ゲスト
(ka0000)
【聖呪】ゴブリン鉄砲部隊
マスター:秋風落葉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 8~12人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/06/17 22:00
- 完成日
- 2015/06/22 21:20
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●依頼を受けたハンターたち
「今回はゴブリンが相手か……まあ、数はそれなりのようだが俺達の敵じゃないな」
リーダーの言葉に皆頷くハンター達。
ベテランというほどではないが、少なくともゴブリンに遅れをとるようなことはない。ハンター達はそう自負していた。
グラズヘイム王国北方のとある村がゴブリンの一団に奪われた。そしてそれを取り戻す依頼を受けたのが彼らというわけだ。
ハンター達は勇んでオフィスを後にする。
そう、ただのゴブリンが相手なら、負ける理由などなかったのだ。
……ただのゴブリンだったなら。
●予想外の攻撃
「ぐっ!?」
脇腹に衝撃を受け、エンフォーサーはよろめく。自慢の鎧に穴が開き、そこから激しい痛みが全身を苛んだ。
「そんな……これは魔導銃……!? うおっ!!」
敵の攻撃を看破したアルケミストは側をかすめた銃弾に悲鳴をあげ、慌てて防御障壁の構えに入る。
どこから手に入れたのか、そしてどうやって使い方を覚えたのか、ゴブリン達が所持しているのはまさに魔導銃であった。村を囲む柵の内側から、亜人達は銃口をハンター達へと向けている。
相手をただのゴブリン達と甘く見、さしたる工夫もなく正面から突撃したのが彼らの不幸であった。
最初に聞こえた計十発の発射音。それが何かを理解する前に、彼らの一団は手ひどい傷を負ってしまった。そしてまた同じように放たれる十発の銃弾。射撃の錬度はそこまで高くはないのか半数は外れたものの、もはや前衛達はクルセイダーの回復が追いつかないほどのダメージを負ってしまっている。
アルケミストは知っていた。魔導銃はあと一度、リロードをはさむことなく射撃を行えることを。
遠くに見えるゴブリンが腕を挙げている。それが振り下ろされた時、三度目の射撃が彼らを蹂躙した……。
●デルギンという名の亜人
「シシシ……ニンゲンどもめ、驚いておるな!」
村を新たに支配しているゴブリン、デルギンは言葉と共に腕を振り下ろした。
部下のゴブリン達が魔導銃のトリガーを引き、三たび砲火が大地の上を走る。計三十発の弾丸の標的となったハンター達は全て倒れ伏し、もはやぴくりとも動かない。
魔導銃を手にする十体のゴブリン達ははしゃぎ、無様に倒れた敵を指差して笑っていた。デルギンも口に笑みを浮かべたまま新たな命令を下す。
「シシシシシ……行け! 我が同胞達よ! 奴らの身包みを剥いでくるのだ!」
魔導銃を持たないゴブリン達は歓声をあげ、柵を乗り越えて倒れたハンター達へと駆け寄った。
しかし油断して近づいたゴブリン達を待っていたのは手痛い反撃であった。近寄った一体の亜人はいきなり脛を剣で切られ、悲鳴をあげた。
ふらつきながらも続々と立ち上がるハンター達。彼らは深い傷は負っていたものの、まだ命の火は消えてはいなかった。
一人のクルセイダーが全身から光を発すると、彼らの傷がふさがっていく。ゴブリンたちはたじろいだ。
「クッ……下僕ども!! 撃て!」
デルギンがあせったように魔導銃を持つ部下に射撃を命じる。しかし、急ぎ狙いをつけたゴブリン達の銃が火を吹くことはなかった。
「馬鹿者ども! またリロードを忘れおったのか!」
デルギンのヒステリックな悲鳴に、ゴブリン達は慌てて弾の再装填を行った。しかし、その動きはもたもたとしている。
ゴブリン達が弾を込め終わった時には、ハンター達はすでに彼らの射程圏外へと逃れている。うかつにも追いかけた何体かのゴブリンはハンター達の斬撃を受け、命を散らしていた。
(……この無能どもは何度言えばリロードの事を忘れずにすむのだ? ……ワシと同族とは思えぬ愚かさよ……)
デルギンは歯軋りしたものの、振り上げた拳はそのままに下ろした。
「……まあよい、同胞達よ。よくやった」
デルギンは銃を持つゴブリン達をねぎらい、村の外に出ていた兵士達にも撤収を命じる。
デルギンは自分の魔導銃を見下ろした。ある日を境に、彼は突然この武器のことがまるで手足のように分かるようになっていた。
自分ほどではないものの、魔導銃をある程度扱えるように訓練したゴブリン十体。その他の雑兵が四十……いや、三十七体。
(もう少し下僕の……おっと、同胞達の数が欲しいところだな)
肉の壁はいくらあっても不足ということはないからな、とデルギンは同族達を見回した。この村からの略奪品を大事そうに持つ者達がいる。その中の内、上質な剣を振り回す一体のゴブリンを見てデルギンは口元をつりあげた。
(馬鹿め。この魔導銃という武器に比べれば、そんなものは取るに足らぬものなのだ)
銃による一斉射撃を受けた時のハンター達の愕然とした表情を思い出し、デルギンは再び笑う。この村を奪う時、魔導銃の存在を伏せていた甲斐があったというものだ。
――この村を南下の足がかりとし、いずれはニンゲン達の領土を奪い尽くしてくれよう。
デルギンは己が野心が成就する様を心の中で描き、シシシ……と笑った。
「今回はゴブリンが相手か……まあ、数はそれなりのようだが俺達の敵じゃないな」
リーダーの言葉に皆頷くハンター達。
ベテランというほどではないが、少なくともゴブリンに遅れをとるようなことはない。ハンター達はそう自負していた。
グラズヘイム王国北方のとある村がゴブリンの一団に奪われた。そしてそれを取り戻す依頼を受けたのが彼らというわけだ。
ハンター達は勇んでオフィスを後にする。
そう、ただのゴブリンが相手なら、負ける理由などなかったのだ。
……ただのゴブリンだったなら。
●予想外の攻撃
「ぐっ!?」
脇腹に衝撃を受け、エンフォーサーはよろめく。自慢の鎧に穴が開き、そこから激しい痛みが全身を苛んだ。
「そんな……これは魔導銃……!? うおっ!!」
敵の攻撃を看破したアルケミストは側をかすめた銃弾に悲鳴をあげ、慌てて防御障壁の構えに入る。
どこから手に入れたのか、そしてどうやって使い方を覚えたのか、ゴブリン達が所持しているのはまさに魔導銃であった。村を囲む柵の内側から、亜人達は銃口をハンター達へと向けている。
相手をただのゴブリン達と甘く見、さしたる工夫もなく正面から突撃したのが彼らの不幸であった。
最初に聞こえた計十発の発射音。それが何かを理解する前に、彼らの一団は手ひどい傷を負ってしまった。そしてまた同じように放たれる十発の銃弾。射撃の錬度はそこまで高くはないのか半数は外れたものの、もはや前衛達はクルセイダーの回復が追いつかないほどのダメージを負ってしまっている。
アルケミストは知っていた。魔導銃はあと一度、リロードをはさむことなく射撃を行えることを。
遠くに見えるゴブリンが腕を挙げている。それが振り下ろされた時、三度目の射撃が彼らを蹂躙した……。
●デルギンという名の亜人
「シシシ……ニンゲンどもめ、驚いておるな!」
村を新たに支配しているゴブリン、デルギンは言葉と共に腕を振り下ろした。
部下のゴブリン達が魔導銃のトリガーを引き、三たび砲火が大地の上を走る。計三十発の弾丸の標的となったハンター達は全て倒れ伏し、もはやぴくりとも動かない。
魔導銃を手にする十体のゴブリン達ははしゃぎ、無様に倒れた敵を指差して笑っていた。デルギンも口に笑みを浮かべたまま新たな命令を下す。
「シシシシシ……行け! 我が同胞達よ! 奴らの身包みを剥いでくるのだ!」
魔導銃を持たないゴブリン達は歓声をあげ、柵を乗り越えて倒れたハンター達へと駆け寄った。
しかし油断して近づいたゴブリン達を待っていたのは手痛い反撃であった。近寄った一体の亜人はいきなり脛を剣で切られ、悲鳴をあげた。
ふらつきながらも続々と立ち上がるハンター達。彼らは深い傷は負っていたものの、まだ命の火は消えてはいなかった。
一人のクルセイダーが全身から光を発すると、彼らの傷がふさがっていく。ゴブリンたちはたじろいだ。
「クッ……下僕ども!! 撃て!」
デルギンがあせったように魔導銃を持つ部下に射撃を命じる。しかし、急ぎ狙いをつけたゴブリン達の銃が火を吹くことはなかった。
「馬鹿者ども! またリロードを忘れおったのか!」
デルギンのヒステリックな悲鳴に、ゴブリン達は慌てて弾の再装填を行った。しかし、その動きはもたもたとしている。
ゴブリン達が弾を込め終わった時には、ハンター達はすでに彼らの射程圏外へと逃れている。うかつにも追いかけた何体かのゴブリンはハンター達の斬撃を受け、命を散らしていた。
(……この無能どもは何度言えばリロードの事を忘れずにすむのだ? ……ワシと同族とは思えぬ愚かさよ……)
デルギンは歯軋りしたものの、振り上げた拳はそのままに下ろした。
「……まあよい、同胞達よ。よくやった」
デルギンは銃を持つゴブリン達をねぎらい、村の外に出ていた兵士達にも撤収を命じる。
デルギンは自分の魔導銃を見下ろした。ある日を境に、彼は突然この武器のことがまるで手足のように分かるようになっていた。
自分ほどではないものの、魔導銃をある程度扱えるように訓練したゴブリン十体。その他の雑兵が四十……いや、三十七体。
(もう少し下僕の……おっと、同胞達の数が欲しいところだな)
肉の壁はいくらあっても不足ということはないからな、とデルギンは同族達を見回した。この村からの略奪品を大事そうに持つ者達がいる。その中の内、上質な剣を振り回す一体のゴブリンを見てデルギンは口元をつりあげた。
(馬鹿め。この魔導銃という武器に比べれば、そんなものは取るに足らぬものなのだ)
銃による一斉射撃を受けた時のハンター達の愕然とした表情を思い出し、デルギンは再び笑う。この村を奪う時、魔導銃の存在を伏せていた甲斐があったというものだ。
――この村を南下の足がかりとし、いずれはニンゲン達の領土を奪い尽くしてくれよう。
デルギンは己が野心が成就する様を心の中で描き、シシシ……と笑った。
リプレイ本文
●
「シシシ……懲りずにまたやってきおったか、ニンゲンども!」
デルギンは遠くに見える一団を見て笑う。
――先日追い払ったというのに、また来るのか。
デルギンは嘲りを口の端にしばらく浮かべたままニンゲンの群れを眺めていた。やがて、真剣な顔になって振り向く。そこには粗末な武器を手にしたゴブリンの一団が立っていた。
「よいか。はぐれ者のお前達が我が同胞になれるかは、この戦いにかかっているぞ」
剣や槍を手にしたゴブリン達が頷く。彼らは先日の戦いの後、デルギンが新たに配下に加えたはぐれゴブリンの群れであった。彼は、今回の戦果次第では重く用いる、という甘い言葉で部下を増やしていたのである。
デルギンが支配する村の側でハンターの一団は立ち止まった。中から、一人の男が馬に跨り闊歩してくる。やがて、彼は魔導銃が届くか届かないかの位置で立ち止まった。
「さぁ、新しい玩具が使いこなせているかどうか……俺に見せてみろよゴブリン共ぉ!」
グレートソード「テンペスト」を掲げ、遠目に見えるゴブリン達を挑発するのはエヴァンス・カルヴィ(ka0639)。
彼はその場で剣を思い切り振り抜く。生まれた衝撃波が土くれを巻き上げてゴブリン達が支配する村へと向かい……途中で消えた。
「俺も遠距離から斬れるんだぜ?」
エヴァンスはにやりと笑う。
デルギンを除き、人語を理解出来るゴブリンはほとんどいなかったが、なにやら不思議な力を使えるニンゲンであることは分かったようだ。ゴブリン達はざわついた。
「なに、ハッタリに過ぎぬ。ここまでは届かん」
デルギンは冷静にそう判断し、あせって射撃を行おうとした一体のゴブリンをしかりつけた。
ハッタリに怯えてゴブリン達が射撃することを期待していたエヴァンスだったが、残念ながら目論見は外れた。
とはいえ、敵はエヴァンス達に注視しているはずだ。
ミリア・コーネリウス(ka1287)がオカリナを吹いた。彼女の合図に従いハンター達は行動を開始する。
「オカリナなったしぃ、突撃どうぞぉー?」
鵤(ka3319)が所持している通話道具を使い、念のため仲間へと通達した。
今この場にいない、別働隊の仲間へと。
「ミリア、俺について来い! ヴィルマは後ろを任せたぜ!」
エヴァンスは馬を操り、まっすぐに駆け出した。
「銃か、それほど威力の高くない銃なのがありがたいな。奇襲のみんな頼むぞ」
ミリアも兄と慕うエヴァンスに続くため、跨るゴースロンに前進の指示を出す。お揃いの剣を持つエンフォーサーが先陣を切った。
「あーずいぶん湧いたなこりゃあ、しかも銃器所持かと言うか、取り敢えずぶん殴れば倒れるだろうけど、弾幕STGみたいに回避できることを祈ろうか?」
ジュン・トウガ(ka2966)は姿勢を低くしてなるべく射撃が当たらないように気をつけつつ、二人に続いて一緒に村へと突撃を開始した。
朱殷(ka1359)もあらかじめ自身に地を駆けるものをかけ、彼らと共に前へと出る。
そこにゴブリン達の一斉射撃が火を吹いた。前衛を務める彼ら四人へと弾丸が飛来する。馬上でひときわ目立つエヴァンスとミリアにやや攻撃が集中する形となった。
朱殷の周囲に光の壁が一瞬生まれ、彼目掛けて飛来する弾丸の勢いを殺した。後方の鵤が咄嗟に展開した防御障壁である。しかし弾丸はその防壁をも貫き、朱殷の胸から鮮血が飛ぶ。
彼をはじめとし、エヴァンス、ジュンも弾丸の餌食となる。ミリアも銃弾の雨が降り注いだが、鎧、もしくは剣によって全てが防がれていた。デルギンをはじめとしたゴブリン達は驚きのあまり目を見張る。
エヴァンスとミリアは敵が立てこもる柵を目掛けて突っ込んだ。二人の乗る馬はどちらも戦慣れした馬であり、射撃の音にもひるまない。
「クッ……同胞達よ、出番だ!」
馬に跨った敵が、二射目よりも速くこちらの柵に到達しそうであることを見切ったデルギンは声を大にして叫んだ。
デルギンの命に従って剣を持ったゴブリン達が柵をくぐり、ハンター達へと押し寄せる。
それを見据え、ワンド「ゴールデン・バウ」をかざしたのはヴィルマ・ネーベル(ka2549)だ。
(ゴブリンが魔導銃をのぅ……身にあまる武装を手にいれてはしゃいでいるゴブリンどもを少しこらしめてやるとしようかのぅ)
後方に位置していたヴィルマのウィンドスラッシュが風を裂き、近づいてきた一体のゴブリンを狙う。鋭利な風が亜人を真っ二つにし、剣を持つゴブリンは何が起きたかを理解することも出来ずに地へと倒れた。
「どきゃれ、小猿。朱殷様のお通りぞ」
朱殷は一体のゴブリンへと日本刀を振るう。ゴブリンは痛みに悲鳴をあげるもまだ倒れず、反撃の剣を繰り出した。地を駆けるものの効果もあり、朱殷はその斬撃を回避する。続く二体目の繰り出した槍は避けきれず、手傷を負った。とはいえ、先ほどの銃撃に比べれた大した痛みではない。
その近くでアックスブレード「ツヴァイシュトースツァーン」を斧形態で叩きつけているのはジュンだ。刃を避けそこなったゴブリンは鎧ごと切り払われ、血しぶきを撒き散らしながら地面へと転がる。
「FPSでもたま飛んでくるからな、頭上げてるといい的なんだよな、頭下げて狙い定めさせねえようにしないと一発でお陀仏だな」
味方のゴブリンに当たることもお構いなしでひっきりなしに飛んでくる敵の銃弾に、首をすくめるジュン。
「あーもう、さんざんっぱら狙いやがって、私はラ◯ボーやコ◯ンドーとかどこぞの筋肉アクションヒーローみたいな弾が自分から避けてくれる様な超能力も弾絶対当たらないような強運もねえんだよ!」
そう悲鳴をあげながらもジュンは得物を振るい、目の前の敵を切り捨てていく。
その背後で空中に光の三角形を描くのはアルケミストの鵤だ。後方にいる鵤からは、まだ柵の向こうの銃を持つゴブリンは狙えない。
やむを得ず手近なゴブリンをデルタレイの対象にし、光線を三条放った。内一本はゴブリンに避けられたものの、残りの二本はゴブリンの胴体を貫き、そのまま命を奪う。
「刃馬一体、兄妹刃技! 雑魚は道を開けろ!!」
ミリアは声高に叫び、柵の外へと出てきたゴブリンへと突撃を敢行した。側にいるのはエヴァンス。
「銃が使えた程度で粋がったお前らの負けだ! ミリア、掃除を始めるぞ!」
ミリア、エヴァンスは華麗に馬を操り、ゴブリンの群れの中央で二人背中合わせになると同時にグレートソード「テンペスト」で一帯をなぎ払う。戦場に生まれた暴風雨は亜人達を巻き込み、切り刻んだ。
その時、村の中のゴブリンが新たな報告をデルギンへともたらした。
「シシシ……やはり同時攻撃か! その程度の策、読んでおるわ!」
●
(魔導銃……士筒のことですよネ? あれを使えるなんて、頭のいいゴブリンですネー。ワタシは断然こっちデス!)
遠くに見える砲火を見て心の中で呟くクロード・N・シックス(ka4741)。彼女の両手にはそれぞれ白銀色のトンファーが握られている。
彼女をはじめとしたハンターの奇襲部隊が正面から挑む仲間に合わせ、突入を開始した。しかし、同時攻撃を想定していたデルギンにより配置されていたゴブリンの群れが、彼らを発見し、迎え撃った。とはいえ数はあまり割かれておらず、銃を持つゴブリンも一体だけである。
敵の射撃が命中しなかったこともあって柵をあっさりと破壊し、ハンター達は中へとなだれ込む。
「最近は、面白ゴブリンが沢山で、楽しー、です」
八城雪(ka0146)はそう呟きながらルーサーンハンマーをゴブリンの一体へと振り下ろす。
「あっちこっちで、つえーゴブリンが湧いてる、です」
雪の視線の向こうには魔導銃を構えるゴブリンがいる。
(この前の、地面の中自在に動くゴブリンに比べりゃ、銃使うくれー、普通かもしんねー、です)
先日、雪は別の戦いにおいて地に潜るゴブリンと戦った。その時の敵に比べれば、今回の事態はまだ常識の範囲内と考えているようだ。
雪は近づくゴブリンを数体まとめて薙ぎ払い、真っ二つになった亜人達は揃って地に倒れる。
足の底からマテリアルを噴出させて戦う雪を飛び越し、ゴブリンへと距離をつめたヒースクリフ(ka1686)。そのまま超重練成により巨大化した試作光斬刀「MURASAMEブレイド」で敵を粉砕した。ゴブリン達はあまりの光景に戸惑う。
「強力な武器を手にしたからといって、あまり調子に乗られても困りますネー」
クロードの右手の旋棍「光輝燦然」、左手の烈光旋棍によるワンツー攻撃が宙に白い光の軌跡を残し、ゴブリンへと襲い掛かる。
「相手が剣でも銃でも戦い様はありマス。東方武術の真髄、その身で味わってくだサイ!」
エトファリカ連邦国の武家で生まれ育った彼女だが、その口調と出で立ちからはまったくそんな雰囲気は感じられない。
しかしその口調とは裏腹に、繰り出される打撃は的確であり、みぞおちを打たれたゴブリンは腹を押さえ、悶絶しながら大地に突っ伏した。
だがその時、快進撃を続ける彼らに亜人の魔導銃が火を吹いた。
狙われた雪の防刃グローブに穴が開き、とたんに激痛が彼女を襲う。しかしその痛みにも負けず、彼女は武器をふるって別のゴブリンを叩き伏せた。
馬上で戦槍「ボロフグイ」を操り、目の前のゴブリンを刺し貫くフラメディア・イリジア(ka2604)。その視線は先ほど射撃を行った遠くのゴブリンへと向けられている。
「さて、銃を使うとなるとゴブリンとはいえチィと厄介なものじゃのう? じゃが、このまま逃げ帰るわけにもいかぬゆえ、ことごとく打ち倒してやろうぞ!」
ゴブリン達は多少の手傷をハンター達に負わせるものの、実力の差は明らかで瞬く間に数を減らしていく。
もう一度彼らへと銃口を向けるゴブリン。今度の狙いはフラメディアだ。しかし、それよりも早く別の銃声が戦場に響いた。
「お前達の銃と俺の銃、どちらが強いかな?」
台詞の主は黄金拳銃を手にしたヒースクリフだった。彼の銃弾は見事に亜人の心臓を撃ち抜いていた。ゴブリンはもう一度トリガーに指をかけることは叶わず、そのまま地面へと崩れ落ちた。
●
デルギンは焦れていた。別働隊からの報告が来ない。そして、現在主力がいるこちらの戦況も芳しくない。
デルギンの目の前で、すでにエヴァンスとミリアが柵を破壊し始めている。剣を持ったゴブリンが彼らに向かっていっているが、もはや、正面が突破されるのは時間の問題だ。デルギンは銃による一斉射撃を行おうとするも、ゴブリン達は弾切れによるリロードに時間を取られ、それを果たせない。
やむを得ず、自分を含め、銃を持つゴブリンを下げる指示を出そうとするデルギン。
そこに青白い雲が一瞬広がり、彼を含む亜人の群れを包み込んだ。
「眠れ指揮官のゴブリンよ。疲れたであろぅ? 目覚めと共にそなたに訪れるのは絶望じゃがのぅ。今はゆっくりとおやすみ」
ふらり……とよろけたデルギン。デルギンの側で次々と倒れゆく同族達の姿が彼の閉じ行く視界に入る。周囲のゴブリン達と共に、夢の世界へと誘われるところであったその時、デルギンの瞳にヴィルマが映った。水色の髪のニンゲンが自分のことをじっと見つめている……。
(こ、こやつ……ワシを生け捕りにするつもりか……!?)
生け捕りになったゴブリンがどうなるか、それは子供の亜人ですら分かることである。おそらくただ戦場で死ぬよりも酷い運命が待っていよう。とてつもない恐怖がデルギンを襲った。しかし、それは同時に激しい敵愾心となる。
(やらせん! やらせんぞ……!)
デルギンは目をカっと開いて睡魔に耐えた。足を踏みしめて崩れ落ちるのを防ぎ、お返しとばかりにヴィルマへと銃口を向けて即座にトリガーを引く。デルギンの魔導銃がたちまち火を吹き、ヴィルマへと襲い掛かった。鵤の防御障壁が光のバリアーを張るも、その衝撃はすさまじく、ヴィルマはよろける。
そこに剣を持ったゴブリンの群れが押し寄せようとするが、さすがにそれはジュンと朱殷によって防がれた。鵤もデルタレイを駆使し、近づくゴブリン達を仕留めていく。
その間にデルギンは周囲で倒れたゴブリン達を蹴り飛ばし、彼らを叩き起こす。
「聞け! お前達に策を授ける!」
●
ハンター達は全員が村への侵入に成功した。ゴブリン達は散発的に襲い掛かってきたものの、魔導銃の銃声が先ほどから鳴っていないことに彼らは気付く。
いつしか、剣や槍を持ったゴブリン達の姿も見なくなった。自分達が切り伏せてきたゴブリンの数は、想定していたそれよりも明らかに少ない。
魔導短伝話で連絡を取り合い、ハンター達はお互いの状況を確認し、無事を伝えあう。
村人がまだ残っている可能性を考えていたフラメディアは馬を降り、警戒しながらも一軒の空き家を覗きこんだ。途端、薄暗い中から銃声が響き、フラメディアを襲う。彼女は素早く身を隠した。中から聞こえるのはゴブリンの息遣いだ。フラメディアも一旦深呼吸を行う。
やがて意を決すると、フラメディアは先ほどの発砲により位置の分かった亜人へと踊りかかった。ゴブリンはもう一度トリガーを引こうとするが、彼女の槍はそれを許さず、ゴブリンを串刺しにする。
別の空き家を通りかかったハンター達を、今度は剣を持ったゴブリンが襲い掛かる。しかし、ハンター達はそれを見事に捌き、叩き伏せた。地に倒れたのは合計二体のゴブリン。どうやら、ゴブリン達は村の小屋に少人数でそれぞれ潜んでいるらしい。
ハンター達はしらみつぶしに小屋の探索と掃討を行うことを余儀なくされた。
時間はかかったものの、ハンター達は村の内部を隅々まで調べ、潜んでいたゴブリンを全て捕え、あるいは切り伏せた。
しかし、ここで指揮を取っていたあのゴブリンの姿はどこにもなかった……。
●
「やれ早う吐け、私は早う帰って酒でも呷りたいのだ」
五体満足で捕まったゴブリンを前に、朱殷はそう口にする。捕えたゴブリン達の中に、少しだけ人語を解するものがいたのである。
「小狡いならば、分かるだろう、どうすれば数刻数秒、自分が生き長らえられるか」
朱殷の言葉が一言一句理解できたわけではないが、自分達の立場が分からないほどゴブリンは愚かではなかった。ゴブリンは自分が分かることを述べ始める。たどたどしく人語で喋る亜人から、ハンター達が聞き出せたのは以下のことであった。
――魔導銃はハンター達から奪ったものに過ぎないこと。
――銃は最初誰にも使えなかったが、デルギン(彼らを指揮していたゴブリンの名である)がある日突然「使い方が分かった」と言い、実際その通りだったこと。また、その日を境にデルギンは、他のゴブリン達が理解できないことを口にすることが多くなったらしい。
――デルギンに従い、ゴブリン達は銃を扱おうとしたが、撃てる者と撃てない者がいたとのこと。
「急に出来るよーにって、それ、オレたちが覚醒すんのと、似てねー、です?」
雪は仲間を振り向き、呟いた。突拍子もない話のようではあったが、否定する材料はなく、ハンター達は厳しい顔を崩さない。覚醒とは違うかもしれないが、一部のゴブリンに何かしらの変化が起きているのは間違いなさそうだ。
己が知っていることを全て喋った後、ゴブリンはぽつりと呟いた。
「デルギン、オシエテくれたサクセン。ウマクイカナカッタ……ソウイエバ、デルギン、ドコイッタ?」
ハンター達は顔を見合わせる。デルギンのサクセンとは、おそらくばらばらに小屋の中に隠れて待ち伏せと奇襲を行ったことであろう。そうやってハンター達を足止めし、デルギンはきっとその間に自分だけ逃げてしまったに違いない。作戦の本来の意図通りに……。
回収できた魔導銃も五本のみ。魔導銃が使える者の内の何体かは、デルギンと共に脱出した可能性が高い。
●
尋問と事後処理を終えると、ハンター達はハンターズソサエティへの連絡の為に帰途につく。
指揮官を逃したのは残念だが、堅固に守られていた村を取り返すことが出来たのだ。戦果としては十分だと言ってよいだろう。
「あー当面もうFPSは良いや時代はRTSだわ」
降り注ぐ銃弾が身にしみたのか、リアルブルー出身の者にしか理解できない軽口を叩くジュン。マテリアルヒーリングなどによって自己回復できるものはすでに自分の傷を癒しているが、そうで無い者は銃創を含んだ傷が各所に残っている。ジュンもその内の一人であり、痛みに顔をしかめていた。
そんな中、クロードがぽつりと呟く。
「それにしても、最近はこの辺りのゴブリンが騒がしいですネ? 彼らの後ろに何者かがいるのカモ? 十三魔トカ」
言葉と共に首を傾げるクロード。彼女の言う通り、糸を引いている何者かがいてもおかしくない。それほど、最近のゴブリン達の動きは奇怪きわまっていた。
「深く考えるのは苦手なんですけどネー。ワタシは目の前の敵を打ち倒すだけデス!」
しかしクロードはいつものごとく、すぐにプラス思考に切り替え、笑顔でトンファーを振り上げた。
「シシシ……懲りずにまたやってきおったか、ニンゲンども!」
デルギンは遠くに見える一団を見て笑う。
――先日追い払ったというのに、また来るのか。
デルギンは嘲りを口の端にしばらく浮かべたままニンゲンの群れを眺めていた。やがて、真剣な顔になって振り向く。そこには粗末な武器を手にしたゴブリンの一団が立っていた。
「よいか。はぐれ者のお前達が我が同胞になれるかは、この戦いにかかっているぞ」
剣や槍を手にしたゴブリン達が頷く。彼らは先日の戦いの後、デルギンが新たに配下に加えたはぐれゴブリンの群れであった。彼は、今回の戦果次第では重く用いる、という甘い言葉で部下を増やしていたのである。
デルギンが支配する村の側でハンターの一団は立ち止まった。中から、一人の男が馬に跨り闊歩してくる。やがて、彼は魔導銃が届くか届かないかの位置で立ち止まった。
「さぁ、新しい玩具が使いこなせているかどうか……俺に見せてみろよゴブリン共ぉ!」
グレートソード「テンペスト」を掲げ、遠目に見えるゴブリン達を挑発するのはエヴァンス・カルヴィ(ka0639)。
彼はその場で剣を思い切り振り抜く。生まれた衝撃波が土くれを巻き上げてゴブリン達が支配する村へと向かい……途中で消えた。
「俺も遠距離から斬れるんだぜ?」
エヴァンスはにやりと笑う。
デルギンを除き、人語を理解出来るゴブリンはほとんどいなかったが、なにやら不思議な力を使えるニンゲンであることは分かったようだ。ゴブリン達はざわついた。
「なに、ハッタリに過ぎぬ。ここまでは届かん」
デルギンは冷静にそう判断し、あせって射撃を行おうとした一体のゴブリンをしかりつけた。
ハッタリに怯えてゴブリン達が射撃することを期待していたエヴァンスだったが、残念ながら目論見は外れた。
とはいえ、敵はエヴァンス達に注視しているはずだ。
ミリア・コーネリウス(ka1287)がオカリナを吹いた。彼女の合図に従いハンター達は行動を開始する。
「オカリナなったしぃ、突撃どうぞぉー?」
鵤(ka3319)が所持している通話道具を使い、念のため仲間へと通達した。
今この場にいない、別働隊の仲間へと。
「ミリア、俺について来い! ヴィルマは後ろを任せたぜ!」
エヴァンスは馬を操り、まっすぐに駆け出した。
「銃か、それほど威力の高くない銃なのがありがたいな。奇襲のみんな頼むぞ」
ミリアも兄と慕うエヴァンスに続くため、跨るゴースロンに前進の指示を出す。お揃いの剣を持つエンフォーサーが先陣を切った。
「あーずいぶん湧いたなこりゃあ、しかも銃器所持かと言うか、取り敢えずぶん殴れば倒れるだろうけど、弾幕STGみたいに回避できることを祈ろうか?」
ジュン・トウガ(ka2966)は姿勢を低くしてなるべく射撃が当たらないように気をつけつつ、二人に続いて一緒に村へと突撃を開始した。
朱殷(ka1359)もあらかじめ自身に地を駆けるものをかけ、彼らと共に前へと出る。
そこにゴブリン達の一斉射撃が火を吹いた。前衛を務める彼ら四人へと弾丸が飛来する。馬上でひときわ目立つエヴァンスとミリアにやや攻撃が集中する形となった。
朱殷の周囲に光の壁が一瞬生まれ、彼目掛けて飛来する弾丸の勢いを殺した。後方の鵤が咄嗟に展開した防御障壁である。しかし弾丸はその防壁をも貫き、朱殷の胸から鮮血が飛ぶ。
彼をはじめとし、エヴァンス、ジュンも弾丸の餌食となる。ミリアも銃弾の雨が降り注いだが、鎧、もしくは剣によって全てが防がれていた。デルギンをはじめとしたゴブリン達は驚きのあまり目を見張る。
エヴァンスとミリアは敵が立てこもる柵を目掛けて突っ込んだ。二人の乗る馬はどちらも戦慣れした馬であり、射撃の音にもひるまない。
「クッ……同胞達よ、出番だ!」
馬に跨った敵が、二射目よりも速くこちらの柵に到達しそうであることを見切ったデルギンは声を大にして叫んだ。
デルギンの命に従って剣を持ったゴブリン達が柵をくぐり、ハンター達へと押し寄せる。
それを見据え、ワンド「ゴールデン・バウ」をかざしたのはヴィルマ・ネーベル(ka2549)だ。
(ゴブリンが魔導銃をのぅ……身にあまる武装を手にいれてはしゃいでいるゴブリンどもを少しこらしめてやるとしようかのぅ)
後方に位置していたヴィルマのウィンドスラッシュが風を裂き、近づいてきた一体のゴブリンを狙う。鋭利な風が亜人を真っ二つにし、剣を持つゴブリンは何が起きたかを理解することも出来ずに地へと倒れた。
「どきゃれ、小猿。朱殷様のお通りぞ」
朱殷は一体のゴブリンへと日本刀を振るう。ゴブリンは痛みに悲鳴をあげるもまだ倒れず、反撃の剣を繰り出した。地を駆けるものの効果もあり、朱殷はその斬撃を回避する。続く二体目の繰り出した槍は避けきれず、手傷を負った。とはいえ、先ほどの銃撃に比べれた大した痛みではない。
その近くでアックスブレード「ツヴァイシュトースツァーン」を斧形態で叩きつけているのはジュンだ。刃を避けそこなったゴブリンは鎧ごと切り払われ、血しぶきを撒き散らしながら地面へと転がる。
「FPSでもたま飛んでくるからな、頭上げてるといい的なんだよな、頭下げて狙い定めさせねえようにしないと一発でお陀仏だな」
味方のゴブリンに当たることもお構いなしでひっきりなしに飛んでくる敵の銃弾に、首をすくめるジュン。
「あーもう、さんざんっぱら狙いやがって、私はラ◯ボーやコ◯ンドーとかどこぞの筋肉アクションヒーローみたいな弾が自分から避けてくれる様な超能力も弾絶対当たらないような強運もねえんだよ!」
そう悲鳴をあげながらもジュンは得物を振るい、目の前の敵を切り捨てていく。
その背後で空中に光の三角形を描くのはアルケミストの鵤だ。後方にいる鵤からは、まだ柵の向こうの銃を持つゴブリンは狙えない。
やむを得ず手近なゴブリンをデルタレイの対象にし、光線を三条放った。内一本はゴブリンに避けられたものの、残りの二本はゴブリンの胴体を貫き、そのまま命を奪う。
「刃馬一体、兄妹刃技! 雑魚は道を開けろ!!」
ミリアは声高に叫び、柵の外へと出てきたゴブリンへと突撃を敢行した。側にいるのはエヴァンス。
「銃が使えた程度で粋がったお前らの負けだ! ミリア、掃除を始めるぞ!」
ミリア、エヴァンスは華麗に馬を操り、ゴブリンの群れの中央で二人背中合わせになると同時にグレートソード「テンペスト」で一帯をなぎ払う。戦場に生まれた暴風雨は亜人達を巻き込み、切り刻んだ。
その時、村の中のゴブリンが新たな報告をデルギンへともたらした。
「シシシ……やはり同時攻撃か! その程度の策、読んでおるわ!」
●
(魔導銃……士筒のことですよネ? あれを使えるなんて、頭のいいゴブリンですネー。ワタシは断然こっちデス!)
遠くに見える砲火を見て心の中で呟くクロード・N・シックス(ka4741)。彼女の両手にはそれぞれ白銀色のトンファーが握られている。
彼女をはじめとしたハンターの奇襲部隊が正面から挑む仲間に合わせ、突入を開始した。しかし、同時攻撃を想定していたデルギンにより配置されていたゴブリンの群れが、彼らを発見し、迎え撃った。とはいえ数はあまり割かれておらず、銃を持つゴブリンも一体だけである。
敵の射撃が命中しなかったこともあって柵をあっさりと破壊し、ハンター達は中へとなだれ込む。
「最近は、面白ゴブリンが沢山で、楽しー、です」
八城雪(ka0146)はそう呟きながらルーサーンハンマーをゴブリンの一体へと振り下ろす。
「あっちこっちで、つえーゴブリンが湧いてる、です」
雪の視線の向こうには魔導銃を構えるゴブリンがいる。
(この前の、地面の中自在に動くゴブリンに比べりゃ、銃使うくれー、普通かもしんねー、です)
先日、雪は別の戦いにおいて地に潜るゴブリンと戦った。その時の敵に比べれば、今回の事態はまだ常識の範囲内と考えているようだ。
雪は近づくゴブリンを数体まとめて薙ぎ払い、真っ二つになった亜人達は揃って地に倒れる。
足の底からマテリアルを噴出させて戦う雪を飛び越し、ゴブリンへと距離をつめたヒースクリフ(ka1686)。そのまま超重練成により巨大化した試作光斬刀「MURASAMEブレイド」で敵を粉砕した。ゴブリン達はあまりの光景に戸惑う。
「強力な武器を手にしたからといって、あまり調子に乗られても困りますネー」
クロードの右手の旋棍「光輝燦然」、左手の烈光旋棍によるワンツー攻撃が宙に白い光の軌跡を残し、ゴブリンへと襲い掛かる。
「相手が剣でも銃でも戦い様はありマス。東方武術の真髄、その身で味わってくだサイ!」
エトファリカ連邦国の武家で生まれ育った彼女だが、その口調と出で立ちからはまったくそんな雰囲気は感じられない。
しかしその口調とは裏腹に、繰り出される打撃は的確であり、みぞおちを打たれたゴブリンは腹を押さえ、悶絶しながら大地に突っ伏した。
だがその時、快進撃を続ける彼らに亜人の魔導銃が火を吹いた。
狙われた雪の防刃グローブに穴が開き、とたんに激痛が彼女を襲う。しかしその痛みにも負けず、彼女は武器をふるって別のゴブリンを叩き伏せた。
馬上で戦槍「ボロフグイ」を操り、目の前のゴブリンを刺し貫くフラメディア・イリジア(ka2604)。その視線は先ほど射撃を行った遠くのゴブリンへと向けられている。
「さて、銃を使うとなるとゴブリンとはいえチィと厄介なものじゃのう? じゃが、このまま逃げ帰るわけにもいかぬゆえ、ことごとく打ち倒してやろうぞ!」
ゴブリン達は多少の手傷をハンター達に負わせるものの、実力の差は明らかで瞬く間に数を減らしていく。
もう一度彼らへと銃口を向けるゴブリン。今度の狙いはフラメディアだ。しかし、それよりも早く別の銃声が戦場に響いた。
「お前達の銃と俺の銃、どちらが強いかな?」
台詞の主は黄金拳銃を手にしたヒースクリフだった。彼の銃弾は見事に亜人の心臓を撃ち抜いていた。ゴブリンはもう一度トリガーに指をかけることは叶わず、そのまま地面へと崩れ落ちた。
●
デルギンは焦れていた。別働隊からの報告が来ない。そして、現在主力がいるこちらの戦況も芳しくない。
デルギンの目の前で、すでにエヴァンスとミリアが柵を破壊し始めている。剣を持ったゴブリンが彼らに向かっていっているが、もはや、正面が突破されるのは時間の問題だ。デルギンは銃による一斉射撃を行おうとするも、ゴブリン達は弾切れによるリロードに時間を取られ、それを果たせない。
やむを得ず、自分を含め、銃を持つゴブリンを下げる指示を出そうとするデルギン。
そこに青白い雲が一瞬広がり、彼を含む亜人の群れを包み込んだ。
「眠れ指揮官のゴブリンよ。疲れたであろぅ? 目覚めと共にそなたに訪れるのは絶望じゃがのぅ。今はゆっくりとおやすみ」
ふらり……とよろけたデルギン。デルギンの側で次々と倒れゆく同族達の姿が彼の閉じ行く視界に入る。周囲のゴブリン達と共に、夢の世界へと誘われるところであったその時、デルギンの瞳にヴィルマが映った。水色の髪のニンゲンが自分のことをじっと見つめている……。
(こ、こやつ……ワシを生け捕りにするつもりか……!?)
生け捕りになったゴブリンがどうなるか、それは子供の亜人ですら分かることである。おそらくただ戦場で死ぬよりも酷い運命が待っていよう。とてつもない恐怖がデルギンを襲った。しかし、それは同時に激しい敵愾心となる。
(やらせん! やらせんぞ……!)
デルギンは目をカっと開いて睡魔に耐えた。足を踏みしめて崩れ落ちるのを防ぎ、お返しとばかりにヴィルマへと銃口を向けて即座にトリガーを引く。デルギンの魔導銃がたちまち火を吹き、ヴィルマへと襲い掛かった。鵤の防御障壁が光のバリアーを張るも、その衝撃はすさまじく、ヴィルマはよろける。
そこに剣を持ったゴブリンの群れが押し寄せようとするが、さすがにそれはジュンと朱殷によって防がれた。鵤もデルタレイを駆使し、近づくゴブリン達を仕留めていく。
その間にデルギンは周囲で倒れたゴブリン達を蹴り飛ばし、彼らを叩き起こす。
「聞け! お前達に策を授ける!」
●
ハンター達は全員が村への侵入に成功した。ゴブリン達は散発的に襲い掛かってきたものの、魔導銃の銃声が先ほどから鳴っていないことに彼らは気付く。
いつしか、剣や槍を持ったゴブリン達の姿も見なくなった。自分達が切り伏せてきたゴブリンの数は、想定していたそれよりも明らかに少ない。
魔導短伝話で連絡を取り合い、ハンター達はお互いの状況を確認し、無事を伝えあう。
村人がまだ残っている可能性を考えていたフラメディアは馬を降り、警戒しながらも一軒の空き家を覗きこんだ。途端、薄暗い中から銃声が響き、フラメディアを襲う。彼女は素早く身を隠した。中から聞こえるのはゴブリンの息遣いだ。フラメディアも一旦深呼吸を行う。
やがて意を決すると、フラメディアは先ほどの発砲により位置の分かった亜人へと踊りかかった。ゴブリンはもう一度トリガーを引こうとするが、彼女の槍はそれを許さず、ゴブリンを串刺しにする。
別の空き家を通りかかったハンター達を、今度は剣を持ったゴブリンが襲い掛かる。しかし、ハンター達はそれを見事に捌き、叩き伏せた。地に倒れたのは合計二体のゴブリン。どうやら、ゴブリン達は村の小屋に少人数でそれぞれ潜んでいるらしい。
ハンター達はしらみつぶしに小屋の探索と掃討を行うことを余儀なくされた。
時間はかかったものの、ハンター達は村の内部を隅々まで調べ、潜んでいたゴブリンを全て捕え、あるいは切り伏せた。
しかし、ここで指揮を取っていたあのゴブリンの姿はどこにもなかった……。
●
「やれ早う吐け、私は早う帰って酒でも呷りたいのだ」
五体満足で捕まったゴブリンを前に、朱殷はそう口にする。捕えたゴブリン達の中に、少しだけ人語を解するものがいたのである。
「小狡いならば、分かるだろう、どうすれば数刻数秒、自分が生き長らえられるか」
朱殷の言葉が一言一句理解できたわけではないが、自分達の立場が分からないほどゴブリンは愚かではなかった。ゴブリンは自分が分かることを述べ始める。たどたどしく人語で喋る亜人から、ハンター達が聞き出せたのは以下のことであった。
――魔導銃はハンター達から奪ったものに過ぎないこと。
――銃は最初誰にも使えなかったが、デルギン(彼らを指揮していたゴブリンの名である)がある日突然「使い方が分かった」と言い、実際その通りだったこと。また、その日を境にデルギンは、他のゴブリン達が理解できないことを口にすることが多くなったらしい。
――デルギンに従い、ゴブリン達は銃を扱おうとしたが、撃てる者と撃てない者がいたとのこと。
「急に出来るよーにって、それ、オレたちが覚醒すんのと、似てねー、です?」
雪は仲間を振り向き、呟いた。突拍子もない話のようではあったが、否定する材料はなく、ハンター達は厳しい顔を崩さない。覚醒とは違うかもしれないが、一部のゴブリンに何かしらの変化が起きているのは間違いなさそうだ。
己が知っていることを全て喋った後、ゴブリンはぽつりと呟いた。
「デルギン、オシエテくれたサクセン。ウマクイカナカッタ……ソウイエバ、デルギン、ドコイッタ?」
ハンター達は顔を見合わせる。デルギンのサクセンとは、おそらくばらばらに小屋の中に隠れて待ち伏せと奇襲を行ったことであろう。そうやってハンター達を足止めし、デルギンはきっとその間に自分だけ逃げてしまったに違いない。作戦の本来の意図通りに……。
回収できた魔導銃も五本のみ。魔導銃が使える者の内の何体かは、デルギンと共に脱出した可能性が高い。
●
尋問と事後処理を終えると、ハンター達はハンターズソサエティへの連絡の為に帰途につく。
指揮官を逃したのは残念だが、堅固に守られていた村を取り返すことが出来たのだ。戦果としては十分だと言ってよいだろう。
「あー当面もうFPSは良いや時代はRTSだわ」
降り注ぐ銃弾が身にしみたのか、リアルブルー出身の者にしか理解できない軽口を叩くジュン。マテリアルヒーリングなどによって自己回復できるものはすでに自分の傷を癒しているが、そうで無い者は銃創を含んだ傷が各所に残っている。ジュンもその内の一人であり、痛みに顔をしかめていた。
そんな中、クロードがぽつりと呟く。
「それにしても、最近はこの辺りのゴブリンが騒がしいですネ? 彼らの後ろに何者かがいるのカモ? 十三魔トカ」
言葉と共に首を傾げるクロード。彼女の言う通り、糸を引いている何者かがいてもおかしくない。それほど、最近のゴブリン達の動きは奇怪きわまっていた。
「深く考えるのは苦手なんですけどネー。ワタシは目の前の敵を打ち倒すだけデス!」
しかしクロードはいつものごとく、すぐにプラス思考に切り替え、笑顔でトンファーを振り上げた。
依頼結果
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作戦会議室 ミリア・ラスティソード(ka1287) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/06/17 13:20:47 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/14 17:26:14 |