• 聖呪

【聖呪】緑髪の少女、亜人を『救う』

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/06/14 09:00
完成日
2015/06/15 02:27

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●ウィーダの街にて
 王国北部に位置するウィーダの街に到着した緑髪の少女と翁。
 しばらくは、この街を拠点に活動する予定であったが、思わぬ事態が発生していた。
「ゲホホ……」
 翁が大きく咽る。
 粥を飲み込もうとしてもこれだ。
「オキナ、大丈夫?」
「……ダメじゃ……ノゾミ嬢ちゃん、ワシは、もう死ぬ……」
 宿のベットで横たわる翁。
 しかし、緑髪の少女は呆れていた。
「ダメですよ。この薬草粥を頑張って食べて下さい」
「嫌じゃ。そんな、不味い物、全部食べたら、死んでしまう」
「もう! 少しは、我慢して下さい!」
 アツアツのそれを思いっきり、口の中に押し込む少女。
 必死の抵抗を試みる翁であったが、無駄であった。無理矢理食べさせられ、その都度、オエオエと涙目で咽る。
「ノゾミ嬢ちゃん……ワシは薬が良い……」
「……だから、旅費は余裕を持っていきましょうと言ったのです」
 少女と翁は、活動に必要な最低限度のお金しか持っていなかった。先の依頼の報酬も滞在費で消える予定である。
 根城に戻れば、それこそ、屋敷の一つ二つ軽く買える程はあるのだが……。
「薬草粥で我慢して下さい。もっと効果のある物を山に入って取ってきますから」
「し、試練じゃ……」
 こうして、緑髪の少女は、ウィーダの街の北側の山へと向かったのであった。
 ゴブリンを倒せば、報奨金も出ると言う話だし、遭遇したら一石二鳥かもしれないと思いながら。

●ウィーダ領主の館にて
「王国からの援助が届いたと思ったら、兵力ではなく、食糧か……」
 ウィーダの街の領主が、援助内容がまとめられた書類に印を押した。
 しかも、食糧の大部分は、今の街から移転が決まっている新しい街へと運ばれている。
「辺境への遠征。そして、王国北部各地での亜人騒ぎで、どこも兵力不足です」
 兵力の援助を願ってもすぐに到着しない事を見越して、『軍師騎士』と呼ばれる痩せた騎士は、兵力ではなく、大量の食糧を要求したのだ。
 備蓄庫が足りず、新たに増築する程だ。
「まぁ、腹が減っては戦は出来ぬと言う程だ。あるに越した事はないから、構わないがな」
「ご理解頂けると、幸いです」
 真面目な顔をして頭を下げる痩せた騎士。
「そういえば、街の北側の山で新しい報告があったぞ。なんでも、新種のラプターとか」
「新種のラプターですか?」
 『軍師騎士』が疑問の声をあげる。
 ウィーダの街の領主が報告書の束から、その事が記されている書類を取りだす。
 痩せた騎士はその書類を受け取ると熱心に読み始める。
「炎や酸を吐いたり、奇怪な叫び声で動きを妨げるラプター……」
「いずれも、ゴブリンが乗っていたわけではないようだがな」
「……ゴブリンなら、なにかわかるかもしれませんね」
 少し考えた末、痩せた騎士はそんな言葉を発する。
「話が通じるとでも?」
「どうでしょうか。ただ、試してみる価値はあるとは思います。何事も」
 軍師騎士の台詞に領主は肩を竦めた。
 これまでも、ウィーダの街は亜人との交渉を水面下で行ってきた経緯がある。
 だが、いずれも成功する事は無かった。いや、そもそも、交渉すらできなかった。
「ここは、ハンターにお願いしましょう」
 脅威となると思われる新種のラプター討伐と、ゴブリンとの折衝を。

●一期一会

 ガサガサガサ――


 それは、突然だった。
 森の藪の中からゴブリンが飛び出してきたのだ。
 襲撃かと構えたノゾミ。ゴブリンの突進を避けようと右に動く。
 が、ゴブリンも向かってくる方向を変える。ならば左に……。あれ? 動きが読まれてる!?
「まっ、待って下さいぃ!」
「メギャァァァ!」
 一人と一匹が、豪快にぶつかり合った。
 どうやら、ゴブリンは襲いかかってきたわけではなさそうだ。
「ニ、ニンゲン、タスケロ」
 片言で話しかけてくるゴブリン。
 ノゾミが言葉の意味を理解するのに、時間はかからなかった。
 藪の中から、ゴブリンを追いかけてくるようにラプターが飛び出してきたのだ。
 小さい恐竜の様なラプターだが、尋常な様子ではなかった。
「な、なんでしょうか、このラプターさん達は……」
 ノゾミが驚くのも無理がない。
 明らか生気が無い。無い所か、負のマテリアルを連想させる黒いオーラが漂っている。
 歪虚化? でも、なにか違う?
「…………」
 ノゾミはゴブリンと目を合わす。
 まるで申し合わせたように、一人と一匹は同じ方向に走りだした。
「ゴブリンさん! 同じ方向に逃げないで下さいぃ!」
「ソレハ、コッチノ、セリフダ」
 必死に逃げるノゾミとゴブリンを追いかけてくる謎のラプター数匹。
「ゴブリンさんの乗物ですよね。ゴブリンさんがなんとかして下さいよぉ!」
 小さいラプターを駆るゴブリンもいる。
 機動力があり、なかなかの脅威である。もっとも、全てのゴブリンが乗れるわけでもないのだが。
「ニンゲン、オレハ、『エネミン』トヨベ。フカイダ」
「それでは、私も、『ノゾミ』と呼んで下さいよ!」
 一人と一匹は森から草原へと抜けだした。謎のラプターとの距離は、ほとんどない。このままだと、背中から襲われるだけだ。
 もはや、戦うほかないだろう。
「こうなったら、やるしかありません!」
「ヨシ、ワカッタ」
 エネミンと名乗ったゴブリンの返事に、ノゾミはアルケミストデバイスが埋め込んである篭手を構えた。
 ゴブリンも、小さい盾と棍棒を構えるのであった。

リプレイ本文

●発見
「……という事みたいで、大きいトカゲみたいなものね」
 シエラ・ヒース(ka1543)が、探索場所となる山の地図を広げながら説明した。
 仲間の何人かが頷く。
 ラプターの生態について、事前に確認した事を話していたのだ。
「ゴブリンとの交渉ですか……言葉が通じるのでしょうか……」
 首を傾げるのは、マヘル・ハシバス(ka0440)。新種と思われるラプターについて、なにかゴブリンが知っているのではないかというのが依頼主の考えだ。
 ハンター達はゴブリンとの折衝を任されていた。
 ゴブリンの中には知能が高いものもおり、そういった個体は人間の言葉を理解している場合もあるというが……。
「ラプターの調査討伐はともかくゴブリンに聞くのは望み薄そーですけど……」
 葛音 水月(ka1895)の言う通り、そもそも、敵対関係にあるゴブリンとの折衝は難しいのが一般的だ。
 新種ラプターとは如何なる姿形なのかも気になる所だ。できれば、ペットにできないかなーと水月は思う。
「なにか聞こえますね」
 もう少しで山の中だという所で、叫び声が聞こえ、J(ka3142)が耳に手を当てた。
 一行はお互い顔を見合し、一気に坂を登り切る。
「ハンター? いや、覚醒者とゴブリンかしら?」
 手裏剣を素早く構えるジェーン・ノーワース(ka2004)。
 覚醒者と思われる少女とゴブリンがお互いの背後を庇うように立っていたのだ。
 そして、一人と一匹を、5体ほどのラプターが囲んでいた。
 小鳥遊 時雨(ka4921)が元気で少女に呼び掛ける。
「やっほー! ノゾミ! 助太刀にきたよん」
 少女の表情がパッと明るくなった。
「このゴブ……エネミンを守らないといけないのですー!」
 ノゾミの返事に、ゴブリンは醜い顔を歪ませていた。
 驚いているのか、片言で訴えていた。なにを言っているかまでは聞き取れない。
「まー。詳しい話は後! 今は、恐竜退治だよ!」
 ノゾミ達を守る為に、ラプターへ突撃する仲間を支援すべく、時雨は矢を引き絞った。

●救出
 戦況を見て、Jが機導術を繰り出す。まずはラプターに囲まれている少女とゴブリンの安全を優先を狙う。
 その為に、突入路の確保が先決と判断した。光輝く三角形が宙に現れると、各々の頂点から光が放たれる。
(外見的には、ほぼ普通のラプターの様ですが、黒いオーラを発していますね)
 冷静に分析するJ。今回は調査を兼ねているのだ。
 どんな能力を持っているのか確認も忘れない。
「ラプターは、乗り物らしいし見えない何かが乗ってたりー?」
 じぃーと狙いを定めながら引き絞った矢を放つ時雨。
 いくらみても、ラプターの背には何者も乗って無かった。考え過ぎたようだ。
「ノゾミさんが何でゴブリンと!? 敵対はしていないようですし。それなら今の敵は……」
 マヘルがマテリアルを集中させながら、驚いていた。
 禍々しい雰囲気を発しているラプターが、恐らく、新種とされるラプターなのだろうと思う。
「シエラさん!」
「任せて」
 自身のマテリアルを仲間へ流し込む。
 その援護を受けて、シエラが、今、まさにノゾミの襲いかかろうとしたラプターに殴りかかり、吹き飛ばした。
「私はシエラ、依頼を受けたハンター、よ。あなたたちは?」
「あ、ありがとうございます。私はノゾミです」
「オレハ、エネミン、ダ」
 一先ず、合流は果たした。シエラはノゾミとエネミンを庇う様にラプターと向きあう。
 無理矢理こじ開けた突破口に、ジェーンと水月が、ラプターを無視して素早い動きで割り込んだ。
「ニンゲン、フエタ」
 エネミンが驚いていた。
「詳しい事は、この後すぐに話すから。まずは、この状況を突破するのが優先でしょ」
「どっちも無事ですかー? 今からは、僕たちの時間だから、もう大丈夫ですよー♪」
 ジェーンと水月が加勢したおかげで、ノゾミとエネミンはハンター達に囲まれる形となった。一先ず、安心だろう。
 特に人語を話せるゴブリンの安全を確保したのは大きいかもしれない。
「ヤレ、ニンゲン、オレヲ、マモレ」
「……聞かなきゃいけないことがあるので、あなたも一緒に守ります」
 水月の優しげな言葉とは違い、その表情は黒かった。
 あれは、きっと、残酷でかつ、楽しそうな、なにかを考えている感じだ。彼の覚醒時に現れる黒猫の尻尾が、真っ直ぐ伸びていた。

●討伐
 マヘルが宙に手をかざすと、光り輝く三角形が現れる。機導術のデルタレイだ。
 しかし、彼女の顔は浮かない表情だった。
「あの時の、あの技、再現ができませんね。スキルである以上、私にも真似出来ないはずは無いのですが……」
 悔しそうに呟く。ノゾミと一緒にいたオキナという人物が放った『三角錐のデルタレイ』――テトラレイ――を真似ようと思ったのだが、出現したのは普通のデルタレイだった。
 それでも、放たれる光は確実にラプターを傷つけていく。
「グラッセ!」
 前衛の隙を突いてエネミンを狙ってくるラプターに対処すべく、シエラは旅の仲間である犬の名を呼んだ。
 金色のマテリアルに包まれたグラッセが、一直線にラプターに向かって跳ねて、ラプターを撃退した。
 元に姿に戻ったグラッセがよろよろと円陣の中に戻る。エネミンが怯える視線を向けていた。
「私たちは狩人よ。あなたは獲物じゃあないわ――ねぇ、グラッセ」
 返事のつもりなのだろうか、グラッセが小さく鳴いた気がした。
 水月がラプターの口や動きに細心の注意を払いながら、刀を振っていた。
「どんな攻撃があるんでしょー? 追い詰めたら、とっておきを見せてくれたりしますー?」
 素早い動きでラプターを翻弄する。
 炎や酸を吐くが、その悉くを彼は避けきった。
「自分で威力まで知るのは痛いし、やーですね、っと」
 その時、ラプターが今までにない動きを見せた。
 空を見上げると、奇怪な叫び声をあげたのだ。
 身体のキレが鈍くなるような気をジェーンはした。
「でも、大した事ないわよ」
 マテリアルを集中し叫びに抵抗すると、ラプターが放った力を打ち破る。
 素早く手首を返し、喉元に向かってジェーンは手裏剣を投げつけた。
 スパッと綺麗に突き刺さる。
「外皮よりも、内側の方が脆そうよね」
 少しずつであるが、新種ラプターの能力が解明しつつあった。
 Jが冷静に、ラプターの外見的特徴や行動、特性等を注視していた。
「通常のラプターと比べ、各能力の向上と特殊能力の保有ですか」
 踵からマテリアルの噴出し、跳躍する様な形で、ラプターの囲みの中に入った。
 ノゾミとエネミンへの護衛の為だ。同時に、前衛を支えている仲間を掩護する為に、機導術を使って、攻撃を再開する。
「しかし、雑魔化しているというわけではなさそうです」
 死んでいるという様子には見えなかった。
 囲みの外から矢を放ち続けていた時雨は、ラプターの動作を見極めていた。
 炎や酸を吐きだす予備動作を見られたら仲間に注意を呼び掛ける。
「また叫びがくるよー」
 一体のラプターが空を見上げる動作をした。
 気をつけていれば、万が一も少なくなるだろう。
「ノゾミには触れさせないから!」
 エネミンを庇おうとしたノゾミを守る為、酸を射出しようとしたラプターを狙った。
 矢が深くラプターの口元に突き刺さる。

 作戦が功を期し、ハンター達は全体的にラプターを圧倒していた。エネミンを狙った攻撃も、マヘルが作り出した光り輝く壁で阻まれる。幾人かに軽い傷をつけただけで、ラプターは全滅したのであった。

●北から来る災厄
「……つまり、オキナが風邪ひいて薬草を取りに山に来たら、追われているエーネミンと遭遇したって事?」
 ノゾミから経緯を説明されて、時雨がポンと手を叩く。
 これは、帰りに薬草取りを手伝うかと思いながら。
「ニンゲン、オレハ、エネミンダ」
 なにか不満そうに言うゴブリン。
 助けて貰ったという割りには、なにか偉そうに醜い顔を精一杯あげていた。
「まー、助けてもらった恩を返すと思ってさー。ちょっとお話聞かせてくんない?」
「ニンゲンノ、オンナ、バカリダナ」
 エネミンがハンター全員を見渡して、そう言った。
 どうやら、彼の眼には水月が女性と判断されているようだ。種族も違うし、水月が中性的な容姿もしているので、仕方ない事かもしれないが。
「やっぱり、ゴブリンでも痛いのとか急所は人と同じだったりするんでしょーか?」
 水月が刀を抜いた状態でエネミンに近付く。
 慌てて、エネミンがノゾミの影に隠れた。
「こらこら。水月、やり過ぎは駄目っしょ」
 時雨が、いつの間に持ってきたハリセンで、彼の後頭部をスパーンと叩く。
「いたぁーいっ。ちょっと気になること聞いただけなのに、ですぅー」
「これじゃ、話しにならないでしょ!」
「オ、オカシナ、ニンゲン、ドモメ」
 だが、場の雰囲気が軽くなったのは確かであった。
 面白かったのか、ノゾミが笑っている。その影に隠れたエネミンが安全と判断したのか、ハンター達の前に出て来た。
 シエラがラプターの死骸を指差して訊ねる。
「ラプターはあなた達が管理しているものじゃないの?」
 ゴブリンは時として、ラプターを馬代わりにする。
 小さい恐竜のようではあるが、飼い馴らされ、訓練を受けると、山の中でも駆ける事があるようなので、意外と迷惑な存在である。
「ソンナコトハナイ。アレハ、ヤセイノ、ラプターダ」
 ゴブリンは片言で返事をした。どうやら、野生だったようだ。
 それなら、ラプターに騎乗しているゴブリンがいないのも説明がついた。
「さっきのラプター。何かに狂わされていた感じでしたが……」
 マヘルは先程の戦闘を思い出しながら、思った事を呟く。
 明らかに異常な雰囲気だったのは明らかだ。
 少なくとも、通常のラプターは炎や酸を吐いたり、奇怪な叫び声をあげたりはしない。
 マヘルの台詞にシエラが可能性のある事を訊ねる。
「歪虚に遭遇したとか、見たことのない物を食べてたとかもない?」
「ナイト、オモウ」
 これでは、分からない事だらけだ。
「あなた達は、群れで動いているものだと思っていましたが、エネミンさんは一人ですか?」
 マヘルの質問に、首を横に振るエネミン。
「イクツカ、ムレ、ソンザイ。オレハ、ヤセイラプター、ツカマエニ、キタ」
「素直が一番、よ」
 これまで、嘘をついている様子が見られないので、シエラがそんな事を口にして続ける。
「つまり、あなたが知っているのは、異常なラプターだけで、異変の前兆とかわからないのね?」
「ソウイウコトダ」
 コクコクと頷きながら答える。
「なにかが、動いてるんでしょーけど、その辺どうなのです?」
 水月の質問に答えたのはゴブリンではなく、ジェーンだった。
 ゴブリンへの聞き込みは皆に任せるつもりだったが、思い立った事ができたからだ。
「北のゴブリン達が一斉に南下しなければいけなかった理由があるという事かしら」
 王国北部各地で亜人の騒動が発生していた。
 これは、なにか理由がある事を感じさせる。今回のラプター調査も、元々は、ゴブリンの騎乗生物だからという点もあるから行われたはずだ。
 となると、ひとまず、調べられる所から調べるしかない。
「オレノ、アルジ、ドウゾクノ、アラソイフリ。ダカラ、ラプター、ホジュウシニ、キタ」
「ゴブリン同士の縄張り争い……ね」
 片言のエネミンの言葉を聞き取り、シエラは苦笑を浮かべた。
 単なる縄張り争いで、これほど、広範囲にゴブリンが南下するものなのだろうか。もし、そうなら、明らかに異常な事態だ。
「そういえば、この前、ラプターの大きい足跡を見た気がする」
「そうですね。なにか関係があるのでしょうか?」
 時雨とマヘルの言葉に、エネミンが驚いた。
 無駄に多いリアクションを交えながら答える。
「ソレ、オレノ、アルジダ。ベツノ、ムレノ、カリ、テツダイニ、イッテタ」
「強いのかな?」
 水月がそんな疑問を口にする。
 大きいラプターに乗る位だから、戦闘力も普通のゴブリンとは違いそうな気もする。
「オレノ、アルジ、ツヨイ。ニンゲンノ、コトバモ、オシエテ、モラッタ」
 誇らしい様に胸を張るエネミン。
「それでも、縄張り争いに不利なんだー。エネミン一人で帰れる? もし、危険ならどーしよっか、ノゾミー?」
「かといって、エネミンの群れに案内されるのは怖いです」
 ノゾミが困った様な表情を浮かべた。
「エネミンさん、身の安全は保障するから一緒に来てくれますか?」
「ニンゲントハ、イッショニ、イラレナイ。ソレニ、オレハ、コノラプター、アルジニ、ツタエナイト」
 マヘルの誘いに対するゴブリンの返事から、今回の件はエネミンのいる群れでも、問題にあると思えた。
 一体、王国北部でなにが起こっているというのか。
「オマエタチ、ニンゲンニシテハ、イイニンゲン。オレノ、アルジ、キット、オンハカエス」
 エネミンは森の中に向かって歩き出しながら言った。
 群れに帰るつもりなのだろう。
「サラバダ。タスケテクレテ、アリガトウ」
「さよなら、エネミン」
 ノゾミが手を振る。
 ゴブリンは少し間の後に、醜い小さい手を振ると、森の中に消えて行った。
 それを見送ってから、少女はハンター達に振り返った。
「私はノゾミと申します。皆さま、ありがとうございました」
「いいのよ。気にしないで。こっちの仕事も捗ったし」
 全員に向かって、丁寧にお礼を述べたノゾミに、シエラは微笑みながら答える。
「そうだよー。気にしなくていいよ、ノゾミ!」
「お久しぶりです。怪我がなくてよかったです」
 飛びつくように時雨が駆け寄り、マヘルが優しげな顔をした。
「時雨様も、マヘル様も、再び助けて下さってありがとうございます」
「嬉しそうだね」
 水月の言葉に、ノゾミは笑顔を浮かべる。
「実は、私、知り合いが少ないので。皆さまとお知り合いになれるのが嬉しいのです」
 少女のふわふわくるくるな緑髪が踊った。

 ゴブリンとの折衝の間、Jはラプターの死骸を調べていた。
 改造や不自然な傷跡がないか念入りに、全部の死体を調べて行く。
(特に、手が加えられているという事はありませんね)
 となると、感染症の類なのか、又はマテリアル汚染の可能性があるかもしれない。
 だが、それらを示すものは無かった。
(もし、あるとすれば、恐ろしい生命力という事か……)
 死んでから、それなりに時間は経過しているはずなのに、ラプターの筋肉はピクピクと痙攣している。
 雑魔化しているわけでもなさそうである。
 むしろ……生命力が高い状態は、マテリアルを多く保有している可能性も考えられた。
(『異形』と呼ぶに、相応しいかもしれない)
 通常とは違う個体。存在だった。
 Jは嫌な予感がして、北の方角をみつめたのであった。


 新種ラプターの存在や能力は、こうして、依頼主へと伝わった。
 事態を重く見て、調査が継続されるのであった。


 おしまい。

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 8
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 憧れのお姉さん
    マヘル・ハシバスka0440
  • 世界は子供そのもの
    エラ・“dJehuty”・ベルka3142

重体一覧

参加者一覧

  • 憧れのお姉さん
    マヘル・ハシバス(ka0440
    人間(蒼)|22才|女性|機導師
  • 縁を紡ぐ者
    シエラ・ヒース(ka1543
    エルフ|20才|女性|霊闘士
  • 黒猫とパイルバンカー
    葛音 水月(ka1895
    人間(蒼)|19才|男性|疾影士
  • グリム・リーパー
    ジェーン・ノーワース(ka2004
    人間(蒼)|15才|女性|疾影士
  • 世界は子供そのもの
    エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142
    人間(蒼)|30才|女性|機導師

  • 小鳥遊 時雨(ka4921
    人間(蒼)|16才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
小鳥遊 時雨(ka4921
人間(リアルブルー)|16才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2015/06/14 02:12:26
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/06/09 22:11:18