害に気づいてください

マスター:鳴海惣流

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/06/21 19:00
完成日
2015/06/23 21:03

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●若者たちの焦り

 出生率が減少の一途を辿る、とある田舎の村。生まれ故郷を愛する若者たちが、このままでは大変だと立ち上がる。
 出生率はもちろん、婚姻率まで下がっている。若者が職を求めては村を出て、戻ってこないのが大きな原因だ。そのため、地元へ残った者たちの出会いは少ない。
 村興しを成功させるには、どうすればいいか。話し合うために、村の青年団団長の家に有志が集まった。
「俺は、村人を増やすのが一番だと思う」
 団長の言葉に、集まってる他四名が頷く。全員が男だ。
「人を集めるなら、村の名前を知ってもらうために、広くアピールしたらどうだろうか。特産品とか」
 場に出た提案に、反対意見を述べる者は誰もいない。
「しかし、特産品と言っても、この村に外へアピールできるものは何もないぞ」
 畑があれば、家畜もいる。田舎だけに景色の良さもある。だからといって、売りにはならない。他の村にもあるからだ。
 団長は悩んだ。
「ふむ……そうだ。ないなら、いっそ名物を作ってしまおう。例えば、美味しい料理とかだな」
 三十代半ばの団長が言うと、年齢の近い団員たちが「それはいい」と賛成した。
「名物料理を考えるなら、鍋なんてどうだろう」
「名案だな。村の野菜が使える。上手く、この村だけのオリジナリティ溢れる鍋を完成させられれば、成功するかもしれん」
 団長たちが盛り上がる中、ここで青年団最年少の男性ガイが口を開いた。
「特別な鍋にしたいなら、幻獣に知恵を借りてみる?」
「幻獣……!?」
 驚愕する団長が目を見開く。にこやかなのはガイひとりだけだ。
 団長も含めた他の面々は、ひたすら愕然とする。
「うん。実はこの間、見かけたんだ。話しかけたら、幻獣だって自分で言ってたよ」
「そ、そうなのか。会話に応じてフレンドリーな幻獣か。とても信じられんな。ちなみに、どんな幻獣だったんだ?」
 団長が尋ねた。
「ええとね、身長は僕より低いけど、なんだかガッチリしてたよ。それとね……」
 ガイが見かけた幻獣とやらの説明をするたびに、団長たちの顔が曇っていく。
 そのうちに、団員のひとりが恐る恐るといった感じで口を開いた。
「それってもしかして、幻獣じゃなくてゴブリンじゃないのか? 敵対的亜人の」
「へえ……ゴブリンっていう幻獣なんだ。それじゃ、僕、早速探してくるね」
「ま、待て! 落ち着け……って、全力ダッシュで家を飛び出すんじゃないっ!」
 団長の必死の叫びは届かない。
 恐れ知らずの青年ガイは、明らかに勘違いをしている。
「お、おい、団長。間違いなくガイの奴、ゴブリンを幻獣だと思い込んでるぞ! 相手がゴブリンなら、知恵がどうこうって話にはならないぞ」
「わかってる。最初にガイへ危害を加えなかったのは、騙して何かを奪い取ろうとでも考えたんだろ。もしくはまだ、俺たち人間に居場所を特定されたくなかったか。どちらにせよ、このままではガイが危険だ」
「ああ。あんな奴でも、ガイはこの村の一員。見捨てるわけにはいかない」
「こうなれば、ハンターにお願いしよう。田舎の村とはいえ、大きな問題があれば領主様が軍を派遣してくださる。大規模な群れはいないはずだ! ガイが行きそうで、ゴブリンがいそうな場所を先回りして調べる。存在を確認でき次第、ハンターに退治してもらうんだ。ゴブリンを見つけられなければ、さすがのガイも諦めるだろう」
「そ、そうだな。それが一番だ。万が一、知恵を借りられても、ゴブリン発案の鍋なんぞ食えたもんじゃないのは明らかだしな」
「よし。ガイが幻獣だと勘違いしてるゴブリンを見つける前に、なんとかするぞ」
 こうして名産品の鍋どころでなくなった団長たちは、大急ぎで依頼を出した。

●届けられた依頼

 ハンターオフィスにて、担当者が依頼について説明する。
「今回の依頼は、都市部から離れた田舎の村からのものです。ガイと呼ばれる若者が、幻獣と勘違いしているゴブリンに、無謀にも丸腰で接触しようとしているそうです。ガイという人物は普通の民間人で、特に戦闘経験はないそうです。所在を確認した村の青年団の団長さんによれば、まだゴブリンとは遭遇してないみたいですね」
 ガイがゴブリンと遭遇する前に、ゴブリンを退治する。簡単に説明すれば、それだけの内容だと担当者は言った。
「ガイさんが目指すのは、村のやや北の沼地。そこから東にある小高い丘。さらには沼地から西にある平地だそうです。団長さんによれば、残った三か所のうち、最初に沼地を目指すみたいです。ただ、その後は東の小高い丘と西の平地のうち、どちらへ行くのかは不明だそうです。ただ、ガイさんは高いところが好きらしいです。なんとやらと煙は……というやつでしょうか。とにかく、依頼の目的はゴブリン退治です。沼地では存在を確認できなかったみたいですが、西の平地には一匹のゴブリンが存在しているらしいです。単独らしく、今回の件があるまでは、村人たちもゴブリンが住みついているのは知らなかったみたいです。一方の小高い丘には、ゴブリンはいませんでした。ですが、こちらには敵対的亜人のコボルドが六匹ほどいたみたいです」
 長い説明を終えたあとで、担当者がふーっと息を吐く。
「ゴブリンを退治できても、ガイさんが亡くなっていると依頼は失敗になります。ちなみにガイさんは丸腰なのでゴブリンはもちろん、コボルドにも絶対に勝てないそうです。依頼を引き受けるハンターの方々は、その点も考慮してくださいね。それでは、お気をつけて」

リプレイ本文

●村へ到着

 一行を出迎えたのは、青年団の団長だった。何度も頭を下げながら、困り顔で状況を説明する。
 聞いていたディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)が小首を傾げる。
「幻獣とゴブリンを勘違いするやつがあるのか? まったく困ったものもいるのだな」
 恐縮する団長が、その点についても教えてくれる。
「ガイの勘違いです。ゴブリンが適当に叫んでいたのを、幻獣と聞き間違えたみたいで……昔から、思い込みの強い奴でしたが、ここまでとは……」
 流暢に人間の言葉を話す珍しいタイプのゴブリンではなく、思い込みの激しいガイが勝手な解釈を続けた結果、ここまでの騒ぎになったみたいだった。
「なるほど。とはいえ彼の安全は確保されねばならんな。ここは大王たるボクに任せておくとよいぞ」
 ディアドラが小さな胸を張るすぐ側で、ガーレッド・ロアー(ka4994)が軽く頷いた。
「ゴブリンを幻獣と信じる青年、か。様々な世界を渡り歩いてきた俺だが、そんな奴は初めてだ。いっその事、その青年を名物にすればいい……いや冗談だ。まあのんきな事は言ってられないな。一刻も早く見つけ出さねぇと」
 続いて、Hollow(ka4450)も口を開く。
「……ゴブリンの危険性も知らないとは。なんというか、のどかと言ってしまえばいいのでしょうか? ともかく徒に命が失われるのを黙ってみている訳にもいきません。危険な亜人は予め退治しておく事としましょう」
 団長の家で作戦会議を行う。全員揃ってではなく、担当を決めた上で分散して活動することに決まった。
「冒険者の物語の基本はゴブリン退治……銃で退治するのは物凄くシュールですが」
 クオン・サガラ(ka0018)がゴブリン退治を担当。ディアドラも同行する。
「僕はガイ君の説得に向かいます」
 手を上げて、そう言ったのはアルファス(ka3312)だ。
「では、私は小高い丘へ先回りしておきましょう」
 ミネット・ベアール(ka3282)が、小高い丘を目指す。Hollowとガーレッドも同行する。
 クオンとHollowが魔導短伝話を所持しているので、各チームの連絡役に決定する。
 アルファスはガイを説得できれば村へ戻る。青年団団長の家で、平地と丘に向かったチームの帰還を待つ。
 誰がどこを担当するか決まったところで、それぞれが村を出発する。

●ガイの説得

 村から馬を借りたアルファスが沼地に到着する。すでにガイの姿はない。すぐさま追いかける。
 予想どおり、小高い丘へ向かう道中でガイらしき人物を発見。青年団の団長から教えられた特徴とも一致する。
 魔獣装甲タイラントを活用するつもりだった。覚醒し、装甲に走ったラインが呼吸に合わせて鳴動する。
 ボロボロの外套を羽織り、細部を隠した。幻獣になりきって、ガイを説得するためだ。
 馬から降りた下りたアルファスが、警戒心なく道を歩くガイに話しかける。
「コンニチハ……キミガ、ゲンジュウヲ、サガシテイルヒトカイ?」
 驚くかと思ったが、青年ガイは屈託のない笑みを浮かべて頷いた。
 人外っぽくなるように、装甲から喋る声と発生を合わせる。
「ボクハゲンジュウノ、アルファス。ケモノビトトカ、ニンゲンハヨブミタイダ」
 注意深い人間なら違和感に気づいたかもしれないが、単純な性格のガイはあっさりと信じた。
 心の中で安堵したアルファスは、自分の偽者が現れたらしいと、ガイに注意喚起する。
 地面に絵を描いて、敵対的亜人の存在や危険性を教える。決して近寄らないようにとも。
「キミハ、ボクラニアッテ……ナニカ、キキタカッタノカイ?」
 ひととおりの説明と警告を終えたところで、ガイに尋ねる。
「鍋を村の名産品にするから、作り方を教えてほしいんだ」
「ゲンジュウモ、ショクブツヤドウブツ、モリノメグミタベル。オイシイ」
 すでに事情を知っている幻獣に扮するアルファスは、家畜の骨で出汁をとった野菜のブイヨンの作り方を教える。

●平地のゴブリン戦

 戦馬に跨ったディアドラが平地へ続く道を疾走する。
 ディアドラに速度を合わせる形で、魔導バイクに乗ったクオンも一緒に平地へ向かう。
「治安の悪い時代ですからね。危険はなるべく排除しておきましょう」
 クオンの言葉に、ディアドラが頷く。
「うむ。今回の件がなくとも、亜人を放置しておけば、後々面倒になるだろうしな」
 平地にガイの姿はない。どうやら無事に先回りできたようだ。
 報告のあったゴブリンはしっかりと存在していた。隠れもせず、むしろ堂々と平地を闊歩している。
「いましたね。わたしは支援に回ります。ディアドラさん、ゴブリンに突撃してもらえますか?」
「任せるがよい!」
 威勢よく叫んだディアドラが、クオンの求めに応じて一直線にゴブリンを目指す。
 戦馬の足音でゴブリンが接近に気付く。
 不意をつくつもりもないディアドラは、雄叫びを上げながら突っ込む。
 盾で敵の攻撃に備えながら、馬上で騎士剣ローレル・ラインを構える。
 剣と棍棒が正面から激突し、派手な戦闘音を鳴らす。
 すぐさま馬から下りたディアドラが追撃をかけようとするも、ゴブリンは不利を察して後退しようとする。
「残念ながら、こちらは通行止めになります」
 魔導バイクを巧みに操り、クオンがゴブリンの逃げ道を塞ぐ。
 上手く回り込んだクオンが、両手に構えたアサルトライフルをぶっ放す。
「幾ら武装をしていてもこの火力ですから、あっさりと片付きそうですけど……後始末の方が大変そうですね」
 クールな態度で、アサルトライフルをゴブリンに命中させる。
 直撃とまではいかなかったが、大きく吹き飛ばすほどの威力を発揮する。
 ゴブリンが体勢を立て直す前に、ディアドラが迫る。
 慌てたゴブリンの一撃を盾で受け止めると同時に、チャージングからの薙ぎ払いでダメージを与える。
 苦悶の表情を浮かべるゴブリンが、ディアドラに背を向けて逃げようとした瞬間、足元にクオンの放ったアサルトライフルの一撃が着弾する。
 逃げられないと悟ったゴブリンは、向き直ると同時にヤケクソのような感じでディアドラへ挑みかかってきた。
「ボクの名は大王ディアドラ! この世界に光をもたらす者だ!」
 威力を高めるために、ゴブリンが手に持つ棍棒を高く振り上げた。そこに大きな隙が生まれる。
 逃すはずもなく、刺突一閃。薙ぎ払いでダメージを受けていた鎧部分を、突き出したローレル・ラインがゴブリンの肉体ごと貫いた。
 アサルトライフルを構えたままのクオンがとどめを刺す必要もなく、ゴブリンはディアドラの一撃で絶命した。
「害獣扱いされて狩られるゴブリンにも手を合せたい所ですが、人間の住むエリアで人間を襲ったら駄目ですよね」
 息絶えたゴブリンの躯を見下ろしながら、クオンは持ってきたスコップを手に取る。
「ガイさんが幻獣と勘違いしているゴブリンの遺体を見つけたら大変です。私が処理をしておきましょう」
「そうか。ボクはガイと合流しに行くぞ」
「わかりました。では、丘へ行った方々に連絡をしておきましょう。遺体処理を終えたら、私はひとりで帰還させてもらいます。バイクを見せたくないのですよ」

●小高い丘のコボルド戦

 ゴブリンの退治を終えたクオンとディアドラが別れる少し前、小高い丘でも戦闘が開始されていた。
 ミネット、Hollow、ガーレッドの三人が相対するのは、六匹のコボルドだ。
 村から直接丘を目指したので、道中でガイと鉢合わせしなかった。
 この場にも姿が見えないことから、予定通りに先回りできたのがわかる。
「ひとまずは危険要素の排除ですね。援護します!」
 ガイの安否を気にするのも大事だが、まずは目の前の敵への対処を優先する。
 張り上げたミネットの声に、ガーレッドとHollowの二人が反応する。
 先制攻撃を仕掛けるのはミネットだ。
 丘まで走らせてきた戦馬のユッケに跨ったまま、短弓のテムジンを構える。
 射程範囲内に敵を捉えるなり、引き絞りからのフォールシュートで矢の雨を降らせる。
 頭上からの攻撃にコボルドたちが慌てふためく中、乗用馬を走らせるガーレッドがそのうちの一匹に、振りかざしたヒートソードで攻撃を仕掛ける。
 すれ違いざまに胴体と首を離れ離れにさせたあと、馬から飛び降りる。
「気をつけろよ。一匹一匹は弱い奴等だが、集団でタコ殴りにしてくる危険な敵だ」
「わかっています。一匹たりとも逃しません」
 戦馬の機動力を駆使して、Hollowがコボルドたちの逃げ場を奪う。
 連携するミネットが制圧射撃で敵の動きを止めれば、Hollowが魔導拳銃ズィーベンで追撃をかける。
 二人のアシストを受けるガーレッドは、馬を安全なところへ逃がしてから、改めてコボルドの一匹と対峙する。
「てめぇら人間じゃねぇ。叩いてから斬ってやる!」
 ヒートソードによる連撃で、着実にコボルドを追い詰める。
 一方では手綱を握るHollowが、乗っている戦馬を駆使して複数のコボルドをかく乱する。
「よそ見をしないことを、おすすめします」
 淡々とした口調で警告すると同時に、デルタレイを発動させる。
 輝く三角形から伸びる光が、コボルドを撃ち倒す。
 ミネットは前衛で戦うガーレッドが数的不利に陥らないよう、コボルドの位置を確認しながら制圧射撃とフォールシュートを効果的に使用する。
「少しでも、ガーレッドさんが楽に戦えるといいのですが……」
「十分だ。今回は必殺技こそ使えねえが、これだけサポートしてもらえりゃ、普通に斬ってやれるぜ!」
 咆えたガーレッドが、ミネットの矢に足を射抜かれて身動きできないコボルドにとどめの一撃を放つ。
「さすがですね。こちらも、なんとかなりそうです」
 距離をとってデルタレイを放つ。撃ち漏らした敵には、魔導拳銃の一撃をお見舞いする。
 Hollowやミネットに接近しそうなコボルドがいれば、優先してガーレッドが対応する。
 抜群のコンビネーションを発揮する三人のハンターが、六匹のコボルドを殲滅するのに、さほど時間はかからなかった。
「ふぅ、あとは向こうのケリがついていればいいんですけれど」
 ミネットが安堵の息を吐く。
 タイミングを見計らっていたかのように、Hollowの持つ魔導短伝話にクオンからの連絡が入った。

●戦闘終了後

 ゴブリンを無事に対峙したとの連絡を受けて、丘でコボルドを殲滅させたミネット、Hollow、ガーレッドは村へ戻るのを決めた。
 途中でひとり、徒歩で帰村しようとしているガイを見つける。
「もしかして……あなたがガイさんですか?」
 馬から下りて、Hollowが話しかけた。他の面々も馬から下りる。
 振り返ったガイが「そうだよ」と頷く。
「そうですか。あまり村の方に迷惑をかけてはいけませんよ」
 やんわりと注意したあとで、それとなく一般的な幻獣についての説明をする。
 Hollowだけでなく、ミネットも会話に加わる。
「ガイさんが望めばいつか本物の幻獣に出会えますよ。でも、もっと鍛錬が必要です」
「そうなんだ」
「……これからは吟遊詩人の物語などを聞いて、見識を深めたら良いと思いますよ」
 Hollowが優しめに言った。
「うん。でも、幻獣にはもう会ったし。話も聞いたよ」
 一同は驚愕するも、すぐにガイの説得を担当したアルファスが何かしたのだと理解する。
「幻獣だからって必ずしも安全なわけじゃない。不用意に近づくと命を落としかねない」
 ガーレッドもガイに軽い説教をする。
 そこへ平地から戻ってきたディアドラも合流する。
「むむっ、ガイを発見したぞ。よく聞くのだ。何を隠そう、このボクこそが幻獣の王なのである!」
 馬上で腰に手を当てて、得意げに言うディアドラをガイが見上げる。
 常人なら信じてくれなかったかもしれないが、ガイだけはあっさりと信じて瞳を輝かせる。
「本当なの!? 凄いね!」
「そうであろう、そうであろう。今回この地を訪れたのは、幻獣の名を騙る愚か者に罰を与えに来たからだ。ガイも、みだりに幻獣の名を口にしてはいかんぞ」
「わかった。これからは気をつけるよ」
 本人の自信をなくさないように少しは褒めるつもりだったが、この分なら問題はなさそうである。
 根が単純で無邪気なガイには、ディアドラの説得がより効果的だったようだ。
 一応は理解してくれたみたいなので、ガーレッドだけでなく、ミネットやHollowも安堵して頷いた。
「村の連中が君を心配していたぞ。はやく戻ろう」
 ガーレッドがガイの背中を軽く叩く。
 ガイを含めた五人で村へ戻ると、ひと足先に到着していたアルファスと青年団の団長が待っていた。
「お疲れ様です。どうやら、色々と無事に済んだみたいですね」
 迎えてくれたアルファスに、戻ってきたハンターたちも口々にねぎらいの言葉をかける。
 戦闘後のガイへの対応が上手くいったのも、アルファスが事前に説得してくれたからなのは明らかだった。
「収穫はなかったかもしれないが、ガイが無事でよかったよ」
 団長が声をかけると、ガイはにんまりとした。
「えへへ。ちゃんと鍋の作り方は聞いてきたよ」
 依頼を果たした一行にもガイが振舞ってくれたのは、幻獣に扮したアルファスが作り方を教えた野菜のブイヨン鍋だった。
 アルファスがどのように説得したのかは、すでに今回の依頼を請け負ったハンターたちには説明済みだ。
 味見をした団長が「美味い」と叫んだ。
「……これなら、名物になるかもしれませんね」
 Hollowも感心するように言った。
「確かに美味しいですけど、もっと具材を増やしてもいいかもしれませんよ。協力しますから、探しに行ってみませんか」
 ミネットの提案に、ノリノリなのはガイだ。
「名物にできる鍋の種類が、増えるかもしれないね」
「そうですね。あっ……コボルド料理とかは……名物になりませんかね」
 場の空気が凍りつく。
 青年団の団長が、すがるようにガーレッドを見る。
 視線を向けられたガーレッドが、フッと笑って人差し指と中指を立てて目尻に添えた。
「次元の彼方でまた会おう!」
「え……? あの……ちょっとぉぉぉ!」
 団長の悲鳴が村中に響き渡る。
 どうやら今度は、別の問題で頭を抱えるはめになりそうだ。

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MVP一覧

  • 大王の鉄槌
    ディアドラ・ド・デイソルクスka0271

重体一覧

参加者一覧

  • 課せられた罰の先に
    クオン・サガラ(ka0018
    人間(蒼)|25才|男性|機導師
  • 大王の鉄槌
    ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271
    人間(紅)|12才|女性|闘狩人
  • ♯冷静とは
    ミネット・ベアール(ka3282
    人間(紅)|15才|女性|猟撃士
  • 《聡明》なる天空の術師
    アルファス(ka3312
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 復興の一歩をもたらした者
    Hollow(ka4450
    人間(紅)|17才|女性|機導師
  • (自称)別次元の戦士
    ガーレッド・ロアー(ka4994
    人間(蒼)|28才|男性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271
人間(クリムゾンウェスト)|12才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/06/21 16:45:26
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/06/20 20:33:46