• 戦勝夜煌祭
  • 春郷祭1015

【夜煌】戦場の女神

マスター:のどか

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/06/13 19:00
完成日
2015/06/25 15:44

みんなの思い出

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オープニング

 その日、ヴァリオス商工会のエヴァルド・ブラマンデ(kz0076)は激戦の機甲兵器実験地・ホープを視察という名目で訪れていた。
 現在のホープの復興状況――それを確かめるために、物資支援の商隊と共にこの辺境の大地を踏みしめていたのだ。
 どの程度の支援が既に行われていて、どの程度の支援が今後必要なのか。
 それによって、商工会を通して、ある種の儲け話として声を掛けられる商人の数も質も変わって来る。
 ジェオルジで村長祭が開かれ、商人達の「儲けの目」が分散しているからこそ、彼は歴とした情報を欲していたのだ。
「――ご覧の通り、残存の資源や各地の商隊が運んできた物資を元に、出来る所から復興は始まっています」
 彼の案内役となった同盟陸軍下士官の兵士は、眼前に広がる開発地帯を指し示しながらそう口添えた。
 先の戦いの爪痕はまだまだ根強い。
 各国の兵や、辺境の部族達、そして作業を手伝うハンター達など、様々な人々の手によって希望の地は再びその装いを取り戻そうとはしていた。
「それで……実際に進行の方はどうなんだ?」
 エヴァルド――彼がこの地を訪れたのはこれで2回目のこと。
 一度目は、新たな商売の可能性を見出せそうな機甲兵器という代物を見るために。
 その時は幸か不幸か歪虚の大群に襲われ、戦闘のために稼動するCAMをその目で見る事ができた。
 その時の、被害を受けていない時の実験場の様子を知っているからこそ、彼はそう問いただしていたのだ。
「ゆっくりではありますが、復興へは確かに向かっています。ただ……現状のままでは、それが何時になるのか分からないというのが素直な見解です」
「と、言うと?」
「物資に関しては、その多くを各地からの支援で賄っております。しかし、それで足りるわけでもありません。足りない所はその都度、購入も検討に入れる必要が……次いで、食料です。これだけ多くの人員がこの地に留まって働いているのですから、当然食料も必要です。これも多くは支援で賄われてはおりますが……」
 そう言いながら、兵士は汗を流して土木作業に励む人々の方へと視線を向けた。
「それに、ハンターの方々。手伝ってくれる彼らに、無償と言う訳にも参りません。事情を知れば、褒賞を断る方もいらっしゃる事は分かっているのですが……それに甘える訳にもいきません」
「要するに『先立つ物』が無い……そう言うことかい?」
 そう口にしたエヴァルドの言葉に、兵士は小さく頷いた。
 カネが無いのであれば、そしてそれが必要なのであれば、準備をする他無い。
 しかし、エヴァルド自身も「はいそうですか」と気軽に動かせるほどの大金もまた、持ち得てはしない。
 商工会の資金を動かす事も手ではあるが、その手続きには時間が掛かる。
 それに、ダリオ・ミネッリの元へ出向き、彼の承知も得なければなるまい。
「――それは御免被りたいな」
「何がです?」
「いや、こちらの話だよ」
 あの長老会のジジイに頭を下げるくらいなら、自分で何とかして見せた方が何倍も良い。
 それにダリオは今、ジェオルジの村長祭に掛かりっきりのハズだ。
 話を通せた所で、すぐに金を動かす事はできないだろう。
 このまま、この地を燻らせておくのは惜しい。
 復興に時間を食って、CAMや魔導アーマーに進展が訪れない事も。
 傘下の商売人達の焦点が辺境に同盟にと、移り気で定まらない状態が続く事も。
 そして、ことさらこの件に関してダリオよりも矢面に立つエヴァルドにとって、面白い事では無かった。
 何か、手を打たなければ――
「――そう言えば、今回の辺境での戦いの事実上の勝利には、ハンター達の手による所が大きいと聞いて居たが?」
 ふと、作業に精を出すハンター達に視線を据えた時、エヴァルドがそう言葉に出していた。
「はい。怠惰が引く切欠となった敵指揮官の撃破や撤退に関して、多くのハンターの尽力によって成しえたものと聞いています。その勝利を祝ってのお祭りも開かれていますしね」
「なるほどね……そうであるなら、彼等は一時、戦場の華であったわけだ」
「は……はぁ」
 エヴァルドの返答に、兵士はどこか理解を得ていない様子で、訝しげに頷いた。
「君、あとで本国に手紙を何通か送って貰いたいんだが、構わないかな」
「ええ、連絡船の航行に併せてであれば問題はありません」
 その言葉を聞くと、エヴァルドはにこやかに頷いて見せる。
「戦勝のお祭りが開かれているのだというのなら、それを使わない手は無いよ。ゲストを呼んで、宴を開くべきだ。肴はそうだね……この戦いの功労者が相応しい。彼らの語る武勇伝は、聞く者の心を掴むだろう。そうして掴んだゲストの心を、『気持ち』に変えてもらえば良いんだよ」
 話の追いつかない同盟兵を前に、エヴァルドは腕を組み、辺りをうろうろと歩き回りながらその計画を口にして行く。
「そう言えば、今回の村長祭はこの戦勝祭と合同開催だと聞いていたね。なら、そのルートもムダにしてはいけない。稼ぎ時に稼ぎたい商人は、この機にいくらでも手を貸すはずだ。彼らの力を使って『戦場の華』を『花』で飾らなければ」
 そうして彼は、ホープを背に、恭しくその手を広げて見せた。
「そう、さしずめ――戦場の女神のようにね」
 
 後日、オフィスに1枚の依頼書が張り出されていた。
 『戦場の女神コンテスト、出場者募集!』という、大きな見出しと共に。
 

リプレイ本文

●楽屋にて
 先の大戦で大きな被害を受けたホープ。
 多くの手を借りてようやく完成した実験場が早々に損壊した事に対して、当然ながら人々の気持ちはどこか沈み込んでしまっていた。
 しかしながら、そんな空気も今日だけは一変。
 とってつけたように作られた、ちょっと安っぽい感じもするステージを前に、がやがやと集まる観客。
 騒ぎを聞きつけてやって来た服を煤や土ぼこりに汚した作業員達に、少々場違いにも見える整った身なりの男女達。
 「戦場の女神コンテスト」を観覧すべく集まったオーディエンス達であった。
「うひゃぁ……ずいぶんと集まったな、こりゃ」
 ステージの袖から観客席を眺めながら、レオーネ・インヴェトーレ(ka1441)は目を白黒させていた。
 ミスコンに参加するハンタ―達は色とりどりの衣装に身を包み、自らの番が来るのを待ちわびていた。
「で……結局、みすこんってなんだっけ?」
「じゃから、参加者の中で誰が一番輝いているかを決める勝負じゃと言うとろうに」
 ほぼほぼ迷い込んだように参加してしまった黒の夢(ka0187)を前に、星輝 Amhran(ka0724)とUisca Amhran(ka0754)はその衣装を設える手伝いに奔走しながら、彼女のマイペーストークにあくせく振り回されていた。
「今回は、先の戦いでの戦功と共に、皆さんに自らを披露するのですよ」
 どうも上手く理解を得ないアンノウンを前に若干の苛立ちも見せる星煌とは違って、落ち着いた様子で言い添えるウィスカ。
「えっ、あ……我輩はそういうお話とかは出来ないのな。どうしよう……」
 その事を聞いて、うんと唸るアンノウンを前にして、2人による着付けは忙しなく行われてゆく。
「女神……か。生憎と、そんな柄では無いから少し気恥ずかしいな」
 既に着飾った衣装にもまだ少し慣れていない様子で、クロエ・アブリール(ka4066)が目を細めて頬を掻く。
「ですが、その羞恥もこの地の未来のため――ですよ」
 そう、おっとりと言葉を返すアティニュス(ka4735)に、クロエは幾分落ち着いた様子で頷き返す。
 表向きは復興の意気向上のためのイベントではあるが、その実は復興に必要な支援を受けるための一種のプロパガンダ。
 自分たちはその見世物であり、観客に交じった富裕層のパトロン達がゲストだ。
 少々辛辣な言葉ではあるが、立案者であるエヴァルド・ブラマンデ(kz0076)はそこまで語った上で、彼女達の了承を取り付けている。
「例え見世物であろうとも、人々に安心を提供するために。そのために、私はここにいるつもりです」
 そう、強い意志を持って口にしたセレスティア(ka2691)の言葉と共に、コンテストは満を持して開会を告げるのであった。

●戦場の女神達
 ハンターがステージに姿を現した時、オオと観客席がどよめいた。
「1番、星輝 オーローンと!」
「ウィスカ オーローンと申します」
 ステージに上がった姉妹が、静かに観客にお辞儀を返す。
 白い髪に真っ赤な衣装を纏った星輝と、ブロンドの髪に白い巫女装束の対照的なコントラストに、ステージの上は一気に華やいだ。
 互いにその髪に挿した赤と黄色それぞれのガーベラの花と、ステージを照らし上げる数多の蝋燭が、対比を一層際立てる。
「私達の戦いが始まったのはそう、マギア砦からの事でした」
 ウィスカがそう前於いて、彼女らのパフォーマンスが始まる。
「消息を絶った偵察兵の方を救い出し、巨人達の接近を知った私たちは、すぐさまその対策に意識を置いておりました」
「そんな中で迫り来る災厄の十三魔、ナナ・ナインに対して、わしらは果敢にも切っ先として立ち向かいその襲撃を退けたのじゃ」
「しかし、すぐに大挙をして攻め入った歪虚達と十三魔であるガルドブルムさんの襲来」
「単身鼻先へ飛び乗り話術を駆使したわしは、妹の備えた交渉へと繋げ、見事大敗北と言わしめる撤退へと持ち込んだ」
 この戦いで、数多の戦場に出て来たからこそ紡げる、彼女達の戦記譚。
 臨場感たっぷりの話に、戦いの詳細を知らない者達はかぶりつくように聞き入っていた。
「そして来る総力戦……私たちは志を同じくする仲間達と共に、大霊堂を取り戻すために立ち上がりました」
「敵の大軍を前に物おじせず、わしは名乗りすら上げて奮闘しておった。巫女として、白龍の心と民の安寧をつかむためにな」
「常勝無敗である私達の前に、最後には悲願である聖地の奪還を成し遂げました」
 聖地奪還――この戦い一番の戦果であるその言葉を前にして、観客達の興奮も最高潮である。
「まだ、厳しい戦いは続く事でしょう……でも、ご安心くださいませ。私達ハンターと覚醒者たる巫女が、この世界の『希望』となり、皆さまに平穏と勝利の美酒をお約束しましょう!」
 手を広げて、大きく観客へアピールするウィスカ。
 吹きずさんだ風が、その美しい髪を靡かせて、その存在を一層際立たせた。
「では我が戦の神楽と妹の唄、皆の衆にご覧に入れようと思う♪」
 そう客席に愛想を振りまいて、自らの背丈の1.5倍はある太刀を軽々と掲げ上げる星輝。
 ウィスカの姿に見とれていた観客達の顔色は、今度は小さなどよめきへと変わる。

『怠惰 嫉妬…… 七つの感情 打ち克って 希望の翼で 舞いあがれ♪』

 ホープに響く、ウィスカの澄んだ歌声と共に、赤い旋風のようにキレのある剣捌きで蝋燭の「芯」を器用に切り飛ばす星輝。
 常人の目には捕える事も出来ない鋭い太刀筋に、文字通り一瞬にして蝋燭の火を斬り消してしまった彼女の演舞は、その武勇譚に偽り無く、より説得力を持たせて観客達の心に響いていた。

 入れ替わりにステージに上がるクロエ。
 その姿を見て、客席から感嘆の息が漏れる。
「クロエ・アブリールだ。よろしく頼む」
 そう言って礼をするクロエの衣服は、純白のフリルドレス。
 その上からポイントにに青い鎧を纏った、さながら白百合の姫騎士といった出で立ちで、彼女の凛々しい姿勢と相まって触れがたい潔癖さを際立たせていた。
 鋭い金属音を立てて、腰の鞘からレイピアを抜き放つと眼前に垂直に構えるクロエ。
「北の地、試練の山で行われた掃討戦。その戦場に私と仲間達は身を置いていた」
 ヒュンと空気を切り裂く音を立、切っ先がステージの上を滑る。
「待ち受けるはハイルタイ率いる怠惰の軍勢。巨人達を前にして、私たちは果敢にも真正面からの突撃に打って出ていた」
 煌めく剣と風切音が、大きく、時に細やかに、ステージの上を舞う。
 そのたびにひらりとフリルのドレスも宙を舞い、言葉にできぬ美しさを奏でて居る。
「歪虚の群れを切り伏せながら、敵将へと迫る刃。その一手は確かに、ヤツの体に一筋の傷を作り上げていた」
 一文字に閃く刃が、張りつめた空気を切り裂く。
 びしりと残心も決めるクロエの姿に、呑み込んだ息はやがて感嘆の吐息に。
 そして、胸元で輝く勲章への賛辞の拍手へと移り行くのであった。

「東方から参りました、アティニュスと申します。良しなに」
 次にステージに立った少女・アティニュスは、東方の文化服であるあやめ柄の着物に身を包み、静かにお辞儀をする。
 西方の人間達にとってはそれだけでも目新しいものであり、どこか好奇に満ちた視線が彼女の下に集まった。
「私達エトファリカの使者は奪還された転移門の力でこの地へと訪れる事ができました。しかし激戦の折、唐突に現れた見ず知らずの軍勢は、この地の方々に大きな不安と不信を与えてしまったと聞いています」
 辺境の戦士達は別として、他の国々の兵士やハンター達にとっては突然の来訪者だ。無理も無い。
「初めての皆合の時、私はエトファリカを示す旗を掲げ西方の方々に相対します。それに続けるのは言葉か、行動か……否、私はたった一つの単純な方法でそれを示す事にいたします」
 そう言いながら、彼女の身体を淡いマテリアルの光が包み込む。
 その肌が次第に浅黒く染まり、髪はつむじから白く染まり行く。
「――そう。歪虚と戦うものであることを、彼らに示したのだ」
 そうして、意識を四散するように覚醒を解くアティニュス。
 そのまま傍らのあやめの花を手に取ると、そっと胸元へと掲げ上げにっこりとほほ笑んだ。
「そうして、同じ世界に生きるものであることをお伝えした時、私達の道は交わったのです」
 会場に広まる拍手。
 よく来てくれた、そしてようこそと、それはひと月遅れた歓迎の言葉のように。
 彼女が今ここに居るという事を、暖かく迎え入れていたのであった。

 入れ替わりに、どこかぎくしゃくとした様子でステージに上がる少女。
「えっと、レオーネ・インヴェトーレです。よ、よろしくおねがいしまぁす!」
 そう言って、若干ひきつった笑みを浮かべる。
 さながらCAMを思わせる、白い流線的なフォルムのドレスを身に纏ったレオーネの姿。
 エンジンを模したのか、背中に揺れるスカーフの白い薔薇が何ともチャーミングだ。
 ぎこちないアピールもまた、一種の萌えポイントとして観客の心を掴んでいる。
「ガルドブルムを退けたもう一つの力、人類の英知を詰めた鉄の巨人。オレは、その存在を忘れたくない」
 あの時の事を想い出し、どこか気持ちも落ち着きを見せるレオーネ。
「巨悪にその身を狙われながらも、クリムゾンウェストの有志に助けられ、。そのに宿した炎の矢を一斉に撃ち放ち、窮地を脱した」
 実際はもっとグダグダな内容だった。
 でも、それをどう語るのも今となっては話し手の自由だ。
「今、俺達が生きているのも、この地で実験が繰り返されたCAMのおかげだ。さながら騎士――いや、もう一人の女神だと、オレは思う」
 そう真っ直ぐな視線で言い切って、最後にも一度だけお辞儀をしてステージを去るレオーネ。
 その後には大きな拍手が起こっていたが、それ以上に大きく、安堵の溜息を漏らしていた。
 今日だけは魂を売って『女神』となった『彼』は――結果としてのCAM開発への集金に、ひたすら祈りを向けていた。

 参加者も残り2人となり、準トリにステージへ上がるセレスティア。
 ロドフィアラの名を冠す、昨年冬のヴァリオスの流行りであった花弁を模したドレスは、上品な薄紅色で彼女の姿を優しく着飾っていた。
「戦場ではヤクシーと相対するメンバーの一員でした」
 一息置いてから、澄んだ瞳で語り出す。
「私の立ち位置は治癒の光で仲間を援護するもの。直接相対するものでは、ありません」
 包み隠さず口にしたその言葉に、客席に僅かなどよめきが広がる。
「私の目の前で、皆は傷つき倒れながらもヤクシーへと立ち向かっていきました。何度踏まれても強く咲く、この花のように。それをずっと、誰よりも傍で、見てきました」
 そうして噛みしめるように胸元でぐっと手を握りしめると、先ほどよりも強い視線で観客を、いや、この地を見渡して見せた。
「この地も、何があっても立ち上がれる場所だと感じます。希望の名前に相応しく。そして――」
 腰のレイピアを抜き放ち、天に掲げるセレスティア。
 同時に、花吹雪の幻影が周囲を舞う。
 そのままひらりを剣を閃かせると、後光の如き光をステージへと放った。
「――その強さがあってなお、2度とは汚れぬ様に護る事を誓います。そう、私達が」
 身体を張る以上に見栄を張り、安心をもたらす事こそが騎士の役目。
 そのためには、見世物と言われても、自分はこの場に立つのだ。
 その強い意志は客席にも確かに届いていたのか、盛大な拍手と喝采が、会場を包み込んでいた。

 最後に、ひょこりと舞台袖から顔を出したアンノウン。
 白い衣装に閃く長いヴェール。
 髪に編み込まれたデイジーと色とりどりの花を冠に、見た印象からお花畑のような姿。
 そしてその黒い肌が、華やかな衣装との対比によってより一層際立たせていた。
「我輩の名前は、好きに呼んで欲しいのだ」
 楽しげな表情で口にした言葉に、会場は反応に困った様子でどよめく。
「頑張って誰かの役に立てた時はすっごく嬉しいけど……なんだかそういうのは自分でお話するものでは無いのではないかなー……なんて」
 言葉にするためにうんと頭を捻ったのか、ちょっと首を傾げながら言うアンノウン。
 歪虚でも雑魔でも魔物でも……自分からしたら同じ「命」に変わりない。
 だけど、命を奪い合わなければ護れないものもあるのも事実であり、その事を意気揚々と胸を張って話す事は出来ないのだと。
 ただその事をうまく言葉にもできずに、ただ「ごめんなさい」と頭を下げる彼女。
「ただ一つだけ言えるとしたら、今こうして汝らと繋がっているこの時間。共に存在出来るこの『当たり前』を、吾輩はただ護った。そしてこれからも護りたいのである」
 だから、その「今」をめいいっぱい共有できるようにと、彼女は静かに竪琴へと指を走らせた。
 そして杖の魔力で響かせた彼女の歌声が、ホープへと染み渡ってゆく。
 紡ぐ音色に聞き入る観客達は、同じ心地のひと時を、彼女と共に過ごしていたのであった。

●希望への架橋
「うん、今日も良い時を過ごせたのである」
 うんと背を伸ばして、満足げに頷くアンノウン。
 コンテストを終えて舞台袖へと戻ったハンター達を、エヴァルドは手を広げて迎え入れていた。
「みなさん、お疲れ様でした。素晴らしいパフォーマンスでしたよ」
「ゲ、ゲストの様子はどうなんだ!?」
 魂を売った手前、藁にも縋る想いで問いただすレオーネを前に、エヴァルドはまあ落ち着いてとそれを抑える。
「掴みは上々のようです。先の戦いの実態を皆様の口から聞く事ができ、彼らも自らに求められている役割を理解して頂けたようでしたよ」
「うむ、それは良い事じゃ」
「私達も頑張った甲斐がありますね、姉さま」
 好感触のエヴァルドの言葉に、安堵の息を漏らすオーローン姉妹。
 もちろん、レオーネはそれ以上に大きなガッツポーズで応えていた。
「それにしても、私がグランプリで本当に良かったのでしょうか……」
 観客投票により、見事『戦場の女神』に選ばれたセレスティアは、大きな花束を両手にどこか恥ずかしげな様子。
「人々を想うその気持ちは、私達にも伝わって来た。包み隠さぬ姿勢もまた、評価されたのだろう。胸を張るといい」
「そうですよ。皆さんの助力があってこそ、私たちは戦える。だからこそ、その気持ちを忘れない事は大事な事なのですから」
 そんな彼女を囲むクロエとアティニュスに励まされ、自分の騎士道が認められたようでどこか誇らしげに頷き返すセレスティア。
 しかしながら、抱える花束のように、集まってまた美しいと感じるのも花の魅力。
 1輪1輪も美しい花であるが、それが合わさる事で、戦場に勝利は添えられる。
 ここに集った花達も、また次の戦場で、色とりどりの花と共に美しい勝利を飾ってくれることだろう。

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MVP一覧

  • 淡光の戦乙女
    セレスティアka2691
  • 世界に示す名
    アティニュスka4735

重体一覧

参加者一覧

  • 黒竜との冥契
    黒の夢(ka0187
    エルフ|26才|女性|魔術師
  • 【魔装】の監視者
    星輝 Amhran(ka0724
    エルフ|10才|女性|疾影士
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • 魔導アーマー共同開発者
    レオーネ・インヴェトーレ(ka1441
    人間(紅)|15才|男性|機導師
  • 戦いを選ぶ閃緑
    アイビス・グラス(ka2477
    人間(蒼)|17才|女性|疾影士
  • 淡光の戦乙女
    セレスティア(ka2691
    人間(紅)|19才|女性|聖導士
  • 騎士の誓いを抱く者
    クロエ・アブリール(ka4066
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • 世界に示す名
    アティニュス(ka4735
    人間(蒼)|16才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/06/08 09:37:19
アイコン 【相談卓】ミスコン控え室
Uisca=S=Amhran(ka0754
エルフ|17才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/06/13 06:13:39