ゲスト
(ka0000)
再びの勇者達
マスター:トーゴーヘーゾー

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/07/13 12:00
- 完成日
- 2014/07/22 04:26
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
帝国の僻地に存在する、とある村。
のどかな環境で農作業に従事していた村人達に、ひとつの危機が訪れた。
雑魔のキメラによる襲撃だった。
肉食獣では済まない力の猛威に、幾人もの犠牲者が出てしまう。
幸運にもこの村に滞在していた帝国騎士が8名、キメラとの戦いに臨んだ。
なんとかキメラ退治に成功はしたものの、帝国騎士達も誰ひとり帰らぬ人となった。
その後、村では帝国騎士達の鎮魂もかねて、毎年、感謝を示す祭りを開く。
小さなバザーや、振舞酒が出され、飲めや歌えやの村祭り。都市部とは趣の異なる小規模なものだが、娯楽の少ない地方でとても大切な催しだ。
すでに帝国騎士という呼び名も風化しているが、彼等の感謝は今も続いている。
そんな祭りの開催時期に、ひとつの不穏な噂が流れた。
因縁のある同種のキメラの再来だ。
そして今回、『偶然にも』、この村には戦う力を持った来訪者達が滞在していた。
「……というのが概要かな」
ベルンハルト・ベルガーの説明を聞いたハンターが、困惑の表情を浮かべている。
肝心の依頼内容が説明されていない。
小説家という彼の職業を考えると、作品のあらすじ聞かされただけに思える。
「端的に言えば、『勇者を装って、キメラを撃退し、村を救う』のが依頼内容だ」
言葉の意味は理解できる。が、説明はまだ足りていない。
ハンターからの質問に応じて、彼はもう少し言葉を添える。
「発端はキメラの目撃情報なんだ。だけど、肝心の村の方では祭りの最中ということもあって、なんら動きを見せない。ハンターを雇う事すら。以前にあった襲撃は20年ほど前のことで危機感も薄れているうえ、結果的に帝国騎士に『救われてしまった』ことで、また助けが現れると漠然と信じているようなんだ」
彼はそのあたりの話を、帝国政府の友人から聞かされたのだという。
村の警護とその事後処理は、あくまでも、人手の足りない政府からの要請なのだ。
「このキメラというのは、リアルブルーの言い伝えとよく似てる。キメラとかキマイラと呼ばれている幻獣だ。俺が依頼するのはこのキメラ退治。特に頼みたいのは、勇者という立場を得た後で、危機意識が薄く他力本願な村人達をたしなめて欲しい。自分たちで戦えずとも、ハンターを雇ったりして、自発的な行動を起こすように」
依頼を丸投げするベルンハルト。
『監督役』のような立場で話しているが、この依頼については単なる説明役で傍観者だ。
彼自身は依頼料をもらっていないため、ハンターに同行して見物する気は満々でも、介入するつもりはほとんどなさそうだ。
のどかな環境で農作業に従事していた村人達に、ひとつの危機が訪れた。
雑魔のキメラによる襲撃だった。
肉食獣では済まない力の猛威に、幾人もの犠牲者が出てしまう。
幸運にもこの村に滞在していた帝国騎士が8名、キメラとの戦いに臨んだ。
なんとかキメラ退治に成功はしたものの、帝国騎士達も誰ひとり帰らぬ人となった。
その後、村では帝国騎士達の鎮魂もかねて、毎年、感謝を示す祭りを開く。
小さなバザーや、振舞酒が出され、飲めや歌えやの村祭り。都市部とは趣の異なる小規模なものだが、娯楽の少ない地方でとても大切な催しだ。
すでに帝国騎士という呼び名も風化しているが、彼等の感謝は今も続いている。
そんな祭りの開催時期に、ひとつの不穏な噂が流れた。
因縁のある同種のキメラの再来だ。
そして今回、『偶然にも』、この村には戦う力を持った来訪者達が滞在していた。
「……というのが概要かな」
ベルンハルト・ベルガーの説明を聞いたハンターが、困惑の表情を浮かべている。
肝心の依頼内容が説明されていない。
小説家という彼の職業を考えると、作品のあらすじ聞かされただけに思える。
「端的に言えば、『勇者を装って、キメラを撃退し、村を救う』のが依頼内容だ」
言葉の意味は理解できる。が、説明はまだ足りていない。
ハンターからの質問に応じて、彼はもう少し言葉を添える。
「発端はキメラの目撃情報なんだ。だけど、肝心の村の方では祭りの最中ということもあって、なんら動きを見せない。ハンターを雇う事すら。以前にあった襲撃は20年ほど前のことで危機感も薄れているうえ、結果的に帝国騎士に『救われてしまった』ことで、また助けが現れると漠然と信じているようなんだ」
彼はそのあたりの話を、帝国政府の友人から聞かされたのだという。
村の警護とその事後処理は、あくまでも、人手の足りない政府からの要請なのだ。
「このキメラというのは、リアルブルーの言い伝えとよく似てる。キメラとかキマイラと呼ばれている幻獣だ。俺が依頼するのはこのキメラ退治。特に頼みたいのは、勇者という立場を得た後で、危機意識が薄く他力本願な村人達をたしなめて欲しい。自分たちで戦えずとも、ハンターを雇ったりして、自発的な行動を起こすように」
依頼を丸投げするベルンハルト。
『監督役』のような立場で話しているが、この依頼については単なる説明役で傍観者だ。
彼自身は依頼料をもらっていないため、ハンターに同行して見物する気は満々でも、介入するつもりはほとんどなさそうだ。
リプレイ本文
●作られた勇者
「帝国の騎士様に乾杯ーっ♪」
杯を打ち合わせて、賑やかに騒ぐ村人達。
「帝国騎士様に救われた村、ねぇ……。ありがたかったのは分かるけど、ここまで崇拝するもんかな」
巡間 切那(ka0583)を含む集団はその輪に加わらず、多少の違和感を産んでいた。
「人はつい好意に甘えたくなるわよね。……でも、それを当然と思ったらいつか痛い目を見るわ」
「過去の偶然と犠牲の上での奇跡を称えるのはいいが、たかだか20年前の危機を忘れていっちまうとはね」
ミスティカ(ka2227)やマダム・スルタナ(ka2561)が、少々達観した感想を口にする。
(気楽なもんだねぇ。出没するキメラにも被害を受けずに済む、なんて思い込んでるらしいけど……)
真田 八代(ka1751)が内心だけで留めた思いを、安藤・レブナント・御治郎(ka0998)やロートス・リィエン(ka0513)は言葉に出してしまった。
「ここの人達は随分と楽観的というか、平和ボケしているというか……。なんにせよあまりよろしくないですね」
「いやー、平和ボケと御都合主義が合わさるとろくな事にならない事案の見本だな」
「小説家の坊や。村の見取り図を手に入れてくれないかねぇ?」
マダムが話を向けたのは、ハンターよりも、さらに傍観者であるベルンハルトだった。
「俺もこの村には始めて来たんだけどな」
「あら、つれないわね。以前にも同行した仲じゃない。聞いてくれたらサービスしてあげるわよ」
「……仕方ないな」
ミスティカに言われて、ベルンハルトはぼやきながらも腰を上げる。
見送るマダムは、男の性を嘆くように肩をすくめていた。
入手した地図がハンターの前で広げられる。露店の場所を書き込んだ簡易的な地図だ。
「柵なしで、外周は広め。周りは森。……人は祭りで中央の広場に集まってるとはいえ、どこから来るか読めないのが痛いね」
年長者のマダムが場を主導していく。
「索敵するには手分けするべきだな。少なすぎては足止めも難しいから、多くて3班といったところだろう」
刹那自身は、ロートスやレムと組んで、村の周囲を巡回。
御治郎、スルタナ、ミスティカの3名も、同様だ。
八代とクロードは2名で、広場の担当となる。
「これで魔導短伝話も各班に渡るんだろうね?」
「うん」
「ああ」
マダムの確認に、所持しいてるレム・K・モメンタム(ka0149)と八代が頷いた。
御治郎は推移に耳を傾けながらも、香辛料を使っての細工に励んでいる。うまくいけばキメラ攻略を有利に進められるはずだ。
「まぁ、3mの巨体だというしねぇ。わざわざ狭い所を通ろうとはしないだろうさ。物理的に通れないところは除外して、大通りを警戒すべきだろうね」
「マダムの言うとおりだと思います。それに村人を避難させる時にも、広い道の方が有効でしょう」
クロード・エクルストン(ka1683)達の意見に、ロートスが頷いた。
「どっちの場合も道幅は重要ですね。ちゃんと記憶しておかなければ」
軽い打ち合わせを済ませて、ハンターが行動を開始する。
「勇者になる、ってのも悪い気はしないわね。これで、私もまた名前が広まるかしら?」
レム同様に、刹那もまた戦いの昂揚を露わにする。
「ま、8人でやっとこさ倒せる程度の強敵、か。楽しそうじゃん……。さて、気張っていくが愉しもうぜ?」
●喧騒から狂騒へ
「できれば、鳴子なんぞを仕掛けておきたかったんだがねぇ」
「仕方ねえさ、マダム。祭りの最中に、鳴子で道をふさぐわけにもいかねぇしな」
村人への呆れを滲ませて応じる御治郎。
「人力で頑張るしかないわね。そのための私たちなんだし」
ミスティカの鋭敏視覚が、村の外周から外側へ向けられていた。
村を挟む反対側でも、同じく鋭敏視覚を持つロートスが外を眺めている。
「見あたりませんね。大きさを考えると見逃す可能性は低いはずですが……」
「レムの方はどうだ? 異常がなければ、次の場所へ移動しよう」
「了解ー」
言葉少なに刹那へ答えると、レムは買い込んだ揚げ芋を口へ放り込み、枝を伝ってするすると地上に降り立った。
そして、村の中央広場。
「まだ……、発見の連絡はなし、か」
八代の眺める村人達は、迫る危機も自覚せず、祭りに盛り上がっていた。
「いざ非難する時に、冷静に従ってくれるといいのですが……」
「そこは期待するしかないな。『勇者様』ってことで、納得してもらいたいところだ」
クロードの懸念は理解できるが、八代としてもそう考える以外になかった。
しばらくして、急報をよこしたのはマダムであった。
スルタナ■『西側10時方向でキメラを発見。こっちで足止めしとくよ』
「わかった。すぐ応援に向かう」
脇で聞いていたクロードがすぐさま声を張り上げた。
「この村にキメラが襲撃してきました! 急いで避難してください!」
深刻な忠告も、気の緩んだ相手には効果を発揮しない。
困惑するだけの村人に、クロードは重ねて怒鳴りつける。
「村の周辺にキメラが出没している話は聞いているでしょう! 襲撃は西からなので、東方向へ避難してください! 大型と思われるので、緊急時には路地へ逃げ込んでかわしてください!」
ようやく状況を理解した者が、叫びだし、一気に喧騒は拡大する。
そんな騒ぎをよそに、八代は再び魔導短伝話で呼びかけていた。今度の相手は、マダムからでは直接連絡が届かない、反対側を回っているはずのレムだった。
●勇者対キメラ
巡回の途中で、ミスティカの鋭敏視覚が、村へ入りかけていたキメラを発見した。
「マダムは連絡を頼む」
そう告げた御治郎が、先行したミスティカを追う。
接近に気づいたキメラが、ハンターへの威嚇に一声吼えた。
グワオッ!
「これで村人が気づいてくれればいいけど」
「心配は後だ。とにかく足止めするぞ」
御治郎の投じた小瓶は、あいにく鼻先をかすめて外れてしまった。内容物が粉末状であれば、相手付近で割るだけで効果も出たが、ペースト状ではそうもいかない。
ガウッ!
突進してきたキメラを危うく、マルチステップでミスティカが回避する。
噛みつこうとするキメラめがけて、後方からマジックアローが飛来した。
連絡を終えたマダムによる支援だ。
「この距離なら外さないぜ」
鼻面に叩き付けるようにして小瓶を割ると、粘度の高いペーストがべったりとこびりつく。
グフゥ、ガウッ!
鼻の奥を強烈に刺激するそれを、キメラは払い落とそうとするが、その前足にすらこびりつく有様だ。
無様なキメラを前に、御治郎やマダムは後方へ回って尻尾を狙う。
大蛇の尻尾は自律して動けるようだが、四肢を持つ本体が悶えており、大蛇もまた振り回されている。
不規則な動きが、逆にハンターの狙いをそらし、互いの攻撃が効力を発揮していない。
先に援軍として到着したのは、比較的近くにいた広場のふたりだ。
御治郎にヒールをかけたのはクロードで、機導砲を撃ちこんだのが八代である。
「有象無象なんかより、俺らの方が歯ごたえあるぜ? 化物」
「壁役は私が引受けます」
クロードが、キメラの正面に立つ。
「頼むよ。やれやれ、ばばあにゃしんどいというのに」
マダムは八代と並んでクロードの背後から、援護に徹する。
「毒蛇の尾に炎のブレスというのがキメラの定番だからね。長いリーチには気をつけなよ」
彼女の忠告通り、鎌首をもたげた蛇はハンターにこそ犠牲は出していないが、近隣の家には被害を与えていた。
「住民には悪いが、物損までは責任を持てん」
依頼条件からそう判断している御治郎が、あっさりと切り捨てた。
怒りに震える獅子の目を受け、クロードはプロテクションで身を固めてキメラを押しとどめる。
前面のクロードだけでなく、後方のミスティカと御治郎も大蛇の牙で怪我を負っていた。
かつて、『村の勇者』を全滅させたという暴威は、このキメラもまた持ち合わせているのだろう。
だが、ハンターにはさらなる援軍がいた。
「この巨体……相手に不足はありません。……いきますっ!」
ロートスがマルチステップで翻弄し、刹那は瞬脚で斬り込んだ。
「さあ、お愉しみの時間といこうか」
本来なら疾影士ふたりと似た戦法を取るレムだが、今回は違う選択をする。
「私が前に出る! さぁ化け物、アンタ程度に負けてはやらないわ! 来なさい!」
「すみません」
レムの厚意に甘えて、クロードがあっさりと盾役を譲る。責任感の強い彼のことだから、よほど負傷が重いのだろう。
レムは堅守で防御を固め、キメラの牙と正面から対峙した。
攻勢に出ようとしたキメラが山羊の四肢を踏ん張ったおかげで、大蛇の重心も固定された形となる。
「捕まえたぜ!」
強引にしがみついた御治郎が、大蛇の胴体に機導剣を突き立てる。
御治郎の首筋に噛みつこうと鎌首を持ち上げる大蛇。
そこへ、瞬脚で飛び込んだミスティカがルーンソードで、頭部を斬り飛ばした。
尻尾を失ったキメラが、レムを払いのけた。
開けた視界に向けて吐き出されたキメラの炎が、後方に控えた八代にまで届く。
新たに壁役として立ったのは、自らの回復を終えたクロードだ。
ロートスは、大振りしたデリンジャーを囮にして、頭部めがけてダガーを一閃させる。キメラの回避によって浅手にとどまるが、同時に深刻な一撃を加える結果となる。
キメラの右目の位置で赤い飛沫が散った。嗅覚だけでなく、キメラは視界の半分を失ったのだ。
盾を構えたクロードが残った視界のブラインドとなり、八代の機導砲やマダムのマジックアローがキメラの頭部へ十字砲火を加える。
盾役をクロードに譲っていたレムが、再び至近距離へと飛び込んでいく。強打の威力を乗せたクレイモアは、裂けた眼球どころか、眼窩を押し広げるようにして、その先端が頭蓋を貫通する。
断末魔に震えたキメラは、やがてその動きすら終えるのだった。
●守られる者と守るべきもの
「あんた達がキメラを倒してくれたのか!? おおっ、まさしく勇者の再来だっ!」
広場にやって来たハンターを、怯えていた人々の歓呼の声が出迎える。
「後の事は、皆に任せるとするかね……」
村人達に囲まれる仲間を、マダムは傍観者のひとりと並んで見守る事にする。
彼等に向けられるのは感謝の言葉だけではない。
「……村に侵入する前に倒してくれれば、完璧だったよな」
「まあな。そうすれば、祭りも邪魔されなかったのに」
冗談を装う口調だったが、その真意は容易に伝わってしまう。
勇者として持て囃され、満更でもなかったレムが、即座に激昂して男を張り飛ばした。
「なっ、何をするんだ!?」
発言のどこに問題があったか、まるで自覚のない村人の態度が、さらにレムを怒らせる。
「アンタら、自分は手を下さず、たまたま現れた勇者様の献身に寄りかかっている身で、よくそんな事が言えたわね!」
依頼内容も頭から吹き飛び、レムは思いの丈をぶちまけた。
「何が勇者よ! 何が救世主よ! 今のアンタ達を見て、20年前の勇者も後悔するに違いないわよ! 次は無いわ、次は歪虚が来たとしても勇者が来る事なんて無い!」
感情の高ぶりで彼女は涙すら浮かべていた。
「私は、逆風に逆らい悲劇を乗り越え、自らの力で今の自分を勝ち取ってきた! それすら出来ないアンタ達は、一生日和見しながら滅びを待っていればいい! それがお似合いよ!」
心情をぶちまけたレムは、感情のままにその場を立ち去ってしまう。
「レムの言葉をよく考えてみることだ」
刹那もそう言い残すと、村人への興味はすでにないのかレムを追った。
「感謝を口にするなら対価が必要なのよ。報酬はさしずめこの位でどうかしら?」
ミスティカが笑顔で告げる金額に、村人達がどよめいた。
「そんな無茶な!? 普通の10倍近いっ! まるで強盗じゃないか!」
村人達は、予想もしない困難に直面する事となった。
「村と人の命が助かったんだから、それを考えればお安いものよ」
涼しい顔で村人の非難を受け流すミスティカ。
「あー、言葉だけの感謝も悪態もいらん、結局は御前等の怠慢が招いた事態だろうが、いいから金を寄越せ。払わんなら、そうだなぁ助けても何しても一銭も払わん奴等の村だと、噂を流してもいいんだぞ?」
恫喝する御治郎。
キメラすら退治したハンターの威圧に、村人達が立ち向かえるはずがない。
「それではまるでヤクザそのものですよ」
クロードにたしなめられて、御治郎がうそぶいた。
「わかってる。流れのヤクザ者に頼むより、俺達みたいな話の通じるハンターと交渉すべきだと、理解させておかないとな」
重圧を加えた脅し役に代って、味方だと感じさせるなだめ役が交渉を主導する。
「ミスティカさんや御治郎さんは脅しすぎましたが、報酬は相場通りで結構です。それは身体を張り、命を賭けた者に対する当然の報酬でしょう?」
「この場にいないロートスって仲間は、今も警戒に当たってるんだ。他にもキメラがいる可能性はあるからな。無茶な要求とは言えないと思うぜ」
八代が事実を口にして、クロードのフォローに回る。
当初の方針ではもう少し強引な条件で脅すつもりだったが、傍観者を口にしていたベルンハルトから指摘があったのだ。報酬の2重取りや、脅迫と疑われる手法は避けるべきだと。
ハンターの主張が正当だと理解させるためにも、疑惑の余地を生じさせないように、穏当な条件へと修正したのだ。
「信用と他力本願は違うんです。正当な恩賞すら得られないとなれば、この村のために力を貸してくれる者はいなくなりますよ」
「勇者が『偶然』いたとしても、助けてくれるかどうかは別だからな」
クロードや八代のだめ押しに、村人が肩を落とす。
金銭の窓口になったのはベルンハルトだ。帝国へ申請して報償が得られなければ、あらためて村へ請求するという約束で決着した。実質的に村への負担は発生しないことは、ハンター達も理解してのことだ。
5名のハンターとおまけの1名が、村の外にいる仲間と合流すべく、その場を立ち去った。
広場に残されたのは、悄然とする村人達と、スティカとマダムの告げた言葉だ。
「奇跡は待つのではなく、為そうとする者の下に訪れると思うわよ」
「ま、有事の際にはただ待つだけでなく、人事を尽くすことを学ぶんだね」
「帝国の騎士様に乾杯ーっ♪」
杯を打ち合わせて、賑やかに騒ぐ村人達。
「帝国騎士様に救われた村、ねぇ……。ありがたかったのは分かるけど、ここまで崇拝するもんかな」
巡間 切那(ka0583)を含む集団はその輪に加わらず、多少の違和感を産んでいた。
「人はつい好意に甘えたくなるわよね。……でも、それを当然と思ったらいつか痛い目を見るわ」
「過去の偶然と犠牲の上での奇跡を称えるのはいいが、たかだか20年前の危機を忘れていっちまうとはね」
ミスティカ(ka2227)やマダム・スルタナ(ka2561)が、少々達観した感想を口にする。
(気楽なもんだねぇ。出没するキメラにも被害を受けずに済む、なんて思い込んでるらしいけど……)
真田 八代(ka1751)が内心だけで留めた思いを、安藤・レブナント・御治郎(ka0998)やロートス・リィエン(ka0513)は言葉に出してしまった。
「ここの人達は随分と楽観的というか、平和ボケしているというか……。なんにせよあまりよろしくないですね」
「いやー、平和ボケと御都合主義が合わさるとろくな事にならない事案の見本だな」
「小説家の坊や。村の見取り図を手に入れてくれないかねぇ?」
マダムが話を向けたのは、ハンターよりも、さらに傍観者であるベルンハルトだった。
「俺もこの村には始めて来たんだけどな」
「あら、つれないわね。以前にも同行した仲じゃない。聞いてくれたらサービスしてあげるわよ」
「……仕方ないな」
ミスティカに言われて、ベルンハルトはぼやきながらも腰を上げる。
見送るマダムは、男の性を嘆くように肩をすくめていた。
入手した地図がハンターの前で広げられる。露店の場所を書き込んだ簡易的な地図だ。
「柵なしで、外周は広め。周りは森。……人は祭りで中央の広場に集まってるとはいえ、どこから来るか読めないのが痛いね」
年長者のマダムが場を主導していく。
「索敵するには手分けするべきだな。少なすぎては足止めも難しいから、多くて3班といったところだろう」
刹那自身は、ロートスやレムと組んで、村の周囲を巡回。
御治郎、スルタナ、ミスティカの3名も、同様だ。
八代とクロードは2名で、広場の担当となる。
「これで魔導短伝話も各班に渡るんだろうね?」
「うん」
「ああ」
マダムの確認に、所持しいてるレム・K・モメンタム(ka0149)と八代が頷いた。
御治郎は推移に耳を傾けながらも、香辛料を使っての細工に励んでいる。うまくいけばキメラ攻略を有利に進められるはずだ。
「まぁ、3mの巨体だというしねぇ。わざわざ狭い所を通ろうとはしないだろうさ。物理的に通れないところは除外して、大通りを警戒すべきだろうね」
「マダムの言うとおりだと思います。それに村人を避難させる時にも、広い道の方が有効でしょう」
クロード・エクルストン(ka1683)達の意見に、ロートスが頷いた。
「どっちの場合も道幅は重要ですね。ちゃんと記憶しておかなければ」
軽い打ち合わせを済ませて、ハンターが行動を開始する。
「勇者になる、ってのも悪い気はしないわね。これで、私もまた名前が広まるかしら?」
レム同様に、刹那もまた戦いの昂揚を露わにする。
「ま、8人でやっとこさ倒せる程度の強敵、か。楽しそうじゃん……。さて、気張っていくが愉しもうぜ?」
●喧騒から狂騒へ
「できれば、鳴子なんぞを仕掛けておきたかったんだがねぇ」
「仕方ねえさ、マダム。祭りの最中に、鳴子で道をふさぐわけにもいかねぇしな」
村人への呆れを滲ませて応じる御治郎。
「人力で頑張るしかないわね。そのための私たちなんだし」
ミスティカの鋭敏視覚が、村の外周から外側へ向けられていた。
村を挟む反対側でも、同じく鋭敏視覚を持つロートスが外を眺めている。
「見あたりませんね。大きさを考えると見逃す可能性は低いはずですが……」
「レムの方はどうだ? 異常がなければ、次の場所へ移動しよう」
「了解ー」
言葉少なに刹那へ答えると、レムは買い込んだ揚げ芋を口へ放り込み、枝を伝ってするすると地上に降り立った。
そして、村の中央広場。
「まだ……、発見の連絡はなし、か」
八代の眺める村人達は、迫る危機も自覚せず、祭りに盛り上がっていた。
「いざ非難する時に、冷静に従ってくれるといいのですが……」
「そこは期待するしかないな。『勇者様』ってことで、納得してもらいたいところだ」
クロードの懸念は理解できるが、八代としてもそう考える以外になかった。
しばらくして、急報をよこしたのはマダムであった。
スルタナ■『西側10時方向でキメラを発見。こっちで足止めしとくよ』
「わかった。すぐ応援に向かう」
脇で聞いていたクロードがすぐさま声を張り上げた。
「この村にキメラが襲撃してきました! 急いで避難してください!」
深刻な忠告も、気の緩んだ相手には効果を発揮しない。
困惑するだけの村人に、クロードは重ねて怒鳴りつける。
「村の周辺にキメラが出没している話は聞いているでしょう! 襲撃は西からなので、東方向へ避難してください! 大型と思われるので、緊急時には路地へ逃げ込んでかわしてください!」
ようやく状況を理解した者が、叫びだし、一気に喧騒は拡大する。
そんな騒ぎをよそに、八代は再び魔導短伝話で呼びかけていた。今度の相手は、マダムからでは直接連絡が届かない、反対側を回っているはずのレムだった。
●勇者対キメラ
巡回の途中で、ミスティカの鋭敏視覚が、村へ入りかけていたキメラを発見した。
「マダムは連絡を頼む」
そう告げた御治郎が、先行したミスティカを追う。
接近に気づいたキメラが、ハンターへの威嚇に一声吼えた。
グワオッ!
「これで村人が気づいてくれればいいけど」
「心配は後だ。とにかく足止めするぞ」
御治郎の投じた小瓶は、あいにく鼻先をかすめて外れてしまった。内容物が粉末状であれば、相手付近で割るだけで効果も出たが、ペースト状ではそうもいかない。
ガウッ!
突進してきたキメラを危うく、マルチステップでミスティカが回避する。
噛みつこうとするキメラめがけて、後方からマジックアローが飛来した。
連絡を終えたマダムによる支援だ。
「この距離なら外さないぜ」
鼻面に叩き付けるようにして小瓶を割ると、粘度の高いペーストがべったりとこびりつく。
グフゥ、ガウッ!
鼻の奥を強烈に刺激するそれを、キメラは払い落とそうとするが、その前足にすらこびりつく有様だ。
無様なキメラを前に、御治郎やマダムは後方へ回って尻尾を狙う。
大蛇の尻尾は自律して動けるようだが、四肢を持つ本体が悶えており、大蛇もまた振り回されている。
不規則な動きが、逆にハンターの狙いをそらし、互いの攻撃が効力を発揮していない。
先に援軍として到着したのは、比較的近くにいた広場のふたりだ。
御治郎にヒールをかけたのはクロードで、機導砲を撃ちこんだのが八代である。
「有象無象なんかより、俺らの方が歯ごたえあるぜ? 化物」
「壁役は私が引受けます」
クロードが、キメラの正面に立つ。
「頼むよ。やれやれ、ばばあにゃしんどいというのに」
マダムは八代と並んでクロードの背後から、援護に徹する。
「毒蛇の尾に炎のブレスというのがキメラの定番だからね。長いリーチには気をつけなよ」
彼女の忠告通り、鎌首をもたげた蛇はハンターにこそ犠牲は出していないが、近隣の家には被害を与えていた。
「住民には悪いが、物損までは責任を持てん」
依頼条件からそう判断している御治郎が、あっさりと切り捨てた。
怒りに震える獅子の目を受け、クロードはプロテクションで身を固めてキメラを押しとどめる。
前面のクロードだけでなく、後方のミスティカと御治郎も大蛇の牙で怪我を負っていた。
かつて、『村の勇者』を全滅させたという暴威は、このキメラもまた持ち合わせているのだろう。
だが、ハンターにはさらなる援軍がいた。
「この巨体……相手に不足はありません。……いきますっ!」
ロートスがマルチステップで翻弄し、刹那は瞬脚で斬り込んだ。
「さあ、お愉しみの時間といこうか」
本来なら疾影士ふたりと似た戦法を取るレムだが、今回は違う選択をする。
「私が前に出る! さぁ化け物、アンタ程度に負けてはやらないわ! 来なさい!」
「すみません」
レムの厚意に甘えて、クロードがあっさりと盾役を譲る。責任感の強い彼のことだから、よほど負傷が重いのだろう。
レムは堅守で防御を固め、キメラの牙と正面から対峙した。
攻勢に出ようとしたキメラが山羊の四肢を踏ん張ったおかげで、大蛇の重心も固定された形となる。
「捕まえたぜ!」
強引にしがみついた御治郎が、大蛇の胴体に機導剣を突き立てる。
御治郎の首筋に噛みつこうと鎌首を持ち上げる大蛇。
そこへ、瞬脚で飛び込んだミスティカがルーンソードで、頭部を斬り飛ばした。
尻尾を失ったキメラが、レムを払いのけた。
開けた視界に向けて吐き出されたキメラの炎が、後方に控えた八代にまで届く。
新たに壁役として立ったのは、自らの回復を終えたクロードだ。
ロートスは、大振りしたデリンジャーを囮にして、頭部めがけてダガーを一閃させる。キメラの回避によって浅手にとどまるが、同時に深刻な一撃を加える結果となる。
キメラの右目の位置で赤い飛沫が散った。嗅覚だけでなく、キメラは視界の半分を失ったのだ。
盾を構えたクロードが残った視界のブラインドとなり、八代の機導砲やマダムのマジックアローがキメラの頭部へ十字砲火を加える。
盾役をクロードに譲っていたレムが、再び至近距離へと飛び込んでいく。強打の威力を乗せたクレイモアは、裂けた眼球どころか、眼窩を押し広げるようにして、その先端が頭蓋を貫通する。
断末魔に震えたキメラは、やがてその動きすら終えるのだった。
●守られる者と守るべきもの
「あんた達がキメラを倒してくれたのか!? おおっ、まさしく勇者の再来だっ!」
広場にやって来たハンターを、怯えていた人々の歓呼の声が出迎える。
「後の事は、皆に任せるとするかね……」
村人達に囲まれる仲間を、マダムは傍観者のひとりと並んで見守る事にする。
彼等に向けられるのは感謝の言葉だけではない。
「……村に侵入する前に倒してくれれば、完璧だったよな」
「まあな。そうすれば、祭りも邪魔されなかったのに」
冗談を装う口調だったが、その真意は容易に伝わってしまう。
勇者として持て囃され、満更でもなかったレムが、即座に激昂して男を張り飛ばした。
「なっ、何をするんだ!?」
発言のどこに問題があったか、まるで自覚のない村人の態度が、さらにレムを怒らせる。
「アンタら、自分は手を下さず、たまたま現れた勇者様の献身に寄りかかっている身で、よくそんな事が言えたわね!」
依頼内容も頭から吹き飛び、レムは思いの丈をぶちまけた。
「何が勇者よ! 何が救世主よ! 今のアンタ達を見て、20年前の勇者も後悔するに違いないわよ! 次は無いわ、次は歪虚が来たとしても勇者が来る事なんて無い!」
感情の高ぶりで彼女は涙すら浮かべていた。
「私は、逆風に逆らい悲劇を乗り越え、自らの力で今の自分を勝ち取ってきた! それすら出来ないアンタ達は、一生日和見しながら滅びを待っていればいい! それがお似合いよ!」
心情をぶちまけたレムは、感情のままにその場を立ち去ってしまう。
「レムの言葉をよく考えてみることだ」
刹那もそう言い残すと、村人への興味はすでにないのかレムを追った。
「感謝を口にするなら対価が必要なのよ。報酬はさしずめこの位でどうかしら?」
ミスティカが笑顔で告げる金額に、村人達がどよめいた。
「そんな無茶な!? 普通の10倍近いっ! まるで強盗じゃないか!」
村人達は、予想もしない困難に直面する事となった。
「村と人の命が助かったんだから、それを考えればお安いものよ」
涼しい顔で村人の非難を受け流すミスティカ。
「あー、言葉だけの感謝も悪態もいらん、結局は御前等の怠慢が招いた事態だろうが、いいから金を寄越せ。払わんなら、そうだなぁ助けても何しても一銭も払わん奴等の村だと、噂を流してもいいんだぞ?」
恫喝する御治郎。
キメラすら退治したハンターの威圧に、村人達が立ち向かえるはずがない。
「それではまるでヤクザそのものですよ」
クロードにたしなめられて、御治郎がうそぶいた。
「わかってる。流れのヤクザ者に頼むより、俺達みたいな話の通じるハンターと交渉すべきだと、理解させておかないとな」
重圧を加えた脅し役に代って、味方だと感じさせるなだめ役が交渉を主導する。
「ミスティカさんや御治郎さんは脅しすぎましたが、報酬は相場通りで結構です。それは身体を張り、命を賭けた者に対する当然の報酬でしょう?」
「この場にいないロートスって仲間は、今も警戒に当たってるんだ。他にもキメラがいる可能性はあるからな。無茶な要求とは言えないと思うぜ」
八代が事実を口にして、クロードのフォローに回る。
当初の方針ではもう少し強引な条件で脅すつもりだったが、傍観者を口にしていたベルンハルトから指摘があったのだ。報酬の2重取りや、脅迫と疑われる手法は避けるべきだと。
ハンターの主張が正当だと理解させるためにも、疑惑の余地を生じさせないように、穏当な条件へと修正したのだ。
「信用と他力本願は違うんです。正当な恩賞すら得られないとなれば、この村のために力を貸してくれる者はいなくなりますよ」
「勇者が『偶然』いたとしても、助けてくれるかどうかは別だからな」
クロードや八代のだめ押しに、村人が肩を落とす。
金銭の窓口になったのはベルンハルトだ。帝国へ申請して報償が得られなければ、あらためて村へ請求するという約束で決着した。実質的に村への負担は発生しないことは、ハンター達も理解してのことだ。
5名のハンターとおまけの1名が、村の外にいる仲間と合流すべく、その場を立ち去った。
広場に残されたのは、悄然とする村人達と、スティカとマダムの告げた言葉だ。
「奇跡は待つのではなく、為そうとする者の下に訪れると思うわよ」
「ま、有事の際にはただ待つだけでなく、人事を尽くすことを学ぶんだね」
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詳細相談用 マダム・スルタナ(ka2561) ドワーフ|50才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/07/12 19:14:07 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/08 11:30:21 |