ゲスト
(ka0000)
【東征】漢と憤怒と超ドワーフ
マスター:近藤豊

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/06/18 09:00
- 完成日
- 2015/06/20 06:40
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
東方の地へ降り立ったハンター達。
西方各国の戦士と共に憤怒の軍勢へ立ち向かい、東方を救わんと尽力する。
この流れに乗って辺境からも部族の戦士を出すことになった訳だが、辺境には今すぐ戦士を派遣できる余裕はなかった。
怠惰を退けた今も復興作業は続く上、夜煌祭と春郷祭の共催、さらに大首長がバタルトゥ・オイマト(kz0023)に決定してから辺境は大忙し。東方へ大規模な増援送り込む事は難しかった。
それでも東方は聖地奪還に力を貸してくれたのだから、増援を送らない訳にはいかない。辛うじてバタルトゥが東方入りを果たしているが、東方の地は広く、バタルトゥ一人で手が回るはずもない。
こうした顛末から先発隊として東方へ送り込まれた増援は――。
「おい、給仕。ここが東方か?」
ドワーフ王ヨアキム(kz0011)は、戦闘衣装のバンカラ姿で沿岸の浜辺を歩いていた。
娘のカペラが温泉で毒パルム相手に悪戦苦闘している最中、『超ドワーフに覚醒してクリムゾンウェストを救う』と称して部下に自分をボコボコにさせるイベントを画策。
事前に開催を察知したカペラはイベントを即刻中止した上で、
「そんなに世界を救いたいなら東方の人達を救ってきて!」
と、一喝されてしまった。
半ば厄介払いのように東方へ送り込まれたヨアキム。ちゃんと東方の為に働いて欲しいのだが……。
「給仕じゃありません。キュジィです。
ここは既に東方です。さっき諸島付近にいる雑魔を退治して欲しいってお願いされたじゃないですか」
ヨアキムに呆れるキュジィ(kz0078)。
到着早々、ヨアキムとドワーフ達は幕府の関係者から諸島攻略支援を打診されていた。かの地は歪虚支配地域となっているが、龍尾城の結界拡張に伴って敵拠点となってる諸島を奪還する作戦が進行していた。
作戦成功の為、少しでも人手が必要な東方。バンカラ姿の怪しい親父でも戦力として使わなければならないのだ。
「そうだっけ? 言われてみれば『東』って感じがするな」
「言っている意味が分からないのですが……おやっ? あそこに人がいますね」
ヨアキムの馬鹿さに頭痛を感じ始めたキュジィ。
そんなキュジィの前に現れたのは5人の若者達。手には金鎚や粗末な刀を手にしている。
「オラ達がやらねぇと!」
「ここでやらなきゃ、オラ達がやられるだ!」
「だけど、オラ達だけじゃ危ねぇべ!」
若者達は口々に叫んでいる。
明らかに異様な雰囲気を醸し出す一団。それもこの付近は歪虚が徘徊してもおかしくない地域だ。
心配したキュジィが話し掛ける。
「あのー。こんなところでどうされました?」
「あん? なんだ、お前ぇ達は。見掛けねぇ奴らだな」
キュジィとドワーフを不審に思う若者。無理もない、ドワーフを見ることすら初めてなのに、ドワーフ馬鹿代表までいるのだから当然の反応だ。
そして、この馬鹿代表が早速馬鹿の片鱗を見せ始める。
「ワシはドワーフ王ヨアキム。
ドワーフを超えた超ドワーフだ。この東方を救うべくやってきたエリート戦士だ」
「ちょ!?」
頭をかかえるキュジィ。
初対面の相手にハードルを上げまくれば後々面倒になるのは目に見えている。確かに馬鹿としてはエリートだが、若者達がヨアキムを信じ込んだら……。
「超ドワーフ?」
「あれじゃねえか? 朱夏様が呼んできたっていう……」
「本当か!? だったら、一緒に戦ってくれるんじゃねぇか? なんかよく分からねぇが、強そうだし」
どうやら――手遅れのようだ。
一団が一頻り話し合った後、一人の若者が前に出てきた。
「おらは三吉って言いますだ。この近くの村で刀や鎧ばぁ作ってましただ。化け物から逃げ回ってたので、最近は刀を打ってねぇですが……。
でも、朱夏様が西方へ行って助けを呼びに行ったのを知ったオラ達もここで立ち上がらにゃと決断しましただ」
三吉によれば、サムライ達が憤怒の手から村を守ってくれていた事に感謝をしていたが、同時に自分の村を自分の手で情けなく感じていたようだ。
朱夏が西方へ救援を呼びに行ったと聞いた三吉は、戦える者を集めて諸島攻略の支援をすべくやってきたという訳だ。
「ヨアキム樣っ、どうかオラ達も一緒に戦わせてくだせぇ!」
「お願ぇします!」
「オラからも!」
国を救いたいという若者は、熱意だけでこの地までやってきたようだ。
しかし、戦えるといっても武技に精通している訳ではない。メンタル面も戦士のものとはかけ離れている。
おそらく島は歪虚が多数徘徊している。そんなところへ素人同然の三吉を連れて行くのは危険ではないのか。
キュジィは敢えてヨアキムヘ話を振った。
「ヨアキム樣、どうしま……」
「いいだろう。ついて来い! 心配はいらん。なにせ、このエリート超ドワーフのワシがおるからな」
「おおっ!」
キュジィの心配を理解したのかは怪しいが、ヨアキムは三吉達も連れて行くと表明。
三吉達に称えられて調子に乗ったヨアキムが、考えなしに参戦を了承したのだろう。
「ありがとうございます!
おら達義勇兵は、上陸地点付近の敵を掃討しようと思ってましただ」
「なるほど。後から来る上陸地点の安全確保ですか。それなら、可能な限り短時間で敵を掃討しなければいけませんね」
キュジィは、思案する。
ヨアキムのせいで荷物を背負い込む事になったが、三吉達と連携してうまく立ち回れば東方の鍛冶技術を教えてくれるかもしれない。そうなれば、帝国の武器に東方の技術を使って……。
「おい、給仕」
「え……あ、はいはい。何でしょう?」
突然、ヨアキムに声をかけられて慌てるキュジィ。
まさか、考えていた事がヨアキムにバレたのか? いや、この馬鹿にそんな機能は搭載されてないはずだ。もしかして超ドワーフになれば相手の心が読めるのか?
内心慌てるキュジィであったが、ヨアキムはじっとキュジィを見据える。
そして――。
「お前ぇ、最近結婚したんだってな」
「はい、お陰様で……って、なんで今その話!?」
西方各国の戦士と共に憤怒の軍勢へ立ち向かい、東方を救わんと尽力する。
この流れに乗って辺境からも部族の戦士を出すことになった訳だが、辺境には今すぐ戦士を派遣できる余裕はなかった。
怠惰を退けた今も復興作業は続く上、夜煌祭と春郷祭の共催、さらに大首長がバタルトゥ・オイマト(kz0023)に決定してから辺境は大忙し。東方へ大規模な増援送り込む事は難しかった。
それでも東方は聖地奪還に力を貸してくれたのだから、増援を送らない訳にはいかない。辛うじてバタルトゥが東方入りを果たしているが、東方の地は広く、バタルトゥ一人で手が回るはずもない。
こうした顛末から先発隊として東方へ送り込まれた増援は――。
「おい、給仕。ここが東方か?」
ドワーフ王ヨアキム(kz0011)は、戦闘衣装のバンカラ姿で沿岸の浜辺を歩いていた。
娘のカペラが温泉で毒パルム相手に悪戦苦闘している最中、『超ドワーフに覚醒してクリムゾンウェストを救う』と称して部下に自分をボコボコにさせるイベントを画策。
事前に開催を察知したカペラはイベントを即刻中止した上で、
「そんなに世界を救いたいなら東方の人達を救ってきて!」
と、一喝されてしまった。
半ば厄介払いのように東方へ送り込まれたヨアキム。ちゃんと東方の為に働いて欲しいのだが……。
「給仕じゃありません。キュジィです。
ここは既に東方です。さっき諸島付近にいる雑魔を退治して欲しいってお願いされたじゃないですか」
ヨアキムに呆れるキュジィ(kz0078)。
到着早々、ヨアキムとドワーフ達は幕府の関係者から諸島攻略支援を打診されていた。かの地は歪虚支配地域となっているが、龍尾城の結界拡張に伴って敵拠点となってる諸島を奪還する作戦が進行していた。
作戦成功の為、少しでも人手が必要な東方。バンカラ姿の怪しい親父でも戦力として使わなければならないのだ。
「そうだっけ? 言われてみれば『東』って感じがするな」
「言っている意味が分からないのですが……おやっ? あそこに人がいますね」
ヨアキムの馬鹿さに頭痛を感じ始めたキュジィ。
そんなキュジィの前に現れたのは5人の若者達。手には金鎚や粗末な刀を手にしている。
「オラ達がやらねぇと!」
「ここでやらなきゃ、オラ達がやられるだ!」
「だけど、オラ達だけじゃ危ねぇべ!」
若者達は口々に叫んでいる。
明らかに異様な雰囲気を醸し出す一団。それもこの付近は歪虚が徘徊してもおかしくない地域だ。
心配したキュジィが話し掛ける。
「あのー。こんなところでどうされました?」
「あん? なんだ、お前ぇ達は。見掛けねぇ奴らだな」
キュジィとドワーフを不審に思う若者。無理もない、ドワーフを見ることすら初めてなのに、ドワーフ馬鹿代表までいるのだから当然の反応だ。
そして、この馬鹿代表が早速馬鹿の片鱗を見せ始める。
「ワシはドワーフ王ヨアキム。
ドワーフを超えた超ドワーフだ。この東方を救うべくやってきたエリート戦士だ」
「ちょ!?」
頭をかかえるキュジィ。
初対面の相手にハードルを上げまくれば後々面倒になるのは目に見えている。確かに馬鹿としてはエリートだが、若者達がヨアキムを信じ込んだら……。
「超ドワーフ?」
「あれじゃねえか? 朱夏様が呼んできたっていう……」
「本当か!? だったら、一緒に戦ってくれるんじゃねぇか? なんかよく分からねぇが、強そうだし」
どうやら――手遅れのようだ。
一団が一頻り話し合った後、一人の若者が前に出てきた。
「おらは三吉って言いますだ。この近くの村で刀や鎧ばぁ作ってましただ。化け物から逃げ回ってたので、最近は刀を打ってねぇですが……。
でも、朱夏様が西方へ行って助けを呼びに行ったのを知ったオラ達もここで立ち上がらにゃと決断しましただ」
三吉によれば、サムライ達が憤怒の手から村を守ってくれていた事に感謝をしていたが、同時に自分の村を自分の手で情けなく感じていたようだ。
朱夏が西方へ救援を呼びに行ったと聞いた三吉は、戦える者を集めて諸島攻略の支援をすべくやってきたという訳だ。
「ヨアキム樣っ、どうかオラ達も一緒に戦わせてくだせぇ!」
「お願ぇします!」
「オラからも!」
国を救いたいという若者は、熱意だけでこの地までやってきたようだ。
しかし、戦えるといっても武技に精通している訳ではない。メンタル面も戦士のものとはかけ離れている。
おそらく島は歪虚が多数徘徊している。そんなところへ素人同然の三吉を連れて行くのは危険ではないのか。
キュジィは敢えてヨアキムヘ話を振った。
「ヨアキム樣、どうしま……」
「いいだろう。ついて来い! 心配はいらん。なにせ、このエリート超ドワーフのワシがおるからな」
「おおっ!」
キュジィの心配を理解したのかは怪しいが、ヨアキムは三吉達も連れて行くと表明。
三吉達に称えられて調子に乗ったヨアキムが、考えなしに参戦を了承したのだろう。
「ありがとうございます!
おら達義勇兵は、上陸地点付近の敵を掃討しようと思ってましただ」
「なるほど。後から来る上陸地点の安全確保ですか。それなら、可能な限り短時間で敵を掃討しなければいけませんね」
キュジィは、思案する。
ヨアキムのせいで荷物を背負い込む事になったが、三吉達と連携してうまく立ち回れば東方の鍛冶技術を教えてくれるかもしれない。そうなれば、帝国の武器に東方の技術を使って……。
「おい、給仕」
「え……あ、はいはい。何でしょう?」
突然、ヨアキムに声をかけられて慌てるキュジィ。
まさか、考えていた事がヨアキムにバレたのか? いや、この馬鹿にそんな機能は搭載されてないはずだ。もしかして超ドワーフになれば相手の心が読めるのか?
内心慌てるキュジィであったが、ヨアキムはじっとキュジィを見据える。
そして――。
「お前ぇ、最近結婚したんだってな」
「はい、お陰様で……って、なんで今その話!?」
リプレイ本文
「えっ!? 凧?」
東方諸島へ出発する前に、キュジィ・アビトゥーア(kz0078)は声を上げる。
その声にヨアキムの軍師名乗るフレイア(ka4777)は満足そうな笑みを浮かべる。
「ええ、今回は上陸地点の確保が目的。しかし、このまま上陸すれば敵に包囲されるのは必至です。
そこで、沖合から巨大凧をイヌワシ使って敵の注目を集め、その隙に島へ上陸するのです」
フレイアの策はハンター達がうまく上陸する為のものであった。まともに海を進めばいきなり敵に包囲される恐れもある。
そこで巨大凧で注意を集めている間に上陸を果たそうという訳だ。
「しかし、辺境や帝国ならいざ知らず、この東方で材料集めは……」
「オラが何とかするべ」
キュジィが振り返ると、そこには東方で製鉄を営む三吉の姿があった。
ハンター達の登場で盛り上がった三吉達は、憤怒への反抗作戦に呼応して義勇兵として立ち上がっていた。彼らならば巨大凧の材料を確保できるだろう。
「そうですね、凧にヨアキム君を描きましょう。できれば配管工姿で」
「なんで、配管工なんです?」
「あら、ご存知ありませんか? キノコを食べて巨大化するリアルブルーのヒーローの話を……」
「なんか、勘弁してください」
フレイアの話に何故か危機感を抱いたキュジィだった。
一方、問題児の超ドワーフだが。
「はっはー! 超ドワーフになっちまったのかよ! すげぇじゃねぇか!」
ヨアキムの傍らで役犬原 昶(ka0268)が褒め称える。
馬鹿のエリートであったヨアキム(kz0011)が、超ドワーフへの成長したというのだ。
ヨアキムの事だから勝手に言っているだけだと思うのだが……。
「分からねぇけどよ。きっとなんかすげぇんだろ? だって『超』で『エリート』なんだぜ」
「おうよ! 期待しておけ! ワシが本気出したら、雑魔なんぞ軽ーくぶっ飛ばしてやるわい!」
案の定、役犬原も超ドワーフが何かを理解していなかったらしい。
結局、役犬原も脳筋という事か。
「東方の民よ。英傑なる小父殿と我らが来たからには、大船に乗ったつもりで戦果を期待しておるが良いぞっ!」
東方の民へ『西方から来た可憐な美少女高位妖精のルル』と名乗ったもう一人の脳筋――ミルフルール・アタガルティス(ka3422)。
大船が泥船になっているかもしれないのに、ポジティブシンキングしかできない脳筋のおかげで不安要素は一つもない。
そこへ割り込むようにやってきたのは、リナリス・リーカノア(ka5126)だ。
「はい、ちょっとごめん……うっ! この鼻の奥に突き刺さるような雄の匂い……しゅ、しゅごいっ……!」
ヨアキムの隣に陣取り、傍らで思いっきり深呼吸。
ヨアキムの体からは薔薇の香りをコートのように羽織る……こともなく、汗と体臭の入り混じった酸っぱい匂いが発せられている。
少し嗅いだだけで体の各器官が緊急警報を発するものだが、リナリスはうっとりした顔付きでヨアキムの顔を見ている。
「あぁん、ヨアキム樣っ♪ ご一緒できて光栄ですぅ♪
雑魔なんてさっさとやっつけちゃいましょう♪」
頬を赤らめて酔った勢いのリナリス。ヨアキムの放つ漢のフェロモンにやられたのだろうか。
「変っ態だーーーっ!」
リナリスの行動で叫ばずには居られなかったミルフルールであった。
●
ハンター達は手漕ぎ船数隻に分譲して、静かに海を進む。
先程、沖合いからフレイアのイヌワシが凧を持って砂浜の方へ飛んで行った。
何故、ヨアキムの顔で赤い帽子を被った配管工を凧に描いたのか。その意図はフレイアにしか分からない。だが、敵の注意を惹きつけるなら赤い色は目立つ。作戦としては打って付けだ。
だが、この作戦は予想外の事も引き起こす。
「……想定よりも多いな」
対崎 紋次郎(ka1892)が上陸地点の砂浜に視線を送るが、そこには赤、青、黄の雑魔達が砂浜に集まっていた。
その数は紋次郎が考えていた数よりも多い。今も砂浜を埋め尽くさんばかりだ。
「ふむ。敵の目を惹き付けたのは良かったが、不審な物の到来に呼応して敵が増援を呼んだようだな」
紋次郎の隣でHolmes(ka3813)が冷静に分析している。
知能の低い雑魔であっても、敵の襲撃と感じれば増援を呼んでもおかしくはない。未知なる物に恐怖する事は狙ったが、それが仲間を呼び集める結果に至ったのだ。
それでもハンター達は落ち着いている。
「数がいくら居ようと関係ねぇよ。どうせ暴れれば集まってくるんだ。まとめてぶん殴られに来るんなら、手間が省けていいぜ」
「同感だ。早い話、みんなぶっ飛ばせばいいんだろ?」
「さすが、小父殿! 我も同じ想いであったぞ」
役犬原とヨアキムとミルフルールは、舟の上を待ちわびている。
暴れる事がメインの脳筋達に細かい作戦は不要のようだ。頼もしい限りだが、フレイアは作戦成功の為に安全策を選ぶことにした。
「発見されるリスクは回避しましょう。予定地点からさらに奥で上陸します。少々時間を要しますが、確実に敵陣の側面を突く為には致し方ありません」
●
「オラオラオラオラっ!」
役犬原のナックル「ヴァリアブル・デバイド」があかなめの顔面にクリーンヒット。
そのまま拳を振り抜いて後方に居たあおなめの体にあかなめを叩き付ける。
大凧を使って注意を惹く事に成功したハンター達は、雑魔の側面から強襲。三吉達を後方に配して一団となったハンター達が雑魔の群れを真っ二つに分断していく。
「やるじゃねぇか!」
「ひい、ふう、みぃ……うむ。いっぱいだ。
小父殿、GOだっ!」
役犬原の戦いに呼応してヨアキムにもエンジンがかかる。
その肩には定位置と称してミルフルールがスタンバイ。いつものようにホーリーセイバーをヨアキムに施して突貫開始だ。
「うおおおおっ!」
手近な奴に容赦なくストレートを叩き込んでいく。足下が砂浜である為に、やや踏ん張りは利かないが……。
「小父殿。ぬめぬめするものには、塩が良いと聞き及んでおる」
「そうなのか?」
「うむ、この美少女高位妖精に任せるが良い」
そう言うミルフルールの手にあったは唐辛子の粉末を混ぜ込んだ粗塩と煎り大豆が入った籠だった。
徐にミルフルールが塩を掴むと次々とあかなめ達に投げつけ始める。
「雑魔は外なのだーっ!」
「!!」
一瞬怯むあかなめ達。
そもそも塩自体があかなめを弱体化させる訳ではない。だが、目の前に唐辛子入りの塩を投げつけられれば、あかなめ達とて怯む。おまけに自慢げに長い舌を口から垂れ流しているのだ。味見役としては打って付けだろう。
「おおっ! マジじゃねぇか! こいつぁいい、入れ食いだっ!」
ミルフルールの塩攻撃に怯むあかなめ達を前に歓喜の声を上げるヨアキム。
別にお前の手柄じゃないのだが、ミルフルールが無力化したあかなめ達を片っ端からぶっ飛ばしていく。
「そっちこそ、とんでもねぇ隠し球を用意してたじゃねぇか!
だけど、まだあるんだろう? だって『超』なんだから」
役犬原が近寄るあおなめに前蹴りを浴びせかけている最中、傍らのヨアキムへ叫ぶ。
その一言がヨアキムの中にあった設定を呼び起こす。
そうだ。ワシは超ドワーフだったんだっけ、と。
「お、おう! ワシの超ドワーフっぷりを見せつけてやるぜ!」
「さすが、小父殿! ここで一発、例の新必殺技をっ!」
「よしっ、やるか!」
クロノスサイズを握ったミルフルールの足を手にして、ヨアキムが大回転。
砂煙を巻き上げながら周囲のあかなめ達を引き裂いて行く。
「で……デェッ、ド……うぇっぷ……たい、たい……ぶー」
ここで高位妖精として『デッドリータイフーン』と格好良く言い放つつもりだったが、ヨアキムが加減という言葉を知らない為に全力回転。砂煙もミルフルールにたっぷりかかって必殺技を叫べない。
「うぉぉ! どうだ!」
そう叫んだ瞬間、ヨアキムはミルフルールの足を離す。
弾丸と化したミルフルールが、あかなめ達をまとめて吹き飛ばす。
「すげぇ! それが超ドワーフって奴か!
俺も超ハンターにならなねぇとな!」
必殺技が失敗してただの事故が発生しただけなのだが、驚きと興奮を隠せない役犬原であった。
●
前衛の脳筋三兄妹が恐ろしいまでの突撃を敢行している。
だが、それも他のハンター達がフォローしている事実を忘れてはならない。
「ドワーフ達は前の三人を見失うな。だが、仲間の範囲攻撃に巻き込まれぬようにな」
前衛の三人を後方から襲撃をしようとしていたきなめにデルタレイを叩き込む紋次郎。
一団として戦う以上、陣形を維持しなければならない。
前衛三人の性格を考えれば勝手に突き進む事は目に見えている。ならば、中間位置に陣取って陣営の維持を図るべきだろう。紋次郎は周囲に気を配りながら味方のフォローに徹している。
それだけではない。
「次から次へと……キリがない。やはり、予定通り動くべきか」
――タタタタッ!
小気味の良い連射音が浜辺に木霊する。
紋次郎は遠距離の敵に対してライフル「ペネトレイトC26」を放つ。
銃弾を受けたあかなめは顔面に複数の風穴を作りながら、後方へと倒れていく。
「臆したか? だじろいだか?」
紋次郎は雑魔へ殺気を向けた。
ライフルというあかなめ達にとって未知とも表現できる武器で敵を屠る。
あかなめ達から見れば、ハンター達の一団は難攻不落の移動要塞として映る。
それは未知なる一匹の生物としてあかなめ達に恐怖を与えていく。
つまり――紋次郎は敵の戦意を喪失させようとしていたのだ。
「戦うだけ無駄。その事を理解したものからこの地を去るが良い」
怒気を込めて強く叫ぶ紋次郎。
この作戦は功を奏し、一部のあかなめ達を撤退させるに至った。
●
そんな中、一団から飛び出す一つの影――Holmesと重装馬のナイジェルだ。
「やはりこういった『大多数相手に大立ち回り』というのは、心躍るものがあるよ。
……行こうか、ナイジェル」
Holmesはナイジェルを駆り、あかなめの一団へ突撃する。
スピードに乗せた突撃は、付近のあかなめ達を吹き飛ばしていく。
そして、一団の中で飛び込んだHolmesは大鎌「グリムリーパー」を片手にナイジェルから飛び降りる。
「今だっ!」
あかなめ達との距離を目測したHolmes。
敵を惹き付けた瞬間にラウンドスウィングを叩き込む。体を大きく回転させて周囲のあかなめを吹き飛ばす。
だが、敵の数は多い。
吹き飛ばしたあかなめ達を乗り越えて、Holmesの元へと近づいていく。
舌を、ゆらゆらと伸ばしながら。
「ナイジェルっ!」
そう叫んだHolmesは、飛び上がる。
次の瞬間、主の元へと舞い戻ったナイジェルがあかなめ達を吹き飛ばしながら走り込んで来る。
タイミングを合わせたHolmesは、ナイジェルの背中へ跨がって颯爽とその場を走り去る。
「このままヒット&ウェイで……行きたいところだけど、やはり難しいかい。ナイジェル」
当初の予定では、Holmesはこの攻撃を数回繰り返して敵を攪乱するつもりだった。
だが、足下が砂浜である為にいつものようなスピードが出せないのだ。馬用の鎧でスピードが出ない上に、砂で足を取られる為に思うような動きができないのだろう。
「もって後数回、か。
ナイジェル、もう少しだけ頑張ってくれるかい?」
Holmesは、ナイジェルの首を軽く擦る。
そして、ナイジェルの踵を返すと再びあかなめに向かって走り出した。
●
「今だよっ!」
倒れ込んだあかなめ目掛けて三吉の刀が突き立てた。
舌で足掻こうとするあかなめであったが、すぐに力が抜けてだらりと胸の上に垂れ下がっている。
ハンターとヨアキムを慕って共にやってきた三吉ら義勇兵達。
ここで憤怒と戦わなければと立ち上がった三吉達を置いていくのは簡単であったが、その熱い想いを受け止めなければならない。
そこでリナリスは一団の後方に陣取り、三吉と共にあかなめ達を始末する仕事を請け負った。
「すまねぇなぁ。オラ達の為に」
「気にしないでいいよ。ここの雑魔を退治したかったのはみんな一緒だから」
三吉の謝罪に、リナリスは優しい言葉を返す。
さっきまでミルフルールに変態と呼ばれていた奴か!? と思ってしまうが、天真爛漫少女を装う事もリナリスのオプション装備なんです。
「それっ!」
そう言いながら、近づくあおなめをウィンドスラッシュで吹き飛ばす。
倒れ込むあかなめ。すかさず三吉達へ指示を飛ばす。
「また一匹倒れたよ!」
その一言で青年達が一気にあおなめへ刀と突き刺した。
前衛、中衛が転ばしたあかなめ達を後衛のリナリスと三吉がトドメを刺して回る。確実敵を減らしていく作業だが、これが意外と大変だ。
周囲を注意しながら適確に三吉達へ指示を出すのはそう簡単な作業じゃない。
「大丈夫か、お嬢ちゃん?」
心配そうに顔を覗き込む三吉。
一人で五人もの青年に指示を出し、同時に周囲から集まってくるあかなめ達や前を行く仲間に注意を払わなければならない。肉体的疲労だけではなく、精神的な疲労も相当なものだ。
その事を三吉は気遣ってくれたのだろう。
しかし、リナリスは浮かべていた表情を打ち消して笑顔を浮かべる。
「大丈夫。心配かけさせちゃダメだよね。
……ほら、早く前に行かないと。みんなから離れちゃうよ」
三吉と青年達に前進を促すリナリス。
三吉達は顔を見合わせた後、リナリスと共に進み始めた。
●
こうして砂浜を蹂躙し続けるハンター達。
だが、当初の予定よりも随分時間を要してしまった。
「敵陣の分担は成功しましたが……敵の強さを考えれば、ある程度戦力を分けて各個撃破するべきだったかもしれません」
フレイアはスリープクラウドで眠りに落ちるあかなめ達を前に、今回の作戦を思い返していた。
敵陣を分断には成功した。
しかし、ハンター達が一団になって戦えば集団と対峙する敵のみを相手にしていく事になる。
今回の戦いは早期に上陸地点を確保するのが目的の一つ。敵単体が弱いのであれば戦力を分散しても良かったのかもしれない。
「次の作戦に生かさなければなりませんね」
「各班上陸。まずは浜辺に残された雑魔を掃討だ」
舟で乗り付けた味方の本隊が残っていた雑魔を蹂躙していく。
ハンター達も相当数撃破していたが、短時間で浜辺に居た雑魔すべてを片付には至らなかった。
「少しは……貢献できたかのう」
疲労した体を潮風に晒しながら、空を仰ぎ見る紋次郎。
その一言に、Holmesはそっと答えた。
「無駄にはならないよ。ボクの推理が正しければ、ね」
東方諸島へ出発する前に、キュジィ・アビトゥーア(kz0078)は声を上げる。
その声にヨアキムの軍師名乗るフレイア(ka4777)は満足そうな笑みを浮かべる。
「ええ、今回は上陸地点の確保が目的。しかし、このまま上陸すれば敵に包囲されるのは必至です。
そこで、沖合から巨大凧をイヌワシ使って敵の注目を集め、その隙に島へ上陸するのです」
フレイアの策はハンター達がうまく上陸する為のものであった。まともに海を進めばいきなり敵に包囲される恐れもある。
そこで巨大凧で注意を集めている間に上陸を果たそうという訳だ。
「しかし、辺境や帝国ならいざ知らず、この東方で材料集めは……」
「オラが何とかするべ」
キュジィが振り返ると、そこには東方で製鉄を営む三吉の姿があった。
ハンター達の登場で盛り上がった三吉達は、憤怒への反抗作戦に呼応して義勇兵として立ち上がっていた。彼らならば巨大凧の材料を確保できるだろう。
「そうですね、凧にヨアキム君を描きましょう。できれば配管工姿で」
「なんで、配管工なんです?」
「あら、ご存知ありませんか? キノコを食べて巨大化するリアルブルーのヒーローの話を……」
「なんか、勘弁してください」
フレイアの話に何故か危機感を抱いたキュジィだった。
一方、問題児の超ドワーフだが。
「はっはー! 超ドワーフになっちまったのかよ! すげぇじゃねぇか!」
ヨアキムの傍らで役犬原 昶(ka0268)が褒め称える。
馬鹿のエリートであったヨアキム(kz0011)が、超ドワーフへの成長したというのだ。
ヨアキムの事だから勝手に言っているだけだと思うのだが……。
「分からねぇけどよ。きっとなんかすげぇんだろ? だって『超』で『エリート』なんだぜ」
「おうよ! 期待しておけ! ワシが本気出したら、雑魔なんぞ軽ーくぶっ飛ばしてやるわい!」
案の定、役犬原も超ドワーフが何かを理解していなかったらしい。
結局、役犬原も脳筋という事か。
「東方の民よ。英傑なる小父殿と我らが来たからには、大船に乗ったつもりで戦果を期待しておるが良いぞっ!」
東方の民へ『西方から来た可憐な美少女高位妖精のルル』と名乗ったもう一人の脳筋――ミルフルール・アタガルティス(ka3422)。
大船が泥船になっているかもしれないのに、ポジティブシンキングしかできない脳筋のおかげで不安要素は一つもない。
そこへ割り込むようにやってきたのは、リナリス・リーカノア(ka5126)だ。
「はい、ちょっとごめん……うっ! この鼻の奥に突き刺さるような雄の匂い……しゅ、しゅごいっ……!」
ヨアキムの隣に陣取り、傍らで思いっきり深呼吸。
ヨアキムの体からは薔薇の香りをコートのように羽織る……こともなく、汗と体臭の入り混じった酸っぱい匂いが発せられている。
少し嗅いだだけで体の各器官が緊急警報を発するものだが、リナリスはうっとりした顔付きでヨアキムの顔を見ている。
「あぁん、ヨアキム樣っ♪ ご一緒できて光栄ですぅ♪
雑魔なんてさっさとやっつけちゃいましょう♪」
頬を赤らめて酔った勢いのリナリス。ヨアキムの放つ漢のフェロモンにやられたのだろうか。
「変っ態だーーーっ!」
リナリスの行動で叫ばずには居られなかったミルフルールであった。
●
ハンター達は手漕ぎ船数隻に分譲して、静かに海を進む。
先程、沖合いからフレイアのイヌワシが凧を持って砂浜の方へ飛んで行った。
何故、ヨアキムの顔で赤い帽子を被った配管工を凧に描いたのか。その意図はフレイアにしか分からない。だが、敵の注意を惹きつけるなら赤い色は目立つ。作戦としては打って付けだ。
だが、この作戦は予想外の事も引き起こす。
「……想定よりも多いな」
対崎 紋次郎(ka1892)が上陸地点の砂浜に視線を送るが、そこには赤、青、黄の雑魔達が砂浜に集まっていた。
その数は紋次郎が考えていた数よりも多い。今も砂浜を埋め尽くさんばかりだ。
「ふむ。敵の目を惹き付けたのは良かったが、不審な物の到来に呼応して敵が増援を呼んだようだな」
紋次郎の隣でHolmes(ka3813)が冷静に分析している。
知能の低い雑魔であっても、敵の襲撃と感じれば増援を呼んでもおかしくはない。未知なる物に恐怖する事は狙ったが、それが仲間を呼び集める結果に至ったのだ。
それでもハンター達は落ち着いている。
「数がいくら居ようと関係ねぇよ。どうせ暴れれば集まってくるんだ。まとめてぶん殴られに来るんなら、手間が省けていいぜ」
「同感だ。早い話、みんなぶっ飛ばせばいいんだろ?」
「さすが、小父殿! 我も同じ想いであったぞ」
役犬原とヨアキムとミルフルールは、舟の上を待ちわびている。
暴れる事がメインの脳筋達に細かい作戦は不要のようだ。頼もしい限りだが、フレイアは作戦成功の為に安全策を選ぶことにした。
「発見されるリスクは回避しましょう。予定地点からさらに奥で上陸します。少々時間を要しますが、確実に敵陣の側面を突く為には致し方ありません」
●
「オラオラオラオラっ!」
役犬原のナックル「ヴァリアブル・デバイド」があかなめの顔面にクリーンヒット。
そのまま拳を振り抜いて後方に居たあおなめの体にあかなめを叩き付ける。
大凧を使って注意を惹く事に成功したハンター達は、雑魔の側面から強襲。三吉達を後方に配して一団となったハンター達が雑魔の群れを真っ二つに分断していく。
「やるじゃねぇか!」
「ひい、ふう、みぃ……うむ。いっぱいだ。
小父殿、GOだっ!」
役犬原の戦いに呼応してヨアキムにもエンジンがかかる。
その肩には定位置と称してミルフルールがスタンバイ。いつものようにホーリーセイバーをヨアキムに施して突貫開始だ。
「うおおおおっ!」
手近な奴に容赦なくストレートを叩き込んでいく。足下が砂浜である為に、やや踏ん張りは利かないが……。
「小父殿。ぬめぬめするものには、塩が良いと聞き及んでおる」
「そうなのか?」
「うむ、この美少女高位妖精に任せるが良い」
そう言うミルフルールの手にあったは唐辛子の粉末を混ぜ込んだ粗塩と煎り大豆が入った籠だった。
徐にミルフルールが塩を掴むと次々とあかなめ達に投げつけ始める。
「雑魔は外なのだーっ!」
「!!」
一瞬怯むあかなめ達。
そもそも塩自体があかなめを弱体化させる訳ではない。だが、目の前に唐辛子入りの塩を投げつけられれば、あかなめ達とて怯む。おまけに自慢げに長い舌を口から垂れ流しているのだ。味見役としては打って付けだろう。
「おおっ! マジじゃねぇか! こいつぁいい、入れ食いだっ!」
ミルフルールの塩攻撃に怯むあかなめ達を前に歓喜の声を上げるヨアキム。
別にお前の手柄じゃないのだが、ミルフルールが無力化したあかなめ達を片っ端からぶっ飛ばしていく。
「そっちこそ、とんでもねぇ隠し球を用意してたじゃねぇか!
だけど、まだあるんだろう? だって『超』なんだから」
役犬原が近寄るあおなめに前蹴りを浴びせかけている最中、傍らのヨアキムへ叫ぶ。
その一言がヨアキムの中にあった設定を呼び起こす。
そうだ。ワシは超ドワーフだったんだっけ、と。
「お、おう! ワシの超ドワーフっぷりを見せつけてやるぜ!」
「さすが、小父殿! ここで一発、例の新必殺技をっ!」
「よしっ、やるか!」
クロノスサイズを握ったミルフルールの足を手にして、ヨアキムが大回転。
砂煙を巻き上げながら周囲のあかなめ達を引き裂いて行く。
「で……デェッ、ド……うぇっぷ……たい、たい……ぶー」
ここで高位妖精として『デッドリータイフーン』と格好良く言い放つつもりだったが、ヨアキムが加減という言葉を知らない為に全力回転。砂煙もミルフルールにたっぷりかかって必殺技を叫べない。
「うぉぉ! どうだ!」
そう叫んだ瞬間、ヨアキムはミルフルールの足を離す。
弾丸と化したミルフルールが、あかなめ達をまとめて吹き飛ばす。
「すげぇ! それが超ドワーフって奴か!
俺も超ハンターにならなねぇとな!」
必殺技が失敗してただの事故が発生しただけなのだが、驚きと興奮を隠せない役犬原であった。
●
前衛の脳筋三兄妹が恐ろしいまでの突撃を敢行している。
だが、それも他のハンター達がフォローしている事実を忘れてはならない。
「ドワーフ達は前の三人を見失うな。だが、仲間の範囲攻撃に巻き込まれぬようにな」
前衛の三人を後方から襲撃をしようとしていたきなめにデルタレイを叩き込む紋次郎。
一団として戦う以上、陣形を維持しなければならない。
前衛三人の性格を考えれば勝手に突き進む事は目に見えている。ならば、中間位置に陣取って陣営の維持を図るべきだろう。紋次郎は周囲に気を配りながら味方のフォローに徹している。
それだけではない。
「次から次へと……キリがない。やはり、予定通り動くべきか」
――タタタタッ!
小気味の良い連射音が浜辺に木霊する。
紋次郎は遠距離の敵に対してライフル「ペネトレイトC26」を放つ。
銃弾を受けたあかなめは顔面に複数の風穴を作りながら、後方へと倒れていく。
「臆したか? だじろいだか?」
紋次郎は雑魔へ殺気を向けた。
ライフルというあかなめ達にとって未知とも表現できる武器で敵を屠る。
あかなめ達から見れば、ハンター達の一団は難攻不落の移動要塞として映る。
それは未知なる一匹の生物としてあかなめ達に恐怖を与えていく。
つまり――紋次郎は敵の戦意を喪失させようとしていたのだ。
「戦うだけ無駄。その事を理解したものからこの地を去るが良い」
怒気を込めて強く叫ぶ紋次郎。
この作戦は功を奏し、一部のあかなめ達を撤退させるに至った。
●
そんな中、一団から飛び出す一つの影――Holmesと重装馬のナイジェルだ。
「やはりこういった『大多数相手に大立ち回り』というのは、心躍るものがあるよ。
……行こうか、ナイジェル」
Holmesはナイジェルを駆り、あかなめの一団へ突撃する。
スピードに乗せた突撃は、付近のあかなめ達を吹き飛ばしていく。
そして、一団の中で飛び込んだHolmesは大鎌「グリムリーパー」を片手にナイジェルから飛び降りる。
「今だっ!」
あかなめ達との距離を目測したHolmes。
敵を惹き付けた瞬間にラウンドスウィングを叩き込む。体を大きく回転させて周囲のあかなめを吹き飛ばす。
だが、敵の数は多い。
吹き飛ばしたあかなめ達を乗り越えて、Holmesの元へと近づいていく。
舌を、ゆらゆらと伸ばしながら。
「ナイジェルっ!」
そう叫んだHolmesは、飛び上がる。
次の瞬間、主の元へと舞い戻ったナイジェルがあかなめ達を吹き飛ばしながら走り込んで来る。
タイミングを合わせたHolmesは、ナイジェルの背中へ跨がって颯爽とその場を走り去る。
「このままヒット&ウェイで……行きたいところだけど、やはり難しいかい。ナイジェル」
当初の予定では、Holmesはこの攻撃を数回繰り返して敵を攪乱するつもりだった。
だが、足下が砂浜である為にいつものようなスピードが出せないのだ。馬用の鎧でスピードが出ない上に、砂で足を取られる為に思うような動きができないのだろう。
「もって後数回、か。
ナイジェル、もう少しだけ頑張ってくれるかい?」
Holmesは、ナイジェルの首を軽く擦る。
そして、ナイジェルの踵を返すと再びあかなめに向かって走り出した。
●
「今だよっ!」
倒れ込んだあかなめ目掛けて三吉の刀が突き立てた。
舌で足掻こうとするあかなめであったが、すぐに力が抜けてだらりと胸の上に垂れ下がっている。
ハンターとヨアキムを慕って共にやってきた三吉ら義勇兵達。
ここで憤怒と戦わなければと立ち上がった三吉達を置いていくのは簡単であったが、その熱い想いを受け止めなければならない。
そこでリナリスは一団の後方に陣取り、三吉と共にあかなめ達を始末する仕事を請け負った。
「すまねぇなぁ。オラ達の為に」
「気にしないでいいよ。ここの雑魔を退治したかったのはみんな一緒だから」
三吉の謝罪に、リナリスは優しい言葉を返す。
さっきまでミルフルールに変態と呼ばれていた奴か!? と思ってしまうが、天真爛漫少女を装う事もリナリスのオプション装備なんです。
「それっ!」
そう言いながら、近づくあおなめをウィンドスラッシュで吹き飛ばす。
倒れ込むあかなめ。すかさず三吉達へ指示を飛ばす。
「また一匹倒れたよ!」
その一言で青年達が一気にあおなめへ刀と突き刺した。
前衛、中衛が転ばしたあかなめ達を後衛のリナリスと三吉がトドメを刺して回る。確実敵を減らしていく作業だが、これが意外と大変だ。
周囲を注意しながら適確に三吉達へ指示を出すのはそう簡単な作業じゃない。
「大丈夫か、お嬢ちゃん?」
心配そうに顔を覗き込む三吉。
一人で五人もの青年に指示を出し、同時に周囲から集まってくるあかなめ達や前を行く仲間に注意を払わなければならない。肉体的疲労だけではなく、精神的な疲労も相当なものだ。
その事を三吉は気遣ってくれたのだろう。
しかし、リナリスは浮かべていた表情を打ち消して笑顔を浮かべる。
「大丈夫。心配かけさせちゃダメだよね。
……ほら、早く前に行かないと。みんなから離れちゃうよ」
三吉と青年達に前進を促すリナリス。
三吉達は顔を見合わせた後、リナリスと共に進み始めた。
●
こうして砂浜を蹂躙し続けるハンター達。
だが、当初の予定よりも随分時間を要してしまった。
「敵陣の分担は成功しましたが……敵の強さを考えれば、ある程度戦力を分けて各個撃破するべきだったかもしれません」
フレイアはスリープクラウドで眠りに落ちるあかなめ達を前に、今回の作戦を思い返していた。
敵陣を分断には成功した。
しかし、ハンター達が一団になって戦えば集団と対峙する敵のみを相手にしていく事になる。
今回の戦いは早期に上陸地点を確保するのが目的の一つ。敵単体が弱いのであれば戦力を分散しても良かったのかもしれない。
「次の作戦に生かさなければなりませんね」
「各班上陸。まずは浜辺に残された雑魔を掃討だ」
舟で乗り付けた味方の本隊が残っていた雑魔を蹂躙していく。
ハンター達も相当数撃破していたが、短時間で浜辺に居た雑魔すべてを片付には至らなかった。
「少しは……貢献できたかのう」
疲労した体を潮風に晒しながら、空を仰ぎ見る紋次郎。
その一言に、Holmesはそっと答えた。
「無駄にはならないよ。ボクの推理が正しければ、ね」
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妖怪退治 フレイア(ka4777) エルフ|25才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/06/16 22:34:15 |
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ヨアキムくんに質問 フレイア(ka4777) エルフ|25才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/06/14 18:14:40 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/14 14:22:57 |