おしえてタングラム2

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/07/13 19:00
完成日
2014/07/16 08:03

みんなの思い出

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オープニング

●暴食の歪虚、“吸血鬼”編
「いってらっしゃいですよー! ふう、一仕事終わっ……なんですか? え? 自分達にも教えろって?」
 動く死体討伐班が確定し、彼らが依頼に出発するのを見送ったタングラムの肩を一人のハンターが叩いた。
 そう、暴食の歪虚には三系統がある。まだ“吸血鬼型”と“亡霊型”についての説明が済んでいないのだ。
「いや、何もそんなに急がなくても……。え? ゾンビ討伐に入り損ねたから次に行きたいって? いや、それは私の責任では……ああ、わかったです、わかったですよ! しょうがないですねぇ、じゃあなんか依頼引っ張ってくるです!」
 面倒臭そうにAPVを立ち去るタングラム。そして数十分後、書類を手に疲れた様子で帰還を果たした。
「偶然にも丁度依頼が出ていたので引っ張ってきたですよ……。ユニオンリーダーだからと因縁つけて無理矢理引っ手繰ったので成功してくれないと私のクビがやばいのですね……」
 そんなどうでもいい前置きを一つ。それから動く死体についてと書かれた隣に“吸血鬼について”という紙を新たに張り出した。
「お次は吸血鬼型です。こいつらは、まあ正直あんまり皆が遭遇する事はないと思うのですよ」
 吸血鬼型は比較的人間に近い形状をした歪虚だ。しかし上位の個体でなければ知性はさほどではなく、言語を理解しない場合も多い。
 彼らの戦闘力そのものは、亡霊型や動く死体型と比べるとさほどではない事が多い。問題は吸血鬼型の行動特性にある。
「吸血鬼型の連中は、自分の根城に定めた地点で自分以外の死体を動かしたり、雑魔を操ったりして領土を作る習性があるのです。その為存在を察知しにくく……察知した時にはすっかり“城”が出来上がっているケースが多いのです」
 吸血鬼の個体数はゾンビに比べれば多くはない。帝国内で発生する吸血鬼事件は早期発見、解決が必須の為、ハンターに回されてくるケースは少ないのだ。
「逆に言うと、先に始末出来るなら帝国がやっているでしょうから、ハンターに回されるのは城への突入殲滅が多い、かもしれないですね……」
 頬をぽりぽりと掻き、溜息を一つ。それからハンターへ目を向ける。
「城主さえ倒せばその辺の雑魔は統率を失って烏合の衆になるですが、城主がいると普段より賢く動くので厄介です。吸血鬼と戦う時は、速やかに本体を捕捉し殲滅するのがセオリーですよ」
 ちなみにリアリブルーで言われているような“十字架”や“にんにく”、“流れる水”や“日光”はこの世界の吸血鬼にとって致命傷足りえない。尤も、苦手とする個体はいるかもしれないが。
「吸血鬼型の四霊剣、“不変の剣妃”は本当に悪質な奴で、人間を取り入れようとしたり、内々に領土を作って急に事件を起こしたりするくせに本人は前線に出てこなかったりするですね」
 上位の吸血鬼なら高い知性で人を欺き、心の弱さに付け込んで操ろうとする。今回は下位も下位、その心配はないが……。
「奴らが起こす事件は、往々にして悲劇的なのですね。その悲劇を打ち破る為に、吸血鬼の仕留め方を学んで置く必要があるのですよ」
 話を終え、タングラムは切り替えるように咳払いを一つ。
「今回の依頼はいかにザコをやり過ごし城主を迅速に仕留めるかがポイントです。その実現にはやはり、仲間との連携が重要になってくるでしょう」
 陽動でザコを引き付けるか、全員で一点突破を狙うか。敵に囲まれる戦闘では、常に背中を誰かに預けなければ生き残れない。
「君には命を預けられる相棒はいるですか? 今のうちに戦いの中で友を作り、仲間を作っていく。それもハンターに必要な資質の一つですよ」
 勇気づけるようにハンターの背中を叩き、仮面の少女は笑った。ハンターは依頼の申込書を受け取り、APVを後にした。

リプレイ本文

 夜が明けようとしていた。
 半壊した洋館の広間にて椅子に腰掛ける吸血鬼、その耳に城下からの遠吠えが響いた。飼い犬の報告に頬杖をついたまま不機嫌そうに眉を潜めると、控えていた犬と奴隷に腕を振って指示を出す。
 大人しく座っていた犬が走り出し、数名のゾンビが広間を後にする。吸血鬼はふわりと浮かび上がると自らの得物を手に空中で足を組んで笑った。

「あー、もう、しくじった、です。リアルゾンビとか、ちょっと楽しみだったけど、こいつら腐っててくせぇ、です」
 廃村に広がる畑道を走る八城雪(ka0146)は正面から接近するゾンビの足にハルバードを叩き付ける。そのまま倒れるのを横目に確認し、相手をせずに通り抜けた。
「また来てる。正面から二体」
 足を止め魔導銃を構えるコーシカ(ka0903)が発砲すると同時、ミリア・コーネリウス(ka1287)は大剣を引きずって前へ出る。ミリアの銃撃で倒れたゾンビを踏みつけ跳躍すると二体目のゾンビにグレートソードを振り下ろした。
「こいつら身体の一部を失ったくらいじゃふつーに襲ってくる、です。一々構ってたらきりがねー、ですよ」
「全部引き連れて洋館に行っても囲まれて大変だからね。やっぱりある程度行動を阻害するくらいの戦闘はするしかないかな?」
「とりあえず足さえやっときゃ追いつかれる事はねぇ、です。殲滅は大本を潰してからでも遅くはねぇと思う、ですよ」
 雪の言葉に同意を示す榎本 歌音(ka0910)。とにかく敵の数が多い。洋館に辿り着く前に何戦するのかわからないのだ。足を止めたら囲まれてしまう。
「……そうですね。勿論このままにはしておけませんが、今は先に進むべきですか」
 剣を抜きゾンビに止めを刺さず走り出すミリア。歌音は銃で撃たれ倒れていたゾンビの足をすれ違い様にバゼラートで切断、先頭に躍り出て先を急いだ。
 村にはまともな建造物は既に残っていない。洋館も半分ほど崩れてしまっている。畑だったらしい土地には雑草が生い茂り、無秩序な状態は彼方此方からゾンビの奇襲を可能にしていた。
 幸いゾンビの機動力はさほどではなく、全力疾走すれば逃げ切れる程度だ。しかしゾンビ犬はそうはいかない。背後から追い上げてくる三体のゾンビ犬に振り返ったコーシカが発砲するが、犬は銃撃をかわし飛びかかってくる。
「コーシカさん!」
 繰り出される爪をコーシカに代わってミリアが受け止める。更に連続して二体がミリアに飛びかかり、直ぐに距離を取るように背後を跳んだ。
「腐ってる上にすばしっこいとか、すげーめんどくせー、です!」
 ハルバードで薙ぎ払う雪だが犬は回避し、ハンター達を囲うようにしてうろついている。そして一体が遠吠えをすると、村の方々で呼応するように鳴き声が上がった。
「もしかしてこれ、さっきから仲間を呼んでるのかな?」
 空を見上げる歌音。ゾンビ犬もゾンビも明確にこちらの足を止めるような意図で動いている。戦闘力はさほどではないが、こうして邪魔を徹底されると厄介だ。
「ごめんなさいミリア……大丈夫?」
「このくらいかすり傷です。しかし統率された動きは厄介ですね」
 マテリアルヒーリングで治療し剣を構え直すミリア。既に周囲には犬が二体増え、四人の周囲をうろついている。
「ったく、洋館にカチ込みかけるまでが一苦労、です」
「危険だけど足を止めたら思う壺だ。突破しよう」
 歌音の言う通り、ここで完全に包囲されたら洋館に向かうどころではない。
「面倒くせーですが、私が先頭で突っ込む、です」
「私が護衛しますから、二人は雪さんの追撃に専念して下さい」
 雪はニヤリと口元に笑みを浮かべ飛び出した。そこへ犬が群がるが、ハルバードをぶん回し強引な突破を図る。
 ハルバードを避けた犬を銃撃するコーシカ。歌音は手裏剣を投げ、背後から襲ってきた犬はミリアが薙ぎ払う。手脚に噛みつく犬を引きずりながら雪は突破。まとわりついた犬は歌音が短剣で削ぎ落とした。
「……貧乏くじ、です」
 まだ犬は追ってくる。飛びかかる犬を走りながら相手をするミリアに代わり歌音は犬の集団に飛び込むと素早く一撃を与えた。
「殿はやるよ。先急いで」
 囮となって攻撃を引き付ける歌音は素早く身を翻しつつ駆ける。コーシカは振り返り注意の逸れている犬を狙撃し、雪は正面に現れたゾンビの足をハルバードで切断。続きもう一体現れたゾンビをミリアが薙ぎ払う。
「凄い数……当然と言えば当然だけど」
 背後に向かって引き金を引くコーシカ。歌音は並走していた犬を短剣で切り払い、速度を速めて仲間の背中に追いつく。
「後ろ、追いついてきてないけど、かなりの数のゾンビがいるよ」
「洋館までもう少しです! 一気に駆け込みましょう!」
 道の左右から伸びるゾンビの腕を掻い潜り、ミリアの声に応じて四人は走る。
 ぐるりと村をほぼ一周し洋館の正面までやってきたのだ。そのまま閉ざされている扉に飛びつくが鍵がかかっていて開かない。
「……下がって!」
 古びた錠前を銃で砕くコーシカ。雪と目くばせし息を合わせると、両開きの扉を同時に蹴り飛ばし強引に突き破り突入に成功した。
「うるぁ! 突入成功、です!」
「ところで開けたはいいけど、閉まらないと外からゾンビがなだれ込んでこない?」
 首を傾げる歌音にコーシカと雪が振り返り、顔を見合わせ、慌てて扉を閉める。が、既に鍵は壊れているのでかけられない。
 追いついてきたゾンビ集団がドアを叩いてくる。外には一体どれだけの数が集まっているのか、考えるだけで嫌気が差してきた。
「これ全部相手にしたら、多分私達持たないわよね……」
「そ、そのハルバード頑丈そうですし、かんぬき代わりにどうでしょう?」
「武器これしか持ってねー、ですよ……。そっちのグレートソードこそ丁度良くねー、ですか?」
「……私もこれしかないもので……」
 冷や汗を浮かべながら笑い合う雪とミリア。更に数が増したのか衝撃で扉が開きそうになると、ミリアも抑え込むのに加わり扉にへばりついた。
「仕方ない。ここで戦うしかないね。幸い数が多くてもここでなら一度に相手にする数は制限できるし」
 入口はぎゅうぎゅうにつめても人間が四、五人通るのが限界の幅だ。確かに圧倒的多数を相手にするには向いている地形である。
「……覚悟を決めました。ここで雑魚を散らしましょう」
 ミリアの言葉に全員が目配せする。そしてそれぞれが得物を手に扉から離れると同時、無数のゾンビが洋館へと雪崩れ込んだ。
「この先には1歩も通しません、この場で土に還ってもらいましょう」



 “城”への侵入者に吸血鬼は苛立ちを隠せない。それでも自らの傍に数体の護衛は残している。
 問題はないと思えた。敵は既に目と鼻の先だが、圧倒的物量で追いこんであるのだ。後は侵入者が押し潰されて朽ち果てるのを待つだけ……その筈だった。
 優雅に侵入者排除の報告を待つ吸血鬼の視界に新たなハンターの姿が飛び込んできた。数は三。先頭を行く飄 凪(ka0592)が繰り出す魔導ドリルを護衛のゾンビが身代わりになって受けると、弥勒 明影(ka0189)が銃を向けてくる。
 放たれる弾丸を鞭を使って打ち払う吸血鬼。その間に左右から犬が明影に迫る。片方は切金・菖蒲(ka2137)が打ち払い、もう片方は刀を抜いた明影が受け止める。
「やはり最低限の護衛は残しているか。ま、当然だな」
「ふむ、『暴食』が眷属か。見た目は人と余り変わらんが――」
 駆け寄る犬ゾンビ。その身体を斬りつけ、明影は笑みを浮かべる。
「――狩らせて貰うぞ」
 村の防衛戦力は屋敷の入り口に集中している。そしてそれらを呼び戻す為の連絡手段である犬は既に撃破されてしまった。
「こいつらが連絡役でもあるって事は、“陽動班”の会話で把握出来てたからね」
「悪いがあんまり時間がねぇんでな。一気に終わらせてもらうぜ!」
 目を見開きドリルを回転させながら襲い掛かる凪。菖蒲は真剣に吸血鬼を凝視し、目を細めて言う。
「……ないすおっぱい」
「何か言ったか?」
「合法的にせくはらできrげふんげふん……危険な相手だ、気を引き締めていこう……と言ったね」
「そうしてくれ。陽動班もそう長くは時を保てんだろうからな」
 無表情にサムズアップする菖蒲をジト目で一瞥する明影。そう、これがハンター達の作戦であった。
 村の防衛戦力を陽動班がひきつけ、その間に洋館に接近した突入班が一気に吸血鬼を仕留める。幸いゾンビのほとんどが陽動班に向かった結果、突入班は一切遭遇戦を行わず、かつ迅速に館に乗り込む事が出来た。
 凪の繰り出すドリルに剣を打ち付けて受ける吸血鬼。しばらく力比べをしていた凪だが、唐突に横へ跳んだ。次の瞬間、どこからか放たれた銃弾が吸血鬼の胸を貫いた。
「……良い腕だぜ、惣助!」
 入り口付近で狙撃体勢に入っていた近衛 惣助(ka0510)は肩に固定した短伝話で凪へ合図を送り、連携狙撃に成功。急所に直撃した為大きなダメージを与えられたようだ。
「命中! 畳みかけるぞ、飄!」
「おうよ!」
 駆け寄る凪だが、次の瞬間吸血鬼は全身から負のマテリアルを放出。紫色に輝く光が凪を吹き飛ばした。
「そりゃおっぱい台無しにされたら怒るだろうね!」
 空中に浮かんだ光が無数の矢を作り出す。振り下ろされる手を合図にそれらは一気にハンター達へ降り注いだ。
「……ちぃっ」
 広範囲に爆ぜる魔法の光に弾かれ倒れ込む凪と明影。一方菖蒲は意外とあっさり回避に成功していた。
「自分でも何故避けられたのかさっぱりだけど……まさかアレアのお守りが効いた? ……そんなわけないか」
 本人もわけのわからない物体扱いなくらいだ、効果はだいぶ胡散臭いが、好機は見逃さない。
 菖蒲は鞭を振るい浮かぶ吸血鬼の足を絡め取ると強引に大地へ引きずりおろそうと力を込めた。吸血鬼は抵抗し、二人は綱引き状態になる。
「こっちへおいで。穴が開いたおっぱいでもボクは愛せるよ」
 リロードを終えた惣助は再び猟銃を構え、今度は翼を狙撃。このダメージでよろけた所を菖蒲は引きずりおろし、背後に回ると鞭を絡め、腕と脚を絡めて動きを封じた。
「ガチンコでダメージを与えつつも同時にせくはらも狙える捕縄術とプロレス技は本当に素晴らしい……そして吸血鬼の身体、柔らかいけどすごく冷たい……」
「なんだか余計な情報も混じってる気がするが、ナイスだぜ菖蒲!」
 身体を密着させご満悦の菖蒲。飛び起きた凪は素早く踏み出すと同時、ノーガード状態の腹部へドリルを捻じ込んだ。
 衝撃と共に悲鳴を上げる吸血鬼。マテリアルを放出し拘束から抜け出すと鞭を振り回し二人を打ち払う。
 明影は一歩引いた所から銃撃を行うが、吸血鬼は倒れない。余程勘に触ったのか菖蒲に魔法を一斉に放出する。
 降り注ぐ光の矢を走りながら必死にかわす菖蒲だが今度は完全には避けられない。爆発に飛ばされ壁に背を打つと、一瞬意識が途切れた。
「菖蒲!」
 止めを刺そうと特大の矢を作り出す吸血鬼。凪は菖蒲の前に飛び出し、その光の矢にドリルをぶつけて相殺を試みる。
「ぬぅ……おわっ!?」
 しかし打ち負けて壁に叩き付けられた。菖蒲はその間に気を持ち直し、頭から流れる血を拭って起き上がる。
「べ、別に助けて欲しいなんて言ってないんだからね」
「な、なんだそりゃあ?」
「デレが出ない事もあるという事で、ひとつ」
 凪を助け起こす菖蒲。その間明影は吸血鬼と刃を交えていた。やはり一対一では吸血鬼の方が優位であり、明影の刃は相手に届かない。
「流石は眷属、といった所か……!」
「あまり時間をかけるわけには行かない……」
 新たな弾丸を取り出す惣助。その手に握られたのはただの銃弾に過ぎないが、友から預かった大切な物だ。

 “――伝記伝承でよく言うじゃないですか。吸血鬼には銀の弾丸をって”

 銀の弾丸は用意出来なかったが、この銃弾にはサーシャ・V・クリューコファの意志が宿っている。うっすらとマテリアルの光を帯びた弾丸を込め、惣助は再び狙いを定めた。
「奴の胸にきみがくれたこの“銀の弾丸”を撃ち込んでやる。サーシャ……力を貸してくれ!」
 目を見開き引き金を引く。放たれた弾丸は銀色に輝き、軌跡を残しながら吸血鬼を貫いた。
 悲鳴を上げ空中で悶える吸血鬼。そこへ菖蒲が壁を蹴って舞い上がり、首に鞭をひっかけて大地に引き摺り下ろし組み伏せた。
「そろそろ終いにするぜ! 魔導ぅ……! ドリルぅぅ……! ブレイクぅううううッ!」
 抑え込まれた吸血鬼の背中にドリルを捻じ込む凪。体を貫通し床を貫いた所で腕を引き抜くと、吸血鬼は力なく倒れ込んだ。
「……念には念だ」
 直後、明影は振り上げた刀で吸血鬼の首を斬り落とす。血の代わりに黒い光が吹き出し、その身体はゆっくりと解け消えて行った。
「漸く終わりか。中々に骨であったな。さて……」

「……動きが止まった?」
 肩で息をしながらその変化にミリアが呟く。コーシカは二本目の火炎瓶を投擲し、密集したゾンビに火をつける。
 これがかなり効果的で、集まっている上にゾンビは良く燃えるので集団に一気にダメージを与えられる。雪はハルバードを突き出し、複数のゾンビを貫通させて押し倒す。
「明らかにぼさっとし始めた、です……」
「吸血鬼殲滅に成功した、って事かな……これでなんとか……」
 既に四人は限界だった。倒しても倒しても倒してもゾンビが沸いてくるのだ。雪は返り血やら自分の血やらで汚れ切っていて、歌音も憔悴している。
「どうやらなんとか無事だったようだな」
 そこへ吸血鬼を撃破した四人が走ってくる。まだ村中から集まったゾンビは順番待ちのように扉の前に並んでおり、明影は発砲しつつよろけたミリアに肩を貸す。
「一度体勢を立て直す。殲滅するにしてもそれからだ」
「そう……ですね」

「タングラムさんに無理言って貰った依頼だ。無事に済んで良かったよ」
 一息ついて呟く惣助。一度安全な場所まで撤退したハンター達だが、改めて村の敵を全て殲滅するにはあまりにも疲弊していた。
 よってこれ以上の戦闘は危険と判断し、残ったゾンビの処置については帝国軍に任せる事になった。尤も、数は大分減らしていたが。
「八人のハンターで殲滅する物量じゃねーです……全く」
 手当てを受けながら遠巻きに村を眺める雪。コーシカは村の彼方此方から上がる黒煙をじっと見つめていた。
「二度死ぬのも辛いわよね。自分で望んだわけでもないのに……」
 あの煙の下では帝国兵による焼却処分が行われているだろう。自然に消えるゾンビもいるが、死体として残る事もある。
「……今度こそ眠りなさい。もう二度と目を覚まさないようにね」
 終わってしまった村が再び終わっていく。
 それが安らかな眠りであるように、コーシカは目を閉じて祈っていた。

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MVP一覧

  • バトル・トライブ
    八城雪ka0146
  • 双璧の盾
    近衛 惣助ka0510
  • フラグ立て職人
    切金・菖蒲ka2137

重体一覧

参加者一覧

  • バトル・トライブ
    八城雪(ka0146
    人間(蒼)|18才|女性|闘狩人
  • 輝きを求める者
    弥勒 明影(ka0189
    人間(蒼)|17才|男性|霊闘士
  • 双璧の盾
    近衛 惣助(ka0510
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
  • 黒鉄の金獅子
    飄 凪(ka0592
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人

  • ルーティア・ルー(ka0903
    エルフ|12才|女性|霊闘士

  • 榎本 歌音(ka0910
    人間(蒼)|14才|男性|疾影士
  • 英雄譚を終えし者
    ミリア・ラスティソード(ka1287
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • フラグ立て職人
    切金・菖蒲(ka2137
    人間(紅)|14才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 質問卓
弥勒 明影(ka0189
人間(リアルブルー)|17才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2014/07/12 00:50:17
アイコン 相談卓
弥勒 明影(ka0189
人間(リアルブルー)|17才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2014/07/13 18:42:43
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/07/08 00:27:14