おしえてタングラム3

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/07/15 07:30
完成日
2014/07/19 04:57

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●暴食の歪虚、“亡霊”編
「はふう……行ったですか。さぁて、これでしばらくは暇なのですね。早速ハンターが作ったお菓子でも食べながらウイスキーでも……って、ふぉおお!? お、お前らいつからそこに立っていたですか!?」
 吸血鬼討伐に向かったハンター達を見送り、酒でも飲もうかと首をゴキゴキ鳴らしていたタングラム。その背後にすっと新たなハンターの影が差した。
「え? また依頼に入り損ねたって……いや、だからそれは私のせいじゃな……わーかった、わかったですから!! ここまで来たらもう一気にやってしまうですかね……」
 ため息交じりに酒瓶を机に置くと新たに紙を取り出した。そして動く死体、吸血鬼の隣に亡霊編と書き込んで掲示板に張り付けた。
「えー、ではラスト。動く死体、吸血鬼と来たら、暴食の歪虚で一番倒すのがめんどくさい奴ら、“亡霊型”についてです」
 亡霊型はその名の通り、何かしらの生命体が亡霊へと身を落とした姿だ。ゾンビも吸血鬼も元々は何かしらの“人”だったものが転じたケースが多いが、これは更にそこから霊的な存在に変異を果たしている。
「まず、亡霊型という時点でちょっとヤバいのですね。何故なら亡霊型になる事が出来るのは、ある程度力ある存在だけなのです。力ある歪虚は死体型にも吸血鬼型にもいますが、亡霊型はその存在自体が既に一定以上の力量を示しているのです」
 その最大の特徴は、実体を持たないという事だ。
 亡霊型の歪虚は実体を持たない。即ち物理攻撃が通用しないのだ。その代り霊体は人間にも物理的な危害を加える事が出来ない。
「だから奴らの多くは“ガワ”を用意するのです。鎧型はそのいい例ですね」
 例えばオーソドックスなタイプならばデュラハン等が該当する。
 幾ら霊体に物理攻撃が効かないと言っても、魔法的な攻撃ならばダメージを与える事が出来る。その魔法攻撃から身を守ると同時に物理的な外装を用意する事で亡霊側からの物理攻撃を可能にする。鎧型は亡霊タイプの基本形であり、非常に合理的な存在なのだ。
「では鎧を破壊して霊体に魔法をぶち込めば倒せるかというとそうではなく。例えば一時的に霊体を消滅させたり、動きを封じる事は可能です。しかし亡霊型はその発生源となっているアイテムを破壊しない限り、何度でもまた復活して動き出すのです」
 その亡霊に転じてしまった存在が強力に依存していたモノ。その者のあり方にとってなくてはならなかったモノ。それが亡霊の核となるのだ。
「騎士の亡霊なら勲章だとか、生前の愛剣だとかですかねぇ。或いは纏っている鎧の一部がそうだとか……宝石のようなモノがコアである事もあるです。なんにせよ、そいつをブチ壊さない限り亡霊は何度でも復活するのです」
 これが最も厄介な部分。物理攻撃では倒せない。魔法攻撃でも殺しきれない。本当に消滅させる為には、“拠り所”を粉砕するしかないのだ。
「核と霊体がセットになっている場合と、核はどこかに置き去りのまま、霊体がうろついている場合があるのです。ただ亡霊型の歪虚は必ず定期的に自らの核のある場所に向かうので、行動を観察すればどこに核があるのかは明白なのですよ」
 必ずどこかの場所に戻っていくのなら、そこに核がある。そしてどこまでも単独で動き回るというのなら、その身体のどこかに核を宿していると推測できる。
「生物には必ず存在する急所の概念がなく、足を切断しても倒れず、鎧を壊しても動き続ける。奴らとの戦いは中々に骨が折れるのです。そして核が見つからない限り、撃破の目途も立たない」
 暴食の歪虚の王に君臨する者、それもまた亡霊型であると噂されている。そして四霊剣の一角にして最強個体である“不破の剣豪”もまたこの亡霊型だ。
「“剣豪”はもう、何をどうやって倒せばいいのか今の所解決策が全く見えていないのですが、それも奴のコアが何なのかわからない為です。まあ、それ以前に奴の鎧に傷をつける事さえ難しいのですが……」
 ぽりぽりと頬を掻き、それから小さくため息を零す。
「無論相手の質にもよるですが、亡霊型は新人ハンターがなんとなく倒しに行くには荷が重いかもしれないですね。色々と心配な事もあるですし……うん」
 ハンターへと向き直り、そしてタングラムは笑みを浮かべた。
「今回は私もついていくですよ。皆なら大丈夫だとは思うですが、念の為です。さ、一緒にオフィスに行って、依頼を探すとしましょうか!」
 終わったらAPVに戻ってきて酒を飲むですよー! そう言って仮面のエルフは拳を掲げるのであった。

リプレイ本文

 目標は川原で肩を落としふらふらと彷徨い、時折額に手を当てたり地鳴りのような声を上げている。
「なんだか、迷子になってしまった子供みたいです。少し、かわいそうですね……」
 プルミエ・サージ(ka2596)は木々の陰から敵を見つめそう呟いた。禍々しい雰囲気はひしひしと感じるが、その背中はどこか寂しげだ。
「望んでこんな姿になったわけではないでしょうに……」
「不吉な相手ではありますが、彷徨い続けるのは孤独。ここで眠らせてあげましょう」
 目を瞑り頷く藤堂 楓(ka2108)。ロア・シュヴァイツ(ka0423)は慎重に相手の様子を窺っている。
「7眷属と呼ばれる者との戦いだ、上手く戦い方を掴めれば良いのだが……」
「眷属か……。タングラムさんの話だと雑魔より強いらしいな」
「この先も戦い続けるならアレ程度は幾らでもいるという事か。ならば、やってみせないとな」
 シン・コウガ(ka0344)の呟きにレイス(ka1541)が続ける。シンは頷き、気合を入れるように拳を握り締めた。
「それでは、いざいざ! 奴めのお宝を暴いてやりましょうっ!」
 亡霊型はコアを破壊しなければ倒す事が出来ない。マーヤ・クランツ(ka1132)の言う宝探しというのもあながち的外れではなかった。
 今回はまずは敵のコアを探す所から戦いが始まる。ハンター達は目標がただ歩くだけでヒントらしいものを得られないと判断すると、予定通り川原を戦場とする事を決めた。


 配置を終えたハンター達の中、先頭を行くのはレイスだ。グレイブを手に正面から亡霊騎士へと駆け寄ると、レイスに反応し地べたに転がっていた二つの剣が動き出す。
「来るか……。俺は左から行く。タングラムは右を頼む」
 指示をしながら走るレイス。その正面に棒立ちする騎士の頭上に剣が浮かび上がった。直後剣は矢のように勢いよく放たれ、レイスとタングラムに迫った。
 素早く回避する二人。大剣は大地を抉り深々と突き刺さったが、まるで意志を持つかのように浮かび上がり再び攻撃しようと狙いを定めてくる。
 タングラムには更に右腕から剣が繰り出されたが、これも難なく回避に成功。
「……流石だな」
 すれ違い様、グレイブで騎士が纏ったボロ布を引きはがすレイス。その下からは鎧姿が露わになったが、特にコアらしい部分は見当たらない。
「コアはどこ……?」
 川原にある木に登って銃を構えるセレン・コウヅキ(ka0153)。その照準が亡霊騎士の全身をなぞる。
 頭か、或いは胸か。心臓に当たる場所の可能性もあるだろうか。或いはあの残された右腕と、そこに握られた大剣が本命か。
「装飾品の類は見当たらないようですが……」
 まずは胸だ。目を細め、マテリアルを込め制度を増した弾丸を放つ。騎士は避ける気配も防ぐ様子もなく、胸の装甲で弾を弾き飛ばした。
「胸……では、ない?」
 撃たれても全く反応がない。となれば、ここはハズレだろう。
「でしたら、お次は頭ですっ!」
 走って仲間と距離を取りながら銃を構えたプルミエはよく狙いを定め頭を撃つ。やはり防御も回避もしない。ただ銃で撃たれた頭が傾いただけだ。
「……まあ、当然ですね。ある程度ダメージを与えないと見えない部位、弱点ならばそこに隠す筈ですから」
「やはり鎧の内側という事か……?」
 左側に回り込んだロアは猟銃で外れた左腕の部位を狙う。そこから鎧の内側に弾丸を跳弾させ弱点を炙り出そうとしたのだ。
 ロアが弾丸を放った次の瞬間、浮遊していた剣が弾丸を弾き飛ばした。そしてこれまでどんな攻撃にも無反応だった騎士の首がぐるりと回り、ロアを睨むように瞳を輝かせる。
「これは大当たり……のようだが……!?」
 途端、騎士は近接職を無視して駆け出した。これまでの緩慢な動きとは比べ物にならない瞬発力で跳躍すると、空中からロアに襲い掛かる。
「ロアさん、逃げてくださいっ!」
 空中から射出された大剣がロア目がけ降り注ぐ。それを盾で受け止めようと庇いに出たのはマーヤと南條 真水(ka2377)。二つの大剣を盾で受けるが、衝撃で思い切り弾き飛ばされる。
「えぇっ、ちょっと……ひゃあっ!?」
 亡霊は低いうめき声を上げながら大剣を振り下ろす。ロアの眼前に猛然と繰り出される一撃、それを代わりにシンが受け止めていた。
「ぐぅぅう……っ!?」
 防ぎきれず肩に深く剣がめり込んでいる。口から血を吐き、それでも何とか騎士の剣を止めようと踏ん張っている。
「シン君……!?」
「流石にトンファーじゃ受けきれない、か……。だが、見捨てるって選択肢は俺にはないんでな……!」
 仲間が作ってくれた好機だ。ロアはすぐに側面に近づき、至近距離から鎧の中に弾丸を発射した。鎧の内側で跳ね回る銃弾だが、しかし青い炎の本体に減衰されたのか、それとも運が悪くコアに当たらなかったのか、騎士が倒れる気配はない。
「落とせなかったか……!」
 再び剣を振り上げる騎士。そこへ背後から駆け寄ったレイスがグレイブを足を間にねじ込み、騎士の足を払おうと試みる。しかし重く頑丈でレイス一人の力では足りなかった。
「レイス!」
 そこへタングラムが駆け寄り、グレイブの柄を蹴り飛ばした。勢いづいたグレイブは梃子の原理で騎士の足を払い、ぐらりと傾いた巨体はあらぬ方向に剣を振り下ろす。
「一度こちらに注意を引き付ける! 今のうちに立て直せ!」
「シン君、掴まれ!」
 ロアは膝を着いていたシンに肩を貸し急いでその場を離れる。先では準備していたマーヤがシンにヒールを施した。
「もう、無茶しすぎですよ! これ、一回じゃ治らないですね……っ」
「す、すまん。流石眷属だな……こんなにパワーがあるとは……」
「鎧の内側にコアがある事はハッキリしたんですっ! 後はどうやって鎧の内側に攻撃を通すかですよっ!」
 亡霊騎士を銃で撃つプルミエだが、闇雲に攻撃しても効果は薄い。問題はいかに鎧を剥ぎ、その内側に攻撃するかだ。
「足払いは有効でした。それなら、手足を撃って行動を阻害する事も出来る筈」
 目標が遠くへ移動した為自らも移動する為に木から降りるセレン。走りながら交戦する仲間の様子を窺い、足を止め銃を構えた。
 騎士が振り下ろす剣を跳んでかわすレイス。タングラムと二人で攻撃を引き受け続けているが、一撃でも直撃すれば大ダメージは免れられない。
 目を細め、返す刃に合わせて銃弾を放つ。騎士の大ぶりな一撃が逸れ、二人は僅かな動きで反撃を繰り出した。
「レイス、このチームの得物で奴の鎧を引っぺがせそうなのはレイスのグレイブだけです!」
「悪いが非力でな。まともに打ち合うつもりは無いが――」
 一歩引いた所でグレイブを回し、鋭く構えるレイス。
「やるしかないのなら仕方あるまい。悪いが付き合ってもらうぞ」
 しかし亡霊騎士は浮遊する二本の剣と右手の大剣で絶え間なく攻撃してくる。一つ一つの動きは遅いが威力が高く、隙を埋めるように連続で放ってくる。それを上手く耐え凌いでいるのはタングラムの立ち回りがあるからだ。
「なんて慣れた動きなんだ……。あえて右手の剣を誘発してレイスさんの負担を軽減してるのか……」
 治療を受けながら呆然とするシン。だがこの状況が長く続く事は好ましくない。
「痛たたた……眼鏡が割れたらどうしてくれるんだよ、もう」
 盾と防性強化が無ければ大ダメージを受けていただろう。真水は頭を振って改めて敵を見直す。
「やはりあの浮遊剣が危険すぎるね。早めに何とかしたいが、南条さんがまともに近づいても恐らく迎撃されるだけだろうね」
「でしたら自分に考えがあります。自分と南条さんの力を合わせれば可能性は高いでしょう」
 楓の提案に短い打ち合わせをする二人。真水はふむと頷き、それから頬を掻いて頷いた。
「悪くない案だね。ただ南条さんはか弱い乙女なので、先に君が仕掛ける方向で頼む」
「当然です。それでは行きますよ」
 さっき盾で大剣防いでたじゃねーかとちょっと思ったマーヤとシンだが、口にはしなかった。
 楓は先行し戦闘中の騎士に近づく。狙いは完全にレイスとタングラムに向いている為、仕掛けるのは容易かった。
 空中に浮いている剣にチェーンウィップを絡め、強引に引き寄せる楓。亡霊騎士本体から伸びる青い焔で剣は繋がれている為、まるで綱引きのような状態だ。
「くっ、見かけよりも重い……!」
「剣を引き摺り下ろすつもりですか……?」
「支援しますよ! 同時に剣を撃てば怯むかもしれませんっ!」
 プルミエの声に頷くセレン。二人はそれぞれ銃を構え同時に弾丸を放った。その直撃で弾かれた剣は小気味いい音を立てて跳ね、その瞬間力が弱まったのを感じた。
 剣を強引に引き摺り下ろした楓。真水は機導剣を振り上げ、剣と本体を結んでいる炎のラインを切断した。
「おお。これは楽だ」
「どうやら炎から切り離してしまえばただの剣のようですからね。これでもうこの剣は動かない筈です」
 まだ敵の注意はレイスに向いている。直ぐに次の浮遊剣にチェーンウィップを絡め、プルミエとセレンが狙撃で怯ませた所を引き摺り下ろし、真水が機導剣で斬るという同工程で停止させる。
「まさかここまで上手くいくとはね。やるじゃないか」
「恐縮です」
 これで二本の剣が停止した。しかし本体は一度動きを止め、身体から炎を伸ばして再び浮遊剣とリンクを繋ごうと試みる。
「皆さん、また剣を動かそうとしていますよっ」
 マーヤは声を駆けると同時、ホーリーライトで伸びていた炎を吹き飛ばした。もう片方に伸びている炎には真水が声を上げる。
「タングラムさん、再び足癖の悪さを発揮する時だ!」
「君ら結構人使い荒いですね!?」
 落ちていた剣をタングラムが蹴飛ばし距離を稼ぐと真水が機導砲で炎を打ち消す。と、その様子を見ていたシンが慌てて声を上げた。
「待て待て、分かった! コアは多分胸の部分、鎧の内側にあるぜ!」
 シンは手当てを受けるのに距離を置いている間ずっと見ていたのだ。亡霊騎士の身体の内側から噴き出す炎、その流れを。
「さっき剣を取ろうとして炎を伸ばした時、明らかに胸の部分の内側から出ていた!」
「私が銃弾を撃ち込んだのも左腕から……つまり、胴体の部分に跳弾させようとした。あの反応、やはりコアは上体にあるのだな」
 既に回復したシンがロアの言葉に頷く。そうとわかれば胸の部分を開かせ、コアを破壊するだけだ。
「狙いが絞れたなら、あとは集中攻撃を仕掛けるだけですね……」
「ここで食い止めないと、さらなる被害が……! この身に変えても絶対に止めます!」
 狙いを定めるセレンとプルミエ。復帰したシン、そしてロアも並んで銃を構える。
「もう完全回復だ。一気に仕留めるぜ」
「……ああ。だが、もう無茶はしないようにな?」
 脅威であった浮遊剣を失えば手数は三分の一だ。繰り出される斬撃をかわすレイス。そして空ぶった剣に楓がチェーンを伸ばし動きを封じる。
「自分が動きを止めます! その間にコアを!」
 だが明らかにパワーは亡霊騎士の方が上だ。引きずられる楓、その横にタングラムがついて鎖に力を込めた。
「スキルも使って、息を合わせ二人で同時に牽くですよ!」
 頷く楓。二人は足元にマテリアルを集中し、強引に背後に向かって走った。その瞬間、腕を引かれた騎士は身体を大きく傾かせる。
「いぇあ! 大チャーンスッ!」
 目を輝かせ引き金を引くプルミエ。セレン、シン、ロアの四人で胸を撃って撃って撃ちまくる。すると鎧は拉げ、穴も空き始めた。
 レイスはグレイブを逆手に構え、巨体に向かって駆ける。そして跳躍すると同時に勢いよく脆くなった胸にグレイブを突き立てた。
 刃は貫通し、同時に巨体が倒れ込む。レイスはそのまま上に乗って無理矢理グレイブを捻り、背後に飛ぶと同時に胸部分の装甲を引きはがして見せた。
「あれは……汚れているけど、勲章ですか?」
「わかりやすい……情報を制して勝つってのがどれほど楽か身に染めてわかるな……!」
 プルミエとシンの言う通り、騎士の鎧の中には勲章のようなものが浮かんでいる。あれを壊せば終わりだが……。
「まだだ。恐らくあの本体で攻撃は減衰される」
 実際に銃弾を撃ち込んだロアだからわかる。あの青い炎には防御性能もあるのだ。
 騎士は立ち上がると同時、腕に巻き付いた楓とタングラムを振り払う。そして右腕の内側から炎を溢れさせ、大きく振り上げるような構えを見せた。
「……まずい! 伏せて下さいっ!!」
 セレンの切羽詰った声に全員が頭を下げた直後、膨張した炎は右腕を大きく伸ばし、横一線にハンター達を薙ぎ払った。
「うおぉっ!?」
「あの腕……伸びるのか?」
 驚くシンとロア。セレンは青い焔が伸びたり縮んだりする様子から、恐らくあれは意図的に人の形を作っているだけであり、本体が無形である以上形状変化はあり得ると読んでいたのだ。
 渾身の一撃をかわされ隙を見せた騎士。そこへマーヤが思い切って走り出す。
「あの炎を吹き飛ばしてしまえばっ!」
 距離を詰め、ロッドを胸に突きつける。放たれたホーリーライトは胸に渦巻く炎に命中し、騎士は初めて苦しむような声を上げた。
「狙えそうなら、別に壊してしまってもいいのだろう?」
 炎を吹き出し迎撃する騎士。そこに盾を構えて前に出た真水が機導剣を作り、その刃を胸に突き立てた。
 防護する青い焔も貫いて勲章を真っ二つにした機導剣が光と消えると真水は背後へ飛んだ。すると騎士は雄叫びを上げながら青い焔を散らし、黒い光の粒となって空に消えていく。
「それじゃあおやすみ。幸せな、悪い夢を」
 ガランと音を立てて大地に残されたのはカラッポになった鎧。そして両断された、彼の勲章だけであった。


「安らかに御眠りください、幸せな眠りでありますように」
 騎士を弔いたいと言うプルミエを手伝い簡単な墓標を作った楓。目を瞑り、静かに呟く。
「これで不破の剣豪が倒れたのですね……」
「いやいや。あれは剣豪系の雑魚、下っ端だろ?」
 真水の注釈に驚く楓。相当強かった気がしたが、あれでも雑魚なんです。
「……会いたくはないけれど一度くらい見てみたいね、四霊剣」
 興味深そうな真水の声に苦笑を浮かべるタングラム。そこへロアがカップを差し出す。
「お疲れ様だ、タングラム殿も紅茶だが一杯如何か?」
「おお、気が利くですね。それではありがたく……」
「折角こうして共に激闘を生き延びたんだ。良かったら戻って祝勝会でもどうだ?」
「そいつはいいな。俺も付き合うぜ」
 レイスの提案に頷くシン。プルミエは真っ二つになった勲章をそっと土に埋めて背を向けた。
 ハンター達の去った森で古ぼけた剣が木漏れ日を弾いて輝く。長い間彷徨い続けた彼の時間が、漸く止まろうとしていた。

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MVP一覧


  • ロア・シュヴァイツka0423
  • 愛しい女性と共に
    レイスka1541

  • 藤堂 楓ka2108

重体一覧

参加者一覧

  • 蒼の意志
    セレン・コウヅキ(ka0153
    人間(蒼)|20才|女性|猟撃士
  • 山猫団を更生させる者
    シン・コウガ(ka0344
    人間(蒼)|18才|男性|猟撃士

  • ロア・シュヴァイツ(ka0423
    人間(蒼)|26才|男性|猟撃士

  • マーヤ・クランツ(ka1132
    人間(紅)|16才|女性|聖導士
  • 愛しい女性と共に
    レイス(ka1541
    人間(紅)|21才|男性|疾影士

  • 藤堂 楓(ka2108
    人間(蒼)|23才|男性|疾影士
  • ヒースの黒猫
    南條 真水(ka2377
    人間(蒼)|22才|女性|機導師
  • 戦うメイドさん
    プルミエ・サージ(ka2596
    人間(紅)|15才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談はこちらで
ロア・シュヴァイツ(ka0423
人間(リアルブルー)|26才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2014/07/14 23:19:09
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/07/10 23:55:51