• 東征

【東征】腹ペコ鬼と符術師

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/06/19 19:00
完成日
2015/06/25 19:51

みんなの思い出

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オープニング

●巫子
 大江紅葉はできる限り結界の中を歩き回るようにしている。陰陽寮に所属する符術師であり巫子たる務めと考える。
 何かあってもいいように護衛としてモノノフを連れる。何もない方がいいに決まっているが、結界外でも見える範囲で襲われているモノがあった場合、自分独りで解決できるかという問題が生じる。符術でできることは限られるし、幼い頃から使っている弓をでも大したことはできない。
 協力をしないといけないのだ、何事も。
 最近はモノノフと会うことは、紅葉にとって嬉しいこともあった。
 西方諸国から来るハンターもいるからだ。
 紅葉の知識欲を刺激し、満たす。
 大江家は遠い昔は学問を良くする家系であるため、家の中には書物であふれかえっていたという。紅葉が知っているのは、数冊の書物のみ。逃げる際に持って行けるわけもなく、書物もほとんどが失われ、口伝や都に残った物を頼んで見せてもらうことしか知識を蓄える術はなかった。
 符術師の才能があるといって、陰陽寮で教わることは嬉しかった。増える知識、出来ることが増える予感が紅葉は心地よかった。
 一方で六歳年下の妹の若葉は刀を手にした。
「姉上、学問なんて役に立たない!」
 きっぱりと言い切って。
 紅葉は苦笑するしかなかった。別に学問を押し付けるつもりはなかったが、大江家の宗主として、両親代わりとしてあれこれ言いすぎたらしかった。
 平和が来たとき役に立つかも、とは言えない。

●食料が消える
「大江様、聞いてください! 食料が消えるんです」
 天ノ都よりも結界に近いいくつかの集落で聞かれたことであった。いつもではなく時々、「あれなくなってる?」と気付く程度だと言う。
「避難してきている人も増えている。その人たちが盗っているのかな」
 人間同士の不和につながりかねない言動だが、この問いはすぐに消える。力を合わせないといけないから。
 愚痴が広まり、ともに戦う意識が消えるのが怖いと思いながら、紅葉は人々の話を聞いている。
 そして次に疑われるのは、結界が本当に機能しているのかということ。
 外から来るものとして歪虚が関わっていたら、こんなことで済まないと考えながら、紅葉は丁寧に説明するしかない。
 説明の後、結界については納得してくれるのだが、今回は異なっていた。
「結界の外に出ていく大きな影を見たんだ」
「前も言ったけど、お前が寝とぼけてたんじゃないのか!」
「いや、だってさ……角あったみたいだし」
「鬼は来られないだろう? だって、妖怪の手先だから」
 紅葉は、おしゃべりがやむのを困ったように見つめるしかなかった。
(誰もが同じ感情を持っているわけではない……って解かっている! だから鬼のすべてが通れないわけじゃないと説明しちゃまずいってことも)
 事実を話せば納得されるかもしれないが、パニックを引き起こすことは必至だと紅葉は知っている。
「分かりました。今夜は私たちもおりますし、調査してみますね?」
 集落に安堵が生じたのは間違いなかった。

●若い鬼たち
 歪虚支配地域でも天ノ都近くのとあるところ、若い鬼たちは大人たちに見つからないようにこそこそと話をしていた。
「サルハネ、お前はどうする?」
「でも、こいつ、前回結構追いかけられてなんとか逃げてきたっていったよな」
「見つかったらやばいよな」
 声を掛けられたサルハネは曖昧にうなずく。「来るな」と言っているのが分かるから、サルハネは仲間の武運を祈って立ち去る。
 人間の食料は普段食べないモノがあって美味しいのだ。それは、以前からこっそりもらってきている者たちがいるので誰もが知っていた。
 不毛な土地となっていく場所で食べ物なんてなきに等しい。人間のところは食べ物がある。あるから獲るのだ。
「そろそろ行こうか?」
「監視してるやつらは?」
「ほら、あっちだ」
「急げ、急げ」
 四人の若い鬼たちは出かけ行った。
 妖怪たちも人間に混乱を与えると言う理由であれば見逃してくれる。
 大人たちは若い鬼たちの行動に目をつむり、目立たずこっそりならというようなことをさりげなく言われている。
 灰色の行動、それが若い鬼たちの行為。
 こっそり行ってこっそり戻ってくる。
 これまではどうにかなっていた。

●依頼
「倉庫の事を調べていただけませんか?」
 紅葉としては護衛として来てくれている人に頼むのは気が引けるが、一人ではできないことを承知している。そのための依頼だ。
「盗んだのに気付かれていないと言うのは……見張りがグルか、どこか抜け穴があるかのいずれかと思うんです。ただ、私独りで見て、見落とすかもしれませんからお力添えをしていただければと思ったのです」
 本当に鬼がいるのかという問いかけに対して、紅葉は首かしげる。
「鬼でも人間でも、他人の物を盗むと言う行為自体が問題です。ただ、彼らのおかれた実情を考えると……」
 言葉を切って曖昧に笑う。彼らは何を指すのか?
「そうですね……見張りもしてみましょうか?」
 紅葉はまじめな顔になって告げる。
「今晩来るとは限りませんが、少しくらい私も役に立たないと!」
 彼女の巻き込まれるのは護衛として来たモノノフでありハンターで、彼女も強制はしない。彼女は自分がしたいようにするだけだから。

リプレイ本文

●まずは
「協力ありがとうございます」
 紅葉は手をついて頭をさげる。
「いや、少しでも役に立てるなら嬉しい」
 鬼非鬼 ゆー(ka4952)は紅葉と行動を共にしている間、人をまとめる立場にいる自身の妹を思い出していた。
「食料事情が悪化するは人心を乱すことになります」
 エルバッハ・リオン(ka2434)は紅葉の護衛依頼に影響が出ることは排除したかった。
「ああ、こんな戦地だとなおさらだ」
 レウィル=スフェーン(ka4689)はうなずきながら眉をひそめた。
「悪い事する奴は捕まえるんだろ? まあ、当然だろうけど」
 シャトン(ka3198)の言葉は正しく、紅葉はうなずく。
「にゃう、わるい子はさがすんじゃもん!」
 泉(ka3737)がやるぞとこぶしを突き上げる。
「鬼、ですか? こちらでもいろいろ問題を抱えているようですね」
 エリス・カルディコット(ka2572)は様々な事件を見てきたが、こちらにきて鬼に興味を抱いた。
「鬼が犯人なら、意図をはっきりさせないといけませんね?」
 グエン・チ・ホア(ka5051)はいくつか想定するが実際聞かないと分からない。
「鬼さんってゴブリンみたいな、亜人さんなのかな? それなら結界って歪虚しか防げないんだよね」
 弓月 幸子(ka1749)は首をかしげる。
「はい、そうです。歪虚の出入りを防ぐだけですので、それ以外の物は通れます」
 紅葉の視線はエルバッハと泉を撫でた。
「……亜人といっても、エルフやドワーフに近いはずです」
「はず?」
「はい、私も書物や口伝で聞いた話しか知りません。距離が遠くなって久しいため、正直に言うとよく分かりません。最近まで渡り歩いていた鬼の方もあったようですが……」
 紅葉は13年前に妖怪に襲われた自分と妹を助けてくれた鬼の事を語った。
「優しい鬼って昔話あるから、ボクは信じたい」
 幸子が微笑んだので、紅葉はほっと息を吐いた。
「調べるなら早くしよう。来るか分からないけど、夜は迫ってるし」
 ゆーが促すと、ハンターたちは役割分担をし、部屋を後にした。

●内部は
 高床式倉庫は頑丈で風通し良く、侵入者を阻む造りだ。入口には見張りを2人ずつ立てるようにしている。
 地面から床面が高いため、捜査に来た幸子、エルバッハ、泉そしてゆーは見上げる。中から見ればいいが、まずは外からも重要。
「床か壁に穴がありそうだけど、天井からということも」
 ゆーは屋根に上るべきかと見上げる。
「あれは?」
 エルバッハが指さす床板に奇妙な線が入っている。
 ここから触るには梯子がいる高さであるので、ひとまず中から見ることにした。
 倉庫の中に入ると、穀物や乾物類の香りが鼻孔をくすぐる。
 泉の鼻が嗅ぎ分けようと激しく動く。
「ボクのおなかがすいたんじゃもー」
「夕食までがまんよ」
 ゆーは苦笑しつつ、ハンディライトをつける。
 床に線が入っていたあたりは倉庫の奥で、物に隠れて見にくい。
「ありましたね」
 エルバッハはリトルファイアも使い空間を明るくし確認する。床板が外れるか確認しようとしたが、こちらからは開けにくいようだ。下から突き上げれば開くだろう。
「どこの物がなくなっているのかな……」
 幸子はなくなった物リストと合わせて、棚や置かれている物を眺める。穴が開いている周りの物がなくなっているようだ。
 棚には嗜好品に近いモノが多い。飴や乾物や日持ちがある程度する菓子など。そして、次に多いのは穀物などの食糧だ。
 たまたま穴を開けたら近くにあったのか、そこを狙ったのかは判断がつかない。
「現行犯だよね、やっぱり」
 今日来るか分からないが、隠れて見張れ、捕まえられそうなところを幸子は記憶しておいた。

●ルート
 謎の影を見た人にまずは話を聞くエリス、シャトン、レウィルそしてホア。
 時間帯は深夜だったとのこと。ほかに見たことがある人がいるかは、この人物は知らないと言う。
 そして、それぞれ情報収集をする。
 ホアは井戸端会議をしているような人達のところにすっと入り込む。すんなり混じり、世間話半分、必要なことを適度に質問する。
 見張りは集落の一定年齢の男を中心にやっているため、役に立っているのかと不安もあるとのこと。腕っぷしが強いといった判断基準ではないから。ホアが話を聞いた人たちは、大きな問題はないので気にするところではないらしい。互いに顔を知っているために、下手なことはできない雰囲気はあった。
 エリスは集落の出入り口と言えるあたりから聞き込みを開始した。影を見たという人と同じ日かは不明だが、深夜に道を走る音を聞いたという人はいた。姿は見ていないため「獣かも」「強盗かしら」と噂していた。
「今日来るかは分かりませんが、張り込みもしますので安全のため家にいてくださいね」
 エリスは別れ際に注意をすると、相手は皆神妙にうなずいていた。
 シャトンは人影を見たという人がいた日に見張りをした人たちに話を聞く。人のよさそうな男たちは特に変わった様子はなかったと答えた。
 奥歯に物が挟まったような、曖昧な顔をしていた紅葉にも話を聞いておくことにした。
「もしかしてだけど……、犯人の目星ついていたり?」
 ズバリの質問に紅葉は言うか数瞬悩んで、口を開いた。
「そうですね……その子だった場合は、可哀そうですが、正当な裁きの下に出さないとだめですね」
 似たようなことに遭遇し、一度は見逃したのだ。鬼の話題が出ている中、裁きが正当かどうか、シャトンは判断がつかないが。
 見張りに立つことがあるという人達にレウィルは聞いていく。盗みをしている人がいる可能性も視野に入れ、鎌をかけて質問をしていた。
「……今日、倉庫について調べてます。場合によっては、犯人を始末するかもしれません」
 訪ねた相手からは「仕方がない」というような返答が異口同音に来た。演技がうまいわけではない限り、見張りは倉庫の荷物強奪に関わっていないと言うことになるだろう。

 聞き込み組の内容を総合すると、特に内通者がいるわけでもないようだ。
 倉庫を調べに行った者たちと合流すると情報を統合する。
 今日来るかは不明だが、出来る限りのことをしようと、夜見張りをするための班割をする。
 側でハンターのやり取りを、紅葉が感心して聞いている。
「私も見回りすします」
 いそいそと立ち上がる紅葉の肩をエルバッハが抑える。
「あなたの護衛で来ているのです」
 同意するうなずきがハンターに起こったので、紅葉は座った。

●来たぞ
 夜の集落にハンターたちは潜んだ。
 倉庫の外に、中に、道々に。
 時間は深夜。

 トトトトト。

 複数の小走りの足音がかすかに響く。相手も音を消すよう努力しているため、本当に小さい。
 大きい体格だからと言って大きい音がするわけでもない。
 トランシーバーで短く伝言が伝わっていく。
 来た、と。
 影は倉庫の下に来ると、肩車をして板を外し、三人が入っていく。一人は周りを見て影に隠れた。
 倉庫の中で待つ者たちは、板が外れる音を聞く。三人の人影が入ってきた。
 これですべてかは分からないが、三人の息遣いは聞こえる。楽しそうな、堪える笑い声。
「幸子、今よ」
 ゆーの持つライトが侵入者を照らした。
「逃げろっ」
 若い声が鋭く発せられる。
「ボクのターン、悪いけどロックで攻めさせてもらうんだよ」
 幸子のスリープクラウドが発動し、入口あたりに靄がかかる。思ったように魔法がかからなかったが、一人ではないため焦りはない。
「ハイ、申し訳ありませんがストップです」
 エリスはスリープクラウドを逃れた人物の一人に銃を突きつける。微笑んでいるがどこか威圧感があり、銃を突き付けられた者はカタカタ震えて止まった。
 倉庫の中に来た2人は取り押さえられる。

 ゆーが出した合図は倉庫外で見張っていたメンバーも聞く。倉庫の柱陰に潜んでいたエルバッハが倉庫下の人物に声を掛けた。
「動かないでください。指示に従ってくれれば手荒な……『ウィンドスラッシュ』」
 丁寧に警告を発したが無視されたため、途中で威嚇するように魔法を放った。
「コロッケ、マカロン、おいかけるんじゃもん」
 泉が人影に向かうように柴犬と妖精アリスと共に向かう。仕事であるが鬼ごっこめいて楽しそうだ。ちらりと見えた人影の上には、角が見えたため余計にテンションが上がる、普通の鬼ごっこと逆だが。
 シャトンとレウィルが持つ技を駆使し追いかける。
「暴れなければ、痛い思いはさせねぇよ?」
「大人しくする方がいいぞ」
 抵抗するため手加減して攻撃をする2人は、1人を取り押さえた。
 ホアはちょうど来た影の一つに脚で相手を挟むように引っかけた。相手の体力と勢いに一瞬持って行かれるが、ホアは何とか止めるのに成功する。
「抵抗はしないでくださいね」
 追いついた泉がペットたちとホアの取り押さえた者の上に乗った。
 あっけなく窃盗犯は捕まった

●なぜか
 彼らをどうするかに関しては雇い主である紅葉に一任する。西方から来たハンターでは、エトファリカの状況を把握しているとは言い切れない。
 話をするには適当な場所がなく、集落の外れ、竹林の側まで捕まえた者を移動する。縄で縛られているとはいえ、立ち上がるとハンターたちよりも高く体格もいい彼らはおとなしく従ってくれた。
 話ができるところに来て、彼らを座らせると改めて人影を見ることができる。
 頭上に1本または2本の角がある以外は、体格のいい子供たちという感じだ。顔があどけないのである。
 うなだれ、怯えている。
「お、お前達なんて怖くないぞ」
 年上らしい鬼が言うが、言葉に威力は少ない。彼にも強い怯えが見える。
「その割には震えていらっしゃいますね?」
 エルバッハは杖でペチペチと手を叩いている。ちょっとした威嚇だが、エルバッハが思っている以上に効果がある。
 ゆーは覚醒状態になり、紅葉の側につく。彼女の覚醒状態を見た鬼たちは動揺した。
 彼女の額には金色の角が見えるからだ。
「鬼だからな。先祖か心かが」
「人間といられるんだよ! 人間は俺たちを差別するし殺すし」
「詳しくは知らないが……」
 ゆーはちらりと紅葉を見る。
「知識喰いと言われる私としても調べ切れていません。ここ百年は記録も曖昧です。幼い頃、私の周りは鬼をここまで忌避していませんでした。今は違います、鬼は妖怪の手下と認識されています」
 鬼たちはうなだれる。
「その……知識喰いって」
「私の二つ名です、一部の人が陰でこそこそ言っていますよ」
 幸子の問いにさらりと紅葉は答えたが、悪口じゃないないかと突っ込む雰囲気ではなかった。
「人間と敵対している理由は何なんだ? 意味はあるのか?」
 レウィルは真摯なまなざしを鬼たちに向ける、鬼の事を知らないのだから知りたいそして理解したい。
「俺たちは分からない……。でも、妖怪が助けてくれるって、居場所くれるって」
「監視されてるけど……」
「俺たちが帰らないと、殺される人がいるかもしれないし」
「ばれてなければ大丈夫だけど……」
 鬼たちはぼそぼそと告げる。
「監視ですか?」
 エリスは眉をひそめる。
「妖怪たちが……」
 鬼は周りを気にしている。
「鬼の決まりごととかあるのか? 長がいて、決定するとか?」
 レウィルが鬼の集団の社会の形を尋ねると、鬼たちは顔を見合わせる。
「アカシラ姐かな……」
「でも、妖怪の方が、なぁ」
「悪路王とかも……」
 鬼の子らは首を傾げる。
「この手の質問はなかなか厳しいですね」
 紅葉は苦笑している。若いせいか、締め付けが厳しく情報がないか判断はつかないが。
「倉庫に入って食べ物を盗っていただけですか?」
「鬼さんが食べるものより美味しいの?」
 ホアと幸子の質問に四人はうなずいた。「甘い」「味がする」等々ぼそぼそ聞こえる。その目はキラキラしていた。
「植物は育成できませんから、結界の外は」
 紅葉は「妖怪の支配下だから」と告げる。外の風景を見れば、食料事情が良くわかる。
「にゃう? かってにとるのはダメじゃもん!」
 泉に叱られ鬼の子はしおれた。
「食料と何かを取引するというのがいいですよね。毛皮とか労働力とか」
「力があるんだから、生かせばいいよ。盗むよりすごくいい」
 エリスと幸子の提案に、鬼たち睨み付けるような挑むような目になる。
「それができてたら、こんなことしないっ!」
 鬼の子の怒気と悲痛を感じさせる声にはっとする。
 さまざまなヒトに接してきたハンターにとって鬼も話して接せば、良き隣人や仲間になると感じられた。一方で、妖怪の手下という認識が染みついている一般人には厳しい道のりがある。
「言葉が話せるし、伝わっているみたいだし、進めるんじゃねーの?」
「え?」
「変わるだろう、オレたちと出会ったから」
 シャトンはにやりと笑う。
「わるいことされると悲しいじゃもん。ごめんなさい、するんじゃもん!」
 泉の表情は悲しげだが、鬼たちを信じたいという強い光を目に浮かべる。
 鬼たちは動揺しつつハンターたちを見ている。
「縄を解いてあげてください」
 紅葉の指示でハンターは縄を解く。鬼たちは困惑しているばかりだ。
「なんで……」
 紅葉は鬼の前にかがんだ。ゆーは「もしも」を考えたが、鬼たちの様子は危険には見えなかったため黙って見守る。
「いい世界が欲しい、平和が欲しい……ダメですか? 私は戦う力を得ました。でも、嫌いです戦いなんて。あなた方とも争いたくはないです」
「ごめんなさい……」
 鬼たちの声は小さかったが、どんなに美辞麗句を込めた言葉よりも響いた。
「よくできましたぁじゃもん! ボクのお菓子分けてあげんじゃもん」
 泉が笑顔でお菓子を手渡す。
「大人にはばれんなよ……ああ、そうだ僕の名はレウィル、また会うこともあるかもしれない」
 多分ばれるだろうなと思いつつ、レウィルも持ってきていた食料を分けた。
「そうですね、名乗っていませんでしたね。私は、陰陽寮に所属する巫子、大江紅葉です」
 鬼たちは朝廷に属する紅葉を不審と困惑で見る。紅葉はただ微笑むのみ。
 そして、若い鬼たちは立ち去る。礼か謝罪か、何度か振り返ってお辞儀をしながら。
 大きな影は荒野に消えるまで見送る中、この出会いが小さくとも好転につながればと祈らずにはいられなかった。
「どんなところに住んでいるんでしょうか」
「それも心配だよね」
 ホアと幸子は荒野を見るとつらくなる。
 泉があくびをした、緊張が途切れたのだろう。
「寝る時間だな」
 ゆーは笑う。
「それにしても犯人を逃したにするのか?」
 シャトンの言葉に一同は「あっ」と声を上げる。
「紅葉さん、どうするんですか?」
「本当のことを言うのはまだ早いですよね?」
 エルバッハとエリスの視線を受けて紅葉は思案する。
「犯人を逃したというのも不安か」
 レウィルが紅葉を見ると「考えます」と溜息を洩らした。

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重体一覧

参加者一覧

  • デュエリスト
    弓月 幸子(ka1749
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • ピロクテテスの弓
    ニコラス・ディズレーリ(ka2572
    人間(紅)|21才|男性|猟撃士
  • 小さな望み
    シャトン(ka3198
    人間(蒼)|16才|女性|霊闘士
  • もぐもぐ少女
    泉(ka3737
    ドワーフ|10才|女性|霊闘士
  • 山岳部の集落を救った者
    レウィル=スフェーン(ka4689
    人間(紅)|16才|男性|疾影士
  • お説教レディ
    鬼非鬼 ゆー(ka4952
    人間(蒼)|17才|女性|舞刀士
  • 多彩な技師
    グエン・チ・ホア(ka5051
    人間(蒼)|21才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ニコラス・ディズレーリ(ka2572
人間(クリムゾンウェスト)|21才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2015/06/19 02:41:22
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/06/19 04:20:04