ゲスト
(ka0000)
空からくる敵
マスター:からた狐

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~20人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2015/06/23 12:00
- 完成日
- 2015/07/07 22:32
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
雨で川が増水。かかっていた橋が流されてしまった。
付近の交通の要である為、ただちに周辺の街や村から資金や資材が集まり、復旧が始まった。
けれど土台を敷き、木材をくみ上げようとした矢先に邪魔が入る。
ワイバーンだ。それも歪虚化した雑魔と見る。
ただでさえ素早く空を飛び回る竜が四体。橋の工事現場に現れるや、作業員たちに襲いかかった。
重傷軽傷多数出したが、死者はかろうじて出ず。作業員たちは近くの村に逃げ込み、必要な治療を受けている。
以来、工事を再開させようと現場に近付いても、奴らはどこからともなく現れ、空の高みから瞬く間に地上付近へと降りて来る。昼だろうと夜だろうと、奴らから逃れられない。
現在、一帯は封鎖され、新たな犠牲者は出ていない。けれど、獲物が来ないのであれば、やがて奴らは動き出す。近くの人里が襲われ出すのも時間の問題だろう。
また、橋が架からねば流通に支障が出る。長引くほどに、近隣の生活に影響を出し、死活問題にもなる。
この事態を受けて、ただちにハンターたちが集められる。
「ワイバーンは火を吹いたり魔法を使うようなことはしません。彼らが人を襲おうとすれば、必ず地上に降りて来る訳で、そういう意味では大きな鳥とさして変わらないものと想像いたします」
もっとも4mの巨鳥がさらっとそこらにいるものでもないが。
滑空しての爪や牙による攻撃。それも素早く二回攻撃を繰り出すことも可能。尻尾や巨体による単純な体当たりも、当たれば弾き飛ばされかねない。捕まって空に持ち上げられて落とされれば、高度によっては覚醒したハンターでもどうなるかは簡単に想像できる。
「川ですが、増水はおさまったそうです。ですが、まだ流れは速く、元からけっこうな深さもあるのだとか。うっかり落ちるとあっという間に下流まで流されると予想されます。そういう時は、皆さまハンターとしての誇りにかけて、自力で泳ぐなりして戻って来て下さい」
川の水はまだ冷たい。はまらないのが吉だろう。
「周辺は河原で大変見通しが良くなっております。ですから一般人でも空からの接近に何とか気付いた訳ですが、同時に奴らからも身を隠すのは難しいと思われます。一応、橋の修復に使う材木や石材が大量に運び込まれています。これらに隠れることも可能ではありますが、これらに紛失欠損が出るようでは橋の修復が遅れるので好ましくはありません」
そこでハンター側から、疑問というか提案が上がった。
「河原以外で戦える場所は無いのか?」
「ワイバーンをおびき寄せた後、道沿い川沿いに移動は可能でしょう。ただ近くには街もございますので、そちらにワイバーンが気付けば即座に襲いに向かうと思われます」
何せ無力な獲物が豊富に集まっている。数名とはいえ手ごわいハンターを相手にするよりも巣に飛び込む方が、ワイバーンとしては面白かろう。
今留まっているのも、単に次にどこを襲うのか選択肢が多すぎて迷っている、という感じでもある。
「空を飛ぶ相手はいささか厄介ではありますが。皆様なら撃破可能でしょう。すみやかにこの脅威を排除していただきます」
にっこりと笑うオフィスの事務員から目をそらすと、ハンターたちは依頼を受けるかを考えだした。
付近の交通の要である為、ただちに周辺の街や村から資金や資材が集まり、復旧が始まった。
けれど土台を敷き、木材をくみ上げようとした矢先に邪魔が入る。
ワイバーンだ。それも歪虚化した雑魔と見る。
ただでさえ素早く空を飛び回る竜が四体。橋の工事現場に現れるや、作業員たちに襲いかかった。
重傷軽傷多数出したが、死者はかろうじて出ず。作業員たちは近くの村に逃げ込み、必要な治療を受けている。
以来、工事を再開させようと現場に近付いても、奴らはどこからともなく現れ、空の高みから瞬く間に地上付近へと降りて来る。昼だろうと夜だろうと、奴らから逃れられない。
現在、一帯は封鎖され、新たな犠牲者は出ていない。けれど、獲物が来ないのであれば、やがて奴らは動き出す。近くの人里が襲われ出すのも時間の問題だろう。
また、橋が架からねば流通に支障が出る。長引くほどに、近隣の生活に影響を出し、死活問題にもなる。
この事態を受けて、ただちにハンターたちが集められる。
「ワイバーンは火を吹いたり魔法を使うようなことはしません。彼らが人を襲おうとすれば、必ず地上に降りて来る訳で、そういう意味では大きな鳥とさして変わらないものと想像いたします」
もっとも4mの巨鳥がさらっとそこらにいるものでもないが。
滑空しての爪や牙による攻撃。それも素早く二回攻撃を繰り出すことも可能。尻尾や巨体による単純な体当たりも、当たれば弾き飛ばされかねない。捕まって空に持ち上げられて落とされれば、高度によっては覚醒したハンターでもどうなるかは簡単に想像できる。
「川ですが、増水はおさまったそうです。ですが、まだ流れは速く、元からけっこうな深さもあるのだとか。うっかり落ちるとあっという間に下流まで流されると予想されます。そういう時は、皆さまハンターとしての誇りにかけて、自力で泳ぐなりして戻って来て下さい」
川の水はまだ冷たい。はまらないのが吉だろう。
「周辺は河原で大変見通しが良くなっております。ですから一般人でも空からの接近に何とか気付いた訳ですが、同時に奴らからも身を隠すのは難しいと思われます。一応、橋の修復に使う材木や石材が大量に運び込まれています。これらに隠れることも可能ではありますが、これらに紛失欠損が出るようでは橋の修復が遅れるので好ましくはありません」
そこでハンター側から、疑問というか提案が上がった。
「河原以外で戦える場所は無いのか?」
「ワイバーンをおびき寄せた後、道沿い川沿いに移動は可能でしょう。ただ近くには街もございますので、そちらにワイバーンが気付けば即座に襲いに向かうと思われます」
何せ無力な獲物が豊富に集まっている。数名とはいえ手ごわいハンターを相手にするよりも巣に飛び込む方が、ワイバーンとしては面白かろう。
今留まっているのも、単に次にどこを襲うのか選択肢が多すぎて迷っている、という感じでもある。
「空を飛ぶ相手はいささか厄介ではありますが。皆様なら撃破可能でしょう。すみやかにこの脅威を排除していただきます」
にっこりと笑うオフィスの事務員から目をそらすと、ハンターたちは依頼を受けるかを考えだした。
リプレイ本文
依頼を受け、現場となる川辺に堂々姿を見せたのは五人のハンターたちだった。
川の水かさは減ったものの、流れはまだ速い。うっかり落ちると、いらぬ運動を強いられそうだ。
橋脚らしき物が突き刺さっているが、橋げたなどは無く。あれでは対岸には渡れない。
岸を見れば、そこいらに大量の板や石が運び込まれて、整然と修復の時を待っている。というのに、それ以上、作業は進んでいない。
作業を邪魔するやからがいるからだ。
ワイバーン。しかも歪虚化した恐るべき敵が四体。人を獲物として、狩場にしているという。
「雨と雑魔の被害が重なる事案が増えておりますね」
麗奈 三春(ka4744)が空を見上げる。幸い、今日の天候は晴れ。心配しなくてもいい。
だが、雲は目立つ。周辺には森もあり、隠れる場所には事欠かない。
周辺地域の交通の要所だけあって、至る道は立派な物。近くには村や街も少なくない。寸断されたままでは、生活に支障をきたす。
「まさに死活問題。私たちを頼ってきてくれた人たちの期待に応える為にも負けられませんね」
レオン・フォイアロート(ka0829)は黄金拳銃を取り出し、備える。
工事は途中。再開できるかはハンターたちの腕次第。
●
待つ必要はほとんど無かった。
空を見ていると、雲の切れ間から巨大な影が近付いてくる。遠目でも、かなりの巨体と分かる。
「あれが件の復旧を邪魔するワイバーンか。すみやかに排除するのみじゃ。――用意はよいな」
ジェニファー・ラングストン(ka4564)の視線がちらりと周囲に逸れる。トランシーバーでの連絡は相手も持っていなければ役に立たない。
材木の影、少し離れて森の縁。それは空からでも見えにくい場所であるが、向こうからはこちらの位置は見えているはず。
「歪虚などという害悪な存在……。許してはおけません」
レイ・T・ベッドフォード(ka2398)も歯噛みするほど険しい表情で、迫る標的を見据えている。
もっとも憤っている理由は、他の人とは少し違う。
(歪虚化さえしていなければ……。食卓を彩ることが出来たものを)
ワイバーン料理が美味しいのかは疑問だが。レイにとっては重要な事柄である。
「さあ、楽しませてもらおうか」
高所から風を切って降りてくる敵に、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)はさらに闘志を高ぶらせる。
竜殺し。ハンターとして魅力的な称号ではあるが、それを得る為にはどれほどの実力が必要か。
そもそも出会える可能性も分からない。それでもいつか来る時の為に、今目の前の相手には練習台になってもらう。
●
彼方に姿を見つけて、即座に迎撃の姿勢をとった。――はずなのに、気付けばワイバーンの姿は間近にあった。
鉤爪が、牙が。眼前にまで迫っている。
だが、一直線に獲物を狙って来た相手は、狙いもつけやすかった。
銃声が三つ響く。一つは黄金拳銃を構えていたレオンのもの。残る二つは、距離をとって隠れていたアバルト・ジンツァー(ka0895)と夕凪 沙良(ka5139)によるものだ。
伏兵は全く想定してなかったのか。ワイバーンの三体の体勢が崩れ、残る一体も巻き込まれた形で身体がふらついた。
傷がつかなかった個体を見抜くと、アルトは盾を掲げる。
突き出された鉤爪をシールド「サルヴェイション」でさばくと、立体攻撃で飛び上がった。
「その翼刈らせてもらう」
飛行能力を奪うのが第一。
長く伸びた髪がオーラと共に炎のようにたなびく。さながら吹き上がる火柱の如く、されど目の炎はむしろ冷淡にワイバーンを見据え、特殊な日本刀を素早く二回斬りつける。
だが、多少のダメージではワイバーンたちは落ちない。いきなりの攻撃に驚いたか、ふらついてはいるが、それでも一旦有利な場所を取ろうと、上空に舞い上がろうとする。
そこにさらに銃声が響き、ワイバーンの動きを阻止する。
「長引けば、囮役の皆に負担がかかる。早く片付けるからな」
飛び回る相手の動きに合わせて、アバルトはライフル「ペネトレイトC26」で狙い定める。弾には冷気を纏わせている。レイターコールドショット。傷つけられれば冷気でたちまちで行動を鈍らせる。
撃てばヒットしようと外れようと、すぐにその場を移動。
置かれている資材の位置、敵の場所、味方の動き。それらを把握しつつ、自身の居場所は特定されないよう、一発撃つごとに物の陰から陰へ。軍人経験からか、その動きは機敏で迷いが無い。
●
動きが鈍れば、高度も下がる。
「ヲオオオオオオ!!」
振り払うようにワイバーンが吠えた。そのまま落ちて来る。
いや、落下の力を利用して、ハンターの一人に狙いをつけていた。
攻撃されているのは、猿程度の頭でももう理解している。逃げるのではなく、より猛ったのはワイバーンの気性か、歪虚の質か。
そして、隠れた敵を探すよりも目先の相手。それも弱い者を狙うのは、動物としても当たり前だろう。
「うお、っと。っと」
ジェニファーは河原をよろめき転びながら移動している。その間が抜けた動きに、ワイバーンがいい獲物だと、つかみかかろうとした。
その動きをジェニファーはドッジダッシュで大きく躱すと、距離を取る。
「おぬしごときに捕まえられるかな」
尻を振って挑発し、瞬脚で逃げる。
旋廻して追ってきたワイバーンは、たちまち距離を詰める。
追いつく前に、ワイバーンの頭部が弾けた。射程に有利な場所におびき出されていた。
やはり陰に隠れながら、沙良が魔導銃で狙いをつけていた。
「逃がしは……しない……!」
マテリアルを込めて高めた凶弾。さすがにかなりのダメージになったようだが、怒りの目が今度は沙良に向く。位置を移動する前に、目をつけられた。
羽ばたくが高度は低く。その隙に、ジェニファーが後方に回り込むと、チタンナイフを翼に打ち込む。
ワイバーンが奇声を上げる。
飛ぶというよりも地を蹴り、一足飛びに沙良へと飛び込んで来た。
「どこに目をつけている。こっちに来い」
援護組に向かいだしたワイバーンに、アルトは魔導拳銃「エア・スティーラー」を持ちだす。
あまり好きではないが、空に逃げる敵の為に用意はしていた。走っても追いつけそうにないと見切りをつけると、注意を引くべく引き金を引く。
だが、目をつけた獲物を見逃せないのか、ワイバーンの突撃は止まらない。
沙良は当然逃げる。少し前まではいた場所が、資材ごと派手に蹴散らされる。
雄叫びを上げて、ワイバーンが噛みついてきた。牙が沙良の長い髪を捕える。けれどそれは覚醒した際に浮かんだ幻影。結局何も捕えられない。
そして、今が好機と沙良は至近距離からワイバーンを撃つ。
ワイバーンはしぶとい。どれほど体力が有り余っているのか、なかなか衰えを見せない。
自在に空を飛ぶ相手は、地上の相手を嗤うかのように、突撃と離脱を繰り返す。
「川には気をつけて。振り払われて落ちても助けにはいけませんから」
三春が声をかける。
避けたつもりでも、巨体にはね飛ばされるとどうなるか分からない。川にはまっても戻る気ではいるが、それまで状況が待ってくれるか。
「……やはり地を這う我々では空駆ける飛竜の相手は少々分が悪いな」
アバルトは狙い定めて撃ち続けるが、百発百中とはいかない。
地上に近付けば反撃のチャンスだが、攻撃をくらう危険な瞬間でもある。時には誰かがその爪にひっかけられ、高みに連れらそうになることも。
「連れて行かれるのは御免ぞ」
さすがに空から落とされてはハンターでもたまらない。ジェニファーはデリンジャー「プルンブム」を引き抜くと、足に向かって打つ。
高度が低い内に解放させるが、獲物を落としたワイバーンはもう一度と別の獲物に狙いを定める。
「ならば、力比べと参りましょう」
滑空する勢いのままに、ワイバーンが飛び込んでくるのを、レイは正面から待ち受ける。
全身鎧「ソリッドハート」。さすがグラズヘイム王国騎士団御用達ブランドだけあってか、ワイバーンの爪牙も阻む。
それでも当たり所が悪ければ、危うくなる。過信はせず、けれどもその性能を信じて、攻撃を鎧で受け止めると、雷神斧を大きく振りぬく。
祖霊の力を込めた刃は、重い音を立てて翼を削ぎ落していた。
「料理しがいのない手羽先など、貰っても困ります」
片翼となりバランスを崩して転倒するワイバーン。
翼を落としても油断はできない。飛べなくなっただけのでかいトカゲでも、派手に暴れまわる。
「我が一閃。避けられるか!」
レオンは墜ちたワイバーンへと突撃する。その勢いを日本刀「村雨丸」に乗せ、大きく踏み込み、振るった。
刺突一閃。巨大な体を的確に捕えるが、傷ついた相手は咆哮と共に尻尾を振るい、辺りにあるすべてを倒そうとする。
「ここにあるのは大事な資材。暴れて壊す真似など、お止めいただきましょう」
無秩序な攻撃でも軌道を読み。三春は大太刀「獅子王」を水平に構え、周囲に浮かぶ赤と緑の狐火も置き去りにしそうなほどに疾風となって駆ける。
なびいていた髪に浮かんだ三日月が揺らめく。
ワイバーンに大太刀を突き刺せば、アバルトも確実に仕留めるべく狙い撃つ。
「だが、こちらにも対抗する術もある。易々と倒せると思わないで貰おう」
相手は断末魔の悲鳴を上げる。
そこにレオンが渾身撃で上段から振り下ろす。
首を斬り落とすほどの攻撃で、ようやくワイバーンは動きを止めた。
●
一匹倒してもまだ三匹いる。二匹倒しても二匹残る。
たやすい戦闘ではなかった。
四匹すべてを地に落とし、息の根を止めた時には、全身満身創痍に近い状態になっていた。
「来た時よりも美しく……。それが当家の教えです」
レイは堅固な鎧に守られ比較的元気にしているものの、その鎧も傷だらけになっていた。
雑魔の肉に恨みがましい目も向けたが、今は荒れた戦場跡を整理にかかっている。
なるべく資材を傷つけないよう気を付けたつもりだが、被害は皆無ではなかった。何せ歪虚たちは人間の都合など全く考慮してくれない。
「こういうのは予備分もあるからな。さほど心配するような損害でもなさそうだ」
それよりも、と、アルトは彼方を見る。
「ワイバーンがどこかで繁殖でもしていなければいいけどねぇ……」
さらに歪虚化までしていたら、目も当てられない。
だが、さすがに探しに出かける余力もなければ、依頼の外でもある。今できそうなのは、付近の住民に当分は警戒してもらうよう、呼びかけておくぐらいか。
「街にまで出る個体がいなくて良かったです」
もし離脱するワイバーンがいれば、率先して落とすつもりの沙良だったが。相手は目の前の強敵に夢中でそれどころではなかったようだ。
人が無事なら、すぐに橋の修復にも取り掛かれる。橋が戻れば、何事もなかったように以前の日常に戻るだろう。
川の水かさは減ったものの、流れはまだ速い。うっかり落ちると、いらぬ運動を強いられそうだ。
橋脚らしき物が突き刺さっているが、橋げたなどは無く。あれでは対岸には渡れない。
岸を見れば、そこいらに大量の板や石が運び込まれて、整然と修復の時を待っている。というのに、それ以上、作業は進んでいない。
作業を邪魔するやからがいるからだ。
ワイバーン。しかも歪虚化した恐るべき敵が四体。人を獲物として、狩場にしているという。
「雨と雑魔の被害が重なる事案が増えておりますね」
麗奈 三春(ka4744)が空を見上げる。幸い、今日の天候は晴れ。心配しなくてもいい。
だが、雲は目立つ。周辺には森もあり、隠れる場所には事欠かない。
周辺地域の交通の要所だけあって、至る道は立派な物。近くには村や街も少なくない。寸断されたままでは、生活に支障をきたす。
「まさに死活問題。私たちを頼ってきてくれた人たちの期待に応える為にも負けられませんね」
レオン・フォイアロート(ka0829)は黄金拳銃を取り出し、備える。
工事は途中。再開できるかはハンターたちの腕次第。
●
待つ必要はほとんど無かった。
空を見ていると、雲の切れ間から巨大な影が近付いてくる。遠目でも、かなりの巨体と分かる。
「あれが件の復旧を邪魔するワイバーンか。すみやかに排除するのみじゃ。――用意はよいな」
ジェニファー・ラングストン(ka4564)の視線がちらりと周囲に逸れる。トランシーバーでの連絡は相手も持っていなければ役に立たない。
材木の影、少し離れて森の縁。それは空からでも見えにくい場所であるが、向こうからはこちらの位置は見えているはず。
「歪虚などという害悪な存在……。許してはおけません」
レイ・T・ベッドフォード(ka2398)も歯噛みするほど険しい表情で、迫る標的を見据えている。
もっとも憤っている理由は、他の人とは少し違う。
(歪虚化さえしていなければ……。食卓を彩ることが出来たものを)
ワイバーン料理が美味しいのかは疑問だが。レイにとっては重要な事柄である。
「さあ、楽しませてもらおうか」
高所から風を切って降りてくる敵に、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)はさらに闘志を高ぶらせる。
竜殺し。ハンターとして魅力的な称号ではあるが、それを得る為にはどれほどの実力が必要か。
そもそも出会える可能性も分からない。それでもいつか来る時の為に、今目の前の相手には練習台になってもらう。
●
彼方に姿を見つけて、即座に迎撃の姿勢をとった。――はずなのに、気付けばワイバーンの姿は間近にあった。
鉤爪が、牙が。眼前にまで迫っている。
だが、一直線に獲物を狙って来た相手は、狙いもつけやすかった。
銃声が三つ響く。一つは黄金拳銃を構えていたレオンのもの。残る二つは、距離をとって隠れていたアバルト・ジンツァー(ka0895)と夕凪 沙良(ka5139)によるものだ。
伏兵は全く想定してなかったのか。ワイバーンの三体の体勢が崩れ、残る一体も巻き込まれた形で身体がふらついた。
傷がつかなかった個体を見抜くと、アルトは盾を掲げる。
突き出された鉤爪をシールド「サルヴェイション」でさばくと、立体攻撃で飛び上がった。
「その翼刈らせてもらう」
飛行能力を奪うのが第一。
長く伸びた髪がオーラと共に炎のようにたなびく。さながら吹き上がる火柱の如く、されど目の炎はむしろ冷淡にワイバーンを見据え、特殊な日本刀を素早く二回斬りつける。
だが、多少のダメージではワイバーンたちは落ちない。いきなりの攻撃に驚いたか、ふらついてはいるが、それでも一旦有利な場所を取ろうと、上空に舞い上がろうとする。
そこにさらに銃声が響き、ワイバーンの動きを阻止する。
「長引けば、囮役の皆に負担がかかる。早く片付けるからな」
飛び回る相手の動きに合わせて、アバルトはライフル「ペネトレイトC26」で狙い定める。弾には冷気を纏わせている。レイターコールドショット。傷つけられれば冷気でたちまちで行動を鈍らせる。
撃てばヒットしようと外れようと、すぐにその場を移動。
置かれている資材の位置、敵の場所、味方の動き。それらを把握しつつ、自身の居場所は特定されないよう、一発撃つごとに物の陰から陰へ。軍人経験からか、その動きは機敏で迷いが無い。
●
動きが鈍れば、高度も下がる。
「ヲオオオオオオ!!」
振り払うようにワイバーンが吠えた。そのまま落ちて来る。
いや、落下の力を利用して、ハンターの一人に狙いをつけていた。
攻撃されているのは、猿程度の頭でももう理解している。逃げるのではなく、より猛ったのはワイバーンの気性か、歪虚の質か。
そして、隠れた敵を探すよりも目先の相手。それも弱い者を狙うのは、動物としても当たり前だろう。
「うお、っと。っと」
ジェニファーは河原をよろめき転びながら移動している。その間が抜けた動きに、ワイバーンがいい獲物だと、つかみかかろうとした。
その動きをジェニファーはドッジダッシュで大きく躱すと、距離を取る。
「おぬしごときに捕まえられるかな」
尻を振って挑発し、瞬脚で逃げる。
旋廻して追ってきたワイバーンは、たちまち距離を詰める。
追いつく前に、ワイバーンの頭部が弾けた。射程に有利な場所におびき出されていた。
やはり陰に隠れながら、沙良が魔導銃で狙いをつけていた。
「逃がしは……しない……!」
マテリアルを込めて高めた凶弾。さすがにかなりのダメージになったようだが、怒りの目が今度は沙良に向く。位置を移動する前に、目をつけられた。
羽ばたくが高度は低く。その隙に、ジェニファーが後方に回り込むと、チタンナイフを翼に打ち込む。
ワイバーンが奇声を上げる。
飛ぶというよりも地を蹴り、一足飛びに沙良へと飛び込んで来た。
「どこに目をつけている。こっちに来い」
援護組に向かいだしたワイバーンに、アルトは魔導拳銃「エア・スティーラー」を持ちだす。
あまり好きではないが、空に逃げる敵の為に用意はしていた。走っても追いつけそうにないと見切りをつけると、注意を引くべく引き金を引く。
だが、目をつけた獲物を見逃せないのか、ワイバーンの突撃は止まらない。
沙良は当然逃げる。少し前まではいた場所が、資材ごと派手に蹴散らされる。
雄叫びを上げて、ワイバーンが噛みついてきた。牙が沙良の長い髪を捕える。けれどそれは覚醒した際に浮かんだ幻影。結局何も捕えられない。
そして、今が好機と沙良は至近距離からワイバーンを撃つ。
ワイバーンはしぶとい。どれほど体力が有り余っているのか、なかなか衰えを見せない。
自在に空を飛ぶ相手は、地上の相手を嗤うかのように、突撃と離脱を繰り返す。
「川には気をつけて。振り払われて落ちても助けにはいけませんから」
三春が声をかける。
避けたつもりでも、巨体にはね飛ばされるとどうなるか分からない。川にはまっても戻る気ではいるが、それまで状況が待ってくれるか。
「……やはり地を這う我々では空駆ける飛竜の相手は少々分が悪いな」
アバルトは狙い定めて撃ち続けるが、百発百中とはいかない。
地上に近付けば反撃のチャンスだが、攻撃をくらう危険な瞬間でもある。時には誰かがその爪にひっかけられ、高みに連れらそうになることも。
「連れて行かれるのは御免ぞ」
さすがに空から落とされてはハンターでもたまらない。ジェニファーはデリンジャー「プルンブム」を引き抜くと、足に向かって打つ。
高度が低い内に解放させるが、獲物を落としたワイバーンはもう一度と別の獲物に狙いを定める。
「ならば、力比べと参りましょう」
滑空する勢いのままに、ワイバーンが飛び込んでくるのを、レイは正面から待ち受ける。
全身鎧「ソリッドハート」。さすがグラズヘイム王国騎士団御用達ブランドだけあってか、ワイバーンの爪牙も阻む。
それでも当たり所が悪ければ、危うくなる。過信はせず、けれどもその性能を信じて、攻撃を鎧で受け止めると、雷神斧を大きく振りぬく。
祖霊の力を込めた刃は、重い音を立てて翼を削ぎ落していた。
「料理しがいのない手羽先など、貰っても困ります」
片翼となりバランスを崩して転倒するワイバーン。
翼を落としても油断はできない。飛べなくなっただけのでかいトカゲでも、派手に暴れまわる。
「我が一閃。避けられるか!」
レオンは墜ちたワイバーンへと突撃する。その勢いを日本刀「村雨丸」に乗せ、大きく踏み込み、振るった。
刺突一閃。巨大な体を的確に捕えるが、傷ついた相手は咆哮と共に尻尾を振るい、辺りにあるすべてを倒そうとする。
「ここにあるのは大事な資材。暴れて壊す真似など、お止めいただきましょう」
無秩序な攻撃でも軌道を読み。三春は大太刀「獅子王」を水平に構え、周囲に浮かぶ赤と緑の狐火も置き去りにしそうなほどに疾風となって駆ける。
なびいていた髪に浮かんだ三日月が揺らめく。
ワイバーンに大太刀を突き刺せば、アバルトも確実に仕留めるべく狙い撃つ。
「だが、こちらにも対抗する術もある。易々と倒せると思わないで貰おう」
相手は断末魔の悲鳴を上げる。
そこにレオンが渾身撃で上段から振り下ろす。
首を斬り落とすほどの攻撃で、ようやくワイバーンは動きを止めた。
●
一匹倒してもまだ三匹いる。二匹倒しても二匹残る。
たやすい戦闘ではなかった。
四匹すべてを地に落とし、息の根を止めた時には、全身満身創痍に近い状態になっていた。
「来た時よりも美しく……。それが当家の教えです」
レイは堅固な鎧に守られ比較的元気にしているものの、その鎧も傷だらけになっていた。
雑魔の肉に恨みがましい目も向けたが、今は荒れた戦場跡を整理にかかっている。
なるべく資材を傷つけないよう気を付けたつもりだが、被害は皆無ではなかった。何せ歪虚たちは人間の都合など全く考慮してくれない。
「こういうのは予備分もあるからな。さほど心配するような損害でもなさそうだ」
それよりも、と、アルトは彼方を見る。
「ワイバーンがどこかで繁殖でもしていなければいいけどねぇ……」
さらに歪虚化までしていたら、目も当てられない。
だが、さすがに探しに出かける余力もなければ、依頼の外でもある。今できそうなのは、付近の住民に当分は警戒してもらうよう、呼びかけておくぐらいか。
「街にまで出る個体がいなくて良かったです」
もし離脱するワイバーンがいれば、率先して落とすつもりの沙良だったが。相手は目の前の強敵に夢中でそれどころではなかったようだ。
人が無事なら、すぐに橋の修復にも取り掛かれる。橋が戻れば、何事もなかったように以前の日常に戻るだろう。
依頼結果
依頼成功度 | 普通 |
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面白かった! | 4人 |
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重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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![]() |
相談卓 夕凪 沙良(ka5139) 人間(リアルブルー)|18才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2015/06/22 22:28:36 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/22 03:08:57 |