ゲスト
(ka0000)
恐怖! 蛙地獄の沼
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~9人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/06/15 19:00
- 完成日
- 2015/06/23 08:01
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●モータルのその後
ここは同盟領のそこそこ大きな町。
商人の集う早朝の卸売市場の隅。
「しかし、モータルも変わったやっちゃな」
馬車の影に座った鼻先の尖った男が、背を丸めつつ、ひひひと笑いながら言う。
闇商人「ベンド商会」代表のベンドという男である。
「せっかく覚醒者ちゅうて分かったんや。たいていの奴はそのままハンター稼業にせぇだすがな」
ベンド、続けて横を向きにたにたした視線を送る。
そこにはモータルと呼んだ銀髪の少年が座っていた。
どうやらモータル、この町でベンドに勧められしかるべき機関で覚醒者の資格があるか確認してもらったらしい。にらんだ通り、彼にはその才能があったようだ。
が、モータルはほかの覚醒者のようにハンターにはならなかった。
「困りごとがあってハンターに助けを求めることができて、その到着を待つことができるならハンターに助力を求めればいい」
モータル、その理由を手短に言う。「もしもそうなら、自分が手助けをする必要はない」といいたげだ。
「いっぱしの口きくなぁ。……ま、ええ。これからもお前さんを雇ぅたろやないか」
これを聞いたベンド、嬉しそうに笑っている。
彼は闇の密売人。
数ある表の商人で事足りることなら、彼は今の商売をしていないかもしれない。
あるいはベンド、そちらの仕事ばかりをするようになったころの自分を思い出しているのかもしれない。
「あの村の男が押し付けて来るだけあるやないか」
本当に、嬉しそうに笑う。
●雨降る沼地の村で
そして町から出発し、ベンドと護衛するモータルの二人は姿をくらませた。
行く先は誰にも告げなかった。一度、身を隠すのである。もちろん次の仕事のためだ。
「妙に蛙の鳴き声が……」
森の中を移動中。遠くから聞こえる蛙の音にモータルが気付いた。
「あまりかかわらんこっちゃ」
ベンド、取り合わずに先を急ぐ。モータルは雨が近いので急ぐのだろう、ぐらいに理解し急いで追う。
そして途中の村で理由を知った。
「今年は蛙の鳴き声が特殊で……」
「気になるんならハンターに任せるに限りますわ」
一晩の宿の世話になる村の顔役の館で、主人とベンドがそんな会話。
「まあ、確かにハンターはもう雇うておるが到着までに蛙が襲ってこんかと気が気ではなくて」
実はこの村。
六年から十年ごとにオオガマの雑魔が出現する沼の近くにあった。
普通の蛙とは違い、妙な鳴き声をするので村まで襲ってくる前にハンターに依頼し退治してもらっている。当然、退治してもらうたびに祈祷して浄化するのだが、六年から十年ぐらい経過するとオオガマの雑魔が現れるという循環を繰り返している。沼には森からの水が各所より流入しているため、雑魔の発生する要素が数年を掛けて貯まり込み、そして発生してるのではないかと見られている。その分、そういった水が村に来るまでに堰き止められ平和であるともいえる。
閑話休題。
顔役がそう言った時だった。
――ざあああ……。
「降り出したか。蛙も沼から出てくるかもしれん」
「家からは出ないよう、触れを出すことですの」
気が気ではない主人に、落ち着いたベンド。
とりあえず、ここで数日足止めを食うことになった。
その晩。
「ちょい。あんた、護衛の剣士さんじゃろ?」
モータルが一人でいる時、村人から声を掛けられた。
「すまんが、沼の様子を見て来てくれんか。雑魔の大ガエルの鳴き声が数日前から聞こえてハンターに退治を頼んどるんじゃが、その前に村まで来られては困る。報酬は弾む。退治する必要はないが、様子を見て来てくれんか? 頼む、この通り」
これを聞き、自分の小集落がゴブリンの急襲を受けて滅んだこと、盗賊に助けられたものの、彼らが次に狙う村に注意をしに行って幽閉され、ハンターの助けが来る前に襲われた記憶が蘇った。
「分かった」
結局、ベンドに内緒で沼に偵察に行くことになった。
「危ない橋を渡れ。自分が、誰かのために」
心に刻んだ言葉とともに、村の期待を背負った。
そして、現地ッ!
「は、早い!」
腰の高さまであろうかという土色のオオガマが、水浸しになった沼の岸を滑る。
ずしゃしゃ、と滑走してあっという間に裏を取られ三匹に囲まれた。
「くっ!」
そして吐き出される毒液を受ける。
「一匹でも!」
横合いの一匹に殺到し、剣を振るう。
が、刃は敵の表面を滑った。敵体表の粘液が斬るダメージを激烈に軽減しているのだ!
「畜生!」
モータル、ここで前回ハンターが見せた動きを参考にした。
身を捨てるように跳躍したのだ。
前に見たのは上空にだったが、自分はそれとオオガマを真似て、薄く水の張る地面を!
びしゃしゃ……と沼岸を脱出した時、助けが来た。
雇っていたハンターたちが到着したのだ!
ここは同盟領のそこそこ大きな町。
商人の集う早朝の卸売市場の隅。
「しかし、モータルも変わったやっちゃな」
馬車の影に座った鼻先の尖った男が、背を丸めつつ、ひひひと笑いながら言う。
闇商人「ベンド商会」代表のベンドという男である。
「せっかく覚醒者ちゅうて分かったんや。たいていの奴はそのままハンター稼業にせぇだすがな」
ベンド、続けて横を向きにたにたした視線を送る。
そこにはモータルと呼んだ銀髪の少年が座っていた。
どうやらモータル、この町でベンドに勧められしかるべき機関で覚醒者の資格があるか確認してもらったらしい。にらんだ通り、彼にはその才能があったようだ。
が、モータルはほかの覚醒者のようにハンターにはならなかった。
「困りごとがあってハンターに助けを求めることができて、その到着を待つことができるならハンターに助力を求めればいい」
モータル、その理由を手短に言う。「もしもそうなら、自分が手助けをする必要はない」といいたげだ。
「いっぱしの口きくなぁ。……ま、ええ。これからもお前さんを雇ぅたろやないか」
これを聞いたベンド、嬉しそうに笑っている。
彼は闇の密売人。
数ある表の商人で事足りることなら、彼は今の商売をしていないかもしれない。
あるいはベンド、そちらの仕事ばかりをするようになったころの自分を思い出しているのかもしれない。
「あの村の男が押し付けて来るだけあるやないか」
本当に、嬉しそうに笑う。
●雨降る沼地の村で
そして町から出発し、ベンドと護衛するモータルの二人は姿をくらませた。
行く先は誰にも告げなかった。一度、身を隠すのである。もちろん次の仕事のためだ。
「妙に蛙の鳴き声が……」
森の中を移動中。遠くから聞こえる蛙の音にモータルが気付いた。
「あまりかかわらんこっちゃ」
ベンド、取り合わずに先を急ぐ。モータルは雨が近いので急ぐのだろう、ぐらいに理解し急いで追う。
そして途中の村で理由を知った。
「今年は蛙の鳴き声が特殊で……」
「気になるんならハンターに任せるに限りますわ」
一晩の宿の世話になる村の顔役の館で、主人とベンドがそんな会話。
「まあ、確かにハンターはもう雇うておるが到着までに蛙が襲ってこんかと気が気ではなくて」
実はこの村。
六年から十年ごとにオオガマの雑魔が出現する沼の近くにあった。
普通の蛙とは違い、妙な鳴き声をするので村まで襲ってくる前にハンターに依頼し退治してもらっている。当然、退治してもらうたびに祈祷して浄化するのだが、六年から十年ぐらい経過するとオオガマの雑魔が現れるという循環を繰り返している。沼には森からの水が各所より流入しているため、雑魔の発生する要素が数年を掛けて貯まり込み、そして発生してるのではないかと見られている。その分、そういった水が村に来るまでに堰き止められ平和であるともいえる。
閑話休題。
顔役がそう言った時だった。
――ざあああ……。
「降り出したか。蛙も沼から出てくるかもしれん」
「家からは出ないよう、触れを出すことですの」
気が気ではない主人に、落ち着いたベンド。
とりあえず、ここで数日足止めを食うことになった。
その晩。
「ちょい。あんた、護衛の剣士さんじゃろ?」
モータルが一人でいる時、村人から声を掛けられた。
「すまんが、沼の様子を見て来てくれんか。雑魔の大ガエルの鳴き声が数日前から聞こえてハンターに退治を頼んどるんじゃが、その前に村まで来られては困る。報酬は弾む。退治する必要はないが、様子を見て来てくれんか? 頼む、この通り」
これを聞き、自分の小集落がゴブリンの急襲を受けて滅んだこと、盗賊に助けられたものの、彼らが次に狙う村に注意をしに行って幽閉され、ハンターの助けが来る前に襲われた記憶が蘇った。
「分かった」
結局、ベンドに内緒で沼に偵察に行くことになった。
「危ない橋を渡れ。自分が、誰かのために」
心に刻んだ言葉とともに、村の期待を背負った。
そして、現地ッ!
「は、早い!」
腰の高さまであろうかという土色のオオガマが、水浸しになった沼の岸を滑る。
ずしゃしゃ、と滑走してあっという間に裏を取られ三匹に囲まれた。
「くっ!」
そして吐き出される毒液を受ける。
「一匹でも!」
横合いの一匹に殺到し、剣を振るう。
が、刃は敵の表面を滑った。敵体表の粘液が斬るダメージを激烈に軽減しているのだ!
「畜生!」
モータル、ここで前回ハンターが見せた動きを参考にした。
身を捨てるように跳躍したのだ。
前に見たのは上空にだったが、自分はそれとオオガマを真似て、薄く水の張る地面を!
びしゃしゃ……と沼岸を脱出した時、助けが来た。
雇っていたハンターたちが到着したのだ!
リプレイ本文
●
びしゃしゃと水しぶきを上げ森に滑り込んだモータルが、人の気配を感じて顔を上げた。
「もうっ。無茶したら駄目って言ったのに!」
森の中を駆け寄ってきたのは、天竜寺 詩(ka0396)だった。
「詩……」
見慣れた顔に驚いたモータル。泥だらけの体を起こす。
前に言ったことを守ってない様子にプンプンする詩だったが、怪我の酷さに気付いて慌ててヒールで治療。
「わわっ、モータル君大丈夫なのっ!?」
シェリアク=ベガ(ka4647)も駆け寄る。
「ああ、貴方が危ない橋を全力疾走してるって話に聞いた……」
まさにその通りね、とエルフのケイ(ka4032)が呆れている。
そこへ、前に出てきた大ガマが毒液を吐いてきた。
「させません……」
咄嗟に前に出たのは、サクラ・エルフリード(ka2598)。盾を掲げてそれらをすべて防ぐ。
「無茶をする人ですね……」
振り返る顔。
「なんで……みんな……」
モータルの方は見たことのある顔が結構いることに驚く。
「いいんじゃねぇか? 見た顔にまた会えるってのは、いいもんだ」
横からゴロー・S・ホーガン(ka2713)が出て前に行く。追い越しながらの呟きは、モータルにだけ聞こえるように。
「しとしと雨降る中、げこげこ聞こえる蛙の声……。懐かしいねえ、いつぞや日本に滞在した時も丁度そんな梅雨の時期だっけかな」
代わりに、前に出ると大声でそんな呟きも。
にぃ、と口ひげを歪ませながら不敵に笑うと手にしたデリンジャーをぶっ放す。
ちゅいん、と大ガマに命中するが入射角が悪い。表皮の粘液を弾きながら横へそれていった。被弾経始は良好らしい。
「ちィ、こりゃダメだな」
ゴロー、眉毛を捻じって面倒くさそうにする。
「モータル君、安全なところにいてね」
背後では詩の声が聞こえる。
「ゴローさん、もういいですよ。……しかし、演技の必要がないのでちょうどいいですね」
新たに横に、ラシュディア・シュタインバーグ(ka1779)がつけた。
デリンジャー「デッドリーキッス」を撃っているが、これはゴローの射撃と同じ運命をたどっている。
「カエルか……楽しめる相手ならいいがな?」
ラシュディアの後ろには、重そうなギガースアックスを手にしたドワーフ、バルバロス(ka2119)が控えている。今にも出て行きそうだが、ぐっとこらえている。
「まずは……引きますよ……」
サクラ、味方を守るためゴローとラシュディアの前に位置していたが、敵との距離を一定に保つためにじりじりと引いている。
そう。
敵三体はいま並列に並び、毒液を吐きつつじりじりと前に出てきていた。
「ぞ、雑魔!? ヒエェアアアアっ!?」
この様子にケイ、派手に声を上げつつ踵を返して逃げた。
が、蛙たちは動かない。
明らかに正面のサクラが狙われている。盾を使って毒液を防いでいたので目の敵にされているらしい。
一方、森の中。
「それじゃモータル君、行ってくるの!」
モータルを大樹の幹に隠れるように言いつけてからベガが戦線復帰しようとしている。
「あ、ケイさん」
そこにケイが逃げてきた。
すぐに身を屈めて隠れるようにしてベガを見ると、すっと東の方を指差した。すでに瞳の色が黒から金色に変わって覚醒している。
「隠れて回り込むわよ」
「うん、包囲するのっ」
ケイとベガ、東へ回り込む。
「……引くとはいっても、後ろとは限らんよなぁ」
実はこの時、ゴローが西側へと隠れながら向かっていた。
「蛙やだやだ~」
ゴローとは別に、派手に声を上げつつ詩が西に逃げる。もちろん大ガマはこれに注意を払わない。払えば正面からの援護射撃が狙うはずだった。
とにかく、これで両翼に包囲が広がった。
いや。
そもそも最初から隠れ気味の者もいた。
その二つの影が、ついに動いた!
「行くよ、颯。ジェットブーツっ!」
「はやてにおまかせですの!」
最初から森の中を伝って横手に移動していた時音 ざくろ(ka1250)と八劒 颯(ka1804)が、ついに隠密行動からド派手に移動したッ!
高速移動であっという間に大ガマ三匹の背後を取ったのだ。
ききき、とブレーキしてざくろがグレートソード「エッケザックス」を構え、そして颯が魔導ドリルを構えてポーズを取るっ。
これで完全包囲の完成。
ハンターたちの思惑通りに戦いが進んだ。
ところが!
直後、戦場が激しく動くッ!
●
「え……?」
サクラ、虚を突かれ唖然とした。
盾で受けることに専念していたところ、掲げた盾に大ガマの長い舌が伸びて来て巻き付いたのだ。ぐい、と前に引っ張られる。
大ガマども、攻撃対象を正面のサクラに絞ったらしい。彼女の左右に舌を伸ばしていないほかの二匹がずしゃしゃ、と地表を滑るように移動してきた。
包囲したはずが、一人を三角包囲された形だ!
もちろん、西側の詩とゴロー、東側のケイとベガも気付いている。
「サクラさん!」
慌てて詩、舌を伸ばした蛙にホーリーライト。輝く光弾が命中するが敵はびくともしない。体力自慢でもあるようだ。
「結構、引っ張る力は強いですね……」
サクラ、盾ごと引き寄せられる。
ん、と内股になって踏ん張るサクラだが足元がぬかるんでいるのでずるずると前に行く。今まで味方を守っていた盾が、今度は敵に利用される羽目になった。
この時、詩の右手後方。
「さあて、反撃開始といこうじゃねえか。礼はたっぷりさせて貰うぜぇ?」
木々に隠れたゴローが眉を捻じっている。今度は嫌そうな顔ではないっ。
「滑っても、これならいいんじゃねぇか?」
換装したロングボウ「シーホース」をきりりと引き絞り、マテリアルを込めた力強い一撃を放つ。
当たって体表を滑るが、スキルのダメージはしっかりと伝わっている。
二人の集中攻撃とサクラが霊槍「グングニル」で突いたことで盾に絡んでいた舌は外れた。
サクラの両サイドを取った敵はどうなった?
「利くか?」
ラシュディア、灰色の杖を掲げて敵一体を青白いガスに包む。スリープクラウドだが……一瞬ぐらりときた程度で眠ることはない。
「それで十分。本命はこっちだ」
ラシュディア続けて火球を放つ。
「距離を取って包囲したのが、こっちに都合がよかったな」
命中し爆発する様子を見て淡々と言うラシュディア。眉間にはしわが寄っていた。
あるいは、いつか故郷であった出来事が胸中に去来していたのかもしれない。
が、冷静だ。
振り向く大ガマに対し、バックステップで距離を取る。至近距離での削り合いに付き合う気はない。
といっても、距離が離れすぎると毒が……。
来ない。
「包囲されてるのに包囲するなんていい度胸してるの」
ベガが突っ込んできている。
アースウォールでラシュディアの前に防壁を作ったのだ。
もちろん、敵は近寄ったベガに向き直り、ゲココ、とにらみを利かせる。
「いい夢見るといいの!」
ベガ、迷わずぼふんとスリープクラウド。しかし今度は利かない。代わりにぐぐっと身を屈める。跳びかかって来るつもりだ。
――びしり。
「おっと、そうは問屋がおろさないわよ?」
ベガの後方。森の中からケイが試作型魔導銃を構えていた。ここから敵の後肢を狙ったのだ。大ガマ、バランスを崩しベガに襲い掛かるのをやめた。
「……ところでトンヤってなにかしら?」
いい仕事をした、と満足そうなケイ。いつものすっとぼけもなんだか気分よさげだ。
「ケイちゃん、ありがとなのっ!」
ベガ、七支刀を手に突っ込んだ。
が、敵はとんでもない行動に出るッ!
時は少し遡り、もう一匹の敵。
こちらは三角包囲の西側で、サクラの左手後方に位置している。時は、サクラがずるずる前に引かれている最中!
もちろん、こちらの敵はがら空きのサクラの背中に毒を浴びせていた。
その大ガマ、不気味な気配に振り返る!
「もういいな?」
その目が見開かれた。
赤褐色の何かが圧倒的な威圧感で迫っていたのだッ!
「殲滅っ!」
その姿、バルバロス。
重々しい斧はすでにぶうん、とすごい音を響かせ振り下ろされている。大ガマ、咄嗟に動く。
めきょ……ずりっ!
大ガマのひねった背中に斧が入るが、表皮のぬめりでずりりと滑る。刃は食い込まないまでも威力は抜群だ。
「ただ、殲滅」
バルバロス、さらに前に。
この鬼気迫る突撃に、敵は予想外の行動に出た!
●
戦場はすべて同時に進行している。
余談であるが、この日一番ついてなかったのはこの人かもしれない。
「な、何だ?」
一歩引いて西側の森で戦場を見渡していたゴロー、突然横合いから飛んで来た大ガマに気付いた。
「おわっ!」
前にダイブし逃げるが背中に痛打を受けた。
この大ガマ、バルバロスの猛攻を受けると長い舌を伸ばして森の木に絡ませ跳躍すると、そこを支点にぐぅん、と弧を描いて逃げてきたのだ。
これがゴローを襲ったわけ。
「ちょっとぉ、何それ!」
詩、振り向いてホーリーライト。放つ、放つ。
「とにかく包囲を抜けられないようにしないと」
必死に大ガマに向かっていった。西側後方には沼がある。自分が攻撃されてもそこに逃げられるわけにはいかない。体を張りに行った!
「無事か?」
ラシュディアもこの危険に気付き急いでやって来た。
「とにかくこいつを集中攻撃だ!」
身を起こしたゴローは恨みも込めて強い射撃を叩き込み続けている。
この気迫に大ガマ、ついに沼へと逃げだしたッ!
「バルバロス、これで水の上を歩けるはずだ!」
ラシュディア、振り向いて今到着したバルバロスに水の精霊力を授ける。
「本当か?」
呟くバルバロスだが、確認も取らない。
目の前に逃げる敵がいる。水深はまだ浅いようでほとんど体が自ら出ている。
ならば、行くだけ。
これが、称号「狂戦士」の名を得た男。
おおおお、と沼に入る。足は水面を蹴るだけで沈むことはない。敵は一瞬、こちらを振り向いた。
それが勝負の分かれ目となった。
「大地を砕く斧の一撃、くらえっ!」
ばしゃーん、と水柱が派手に立つ。
こちら、中央。
舌をちぎられ正面の大ガマが仰け反っている。
「ん、今がチャンスです…一気に攻勢に…え?」
舌から解放されたサクラが前の敵に突っ込もうとしていた。
が、それどころではない。
くるん、と自分の腰に何かが巻き付き、後ろへ引っ張られる感触があったのだ。
見るとウエストに何かが巻き付いている。
振り向くと、ウォールの前にいた大ガマが長い舌を伸ばしているではないか。ベガが七支刀を手に突っ込んでいるが……。
「ぬめぬめして気持ち悪……きゃ……!」
サクラ、控えめな悲鳴を残し引き倒された。
代わりに大ガマがずしゃしゃ……と滑って沼方面にすっ飛ぶ。逃げを打とうとしていた正面の大ガマと二匹、並ぶ。
そして振り向いて気付く。
颯とざくろ、ここにいるッ!
「気付くのが遅いですの……」
「くらえ、超機導火炎放射……大ガマだって消毒だよ」
繰り出されたドリルはやはり敵の体表を滑るが、颯はすました顔のままこくと頷いている。
なぜならドリルは、電撃を纏っていたから!
「火炎放射だ、電撃だ、ハンタースキルを使う時~だもん♪」
ざくろのファイヤースローワーも問題なく命中。気分よく歌い最終ラインの盤石っぷりを見せつけている。すたん、と颯が突撃から素早く戻ってザクロと並ぶ。
これを見た大ガマ、にぃ、と不敵な笑み。
刹那、ぴょ~んと大きく跳躍!
「そんなことだろうと思いました」
「絶対通さない」
颯とざくろもジェットブーツで直上ジャンプ。跳んだガマ二匹と空中戦だ!
「…さぁどこに落ちたい?」
「超重錬成ですのっ!」
ふしぎと颯の武器が巨大化した。そのままハエ叩きの要領で叩き落とす。
が、敵もいい。
落ちながら一匹が味方を足蹴にして遠くに逃がした。
その分、近くに落ちた方の着地が乱れた。一瞬の隙ができる。
「びりびり電撃どりるぅ!!」
「マテリアルと大地の女神の名においてざくろが命じる、剣よ今一度元の姿に……超・重・斬!」
落ちた一匹の口に颯の電撃ドリルが深々と刺さり、動けないところにざくろの巨大剣が体の中心を叩きつけた。
敵、力なくぶしゅうと大地に伏す。
「こちらに来ますか……」
一方、最後の敵。
味方に蹴られ飛んでいった先に、ケイがいた。
「うけてやろうじゃない。その代り私の弾も食らいなさいよ」
ちゃきり、と銃を構える。
その名は……。
「狂乱なさい、アルコル!」
暴れ馬な銃、試作型魔導銃「狂乱せしアルコル」をぶっ放す。
ケイの不運は、それが狙撃特化の長射程銃だったこと。
「くっ!」
体力自慢の敵は数発で沈むわけもなく、そのままどしんとボディプレス。直撃は免れたが正面から撃ち合った分逃げ遅れた。
このままではケイ、袋叩きだ。
地にしなだれたケイに二足立ちで大ガマが振りかぶっている!
「届け、ウインドスラッシュなのっ!」
「武器が効きづらくても魔法ならどうですか…! 聖なる光よ…!」
背後からベガの叫びとサクラの声が聞こえた。びく、と大ガマが動きを止めたのは、きっと背中に命中しているから。
そして。
どす、どすと音がして大ガマが前に崩れた。半身のケイにギリギリ届かないところにどしんと倒れた。
「……ケイさん、ただいまなの」
「ただ前に出るだけが作戦ではないということですね…」
その背には、七支刀を突き刺したベガと、投擲して戻って来た聖槍をキャッチしたサクラがいた。
●
戦い終わって。
「ふぅ、温かくて気持ちがいいです……」
「敵はぬるぬるでしたし、気持ちいいですの」
サクラと颯が村の公衆浴場に首まで漬かりのんびりしていた。
「蛙どもも攻め抜かぬからああいうことになる」
衝立の向こうではバルバロスの声が響いている。どうやら逃げを打ったことに不満が募っているらしい。
「そっち、モータル君いる?」
女湯側から男湯に向かって、ケイが叫んだ。「う、うん」と聞こえる。
「モータルくんもこっちで一緒に入る?」
ざば、と腰を上げてベガが言う。
「冗談でも無理かも」
隣で詩がぽそりと言う。戦闘後に「なんで一人で来たの!」と指差しつつガミガミ怒ったのは内緒だ。後で料理でも作ってあげようとかとも思っている。
「モータル君。危ない橋の渡り方、考えた方がいいんじゃない? 渡った結果迷惑を振りまくなら渡らない方がマシというものよ」
ケイの声。
男湯では皆がモータルの方を見る。
「…俺も人のことが言えませんので、お互いに程ほどにしませんとね」
ラシュディアはやや同情的。
「攻撃できるだけ力をつけろ」
バルバロスは重く一言。
「そういや、ざくろは?」
ゴローが気付き、きょろきょろ。
その時。
「あっ!」
女湯に誰かが新たに入った気配があり、直後にそんな声が響いた。
何があったかは、伏せる。
後日、村は沼だけではなく山全体の浄化を検討しはじめたらしい。
びしゃしゃと水しぶきを上げ森に滑り込んだモータルが、人の気配を感じて顔を上げた。
「もうっ。無茶したら駄目って言ったのに!」
森の中を駆け寄ってきたのは、天竜寺 詩(ka0396)だった。
「詩……」
見慣れた顔に驚いたモータル。泥だらけの体を起こす。
前に言ったことを守ってない様子にプンプンする詩だったが、怪我の酷さに気付いて慌ててヒールで治療。
「わわっ、モータル君大丈夫なのっ!?」
シェリアク=ベガ(ka4647)も駆け寄る。
「ああ、貴方が危ない橋を全力疾走してるって話に聞いた……」
まさにその通りね、とエルフのケイ(ka4032)が呆れている。
そこへ、前に出てきた大ガマが毒液を吐いてきた。
「させません……」
咄嗟に前に出たのは、サクラ・エルフリード(ka2598)。盾を掲げてそれらをすべて防ぐ。
「無茶をする人ですね……」
振り返る顔。
「なんで……みんな……」
モータルの方は見たことのある顔が結構いることに驚く。
「いいんじゃねぇか? 見た顔にまた会えるってのは、いいもんだ」
横からゴロー・S・ホーガン(ka2713)が出て前に行く。追い越しながらの呟きは、モータルにだけ聞こえるように。
「しとしと雨降る中、げこげこ聞こえる蛙の声……。懐かしいねえ、いつぞや日本に滞在した時も丁度そんな梅雨の時期だっけかな」
代わりに、前に出ると大声でそんな呟きも。
にぃ、と口ひげを歪ませながら不敵に笑うと手にしたデリンジャーをぶっ放す。
ちゅいん、と大ガマに命中するが入射角が悪い。表皮の粘液を弾きながら横へそれていった。被弾経始は良好らしい。
「ちィ、こりゃダメだな」
ゴロー、眉毛を捻じって面倒くさそうにする。
「モータル君、安全なところにいてね」
背後では詩の声が聞こえる。
「ゴローさん、もういいですよ。……しかし、演技の必要がないのでちょうどいいですね」
新たに横に、ラシュディア・シュタインバーグ(ka1779)がつけた。
デリンジャー「デッドリーキッス」を撃っているが、これはゴローの射撃と同じ運命をたどっている。
「カエルか……楽しめる相手ならいいがな?」
ラシュディアの後ろには、重そうなギガースアックスを手にしたドワーフ、バルバロス(ka2119)が控えている。今にも出て行きそうだが、ぐっとこらえている。
「まずは……引きますよ……」
サクラ、味方を守るためゴローとラシュディアの前に位置していたが、敵との距離を一定に保つためにじりじりと引いている。
そう。
敵三体はいま並列に並び、毒液を吐きつつじりじりと前に出てきていた。
「ぞ、雑魔!? ヒエェアアアアっ!?」
この様子にケイ、派手に声を上げつつ踵を返して逃げた。
が、蛙たちは動かない。
明らかに正面のサクラが狙われている。盾を使って毒液を防いでいたので目の敵にされているらしい。
一方、森の中。
「それじゃモータル君、行ってくるの!」
モータルを大樹の幹に隠れるように言いつけてからベガが戦線復帰しようとしている。
「あ、ケイさん」
そこにケイが逃げてきた。
すぐに身を屈めて隠れるようにしてベガを見ると、すっと東の方を指差した。すでに瞳の色が黒から金色に変わって覚醒している。
「隠れて回り込むわよ」
「うん、包囲するのっ」
ケイとベガ、東へ回り込む。
「……引くとはいっても、後ろとは限らんよなぁ」
実はこの時、ゴローが西側へと隠れながら向かっていた。
「蛙やだやだ~」
ゴローとは別に、派手に声を上げつつ詩が西に逃げる。もちろん大ガマはこれに注意を払わない。払えば正面からの援護射撃が狙うはずだった。
とにかく、これで両翼に包囲が広がった。
いや。
そもそも最初から隠れ気味の者もいた。
その二つの影が、ついに動いた!
「行くよ、颯。ジェットブーツっ!」
「はやてにおまかせですの!」
最初から森の中を伝って横手に移動していた時音 ざくろ(ka1250)と八劒 颯(ka1804)が、ついに隠密行動からド派手に移動したッ!
高速移動であっという間に大ガマ三匹の背後を取ったのだ。
ききき、とブレーキしてざくろがグレートソード「エッケザックス」を構え、そして颯が魔導ドリルを構えてポーズを取るっ。
これで完全包囲の完成。
ハンターたちの思惑通りに戦いが進んだ。
ところが!
直後、戦場が激しく動くッ!
●
「え……?」
サクラ、虚を突かれ唖然とした。
盾で受けることに専念していたところ、掲げた盾に大ガマの長い舌が伸びて来て巻き付いたのだ。ぐい、と前に引っ張られる。
大ガマども、攻撃対象を正面のサクラに絞ったらしい。彼女の左右に舌を伸ばしていないほかの二匹がずしゃしゃ、と地表を滑るように移動してきた。
包囲したはずが、一人を三角包囲された形だ!
もちろん、西側の詩とゴロー、東側のケイとベガも気付いている。
「サクラさん!」
慌てて詩、舌を伸ばした蛙にホーリーライト。輝く光弾が命中するが敵はびくともしない。体力自慢でもあるようだ。
「結構、引っ張る力は強いですね……」
サクラ、盾ごと引き寄せられる。
ん、と内股になって踏ん張るサクラだが足元がぬかるんでいるのでずるずると前に行く。今まで味方を守っていた盾が、今度は敵に利用される羽目になった。
この時、詩の右手後方。
「さあて、反撃開始といこうじゃねえか。礼はたっぷりさせて貰うぜぇ?」
木々に隠れたゴローが眉を捻じっている。今度は嫌そうな顔ではないっ。
「滑っても、これならいいんじゃねぇか?」
換装したロングボウ「シーホース」をきりりと引き絞り、マテリアルを込めた力強い一撃を放つ。
当たって体表を滑るが、スキルのダメージはしっかりと伝わっている。
二人の集中攻撃とサクラが霊槍「グングニル」で突いたことで盾に絡んでいた舌は外れた。
サクラの両サイドを取った敵はどうなった?
「利くか?」
ラシュディア、灰色の杖を掲げて敵一体を青白いガスに包む。スリープクラウドだが……一瞬ぐらりときた程度で眠ることはない。
「それで十分。本命はこっちだ」
ラシュディア続けて火球を放つ。
「距離を取って包囲したのが、こっちに都合がよかったな」
命中し爆発する様子を見て淡々と言うラシュディア。眉間にはしわが寄っていた。
あるいは、いつか故郷であった出来事が胸中に去来していたのかもしれない。
が、冷静だ。
振り向く大ガマに対し、バックステップで距離を取る。至近距離での削り合いに付き合う気はない。
といっても、距離が離れすぎると毒が……。
来ない。
「包囲されてるのに包囲するなんていい度胸してるの」
ベガが突っ込んできている。
アースウォールでラシュディアの前に防壁を作ったのだ。
もちろん、敵は近寄ったベガに向き直り、ゲココ、とにらみを利かせる。
「いい夢見るといいの!」
ベガ、迷わずぼふんとスリープクラウド。しかし今度は利かない。代わりにぐぐっと身を屈める。跳びかかって来るつもりだ。
――びしり。
「おっと、そうは問屋がおろさないわよ?」
ベガの後方。森の中からケイが試作型魔導銃を構えていた。ここから敵の後肢を狙ったのだ。大ガマ、バランスを崩しベガに襲い掛かるのをやめた。
「……ところでトンヤってなにかしら?」
いい仕事をした、と満足そうなケイ。いつものすっとぼけもなんだか気分よさげだ。
「ケイちゃん、ありがとなのっ!」
ベガ、七支刀を手に突っ込んだ。
が、敵はとんでもない行動に出るッ!
時は少し遡り、もう一匹の敵。
こちらは三角包囲の西側で、サクラの左手後方に位置している。時は、サクラがずるずる前に引かれている最中!
もちろん、こちらの敵はがら空きのサクラの背中に毒を浴びせていた。
その大ガマ、不気味な気配に振り返る!
「もういいな?」
その目が見開かれた。
赤褐色の何かが圧倒的な威圧感で迫っていたのだッ!
「殲滅っ!」
その姿、バルバロス。
重々しい斧はすでにぶうん、とすごい音を響かせ振り下ろされている。大ガマ、咄嗟に動く。
めきょ……ずりっ!
大ガマのひねった背中に斧が入るが、表皮のぬめりでずりりと滑る。刃は食い込まないまでも威力は抜群だ。
「ただ、殲滅」
バルバロス、さらに前に。
この鬼気迫る突撃に、敵は予想外の行動に出た!
●
戦場はすべて同時に進行している。
余談であるが、この日一番ついてなかったのはこの人かもしれない。
「な、何だ?」
一歩引いて西側の森で戦場を見渡していたゴロー、突然横合いから飛んで来た大ガマに気付いた。
「おわっ!」
前にダイブし逃げるが背中に痛打を受けた。
この大ガマ、バルバロスの猛攻を受けると長い舌を伸ばして森の木に絡ませ跳躍すると、そこを支点にぐぅん、と弧を描いて逃げてきたのだ。
これがゴローを襲ったわけ。
「ちょっとぉ、何それ!」
詩、振り向いてホーリーライト。放つ、放つ。
「とにかく包囲を抜けられないようにしないと」
必死に大ガマに向かっていった。西側後方には沼がある。自分が攻撃されてもそこに逃げられるわけにはいかない。体を張りに行った!
「無事か?」
ラシュディアもこの危険に気付き急いでやって来た。
「とにかくこいつを集中攻撃だ!」
身を起こしたゴローは恨みも込めて強い射撃を叩き込み続けている。
この気迫に大ガマ、ついに沼へと逃げだしたッ!
「バルバロス、これで水の上を歩けるはずだ!」
ラシュディア、振り向いて今到着したバルバロスに水の精霊力を授ける。
「本当か?」
呟くバルバロスだが、確認も取らない。
目の前に逃げる敵がいる。水深はまだ浅いようでほとんど体が自ら出ている。
ならば、行くだけ。
これが、称号「狂戦士」の名を得た男。
おおおお、と沼に入る。足は水面を蹴るだけで沈むことはない。敵は一瞬、こちらを振り向いた。
それが勝負の分かれ目となった。
「大地を砕く斧の一撃、くらえっ!」
ばしゃーん、と水柱が派手に立つ。
こちら、中央。
舌をちぎられ正面の大ガマが仰け反っている。
「ん、今がチャンスです…一気に攻勢に…え?」
舌から解放されたサクラが前の敵に突っ込もうとしていた。
が、それどころではない。
くるん、と自分の腰に何かが巻き付き、後ろへ引っ張られる感触があったのだ。
見るとウエストに何かが巻き付いている。
振り向くと、ウォールの前にいた大ガマが長い舌を伸ばしているではないか。ベガが七支刀を手に突っ込んでいるが……。
「ぬめぬめして気持ち悪……きゃ……!」
サクラ、控えめな悲鳴を残し引き倒された。
代わりに大ガマがずしゃしゃ……と滑って沼方面にすっ飛ぶ。逃げを打とうとしていた正面の大ガマと二匹、並ぶ。
そして振り向いて気付く。
颯とざくろ、ここにいるッ!
「気付くのが遅いですの……」
「くらえ、超機導火炎放射……大ガマだって消毒だよ」
繰り出されたドリルはやはり敵の体表を滑るが、颯はすました顔のままこくと頷いている。
なぜならドリルは、電撃を纏っていたから!
「火炎放射だ、電撃だ、ハンタースキルを使う時~だもん♪」
ざくろのファイヤースローワーも問題なく命中。気分よく歌い最終ラインの盤石っぷりを見せつけている。すたん、と颯が突撃から素早く戻ってザクロと並ぶ。
これを見た大ガマ、にぃ、と不敵な笑み。
刹那、ぴょ~んと大きく跳躍!
「そんなことだろうと思いました」
「絶対通さない」
颯とざくろもジェットブーツで直上ジャンプ。跳んだガマ二匹と空中戦だ!
「…さぁどこに落ちたい?」
「超重錬成ですのっ!」
ふしぎと颯の武器が巨大化した。そのままハエ叩きの要領で叩き落とす。
が、敵もいい。
落ちながら一匹が味方を足蹴にして遠くに逃がした。
その分、近くに落ちた方の着地が乱れた。一瞬の隙ができる。
「びりびり電撃どりるぅ!!」
「マテリアルと大地の女神の名においてざくろが命じる、剣よ今一度元の姿に……超・重・斬!」
落ちた一匹の口に颯の電撃ドリルが深々と刺さり、動けないところにざくろの巨大剣が体の中心を叩きつけた。
敵、力なくぶしゅうと大地に伏す。
「こちらに来ますか……」
一方、最後の敵。
味方に蹴られ飛んでいった先に、ケイがいた。
「うけてやろうじゃない。その代り私の弾も食らいなさいよ」
ちゃきり、と銃を構える。
その名は……。
「狂乱なさい、アルコル!」
暴れ馬な銃、試作型魔導銃「狂乱せしアルコル」をぶっ放す。
ケイの不運は、それが狙撃特化の長射程銃だったこと。
「くっ!」
体力自慢の敵は数発で沈むわけもなく、そのままどしんとボディプレス。直撃は免れたが正面から撃ち合った分逃げ遅れた。
このままではケイ、袋叩きだ。
地にしなだれたケイに二足立ちで大ガマが振りかぶっている!
「届け、ウインドスラッシュなのっ!」
「武器が効きづらくても魔法ならどうですか…! 聖なる光よ…!」
背後からベガの叫びとサクラの声が聞こえた。びく、と大ガマが動きを止めたのは、きっと背中に命中しているから。
そして。
どす、どすと音がして大ガマが前に崩れた。半身のケイにギリギリ届かないところにどしんと倒れた。
「……ケイさん、ただいまなの」
「ただ前に出るだけが作戦ではないということですね…」
その背には、七支刀を突き刺したベガと、投擲して戻って来た聖槍をキャッチしたサクラがいた。
●
戦い終わって。
「ふぅ、温かくて気持ちがいいです……」
「敵はぬるぬるでしたし、気持ちいいですの」
サクラと颯が村の公衆浴場に首まで漬かりのんびりしていた。
「蛙どもも攻め抜かぬからああいうことになる」
衝立の向こうではバルバロスの声が響いている。どうやら逃げを打ったことに不満が募っているらしい。
「そっち、モータル君いる?」
女湯側から男湯に向かって、ケイが叫んだ。「う、うん」と聞こえる。
「モータルくんもこっちで一緒に入る?」
ざば、と腰を上げてベガが言う。
「冗談でも無理かも」
隣で詩がぽそりと言う。戦闘後に「なんで一人で来たの!」と指差しつつガミガミ怒ったのは内緒だ。後で料理でも作ってあげようとかとも思っている。
「モータル君。危ない橋の渡り方、考えた方がいいんじゃない? 渡った結果迷惑を振りまくなら渡らない方がマシというものよ」
ケイの声。
男湯では皆がモータルの方を見る。
「…俺も人のことが言えませんので、お互いに程ほどにしませんとね」
ラシュディアはやや同情的。
「攻撃できるだけ力をつけろ」
バルバロスは重く一言。
「そういや、ざくろは?」
ゴローが気付き、きょろきょろ。
その時。
「あっ!」
女湯に誰かが新たに入った気配があり、直後にそんな声が響いた。
何があったかは、伏せる。
後日、村は沼だけではなく山全体の浄化を検討しはじめたらしい。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/11 10:37:33 |
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相談卓だよ。 天竜寺 詩(ka0396) 人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/06/15 00:49:46 |