襲いかかるが、辛うじて回避すると、さらに馬を走らせる。
「予定通りにはいかないってことッスか」
雑魔が姿を現さないならば、少女救出を優先すれば良いだけだ。芳人はできるだけ早く牧場へと向うため、重装馬に騎乗し北へと走る。
「長良さん! 大蛇は私たちに任せて、先へ行ってください!」
ジークは戦馬に乗り、大蛇を自分に引きつけるように左側へと移動。芳人はジークに目配せすると、馬を右側へと走らせ、さらに進んでいく。
だが、芳人の前方から魔法の矢が飛んできた。何本か回避できたが、左肩と右脚に矢が当たり、血が飛び散る。それでも構わず、芳人は牧場を目指して馬を走らせた。
「長良の兄ちゃんに矢を当てるなんざ、俺が許さねぇ!」
文太は一刃が操るゴースロンの後ろに乗せてもらい、後を追っていた。
「魔法の矢が前方から飛んできたってことは、この先に雑魔の羊がいる証拠だねぃ」
「せやな、俺らで羊を足止めすれば、長良の兄ちゃんも牧場まで辿りつけるはずや」
文太はアサルトライフル「ヴォロンテAC47」を構え、雑魔が射程距離内に入るまで慎重に狙いを定めていた。
敵二匹が射程距離内に入ったのを確認すると、文太は『強弾』で放った。
雑魔を一匹、狙い撃つことができたが、文太は覚醒していたのか無口になった。
他にも雑魔の羊がいたのか、一刃が騎乗するゴースロンに接近してくる。互いに攻撃できる間合いではなかったが、次には攻撃をしかけるだけの距離にまで近付けるようになった。
そして、大蛇がさらに二匹……出現した。
その時である。
「これでも食らうが良いぞ!」
オイゲーニエは手製のスパイス弾を大蛇に向って投げつけた。顔に香辛料をかけられた大蛇は、払うように頭を振っていた。
「この瞬間は絶対に逃しませんよ」
ジークはそう言いながら試作振動刀「オートMURAMASA」による『攻めの構え』で大蛇に攻撃を繰り出した。
鋭い一撃により、大蛇の胴体が引き裂かれ、のたうち廻る。
「私の方に転がってくるなんてねぃ、仕方がないから、こうするよぅ」
一刃は『剣心一如』で精神を整え『気息充溢』の構えを取り、日本刀「村雨丸」で攻撃をしかけた。大蛇の首を仕留めたが、なかなか蛇はしぶとく、身体をくねらせる。
オイゲーニエに同行していたポメラニアンが背後を警戒するように吠えた。
別の大蛇が二匹、オイゲーニエに接近してきたのだ。
「ジーク殿!」
大蛇に取り囲まれて、オイゲーニエが助けを呼ぶ。
「ニィナさんっ?!」
ジークはシールド「エスペランサ」で受けの体勢を取り、オイゲーニエを庇うように立った。
ふと見遣れば、背後にいた大蛇は、スパイス塗れの大蛇に被り付き、呑み込んでいくではないか。
後から出現した大蛇二匹は、スパイス蛇の身体を半分ほど飲み込んだまま、動かなくなった。
大蛇一匹に対してスパイス蛇が一匹…互いに食うか食われるかの戦いとなり、大蛇たちはハンターや羊たちには見向きもしなくなる。
「同士打ちを狙ってはいたが、まさに同士打ちじゃの」
オイゲーニエはジークに抱えられ、そのままジークが騎乗していた馬に相乗りした。
「こんなことになるとは思いませんでしたが、無茶なさらないで下さい」
ジークが心配そうに言うと、オイゲーニエは「痛み入る、ジーク殿」と礼を述べた。
「大蛇は二匹呑み込まれたが、まだまだ油断はできない……わたしは羊を狙い打つ」
ターニャは当初から狙いは羊だけだった。別人のような顔付きになり、ターニャはミラージュグレイブを構え、『踏込』で打撃の威力を上昇させる。ジークたちとは向い合わせになるようにターニャは攻撃のタイミングを計っていた。うまくいけば、羊を挟み撃ちできるかもしれない。
「助太刀、ありがとうだよぅ」
一刃はそうターニャに声をかけ、目の前にいる羊を刀で切りつけた。さきほど文太が狙い撃ちして弱っていた羊を狙ったのか、一刃の一撃で羊が一匹、消滅していく。
「蛇たちは互いに食い合っていますから、その隙に雑魔の羊たちを倒してしまいましょう」
ジークの言葉に、オイゲーニエが頷く。
「そうじゃの。妾も闘うつもりじゃ。そろそろ降ろしてくれるかの?」
「分かりました。私はニィナさんと組んで戦いますよ」
そう言ってジークはオイゲーニエを地面に降ろすと、武器を掲げた。
「行きますよ、ニィナさん」
眼前まで押し寄せてきた羊たちを見て、ジークが前衛に立ち、『強打』を繰り出す。羊の胴体が切り裂かれると、すかさずオイゲーニエが『踏込』からの『強打』でバスタードソード「ガラティン」を振り上げ、羊の頭を狙い打つ。その衝撃で、羊が崩れるように倒れた。二人のコンビネーションにより、雑魔の羊が一匹、消え去った。
「この調子で攻めまくるのじゃ」
「……さて」
文太は『威嚇射撃』で敵の移動を阻止することに成功。そのおかげでターニャは敵に接近することができ、ミラージュグレイブで羊を切り裂いていく。
「せいぜい足掻いて、大人しく狩られろ」
ターニャは冷たく鋭い眼差しで言い放つ。
「チャンスを逃す私ではないよぅ」
一刃はとっさに刀で敵を斬り付けた。その途端、雑魔の羊が一匹…また消滅していく。
乱戦となり、ハンターたちは怪我をしてしまった者もいたが、その場にいた雑魔たちは全て倒すことができた。だが、まだ他にも敵がいる可能性がある。
「文太君、後ろに乗って。エル君の助けに向かうよぅ」
ゴースロンに騎乗していた一刃は、文太が自分の後ろに乗ったことを確認すると牧場を目指して走り出した。
●
先に目的地に辿り着いていた芳人は、雑魔の羊が二匹、牧場の壁に突撃しているのを発見した。
中から少女の泣き声が響く。
「おまえら……」
芳人は怒りを顕にして『強撃』でユナイテッド・ドライブ・ソードを大きく振り回した。雑魔の羊が一匹、体勢を崩したが、残りの羊が芳人に突撃してきた。芳人は武器で敵の攻撃を受け流そうとしたが、雑魔は容赦なく芳人を蹴散らしていく。
傷だらけになりながらも、芳人は立ち上がり、武器を構えて体勢を整えた。
「……女の子には、指一本……触れさせないッスよ」
そう呟いた時、銃音が木霊した。文太が『遠射』を放ったのだ。雑魔は頭を狙い撃ちされて、ふら付く。それでも尚、芳人に襲いかかる雑魔だが、回避されてしまい、ハンターたちに攻撃する余裕さえなかった。その隙に芳人は間近にいる羊を『強打』で狙い打つ。敵の頭が砕け散り、弾けるように消えた。
「早く……女の子を……」
芳人は無我夢中で牧場の中へと入る。
部屋の隅では、少女が泣き喚いていた。
恐怖で震えていた少女の耳に、優しい声が聴こえてくる。
「もう大丈夫ッスよ。助けに来たッス」
芳人は傷の痛みも気にせず、少女に笑いかけた。安心させるように……。
思わず、少女は芳人に抱き付いた。
「さあ、村では長老さんが待ってるッスよ」
「村に……帰れるの?」
少女の問いに、芳人は答えた。
「もちろんッスよ。そのために来たッスから」
そう言いながら芳人が少女の頭を優しく撫でると、ようやく安心したのか、少女は泣き止んだ。
一刃が騎乗していた馬の足音が聴こえたかと思うと、文太が駆け込んでくる。
二人の様子に気づき、文太が安堵の声で言った。
「……さっさと村に戻って来いや、ガキんちょ」
走ってきたせいなのか、心配しているせいなのか、文太は声を荒げていた。
「ごめんなさい……迷惑かけちゃったね」
エルがしょぼんとした顔をすると、文太は我に返る。
「いやいや、謝る必要はないで」
文太の顔を見ると、いつもの明るい表情だった。
「もし何かあったら、どうなっていたことやらと思うと虫唾が走っただけや」
笑い返すエルに、文太と芳人は互いに笑い合った。
●
その頃、ジークとオイゲーニエは残り二匹となった大蛇と対峙していた。
スパイス蛇は、それぞれ別の大蛇に捕食されてしまったが、獲物があまりにも大きかったため、残りの大蛇は胴体が膨れ上がり、動きも鈍くなっている。満腹になった大蛇二匹は、何事もなく、その場から移動しようとしていたが、明らかに移動力が三分の二ほど減っていた。
「逃げると言うより、腹が満たされたから巣穴に戻るつもりかの?」
オイゲーニエは残りのスパイス弾を投げて、大蛇の行く手を阻んだ。
「大蛇退治も依頼の一環ですからね。住民たちが安心できるように、倒してしまいましょう」
ジークが『強打』を繰り出し、大蛇の胴体に叩き付けた。蛇は威嚇するかのように口を広げるが、攻撃できるだけの余力はなかったようだ。続いてオイゲーニエが『渾身撃』を繰り出し、大蛇の頭を狙い打つ。
芳人たちがその場に戻った頃には、大蛇は全て退治され、切り刻まれた肉片が散らばっていた。やがて虫たちが集まり、蛇の亡骸を這うように吸いついている。
「……あれだけ大きかった蛇も、こうなってしまっては虫の餌に過ぎぬということかの」
オイゲーニエは自然の掟を目の当たりにして、そう告げた。
「これもまた、自然の姿なんでしょうね」
感慨深くジークが応えた。
大蛇と雑魔の羊は全て倒すことができた。
ハンターたちはエルを連れて村に戻ると、長老宅へと向かう。
エルは門前で待っていた長老の姿が目に入ると走り出し、抱きついた。
長老はハンターたちを自宅に招き入れ、客室へと案内する。
「で? 行方不明者の捜索はどうするつもりなんや?」
一息ついた頃、文太は煙草を銜えたまま、気になっていたことを長老に聞いてみた。
「まずは村人たちと手分けして、ワシらだけで探してみるつもりじゃよ」
そう答える長老に、ジークが言った。
「それでも見つからなかったり、何か異変が起こったら、ハンターオフィスに相談してみて下さい」
オイゲーニエも少し心配そうに長老に告げた。
「困ったことがあれば、すぐに本部へ連絡するのじゃぞ」
「そこまで気にかけて頂き、本当に有難く思っておる。行方不明者を探すのも大事だとは考えておったのじゃが、どうしてもエルだけは助け出したいと思ってな」
長老にとって、村の子供たちは大切な存在だ。エルの居場所が分かっていても、自分の力では助け出すことができないことも分かっていた。それ故に、ハンターたちの『力』を信じていたのだ。
「ハンターの皆さん、助けてくれて本当にありがとう」
エルが御辞儀をすると、芳人は懐かしむように言った。
「助けるのは当たり前ッスよ」
「芳人お兄ちゃん、だーい好き」
エルはそう言いながら、芳人の肩に乗ろうとした。だが、なかなか届かない。
「抱っこッスか。甘えん坊ッスね」
芳人はそう言うと、エルを両手で抱きかかえた。
「やったー、お姫さま抱っこー」
エルは無邪気にはしゃいでいた。
「なんやエル、随分と芳人になついて…どういうことや?」
文太が楽しげに、意味ありげに言うと、エルは両手を上げた。
「エルね、一人っ子だから、芳人お兄ちゃんみたいな『お兄ちゃん』がいたら良いなって」
「最終日までは芳人と遊んでもらったらどうや」
文太の意見に、エルはうれしそうに笑っていた。
「んじゃ、文太お兄ちゃんも遊んでー」
「なんや、俺もかい。遊ぶ言うてもな」
文太がそう言うと、一刃がひょっこりと顔を出した。
「なんだか面白そうだねぃ」
何やら一刃はエルの耳元で小声で話していた。しばらして。
「それじゃ、芳人お兄ちゃんが『パパ』で、文太お兄ちゃんが『ママ』になってねー」
「なんやそりゃ、待て待て待て待て! 俺がママ役かいな」
さすがに文太も慌てていた。
「わたしが『お姉さん』役をしますです!」
ターニャも何やらノリノリであった。
「そうと決まったら、ママゴトの準備をしますです!」
そんなやり取りを見て、ジークとオイゲーニエも楽しそうだった。
「行方不明の人を探すっちゅうても、まずは周辺の雑魔や大蛇を退治せりゃならん訳やな」
冬樹 文太(ka0124)は長老から話を聞いて、依頼における真の目的を察した。
「現状で分かっているのは、牧場に少女が一人で残ってることッスか」
退治するのも重要であるが、長良 芳人(ka3874)はエルという名の少女を救出することを優先したいと告げた。
「人助けに理由は必要かぃ、いや、ないねぃ」
一刃(ka4882)はへらへらと笑うが、その本心は全ての未来有る人のため……少女を助け出すことであり、村人たちを守り、同行した仲間たちを手助けすることだった。それは一刃にとって、願いそのものだった。
「妾と皆で敵を撹乱するからの。大船に乗ったつもりでいるがよいぞ」
オイゲーニエ・N・マラボワ(ka2304)が気さくな笑みを浮かべる。
「よろしくお願いしますよ! 長良さん! 今回のヒーローに何かあっては困りますから、全力で援護しますよ」
ジーク・ヴュラード(ka3589)が力説すると、芳人は少し照れたように言った。
「自分はハンターなんで、女の子は絶対に助けたいだけッス」
「今も一人取り残されて不安に違いありません…わたしも、救出のお手伝いで雑魔たちを倒しますです」
朗らかな瞳でそう告げたのは、 ターニャ=リュイセンヴェルグ(ka4979)だ。
「ほな、俺も長良の兄ちゃんを援護するで。敵はぎょうさんおるから時間との勝負や。さっさと助け出して来いや」
にぃと笑いながら文太は、芳人の頭を軽く叩き、背を向ける。
「……絶対に……助けて来い」
静かにそう告げる文太……人懐こい性格とは裏腹に雑魔への怒りが微かに滲み出ていた。
「了解ッス。まずはできるだけ敵の数を減らして、それから少女の救出に向かうつもりッス」
くったくな微笑みで芳人はそう言うが、どことなく哀愁が混ざっているようにも思えた。
詳しいことは分からないが、誰もが重い運命を背負っているのは確かだ。
ターニャもまた、その一人であった。
●
村から北へ2キロ付近にある牧場が目的地だ。
少女を救出するためには、そこまで行く必要があったが、敵がどこへ潜んでいるのかもよく分からない。
そこで、オイゲーニエは作戦を考えた。
事前に香辛料の手投げ弾を作ることにしたのだ。
村人たちからコショウ、山椒、ニンニクの香辛料を少しずつ貰い受け、使い古した布で包み、懐に携帯することにした。文太も敵を誘き寄せることに賛成して、長老から香辛料を貰った。
村から1キロほど離れても、敵は出現しなかった。中間地点に着くと、土がむき出しになっている場所があった。文太は枝を拾って地面に付き立てると、枝先に火を付けて香辛料を撒き散らす。美味しそうな香りが漂い、草むらが微かに動いていた。
匂いに反応したのは、大蛇の方が先だった。二匹の大蛇が姿を現し、芳人に襲いかかるが、辛うじて回避すると、さらに馬を走らせる。
「予定通りにはいかないってことッスか」
雑魔が姿を現さないならば、少女救出を優先すれば良いだけだ。芳人はできるだけ早く牧場へと向うため、重装馬に騎乗し北へと走る。
「長良さん! 大蛇は私たちに任せて、先へ行ってください!」
ジークは戦馬に乗り、大蛇を自分に引きつけるように左側へと移動。芳人はジークに目配せすると、馬を右側へと走らせ、さらに進んでいく。
だが、芳人の前方から魔法の矢が飛んできた。何本か回避できたが、左肩と右脚に矢が当たり、血が飛び散る。それでも構わず、芳人は牧場を目指して馬を走らせた。
「長良の兄ちゃんに矢を当てるなんざ、俺が許さねぇ!」
文太は一刃が操るゴースロンの後ろに乗せてもらい、後を追っていた。
「魔法の矢が前方から飛んできたってことは、この先に雑魔の羊がいる証拠だねぃ」
「せやな、俺らで羊を足止めすれば、長良の兄ちゃんも牧場まで辿りつけるはずや」
文太はアサルトライフル「ヴォロンテAC47」を構え、雑魔が射程距離内に入るまで慎重に狙いを定めていた。
敵二匹が射程距離内に入ったのを確認すると、文太は『強弾』で放った。
雑魔を一匹、狙い撃つことができたが、文太は覚醒していたのか無口になった。
他にも雑魔の羊がいたのか、一刃が騎乗するゴースロンに接近してくる。互いに攻撃できる間合いではなかったが、次には攻撃をしかけるだけの距離にまで近付けるようになった。
そして、大蛇がさらに二匹……出現した。
その時である。
「これでも食らうが良いぞ!」
オイゲーニエは手製のスパイス弾を大蛇に向って投げつけた。顔に香辛料をかけられた大蛇は、払うように頭を振っていた。
「この瞬間は絶対に逃しませんよ」
ジークはそう言いながら試作振動刀「オートMURAMASA」による『攻めの構え』で大蛇に攻撃を繰り出した。
鋭い一撃により、大蛇の胴体が引き裂かれ、のたうち廻る。
「私の方に転がってくるなんてねぃ、仕方がないから、こうするよぅ」
一刃は『剣心一如』で精神を整え『気息充溢』の構えを取り、日本刀「村雨丸」で攻撃をしかけた。大蛇の首を仕留めたが、なかなか蛇はしぶとく、身体をくねらせる。
オイゲーニエに同行していたポメラニアンが背後を警戒するように吠えた。
別の大蛇が二匹、オイゲーニエに接近してきたのだ。
「ジーク殿!」
大蛇に取り囲まれて、オイゲーニエが助けを呼ぶ。
「ニィナさんっ?!」
ジークはシールド「エスペランサ」で受けの体勢を取り、オイゲーニエを庇うように立った。
ふと見遣れば、背後にいた大蛇は、スパイス塗れの大蛇に被り付き、呑み込んでいくではないか。
後から出現した大蛇二匹は、スパイス蛇の身体を半分ほど飲み込んだまま、動かなくなった。
大蛇一匹に対してスパイス蛇が一匹…互いに食うか食われるかの戦いとなり、大蛇たちはハンターや羊たちには見向きもしなくなる。
「同士打ちを狙ってはいたが、まさに同士打ちじゃの」
オイゲーニエはジークに抱えられ、そのままジークが騎乗していた馬に相乗りした。
「こんなことになるとは思いませんでしたが、無茶なさらないで下さい」
ジークが心配そうに言うと、オイゲーニエは「痛み入る、ジーク殿」と礼を述べた。
「大蛇は二匹呑み込まれたが、まだまだ油断はできない……わたしは羊を狙い打つ」
ターニャは当初から狙いは羊だけだった。別人のような顔付きになり、ターニャはミラージュグレイブを構え、『踏込』で打撃の威力を上昇させる。ジークたちとは向い合わせになるようにターニャは攻撃のタイミングを計っていた。うまくいけば、羊を挟み撃ちできるかもしれない。
「助太刀、ありがとうだよぅ」
一刃はそうターニャに声をかけ、目の前にいる羊を刀で切りつけた。さきほど文太が狙い撃ちして弱っていた羊を狙ったのか、一刃の一撃で羊が一匹、消滅していく。
「蛇たちは互いに食い合っていますから、その隙に雑魔の羊たちを倒してしまいましょう」
ジークの言葉に、オイゲーニエが頷く。
「そうじゃの。妾も闘うつもりじゃ。そろそろ降ろしてくれるかの?」
「分かりました。私はニィナさんと組んで戦いますよ」
そう言ってジークはオイゲーニエを地面に降ろすと、武器を掲げた。
「行きますよ、ニィナさん」
眼前まで押し寄せてきた羊たちを見て、ジークが前衛に立ち、『強打』を繰り出す。羊の胴体が切り裂かれると、すかさずオイゲーニエが『踏込』からの『強打』でバスタードソード「ガラティン」を振り上げ、羊の頭を狙い打つ。その衝撃で、羊が崩れるように倒れた。二人のコンビネーションにより、雑魔の羊が一匹、消え去った。
「この調子で攻めまくるのじゃ」
「……さて」
文太は『威嚇射撃』で敵の移動を阻止することに成功。そのおかげでターニャは敵に接近することができ、ミラージュグレイブで羊を切り裂いていく。
「せいぜい足掻いて、大人しく狩られろ」
ターニャは冷たく鋭い眼差しで言い放つ。
「チャンスを逃す私ではないよぅ」
一刃はとっさに刀で敵を斬り付けた。その途端、雑魔の羊が一匹…また消滅していく。
乱戦となり、ハンターたちは怪我をしてしまった者もいたが、その場にいた雑魔たちは全て倒すことができた。だが、まだ他にも敵がいる可能性がある。
「文太君、後ろに乗って。エル君の助けに向かうよぅ」
ゴースロンに騎乗していた一刃は、文太が自分の後ろに乗ったことを確認すると牧場を目指して走り出した。
●
先に目的地に辿り着いていた芳人は、雑魔の羊が二匹、牧場の壁に突撃しているのを発見した。
中から少女の泣き声が響く。
「おまえら……」
芳人は怒りを顕にして『強撃』でユナイテッド・ドライブ・ソードを大きく振り回した。雑魔の羊が一匹、体勢を崩したが、残りの羊が芳人に突撃してきた。芳人は武器で敵の攻撃を受け流そうとしたが、雑魔は容赦なく芳人を蹴散らしていく。
傷だらけになりながらも、芳人は立ち上がり、武器を構えて体勢を整えた。
「……女の子には、指一本……触れさせないッスよ」
そう呟いた時、銃音が木霊した。文太が『遠射』を放ったのだ。雑魔は頭を狙い撃ちされて、ふら付く。それでも尚、芳人に襲いかかる雑魔だが、回避されてしまい、ハンターたちに攻撃する余裕さえなかった。その隙に芳人は間近にいる羊を『強打』で狙い打つ。敵の頭が砕け散り、弾けるように消えた。
「早く……女の子を……」
芳人は無我夢中で牧場の中へと入る。
部屋の隅では、少女が泣き喚いていた。
恐怖で震えていた少女の耳に、優しい声が聴こえてくる。
「もう大丈夫ッスよ。助けに来たッス」
芳人は傷の痛みも気にせず、少女に笑いかけた。安心させるように……。
思わず、少女は芳人に抱き付いた。
「さあ、村では長老さんが待ってるッスよ」
「村に……帰れるの?」
少女の問いに、芳人は答えた。
「もちろんッスよ。そのために来たッスから」
そう言いながら芳人が少女の頭を優しく撫でると、ようやく安心したのか、少女は泣き止んだ。
一刃が騎乗していた馬の足音が聴こえたかと思うと、文太が駆け込んでくる。
二人の様子に気づき、文太が安堵の声で言った。
「……さっさと村に戻って来いや、ガキんちょ」
走ってきたせいなのか、心配しているせいなのか、文太は声を荒げていた。
「ごめんなさい……迷惑かけちゃったね」
エルがしょぼんとした顔をすると、文太は我に返る。
「いやいや、謝る必要はないで」
文太の顔を見ると、いつもの明るい表情だった。
「もし何かあったら、どうなっていたことやらと思うと虫唾が走っただけや」
笑い返すエルに、文太と芳人は互いに笑い合った。
●
その頃、ジークとオイゲーニエは残り二匹となった大蛇と対峙していた。
スパイス蛇は、それぞれ別の大蛇に捕食されてしまったが、獲物があまりにも大きかったため、残りの大蛇は胴体が膨れ上がり、動きも鈍くなっている。満腹になった大蛇二匹は、何事もなく、その場から移動しようとしていたが、明らかに移動力が三分の二ほど減っていた。
「逃げると言うより、腹が満たされたから巣穴に戻るつもりかの?」
オイゲーニエは残りのスパイス弾を投げて、大蛇の行く手を阻んだ。
「大蛇退治も依頼の一環ですからね。住民たちが安心できるように、倒してしまいましょう」
ジークが『強打』を繰り出し、大蛇の胴体に叩き付けた。蛇は威嚇するかのように口を広げるが、攻撃できるだけの余力はなかったようだ。続いてオイゲーニエが『渾身撃』を繰り出し、大蛇の頭を狙い打つ。
芳人たちがその場に戻った頃には、大蛇は全て退治され、切り刻まれた肉片が散らばっていた。やがて虫たちが集まり、蛇の亡骸を這うように吸いついている。
「……あれだけ大きかった蛇も、こうなってしまっては虫の餌に過ぎぬということかの」
オイゲーニエは自然の掟を目の当たりにして、そう告げた。
「これもまた、自然の姿なんでしょうね」
感慨深くジークが応えた。
大蛇と雑魔の羊は全て倒すことができた。
ハンターたちはエルを連れて村に戻ると、長老宅へと向かう。
エルは門前で待っていた長老の姿が目に入ると走り出し、抱きついた。
長老はハンターたちを自宅に招き入れ、客室へと案内する。
「で? 行方不明者の捜索はどうするつもりなんや?」
一息ついた頃、文太は煙草を銜えたまま、気になっていたことを長老に聞いてみた。
「まずは村人たちと手分けして、ワシらだけで探してみるつもりじゃよ」
そう答える長老に、ジークが言った。
「それでも見つからなかったり、何か異変が起こったら、ハンターオフィスに相談してみて下さい」
オイゲーニエも少し心配そうに長老に告げた。
「困ったことがあれば、すぐに本部へ連絡するのじゃぞ」
「そこまで気にかけて頂き、本当に有難く思っておる。行方不明者を探すのも大事だとは考えておったのじゃが、どうしてもエルだけは助け出したいと思ってな」
長老にとって、村の子供たちは大切な存在だ。エルの居場所が分かっていても、自分の力では助け出すことができないことも分かっていた。それ故に、ハンターたちの『力』を信じていたのだ。
「ハンターの皆さん、助けてくれて本当にありがとう」
エルが御辞儀をすると、芳人は懐かしむように言った。
「助けるのは当たり前ッスよ」
「芳人お兄ちゃん、だーい好き」
エルはそう言いながら、芳人の肩に乗ろうとした。だが、なかなか届かない。
「抱っこッスか。甘えん坊ッスね」
芳人はそう言うと、エルを両手で抱きかかえた。
「やったー、お姫さま抱っこー」
エルは無邪気にはしゃいでいた。
「なんやエル、随分と芳人になついて…どういうことや?」
文太が楽しげに、意味ありげに言うと、エルは両手を上げた。
「エルね、一人っ子だから、芳人お兄ちゃんみたいな『お兄ちゃん』がいたら良いなって」
「最終日までは芳人と遊んでもらったらどうや」
文太の意見に、エルはうれしそうに笑っていた。
「んじゃ、文太お兄ちゃんも遊んでー」
「なんや、俺もかい。遊ぶ言うてもな」
文太がそう言うと、一刃がひょっこりと顔を出した。
「なんだか面白そうだねぃ」
何やら一刃はエルの耳元で小声で話していた。しばらして。
「それじゃ、芳人お兄ちゃんが『パパ』で、文太お兄ちゃんが『ママ』になってねー」
「なんやそりゃ、待て待て待て待て! 俺がママ役かいな」
さすがに文太も慌てていた。
「わたしが『お姉さん』役をしますです!」
ターニャも何やらノリノリであった。
「そうと決まったら、ママゴトの準備をしますです!」
そんなやり取りを見て、ジークとオイゲーニエも楽しそうだった。
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依頼相談掲示板 | |||
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作戦相談所 冬樹 文太(ka0124) 人間(リアルブルー)|29才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2015/06/14 04:29:08 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/10 22:42:47 |