赤い粘泥

マスター:狭霧

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/07/14 19:00
完成日
2014/07/22 11:25

みんなの思い出

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オープニング

 古都アークエルス。
 様々な研究を目的とした、グラズヘイム王国随一の学術都市だ。
 その内容は歴史から魔法まで多岐に渡り、知識の探究者たちが日々研究に身を捧げている。

 しかしながら研究や実験には失敗が付き物。
 まして魔法研究という分野では、時として本人の手におえない大失敗を引き起こしかねないのだ。
 実験動物に逃げられた研究者もいれば、魔法にあてられた生物が魔法生物化することも珍しくない。
 その殆どは大事になる前に駐在している騎士が処理するのだが、彼らだけで全てに対処することは難しく……。
 都市の在り方とは切っても切れない関係であるがゆえに、アークエルスとその周辺では、歪虚と同等かそれ以上の悩みの種になっていた。



 アークエルス郊外。
 畑作を主産業としている村でその事件は起こった。

 異変に気付いたのは小麦畑の様子を見に訪れた農夫だった。
 秋に蒔いた小麦は柔らかな穂をつけ、黄金色の海原のように風にそよいでいる。
 それを見て一時は満足げな笑みを浮かべた農夫だったが、すぐに訝しげな表情に変わる。
「なんだありゃ?」
 一面に広がる麦海の中、まるで虫に食われた葉のようにぽっかりと穴が開いた箇所がある。
 獣の仕業かとも思ったが、他に踏み荒らされたり、食い荒らされた形跡はない。
 その部分だけがくり抜いたように消えているのだ。
 奇妙さに顔をしかめていると、彼の前で小麦の背がみるみる下がっていき、消えた。後にはぽっかりと穴だけが残る。
「おいおい勘弁してくれよ。もうすぐ収穫だってのに……」
 冬を越し、順調に育った小麦は収穫を待つばかり。
 何の仕業か知らないが、それを台無しにされてたまるかと、腰に吊るした護身用の短剣に手をかける。
 男は腕っ節には自信があった。
 麦に隠れて犯人の姿は見えないが、それゆえに自分の命を脅かすほどの脅威ではないと己を鼓舞し、短剣の柄を握り締め、足元の石を手に取った。
 感触を確かめつつ振りかぶり、今できたばかりの“穴”に投げ込んで――

 彼がボロボロになりながらも村長の家に駆け込み、備え付けの魔導伝話でハンターズソサエティの支部に助けを求めたのは、それからすぐのことだった。



 ハンターズソサエティ・アークエルス支部。
 本部から転移してきたハンターたちは女性職員に出迎えられ、依頼の説明を受けることになった。
「ご苦労様です。早速ですが、今回貴方たちにお願いするのはスライム退治になります」
 職員は慣れた様子で情報を手配していく。
 空中に開いた表示窓にハンターたちの視線が向いたのを確認すると、自らも資料を手に説明を始めた。

「ここから馬で四半日ほどの農村から、麦畑にいる赤いスライムを討伐してくれ、という依頼が届きました」
 感情を窺わせない声色。それは余計な情を排して、純粋な情報のみをハンターたちに与えていた。
「依頼人によると、対象は麦畑にぽっかりと空いた穴の中に潜んでおり、ちょっかいを出すと飛び出してくるとのことです。やたらすばしっこいスライムだったそうですよ」
 ちなみにその依頼人はというと。投石をしたところ猛スピードで飛び出してきたスライムの体当たりを腹部に受け、悶絶しているところをズタボロにされたらしい。一般人の中では屈強な部類に入ると思しき依頼人だったからこそ死に物狂いで逃げ切れたものの、街で働く商人などであればひとたまりもなかっただろう。
 話を聞いたハンターが彼の身を案じていると、職員はそれと……と、別の案件を口にした。
「数日前にアークエルスの駐在兵が特徴の似たスライムを取り逃がしているんですが……話を聞く限り、同一個体と見ていいでしょうね」
 日常的とまではいかずとも、それなりの頻度で持ち込まれる類。スライムということで油断もあったのだろう。
 練度に劣る新兵が対応に当たった結果、予想外の速度に翻弄され、何とか追い詰めたものの息の根を止める前に逃げられてしまったそうだ。
「そちらの報告も併せて考えると、素早さ以外は一般的なスライムと大差ないでしょう。依頼人から、確実に倒してくれるなら畑一つ二つ分くらいは諦める、と言質は取ってありますから、畑の被害はあまり気にしなくても大丈夫です。追い詰められると逃走するようですが、くれぐれも逃がさないでくださいね」

 説明は終わり、とばかりに自分用の資料を閉じた職員は、どうやって逃がさず討伐するか思案していたハンターたちから視線を外し、やや俯いて口を開いた。
 これはあくまで独り言ですが、と前置きして。
「依頼人には諦めると言っていただきましたが。なるべく被害を抑えていただけると助かります」
 と、変わらず抑揚のない声色で告げると、誰の反応も待たずに顔を上げ。
「それでは、よろしくお願いします」
 そう言って頭を下げた。

リプレイ本文

 村に向かう道すがら、ハンターたちは馬車の中で雑談に興じていた。
 とはいえ出身や年齢、種族すらバラバラな集団だ。内容は自然と共通の話題、今回の依頼のことになる。

「スライムってのは魔法生物だったよな?」
「うむ、魔法公害で生まれる代表みたいな奴らだな」
「ってことは……また後始末かよ」
 ヴァール(ka1900)に確認し、ジルボ(ka1732)はうんざりしたように息を吐いた。
 この前も魔法公害絡みの依頼を受けたばかりらしい。
 稼ぎの種ではあるが、いい加減にしろと言いたくもなる。不甲斐ない駐在兵に文句の一つもつけたいくらいだ。
「ま、動物じゃなくて良かったと言うべきか……」
 雰囲気こそエルフらしからぬデルフィーノ(ka1548)だが、動植物を愛する心は本物だ。そんな彼にとって討伐対象がスライムなのは幸いだった。
「こういう被害を見ると魔法も良い面ばかりではないと実感するね」
 フラヴィ・ボー(ka0698)が物語の中に夢見ていた魔法という存在。しかし実際に触れたそれは決して万能ではなく、負の側面は公害という形で人々の生活を脅かしている。
「とても興味深い生物だけれども、依頼で受けた以上確り駆除しないとね」
 クリムゾンウェストではさして珍しくもないが、橘 遥(ka1390)が暮らしていたリアルブルーには存在しない未知の生物だ。研究者肌の彼女が興味を持つのも無理からぬことか。
「うんうん、興味深いよねー。ぷにぷにお肌のくせに、生意気にも物理攻撃耐性とかあるみたいだし♪」
 そんな遥の言葉に可愛らしく同意を示したのは夢路 まよい(ka1328)だった。
 もっとも、興味深いのニュアンスが遥のそれとはズレていたが。
「物理に耐性があるだけではないぞ!」
 突如ヴァールがグイッと身を乗り出してきた。
「スライムの赤い奴。教義によれば他者を蹴る反動を利用した推進法で通常の3倍の速度をたたき出す事も可能という」
 何やら真面目な表情で、リアルブルーの何かで聞いたような説明をするヴァール。
 語っている本人は至って真面目、というか教義と言っているように一応宗教らしいのだが、聞いている遥は微妙な反応だ。
「さらにスライム属性付きとなると……卑猥な! まったく本当に侮れん相手だな!」
「……あなたはいったい何を言ってるのかしら」
「クリムゾンウェストのスライムは化け物かー」
 疲れたように突っ込む遥に、これまたどこかで聞いたようなセリフで乗っかるまよい。
 どうやら教義は理解されなかったらしい。
 彼女が信仰する宗教『モエはジャスティス』が理解される日は来るのかは神のみぞ知る。何の神様かは知りません。

 すぐ傍で行われている説教をガン無視し、というか巻き込まれないように背を向けて。サヴィーナ・L・モーント(ka2620)は無言のナガレ・コールマン(ka0622)に話しかけた。
「麦畑に巣を作るなんてスライムも小麦が大好きなのかしらね?」
「さあな。それよりスライムが小麦を食うのか」
 最近この世界にやってきたナガレはスライムについて基本的な特性しか知らなかったが、話に聞くそれが小麦を食べるとは想像し難かった。
 少しぶっきらぼうな言い方になったが、サヴィーナは気にした様子もなくクスリと笑って私も知らないわ、と返す。
「何にせよ、人に迷惑かけてる以上倒さない訳には行かないわね」
 と決意を新たにした彼女に、それは同意だと、ナガレも静かに頷いた。



 馬車に揺られること四半日。
 村に着いたハンターたちは村長を伴い小麦畑を歩いていた。
 スライムが根城にしている畑は村の男衆が交代で見張っているが、未だ動きは報告されていないらしい。

「あそこです」
 歩くことしばし。立ち止まった村長が指さしたあたりを見る。
 格子状に規則正しく広がる畑の中に空いた空白がいくつか。
 スライムがいる場所として指し示された穴の位置を確認し、フラヴィは背負っていた荷を下ろす。
 ジルボも網柵の材料を借りたいと村長に頼んだのだが、村長の反応はあまり良くない。
 彼らの作戦は、網で小麦畑の傍にある道を囲み、逃げ道を封じた上で殲滅するというものだった。
 そのために必要となる網を村で調達しようと考えていたのだが、これが意外に難航していた。
 広大な小麦畑はとても囲めないため、この村には網の類は殆ど置いていなかったのだ。
 フラヴィも加わって交渉を続け、なんとか村人の協力を得ることはできた。足りない分はフラヴィが持参したテントや収穫用の麻袋で代用する。
 万一の場合を考えて村長と見張りの男性を村に返し、作業すること一時間。
 急ごしらえではあるが網で囲われた袋小路が出来上がった。
 網柵の作成中、遥が畑を見張っていたのだが、全く襲ってくる気配はなかった。話に聞いた通り、こちらが何もしなければ襲ってくることはないようだ。

「さて、本番はここからだ。気合いを入れろ」
 汗を拭ったナガレが魔導銃を取り出し起動させる。
 皆も次々と持参した装備を抜き、或いは安全装置を解除して畑を見据える。
 自然と高まる緊張。

 と。

「つーか穴に潜んだスライム? んなもん俺の発破で吹っ飛ばせばいいじゃん」
 突然ジルボがそんな冗談のようなことをのたまった。
 張り詰めていた空気が弛緩する。
「え、やっちゃっていいの?」
「いいわけないだろう。何のために網柵を作ったと思ってるんだい」
 まよいは意外にノリノリで、そんな二人を諌めるフラヴィ。
「冗談言ってないで始めましょう」
「へいへい、皆真面目だな」
 遥がさらりと一蹴し小麦畑に踏み出すのを見て、ジルボはおどけたような表情を浮かべるも、すぐに表情を戻しその後に続いた。
 元軍人のナガレはそれが緊張を解すためのものだと理解する。
 そして余計な世話だと思いつつも、その口元にはほんの僅か笑みが浮かんでいた。


 仲間が配置についたのを確認し、ジルボとデルフィーノが穴を見据えた。
「じゃあ始めるか」
「気をつけろよ。穴が繋がってるかもしれねぇ」
 デルフィーノの忠告に軽く返事を返すと、石を拾い上げる。
「やめてくれと懇願するまで石を投げ込んでやる」
「スライムもとんだ奴に目をつけられたもんだ」
 ゲスい顔を浮かべたジルボに軽く笑って軽く投げ込んだ。
 待つことしばし。
「……出てこねーな」
「これならどうよ」
 ジルボが掴みあげたのは二回りほど大きい石だった。振りかぶって投擲する。
 放物線を描いて石が穴に消えたと同時、鈍く湿った音が耳に届く。
 手応えあったとジルボが思った瞬間、赤い何かが弾かれたように飛び掛かってきた。
 辛うじて腕で防ぐも、衝撃を堪え切れずたたらを踏んで転びかける。
 そこに追い打ちをかけようとするスライムだが、デルフィーノが横から突き放った機導剣を避けるためにやや距離が開いた。
 軽く息を吐き、アルケミストタクトを戻す。
 ダメージはないが、怒っているのかプルプルと体を震わせるスライム。
 それを見て悪童のようにニィっと笑ったジルボは、もう一度思い切り石を投げて駆け出した。

 遥はジルボを追うスライムから視線を外し、もう一匹が潜んでいるらしい穴に視線を移す。
 動く気配はない。
 それでも、いつ襲ってきても対応できるように警戒を緩めず穴を見つめるのだった。

 脇目も振らずジルボを追ったスライムは、罠とも知らず柵に囲まれた袋小路に入り込む。
 出口を封鎖したのを確認し、サヴィーナが動いた。
「大古の精霊よ……私に力を貸して頂戴!」
 ジルボとすれ違うように駆け、手にしたショートソードを振るう。
 流れるように繰り出された斬撃は、しかしスライムの体を僅かに削り取るに留まった。
 それでも足を止めるには十分で。向かい合う形になったスライムとサヴィーナの耳に、この場に不釣り合いな声が届いた。
「あははっ、スライムってぶよんぶよんで、なんか面白~い」
 声の主は普段の調子を崩さない。
「ん~っ、あなたの飛び散る姿、是非とも私に見せて欲しいわ~♪」
 まよいは明るく、しかし物騒な言葉を吐きながら、精神を集中させ周囲に満ちるマテリアルを感じ取る。
 風の精霊から力を引き出しながら、思い出すのはいつかギルドで聞いた話。
『スライムは魔法公害で生まれた生物だから過剰なマテリアルを含んでるけど、そこに過剰な魔法をぶち込んだらどうなるのかしら』
 ギルドマスターの言葉を試すいいチャンスだと、いつも以上の力を魔法に注ぐ。
「いっけ~♪」
 杖を振ると同時に解き放たれた風の刃は、足を止めていたスライムを過たずに捉え――

 パン、と。意外にも乾いた音を立てて弾け飛んだ。

「おいおい一発かよ……」
「あはっ、ホントに飛び散っちゃった~♪」
 これを成した本人はご満悦だったが、他の面々は実にあっさり消し飛んだスライムに言葉がない。
 でもまあいいか、と。気を取り直して二体目を誘き出そうと畑に目を向けたとき、穴を警戒していた遥から鋭い声が飛んだ。
「スライムが動くわ!気を付けて!」
 言うが同時、脚にマテリアルを集中。瞬脚で距離を詰める。
 チェーンウィップを打ち付けるように振るうと、ちょうど飛び出してきたスライムにぶち当たり、ビチャリと嫌な音を立てた。

 遥の声に反応したハンターたちは、すぐに罠から取って返す。
「さっきのより大きい。より卑猥だな!」
 卑猥度はさておき、ヴァールの言うように最初のスライムより二回りは大きい。
 分身を倒されて怒っているのだろうか。スライムに仲間意識があったのかは不明だが、自分からハンターたちが集っている方に向け突撃する。
 そんなスライムを罠の奥から狙うフラヴィ。攻性強化を自身に施し、魔導銃を構え、向かってくる的に照準を合わせる。
 引き金を引くと、銃口から奔った一条の光線が粘性のボディーを抉り風穴を開けた。
 たまらず取って返そうとするスライムを見て、ジルボが猟銃を構える。
「合わせてくれ!」
 投げられた言葉。
 その意を理解したナガレが同様に魔導銃を構えた。
 すぐさまスライムの移動方向に向けジルボが放ったのは牽制のための射撃。
 本能的に一瞬動きが硬直したその隙を見逃さず、ナガレの弾丸がスライムの体に飲み込まれる。
 効果は薄い。
 それを見てナガレは成程と納得していた。
 物理攻撃が効き難いというのは判っていたが、ではマテリアルで動く魔導機械も同じなのかという疑問があったのだ。
 思うに、魔導機械は動力にマテリアルを使用しているに過ぎず、弾丸自体はただの物質である以上、魔法に準ずる効果は見込めないということか。
 ままならないと思いつつ、再び銃を構える。
 先程までの威勢はどこへやら。一転逃げようとするスライムの前にヴァールが立ちはだかる。
「逃がさんよ! 人々に迷惑をかける上に卑猥なお前には容赦せん!」
 ドワーフの膂力でもって叩きつけられたロッドは、湿った音を立ててスライムに沈みこむ。
「ううむ……これは嫌な感触だな」
 あまり効いているようには見えないが殴り続ければ多少は意味があるだろうと、ロッドを引き抜く瞬間、スライムが全力でぶつかってきた。
「なにっ!?」
 思わぬ突進で突き飛ばされる形になったヴァールの横を、スライムらしからぬ速度で駆け抜けるスライム。
 焦るヴァールだったが、逃げるスライムを瞬脚で回り込んでいた遥の鎖鞭が薙ぎ払う。
「速さは貴方の専売特許じゃないわよ♪」
 さらにランアウトで追いついたサヴィーナとで前後を挟み、追い詰める。
 前後を挟まれ、さらに左右は網と布の柵。後方からは銃と魔術が狙いをつけている。
 完全に逃げ場を失ったスライムが取った行動は、それでもひたすら逃げの一手だった。遥の脇を潜り抜けての逃走を敢行する。
 しかし。
「潔いのは感心するけど逃がさないわよ?」
 サヴィーナの斬撃がスライムを両断した――と、思った瞬間。
 二つに分かれたスライムがそれぞれ独立して動き出したのだ。
 分裂したスライムは同時に遥へと突進する。
「――っ!!」
 なんとか反応して片方は躱すも、もう一方は躱し切れず脚に攻撃を受けてしまう。
 軽装の位置に速度の乗った攻撃を受け、苦痛の声を漏らしかけるも、咄嗟に鎖鞭の持ち手部分で打ち据える。
 地面に叩きつけられたスライムは生への執着か、なおも逃げようとする。
 そしてもう片方のスライムは遥を越え、柵の外へ逃れる寸前だったが……
「頑張ったね~。でも残念でした~♪」
 柵を越える寸前、後方から飛来した風刃に切り裂かれ。
 残ったもう一匹も、追いついたデルフィーノの機導剣に穿たれる。
 スライムの息の根を止めるのはそれだけで十分だった。

 こうしてハンターたちはスライムを取り逃がすことなく。そして小麦畑に大きな被害を出すこともなく、スライムの討伐を完遂したのだった。



「精霊の癒しを――ヒール」
 遥の脚を包み込んでいた柔らかい光が消えると、確かにそこにあった痛々しい青痣が跡形もなく消えていた。
「これで良し。まだ痛みはあるか?」
「いえ、もう大丈夫。ありがとう……」
 傷は見た目ほど大したことはなかったらしく、一度のヒールで問題なく完治した。
 何かが守ってくれたのだろうかと考え、ふと街にいる友人が思い浮かぶが、偶然だろうと一蹴する。

 サヴィーナは「少し麦畑を見てくるわ」と言って離れ、ゆったりと畑を見て歩いていた。
 日は傾きかけ、太陽に照らされる小麦畑はどこか懐かしい。旅の中で似た景色を見たことがあったかもしれないし、なかったかもしれない。
 ただ一つ確かなのは、今はゆっくりとこの景色に浸っていられるということだった。

 一方、フラヴィとデルフィーノは無事討伐したことを村長と、小麦畑の持ち主である依頼人に報告していた。
「――というわけで小麦畑には目立った被害はありません。ただ、万が一ということもあるので一度確認してほしいのですが」
「まあ……柄じゃねーけど、スライムの開けた穴の修繕とかやってみてやっても良いぜ? 小麦っつったら貴重な食料源だからな」
 二人の好意に、依頼人はところどころ包帯が巻かれた痛々しい姿ながらも明るく笑い。
「はは、ありがとよ。でも大丈夫だ。村の奴らに手伝ってもらって少し早めに収穫するからな」
 自分で収穫できないのは少し歯痒いけどな、と苦笑したがその顔に憂いはなかった。
 それを見て、二人は安心したようにそうですかと返し。
「しかし残念だな。代わりに酒の一杯でも奢って貰おうと思ったのによ」
「お、いいじゃないか! あんたたちは恩人だ。酒の一杯や二杯奢ってやるよ!」
 どうせなら村を上げて宴会するか、一足早い収穫祭だ、今日は皆泊まっていけばいいなどなど、思わぬ形で進んでいく話に、軽い気持ちで口にしただけだったデルフィーノは苦笑するしかなく。

 結局、その日は夜が明けるまで村から明かりが消えることはなかったという。

依頼結果

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MVP一覧


  • フラヴィ・ボーka0698
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよいka1328

重体一覧

参加者一覧


  • ナガレ・コールマン(ka0622
    人間(蒼)|27才|男性|機導師

  • フラヴィ・ボー(ka0698
    人間(蒼)|18才|女性|機導師
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師

  • 橘 遥(ka1390
    人間(蒼)|21才|女性|疾影士
  • 誘惑者
    デルフィーノ(ka1548
    エルフ|27才|男性|機導師
  • ライフ・ゴーズ・オン
    ジルボ(ka1732
    人間(紅)|16才|男性|猟撃士
  • 撲滅聖導士
    ヴァール(ka1900
    ドワーフ|10才|女性|聖導士

  • サヴィーナ・L・モーント(ka2620
    エルフ|19才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼相談卓
夢路 まよい(ka1328
人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2014/07/13 23:56:04
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/07/09 11:47:17