ゲスト
(ka0000)
異世界流、七夕のススメ
マスター:STANZA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/07/14 15:00
- 完成日
- 2014/07/28 14:12
このシナリオは4日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
同盟領の一角にある、蒸気工場都市フマーレの工場街。
そこには小さな機械修理工場「ナーノ・ビスケット」があった。
小人の修理台を意味するその名の通り、扱う品目は一般家庭で使われる小さな機械製品が多く、お得意様も一般家庭の主婦層が中心だ。
工場を切り盛りしているのは、ミケーレ・カルヴィーニという青年だった。
彼は大柄な身体に似合わず手先が器用で、子供の玩具なども頼めばすぐに修理してくれる。
気さくな性格も相俟って、彼は近所の子供からお年寄りまでの幅広いファンを持つ人気者だった。
商店街で猫雑貨と花を扱う小さな店の主人、フロル(kz0042)もまた、彼に懐いている者の一人だ。
「ミケ兄さん、ミケ兄さーん!」
フロルは年上の友人であり、猫雑貨を作ってくれる職人でもあるミケーレの事をそう呼んでいた。
「ミケ兄さん、タナバタしましょう、タナバター!」
様々な機械や部品が乱雑に散らばった工場にひょっこりを顔を出したフロルは、ミケーレの顔を見るなりそう言って手を振る。
「だからお前は、何でそういつもイキナリなんだよ?」
ミケーレは首にかけた年季の入ったタオルで額の汗を拭うと、ひとつ溜息。
「何だそのタナバタってのは? いきなり言われてもわかんねーだろ!」
そう言われて、フロルは順を追って説明を始めた。
ふらりと立ち寄ったハンターオフィスで「タナバタ」なるものの話を小耳に挟んだこと。
それはリアルブルーで行われる、商店街を盛り上げる為の祭の名前であること。
基本的に、道路に何かを飾り付けて楽しむものであること。
「小耳に挟んだだけですので、詳しい事はよくわからないのですがー」
「よくわかんねーものを持って来るなよ……」
話を聞いて、ミケーレが頭を抱える。
まあ、かく言う彼も『俺には難しいことはわかんねえけど』が口癖なので、どっちもどっちと言うべきか。
「とにかく、楽しそうだと思いませんかー?」
「まあ、な」
「フマーレの商店街でも、ちょうど活性化の為に何かやりたいと思っていたのですよー」
「それはまあ、有効かもしれない、うん」
しかし、そのタナバタというのは結局何なのだ。
「さあ?」
「……ってお前!」
「だって、よく聞こえなかったんですよー」
話していたのは、恐らくリアルブルーの出身者。
だが呼び止めて話を聞く暇もなく、彼等は仕事に出てしまったのだ。
「他のハンターさんも、多分知ってると思うのですよー?」
知らなくても構わないけれど。
とにかく、それっぽいお祭りを行って、商店街を盛り上げる事が出来れば良いのだ。
ハンター達に協力して貰えば、きっと楽しいものになる。
「皆さん芸達者ですからねー。すごいんですよ、この間なんか……」
そして始まる思い出話。
商品の輸送を手伝って貰った事や、その後でお喋りした事、家に招いてお茶会をした事……
「ミケ兄さんや商店街の皆さんも、この機会にハンターの皆さんとお近づきになると良いのですー」
仲良くなれば、売り上げアップに繋がるかもしれないし?
そんなわけで、タナバタ。
何だかよくわからないけれど、わからないものは自己流にアレンジしてしまえば良いのだ。
ここはクリムゾンウェスト、リアルブルーの文化を厳密に再現する必要はない。
そのままやっても面白くなるとは限らないし。
本物を知っている人も知らない人も、皆でタナバタを盛り上げよう。
そして、それをフマーレ商店街の新たな名物にするのだ。
リプレイ本文
「七夕とは懐かしいですね、頑張って盛り上げましょう」
シグリッド=リンドベリ(ka0248)が、キリリと引き締まった表情で皆を見渡す。
が、その頭の上に猫のシェーラさん、膝にはフロルの白黒猫達が乗っているせいで、今いち締まらない。と言うか可愛い。
「マリエルと言います。よろしくお願いしますね」
フリフリのドレス姿で現れたマリエル(ka0116)は、穏やかな笑顔でぺこりと頭を下げた。
それは所謂メイド服だが、彼女が働く酒場ではそれが制服、つまり仕事着という認識らしい。
「フマーレの商店街は初めてですが、仕事でよく行く所と雰囲気が似ている気がします」
何となく親近感を覚え、だからこそ一層頑張って盛り上げていきたい。
「ところで、タナバタというのはどんなお祭りなのですか?」
マリエルも生まれは蒼界らしいが、その頃の事は何も覚えていない様だ。
「タナバタ、かあ」
イェルバート(ka1772)も人から噂で聞いた程度。
「僕が知ってるのは、願い事のカードを木に結ぶとか、星座にまつわる伝説があるとか、それくらいかな」
「オレも詳しいこと知らないけど、リアルブルーの人がいるなら何とかなるだろ」
レオーネ・インヴェトーレ(ka1441)が、何か知っていそうな顔をした者達に期待の眼差しを向ける。
「そうですね、とても楽しくて……綺麗なお祭りですよ」
答えたのはユキヤ・S・ディールス(ka0382)だった。
ユキヤは故郷で見た光景を思い出しながら、本当の七夕について一通り説明する。
それが七月七日の夜に行われる事、天の川や織姫と彦星の伝説の事、笹に飾り付けをし、願いの短冊を下げる事――等々。
「大規模なものだと見物人も大勢集まって……そうそう、見物には浴衣を着て来る人も多いですね」
「そうよ、浴衣! こんなことなら、こっちにも持って来れば良かったわ、残念!」
それを聞いて、ウズメ(ka2587)が少し悔しそうな声を上げた。
「浴衣っていうのはね、夏のお祭りなんかで着る伝統衣装なの」
見本があれば、それも作れるだろうか。
「持ってる子がいないか、ちょっと知り合いに当たってみるわ」
現在ショップで売られている浴衣は、こうして出来上がったものである――かどうか、真相は定かではないが。
「それと、これは飾りの見本ね」
取り出したのは、短冊と七夕飾り。
「飾りにもひとつひとつ意味があるのですよ」
そのひとつを手にとって、シグリッドが言った。
「七夕はそもそも豊穣を願うお祭だったんです。でも時代が変われば願いも変わりますから、もう飾りはオリジナルで作ってもいいんじゃないでしょうか」
「そうね、せっかくこの世界でやるんだし」
「こちらではどんなイベントになるか、楽しみだね」
ウズメの言葉に、ユキ・キサラギ(ka2306)が頷く。
彼の場合、七夕の知識はあるが実際の様子を見た事はない。
だからこそ柔軟に、どんな形でも楽しみたいと思うのだ。
「なるほど、リアルブルーでも『トーヨー』ってところのお祭りなのか」
一通りの説明を聞いて、レオーネが頷く。
「でもって、それをアレンジして商店街に提供っと。こうだよな?」
「そうだな、今後も毎年行えるよう商店街の人々と協力することが前提だ」
デュオ=ラングウィッチ(ka1015)が頷く。
主役ははあくまで、商店街やそこに買い物に来る客達だ。
彼等が楽しいと感じる様なものを、自分達だけでも運営して行ける形で提供する必要があるだろう。
「七夕……成功すると嬉しいの」
花繰 桃歌(ka2161)が、こくりと頷く。
「この世界らしい七夕が定着したら楽しいわね」
ウズメが言い、皆は具体的なアイデア出しにかかった。
「商店街には広場があったよね」
イェルバートが言った。
「そこを中心にして、真ん中に木? ササって言うんだっけ? それを設置すれば良いかなって」
「お花屋さんで、笹は手に入るのです……?」
桃歌の問いに、フロルは申し訳なさそうに首を振った。
時間をかければ手に入るかもしれないが、今年のイベントに間に合わせるのは難しそうだ。
「じゃあ、それに近いものはあるかしら?」
ウズメが訊ねる。
「あ、柳はどうだろ?」
クリムゾンウェストの知識を総動員したレオーネが閃いた。
枝垂れる方は何か別のイベントになりそうだから、直立する系で。
「あれなら枝も柔らかいし、丈夫だから結構重い物でも下げられるよな?」
「だったら……工場都市なら職人さんも多そうですし、ミニチュアサイズの工具とか、どうでしょう」
「おう、フマーレっぽくて良いな!」
シグリッドの案は、ミケーレが形にしてくれる様だ。
「こっちはどうかな?」
レオーネは笹代わりの柳の枝を飾る為のオブジェの提案を。
「これこれこんな感じで……どうだろ? ミケーレさん」
「ほう、そいつは面白そうだな」
「オレは金属以外も扱えるから、柳をそれっぽく加工してみるよ。ミケーレさんはこっちの奴を」
何やら内緒話の様だが、どうやら設計は決まった様だ。
「短冊の代わりはメッセージカードでいいかな」
イェルバートが言った。
「カードや飾りをみんなで持ち寄って飾っていく形にすれば、準備も楽しくなりそうだよね。メッセージカードは老若男女関係なく書けそうだし」
「カードを貰うついでにお買い物のひとつでもしていただければ商店街の売り上げにも繋がるかもしれません」
カードは各店舗に配って貰おうと、シグリッド。
「だったら他に期間限定のポイントカードなんか作ってみたらどうかしら?」
商店街のイベントとして使えないかと、ウズメが言った。
「七夕にちなんで、買い物で7つスタンプが溜まれば何か特典が貰えるとか。これは商店街の人達にも協力して貰う必要があると思うけど……フロル、交渉をお願いできるかしら?」
「何か景品を用意すれば良いのですねー?」
「ついでに何か七夕にちなんだ目玉商品をお店に置いてもらうか、特設屋台を出せると良いわね」
これはお客の財布の紐を緩める為の方策だ。
「七夕って星祭りでもあるから、星型のパンやお菓子、星型の髪飾りみたいなものが良いかしら」
「お菓子作りなら、私もお手伝いできるの」
桃歌が言った。
「カードの用意はフロルさんにお願いお願いできるでしょうか……お花屋兼雑貨屋さんらしいですし」
シグリッドが訊ねる。
あ、いえ、ついでに店を覗いて猫雑貨を見たいとか、そんな下心は……(うず
「ええ、良いですよー」
と言っても、フロルの店には猫モノしかないけれど。
「ねえ、どうせなら夏祭りてんこ盛りってことで盆踊りも混ぜちゃいましょうよ!」
ウズメの口から出た耳慣れない言葉に、皆の注目が集まる。
「七夕飾りを中心に皆で輪になって踊ったら、楽しいと思わない?」
この地方に伝わる歌や踊りがあれば、輪になって踊れるように覚えやすい振り付けにアレンジして――盆踊りと言うよりフォークダンスに近いイメージだろうか。
「皆で踊って、大人はお酒も飲んで陽気になって、ついでにそこかしこで恋も始まってこその夏祭りよ」
「歌、ですか」
興味津々の様子で話に聞き入っていたマリエルが、ぱっと顔を上げた。
「あの! 宜しければ、そのタナバタという行事に際して歌があるなら、それを教えていただけませんか?」
「そうね、マリエルの歌に合わせて踊るのも楽しそう」
ウズメは昔聞いた童謡の一節を口ずさむ。
「へえ、こういう歌だったんだね」
ユキは歌詞を見た事はあったが、歌を聞くのは初めてだった様だ。
マリエルはその後について歌いながら楽譜に書き出し、こちらの世界に合わせたオリジナルの要素を付け加えてみる。
そうして様々なアイデアを出し合い、企画はだんだんと具体的な形を取り始めた。
後は当日に間に合う様に、役割を分担して準備を進めていくだけだ。
「ははは、やる前から楽しみだ。大丈夫、絶対に成功するさ」
デュオが太鼓判を押す。
これだけ皆で活発に意見を出し合ったのだ、良いものにならない筈がなかった。
そして、各自がそれぞれの準備に取りかかる。
シグリッドは紙の束にひたすら枠線を引いていた。
「えぇと、枠は七つでしたよね」
出来たものにフロルが商店街のマークやイラストの入ったハンコを押せば、スタンプカードの出来上がりだ。
「楽しいですよね。こうやって皆で何かするのって」
マリエルは色とりどりの紙で飾りを作りながら、覚えたばかりの歌を口ずさむ。
昔の記憶がない彼女にとっては、他人の思い出話を聞くのも楽しみのひとつだった。
勿論、こうして新しい思い出を皆で作る事も。
「フロルさんは、可愛い猫を飼ってらっしゃるのですね」
飾り作りを手伝いながら、ユキヤが言った。
「少し触っても構いませんか?」
「ええ、どうぞー……と言うか、邪魔してますよね、すみませんー」
確かに、せっかく作った飾りに飛び付いてボロボロにしてくれたり、材料の上にデーンと寝そべったりと、見事な妨害ぶりだが。
でも、そこが良いのだ。
「リアルブルーでも、猫は居るんですよ」
ユキヤは白猫のもふもふな毛並みをそっと撫でながら、柔らかい笑みを浮かべた。
「どちらの世界の猫も、とても可愛いし、違いは無いですね」
見える星は違うけれど、綺麗な星空も同じだ。
「リアルブルーでは、星に名前を付けたり、その星と星を結んで何かをイメージし、名前を付けたりするんですが……此方の世界で、そういう事は在るのでしょうか?」
「ええ、ありますよー」
流れ星に願いをかける事もあるし。
星に対する人々の想いは、どちらの世界もそう変わりはないだろう。
隣の部屋ではデュオが近所の子供達を集めて広告作り。
「商店街の外から人を呼び込むことが一番大切だ」
他の町に住む人も、子供達が作った楽しげな手作りチラシやポスターには心を動かされる事だろう。
「自分が手伝いに関わったイベントなら、子供達も興味を持ってくれるだろうしな」
祭の内容を知って貰う事も出来るし、一石二鳥だ。
出来たものは転移門を使って、自分達が配ればいい。
商店街への周知はユキが担当した。
ビラを配り、貼り紙をして、イベントの概要を説明して。
「当日もお客さん達に願い事やメッセージを書いて貰うけど、始まるまで何もないのは寂しいからね」
見本を兼ねて、商店街の人達に短冊やカードを書いて貰おう。
「これでも錬金術師の端くれだからね。機械とか金属の扱いは慣れてる方だよ」
イェルバートはミケーレの工場を借りて、金属製の笹飾りを作っていた。
「金属の煌めきと星の形って、相性良さそうだ」
薄く伸ばした金属の板を星型に切って何枚か繋げれば、風に揺れて綺麗な音が鳴るだろう。
星は全部同じに見えて、実は微妙に形が違っていたり、色違いだったり。
「金属の種類や熱加減を変えれば、違った色が出来そうだね」
小さなサイズで細かく散らしてみるのも良さそうだ。
そして――
その日、商店街は昼間から大勢の人で溢れていた。
スタンプカードを手に店を回ったり、店先の小さな七夕飾りを物珍しそうに眺めたり、町のあちこちに貼られた七夕の解説文を読んで回ったり。
その多くが、商店街で貸し出された浴衣を身に着けている。
ウズメの話から発展した急拵えだが、色柄も豊富で美しいそれは、物珍しさも手伝ってか結構な人気だった。
勿論、スタッフも率先して浴衣姿だ。
「クリムゾンウェストで七夕のイベントをやることになるなんて思いもしなかったよ」
ユキはのんびりと会場を歩きながら、皆で作り上げた七夕祭の出来映えを確かめていた。
「や、楽しんでるかい?」
声をかけられて、シグリッドは輪飾りを作っていた手を止める。
ここは広場に設置された祭の本部テント、その脇に並べられた机の前にはメッセージを書く人の行列が出来ていた。
シグリッドはそこで案内係をしながら、空いた時間で子供達に折り紙を教えているところだった。
「笹、すごいですよね」
広場の中心に現れた「笹」は本家のものとは随分違うけれど――
「ああ、盛り上がっているようだね」
見ている間にも、願い事が書かれたカードはどんどん増えていく。
「僕も、これが出来たら飾って来ようかなって」
既に足元には輪っかの山が出来ている様だが、まだ長くするつもりなのだろうか。
と、そこにレオーネが駆け込んで来た。
「見よう見まねで作ってみたんだけど……どうかな?」
広場の真ん中に置かれたオブジェを指差す。
その中心には竹を模した真っ直ぐな金属の棒が何本も立てられ、まるで小さな竹林の様にも見えるそこからは、何本もの柳の枝が生えていた。
全体をゆるく取り巻いているフレーク状の小さな星飾りはイェルバートが作ったものだろう。
柳に下げられた大きめの飾りと相俟って、丁度良くバランスが取れていた。
「この竹みたいな金属棒に枝を差し込む穴が開いてるんだ」
言いながら、レオーネは新しい枝をそこに差し込む。
枝にはメッセージカードや折り紙の飾り、ミニチュア工具やクッキーまで、様々な飾りが揺れていた。
「どう? どこか間違ってたりする?」
「いや、なかなか良いよ」
ユキが答えた。
何よりも地元の人達が楽しんでいるのが良い。
「金属の飾りも悪くないね。ぶつかる音が涼やかだ」
「そうか! 良かった!」
実はこれには仕掛けがあるのだが……それは暗くなってからのお楽しみだ。
一方こちらは商店街。
「今日は待ちに待った七夕の日なの。楽しまないと、なのですよ」
ケーキ屋の前では、桃歌が買い物のおまけとして手作りの星型クッキーを配っていた。
袋に入れ、紐が付けられたそれは、笹に飾る事も出来る。
「願い事やメッセージと一緒に飾って下さい、です」
町の外から来た人には織姫と彦星の伝説を話して聞かせたり、ついでに迷子の案内や落とし物を届けたりと、大忙しだ。
「あ、お疲れ様なのです」
客とした訪れたイェルバートにも、スタンプを押して、クッキーを渡して。
残りのスタンプはあとひとつ。
「向こうのお店で、デュオさんがお料理してるの、です」
「じゃあ、行ってみようかな」
デュオは商店街の食事処と協力して、七夕料理を振舞っていた。
これはリアルブルーの料理を伝授できる機会でもあるし、限られた食材で料理を再現するとなれば自分の腕試しにもなるだろう。
ちらし寿司や素麺など、定番料理に少しアレンジを加えて――
「どうだ?」
「うん、食べた事ない味だけど、悪くないと思う」
イェルバートが頷く。
もしかしたら新しい名物料理になる、かも?
そして祭は盛況のうちに夜の部へ。
広場のオブジェに仕込まれた明かりが、内側からほんのりと七夕飾りを照らし始める。
「まるで地上に星が降りた様ですね」
フロルと並んでそれを眺めながら、ユキヤが言った。
「独りで夜空を見上げるのも楽しいですけれど、こうして楽しく、皆で見るのも良いですね」
頭上には、本物の星空。
そこに見える星座は見慣れたものとは違うけれど。
「この星空の何処かに、リアルブルーも在ると考えると、何だか不思議な感じもしますね……」
見えはしないけれど、何処かに在る。
「見えるモノだけが存在する訳ではなく、見えなくとも其処に存在するもの……。僕は真実が一つとは、考えたくはない……かな」
ところで、フロルはどんな願い事をするのだろう。
他の皆は?
「僕は……如何でしょう……」
願い事なんて、余り考えた事がなかった。
折角だし、フロルの願いが叶う様にと願っておこうか。
その耳に、透き通った歌声が響いてきた。
オブジェの前に立つマリエルが、祈る様な想いを込めて歌い始める。
始めは一人で、やがてオブジェの影から現れた子供達が一人、二人と加わり、やがて大合唱になる。
(楽しいって思いが皆に、町全体に広がる様に、歌を広められればいいな。だって、歌は気持ちを伝える為にあるから――)
見物客にも楽譜を配り、一緒に歌おうと促した。
「大丈夫、私に続いて……難しい歌じゃありませんから」
やがてその歌に合わせて、商店街の有志が踊り始める。
その輪は次第に広がり、やがて広場全体に広がっていった。
「よし、オレもひとつ踊ってみるか」
一仕事を終え、商店街を散策していたデュオがその中へ入って行く。
楽しむ事も仕事のうちだ。
「自分で体験してみて初めてわかる事もあるだろうしな」
客観的に見た感想を伝えられれば次回への布石にもなるし――そうだ、新聞でもあれば、この事を記事にして貰うのも良いかもしれない。
ユキは少し離れた場所で夜空の星を見上げ、故郷に思いを馳せつつ、祭の空気にゆったりと身を浸す。
皆が楽しむ様子を、ウズメは満足げに眺めていた。
踊りの輪の真ん中で、笹ならぬ柳の葉が揺れる。
その影に、シグリッドの『シェーラさんが長生きしてくれますように』の文字が見えた。
目立たない場所で控えめに揺れている『爺ちゃんみたいな錬金術師になれますように』という願いはイェルバート。
祭を存分に楽しんだ桃歌は『これからも友達や仲間、大好きな人と一緒にいられますように』と。
ひときわ高い場所で揺れるのは、ユキの『探究心を満たす世界に、これからも沢山出会えますように』という願いだ。
大書された『技術向上』はミケーレ、『商売繁盛』はフロルか。
皆の願いが叶いますように――
シグリッド=リンドベリ(ka0248)が、キリリと引き締まった表情で皆を見渡す。
が、その頭の上に猫のシェーラさん、膝にはフロルの白黒猫達が乗っているせいで、今いち締まらない。と言うか可愛い。
「マリエルと言います。よろしくお願いしますね」
フリフリのドレス姿で現れたマリエル(ka0116)は、穏やかな笑顔でぺこりと頭を下げた。
それは所謂メイド服だが、彼女が働く酒場ではそれが制服、つまり仕事着という認識らしい。
「フマーレの商店街は初めてですが、仕事でよく行く所と雰囲気が似ている気がします」
何となく親近感を覚え、だからこそ一層頑張って盛り上げていきたい。
「ところで、タナバタというのはどんなお祭りなのですか?」
マリエルも生まれは蒼界らしいが、その頃の事は何も覚えていない様だ。
「タナバタ、かあ」
イェルバート(ka1772)も人から噂で聞いた程度。
「僕が知ってるのは、願い事のカードを木に結ぶとか、星座にまつわる伝説があるとか、それくらいかな」
「オレも詳しいこと知らないけど、リアルブルーの人がいるなら何とかなるだろ」
レオーネ・インヴェトーレ(ka1441)が、何か知っていそうな顔をした者達に期待の眼差しを向ける。
「そうですね、とても楽しくて……綺麗なお祭りですよ」
答えたのはユキヤ・S・ディールス(ka0382)だった。
ユキヤは故郷で見た光景を思い出しながら、本当の七夕について一通り説明する。
それが七月七日の夜に行われる事、天の川や織姫と彦星の伝説の事、笹に飾り付けをし、願いの短冊を下げる事――等々。
「大規模なものだと見物人も大勢集まって……そうそう、見物には浴衣を着て来る人も多いですね」
「そうよ、浴衣! こんなことなら、こっちにも持って来れば良かったわ、残念!」
それを聞いて、ウズメ(ka2587)が少し悔しそうな声を上げた。
「浴衣っていうのはね、夏のお祭りなんかで着る伝統衣装なの」
見本があれば、それも作れるだろうか。
「持ってる子がいないか、ちょっと知り合いに当たってみるわ」
現在ショップで売られている浴衣は、こうして出来上がったものである――かどうか、真相は定かではないが。
「それと、これは飾りの見本ね」
取り出したのは、短冊と七夕飾り。
「飾りにもひとつひとつ意味があるのですよ」
そのひとつを手にとって、シグリッドが言った。
「七夕はそもそも豊穣を願うお祭だったんです。でも時代が変われば願いも変わりますから、もう飾りはオリジナルで作ってもいいんじゃないでしょうか」
「そうね、せっかくこの世界でやるんだし」
「こちらではどんなイベントになるか、楽しみだね」
ウズメの言葉に、ユキ・キサラギ(ka2306)が頷く。
彼の場合、七夕の知識はあるが実際の様子を見た事はない。
だからこそ柔軟に、どんな形でも楽しみたいと思うのだ。
「なるほど、リアルブルーでも『トーヨー』ってところのお祭りなのか」
一通りの説明を聞いて、レオーネが頷く。
「でもって、それをアレンジして商店街に提供っと。こうだよな?」
「そうだな、今後も毎年行えるよう商店街の人々と協力することが前提だ」
デュオ=ラングウィッチ(ka1015)が頷く。
主役ははあくまで、商店街やそこに買い物に来る客達だ。
彼等が楽しいと感じる様なものを、自分達だけでも運営して行ける形で提供する必要があるだろう。
「七夕……成功すると嬉しいの」
花繰 桃歌(ka2161)が、こくりと頷く。
「この世界らしい七夕が定着したら楽しいわね」
ウズメが言い、皆は具体的なアイデア出しにかかった。
「商店街には広場があったよね」
イェルバートが言った。
「そこを中心にして、真ん中に木? ササって言うんだっけ? それを設置すれば良いかなって」
「お花屋さんで、笹は手に入るのです……?」
桃歌の問いに、フロルは申し訳なさそうに首を振った。
時間をかければ手に入るかもしれないが、今年のイベントに間に合わせるのは難しそうだ。
「じゃあ、それに近いものはあるかしら?」
ウズメが訊ねる。
「あ、柳はどうだろ?」
クリムゾンウェストの知識を総動員したレオーネが閃いた。
枝垂れる方は何か別のイベントになりそうだから、直立する系で。
「あれなら枝も柔らかいし、丈夫だから結構重い物でも下げられるよな?」
「だったら……工場都市なら職人さんも多そうですし、ミニチュアサイズの工具とか、どうでしょう」
「おう、フマーレっぽくて良いな!」
シグリッドの案は、ミケーレが形にしてくれる様だ。
「こっちはどうかな?」
レオーネは笹代わりの柳の枝を飾る為のオブジェの提案を。
「これこれこんな感じで……どうだろ? ミケーレさん」
「ほう、そいつは面白そうだな」
「オレは金属以外も扱えるから、柳をそれっぽく加工してみるよ。ミケーレさんはこっちの奴を」
何やら内緒話の様だが、どうやら設計は決まった様だ。
「短冊の代わりはメッセージカードでいいかな」
イェルバートが言った。
「カードや飾りをみんなで持ち寄って飾っていく形にすれば、準備も楽しくなりそうだよね。メッセージカードは老若男女関係なく書けそうだし」
「カードを貰うついでにお買い物のひとつでもしていただければ商店街の売り上げにも繋がるかもしれません」
カードは各店舗に配って貰おうと、シグリッド。
「だったら他に期間限定のポイントカードなんか作ってみたらどうかしら?」
商店街のイベントとして使えないかと、ウズメが言った。
「七夕にちなんで、買い物で7つスタンプが溜まれば何か特典が貰えるとか。これは商店街の人達にも協力して貰う必要があると思うけど……フロル、交渉をお願いできるかしら?」
「何か景品を用意すれば良いのですねー?」
「ついでに何か七夕にちなんだ目玉商品をお店に置いてもらうか、特設屋台を出せると良いわね」
これはお客の財布の紐を緩める為の方策だ。
「七夕って星祭りでもあるから、星型のパンやお菓子、星型の髪飾りみたいなものが良いかしら」
「お菓子作りなら、私もお手伝いできるの」
桃歌が言った。
「カードの用意はフロルさんにお願いお願いできるでしょうか……お花屋兼雑貨屋さんらしいですし」
シグリッドが訊ねる。
あ、いえ、ついでに店を覗いて猫雑貨を見たいとか、そんな下心は……(うず
「ええ、良いですよー」
と言っても、フロルの店には猫モノしかないけれど。
「ねえ、どうせなら夏祭りてんこ盛りってことで盆踊りも混ぜちゃいましょうよ!」
ウズメの口から出た耳慣れない言葉に、皆の注目が集まる。
「七夕飾りを中心に皆で輪になって踊ったら、楽しいと思わない?」
この地方に伝わる歌や踊りがあれば、輪になって踊れるように覚えやすい振り付けにアレンジして――盆踊りと言うよりフォークダンスに近いイメージだろうか。
「皆で踊って、大人はお酒も飲んで陽気になって、ついでにそこかしこで恋も始まってこその夏祭りよ」
「歌、ですか」
興味津々の様子で話に聞き入っていたマリエルが、ぱっと顔を上げた。
「あの! 宜しければ、そのタナバタという行事に際して歌があるなら、それを教えていただけませんか?」
「そうね、マリエルの歌に合わせて踊るのも楽しそう」
ウズメは昔聞いた童謡の一節を口ずさむ。
「へえ、こういう歌だったんだね」
ユキは歌詞を見た事はあったが、歌を聞くのは初めてだった様だ。
マリエルはその後について歌いながら楽譜に書き出し、こちらの世界に合わせたオリジナルの要素を付け加えてみる。
そうして様々なアイデアを出し合い、企画はだんだんと具体的な形を取り始めた。
後は当日に間に合う様に、役割を分担して準備を進めていくだけだ。
「ははは、やる前から楽しみだ。大丈夫、絶対に成功するさ」
デュオが太鼓判を押す。
これだけ皆で活発に意見を出し合ったのだ、良いものにならない筈がなかった。
そして、各自がそれぞれの準備に取りかかる。
シグリッドは紙の束にひたすら枠線を引いていた。
「えぇと、枠は七つでしたよね」
出来たものにフロルが商店街のマークやイラストの入ったハンコを押せば、スタンプカードの出来上がりだ。
「楽しいですよね。こうやって皆で何かするのって」
マリエルは色とりどりの紙で飾りを作りながら、覚えたばかりの歌を口ずさむ。
昔の記憶がない彼女にとっては、他人の思い出話を聞くのも楽しみのひとつだった。
勿論、こうして新しい思い出を皆で作る事も。
「フロルさんは、可愛い猫を飼ってらっしゃるのですね」
飾り作りを手伝いながら、ユキヤが言った。
「少し触っても構いませんか?」
「ええ、どうぞー……と言うか、邪魔してますよね、すみませんー」
確かに、せっかく作った飾りに飛び付いてボロボロにしてくれたり、材料の上にデーンと寝そべったりと、見事な妨害ぶりだが。
でも、そこが良いのだ。
「リアルブルーでも、猫は居るんですよ」
ユキヤは白猫のもふもふな毛並みをそっと撫でながら、柔らかい笑みを浮かべた。
「どちらの世界の猫も、とても可愛いし、違いは無いですね」
見える星は違うけれど、綺麗な星空も同じだ。
「リアルブルーでは、星に名前を付けたり、その星と星を結んで何かをイメージし、名前を付けたりするんですが……此方の世界で、そういう事は在るのでしょうか?」
「ええ、ありますよー」
流れ星に願いをかける事もあるし。
星に対する人々の想いは、どちらの世界もそう変わりはないだろう。
隣の部屋ではデュオが近所の子供達を集めて広告作り。
「商店街の外から人を呼び込むことが一番大切だ」
他の町に住む人も、子供達が作った楽しげな手作りチラシやポスターには心を動かされる事だろう。
「自分が手伝いに関わったイベントなら、子供達も興味を持ってくれるだろうしな」
祭の内容を知って貰う事も出来るし、一石二鳥だ。
出来たものは転移門を使って、自分達が配ればいい。
商店街への周知はユキが担当した。
ビラを配り、貼り紙をして、イベントの概要を説明して。
「当日もお客さん達に願い事やメッセージを書いて貰うけど、始まるまで何もないのは寂しいからね」
見本を兼ねて、商店街の人達に短冊やカードを書いて貰おう。
「これでも錬金術師の端くれだからね。機械とか金属の扱いは慣れてる方だよ」
イェルバートはミケーレの工場を借りて、金属製の笹飾りを作っていた。
「金属の煌めきと星の形って、相性良さそうだ」
薄く伸ばした金属の板を星型に切って何枚か繋げれば、風に揺れて綺麗な音が鳴るだろう。
星は全部同じに見えて、実は微妙に形が違っていたり、色違いだったり。
「金属の種類や熱加減を変えれば、違った色が出来そうだね」
小さなサイズで細かく散らしてみるのも良さそうだ。
そして――
その日、商店街は昼間から大勢の人で溢れていた。
スタンプカードを手に店を回ったり、店先の小さな七夕飾りを物珍しそうに眺めたり、町のあちこちに貼られた七夕の解説文を読んで回ったり。
その多くが、商店街で貸し出された浴衣を身に着けている。
ウズメの話から発展した急拵えだが、色柄も豊富で美しいそれは、物珍しさも手伝ってか結構な人気だった。
勿論、スタッフも率先して浴衣姿だ。
「クリムゾンウェストで七夕のイベントをやることになるなんて思いもしなかったよ」
ユキはのんびりと会場を歩きながら、皆で作り上げた七夕祭の出来映えを確かめていた。
「や、楽しんでるかい?」
声をかけられて、シグリッドは輪飾りを作っていた手を止める。
ここは広場に設置された祭の本部テント、その脇に並べられた机の前にはメッセージを書く人の行列が出来ていた。
シグリッドはそこで案内係をしながら、空いた時間で子供達に折り紙を教えているところだった。
「笹、すごいですよね」
広場の中心に現れた「笹」は本家のものとは随分違うけれど――
「ああ、盛り上がっているようだね」
見ている間にも、願い事が書かれたカードはどんどん増えていく。
「僕も、これが出来たら飾って来ようかなって」
既に足元には輪っかの山が出来ている様だが、まだ長くするつもりなのだろうか。
と、そこにレオーネが駆け込んで来た。
「見よう見まねで作ってみたんだけど……どうかな?」
広場の真ん中に置かれたオブジェを指差す。
その中心には竹を模した真っ直ぐな金属の棒が何本も立てられ、まるで小さな竹林の様にも見えるそこからは、何本もの柳の枝が生えていた。
全体をゆるく取り巻いているフレーク状の小さな星飾りはイェルバートが作ったものだろう。
柳に下げられた大きめの飾りと相俟って、丁度良くバランスが取れていた。
「この竹みたいな金属棒に枝を差し込む穴が開いてるんだ」
言いながら、レオーネは新しい枝をそこに差し込む。
枝にはメッセージカードや折り紙の飾り、ミニチュア工具やクッキーまで、様々な飾りが揺れていた。
「どう? どこか間違ってたりする?」
「いや、なかなか良いよ」
ユキが答えた。
何よりも地元の人達が楽しんでいるのが良い。
「金属の飾りも悪くないね。ぶつかる音が涼やかだ」
「そうか! 良かった!」
実はこれには仕掛けがあるのだが……それは暗くなってからのお楽しみだ。
一方こちらは商店街。
「今日は待ちに待った七夕の日なの。楽しまないと、なのですよ」
ケーキ屋の前では、桃歌が買い物のおまけとして手作りの星型クッキーを配っていた。
袋に入れ、紐が付けられたそれは、笹に飾る事も出来る。
「願い事やメッセージと一緒に飾って下さい、です」
町の外から来た人には織姫と彦星の伝説を話して聞かせたり、ついでに迷子の案内や落とし物を届けたりと、大忙しだ。
「あ、お疲れ様なのです」
客とした訪れたイェルバートにも、スタンプを押して、クッキーを渡して。
残りのスタンプはあとひとつ。
「向こうのお店で、デュオさんがお料理してるの、です」
「じゃあ、行ってみようかな」
デュオは商店街の食事処と協力して、七夕料理を振舞っていた。
これはリアルブルーの料理を伝授できる機会でもあるし、限られた食材で料理を再現するとなれば自分の腕試しにもなるだろう。
ちらし寿司や素麺など、定番料理に少しアレンジを加えて――
「どうだ?」
「うん、食べた事ない味だけど、悪くないと思う」
イェルバートが頷く。
もしかしたら新しい名物料理になる、かも?
そして祭は盛況のうちに夜の部へ。
広場のオブジェに仕込まれた明かりが、内側からほんのりと七夕飾りを照らし始める。
「まるで地上に星が降りた様ですね」
フロルと並んでそれを眺めながら、ユキヤが言った。
「独りで夜空を見上げるのも楽しいですけれど、こうして楽しく、皆で見るのも良いですね」
頭上には、本物の星空。
そこに見える星座は見慣れたものとは違うけれど。
「この星空の何処かに、リアルブルーも在ると考えると、何だか不思議な感じもしますね……」
見えはしないけれど、何処かに在る。
「見えるモノだけが存在する訳ではなく、見えなくとも其処に存在するもの……。僕は真実が一つとは、考えたくはない……かな」
ところで、フロルはどんな願い事をするのだろう。
他の皆は?
「僕は……如何でしょう……」
願い事なんて、余り考えた事がなかった。
折角だし、フロルの願いが叶う様にと願っておこうか。
その耳に、透き通った歌声が響いてきた。
オブジェの前に立つマリエルが、祈る様な想いを込めて歌い始める。
始めは一人で、やがてオブジェの影から現れた子供達が一人、二人と加わり、やがて大合唱になる。
(楽しいって思いが皆に、町全体に広がる様に、歌を広められればいいな。だって、歌は気持ちを伝える為にあるから――)
見物客にも楽譜を配り、一緒に歌おうと促した。
「大丈夫、私に続いて……難しい歌じゃありませんから」
やがてその歌に合わせて、商店街の有志が踊り始める。
その輪は次第に広がり、やがて広場全体に広がっていった。
「よし、オレもひとつ踊ってみるか」
一仕事を終え、商店街を散策していたデュオがその中へ入って行く。
楽しむ事も仕事のうちだ。
「自分で体験してみて初めてわかる事もあるだろうしな」
客観的に見た感想を伝えられれば次回への布石にもなるし――そうだ、新聞でもあれば、この事を記事にして貰うのも良いかもしれない。
ユキは少し離れた場所で夜空の星を見上げ、故郷に思いを馳せつつ、祭の空気にゆったりと身を浸す。
皆が楽しむ様子を、ウズメは満足げに眺めていた。
踊りの輪の真ん中で、笹ならぬ柳の葉が揺れる。
その影に、シグリッドの『シェーラさんが長生きしてくれますように』の文字が見えた。
目立たない場所で控えめに揺れている『爺ちゃんみたいな錬金術師になれますように』という願いはイェルバート。
祭を存分に楽しんだ桃歌は『これからも友達や仲間、大好きな人と一緒にいられますように』と。
ひときわ高い場所で揺れるのは、ユキの『探究心を満たす世界に、これからも沢山出会えますように』という願いだ。
大書された『技術向上』はミケーレ、『商売繁盛』はフロルか。
皆の願いが叶いますように――
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イベント会場控え室(交流板) デュオ=ラングウィッチ(ka1015) 人間(リアルブルー)|21才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/07/14 11:09:41 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/13 10:17:21 |