ゲスト
(ka0000)
赤い頭巾は森を抜けて
マスター:御影堂
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
- 1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/06/26 09:00
- 完成日
- 2015/07/03 06:51
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「あの子が心配で心配でしかたがないわ」
「いや、そこは信頼しようよ」
「ダメよ、やっぱり、だめ。誰か護衛につけましょう」
王国内にあるとある村で、中年夫婦が言い争っていた。
妻の視線の先には、娘の寝室があった。
娘の名は、リコット。赤い衣装を好む、ちょっと変わった女の子だ。
「しかし、16才だぞ? もう立派なオトナだ」
「まだ、16才よ」
こういう場合、夫婦の話し合いというのは平行線になるものだ。
窓辺の近くでは、飼い犬が堂々とあくびをしていた。
空気の読めない飼い犬を睨めつけて、妻は続ける。
「それに……」
ここで一つ説明が必要だろう。
リコットは近々、祖母の家のある別の村へお使いに行く予定なのだ。
そのおつかいは、村の伝統行事のようなもので、成人の証にもなる。
妻もかつては、森を抜けて、その役目を果たしたものだ。
しかし、今年は事情が異なる。
「あなたも知っているでしょ?」
「あの噂か……」
噂というのは、森によからぬ獣が出るというものだ。
狼にも似た獣だというが、数匹で群れをなし、襲いかかってくるという。
猟師が狩りに出かけたが、右足と左腕を大きく損傷して命からがら逃げ帰ってきた。
「わかるでしょ?」
「そう、だな」
ここで夫が折れる。
「時期はずらせないんでしょ?」
「そいつは無理だし、村の連中は儀式の形式を重要視するだろうな」
精霊への祭祀を兼ねているのだから、他の村人は必死だろう。
最近の王国内の動きを鑑みても、ここは儀式をしっかり決めたいのだ。
「なら、ハンターにお願いしましょう」
「そう、だな。狼退治と護衛を両方つけておくしかないな」
「向こうの村で行われる祭は、旅人を祝福するから、うってつけよ」
よく頭の回る妻だと、鈍重な夫は思う。
明くる日、買い付けを理由に夫は村を経った。
もちろん、ハンターオフィスに依頼をすることが主な理由であったが、それは妻以外知らないのだ。
●
「森抜けの儀式というものですね」
博識だなと思った夫に、スタッフは苦笑を浮かべる。
「昔から、この手の依頼はちょくちょくあるんですよ」
「え」
「皆さん、表立っては言えないからでしょうね」
「じゃあ、村の連中には……」
「わかっている方もいるでしょうね。でも、言わずが花です」
「はい」
森抜けの儀式。
リコットの住んでいる村は、森を隔てていくつかの集落にわかれている。
それぞれが森の財産を共有し、役割を分担しているのだ。
森抜けの儀式は、それらの村々で若い娘もしくは少年が、森を抜けるというものだ。
名前のままであるが、その際に持ち回りで行われる祭りの供物を持っていく。
今回は、リンゴとワインだ。
森抜けを受ける側では、精霊への祈りを捧げる儀式が合わせて行われる。
そして、森を抜けてきた者や旅人を招いて宴が行われるのだ。
「リンゴということは、お祖母様はアップルパイを作られるのですか?」
「えぇ、よくしってますね」
「そちらの地方のアップルパイは美味しいと聞いてますから」
ただのグルメだった。
「あ、とりあえず、依頼は了解しました」
ハンターオフィスとしても、正体不明の獣を放置しておく訳にはいかない。
正式な討伐依頼としても、受けることになった。
「なるべく、娘さんにはわからないよう言い含めておきますね」
スタッフの笑顔に絆され、夫の緊張は完全にほぐれるのであった。
●
「さて、行くのですよ~」
ぽやんとした空気を醸し出して、リコットは家を出る。
非常に不安そうな夫を妻がたしなめるのを、笑いながらリコットは村を後にした。
そして、ハンターたちが動き出す……。
「あの子が心配で心配でしかたがないわ」
「いや、そこは信頼しようよ」
「ダメよ、やっぱり、だめ。誰か護衛につけましょう」
王国内にあるとある村で、中年夫婦が言い争っていた。
妻の視線の先には、娘の寝室があった。
娘の名は、リコット。赤い衣装を好む、ちょっと変わった女の子だ。
「しかし、16才だぞ? もう立派なオトナだ」
「まだ、16才よ」
こういう場合、夫婦の話し合いというのは平行線になるものだ。
窓辺の近くでは、飼い犬が堂々とあくびをしていた。
空気の読めない飼い犬を睨めつけて、妻は続ける。
「それに……」
ここで一つ説明が必要だろう。
リコットは近々、祖母の家のある別の村へお使いに行く予定なのだ。
そのおつかいは、村の伝統行事のようなもので、成人の証にもなる。
妻もかつては、森を抜けて、その役目を果たしたものだ。
しかし、今年は事情が異なる。
「あなたも知っているでしょ?」
「あの噂か……」
噂というのは、森によからぬ獣が出るというものだ。
狼にも似た獣だというが、数匹で群れをなし、襲いかかってくるという。
猟師が狩りに出かけたが、右足と左腕を大きく損傷して命からがら逃げ帰ってきた。
「わかるでしょ?」
「そう、だな」
ここで夫が折れる。
「時期はずらせないんでしょ?」
「そいつは無理だし、村の連中は儀式の形式を重要視するだろうな」
精霊への祭祀を兼ねているのだから、他の村人は必死だろう。
最近の王国内の動きを鑑みても、ここは儀式をしっかり決めたいのだ。
「なら、ハンターにお願いしましょう」
「そう、だな。狼退治と護衛を両方つけておくしかないな」
「向こうの村で行われる祭は、旅人を祝福するから、うってつけよ」
よく頭の回る妻だと、鈍重な夫は思う。
明くる日、買い付けを理由に夫は村を経った。
もちろん、ハンターオフィスに依頼をすることが主な理由であったが、それは妻以外知らないのだ。
●
「森抜けの儀式というものですね」
博識だなと思った夫に、スタッフは苦笑を浮かべる。
「昔から、この手の依頼はちょくちょくあるんですよ」
「え」
「皆さん、表立っては言えないからでしょうね」
「じゃあ、村の連中には……」
「わかっている方もいるでしょうね。でも、言わずが花です」
「はい」
森抜けの儀式。
リコットの住んでいる村は、森を隔てていくつかの集落にわかれている。
それぞれが森の財産を共有し、役割を分担しているのだ。
森抜けの儀式は、それらの村々で若い娘もしくは少年が、森を抜けるというものだ。
名前のままであるが、その際に持ち回りで行われる祭りの供物を持っていく。
今回は、リンゴとワインだ。
森抜けを受ける側では、精霊への祈りを捧げる儀式が合わせて行われる。
そして、森を抜けてきた者や旅人を招いて宴が行われるのだ。
「リンゴということは、お祖母様はアップルパイを作られるのですか?」
「えぇ、よくしってますね」
「そちらの地方のアップルパイは美味しいと聞いてますから」
ただのグルメだった。
「あ、とりあえず、依頼は了解しました」
ハンターオフィスとしても、正体不明の獣を放置しておく訳にはいかない。
正式な討伐依頼としても、受けることになった。
「なるべく、娘さんにはわからないよう言い含めておきますね」
スタッフの笑顔に絆され、夫の緊張は完全にほぐれるのであった。
●
「さて、行くのですよ~」
ぽやんとした空気を醸し出して、リコットは家を出る。
非常に不安そうな夫を妻がたしなめるのを、笑いながらリコットは村を後にした。
そして、ハンターたちが動き出す……。
リプレイ本文
●
宵闇の森のなかを、複数の群れが進む。
一つは、森を棲家とする狼の群れ。
残るは、狼を駆逐すべくひた走る、ハンターたちの群れだ。
狼、といっても負のマテリアルに侵食された歪虚であった。
「集団戦、さらに獣相手か。下らん相手ばかりだったから楽しめるといいんだが」
地面を照らしながら、バイオレット(ka0277)は煙管を吹かす。
煙は、月明かりの中に溶け消える。
それにしても、とちらり後ろを見やり呟く。
「子どもの遠足みたいなもんだな」
視線を感じ、ミリア・コーネリウス(ka1287)はバイオレットに近づく。
「何だ。何かいたのか?」
「いたら報告するから」
ミリアが身長ほどの大剣を構えようとするのを、そっと抑える。
そうか、といいながらミリアは少し離れた。
「大切な儀式なんだよね、ちゃんと成功させてあげなくっちゃ!」
「おう、その意気だ」
ミリアは、後方で気合を入れるステラ=ライムライト(ka5122)に声をかける。
「なんとか、なるよね」
「どうかしたか?」
「なんでもないよ」
ふと漏らした言葉をミリアに拾われ、ステラは気丈に首を振る。
蛍光色の塗料を手に入れようとしていたのだが、クリムゾンウェストでは珍品だったのである。
用意した小瓶は、空のままだった。
「危ない時は僕が盾になるから、安心してよ」
「頼りにしてるね」
ミリアの元気のよさを見ていると、気が満ちてくる。
ステラは仕込み杖をぐっと握るのだった。
煙管を咥えたまま、バイオレットは片眉を上げた。
何をやっているんだ、という視線を紅薔薇(ka4766)へ送っていた。
「ふむん。さすがに近寄ってきてくれんと見つからんしのう」
そういいながら、紅薔薇は干物をぶらりと紐に垂らしたのだ。
「干物を食べるかはわからんが、誰かが居ることなら向こうにもわかるじゃろ」
「暗いよ?」
「おぅ、すまんすまん」
干物に集中して、手元のライトがおろそかになっていた。
慌てて地面を照らす紅薔薇だったが、光がまた乱れた。
「何をやってるんだ?」
思わずバイオレットが問う。
「いや、トランシーバーが」
「私が出るよ」とステラが紅薔薇からトランシーバーを受け取る。
二言三言、会話をした後、ステラはこう告げた。
「B班が、目標を見つけたみたいだよ」
「群れてるなら、その辺に近づけばかち合うか」
言うやいなやミリアが駆け出す。
「明かりがないと、ぶつかるぞ……」
やれやれとバイオレットたちも合流へ急ぐのだった。
●
その少し前、ブラウ(ka4809)は笑みをこぼしながらライトを操っていた。
「ふふ、血の匂いがぷんぷんするわ……。早く出てらっしゃい?」
今回の依頼に似た話に、思いを馳せる。
そのとき、ライトを麗奈 三春(ka4744)の手が遮った。
「ライトを押さえて頂くことは、可能でございますか」
「え、あ」
すっと光を落とす。
ブラウもその姿に気がついた。
木々のない、少し拓けた空間で月明かりが不自然に影を作っていた。
影は数匹で群れをなし、周囲を警戒していた。
ブラウには、獲物を探っているようにも見える。
「あら、お話ではこんなにいなかったと思うのだけれど。やっぱりお話と現実は違うのかしら?」
「違うところと似通ったところがある、まぁ、ただそれだけだな」
ブラウの疑問に答えたのは、ガーレッド・ロアー(ka4994)だ。
ガーレッドも手持ちのライトを絞り、群れを見やる。
ゆっくりと体を動かし、茂みに近づく。
「とりあえず、だ」
トランシーバーの周波数を合わせA班と連絡を取る。
その隣でミルティナ=フォンヴェリー(ka5119)が魔導銃を取り出した。
「あれが、今回の対象……ですよね」
じっと月明かりに紛れる黒い塊を見やる。
尻尾がゆらめき、かろうじて狼らしいということが知れる。
「さようでございますね。合流まで待機でございますか?」
「奇襲できそうなら、奇襲したいところね」
ブラウが最小限の動作で刀に手を向ける。
ライトの明かりを消して、夜目を頼りに前へ出る。
「A班も向かってくる。時間はかからないだろう」
ガーレッドの言葉に、三春は返事とともに頷く。
「それでは、奇襲を狙うということでございますね」
「……奇襲」
緊張気味に、ミルティナは呟くのであった。
●
結論から言えば、奇襲は失敗に終わった。
狼といえば、イヌ科の動物であり、鼻が利く。
「感付かれたわ!」
「やはり鼻が利くようでございますね」
では、紅薔薇の干物には反応しなかったのか。
バレたことで光を当て直したブラウたちは、二匹の狼が姿を消したことに気づいた。
その二匹がどこへ行ったのかは、わかりきったことだ。
「来るぞ、迎撃だ」
ガーレッドは、アルケミストデバイスを手に警戒を強める。
まずは三体の狼が飛び込んで来た、さらに奥に一体が様子を見つつ近づいてくる。
一体は三春が、残る二体をブラウが引き受ける。
「ふっ」
小さく呼吸を吐きながら、三春は狼の突撃をかわす。
後衛へ向かわせぬよう、斬りかかると同時に踏み出して、道を塞ぐ。
横薙ぎに払われた刃が、毛皮を梳く。
一方のブラウは一体の攻撃は避けるも、片方の爪牙を喰らってしまう。
だが、ブラウにとっては好機でもある。
「部族に伝わる抜刀術よ。……貴方の血の匂いはどんな匂いなのかしらね」
といいながらも精神を統一させる。間合いを取らせず、抜き放たれた刃が水平に狼を裂く。
「さあ、わたしに嗅がせてくれない?」
ブラウのスカートの裾からは、四本の腕が顔をのぞかせていた。
覚醒状態になった彼女が見せる、幻影である。
「ふふ」と嗤うブラウに共鳴するように、幻影もまた、狼を誘っていた。
「これで少しは楽になるだろう」とガーレッドは、三春へと攻撃を強めるエネルギーを注ぐ。
狼との攻防は一進一退。見ていた残りの一匹も、三春の側へと参戦を決めた。
「一匹ずつ確実に、だ」
ブラウへも三春と同様にエネルギーを与え、ガーレッドは身体を僅かにそらす。
同時に一条の光が闇を裂いた。しかし、狼は地を蹴ってこれをかわす。
「素早いな」
悔し気な表情を浮かべつつ、ガーレッドはブラウを助けるように機導砲を放ち続ける。
その少し後ろからミルティナも援護すべく銃口を向けるのだが……。
「……っあ、ご、ごめんなさい」
弾丸は三春の近くへと着弾する。
見えたと思った時には、狼は移動していたのだ。
「大丈夫でございます。次はゆっくりと落ち着くといいのでございますよ」
「タイミングが来たら、言ってやる」
「は、はい」
三春とガーレッドの言葉に、ミルティナは励まされる。
援護は必要だ、とガーレッドは重ねてミルティナに告げる。
「よし、今だ!」
「はい」
合図に合わせて引き金を引く。
二発目の弾丸は、三春を狙う片割れを仕留めることができたのだった。
●
「効くわけ……ないのじゃ!」
狼の突撃を、胴部で受け止めながら紅薔薇は干物を投げ捨てた。
「すまんがライトがぶれるかもしれんのじゃ」
ライトを左手に持ったまま、右手を刀に添える。
抜刀の構えを作り、狼との間合いを測る。
「ちと見にくいかもしれんが、許してほしいのう!」
言葉通り、ライトの光がぶれた。
刃に反射し、暗い森をサーチライトのように光が走る。
流れるように二の太刀を入れ、狼の気勢を削ぐ。
「もう少し、楽しませて欲しいものだが」
物足りなさを感じながら、バイオレットが赤く塗られた銃身から弾丸を放つ。
射出の瞬間にマテリアルを込め、威力を高めていた。
「群れたことで、逆に鈍ったのか」
煙管を咥えたまま、推察してみる。
被せるように放った弾丸に動きを制限され、狼は真正面から強弾を受けてしまっていた。
紅薔薇とバイオレットと同時にミリアたちの戦いも始まっていた。
ステラを狙って、狼が疾駆していた。
歯牙を剥き出しにして、飛びかかったところへ、ミリアが飛び込んで来た。
「僕が相手だ」とにっと笑みを浮かべる。
狼の牙は、ミリアが身につける全身鎧を貫けていない。
腕をふるって、噛み付いていた狼をふるい落とす。
「そらよっ!」
間合いを詰めるべく、駈け出した勢いのまま、大剣を大振りに薙いだ。
狼は跳ね跳んでかわし、刃は空を切る。
着地した瞬間を狙い、ステラが一気に切り込む。
精神統一をなして放たれた一撃だったが、こちらも草むらを虚しく刈った。
先に狼の頭を潰えたのは、紅薔薇たちだった。
バイオレットの射撃によって、脚を崩したところへ紅薔薇が踏み入る。
刃が二度煌めいて、鞘に収まった時、飛びかかってきた狼の体は地に落ちた。
「終いじゃな……と、まだじゃった」
後方にいたバイオレットに目配せをする。
B班からの連絡は、あれ以降、まだないのだ。
紅薔薇は先行するように、ミリアたちの戦場を抜ける。
無論、バイオレットと二人、戦場を照らす任は忘れなかった。
ミリアとステラは静かに呼吸を揃える。
とにかく機動力を見せ、走り回るミリアがまずは派手な一撃をかます。
「耐えられるものなら、耐えてみるんだな!」
跳躍せんとしたところを、バイオレットが縫い止める。
大剣が胴部に食い込み、骨を砕く。
よろけながらも、持ち直した狼だったが、背後からステラが迫っていた。
集中力を増した刃が、疾風の刃の如く、狼を横薙ぎにした。
「しぶとい、けど……」
反撃とばかりに、狼が身を翻す。
だが、その牙は初撃と同じ感触に阻まれた。
ミリアだ。
今度は胴部で受け止めていた。
距離を取ろうとする狼を、割り込んだ勢いを刃に乗せて、斬り伏せる。
狼の体が宙を舞い、地に落ちる。その四肢は、動くことなく崩れ始めた。
「じゃあ、合流だ!」とミリアはステラに声をかける。
「はい!」
消えていくのを見届けることなく、ミリアたちは駆け出すのだった。
●
紅薔薇が追いついた時、ブラウはまだ2体を相手にしていた。
ところどころに傷を受けながらも、骨を断つように刃を突き入れる。
「そっちよ!」と避けられた先を示せば、ガーレッドが狙いをつけていた。
「まずは一体……っ」
黒い塊は光に飲み込まれ、全身を灼いて、どっと倒れた。
残る一体へ油断なくブラウは切っ先を向けつつ、後方を見やる。
紅薔薇が、三春と対峙する一際体の大きな相手へ、二の太刀を入れているところだった。
合わせるようにして、三春の苛烈な一撃が入る。
「そろそろ終わりでございます」
刃を退いた三春の告げる通り、狼の動きは鈍重であった。
紅薔薇と三春の刃が同時に、月明かりに光る。
リーダーらしき狼は、わずかに三春へ傷を負わせたものの、あえなく崩れ去った。
残る一体も、追いついたミリアとステラ、そしてブラウの挟撃に屠られる。
その体が消え去るのを確認し、ガーレッドは人差指と中指を目尻に添えて叫ぶ。
「次元の彼方でまた会おう!」
願わくば、次は友として……と自称別次元から来た男は思うのだった。
一方でブラウは刃を納めながら、あたりを見渡す。
「結構呆気ないのね。これでもう安心かしら?」
呆気ない方がよいと思う一方、
「他に仲間がいなければだけど」と警戒は緩めないのだった。
●
「さぁ、行くのですよぉ」
昨晩のハンターたちの働きも知らず、のんきな声を上げてリコットは出発した。
リコットが出発するのに合わせ、先を行く影があった。
「これで道はすっきりしたわね」
「周囲に敵影はない。問題なさそうだ」
ブラウとガーレッドは、障害物の排除と雑魔が本当にいないかの確認をしていた。
リコットに危害がいかないよう細心の注意をはらい、追いつかれる前に先へ行く。
しばらくして姿を表したのは、ミリアだった。
「スーザック村はこっちかー」
地図を広げ旅人を装いながら、声を出す。
決して追いつかれることがないよう、歩調を調整する。
「間違いない。こっちだな」
リコットに聞こえるようにしつつ、歩く。
その声に、「そうなのですかぁ」とほわっとした感じでリコットが続く。
追いつきそうで追いつけない距離を二人は行く。
「問題なさそうでございますね」
リコットの後方、茂みの中で三春が告げる。
他に、紅薔薇、ステラ、ミルティナがいた。
バイオレットは煙管の煙が見られる可能性があるので、ブラウたちに合流していた。
「先に障害は排除しておるし、何事もなかろう」
よほどのことが無ければ、飛び出すつもりはない。
紅薔薇も、ふわっとしたリコットに気をかけつつもそう決めていた。
「あ」
ステラが声を上げた。
視線を向けたミルティナも、
「何をやっているのですか?」
と訝しげに見守る。
リコットはふと立ち止まって、ふらふらと、野花を積み始めたのだ。
どこかで聞いたことがあるような光景、と誰かが口にした。
「ミリア殿……頼んだぞ」
「急がないと儀式が始まっちまうぞ」
ここでリコットの行動に気づいたミリアが誘導する。
そうでしたぁ、とふわっとした声が耳に届く。
もし、この場にバイオレットがいたとしたら、
「儀式というより、遠足だな」と零していたことだろう。
●
「無事に着いたようだな」
リコットが村に入ってくるのを見て、バイオレットが煙を吐く。
先に着いていたブラウたちは、儀式の準備を見学していた。
無論、雑魔がいないかを警戒して……。
「アップルパイ! これを食べるために来た!」
儀式も厳かに終わると、祭といったムードに切り替わる。
旅人をもてなす風習にあやかり、ミリアは生き生きとリンゴ料理に向かっていく。
「めでたし、めでたし。で良いかのう?」
「儀式も無事に終わって何よりだね」
紅薔薇とステラも、追いつき儀式を見守って宴に興じていた。
「そう。何にせよ、これで森も平和になるはずなのじゃ」
「今は平和を感じて……アップルパイ美味しいっ」
「本当に、美味しいですね」
ミルティナもその側でアップルパイを食べていた。
ほのかな酸味が、甘みを引き立てる。
リンゴ自体にしっかりとした歯ごたえがあり、飽きが来ないのだ。
「美味しそうな食べ物ね? これ、作り方とか教えてもらえるのかしら?」
ブラウはアップルパイを始めとしたリンゴ料理を丹念に聞いて回っていた。
熱心に聞きながら、自身の持ってきたクッキーも勧める。
「これ、わたしが作ったの。よかったら食べて?」
「美味しいですぅ~」とリコットの間延びした声が耳をくすぐった。
その光景をガーレッドが静かに見守っていた。
同じ光景を見ていた三春は、空を仰ぐ。
西に落ちる夕日が、まるでリンゴのように見えた。
「無事に終わって、本当に何よりでございます」
呟きは宴の喧騒に消える。
狼は狩人に倒され、赤ずきんはおばあさんにリンゴを届けられたのでした。
赤ずきんはいつか、このことを知るかもしれません。
そのときは、次の赤ずきんが生まれていることでしょう……めでたし、めでたし。
宵闇の森のなかを、複数の群れが進む。
一つは、森を棲家とする狼の群れ。
残るは、狼を駆逐すべくひた走る、ハンターたちの群れだ。
狼、といっても負のマテリアルに侵食された歪虚であった。
「集団戦、さらに獣相手か。下らん相手ばかりだったから楽しめるといいんだが」
地面を照らしながら、バイオレット(ka0277)は煙管を吹かす。
煙は、月明かりの中に溶け消える。
それにしても、とちらり後ろを見やり呟く。
「子どもの遠足みたいなもんだな」
視線を感じ、ミリア・コーネリウス(ka1287)はバイオレットに近づく。
「何だ。何かいたのか?」
「いたら報告するから」
ミリアが身長ほどの大剣を構えようとするのを、そっと抑える。
そうか、といいながらミリアは少し離れた。
「大切な儀式なんだよね、ちゃんと成功させてあげなくっちゃ!」
「おう、その意気だ」
ミリアは、後方で気合を入れるステラ=ライムライト(ka5122)に声をかける。
「なんとか、なるよね」
「どうかしたか?」
「なんでもないよ」
ふと漏らした言葉をミリアに拾われ、ステラは気丈に首を振る。
蛍光色の塗料を手に入れようとしていたのだが、クリムゾンウェストでは珍品だったのである。
用意した小瓶は、空のままだった。
「危ない時は僕が盾になるから、安心してよ」
「頼りにしてるね」
ミリアの元気のよさを見ていると、気が満ちてくる。
ステラは仕込み杖をぐっと握るのだった。
煙管を咥えたまま、バイオレットは片眉を上げた。
何をやっているんだ、という視線を紅薔薇(ka4766)へ送っていた。
「ふむん。さすがに近寄ってきてくれんと見つからんしのう」
そういいながら、紅薔薇は干物をぶらりと紐に垂らしたのだ。
「干物を食べるかはわからんが、誰かが居ることなら向こうにもわかるじゃろ」
「暗いよ?」
「おぅ、すまんすまん」
干物に集中して、手元のライトがおろそかになっていた。
慌てて地面を照らす紅薔薇だったが、光がまた乱れた。
「何をやってるんだ?」
思わずバイオレットが問う。
「いや、トランシーバーが」
「私が出るよ」とステラが紅薔薇からトランシーバーを受け取る。
二言三言、会話をした後、ステラはこう告げた。
「B班が、目標を見つけたみたいだよ」
「群れてるなら、その辺に近づけばかち合うか」
言うやいなやミリアが駆け出す。
「明かりがないと、ぶつかるぞ……」
やれやれとバイオレットたちも合流へ急ぐのだった。
●
その少し前、ブラウ(ka4809)は笑みをこぼしながらライトを操っていた。
「ふふ、血の匂いがぷんぷんするわ……。早く出てらっしゃい?」
今回の依頼に似た話に、思いを馳せる。
そのとき、ライトを麗奈 三春(ka4744)の手が遮った。
「ライトを押さえて頂くことは、可能でございますか」
「え、あ」
すっと光を落とす。
ブラウもその姿に気がついた。
木々のない、少し拓けた空間で月明かりが不自然に影を作っていた。
影は数匹で群れをなし、周囲を警戒していた。
ブラウには、獲物を探っているようにも見える。
「あら、お話ではこんなにいなかったと思うのだけれど。やっぱりお話と現実は違うのかしら?」
「違うところと似通ったところがある、まぁ、ただそれだけだな」
ブラウの疑問に答えたのは、ガーレッド・ロアー(ka4994)だ。
ガーレッドも手持ちのライトを絞り、群れを見やる。
ゆっくりと体を動かし、茂みに近づく。
「とりあえず、だ」
トランシーバーの周波数を合わせA班と連絡を取る。
その隣でミルティナ=フォンヴェリー(ka5119)が魔導銃を取り出した。
「あれが、今回の対象……ですよね」
じっと月明かりに紛れる黒い塊を見やる。
尻尾がゆらめき、かろうじて狼らしいということが知れる。
「さようでございますね。合流まで待機でございますか?」
「奇襲できそうなら、奇襲したいところね」
ブラウが最小限の動作で刀に手を向ける。
ライトの明かりを消して、夜目を頼りに前へ出る。
「A班も向かってくる。時間はかからないだろう」
ガーレッドの言葉に、三春は返事とともに頷く。
「それでは、奇襲を狙うということでございますね」
「……奇襲」
緊張気味に、ミルティナは呟くのであった。
●
結論から言えば、奇襲は失敗に終わった。
狼といえば、イヌ科の動物であり、鼻が利く。
「感付かれたわ!」
「やはり鼻が利くようでございますね」
では、紅薔薇の干物には反応しなかったのか。
バレたことで光を当て直したブラウたちは、二匹の狼が姿を消したことに気づいた。
その二匹がどこへ行ったのかは、わかりきったことだ。
「来るぞ、迎撃だ」
ガーレッドは、アルケミストデバイスを手に警戒を強める。
まずは三体の狼が飛び込んで来た、さらに奥に一体が様子を見つつ近づいてくる。
一体は三春が、残る二体をブラウが引き受ける。
「ふっ」
小さく呼吸を吐きながら、三春は狼の突撃をかわす。
後衛へ向かわせぬよう、斬りかかると同時に踏み出して、道を塞ぐ。
横薙ぎに払われた刃が、毛皮を梳く。
一方のブラウは一体の攻撃は避けるも、片方の爪牙を喰らってしまう。
だが、ブラウにとっては好機でもある。
「部族に伝わる抜刀術よ。……貴方の血の匂いはどんな匂いなのかしらね」
といいながらも精神を統一させる。間合いを取らせず、抜き放たれた刃が水平に狼を裂く。
「さあ、わたしに嗅がせてくれない?」
ブラウのスカートの裾からは、四本の腕が顔をのぞかせていた。
覚醒状態になった彼女が見せる、幻影である。
「ふふ」と嗤うブラウに共鳴するように、幻影もまた、狼を誘っていた。
「これで少しは楽になるだろう」とガーレッドは、三春へと攻撃を強めるエネルギーを注ぐ。
狼との攻防は一進一退。見ていた残りの一匹も、三春の側へと参戦を決めた。
「一匹ずつ確実に、だ」
ブラウへも三春と同様にエネルギーを与え、ガーレッドは身体を僅かにそらす。
同時に一条の光が闇を裂いた。しかし、狼は地を蹴ってこれをかわす。
「素早いな」
悔し気な表情を浮かべつつ、ガーレッドはブラウを助けるように機導砲を放ち続ける。
その少し後ろからミルティナも援護すべく銃口を向けるのだが……。
「……っあ、ご、ごめんなさい」
弾丸は三春の近くへと着弾する。
見えたと思った時には、狼は移動していたのだ。
「大丈夫でございます。次はゆっくりと落ち着くといいのでございますよ」
「タイミングが来たら、言ってやる」
「は、はい」
三春とガーレッドの言葉に、ミルティナは励まされる。
援護は必要だ、とガーレッドは重ねてミルティナに告げる。
「よし、今だ!」
「はい」
合図に合わせて引き金を引く。
二発目の弾丸は、三春を狙う片割れを仕留めることができたのだった。
●
「効くわけ……ないのじゃ!」
狼の突撃を、胴部で受け止めながら紅薔薇は干物を投げ捨てた。
「すまんがライトがぶれるかもしれんのじゃ」
ライトを左手に持ったまま、右手を刀に添える。
抜刀の構えを作り、狼との間合いを測る。
「ちと見にくいかもしれんが、許してほしいのう!」
言葉通り、ライトの光がぶれた。
刃に反射し、暗い森をサーチライトのように光が走る。
流れるように二の太刀を入れ、狼の気勢を削ぐ。
「もう少し、楽しませて欲しいものだが」
物足りなさを感じながら、バイオレットが赤く塗られた銃身から弾丸を放つ。
射出の瞬間にマテリアルを込め、威力を高めていた。
「群れたことで、逆に鈍ったのか」
煙管を咥えたまま、推察してみる。
被せるように放った弾丸に動きを制限され、狼は真正面から強弾を受けてしまっていた。
紅薔薇とバイオレットと同時にミリアたちの戦いも始まっていた。
ステラを狙って、狼が疾駆していた。
歯牙を剥き出しにして、飛びかかったところへ、ミリアが飛び込んで来た。
「僕が相手だ」とにっと笑みを浮かべる。
狼の牙は、ミリアが身につける全身鎧を貫けていない。
腕をふるって、噛み付いていた狼をふるい落とす。
「そらよっ!」
間合いを詰めるべく、駈け出した勢いのまま、大剣を大振りに薙いだ。
狼は跳ね跳んでかわし、刃は空を切る。
着地した瞬間を狙い、ステラが一気に切り込む。
精神統一をなして放たれた一撃だったが、こちらも草むらを虚しく刈った。
先に狼の頭を潰えたのは、紅薔薇たちだった。
バイオレットの射撃によって、脚を崩したところへ紅薔薇が踏み入る。
刃が二度煌めいて、鞘に収まった時、飛びかかってきた狼の体は地に落ちた。
「終いじゃな……と、まだじゃった」
後方にいたバイオレットに目配せをする。
B班からの連絡は、あれ以降、まだないのだ。
紅薔薇は先行するように、ミリアたちの戦場を抜ける。
無論、バイオレットと二人、戦場を照らす任は忘れなかった。
ミリアとステラは静かに呼吸を揃える。
とにかく機動力を見せ、走り回るミリアがまずは派手な一撃をかます。
「耐えられるものなら、耐えてみるんだな!」
跳躍せんとしたところを、バイオレットが縫い止める。
大剣が胴部に食い込み、骨を砕く。
よろけながらも、持ち直した狼だったが、背後からステラが迫っていた。
集中力を増した刃が、疾風の刃の如く、狼を横薙ぎにした。
「しぶとい、けど……」
反撃とばかりに、狼が身を翻す。
だが、その牙は初撃と同じ感触に阻まれた。
ミリアだ。
今度は胴部で受け止めていた。
距離を取ろうとする狼を、割り込んだ勢いを刃に乗せて、斬り伏せる。
狼の体が宙を舞い、地に落ちる。その四肢は、動くことなく崩れ始めた。
「じゃあ、合流だ!」とミリアはステラに声をかける。
「はい!」
消えていくのを見届けることなく、ミリアたちは駆け出すのだった。
●
紅薔薇が追いついた時、ブラウはまだ2体を相手にしていた。
ところどころに傷を受けながらも、骨を断つように刃を突き入れる。
「そっちよ!」と避けられた先を示せば、ガーレッドが狙いをつけていた。
「まずは一体……っ」
黒い塊は光に飲み込まれ、全身を灼いて、どっと倒れた。
残る一体へ油断なくブラウは切っ先を向けつつ、後方を見やる。
紅薔薇が、三春と対峙する一際体の大きな相手へ、二の太刀を入れているところだった。
合わせるようにして、三春の苛烈な一撃が入る。
「そろそろ終わりでございます」
刃を退いた三春の告げる通り、狼の動きは鈍重であった。
紅薔薇と三春の刃が同時に、月明かりに光る。
リーダーらしき狼は、わずかに三春へ傷を負わせたものの、あえなく崩れ去った。
残る一体も、追いついたミリアとステラ、そしてブラウの挟撃に屠られる。
その体が消え去るのを確認し、ガーレッドは人差指と中指を目尻に添えて叫ぶ。
「次元の彼方でまた会おう!」
願わくば、次は友として……と自称別次元から来た男は思うのだった。
一方でブラウは刃を納めながら、あたりを見渡す。
「結構呆気ないのね。これでもう安心かしら?」
呆気ない方がよいと思う一方、
「他に仲間がいなければだけど」と警戒は緩めないのだった。
●
「さぁ、行くのですよぉ」
昨晩のハンターたちの働きも知らず、のんきな声を上げてリコットは出発した。
リコットが出発するのに合わせ、先を行く影があった。
「これで道はすっきりしたわね」
「周囲に敵影はない。問題なさそうだ」
ブラウとガーレッドは、障害物の排除と雑魔が本当にいないかの確認をしていた。
リコットに危害がいかないよう細心の注意をはらい、追いつかれる前に先へ行く。
しばらくして姿を表したのは、ミリアだった。
「スーザック村はこっちかー」
地図を広げ旅人を装いながら、声を出す。
決して追いつかれることがないよう、歩調を調整する。
「間違いない。こっちだな」
リコットに聞こえるようにしつつ、歩く。
その声に、「そうなのですかぁ」とほわっとした感じでリコットが続く。
追いつきそうで追いつけない距離を二人は行く。
「問題なさそうでございますね」
リコットの後方、茂みの中で三春が告げる。
他に、紅薔薇、ステラ、ミルティナがいた。
バイオレットは煙管の煙が見られる可能性があるので、ブラウたちに合流していた。
「先に障害は排除しておるし、何事もなかろう」
よほどのことが無ければ、飛び出すつもりはない。
紅薔薇も、ふわっとしたリコットに気をかけつつもそう決めていた。
「あ」
ステラが声を上げた。
視線を向けたミルティナも、
「何をやっているのですか?」
と訝しげに見守る。
リコットはふと立ち止まって、ふらふらと、野花を積み始めたのだ。
どこかで聞いたことがあるような光景、と誰かが口にした。
「ミリア殿……頼んだぞ」
「急がないと儀式が始まっちまうぞ」
ここでリコットの行動に気づいたミリアが誘導する。
そうでしたぁ、とふわっとした声が耳に届く。
もし、この場にバイオレットがいたとしたら、
「儀式というより、遠足だな」と零していたことだろう。
●
「無事に着いたようだな」
リコットが村に入ってくるのを見て、バイオレットが煙を吐く。
先に着いていたブラウたちは、儀式の準備を見学していた。
無論、雑魔がいないかを警戒して……。
「アップルパイ! これを食べるために来た!」
儀式も厳かに終わると、祭といったムードに切り替わる。
旅人をもてなす風習にあやかり、ミリアは生き生きとリンゴ料理に向かっていく。
「めでたし、めでたし。で良いかのう?」
「儀式も無事に終わって何よりだね」
紅薔薇とステラも、追いつき儀式を見守って宴に興じていた。
「そう。何にせよ、これで森も平和になるはずなのじゃ」
「今は平和を感じて……アップルパイ美味しいっ」
「本当に、美味しいですね」
ミルティナもその側でアップルパイを食べていた。
ほのかな酸味が、甘みを引き立てる。
リンゴ自体にしっかりとした歯ごたえがあり、飽きが来ないのだ。
「美味しそうな食べ物ね? これ、作り方とか教えてもらえるのかしら?」
ブラウはアップルパイを始めとしたリンゴ料理を丹念に聞いて回っていた。
熱心に聞きながら、自身の持ってきたクッキーも勧める。
「これ、わたしが作ったの。よかったら食べて?」
「美味しいですぅ~」とリコットの間延びした声が耳をくすぐった。
その光景をガーレッドが静かに見守っていた。
同じ光景を見ていた三春は、空を仰ぐ。
西に落ちる夕日が、まるでリンゴのように見えた。
「無事に終わって、本当に何よりでございます」
呟きは宴の喧騒に消える。
狼は狩人に倒され、赤ずきんはおばあさんにリンゴを届けられたのでした。
赤ずきんはいつか、このことを知るかもしれません。
そのときは、次の赤ずきんが生まれていることでしょう……めでたし、めでたし。
依頼結果
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/25 00:44:39 |
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相談しましょうか。 ブラウ(ka4809) ドワーフ|11才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2015/07/04 01:39:51 |