ゲスト
(ka0000)
怒り過ぎですよね
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2015/06/16 22:00
- 完成日
- 2015/06/22 21:04
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
その歪虚は錬金術工房の下水溝から発生した。
うすぼんやりした自意識を持てるようになってまず始めたのは、他の動物を自分の中に取り込んで行くこと。手初めにはゴキブリ、続いてドブネズミ。
アメーバ状の体に脚が生え移動がスムーズになったので下水溝から這い出し、さらに己を高めるための素材を探しに出掛ける。自分が動きやすいと感じる時間帯――真夜中に。
道路を横断しようと試み、馬車に轢かれあえなくバラバラになったが、なんとか元通り体をくっつけ合わせた。
開けたところにいると危ないと察し道の端に沿ってごそごそ移動する。
ついたところは商店街。
時間も時間なので皆閉店している。
そのうちの一軒、シャッターを完全に降ろし切れておらず、隙間が空いている。
歪虚はそこからするりと忍び込んだ。
●
早朝。
ころころしたドワーフは、勢いよく自店のシャッターを開けた。
「ほい、ほい、ほい。今日も一日お花とがんばろー!」
彼の名はベムブル。花好きが高じて花屋になった男。
『ドワーフが愛でるのは宝石や貴金属といった人工美。花や木といったいわゆる自然美についての反応は鈍い』という通説を考えれば、かなり珍しい人種であると言えよう。
店に並んでいる植物は、ずんぐりむっくりぽってりした形のものが多い。種族的感性の現れであろうか。
「みんな、元気かなー」
そう言いながら店に入ったベムブルは、驚きのあまり目を見張った。
「な、なんだこれ! 一体誰がこんなことを!」
憤慨するのも無理はない。店の中は荒れ放題に荒れている。切り花を入れるバケツはひっくりかえり、棚に置いていた鉢植えも多くが落下。ハンギングも叩き落とされ、床一面に陶片と土がぶちまけられている。
「ゆ、許せない! 罪もないお花をこんな目に遭わせるなんて! 早速犯人を捜し出してギッタギタのメッタメタにしてやる! 髭を根元からちょん切ってやる!」
お手製の花きりバサミを手にするや猛然と表へ駆け出して――いきかけ、急に立ち止まるベムブル。
店の奥にある妙な株が目に入ったのだ。
大きさは2メートルくらい。
(あんなの、うちにあったかな)
一つのところから異なる形の葉が突き出、異なった花が咲き、枝同士が目茶苦茶に絡み合っている。違うものを無理やり団子にして纏めたような感じ……。
(あれ? そういえば……)
ベムブルは気づいた。散乱した店内に、肝腎要な花の残骸が一つも残ってないことを。
もしやと近づいてみれば思ったとおり、全て奇妙な株に融合されてしまっていた。
よくよく見れば株のあちこちから、虫の足とネズミの足が無数に突き出している。だけでなく、咲いている花全てにゴキブリとネズミの頭部がはめ込まれ、蠢いている。
気持ち悪い以外の感想が出てこない代物だ。
ベムブルは泣いた。
「うわああお花、お花がーっ! こんな変わり果てた醜い姿にーっ!」
その言葉を聞いた瞬間ネズミの目が血走り、ゴキブリが歯を鳴らした。
花の一つが火柱を吹き上げ破裂する。
花屋の天井が吹っ飛び、ついでにベムブルも吹っ飛んだ。
「なんだー!」
「爆発だぞ! 工房事故か!?」
騒ぎを聞き付け、人が通りに集まってくる。
道の真ん中で煤けて転がっていたベムブルが、ムクリと起き上がった。
「……すいません、どなたかハンターオフィスに連絡してくださいませんか?」
ドワーフは衝撃全般に対し、とても丈夫に出来ている。
うすぼんやりした自意識を持てるようになってまず始めたのは、他の動物を自分の中に取り込んで行くこと。手初めにはゴキブリ、続いてドブネズミ。
アメーバ状の体に脚が生え移動がスムーズになったので下水溝から這い出し、さらに己を高めるための素材を探しに出掛ける。自分が動きやすいと感じる時間帯――真夜中に。
道路を横断しようと試み、馬車に轢かれあえなくバラバラになったが、なんとか元通り体をくっつけ合わせた。
開けたところにいると危ないと察し道の端に沿ってごそごそ移動する。
ついたところは商店街。
時間も時間なので皆閉店している。
そのうちの一軒、シャッターを完全に降ろし切れておらず、隙間が空いている。
歪虚はそこからするりと忍び込んだ。
●
早朝。
ころころしたドワーフは、勢いよく自店のシャッターを開けた。
「ほい、ほい、ほい。今日も一日お花とがんばろー!」
彼の名はベムブル。花好きが高じて花屋になった男。
『ドワーフが愛でるのは宝石や貴金属といった人工美。花や木といったいわゆる自然美についての反応は鈍い』という通説を考えれば、かなり珍しい人種であると言えよう。
店に並んでいる植物は、ずんぐりむっくりぽってりした形のものが多い。種族的感性の現れであろうか。
「みんな、元気かなー」
そう言いながら店に入ったベムブルは、驚きのあまり目を見張った。
「な、なんだこれ! 一体誰がこんなことを!」
憤慨するのも無理はない。店の中は荒れ放題に荒れている。切り花を入れるバケツはひっくりかえり、棚に置いていた鉢植えも多くが落下。ハンギングも叩き落とされ、床一面に陶片と土がぶちまけられている。
「ゆ、許せない! 罪もないお花をこんな目に遭わせるなんて! 早速犯人を捜し出してギッタギタのメッタメタにしてやる! 髭を根元からちょん切ってやる!」
お手製の花きりバサミを手にするや猛然と表へ駆け出して――いきかけ、急に立ち止まるベムブル。
店の奥にある妙な株が目に入ったのだ。
大きさは2メートルくらい。
(あんなの、うちにあったかな)
一つのところから異なる形の葉が突き出、異なった花が咲き、枝同士が目茶苦茶に絡み合っている。違うものを無理やり団子にして纏めたような感じ……。
(あれ? そういえば……)
ベムブルは気づいた。散乱した店内に、肝腎要な花の残骸が一つも残ってないことを。
もしやと近づいてみれば思ったとおり、全て奇妙な株に融合されてしまっていた。
よくよく見れば株のあちこちから、虫の足とネズミの足が無数に突き出している。だけでなく、咲いている花全てにゴキブリとネズミの頭部がはめ込まれ、蠢いている。
気持ち悪い以外の感想が出てこない代物だ。
ベムブルは泣いた。
「うわああお花、お花がーっ! こんな変わり果てた醜い姿にーっ!」
その言葉を聞いた瞬間ネズミの目が血走り、ゴキブリが歯を鳴らした。
花の一つが火柱を吹き上げ破裂する。
花屋の天井が吹っ飛び、ついでにベムブルも吹っ飛んだ。
「なんだー!」
「爆発だぞ! 工房事故か!?」
騒ぎを聞き付け、人が通りに集まってくる。
道の真ん中で煤けて転がっていたベムブルが、ムクリと起き上がった。
「……すいません、どなたかハンターオフィスに連絡してくださいませんか?」
ドワーフは衝撃全般に対し、とても丈夫に出来ている。
リプレイ本文
屋根を突き抜けて火柱が上がる。
スーズリー・アイアンアックス(ka1687)が宙に飛び、落ちてきた。斧で根を断ち切ろうとし、噴火されてしまったのだ。
彼女は全身煤けたまま起き上がる。
「……あれですね、これは少し移動の仕方を考えた方がいいですね」
二度の攻撃を食らった花屋は完全に青天井。店主のベムブルはしくしくやっている。
「あああ、僕のお店が……後で煉瓦や瓦買ってこないと……お花はあんなになっちゃうし……」
クオン・サガラ(ka0018)は目の当たりにした爆発の性質について分析した。
「威力が届く範囲は――上には長いですが、水平方向は短い、下方へはほぼ無し……地雷か何かですかね……」
1発なら至近距離でも(ドワーフであれば)耐えられそうだが、多数を纏めて喰らうとさすがに危険。体を吹き飛ばされる恐れがある。
かくいう見積もりを聞いたシエル=ウンディーネ(ka4421)は、手にしたスコップをぶらぶらさせた。
「……厄介な敵だね……」
嫌悪を込めた視線を彼女が向けた途端歯を鳴らす、ネズミ花とゴキブリ花。
馬張 半平太(ka4874)はその変化に気づき、仲間に注意を促した。
「皆さんここはポーカーフェイスですよ。表情の変化にも敏感に反応するようです。面倒臭いとかキモいとかいう感情は、なるべく表に出さないようにしましょう」
アルマ・アニムス(ka4901)は、いまだかつてないほど怒りに燃えつつ、口元だけを緩ませる。
(ドワーフさんのお店をめちゃくちゃにしただけでは飽き足らず気持ち悪い物を見せて泣かせるなんて。歪虚じゃなくても処刑決定ですね)
ガーレッド・ロアー(ka4994)も愛想笑いを浮かべる。馬鹿馬鹿しいとは思いつつ。
「歪虚にもいろんなのがいるな。んで、こいつはどうしたもんかな。とりあえず移動はさせなきゃならないんだろ?」
そこをどうするかが問題だ。スーズリーが根を切ろうとしただけであの有り様だったのだ。どうしたら穏便に動かされてくれるのか。
シエルは腕を組み、思案する。
「……14平方m以上の広い場所があって、……壁として利用出来るものが見つかれば良いんだけど……」
最も後方に陣取っていた雪村 練(ka3808)が、鉄パイプと丸太とパレットを積んだハンドリフトを押してきた。
「とりあえずこれ使って店の外に出そうぜ。こんなこともあろうかと、そのへんで借りておいたからよ」
顔のススを拭ったスーズリーは頬をパンパン叩き、気合を入れ直す。
「よし! じゃあ今度こそ私、ひっぺがしてきます!」
いざ、と意気込み再度店内に入ろうとする彼女を、アルマが慌てて止めた。ドワーフ愛に溢れる彼は、ドワーフの危難を見過ごせない。
「待って待って、無闇に怒らせるとまた爆発しますよ!」
そこで練がぴっと人差し指を立てる。
「そこなんだけどさ、怒らせると爆発するなら――逆はどうだろうな?」
ガーレッドは膝を打つ。
「それだ! 褒めて褒めてそのうちに切り取って運び……一気にヤル。試してみるか」
これで持ち出し方法についての目処がついた。後はどこへ運ぶか。
場所についてはクオンが適当なところを見繕ってくれているのだが……問題はどうやってそこまで持っていくかである。
その方法について、彼と半平太の間で、以下のように意見が交わされた。
「わたしはバイクを使おうと思っているのですが。繋ぐためのワイヤーも、持ってきていますので」
「うーん、バイクですか……ベムブルさんから荷馬車をお借りした方がよくありませんか? 手はこびは論外として、馬やバイクで引き摺ったら爆発絶対にしますよ?」
「いえ、そうではなくて、ハンドリフトに乗せたままワイヤーで繋いで引こうかと……角材でレールを敷いて行けば、振動はかなり押さえられるはずです」
なるほどそれも一理ある。だが現実的に考えて荷馬車を使う方が早いのではないか、とアルマは思った。なので以下のように口を挟む。
「角材を敷いてレールを造るとなると、敷設にも撤去にも時間がかかり過ぎてしまうような気がします」
半平太がそれに続ける。
「大掛かりなことをして人目を引くと、あまりいい結果にならないんじゃないかと思うんですよ。集まってきた町の人達の反応というか、態度でキレてくるかも知れませんし。あの通りちょっとの刺激ですぐ反応を起こしますから……」
クオンは、彼らの意見を受け入れた。
「では、輸送は荷馬車にしましょうか。わたしはこのバイクで先導することにしますよ」
●
「いやあしかしまるで芸術だな。こんなに素晴らしい造形は見た事もない!」
「このネズミの頭、イカしますわ社長」
「人の手では……いやさ芸術に秀でた名のあるドワーフでもこれほどの物を造るのは至難の業だろう! 特にこのGのリアル感とか!」
「G! 決してその名を口にできねェ畏怖すべき存在っスね」
「今日も綺麗に咲いているね」
ガーレッド、練、シエルの顔は引きつっている。
心にもない台詞を口にすることに抵抗を覚えているのか。否違う。下水道の臭いが歪虚から漂ってくるからだ。どうやら気分がいいと分泌されるものらしい――言葉を理解しているとは思えないが、持ち上げられている気配を察することは可能なのだろう。
えげつない匂いは強くなる一方。痛んだ床をバリバリ斧ではいでいるスーズリーは、思わず零した。
「くっさ……」
ネズミとゴキブリの頭がいっせいに、彼女の方を向く。
ガーレッドと練が慌ててフォローを入れた。
「いやあ、凡人の鼻にはとても理解出来ない程の馥郁たる香りですなあ!」
「頭の芯までクラクラ来ちゃう程ですわ!」
シエルは床の下まで到達していた根を地道に掘り返し、一本一本引きはがして行く。
練は鉄パイプを歪虚の主根と床の間に差し込み、ハンマーで打ち、隙間を作っていく。その間に丸太を入れ、さらに隙間を押し広げる。
出来た空間にハンドリフトのフォークを慎重に入れ込み、持ち上げていく。
その刺激で歪虚から突き出ている虫と獣の足が、わちゃわちゃ動いた。
(心底キメェなこいつ……)
内心舌打ちしつつ練は、調子よく相手のご機嫌を取る。
「爆発って、カッケェっスよね。あとで見せてくだせぇよ大将」
シエルは棒読みだ。
「綺麗な植物だね」
裏においていた荷馬車が、店の入り口まで移動してきた。
荷台の左右にスーズリーが大きな板を打ち付けている――『雑魔がなるべく道行く人の目に触れないように、目隠しを作っては?』と半平太が提案したのだ。
だがこれだけだと、角度によっては見えてしまう。なので、もうひと手間。
「これを布でくるむ、か……大丈夫ですかね」
「被せるだけなんですから、そんなに刺激にはならないのでは?」
「と、思いたいんだけどな。まあ、とにかくやってみるか」
メンバーのうちでも特に背の高いクオン、アルマ、ガーレッドが黒い防水布を持って、歪虚にそろそろ近づく。
花がいっせいにそちらを向いた。先程まで大人しかったものが、細かく揺れ始める。
三者足が止まった。
ガーレッドが宥めにかかる。
「いやいやいや、そんなに警戒することねえんだぜ? これはほら、そのイカした姿をさらにイカしたものにさせるステージ衣装だからな?」
練は彼の言葉を追っかけ、更なるよいしょを付け加える。
「黒は真のオサレ人しか着こなせない崇高な色……まさしく社長にぴったりですわ! 頭のてっぺんからつま先まで漆黒に染まるダンディーな姿をぜひとも見せてくださいよ!」
シエルも協力した。やはり棒読みで。
「……きっと格好いいだろうなー……」
見え透いたゴマすりが功を奏しただろうか、歪虚はざわつくのをやめた。変わって悪臭を放ち始める。
機嫌がよくても悪くても迷惑この上ない。
一同そう思いながら手早く布を被せ、外れないよう紐で縛る。練が荷台の後方を開き板を渡し、ハンドリフトで押し上げる。
クオンは持ってきていたワイヤーで、荷台に歪虚を固定した。万が一にも振動で倒れて大爆発、とならぬように。
それからバイクに乗り、先導を始める。
ガーレッド、練、及びシエルは持ち上げ要員として、歪虚の側に着く。半平太、アルマ、スーズリーは護衛に回る。
店の整理があるので残らざるを得ないベムブルは、不安そうに一同を見送った。
「荷馬車はなるべく壊さないようにしてくださいよ。特にアンには怪我のないように……」
アン、と言うのは荷馬車をひく彼の小馬の名前だ。主人に似て太っちょでずんぐりしている。
アルマは彼を安心させるため、力強く言った。
「大丈夫です、アンちゃんも荷馬車も、僕たちがちゃんと守りますから!」
●
町の警備に話を通し、交通は規制してもらっている。安全対策は万全だ。
が、完全というわけではない。事情をよく知らない通りすがりの人々が不審そうな声を上げるのを、止める事は出来ないのだ。
「え、なに? このへんなんか臭くない?」
「臭いよね。何、この匂い。生ゴミ?」
「ゴミを運んでるのか?」
うん、確かにそういう匂いがする。
そんなことは百も承知ながら持ち上げ係3名は、小刻みに震える布の包みを必死にフォローした。
「待て待て待て、爆発しちゃいけねぇって! せっかくの芸術が壊れちまう。そんなのは勿体無さすぎるだろう!」
「そうですよ! 下賎な連中のたわごとはいちいち気にしなくていっすよ!」
「……きれいな花だね」
包みの一部がビリッと破け、うにょうにょツタが出てきた。先についてるネズミの花が目を血走らせている。
非常にまずい兆候だ。
シエルとガーレッドはさっと盾を構える。練は素早くその後方に下がる。
「なあ、ほら落ち着け、お前も爆発はしたくないだろ? それとも爆発したいのか? わかるぜ、芸術は爆発だもんな。ならちょっと待ってくれ、な、お前にふさわしい舞台に連れて行ってやるから、な?」
「そのとーり! 先生の羽ばたくべきはこんなちんけな町中じゃありませんぜ! 郊外の、人気のない、青空の下です!」
「……立派な花だね」
スーズリーはつくづく思った。面倒臭い歪虚だと。
早いところ人気のない場所へ行き決着をつけたいものだと願う半平太は、近くを歩くアルマに意識を向ける。
彼は道すがらデリンジャーXL1を拭いて拭いて拭きまくっている。銃身はすでに鏡のようだが、それでもまだ拭いている。何かぶつぶつ言いながら――歪虚をおもんぱかり最小限度の声量だが、物騒な単語は切れ切れに聞き取れた。
「……ハチの巣……万死に……制裁を下すべき……私刑……死刑……」
ドワーフ愛にあふれる彼は、ドワーフの敵に対して容赦ない。
●
「さあ、つきました」
クオンがバイクを止めたのは、郊外のゴミ捨て場であった。地面に大きな穴が開いており、中にさまざまなゴミが堆積している。
「どこでもゴミ問題は深刻そうですね」
言いながら半平太は、荷馬車の後部を開く。
ワイヤーを外し、乗せたときと同じ要領で板を架け渡し、歪虚を降ろし運ぶ。ゴミ穴の縁に。
荷馬車と小馬、バイクは離れたところに退避。
布は……そのままでもよかろう。攻撃するに当たって邪魔にはならない。
アルマは皆を呼び寄せ、運動強化を施した。これで準備は万端である。
「じゃあ、いっちょうやるか」
練は深呼吸してから、道中溜まりに溜まったフラストレーションを爆発させた。むろん相手から十分距離を取って。
「ここまで来りゃあもうテメエなんぞに付き合う義理はねェ! 調子こいてんじゃねェぞ害虫がァ! ドブ臭ェ! ゴミはゴミ溜めに帰れ!」
罵倒し機導砲を放った瞬間、歪虚が火を吹く。複数が同時に爆発したのだろう、店で見たものより規模が大きい。
ガートレッドとシエルは、構えた盾が振動で震えるのを感じた。
衝撃波と爆風により塵あくたが舞い上がり降り落ちる。
スーズリーは俄然血を沸かせた。
「っしゃあ! 喧嘩上等!」
アサトライフルで歪虚を撃つ。撃って撃って撃ちまくる。立て続けの爆発はさらに規模が大きくなったが、スースリーは自分自身がこんがり焦げ前のめりに倒れるまで、連射を止めなかった。
鋼のドワーフ魂、ここに在り。半平太が彼女の治癒にかかる。
土煙と刺激臭に咳き込みつつクオンは、射撃を引き継いだ。ストレスを与えただけで爆発するというのは分かっているが、悪口よりも直に攻撃を加えた方が、より確実に自滅を促せるので。
耳が痺れそうな爆音の合間を縫って、アルマの高笑いが聞こえる。
「あっはっは! 汚い花火ですねェ。おやぁ? 気に障りましたか?」
爆発、銃声。さらに爆発。デリンジャーを連射する彼の目は赤く、口には牙が生えている。
(悪魔みてぇ面になってんな……)
それを横目にするガーレッドはヒートソードをソーサーシールドと合体させ、歪虚目がけ投げつけた。
「超ヒートヨーヨー!」
シエルは頭を守るため、盾を上方に掲げた。石つぶてなどが当たって、こんこん音を立てている。
ほどなくして静かになった。爆発するタネがつきたらしい。
注意しつつ近づいてみれば、歪虚があった場所には、ゲル化物質がへばり付いていた。
半平太は顎に握りこぶしを当てる。
「ふむ。どうやらこのスライムが本体だったらしいですね」
シエルも近づき、盾の端でつつく。
「……この姿なら気持ち悪さもさほどではないですけれどね……」
練はアルケミストタクトを突き刺した。
「どうしましょう。このまま埋めましょうか」
スーズリーは踏んだ。
「そうしましょうか。今の爆発でゴミ穴も程よく広がったみたいですし」
アルマは白い歯を見せる。
「はっはっはっは、ご冗談を。ゴミはゴミらしく焼却処分されるべきです。というわけで、クオンさんお願いします」
クオンは黙して頷き、スライムにファイアスローワーをかけた。
たちまち燃え尽きるスライム。
ガーレッドは人差し指と中指を立て目じりに添える。
「奴は見た目はアレだが中身は純粋だったのかもな。次は友として、次元の彼方でまた会おう!」
突っ込みは練の受け持ち。
「いやいやいや、純粋とかじゃないですからね。単に不潔で自意識過剰で面倒臭いってだけでしたからね、アレは」
●
こうして皆は荷馬車と一緒に、店まで戻ってきた。
「ベムブルさんっ、処理完了ですっ。気持ち悪いのはいなくなりましたっ」
「おおーっ、よかった! ありがとう!」
喜ぶドワーフの姿は、アルマをおおいに和ませる。もふもふしたい衝動に駆られるが、それは後で同意を得てから。
「あ、お片付け手伝いますよ」
「え、本当かい。ありがたいなあ。じゃあハンギングを吊ってくれるかな」
「はい、お安い御用です」
いそいそ風蘭鉢を持ち上げ梁に吊るし始めるエルフ。
ついでだから、ということで他のメンバーも店舗の整理を手助けするとした。
後日皆にはお礼として、花の小鉢が届いたそうである。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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打ち合わせ 雪村 練(ka3808) 人間(リアルブルー)|15才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/06/16 21:38:52 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/16 18:18:18 |