• 春郷祭1015

【春郷祭】逆襲! 炎の料理人

マスター:のどか

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/06/17 22:00
完成日
2015/06/28 21:18

みんなの思い出

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オープニング

 農耕都市ジェオルジの北部に位置するフレッド村。
 昨年、秋の村長祭の料理対決で賑わったこの村に、この春も1つの賑わいを見せていた。
 村中の、いや観光客も含めればもっと大勢の人々が集まった中央広場。
 彼らの視線の先の特設ステージには、2つの大きな机が「ハ」の字型に向かい合っており、それぞれの机の傍に料理人のような白衣を着た者達が腕を組んで立っていた。
「シニョーレシニョーリ、お待たせいたしました! この春もやって来た大イベント『リストランテ フレッド』――開幕になります!」
 ステージの中央でビシリとスーツで決めた男が声を張り上げる。
 同時に観客から歓声の渦が沸き起こった。
「今回もビッグなこの村長祭、皆様いかがお過ごしでしょうか? 半年を越える時を経て、今ここにもう一度、二組のチャレンジャーが集いました!!」
 そう言いながらスーツの司会は両手を広げてそれぞれの料理人を指し示す。
「こちら、グループで参戦! この春、辺境の大地で起こった一連の歪虚事件を見事解決して記憶に新しい――ハンターの皆さんです!」
 湧きあがる歓声と拍手。
 どこかこそばゆい気持ちを覚えながらもハンター達は一言ずつコメントを述べてゆく。
 一通りの挨拶が終わった後、スーツの司会は対岸に位置するテーブルを指し示す。
「対するは美食の街『ポルトワール』よりやって来た! トラットリア『エスプロジオーネ』を支える料理長! 炎の料理人、ピエール・アルフォンソ!!」
 紹介と共にに筋肉質の色男がニコリとほほ笑んだ。
 同時に、再び沸き起こる歓声と拍手。
「ジェオルジの皆さん、そしてハンターの皆さん、ごきげんよう! 今宵も皆様にお会いできて、今日という日に最大の感謝をしております」
 そう挨拶しながら再びニコリとほほ笑むアルフォンソ。
 白い歯がキラリと太陽に照らされて光輝いた。
「昨年、ハンターの皆様に敗北してから半年……故郷ポルトワールにて、一から自らの『料理』というものと向き合って参りました」
 ぐっと、悔しそうに握り締める拳に、その腕の筋肉がビリリと張り詰める。
「本当に、喜ばれる料理とは何なのか……自分なりの答えを、見つけてきたつもりです。だからこそ、今一度この場に立ち、ハンターの皆さんと料理対決かできる事を心から誇りに思っております!」
 そう言って、舞台俳優のように大手を振ってみせる彼に、観客の熱狂も最高潮である。
 これは彼にとっての逆襲――料理と言う、彼の命と向き合った、真剣勝負なのだ。

「さて、それでは今回のお題の発表です――」
 一通りの挨拶を済ませ、1枚の垂れ幕を取り出す司会の男。
 ダララララララと、断続的な太鼓の音が響き渡る。
「今回のお題は――『スイーツフルコース』!」
 お題の発表と同時に、客席にどよめきが走った。
「各チームには『前菜』『スープ』『メイン』『アフターティ』の順で提供される、スイーツのフルコースを考案し・実演にて作って頂きます。前大会は食材の指定がございましたが、今回は一切ございません。ただし……」
 そう言って、神妙な表情を見せる司会。
「代わりに『アフターティ』のみ、こちらから指定をさせて頂きます。フレッド特産の茶葉と果物を使いました、フレーバーティ。こちらをアフターティに据えたコースを、皆様には作っていただきたいと思います!」
 ガラガラと、台車に積まれて運ばれてくる茶葉とポット。
 注がれるお茶からは、紅茶ににた香りと共に、柑橘系のさわやかな香りが鼻先を擽った。
「今回審査をして頂くのは、自称同盟一の美少女受付嬢! 食べ物の事ならまかせとけ! ルミ・ヘヴンズドアさんにお越しいただいております!」
「自称は余計ッ……こほん。みんな~、ルミちゃんに美味しいスイーツ、食べさせてねっ♪」
 ステージの中央で観客に愛想を振り撒くルミ・ヘヴンズドア(kz0060)を前に、ごくりと息を飲み込むハンター達。
 この勝負、ただでは済まない――そう、本能が警鐘を鳴らしていた。
「スイーツ……元はパティシエを目指していた私に、このお題ですか。これもまた、運命と言う事ですね」
 そんなハンター達と裏腹に、不敵な笑みを浮かべるアルフォンソ。
「この私の全てを持って……最高のフルコースを、ご用意いたしましょう」
 炎の料理人の意地とプライドを掛けた、一世一代の大逆襲が今、始まろうとしていた――

リプレイ本文

●クッキング
「まぁ……勝負だっつーのなら全力でやってやるさ」
 対岸の調理台で既に仕込みを始めているアルフォンソに睨みを利かせながら、アクアレギア(ka0459)は静かな闘志を燃やし始めていた。
 暑苦しいノリは得意じゃないが、負けるのはもっと嫌だ。
 単純にして明快な対抗心が、彼の心を突き動かす。
「レギア、お前もやっと料理に目覚めたか!」
 不健康な前髪もぴっしりと三角巾でたくし上げ、いそいそとエプロンを絞めるレギアを前にして、飴餅 真朱也(ka3863)は感極まった様子で瞳を輝かせる。
 そんな彼をうっとおしがりながらも、調理台に背が届かず踏み台を探すレギアを他所に、アリソン・メープルウッド(ka2772)もまた、対岸へと視線を寄せた。
「アルフォンソさん、前にも増して気迫が……厳しい戦いになりそう」
 前回のおおらかな余裕とは違い、どこか自信と自尊に満ち溢れた雰囲気を放つアルフォンソ。
「相手なんて関係ねぇ。俺達のベストで、審査員も相手も纏めて唸らせてやるだけだ」
 目の前に山積みになったフルーツを前に、慣れた手つきで包丁を指先でくるくると弄ぶカルロ・カルカ(ka1608)。
 いざ調理に――そう、まな板に向かった所で、わっと客席が沸き立った。
 客の視線は対岸のアルフォンソ。
 なにやら柑橘系の果物の皮を狂わぬ手つきで剥き上げ、ボウルへと放り込んでゆく。
 その果肉を逞しい両腕で握りしめた木の棒でぎゅっと押しつぶして行くと、さわやかな果汁がじゅわりとあふれ出す。
 一方、それとは別のボウルにミルクや調味料を手早く加え、今度は繊細かつ大胆な手つきで泡立てはじめる。すぐにクリーミーな泡と化したボウルの中身に、客席からは思わず拍手が零れ落ちた。
「これが、一度は菓子職人を目指したと言うアルフォンソ氏の本気ですか……特等席で見られて、幸せです!」
 ごくりと生唾を飲みながら解説をするルミ・ヘヴンズドア(kz0060)にパチリと伊達なウインクを飛ばすと、彼は次の工程へと移った。
「こちらもうかうかしてはいられませんわね。佐久間様、よろしくお願いいたします」
「こちらこそ。彼の料理も気になりますが、まずはこちらの準備もしなければ、ですね」
 盛り上がる対岸から名残惜しそうに視線を反らし、佐久間 恋路(ka4607)は相方となる前田 菊姫(ka4056)へ優しくほほ笑んだ。
 挨拶もそこそこに、すぐに調理へと取り掛かる2人。
 菊姫は鍋に赤黒い豆を敷き詰めると、少量の水と共に火にかける。
 彼女たちの担当するスープでは、最も時間のかかる工程。
 基本は火が通るまで放置するだけではあるが、その間に他の事も済ませなければなるまい。
 菊姫は鍋に蓋をすると、そのまま真っ赤に熟れた苺を手に包丁を握りしめた。
「う~ん、流石の手際ですね。俺も頑張らないと」
 言いながらも、ボウルに注いだミルクと卵黄、そして白と緑の2色の粉を丁寧に混ぜ合わせる恋路。
 一度とろりと混ぜ合わせると、今度は残した卵白をしっかりメレンゲ状に泡立てる。
 先ほどのアルフォンソと似た工程のためか、客席の反応はそこまで爆発的なものではない。
 それでも緑色をしたボウルからふんわりと漂う香ばしい香りが、その鼻をくすぐっていた。
「すげぇ、見る見るうちに果物が切り刻まれて行くぜ……!」
 カルカの精練された包丁さばきに、客席からは感嘆の息が漏れていた。
 マンゴー、アプリコット、フランボワーズ、それに柑橘系の実が1つ……大きさも形状もまったく違う果物達だが、彼の手と包丁の上で見る見るうちに皮は剥かれ、タネは抉られ、それぞれボウルに収まってゆく。
「これなら、時間内に十分間に合いそう。私の方も、しっかりやらなくっちゃ」
 傍らで繰り広げられるカルカの調理姿に自身も奮い立たせながら、アリソンはコンロに掛けた鍋へと牛乳や砂糖を加えてゆく。
 一方の鍋にはオレンジの果汁を加え、これもまた軽く火を掛ける。
 そうしてあらかた温まったそれぞれの鍋に、ゼラチン質を溶かし込んだ水やハチミツなどの甘味料を加えて優しく混ぜ込んでゆく。
 一通り混ぜ終えた所でサルトに移して、軽く冷めるのを待つ。
 ひとしきりの仕事を終えて、額の汗を拭うアリソン。
 それでも時間は有限。休んでいる暇は無い。
 ゼラチンを固めるための氷をピックで砕いてボウルに敷き詰め、最後の仕上げへと掛かっていた。
「――おいおい……なんだよあれ!」
 再び沸き立つ客席に、ハンター達もふと、引寄せられるように対岸の調理台へと視線を移していた。
 アルフォンソが、がらがらと台車に乗せて運び込んできたのは巨大な氷塊。
「これだけ密度が高く、解けにくい氷……手に入れるのに苦労しましたよ」
 そう口にして不敵な笑みを浮かべると、手にした大きなハンマーで、一思いに砕いてゆく。
 その迫力に観客の視線も思わず釘付けになるが、レギアはそれを横目に小さく舌打ちを1つだけ飛ばし、目の前で膨らむ生地の空気抜きに取り掛かっていた。
「料理すんのに派手なパフォーマンスなんて、ムダだろうがよ」
「いやいや、そうでもないぞ。この人が、こうやって作ったのが、こう言う料理になるんだっていう過程を楽しむのも料理の醍醐味の1つだ」
 そういう意味ではパフォーマンスだって、美味しさに一手間加えるエッセンスだと真朱也は言う。
「……どうでも良いけど、おまえテンション高くないか」
 饒舌に語って聞かせる真朱也を前に、若干怪訝な表情でレギアは問う。
「そりゃおまえ、一流の料理人の皿が見られるんだ。テンションだって上がるし、腕だってなるさ」
 言いながら鍋の中身をヘラで優しくかき混ぜる真朱也。
 バニラの甘みや、レモンの酸味に混じって、濃厚なチーズの香りが漂う。
「それに、普段料理しないヤツとも一緒に料理してるしな」
 そう言って悪戯っぽく笑ってみせた真朱也に、仏頂面で鼻を鳴らすレギア。
「くっちゃべってると時間が押す。ほら、次は何すれば良いんだよ」
「あー、じゃあそっちの鍋をかき混ぜといてくれ」
 その言葉にレギアは小さく顎で頷くと、甘い臭いに包まれながら中のソースをかき混ぜるのであった。
 一方、鼻歌交じりに氷水の中に浮かべた金属ケースの中身をかき混ぜる恋路。
 先ほどまではクリーム状であったそれは、冷たい容器の中で次第に硬い手ごたえへと変わっていた。
「もう少し、ですね」
 片手間に果物の細工を手伝いながら、少しずつ、空気を入れ込むように混ぜてゆくクリーム。
「さて、アルフォンソさんは何をやっているのでしょうか――」
 ふと恋路が視線を走らせた先。
 アルフォンソのテーブルの上には3つの容器。
 その全てに先ほど砕いた氷と水が詰め込まれており、中央に金属のトレイが浮かんでいる。
「……これはこれは」
 なるほど、そのためのあれだけの氷かと、『同じもの』を作っている恋路はその奇妙な一体感に思わず笑みを溢す。
「前田さん。俺はそろそろ花の準備をするので、後はお願いします」
「ええ、こちらももう少しで終りますし。よろしくお願いします」
 答える菊姫も鍋の中の豆をしっかり裏ごししながら、少量の水と共に再び火にかける。
 こちらもラストスパートで、準備した皿に盛り付けの構図を考えるのである。

「――お待たせしました」
 その時、対岸から放たれた言葉に会場の空気はがらりと変わった。
 今までの食いつくような熱気から、ヒンヤリとした緊張へ。
 その言葉と、アルフォンソがトレイに掲げる皿の存在に、会場の神経が研ぎ澄まされていた。
「いつまでもシニョリーナを待たせるわけにはいきませんからね」
 そう言ってキザな笑いを見せるアルフォンソ。
 今、実食が始まる――

●決戦
「それでは前菜から――」
 そう言って、慣れた手つきでトレイの上の皿を審査員席へとサーブする。
 彼の披露した料理は『3種の氷菓によるアムレート』。
 3品すべてをアイスで作り上げた、夏に向かうこれからにピッタリの一品だ。
 前菜に『季節の果物のジェラート』――思わず声を漏らしてしまうほどの酸味のある味わいの中に、ほのかな果実味。
 スープに『アフォガート・アル・カッフェ』――こちらは苦味の強いエスプレッソをアイスに掛けて頂く品。顔を顰める苦味の先に、アイスのミルク本来の甘さが広がり、極上の味わいが堪能できる。
 そしてメインは『苺のセミフレッド』――酸味と苦味で馬鹿になった舌で、苺の持つ上品な甘みだけを感じ取る至福のひと時を堪能。
 そしてアフターティで舌の状態を整え、ひと時の『おまじない(アムレート)』は終わりを告げるのである。

「――ふ~。素晴らしいドルチェでした。流石は炎の料理人ですねっ。冷たかったですけど」
 皮肉を言いながらも満足げなルミに、もう一度礼を返すアルフォンソ。
 そうして、今度はお手並み拝見と言いたげに、ハンター達の方へと挑戦的な視線を投げかけた。
「お待たせいたしました。『オレンジゼリーとパンナコッタ 4色のピューレ添え』です」
 一皿目をサーブするのはアリソン。
「わ~、綺麗ですね♪」
 透明なサルトの上に並ぶ、2色の山。
 さらに、シロップに漬けられた蕾の花が可愛らしく添えられていた。
「面白いですね、花壇みたいですっ。ではでは、いただきま~す☆」
 言いながらソースを絡めてひと掬い。
 ぱくりと口に含み、同時に笑みが零れる。
「ん~。シンプルな分、丁寧に仕上げられています。ソースにも力が入ってますネ。かなり注意を払って作られたんじゃないですか?」
「色も味も落ちるからな。サーブに合わせて仕上がるように仕込みは行った。その日の出来によって違ってくる分も、しっかりと微調整を行ったつもりだ」
 そう説明を加えるのはソース担当のカルロ。
 決して高価なものは使わない、ありふれたもので作る事は彼の拘り。
 どうせなら興味を持ったヤツが作れるようなものにしたいと、彼なりの配慮であった。
「さて、次はこちらですわ」
 続いての皿をサーブする菊姫。
 緑色のアイスと、花のように飾られた苺、さらに開ききっていない花が添えられた皿に、空の器。
 そこに、鍋から掬った液体を注ぎ込む。
「わぁ、これ、楽しみだったんです! ブルーを思い出す、お汁粉!」
 きゃっきゃとはしゃぐルミ。
「甘さは控えめに、柔らかな味わいを楽しんで頂けると嬉しいですわ。その分、食べ合わせを楽しんで頂きたいと思いますの」
 ルミは熱々の汁粉をゆっくりと蘇軾すると、ほっと一息を吐いて見せる。
「十分に堪能して頂けたら、次は抹茶のアイスにお汁粉を掛けてみてください」
 控えめに盛られたお汁粉の器に、添えたアイスを入れて、もう一度熱々の汁粉を注ぎ込む。
 熱で溶けた緑色のアイスは、茶の香りを立ながらも、ほんのりと餡子の海に溶け込んでゆく。
「ん~、上品な味ですっ。抹茶の苦味がまた、いい味を出してますね。ワビサビですね!」
 謎のコメントを残しながらも、しっかりと完食したルミ。
「西方にリアルブルー、そして東方。この世界は様々に混じり合うスープのようなものです。手を取り合って繋ぐ新しい美味しさを……なんて、素敵だと思いませんか?」
 そうにっこりと笑ってみせる恋路。
「さー、お待たせしました。メインディッシュの到着だ」
 入れ替わりにメインの一皿をサーブする真朱也。
「あー、やっぱり! 蕾から5分咲きくらいが来たから、次は満開かな~って思ってたんだ~」
 皿を一目見て、ルミが口を開く。
 彼女が言っているのは添え物の花の事である。
 前菜から徐々に、花が開いていく様子を表していたのだ。
「『ムースケーキのタルト』。キャラメル、ベリー、オレンジの3色のソースで召し上がれ」
 クリーム色のムースが敷き詰められたタルトに、3色のソースが添えられる。
 ルミは一口大に切り分け、静かに口へ。そのまま、味わうようにゆっくりと蘇軾する。
「チーズのムースですね~、この深いながらもほんのり野性味ある味わいは牛じゃなくって山羊? でも、獣臭く無くってすっごく食べやすいですっ!」
「おー、流石に舌が肥えてるな」
 ルミのコメントに、感心したように頷く真朱也。
「生地はなんだか優しい感じがしますね。荒削りだけど、精一杯が伝わる味です。ムースの深みに比べると、ちょうどいい軽さがあって、凄くマッチしてますっ!」
 そう口にするルミに、あっけに取られたようにしてぽかんとした表情を浮かべるレギア。
「美味いって言ってるぞ」
 楽しそうに肘でその肩を小突く真朱也を手で払いながらも、完食された器を眺めるレギア。
「……誰かに食わせて美味いって言われるのは案外悪くねぇな」
 それは誰に掛けるものでもなく、強いて言えば、彼自身に掛けられた確かな喜びの言葉であった。

「ふぅ、美味しいお料理、ご馳走様でした」
 コクリとアフターティを飲み干したルミは、布巾で口元を拭くと静かに息を整える。
 下されるであろう、判定の言葉を前に、会場に再び緊張が走る。
「味覚の変化の魔法を掛けてくれたアルフォンスさんに、花が開く様子をテーマにお料理を作ったハンターさん。どちらも捨てがたいですが、決着をつけなければなりません。そしてルミちゃん、決めました。今回の勝負は――」

 ――ハンターさんの勝利です!

 わぁっと湧き上がる喚声。
 待ち焦がれた結果に、ハンターも思い思いに、喜びの表情を浮かべる。
「どこが……どこが劣っていたのです!?」
 一方、縋るように口にするアルフォンソに、ルミはうーんと口元に手を当てて答えた。
「アルフォンソさん、確かに美味しいし素晴らしいお料理だったんですけれど……ワクワクしなかったんですよね。作ってる姿も、お料理も」
「ワクワク……しない?」
 要領を得ない様子の彼に、ゆっくりと迫る影。
「良かったら、食べさせて頂けませんか? そしてよろしければ、俺達のも」
 言いながら、残ったお菓子を盛り付けた皿を差し出す恋路。
 渡された皿に一口手を付け、アルフォンソは深く息を吐く。
「できれば……出来れば楽しんで頂きたかったものですわ。せっかくのお祭りですし。お料理って楽しいものですから」
 そう口にする菊姫に、どこか憑き物の落ちたような笑顔で頷くアルフォンソ。
「……出来る事なら、次は勝負を抜きにしたあんたの料理を食ってみたいもんだな」
 その言葉は、カルロの素直な感想であった。
 確かな腕に情熱を持った男の料理。
 そこに彼自身の心が乗れば、どれだけの料理になるのだろう。
「……ありがとう、皆さん。私が失ってしまったものが、ようやく分かった気がします。今度は是非、お店にいらしてください。その時は、心からの私の料理をご馳走致しましょう」
 そう言って微笑んだ彼の笑顔には、迷いなど微塵も残っては居ないようにも見えたという。

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重体一覧

参加者一覧

  • オキュロフィリア
    アクアレギア(ka0459
    ドワーフ|18才|男性|機導師
  • 優しき氷牙
    カルロ・カルカ(ka1608
    エルフ|23才|男性|魔術師
  • “技”の料理人
    アリソン・メープルウッド(ka2772
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人

  • 飴餅 真朱也(ka3863
    人間(蒼)|23才|男性|聖導士

  • 前田 菊姫(ka4056
    人間(蒼)|23才|女性|闘狩人
  • 血色に請う永遠
    佐久間 恋路(ka4607
    人間(蒼)|24才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
前田 菊姫(ka4056
人間(リアルブルー)|23才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/06/17 21:36:04
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/06/15 12:20:36