死より深い絶望

マスター:香月丈流

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/06/20 07:30
完成日
2015/06/29 00:34

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 誰でも一度くらいは、『死んでしまった人に会いたい』と思った事がないだろうか?
 頭で分かっていても諦められなかったり、叶わないと知りながらも願ってみたり。理屈に合わない行動を起こす時もあるが、ある意味それが『生きる』という事なのかもしれない。
 だが、もしも本当に『死者と再会できる』としたら……?

「あぁ、お兄様……!」
「お爺ちゃん、また会えたね♪」
「お母様……今日もお美しい姿で嬉しいです」
 森の奥にある、廃墟と化した屋敷。その各部屋で、死者と再会した人々が歓喜の声を上げていた。正確に言えば、『生前の姿を模した幻影』ではあるが。
 外見は、故人に瓜二つ。手で触れる事は出来ないが、服も着ているし仕草も同じ。この幻影の『声』を聞いた者は誰も居ないが、表情も人間と同じように変わるらしい。
 しかし、体全体が若干透けているし、炎のように揺らいで見える。加えて、鎖骨と鎖骨の間……『天突』と呼ばれるツボの位置に、黒い宝玉が埋め込まれていた。
 それでも……二度と会えないと思っていた者が目の前に現れるのは、嬉しい事である。幻影自体は数分で消えてしまうが、個人に会えるという噂は少しずつ広まり、廃墟を訪れる人数は日に日に増していた。
「兄上、今日もお元気そうですね。っと……死んだ者に『元気』と言うのは、少々変でしょうか」
 返事が無い事を知りながらも、少女は幻影に語り掛ける。彼女は一週間前に兄を亡くしてから、毎日のようにココに来ていた。まるで、『兄が死んだ』という現実から目を背けるように。
「今日も……兄上は何も言ってくれないのですね。私の名前を、呼んで下さらないのですね……」
 少女が悲しそうな表情を浮べても、兄の幻影は何も言ってくれない。残酷とも言える沈黙に耐えられなくなったのか、彼女の瞳から涙が溢れ出した。
 俯いて涙を拭い、嗚咽を漏らす少女。その姿を目の当たりにし、幻影がゆっくりと歩み寄っていく。
 その手に、鈍く光る短剣を握って。
「え……?」
 少女が小さく声を上げた時、彼女の腹部には短剣が深々と刺さっていた。ワケも分からず顔を上げた先で、幻影が歪んだ笑みを浮かべている。
「あに、う……」
 問い掛ける言葉を遮るように、幻影の全身が霧状に変化。そのまま少女を飲み込み……体中のマテリアルを吸い尽くした。命ごと、全て。
 残ったのは、物言わぬ姿となった遺体のみ。
 霧状になっていた幻影は再び人の姿となり、短剣の柄を握って遺体を持ち上げた。静かに窓を開け、森の奥に向かって死体を無造作に投げ放つ。恐らく、証拠隠滅のつもりなのだろう。
 もしかしたら……この幻影が『彼女』の姿を模す日も、そう遠くないかもしれない。
 それから数日後、近隣で行方不明者の数が急激に増え始めた。その全員が『廃墟に出入りの多い者』だった事から、周囲の調査を実施。その結果、屋敷近辺のマテリアル量が不自然に低い事が発覚した。

リプレイ本文


 『死者と会える館』。
 そんな噂が流れ、多くの人が再会を果たした。
 全てが、歪虚の策略とも知らずに。
 死者を『餌』に人を集め、頃合いを見てマテリアルごと命を喰らう……それが、歪虚の考えた筋書き。
 悲劇に終止符を打つため、6人の覚醒者が現場に急行。『死者が現れる』という6つの部屋に同時に攻め入り、歪虚を逃がす事なく殲滅する事となった。
 だが……今回の敵を倒すという事は『自身が良く知る死者と戦う』という事でもある。それを理解した上で、6人は静かに部屋の扉を開けた。


 屋敷の2階、東側の部屋に足を踏み入れた葛城・遊奈(ka4543)は、敵の出現に備えて周囲を見渡した。
 一見すると可憐な女性だが……彼女には過去の記憶が無い。リアルブルー出身なのは覚えているが、転送時期も原因も思い出せない。
 今回の敵は『入室した者が会いたいと思っている故人』の姿となって出現する。記憶の無い彼女は、誰が出てくるか分からないし、ハンターとしての経験も浅い。戦う事への不安と恐怖が、顔を覗かせていた。
(よしっ、今は集中……っ!)
 自分に言い聞かせるように、心の中で繰り返す。そんな遊奈を嘲笑うかのように、『死者の幻影』が現れ始めた。
 切れ長の青い瞳に、黒い髪。身長も年齢も、遊奈より若干上の男性。胸に『黒い宝玉』が埋め込まれているのは、亡霊系の歪虚が姿を借りているからだろう。
 その姿を見た瞬間、彼女の脳裏に電流が奔った。
 微かに覚えている、リアルブルーの景色。その中で……『彼』と手を繋いでいる。その手が離れる瞬間……。
「あなた、は……誰、なの……?」
 思い出せない。
 思い出そうとしても、記憶がどんどん遠くに離れていく。
 戸惑う遊奈に、『彼』の幻影は優しく微笑む。ゆっくりと歩み寄り……手にしている短剣を、突き出した。
 迫り来る切先を、無意識のうちに避ける遊奈。直撃は避けたが刀身が頬を裂き、黒い長髪が数本切られて宙に舞った。
 遊奈は床を転がって幻影の脇を抜け、そこから部屋の端に向かって大きく跳躍。体勢を立て直しながら、デリンジャーを構えた。
 銃口からマテリアルが放たれ、光と化して宙を奔る。閃光が敵の腕を掠め、幻影の一部を削り取った。
 ダメージを気にする事なく、距離を詰めてくる歪虚。短剣が奔るたび、遊奈の肌に赤い線が描かれていく。
 斬撃を紙一重で避けながら、彼女は銃撃を放った。狙いは、敵の手元。弾丸が短剣を直撃し、歪虚の手から零れ落ちる。
 間髪入れず、遊奈は至近距離まで接近し、宝玉に銃口を突き付けた。マテリアルを込めたゼロ距離射撃。光が溢れ出し、銃撃音と炸裂音が重なる中、宝玉が粉々に砕け散った。
 核を失い、『彼』の姿が徐々に消えていく。触れられないと分かっていながらも、遊奈は手を伸ばしていた。
「ごめんなさい……いつか……いつかちゃんと、思い出すから。それまで……待ってて?」
 彼女の言葉が終わるのと同時に、歪虚も完全に消滅。1人になった室内で、遊奈は力無く座り込んだ。終わった事への安堵感と共に、喪失感が込み上げる。ゆっくりと、彼女は大きく溜息を吐いた。
「大丈夫。きっと、私は大丈夫だから……」
 呟いた言葉は、静かな室内に消えていった。


(故人を象るとは……死者への愚弄だな。滅ぼしてやる……出現した敵の全てを)
 マウローゼ・ツヴァイ(ka2489)の静かな闘志で、室内の空気が張り詰める。端正な顔は無表情に近く、感情を表に出す様子は無い。
 その表情は、敵が現れても変わる事が無かった。
 歪虚が模した姿は……細身のエルフ。歪虚の証である『黒い宝玉』を除けば、記憶の中の人物にそっくりだ。
(なるほど……死者を真似ると聞いていたが、かつて森に居た時の仲間だ)
 エルフは森に住む種族だが、森を離れる者も少なくない。マウローゼも、その1人である。かつての仲間が現れたという事は……彼女は、心のどこかで再会を望んでいたのだろう。
 だが……眼前に居るのが『敵』である以上、マウローゼに迷いや躊躇いは無い。
「そんなもので、私の弾が鈍ると思ったか? 愚か者が……」
 銀色の瞳が鋭さを増す。次いで、彼女は素早く拳銃を構え、胸の宝玉を狙って引金を引いた。
 銃声が室内に響き、銃弾が宙を奔る。歪虚は身を翻して攻撃を避け、マウローゼに突撃。右手に短剣を生み出し、鋭く突き出した。
 マウローゼは刺突を避けるように、床を蹴って側面に跳ぶ。着地と同時に腕を狙い、銃撃を放った。
 次の瞬間……歪虚は弾道を見切って短剣を薙ぎ、銃弾を払い落とした。そのまま半回転し、マウローゼに斬り掛かる。
 反応が一瞬遅れ、敵の斬撃が直撃。脇腹を斬り裂かれ、鮮血が溢れ出した。
 傷の痛みを顔に出さず、マウローゼは尚も銃撃を放つ。が……その全てが叩き落とされ、床や壁に穴を穿っていく。
 拳銃に残った弾は、残り1発。彼女は歪虚の頭部を狙い、最後の弾丸を放った。
 狙いは完璧だったが……だからこそ、弾道は読み易い。歪虚は短剣を振り下ろし、銃撃を叩き落とした。
 直後。床に当った弾が跳ね返り、宝玉を直撃。最初に銃弾を払い落とされた時から、マウローゼは『跳弾』を狙って銃撃を繰り返していたのだ。
 間髪入れず、マウローゼは拳銃を手放して魔導銃に持ち替えた。素早く引金を引き、止めの銃撃を発射。マテリアルを込めた弾丸が、宝玉を粉々に打ち砕いた。
 と同時に、歪虚の姿が徐々に消えていく。
(やれやれ……面倒な歪虚だったな)
 消滅する歪虚を一瞥し、マウローゼは部屋を出て行った。


「まぁ……そうなるよな……」
 誰に聞かせるワケでもなく、独り呟くグライブ・エルケイル(ka1080)。1階北側の個室に現れたのは……彼の両親だった。
 グライブは幼い頃、歪虚に親を殺されている。親を失い、故郷を奪われ、彼の人生は大きく変わった。復讐に身を焦がし、歪虚を倒す兵器を作ろうとした事もあった。
 だが……作製は失敗。その代償として片目の視力を失い、顔に大きな傷が残った。
 幻影の両親が微笑みながら、グライブに歩み寄る。手にした短剣を強く握り、素早く突き出した。
 咄嗟に、グライブはマテリアルを『失明した目』に集中。虹彩に魔法陣が浮かび、光の防壁が生み出された。それが短剣を受け止め、彼の身を護る。役目を終えた防壁は、ガラスのように割れて空気に溶けていった。
「今でも夢に見る。燃えた故郷と……動かない母さん達の姿を、ただずっと眺めてる夢だ」
 呟くグライブの瞳は、両親を見据えている。だが……彼は歪虚に話し掛けているワケではない。あくまでも、独白である。
「なんでだろうな……あの日の事を忘れたことなんてないのに、夢だとはっきり見てるはずなのに……もう、父さん達の顔をほとんど覚えてないんだ」
 彼の言葉に耳を傾ける事なく、両親の幻影が短剣を振り回す。それを避けず、グライブは防御を固めた。
「二人が死んでから随分経った。もう『あの頃』の父さんよりもデカくなってしまった……」
 今のグライブは、190cmを超える長身で筋肉質。鍛え抜かれた肉体に、歪虚の双剣が赤い線を描いていく。
「俺にも、守る仲間ができたんだ。家族じゃないが……家族みたいに大切な人達だ」
 呟きながら、グライブは『彼ら』の事を思った。友であり、同僚であり、古馴染みであり……大切な人達を。
「もう故郷は無いし、まだ二人の墓も作ってやれてないけど……いつか、あの場所に帰るから」
 脳裏に浮かぶ、故郷の光景。感傷に浸る暇もなく、歪虚の斬撃は次々に降り注いでいる。防御体勢のまま、グライブは魔導計算機にマテリアルを込めた。
「だから……安心してくれ」
 言葉と共に、変換されたエネルギーが光の剣となって具現化。グライブはそれを手に取り、連続で薙いだ。
 閃光が宝玉を捉え、一撃で斬り散らす。消滅していく両親の姿を、彼は静かに見送った。


 誰も居ない部屋の中で、アリス・ナイトレイ(ka0202)は想いを巡らせていた。
(愛する人をもう一度見れるのなら、幻でも縋ってしまうものですか。いや……幻ではなく、魔法や精霊の類だと信じたいのかもしれませんね……)
 彼女にも、会いたいと願う故人は居る。転移前、リアルブルーで亡くなった祖父……アリスに優しく、可愛がって貰った事は今でも覚えている。
 その記憶を読み取ったかの如く、1人の老人が姿を現した。
「出来れば……こんな形で姿を見たくはなかったですね」
 アリスの、宝石のような青い瞳が悲しみに染まる。この部屋に出現したという事は、眼前の祖父は歪虚。胸に宝玉が埋め込まれているし、短剣を携えている。
 戦って倒す以外、解決の道は無い。
「あなたが祖父の姿をしていても……手加減はしません」
 アリスはハンターとして、『心の強さ』も兼ね備えている。祖父と敵対する事は覚悟していた。あとは……歪虚を倒すだけ、である。
 彼女の決意に呼応するように、マテリアルが炎と矢となって具現化。燃え盛る一矢が敵に向かって放たれる。
 歪虚はそれを避ける事なく、逆に突撃。火矢が肩を貫いても気にせず、短剣を振り下ろした。
 予想外の攻撃に、アリスの反応が一瞬遅れる。斬撃が太腿を斬り裂き、鮮血が溢れた。
 痛みに顔を歪めながらも、アリスは横に跳んで敵から離れる。一定の距離を保ちつつ、再び火矢を射ち出した。
 歪虚とは言え……祖父の姿をした者が、自分の攻撃で傷付いている。自分を、攻撃してくる。歪虚だと分かっていても、攻撃の手が弛みそうになる。
 雑念を振り払うように、アリスは炎の矢を放った。何度も、何度も……『敵』を倒すために。
 8本目の矢が敵を貫通した直後、ダメージが限界に達したのか、歪虚の全身が霧のように飛び散る。乾いた音と共に、宝玉は床に落下。四散した幻影は、ゆっくりと消えていった。
 床を転がる宝玉に向かって、アリスはデリンジャーを発射。まるでガラスが割れるように、歪虚の核は粉々に砕け散った。
 軽く深呼吸し、アリスは天を仰ぐ。
「お爺ちゃん……私は、大丈夫だから。安心してね」
 呟いた言葉は、『本物の祖父』へのメッセージ。想いを込めて、彼女は笑顔を贈った。


 屋敷内に悲しみや怒りが入り混じる中、1階北西の個室では歓喜の声が上がっていた。
「ママだ! 写真じゃなくて、本当のママだ!」
 満面の笑みを浮かべているのは、黒髪のツインテール少女……ヒヨス・アマミヤ(ka1403)。彼女は幼い頃に両親を亡くし、辛い幼少期を過ごしてきた。幻影でも、母親と再会できたのは嬉しいのだろう。
 しかし……彼女の表情が陰るまで、そう長い時間は掛からなかった。
「ママ! なんでヒヨの名前呼んでくれないの?」
 ヒヨスの母……茶髪金眼の女性は、優しく微笑むだけ。言葉は発せず、表情も変わらず。言葉を返す代わりに……幻影は短剣を振り回した。
「なんで攻撃してくるの? 叔母さまたちが言うように……ヒヨ生まれてこなかったら良かった!?」
 攻撃を避けながら悲痛な叫びを漏らすが、返事は無い。短剣がヒヨスの肌を裂き、赤い線が何本も刻まれていく。
 戸惑いと混乱が加速する中、彼女は依頼の事を思い出した。死者の姿を使い、人の命を奪う歪虚の事を。
 反撃するように、ヒヨスはマテリアルで水の球を作り出し、敵に向かって放った。水球が直撃し、水飛沫が派手に舞い散る。
「あのね……ヒヨ新しい苗字もらったよ!」
 言葉と共に、涙が零れ落ちた。それを拭う暇も無く、歪虚が斬撃を繰り出す。
「今ね、アマミヤって苗字なんだよ!」
 『アマミヤ』という苗字は、ヒヨスの大切な女性の苗字でもある。彼女は転移中にヒヨスを助け……代わりに命を落とした。その日から、ヒヨスは『笑顔で生きる事』を誓ったのだ。
「お友達、イッパイできたよ!」
 説明しながら、ヒヨスは激しい風を生みだす。渦巻く大気が鋭い刃と化し、歪虚を斬り裂いた。
「ヒヨは毎日笑顔だよ!」
 風と水が入り乱れ、斬撃が宙を奔る。長い攻防の末、歪虚は音も無く崩れ去った。核も、幻影も、何1つ残さずに。
 1人残されたヒヨスは、『胸に穴が空いたような感覚』に陥っていた。
 辛い経験が多かった彼女は、徐々に『悲しみ』や『恐怖』といった感情を抱かなくなっていた。だから……戦闘中に泣いた事も、寂しさや悲しさが原因だと分かっていない。
「ママの贈り物……かな? 帰ったらメモっておかねば」
 『新しい感情を知った』と思い込み、言葉を漏らすヒヨス。その表情は、最後まで笑顔だった。


「誰が現れるかと思ってたが……やはりアンタだったか、爺さん」
 地下倉庫に響く、榊 兵庫(ka0010)の声。彼が視線を向ける先には……亡き祖父が立っていた。
 肉親であり、武術の師でもあった人物。60歳前後で中肉中背だが、容姿は兵庫に似ている。その手に槍が握られているのを確認し、兵庫はほんの少しだけ微笑んだ。
「確か、まともな立ち会いで勝利した事なかったな。亡霊とは言え、爺さんと戦えるのは嬉しいぜ。この勝負、勝たせて貰う」
 祖父は晩年、病に臥せていたため、手合せ出来る状態ではなかった。叶わぬ夢だと思っていた『師匠超え』を果たすため、兵庫は槍を構えた。
 得物も流派も同じ。互いの『手の内』は、良く知っている。間合を測り、仕掛けるタイミングを探す2人。その距離が徐々に近付き……射程に入った瞬間、一気に距離を詰めた。
 槍を巧みに操り、突き、打ち、斬り、払い、様々な技を繰り出す。その全てが祖父の教えた技であり、簡単には通じない。
 それどころか、兵庫の方が押されている。老人であっても、祖父は武術の師匠。技のキレや練度は、兵庫より一枚上手である。
 体勢を立て直すため、兵庫は大きく後方に跳び退いた。
「久しぶりに稽古をつけて貰っているみたいで楽しかったぜ。だが……長引かせる訳にもいかないからな。『こちらの世界』で得た力も使わせて貰う」
 不敵な笑みを浮かべ、腰を落とす兵庫。高まる闘志に呼応し、周囲の空気が急速に張り詰めていく。危険を察知したのか、歪虚は壁を背にして防御を固めた。
 ほぼ同時に、兵庫が大きく踏み込んで室内を駆ける。槍の間合いの『外』から畳み掛けるような、高速移動からの刺突。『榊兵庫』という1本の槍と化し、渾身の一撃を叩き込んだ。
 圧倒的な貫通力が歪虚の防御を強引にこじ開け、槍先が宝玉に突き刺さる。衝撃が壁にも伝わり、大小様々な亀裂が走った。
「俺の勝ちだよな、爺さん」
 問い掛ける兵庫に対し、返事は無い。その代わり……宝玉が粉々に砕け、祖父の姿が徐々に消えていく。
「あんたが鍛えてくれた技は、俺の中で確かに生きている。だから心配せず、再会がより遠くなる事を祈っておいてくれ」
 ようやく、師との立ち会いに勝利した兵庫。最後の一言は、弟子ではなく『孫』としての言葉だった。

依頼結果

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MVP一覧


  • アリス・ナイトレイka0202
  • イージスの光
    グライブ・エルケイルka1080

重体一覧

参加者一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫(ka0010
    人間(蒼)|26才|男性|闘狩人

  • アリス・ナイトレイ(ka0202
    人間(蒼)|12才|女性|魔術師
  • イージスの光
    グライブ・エルケイル(ka1080
    人間(紅)|28才|男性|機導師
  • 爛漫少女
    ヒヨス・アマミヤ(ka1403
    人間(蒼)|16才|女性|魔術師

  • マウローゼ・ツヴァイ(ka2489
    エルフ|25才|女性|猟撃士
  • 失われた『過去』との邂逅
    葛城・遊奈(ka4543
    人間(蒼)|17才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
榊 兵庫(ka0010
人間(リアルブルー)|26才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/06/19 23:48:29
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/06/18 18:08:07